シナリオ詳細
<鉄と血と>ヴィーザルの光<騎士語り>
オープニング
●
雪纏う風鳴りを吹き飛ばすかのように分厚い装甲列車が姿を現す。
どうどうと雪の塊が左右に飛び散り、重い車輪が回る音が聞こえた。
線路の上に積もる雪を割いて走る、黒光りの蒸気機関が夕陽に照らされる。
鉄帝国東の大森林ヴィーザルから西進してきたローゼンイスタフの家紋が赤くはためく。
汽車の横には守りを固めるように大型のスノーモービルが併走していた。
ローゼンイスタフからベルンを抜け、アスマルクを経由して此処、ラケントまで到着したのだ。
ラケントは帝都にほど近い街である。
汽車はゆっくりとスピードを落し、ラケントの中へ入っていく。
大型のスノーモービルは街の入口で別れ、街の外に設営してある野営場に収容された。
この連隊だけではない。ラケントには夜通し、ヴィーザルの各地から軍勢が集まるのだ。
金属の摩擦音と共に、重い汽車の車体が駅へと止まる。
吹き上がる蒸気と共に重厚な鉄の扉が開かれ、中から気怠げな兵士達が銃を抱え出て来た。
伸びをした兵士に隣の仲間が「おい、あれ」と視線を後ろへ投げる。
「かあ……、ようやく着いたか! 狭くて肩が凝っちまった!」
ウルフバードを抱え汽車の中から出て来たのは現ノーザンキングス統王ベルノ・シグバルソンだ。
その後ろにはオレガリオ達サヴィルウスの戦士がぞろぞろと顔を見せる。
無骨で大柄な『ノルダイン』の出で立ちに駅員が「ひっ」と肩を強張らせた。
「ああ? 何だァ? 俺達の顔に何かついてんのか?」
大柄な男共に囲まれた駅員は蒼白になり首を振る。
「お前ら止めろ……ったく、お行儀良くしとかねーと、ヴォルフのおっさんにどやされるぞ」
サヴィルウスの戦士達に溜息を吐きながらベルノはラケントの街を見遣った。
自分達の住んでいる田舎(サヴィルウス)とは全然違う、蒸気機関で何でも便利になっている。
もう陽が暮れて夜になろうと言うのに、街には煌々と明りが灯っていた。
「まるで昼みてえだな」
ベルノは一番装甲の厚い列車から『金狼』ヴォルフ・アヒム・ローゼンイスタフとベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)が下りて来るのを何気なく見つめる。
ベルフラウは列車から降りる際に、兵士に差し出された手を「不要だ」と断った。
「支えられずとも落ちはしない。自分で下りられる」
先を行くヴォルフに追いついたベルフラウは父が横目で此方を見ているのを感じる。
「……ベルフラウよ、仕え甲斐のある君主になれ」
「どういう事でしょうか」
その言葉に内包するのは様々な感情であるのだろう。
先代ノーザンキングス統王シグバルドが死んでから、何処か父の背が寂しそうに見えるのだ。
――――
――
「明日、このラケントから帝都へと進軍する。女神ユーディアの加護である程度は敵の居場所が把握出来ているが最終的な……エーヴェルトとの戦場はお前達に任せることになる」
迎え入れられた当局の軍事施設でヴォルフはイレギュラーズ達に顔を向けた。
「エーヴェルト……」
青金の瞳を揺らすレイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は忌々しい敵の名を呼ぶ。
「状況は概ね把握したわ。他に詰める所はある?」
地図と敵味方の配置を頭の中で練り上げていた燦火=炯=フェネクス(p3p010488)は顔を上げた。
「そういえば、移動用じゃないモービルもあった気がするんだけど」
ロト(p3p008480)が次々に届く物資の資料を手に首を傾げる。それを興味深そうに覗き込むのはラダ・ジグリ(p3p000271)だ。確かに戦闘用の雪上バイクである。
他にも大がかりな砲台がついたライフル銃もあるとルナ・ファ・ディール(p3p009526)が告げた。
「ああ、それはアーカーシュから運んでるものだね」
マルク・シリング(p3p001309)は資料の中から戦闘用モービルを示した。
「アーカーシュから? それは有り難てぇな」
感心するようにルカ・ガンビーノ(p3p007268)は笑みを零す。
「弾丸も多い……」
「ええ、そうですね」
シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)とエステル(p3p007981)は窓から大量に運ばれる弾丸の箱を見つめた。
「いよいよ決戦というかんじがするなあ!」
戦いの予感に身が震えてくると咲花・百合子(p3p001385)は隣のセレマ オード クロウリー(p3p007790)の背をバシバシと叩く。
その向かいで緊張した表情を浮かべるのはフーガ・リリオ(p3p010595)だ。
何せ大きな戦いの前夜なのだ。緊張するなという方が無理がある。フーガの握り締められた拳にそっと手を添える佐倉・望乃(p3p010720)。同じ戦場に立つ彼女を守らねばならないとフーガは意を決する。
「準備は兵士達に任せ、今夜はゆっくりと休め。良いな?」
ヴォルフの言葉に秋月 誠吾(p3p007127)はこくりと頷いた。
誠吾達が作戦会議室を出れば、当番の終わった兵士達が各々『くつろいで』いる。
火を囲み、無骨な銀のマグカップから酒を煽る。
トランプの真剣勝負に大声で笑い声を上げる兵士達。
「楽しそう……」
チック・シュテル(p3p000932)が目を細め隣の『強き志しを胸に』トビアス・ベルノソンへ振り向いた。
「皆、緊張してんだよ。ああしてはしゃいで、気を紛らわせてる」
酒を飲み、遊びに興じて、心の底から湧き上がる戦いへの恐怖と緊張を解そうとしているのだ。
「じゃあ、私達もトランプをしましょうか。ねえアルエットさん」
鶫 四音(p3p000375)が『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)の手を掴む。
「うん……! ジェラルドさんさんも、トビアスお兄ちゃんも、チックさんも一緒にしましょ?」
「ワタシもしたい!」
「ぼくも!」
ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)の影からフラーゴラ・トラモント(p3p008825)とリュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)が現れて、火を囲みながら皆でトランプをした。
その光景は『姉のアルエット』には体験出来なかったものだ。だからこそ、アルエットは姉の分まで楽しまなければならないと笑顔を向ける。
ベルノ達、サヴィルウスの戦士の中で肉を喰らうのは恋屍・愛無(p3p007296)だ。
その隣には『青の魔女』エルヴィーラ・リンドブロムが座っている。
「口にソースがついているぞ」
強引にハンカチで愛無の口元を拭くエルヴィーラ。同じようにトビアスやアルエットも甲斐甲斐しくお世話されたのだろう。或いは、ベルノもその内に含むのかも知れない。口調に反して母性の強い女性だ。
「オレガリオ君は食べないのかね?」
「ああ、後で食べるから大丈夫だ」
ベルノ達が安全に過ごせるように見守っているオレガリオは正しく忠犬であった。
ヘルムスデリーからも騎士達が来ていた。
彼らを囲むのはベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)とリュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)である。
「はぁ……緊張するよ」
『聡剣』ディムナ・グレスターは心許なげに溜息を吐いた。その隣では『氷獅』ヴィルヘルム・ヴァイスが何時もと同じように硬い表情で火を見つめていた。
「俺も怖い……」
座り込んで拳を握るクルトの背をシラス(p3p004421)が優しく包む。
「大丈夫。俺達がいるから」
「そうよ少年。私達は結構強いのよ」
強気な笑みを浮かべるゼファー(p3p007625)はクルトに温かいココアを差し出した。
クルトはゼファーを見上げ「ありがとう」と呟く。
「私もね、決着をつけに此処へ来たの。本当に世話の焼ける爺さんだわ」
エーヴェルトによってアンデッドにされた先代統王シグバルドとの決着。ゼファーはそれを望んで此処まで来たのだ。
ゼファーが視線をあげればオウェード=ランドマスター(p3p009184)が兵士達に交ざって武器の荷運びをしているのが見える。何もしていないのは心が落ち着かないのだろう。
その傍ではミザリィ・メルヒェン(p3p010073)がクルーエル・エルと共に回復薬の数を数えている。
「もう少し欲しいですね」
「そうねえ……セシリア手伝って欲しいのだけど」
「はい。大丈夫ですよ」
ヘルムスデリーの薬師魔女クルーエルと『静謐の聖母』セシリア・リンデルンは人々を癒すという目的が同じことから仲が良い。その後には『青雪花の精霊』エーミルも居る。彼も癒やしの精霊である。
「なら、アタシも手伝うわ。こういうのは人手が多い方がいいでしょ?」
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)もまた、調香という癒やしを与える者だ。
戦力の要であるイレギュラーズに与えられた宿は、豪華な設えで彼らを出迎える。
「やはり、明日だと思うと緊張しますね……」
部屋の大きな窓からジュリエット・フォン・イーリス(p3p008823)が外を見つめていた。
彼女に寄り添うのは『翠迅の騎士』ギルバート・フォーサイス(p3n000195)だ。
背中に感じるギルバートの温かさに、明日の決戦の緊張が少しだけ和らぐ。
「ジュリエット……」
後ろから抱きすくめられ胸が高鳴った。
首筋に乗せられた額も回された腕も、離さないと言わんばかりに力強く。故に、不安なのだと知れる。
「大丈夫です。必ず生きて、帰ってきましょう」
「ああ、今度こそ失わせない。必ず君を護ってみせる」
不安であるからこそ、誓いを立てる。戦いの極限状態の中、その言葉を寄る辺とする為に。
ベルフラウとリースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は宿の部屋で明日の決戦に思い馳せる。
「エーヴェルトは何を考えているのでしょうか」
リブラディオン襲撃、家族でさえもアンデッドにするその所業。未だその真意が知れぬのだ。
「分からない……が、野放しには出来ないからな」
ベルフラウは窓の傍まで歩き、ラケントの町並みを見つめる。
「……ん? 何だ?」
何やら慌ただしくベルノ達が駆け出していくのが見えた。
遠目に見えるのは魔物と青年だろうか。
「あれは……」
以前、戦ったことのある『ヴァルハラ』の『ラッセル・シャーリー』だ。
ベルノに抱えられたラッセルにセシリアの癒やしが降り注ぐ。
遠目からでも分かる。かなりの重傷だ。
魔物の方はあの場で息絶えたのだろう。動く様子はなかった。
ラッセルは何かを訴えるように、生き絶え絶えにベルノを掴む。
●
吹き荒ぶ雪が窓枠をガタガタと揺らしていた。
魔種『エーヴェルト・シグバルソン』が鋭い瞳で眉を寄せる。
「――母が死んだ日も、こんな冬の夜だった」
「イルヴァか」
酒を飲みながら『獣鬼』ヴィダル・ダレイソンは銀色の髪をした女を思い出す。
シグバルドの愛人『イルヴァ』は儚く何処か魅惑的な雰囲気を纏わせていた。
それがエーヴェルト・シグバルソンの母イルヴァだ。
イルヴァは彼が幼い頃に死んだ。目の前で殺されたのだ。シグバルドによって。
「何故、と何度も問うたよ。けれど、親父は答えてはくれなかった」
「仕方ねぇだろう。闇の眷属だったんだからな。シグバルドの親父は闇の眷属を嫌っていた」
エーヴェルトの母イルヴァは闇の眷属であった。
シグバルドによって根絶やしにされた闇の眷属の復讐を遂げるためサヴィルウスに来たのだ。
されど、イルヴァは仇敵であるシグバルドを愛してしまった。
闇の眷属である自分がシグバルドを愛した。
その精神の歪みが侵食を呼び、イルヴァは化け物となったのだ。だから、殺された。
「……俺には母しか居なかった」
ベルノ達には家族が居る。自分には母しか居なかった。
愛人の、しかも闇の眷属だった女の子共である自分をシグバルドは家族とは見做していなかっただろう。
統王を注ぐのはベルノであり、もし彼が死ねばその次は弟のユビルを据えると。
悔しい、妬ましい。復讐したい。
そんな想いがエーヴェルトの内側に渦巻いた。
母との繋がりは血。闇の眷属であるという、自負に『縋った』のだ。
じわりじわりと侵食される精神。
悪鬼『バロルグ』の手足となって、リブラディオンを襲わせた。
リブラディオンの民の魂は悪鬼バロルグに喰われた。己の力とするために。
「国を起こす? どうでもいい、ただ……母の復讐がしたかったんだよ俺は」
「ふうん……」
エーヴェルトの言葉を受入れるとも拒絶するともせずヴィダルは「そうか」と応える。
「この国ごとめちゃくちゃにしたかった。何もかも全て消えてしまえばいい」
恨めしいと石畳に爪を立てるエーヴェルト。
「ヴィダル、ラッセル……お前らがこそこそベルノに連絡を取っている事なんてお見通しだ。だったら、なぜ手元に置いていたと思う? お前らは利用されるだけの駒でしかない」
「はあ? 馬鹿臭え、俺は戦えれば何でもいいんだよ。こいつ(ラッセル)が勝手にやってた事だ、俺はしらねえ」
「ヴィダル……お前」
同じように話しを聞いていたラッセルは突然の裏切りの言葉に眉を吊り上げる。
「どっちでも良い、お前らは此処で死ぬのだからな」
「はあ? 俺に勝てると思ってんのか?」
立ち上がったヴィダルは斧を手にエーヴェルトへと対峙した。
実力の差など歴然、なぜヴィダルはエーヴェルトの前に立ちはだかるのか。
「掛かって来いよ! エーヴェルト!」
「良いだろう。お前の事は前々から気に食わなかったんだ。腐れ外道!」
お前が言うなとヴィダルは笑い、次の瞬間、部屋のドアがぶち破られる。
ヴィダルの獣魔がラッセルを掴んで、森の奥に消えた。
ラッセルだけでもベルノの元へ返す為だ。生き残る可能性は、此が一番高い。
「無駄なことを……」
「ああ? 俺の獣魔なめんな」
ヴィダルの斧がエーヴェルトの爪に阻まれる。
金属音が幾度となく響き、やがて白い吹雪に何も聞こえなくなった。
――――
――
くらいくらい鳥籠の中。
飛べない鳥の鳴声が聞こえる。
小鳥の歌。悲しくて、泣き濡れて。もう何処にも行けない。
たすけて、たすけてといくら呼んでも誰も来てくれない。
悲しいく辛い、檻の中。
「たす、けて……カナリー、ギルバートお兄ちゃん……」
何もかも忘れてしまったけれど、その言葉だけを覚えてる。
きっと、大切な人の名前。
●
薄暗い夜明け。
月と狩りと獣の女神ユーディアは祈るように瞳を閉じた。
「どうか、どうか……祝福を。その儚き命が潰えぬように」
戦士達に降り注ぐはやわらかな月の加護。
神輝クラウソラスを携えたベルフラウが赤い御旗を掲げる。
目の前には、ローゼンイスタフ兵とノーザンキングスの戦士、ヘルムスデリーの騎士たちが並んでいた。
ベルフラウは彼らを見遣り声を張り上げる。
「我等いずれも不毛の荒野――愛する祖国に産まれ育つ者。
剣を取り、銃を取り、血を流し、尚武に根ざす猛き者。
やがてヒースの丘へと眠り逝くべく――
だが見よ、今この母なる大地を憤怒に穢す者が居るではないか。
恵みの陽光を遮る、かの邪しき伴星は何か。
その邪しき炎が降り注げば、母なる大地は灰燼へと帰すに違いない。
この蛮行を許せるか! 否!
この無道を許せるか! 否!
この悪逆を許せるか! 否!
ならばいざ、かの城リッテラムへ御旗を掲げんがため、我等は剣を取る。
雷神へ命を捧げよ!
クラウソラスの輝きに続け――!!!!」
地面が揺れる程の雄叫びが戦士達の間に響き渡った。
誰しもが奮い立ち、声を上げ戦いへと向かう。
- <鉄と血と>ヴィーザルの光<騎士語り>完了
- GM名もみじ
- 種別決戦
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年03月23日 22時35分
- 参加人数40/40人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 40 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(40人)
リプレイ
●
灰色になった雪の上を兵士達の靴が駆け抜けていく。
戦線は既に開かれ、止むことの無い銃声がシュロットの耳に届いた。
「何処にだって腐った輩はいるしそれによる悲劇はある。今目の前に広がる光景なんて、その最たるものだろう。だからこそ、壊させない穢させたくないと強く思う」
シュロットの瞳に映るのは最前線の敵影。そこから距離を保った位置でシュロットは弓を引き絞る。
一人の軍人の頭が貫かれ地に伏した。シュロットの矢は正確無比に敵を射貫いたのだ。
「結局、ここまでもつれ込んでしまったか」
ラダは横目でベルノ達を見遣る。特別親しい訳でもなかったけれど、幾度か戦場を共にした。
「後悔のないよう、決着がつく事を願うよ」
敵陣へ向かうベルノ達の背へラダは祈り、その行く手を阻む天衝種の群れへ弾丸を撃ち込む。
ラダの銃弾に弾かれた天衝種を見遣りアクアが眉を寄せた。
「あの天衝種、わたしと、同じ感じが、する……」
潰さなければ、消さなければ。そんな怒りがアクアの胸の中に広がる。
「ところで、この石像……なに? 一緒に、戦って、くれる……の?」
AKSアームズがアクアの隣で大きく頷いた。
軍用浮遊式蒸気バイク『ラウフェンブリッツ』へ跨がり至東は口の端を上げる。
「二輪の運転は久しぶり……いやコレ二輪ですか?」
蒸気の力で浮いているがバイクの形をしているのだ。難なく動かせるだろう。
「肝心要は雷火のごとき速度の侵掠! 先駆ける友軍に遅れまじ!」
雪煙を噴き上げながら至東が最前線へと速度を上げる。
「っでー、この速度だと敵方の視認も難しくありません?」
目の前は白い吹雪だ。されど、至東にとってこの位の障害どうということはない。
「邪魔をする兵に突っかかっていくのみです!」
露払いと侮ることなかれ。その勇姿に続く兵の士気は高く――
「俺も死者の声を聴くものだが」
アーマデルは特殊兵装のバイクに乗り戦場を見遣る。
「使役する為に殺し、死者の安息さえ奪うものとは相容れない」
死者は往くべき所へ導かねばならぬ。それが『一翼の蛇』の使徒としてのアーマデルの在り方。
「行こう、捩れ縺れた糸(運命)を断つ為に」
灰色の雪をバイクが掻き上げ、速度を増して行く。
整然と動く集団は手強いものだとアーマデルは眉を寄せた。
「故にその足並みを乱し、行動を阻害しながら削り落とす」
蛇剣を振り上げ奏でるは、悲劇の哀愁曲。
「殺して、アンデッドにして……許せない。アンデッドにされた人達を開放しにいくよ……みゃー」
祝音は身体が震えるほど感情を発露していた。
ゴーレムを携え、敵陣の中へ斬り込む祝音。巻き上がる砂塵に雪が交ざる。
敵影の中にはリブラディオンのアンデッドも居た。
「ずっと、つらかったよね……ごめんね」
祝音は眉を寄せて、彼らをも巻き込む。早く安らかなる眠りについて欲しいから。
「……エーヴェルト。君と会うのは……ロクスレアの街以来、だね」
チックは戦場の奥に見えるエーヴェルトの姿を見つめる。
「今度こそ、彼らを取り戻す……してみせる。ユビルやアルエット、リブラディオンの皆も。これ以上、君達に勝手な事……絶対にさせない!」
チックの隣にはトビアスが友人を守るように武器を構えた。
「……今まで以上に強力な相手、沢山。でも、皆と一緒なら……大丈夫。灯火は、絶やさせない……よ」
「ああ、俺が守ってやるからお前はやれることをやれ」
トビアスの言葉にこくりと頷いたチックは天衝種へ向け燈杖を掲げる。
チックの灯火は誰かを導く白き明りだ。
「因縁だかなんだか、知ったこっちゃねェな。おれさまにゃどうでもいいこった」
灰色の雪上をグドルフの靴が踏みしめる。
「だがよ、調子ブッこいた連中をブチのめすにゃいい機会だぜ!」
兵器なぞ必要無い。男なら裸一貫、身軽で丁度いいとグドルフは単身前線へと走り出した。
少年少女が復讐の為に剣を取る。世界は『あの頃』と何も変わってないと胸の奥で毒が染み出す。
それでも己が此処へ立っているのは、前を往く大人が居てくれたから。
自分の命よりも子供の未来を願ってくれた人がいるから。
ならば、今度は『大人』である自分が『子供』たちに手を貸す番だ。
「てめえら、モタモタしてっとおれさまが手柄を全部まるごと奪っちまうぜ! キバって行けやあ!」
最前線で斧を振り回すグドルフの覇気に敵も味方も闘志を増す。
「なぁ、エメラインのところへ……行くか?」
ジェラルドは戦乙女姿のアルエットを見つめた。
「いよいよ決着の時ですね。行きましょうかアルエット」
手を握った四音、それにジェラルドへ強い決意を宿した瞳で頷くアルエット。
「……なら俺も行く。アンタが向き合うってんなら、俺はその道を切り開く」
ジェラルドは大太刀を抜き、一歩前に出た。
その視線の先には最前線で戦う仲間と多くのアンデッド、それに仮面の少女エメラインが居る。
「こんな姿の自分が言えた義理じゃねぇが、酷い有様だな」
ガイコツ姿のファニーは戦場の奥に居るエメラインを見上げた。
「……ひどい冒涜ですね。他人から奪った本のページを切り刻んでボロボロにして、継ぎ接ぎにして直したつもりで自分の物のように扱う」
――嗚呼、嗚呼、こんなことが許されていいはずがありません。
眉を寄せて唇をかみしめるのはミザリィだ。
先行するファニーへ強化魔術を施し、ミザリィも追従する。
「さぁ道を開けてもらおうか」
ファニーの眼窩から青い焔が吹き上がり、天衝種目がけ無数の星屑が降り注いだ。
「死にたくないなら地に伏せてな」
巻き込まれた軍人を横へ蹴飛ばしながらファニーとミザリィは敵影の中を進む。
ファニーには追従するミザリィやエメラインへと向かうジェラルド達の場所が分かった。
「向こうから敵が来てるぜ。囲まれんなよ!」
ファニーの言葉にミザリィ達は頷いて散開する。
「何故、僕は此の地に来たんだ?」
兵装に庇われる形で攻撃を防いだロトは胸の内に蟠る苦しさに喘いだ。
カナリー達から……晒された罪から、迷い、向き合わずに逃げたのに。
「どの面を下げて、この戦場へ? 皆に言うべき言葉はどれだけある?」
戦いの喧噪の中、ロトの声は掻き消される。迷い、足掻いて、それでも此処へやってきたのだ。
「た、すけて」
小さく聞こえた声にリュコスは顔を上げる。
エメラインの残留思念とも呼べる声が、微かに聞こえたのだ。
リュコスはエメラインとその周りに居るアンデッドに視線を流す。
「……ひどい、こんなのゆるせないよ」
アンデッドになった人々はその殆どが魂さえ奪われ戦いに投じられていた。
「……なんとかできない、かな」
その思いを胸にリュコスはアンデッドたちの前に立ちはだかる。
自らへとアンデッド達を引きつける為だ。
「アルエットさん……いえ、今はエメラインですね。貴方に初めて会った時、助けてと言っていましたね」
ジュリエットは戦場で剣を振るう仮面の少女を見つめる。
「私は心から貴方を助けたい」
だから向き合うべきは少女の魂を縛るエーヴェルト。倒さなくてはとジュリエットは杖を握る。
「必ずその鳥籠から出してあげますから」
ギルバートへと視線を上げたジュリエットは頷き合った。
リースリットはアンデッド達の中に『ユビル』を見つける。
彼を前線に出しているのは果たしてどういう意味なのだろうと眉を寄せたリースリット。
「神の器、バロルグの依代……破壊されても問題が無い?」
或いは、既に『破壊できない』状態にあるのかもしれない。
それに……とリースリットは赤い瞳でエメラインを見上げた。
「彼女も前線に出している以上、急がなければなりません」
リースリットの傍には子犬姿のフローズヴィトニルの欠片が控えている。
エメラインを本当の意味で取り戻す為、エーヴェルトを討つとリースリットは敵影の中へ駆け出した。
「ユーディアさんが怯える何かが、あの人の中にある。ユビルさんの魂自体は癒したいけど。怯える何かは何とかしないと……!」
祝音もユビルの中に居る存在を警戒する。
ルカは強く拳を握り締め戦場を見遣る。
シグバルドを静かに眠らせてやりたい、エーヴェルトをぶち殺してやりたい。そんな強い思いが胸の奥に走る。されど、力を貸してくれる女神ユーディアを怯えさせる程の『強大な存在』をこの戦場で見過ごす訳にはいかなかった。
ルカは身を低くし戦場を縫いながら最前線右翼へと駆け抜ける。
一連の流れの裏にはいつもエーヴェルトが居た。だから、この戦いの黒幕はエーヴェルトなのだと思って居たのだ。
「……ユビルの中にいるのがバロルグってんなら。エーヴェルトの母親が狂ったのさえも全てはバロルグの仕業なのかも知れねえな」
鋭い眼差しでユビルを眼前に捉えたルカは灰雪の上を跳躍し一気に間合いを詰める。
交えた刃でユビルが押し負け腕が千切れた。それは雪の上に落ちて黒く溶け出しやがて元通りにユビルの腕は再生される。倒すには首でも落すしかないだろうか。ルカは赤き双眸をユビルへ向ける。
この戦いさえ『何かの儀式』なのだとしたら……ルカの脳裏にそんな囁きが聞こえた。
「ユーディア、やべえと思う事があったら都度教えてくれよな」
其れに呼応するように女神の息吹がルカを覆う。
「全て、魂、精霊、祝福、あらんことを」
シャノは夜霊鴉の弓を引き絞り戦場へ黒き矢を降り注いだ。
「ここ、王、討伐、場所。雑魚、邪魔」
同じヴィーザルに棲まう者としてシグバルドの尊厳を守りたいと此処までやってきたのだ。
偉大なる王として、戦士として、その命を送り出すと強く願うのだ。
灰色の雪に軍人の身体がどうと倒れ込む。
「偉大、魂、尊厳、守り、送られる、べき。それが、誇り」
ミヅハはエメラインに向かう仲間を援護する形でバイクを走らせていた。
縦横無尽に戦場を走り回るミヅハに敵の軍人どもも翻弄される。それにヴィダルはどうやら『説得』に向かうらしい。ならばミヅハに出来ることはシグバルドを相手する方が効率が良い。
「バイクの機動力なら追いつかれないとは思う……けど」
この乱戦の戦場だ。何処から弾丸が飛んでくるかは予測するのも難しいだろう。
一所に止まるのは命すら危うい。ミヅハはバイクを滑らせながらシグバルドへ照準を合わせる。
風と人の動きを演算し、狙い澄ませた弾丸が戦場を突抜けた。
「今更アンデッドの大将が相手とは、王道が過ぎるな……まあ、いい」
お陰で北辰連合は十分に纏まったとセレマは百合子の腕の中でシグバルドに視線を向ける。
「端役には最後の引き立て役を完遂願おう」
「当初の想定とは違ったが――統王シグバルド! いざ、尋常に勝負!」
軍人の塊を前に百合子は兵装を足場にして跳躍し、彼らの上を飛び越えた。
こんな所で時間を取られる訳にはいかないのだ。百合子の強い眼差しはシグバルドを見据えたまま。
射程に入った瞬間、百合子は兵装『グレンツェル』から砲弾を放った。
「奇襲じゃないのかよ」
「先触れを出すのは奥ゆかしい作法であろう?」
セレマの言葉に百合子は不敵に笑む。
「……決着をつけましょうか、爺さん」
ゼファーはシグバルドの前に立ち槍を向けた。
見上げる統王の兜の中、虚ろな瞳が浮かぶ。
其処に覇気は無く、王道も無く。戦士の意志も無い。
心踊らせ傷付け合った、刃の切れ味はもう何処にも無くて。ゼファーはぐっと唇をかみしめる。
今日、此の時の為に研ぎ澄ませて来た全てをぶつける。そうしなければ報われない。
そんな小さな鎧に押し込められたままでは窮屈だから。
「其の身体と生き様を、還るべき場所へ還してあげましょう」
シラスは満身創痍で戦場に立つヴィダルと対峙する。
この期に及んでまだ敵対するとは思ってもみなかった。彼はベルノの味方だったはずなのに。
「ベルノの奴はエーヴェルトを倒しに向かったぜ、お前はいいのか?」
「ああ、ベルノ達が勝つだろ。俺が居なくてもあいつはもう大丈夫だからな」
イレギュラーズが居る。相対していたローゼンイスタフが居る。自分一人の支えなど、とうに必要としていないとヴィダルは口の端を上げた。
「俺は戦いが好きだ。この世に居ても、本当の『ヴァルハラ』へ行っても戦いに明け暮れているだろう」
この男は闘争の虜囚だ。ヴィダルにとって戦う事こそが生きる意味であり、和平へと歩もうとしているノーザンキングスにとって、やがて『敵』となり得るだろう。
「だから、殺り合おうぜシラス……最高の戦いにしてくれよ?」
「構わねえよ、じゃあケリをつけようぜ。戦士ヴィダル・ダレイソンを終わらせてやるよ」
斧を構えたヴィダルに癒やしの福音が降り注ぐ。シラスが回復を施したのだ。
「ああ? 何の真似だ?」
「その傷で俺に勝てると思ってんのか、舐めるなよ?」
シラスの言葉に「ああ、最高だぜ」とヴィダルは獰猛な笑みを零す。
何の足枷もない。ただ其処にあるのは『獣鬼』が求めた闘争。
「ブッ倒す!」
「望む所だ、クソガキが!」
もう引く理由はない。此処が戦いに明け暮れた男が行き着く先だ。
「ギルバートやクルト達も……大切な何かの為に戦う」
フーガは最前線で戦う仲間達の背を見つめる。
「ならおいらは、大切な妻の傍にいながら、彼らの背中を支える」
皆でヒースの丘へ帰れるようにフーガは祈るのだ。
「この戦いの後には、誰もが穏やかな春を迎えられると信じて、わたしに出来ることを精一杯頑張ります」
だからと望乃はフーガに視線を上げる。
「だから……あとで、甘いご褒美を下さいね。約束ですよ、フーガ?」
「望乃、精一杯頑張ったら甘いご褒美と……結婚式をするぞ。それまでおいらも精一杯、黄金の百合を咲かせてみせる。『我愛?』と医神ディアンに誓って、約束だ」
己の手を握るフーガに望乃は目を細め頷いた。
「……きっと、ベルノたちと力を合わせなければ、ここまでこられなかったわね」
小さく呟いたジルーシャは最前線を往くベルノの背を見守る。
この戦いが終わってもノーザンキングスとの溝が完全に埋まる訳ではない。むしろ共通の敵をなくした後の方が面倒な事は多い……それでも少しずつ、良い方向へ変わって欲しいから。
「…ううん、変えていきましょ、アタシたち皆で、そのためにも、絶対に勝って帰らなくちゃね!」
決意と共に顔を上げたジルーシャは隣のリヴィエラへ笑顔を向ける。
「来てくれてアリガト、リヴィーちゃん! 一緒に頑張りましょうね♪」
「ええ、ええ。よろしくね、グレイさん。足を引っ張らないように頑張るわ……!」
皆が安心して戦えるように、自分に出来る事をする。リヴィエラはそう拳を握った。
「どんな怪我も、私たちが絶対に治してみせるわ。だから、しっかりして!」
既にリヴィエラ達の前には怪我をして運ばれてきた人が居る。
皆悔しげに呻き、震えていた。
「ここにいればもう大丈夫よ。元気になるまで、ゆっくり休んでいってね」
「ありがとう嬢ちゃん。でも……俺達は行かなきゃならねぇ」
リヴィエラとジルーシャの回復を受けた兵士達は傷が癒えた途端に立ち上がる。
「ここは俺達の国だ。俺達が身体張って守らなきゃいけない。家で待ってる家族が明日笑えるように」
「ええ、そうね」
「アナタ達に加護があらんことを祈っているわ」
ジルーシャは戦いへと戻って行く兵士達へ激励の旋律を奏でた。
●
怒号が木霊する戦場でベルフラウは眉を寄せる。
「未だこの地を染め上げているのは積み重ねられてきた怒り、苦しみ、憎しみ。それらは凝り固まり、差乍ら永久に溶ける事のない氷の様だ。だが、我等は遂にその氷に罅を入れた」
怒りを忘れる事も、苦しみを無かった事にも出来ない。憎しみは薄れず積み上がる。
「それでも人は、未来を紡いでいけるのだ」
ベルフラウはギルバートとベルノへ視線を向けた。
「ギルバート、此処からが始まりだぞ。ベルノ、貴様との共闘もこれで最後か……死ぬなよ」
剣を抜いたベルフラウはエーヴェルトを睨み付ける。
「そしてエーヴェルト、貴様は此処に置いていく。貴様の怒りを断ち切って我等は前へ行く」
ビョウと吹いた風がベルフラウの髪を巻き上げた。
「この戦いは禍根の終わりであり、そして新たなる始まりである」
ベルフラウは雪交ざる風を受け強い輝きを宿す瞳を上げる。
ヴィーザルを統べるにはまだ多くの課題があるだろう。ギルバートとの約束。彼が戻ってきてくれた事を無碍にするわけにはいかなかった。だからこそ、この戦いが終わってからが始まり。
「そして、過去の全てを清算した時に生きて居るのならば。
……ベルノ、その時は我が伴侶となれ」
凜としたベルフラウの言葉にベルノは考え込むように押し黙る。
「過去の過ちを断ち切って猶生きて居るのであれば貴様は強い。
ヴィーザルを統べるには強さが必要なのだ」
「俺は強くなんかねえよ。親父を越えられなかった。だけどよ、親父が残した路を閉ざす訳にはいかねえ。俺には子が居る。そいつらに残す為にこの身体は張らなきゃなんねぇ。だからこの戦いはきっちりとケジメつけるぜ。まあ、強い女は好きだからこの戦いが終わったら、伴侶は考える。エルヴィーラに殺されなければ、俺は全然構わねえぜ」
言った瞬間に後方からエルヴィーラの氷矢がベルノの頬を掠める。
「ラッセルは立派に務めを果たしたよ。後は、僕が引き継ぐ」
「マルク……頼んだよ」
学友だったマルクをラッセルは信頼している。その才覚は当時よりも更に磨かれているから。
ベルノを任せられるとラッセルは頷いた。この戦いだけはベルノの軍師はマルクなのだ。
「ラッセルの代役として……戦場を御してみせる。らしくないやり方だけど、君の代役だからね。終わったらお昼奢りで」
「分かったよ」
重傷を負ったラッセルは本陣へと行くことは叶わない。だからマルクに託すのだ。
きっとマルクは、どんなに劣勢でも、知恵と勇気で常に逆転の道を探ってくれるだろう。
その戦場に向かうマルクの背をラッセルは見つめた。
「ベルノ、助太刀に来たぜ」
「おう、レイチェルか」
「お前はあの子──カナリーの父親だからな。良い父親なら、此処で死なれちゃ困る」
良い父親かと問われれば疑問ではあるがと頭を掻くベルノ。
そんな家族愛が尊いのだとレイチェルは目を細める。
先陣を駆け抜けるレイチェルの紅い焔へと続くはグランツェルを伴う誠吾だ。
「よろしくな。相棒」
相棒をひと撫でした誠吾は戦場を見渡す。
誠吾自身はこの地に何の縁もない。されど、様々な場所を歩き情報を得る内に考えが纏まった。
「エーヴェルトが全ての元凶なら、そいつを討てば終わる」
死者は生き返らないしアンデッドが生者として蘇る事も無い。
討ち果たしたところで過去の悲劇は覆らない。されど、その悲しみの連鎖を立つ事はできる。
前へ進もうとする人達の背を押すことは出来る。その為の戦いだと誠吾は戦場へ繰り出した。
「お手伝いはワタシの得意なところ支えてみせるよ!」
フラーゴラはベルノ達の元へ駆けつけ支援魔法を施す。
「おい、大丈夫なのか? お前みたいな小さいの」
「大丈夫! ワタシは結構タフだよ」
ベルノの言葉にフラーゴラは拳を上げた。
その華奢な身体から想像出来ないが、フラーゴラはかなり耐久力があるのだ。
戦場で立ち続けられるということは其れだけ仲間の生存率上昇に繋がる。
「傷が深い仲間もバッチリ見つけられるから安心して!」
頼もしいとベルノはフラーゴラへハイタッチをした。
その後でオウェードは「アルエット殿……」と決意を込めて拳を握る。
襲撃の元凶を必ず討ち、少女に区切りを付けさてやりたい。
そして、とオウェードは胸の内に大切な人を想い。一歩戦場へ踏み出す。
「ギルバード殿、敵の攻撃はこうじゃな……お互い用心して行こうかね……」
「ああ、頼もしいよ。共に戦おう」
ようやくこの時が来たとエステルは戦場へ顔を向けた。
アンデッドを何体仕掛けて来ようと、エーヴェルトを倒しヴィーザルの地の悲劇を一つ終わらせるのだと強い意思でこの戦場へ立つ。
ゴーレムを伴ったエステルは手にした槍で本陣へと斬り込む。
「ギルバート様お気を付けて」
「ああ、そっちは任せた」
エステルはギルバートへアンデッドが群がらぬよう槍を真横に振るった。
きっとギルバートのことだ。リブラディオンの『誰か』だと気付けば剣が鈍ってしまう。
だからその役は自分が代わるとエステルは果敢に前へ出るのだ。
「それでは決着をつけに参りましょう」
リュティスはベネディクトの隣に立ち、雪舞う戦場へ踏み出す。
此処がどんな戦場であろうと自分達の為すべき事は代わらないとベネディクトは頷いた。
「決戦だ、必ず勝とう」
「ええ……御主人様の為にこの力を奮うと致しましょう」
リュティスの指先から支援の魔術が展開し、自身の能力を底上げする。
彼女の前を往くベネディクトはギルバートへ視線を向けた。
「ギルバートはもう大丈夫だろう、だがこの先の未来を拓く為にこの戦いは勝たねばならない」
彼の傍にはディムナもジュリエットも居る。
己が傍に居なくとも前に進むことが出来る、それが誇らしいとベネディクトは目を細めた。
ベネディクトの剣尖がエーヴェルトを捉える。思った寄りも浅い。
羽毛に覆われた柔らかそうな表皮は冬の寒さにも負けぬ鎧なのだろう。
ベネディクトへ続くようにリュティスが魔力の鎖をエーヴェルトへ向ける。
ディムナはギルバートと共に同じ場所へと刀身を翻した。
「……甘いな」
エーヴェルトの爪の衝撃波がディムナを弾く。反動で重心を崩したディムナは距離を取りベネディクトへ視線を向けた。全くもって一筋縄ではいかない相手だろう。
「エーヴェルト。哀れな男……お前の父親が負い目や義理で誰かを傍に置くような男かよ。お前の境遇だって傍から見ればお前の才覚と立場を考慮した結果だろうに」
「何を戯けた事を」
愛無の言葉をエーヴェルトは鼻で笑う。
エーヴェルトにはシグバルドの愛情は伝わってなかった。お互いが伝えるのが下手だったのだろう。
(この地では、それは是非も無いか。親の心子知らず。逆も、また然りか)
「何にせよ。愛されて生まれてきた奴が。捨てられたわけでもない奴が。思春期拗らせて後戻りできない所まで行き詰って。ぐだぐだと鬱陶しいわ!」
考えるのは後にして愛無はエーヴェルトへと飛躍する。
「あのリブラディオンの街の襲撃の原因は、お前か」
「そうだ。復讐の為に……そして闇の眷属として利用させてもらったのだ」
ならば遠慮はいらぬとボディは刀を持ち肉薄する。
――エーヴェルトを討つ。ただそれだけを望む。
吹き上がる血なぞ意識の外へ。ボディはエーヴェルトへ食らい付く壁となる。
「遂にこの時が来たわね、エーヴェルト! アンタのふざけた所業は、その命を刈り取る事で終わらせるてやるわ……!」
ボディ、愛無と共に燦火はエーヴェルトへ接敵する。ヴァイスフリューゲルを操り、仲間達とは対角線から燦火は神聖なる光の剣を解き放つのだ。
「アンタの好きにはさせない。絶対にね!」
獰猛な牙を向けたエーヴェルトの脇を燦火はヴァイスフリューゲルで切り抜ける。
――――
――
至東はバイクに跨がりながら戦場を見渡した。
エメラインの居場所は把握したが、戦況は複雑になってきたと眉を寄せる。
「エーヴェルトにはせめて一撃くれてやりたかったが。俺は強敵とガチでやり合うのは向いていなくてな」
アーマデルは蛇剣のワイヤーを引き、手の中に収めた。
縁がある者達が、糸を紡げるようにアーマデルはその戦端を開くと決めた。
「想いはそれだけでは何の力も持たないが、方向(ゆくえ)を定めた意思とやり抜く決意が伴えば、それは風切る矢にも疾く走る刃にもなる」
どうかとアーマデルはエーヴェルトへ向かうギルバート達の輝きを祈った。
戦場はうねりを伴って加速する。
ラダは集中攻撃を受ける部隊への援護へ回っていた。
「嫌な予感がする」
背筋を駆け抜ける怖気。エーヴェルトから伝播する闇の波動が増しているのだ。
新皇帝派の軍人が何かに怯えるように怒りをまき散らすように呻き向かってくる。
囲まれたアクアを助け起こしながらラダは眉を寄せた。
「そんなカスみてぇな怒りで、わたしに勝てると思うな! 全部ぶっ殺してやる!」
アクアは覚醒したかのように起き上がり敵影へと走り出す。
新皇帝派の軍人の怒りに満ちた自滅攻撃で戦線の一旦が崩れた。
其処から雪崩れ込むように兵士達が押され出す。
怖じ気づいた兵士達の耳に獣のような足音が聞こえて来た。
「てめぇらが簡単にくたばると、俺にもお鉢が回ってくんだかんな。おら、勝手にくたばんな。んでもって、さっさと前線に戻りやがれ」
怪我をして動けなくなった兵士を背に乗せたのはルナだ。
その俊敏な機動力で戦場を駆け抜けているのだろう。
別方向に顔を向ければルナの目に負傷し倒れた兵士が飛び込んで来る。
覆い縋るようにルナへと銃口を向けた敵軍人。ルナは口角を上げ『加速』する――
「俺を捕まえようとするだけ無駄な労力だぜ?」
一気に前方へと間合いを詰めたルナは負傷した兵士を拾い上げた。
「バイク? スノーモービル? んなのよりもてめぇの足で走った方がよっぽど自由が利くわ」
ルナは兵士を抱え戦場を後退する。後方支援部隊まで急ぎ負傷兵を運ぶのだ。
「しっかりしなさい!」
ジルーシャとリヴィエラはルナが回収してきた味方兵士達へ回復を降り注ぐ。
「かなり負傷兵が多くなってるわ」
リヴィエラは眉を寄せ兵士達へ包帯を巻いた。
「動ける人たちはおいらの指示に従って! 負傷者の安全確保を優先、避難誘導にあたってほしい」
フーガは望乃と共に負傷者の回復に当たる。
「痛ぇ……本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫。神様も精霊達もついている……絶対に、皆を助けるぞ!」
弱気になった兵士達を励ますフーガ。その隣では望乃が歌を口ずさむ。
「――歌おう。鉄帝は偉大であると。謳おう。我らは必ず取り戻せると」
望乃に合わせフーガも黄金のトランペットを取り出した。
「おいらは元々軍楽隊員。音楽で心を元気付けるのもおいらの役目……今はおいらだけの役目じゃないけど。へへへ」
少しでも皆の心に勇気と希望を灯せるようにと望乃もフーガも音楽を奏でる。
ルナは戦場にある武器を回収しながら聞こえてくる音色に耳を澄ませた。
相手に使われぬよう、此方が枯れぬよう。いくらあっても足りない物資を補うルナ。
その音色に勇気づけられた兵士達の士気が上がったのをルナやジルーシャたちも感じる。
「場は整えてやる。てめぇらで取り返してこい……」
ルナの言葉が戦場の喧噪に消えていった。
「もう誰も倒れさせない、死なせない……!」
祝音は痛みに苦しむ兵士達へ回復を施し、その守りをラダが受け持った。
「今の内だ、何とか立て直してくれ!」
「立って! 勝ちに行くんでしょう?! 振り向かずに、前へ、前へ!」
ラダの言葉にフラーゴラが重ねる。
「ほんと、やんなるわね!」
「力が増したような気配があります。お気を付けて」
エーヴェルトの攻撃を受け止めた燦火はリュティスの回復に「ありがと」と笑みを零した。
●
戦いは広がり、ジンジンと木霊する銃声の音が聴力を奪う。
ヴィダル・ダレイソンは獣だった。
戦いに明け暮れ、闘争を好み、其れを他人も強いた。
それでも、たった一人。ついて行きたいと思った男がいた。
ベルノ・シグバルソンの為ならどんな戦場であろうと戦い抜いてみせると。
「はっ……良いねぇ。戦いはこうでなくちゃあなあ」
血にまみれたヴィダルの瞳は鋭くシラスを睨み付ける。
お互い満身創痍だ。今すぐにでも回復しなければどちらかが死ぬ。
されど、両者の気迫に其れすら無粋に見えた。敵か味方かなんて関係無い。
それで殺してしまっても構わない。ヴィダルが欲しているのは正しく死闘。
「まだだ、とことん戦ろうぜ!」
「ああ……!」
骨が砕け、血を吐こうとも。獣鬼は止まらなかった。シラスも止まれなかった。
横から来る斧刃を腕の骨で受け止めたシラス。軋む骨と肉が激痛を伴う。されど、動きを止めた一瞬の隙をシラスは見逃さない。全身全霊を掛けた拳がヴィダルの顎を砕き、頭蓋にまで押し入る。
――ああ、強い。このクソガキは俺より強い。最高じゃあねえか!
自分より強い者と戦った末に、命を散らす事はどれだけ戦士にとっての誉れであろう。
だから、ヴィダルは満足そうに。口の端を上げて『次なる戦地』へ旅立った。
ルカとユビルは剣を数度打ち合い、火花を散らして、再び距離を取る。
ユビルの身体から禍々しい気配が増しているのにルカは眉を寄せた。
この器の少年を潰した所でバロルグ本体に影響があるとは思えないけれど、手駒を失えば多少なりとヴィーザルへの影響は抑えられるだろう。だから、容赦はしないとルカはユビルに剣を走らせる。
その戦いを傍で見ていたのはチックだ。
「……ユビルからは、前と同じ真っ暗な気配……感じる」
前回、ユーディアを助ける時にも感じた『恐怖』だが。
「でも、今度はもう……諦めたくない」
たとえ振り払われても、掴み続けたいとチックは手を伸ばす。
ユビルの中に居る悪しき存在を断ち切らんとチックとルカは力を合わせ攻撃を仕掛けた。
「バロルグ。この子は……君の器なんかじゃ、ない」
チックの叫びとルカの刃がユビルの身体を切り裂く。
灰色の雪に身体を飛び散らす器の少年。
「……ユビルを、リブラディオンの皆を。返して――!!!!」
チックが彼らしからぬ大声を張り上げた瞬間、ユビルの身体が黒い泥に包まれた。
ルカはチックを下がらせ自らを盾にする。
禍々しく光る赤い瞳の隻眼。紫灰の肌。人間を見下すような表情を浮かべた魔人がルカ達の前に現れる。
「はっ」
恐怖に震えるチックを鼻で笑ったその悪辣さ。
「お前は……!」
黒い瘴気を纏う魔人へ剣を向けるルカ。ユビルの中に居た悪鬼『バロルグ』がその姿を現したのだ。
「器ではなく、神たる我に剣を向けるか人間よ」
ルカとチックの首に影から現れた黒い手が巻き付き締め上げる。
此処で怖じけ付けば闇神であるバロルグに力を与えてしまう。ルカとチックは悪神を睨み付けた。
「善いぞ。もっと怒り喘ぎ恐怖しろ。その負の感情は我の糧となる。このアンデッド共の魂のようにな」
エーヴェルトが集めたリブラディオンの住民の魂を、喰らったのだこの『バロルグ』は。
ルカは歯を食いしばり首に巻き付いた黒い手を引き剥がす。
「……バロルグ!!!!」
その瞬間、ルカとチックを覆っていた悪しき手が消えた。
咳き込んだチックが視線を上げれば。愉しげに嘲うバロルグの気配だけが其処にある。
当のバロルグもユビルも消え失せて……また届かなかった悔しさに拳を握った。
されど、悪鬼が姿を現したということは何かを仕掛けてくる可能性があるということだ。
「次は絶対に逃がさねえ」
首に残った痕を擦りながらルカはバロルグが消えた場所を睨み付けた。
ラダは態勢を立て直した味方兵士達を見遣りシグバルドの元へ駆けつける。
これ以上の引き延ばしなどお互い望んでいないだろう。
「思い残しなどないようぶつかり合うといい」
ラダの攻撃の後ろからは百合子の拳が突き入れられる。
「どのタイミングで攻めに転じるかは以前十分ご教授して頂いた、ならば生者として成長したところを見せねば失礼であろうよ!」
連続で打ち付けられる百合子の拳にシグバルドの重心が揺らいだ。
されど、人間では大凡出来ぬであろう体勢から大斧が百合子目がけて飛んでくる。
「この程度」
セレマは百合子を庇いその身でシグバルドの斧を受け止めた。
灰色の雪の上にセレマの血が大量に散る。
瞬時にセレマの肉片は再生し元のカタチに戻った。
「セレマ、合わせろ! 打って出る!」
「分かった」
百合子とセレマは呼吸を合わせシグバルドを挟み討つ。
二人の猛攻にシグバルドの鎧が傷付き剥がれていく。
ミヅハは脆くなった鎧を更に討ち崩すべく、的確に弾丸で貫いた。
「魂、射貫く。狩人、本領。シグバルドの魂、ここ、無くても。見抜いて、射貫く……!」
シャノを守るようにシタシディを守護する精霊が力を貸してくれる。
シタシディの死生観として死した魂はカラスの翼に乗って彼岸の世界へ送られる。そこで末永く部族を見守っていくと伝えられているのだ。シグバルドのような偉大な戦士の魂は特に丁重に送り出すのがしきたりなのだという。されど、シグバルドがアンデッドにされてしまったのはこれを穢す行いだとシャノは憤る。
「魂、穢す。許さない。魂、眠り、必ず、守る」
シャノの矢はシグバルドの胴を射貫いた。何本も刺さった矢にシグバルドの動きが鈍る。
ゼファーはシグバルドを見上げ眉を寄せる。
此れは傀儡であって、本当の彼ではない。
あのひりつく戦いで何度も感じた死の予兆は今でも忘れれらない。
「……だけど、こいつは違う。全然違う。返して貰うわよ、『統王』シグバルドを」
決して天国に行けるタイプではないだろう。悪逆であった事も事実だ。
「其れでも。誰かさん達にとっては誇るべき……本当に大きな男だったのよ。巨岩の様に頑健で、獣の様に獰猛で、それでいて抜け目のない老獪さ……」
こんな風に己の槍で重心を崩すような戦い方をしなかった。
「決して善人ではないし、悪人と言えるぐらいだけど。あんな終わり方をするべきでもなかったし。玩具にされるべきでもなかった」
ゼファーの拳に力が入る。呼応するように槍から精霊の焔が吹き上がった。
シグバルドが本当に決着を着けるべき『好敵手』も他に居たはずなのだ。
されど、それも今は叶わぬ夢なのだろう。
「だからせめて――」
ゼファーは深呼吸をして槍を構える。
百合子とセレマがシグバルドを縫い付けるように攻撃を繰り出した。
「此の戦いに居合わせた私達に出来る、最高の葬送をくれてやりましょう。彼の世で爺さんが羨ましがる、最高の戦いでね」
シャノとミヅハの矢と弾丸が降り注ぎ、ゼファーのミシュコアトルの槍が赤く燃える。
「……おやすみなさい。また、いつか」
赤き焔を纏ったゼファーの槍がシグバルドの心臓に突き入れられた。
声を発する事も無く、暴れる事も無く、ただ焔を受入れたシグバルド。
燃え上がった巨体をミシュコアトルの槍が喰らい尽くし。
赤き粒子となりて戦場の塵と消えた――
●
アルエットは戦乙女の恰好で戦場で戦っていた。
その隣に現れたのはグドルフだ。
「オウ、嬢ちゃん。見ねえうちにズイブン様変わりしたじゃねえか。イメチェンかい?」
「グドルフさん……」
視線を落したアルエットの代わりにグドルフは戦場を見上げる。
「そういや、あの向こうに白い翼のガキが居るなあ。ちょいと前の嬢ちゃんにソックリだ」
黒い服を着た仮面の少女『エメライン』はアルエットの双子の姉。エーヴェルトによってアンデッドにされてしまっているのだ。助けて、と小さな声が聞こえる。
「……行きてえのかい? あいつの所に」
「うん。行かなきゃいけないの。あの子を救う為に」
翠の瞳は迷い無く真っ直ぐにエメラインを見つめた。
「ハッ、そりゃあいい。丁度暴れ足りなかったところだ。掃除ついでに道くれえは作ってやるぜ」
アルエットの背をバンと押したグドルフ。
その瞬間、さっきまでアルエットが立って居た場所へ弾丸が弾ける。
勿論、その隣に立って居たグドルフも無事ではないだろう。
直ぐさま回復をしなければとアルエットは身体を捻る。
「振り返るなよ。このおれさまを誰だと思ってやがる」
「グドルフさ……」
「いつだっておれさまは──最強だっただろうが!」
そうだ。グドルフ・ボイデルという男はそういうヤツだ。
前を向けと叫ぶ声にアルエットは振り向かず走り出す――
「死にたくないという声が聞こえる。ああ僕だってそうだ」
シュロットはエメラインの小さな声に耳を澄ませた。
「生憎と殺さない様に攻撃するなんて器用な事は出来ないから、こうする。どうかそのまま終わるまで倒れていてくれ」
シュロットの矢がエメラインの胴に突き刺さる。
「アンタがエメラインか……喋らねぇみてぇだが……まぁ。姉妹なら……わかっちまうよな?」
リュコスがアンデッド達を引きつけている間にジェラルドはエメラインへ言葉を掛ける。
ジェラルドは傍らのアルエットに視線を向けた。
「なぁ、ちゃんと理性は保てているか?」
「……うん」
震えるアルエットの手はエメラインを攻撃したくないという意志だろう。
その心を震い立たせるために、ジェラルドは自らの髪をバッサリと切った。
「ジェラルドさん!?」
突拍子も無いジェラルドの行動にアルエットは目を見開く。
「こっからが踏ん張りどころだ。アンタの覚悟、見せつけてやろうぜ!」
(アイツが決めた覚悟をウジウジ見てちゃあ男じゃねぇな。俺はアンタを信じる!)
「長い事伸ばして来たがまぁいい機会さ。アンタが戦えるってんなら……このぐらいなんて事ないぜ?」
命を張るという言葉を紡ぐのは容易い。されど、行動でしめさなけばならないのだとジェラルドは笑む。
「行きましょうジェラルドさん!」
「おう!」
――――
――
ロトはエーヴェルトの支配に苦しみ膝を着いたエメラインを抱きしめる。
このために、自分は此処へ来たのだとロトは気づきを得た。
「ごめん……! アルエット……皆……! 大事な時に護れなくて……!」
ロトの脳裏に過るのはリブラディオンの思い出、アルエット・ベルターナ達と過ごした日々、アンデッドになった家族のこと。アクアヴィーネ、アルエットと共に笑い合った。
腕の中のエメラインはエーヴェルトの支配に抗いながらロトを抱きしめる。
冷淡な筈のロトの瞳に涙が溢れ出した。
闇の眷属に操られ赤子のカナリーをサヴィルウスに落したのはロトだ。
覚えのない罪を突きつけられ、困惑し一度は逃げてしまったけれど。
此処へ戻って来た。エメラインを送るため。自分の中の記憶を取り戻すため。
「もう、大丈夫だよ……アルエット」
「ロトおにい、ちゃ」
魂とも呼べる残留思念が細切れの記憶の中にロトを見つけたのだろう。
仮面の下から涙が零れていた。
ロトの傍で祝音が唇をかみしめる。
「エメラインさん……」
彼女は本当のアルエットで、妹のカナリーの前で殺された。死後も苦しんでいる。
「苦しかったよね……もう、大丈夫だよ。みゃー」
エメラインもシグバルドも、アンデッドにされた皆も辛かっただろうと祝音は悲しげな表情を浮かべた。
「苦しかったよね……辛かったよね……おやすみ、なさい」
アンデッドにされた人達に癒しの祈りを捧げる祝音。
「彼等がもう二度と悪い奴に弄ばれないように。安らかに、眠れるように」
祝音やロトが願ったことでエメラインに変化が現れた。それは苦しみを伴うものだったが、その先の救済に繋がる道筋だっただろう。
「苦しめ続けたくない……」
リュコスはエメラインの元へ駆け手を握る。
時間をひっくりかえす事は叶わなくとも、その痛みを喰らい尽くしてあげたいとリュコスは願う。
「ぼくが苦痛をひきうけてもいい、どうか……」
リュコスの願いに重ねるのはミザリィとファニーだ。
「エメライン。……いいえ、アルエット・ベルターナ」
アンデッドとはいえまだ残留思念のような意志がある。それを踏みにじるわけにはいかないとミザリィは彼女の思考を読み取る。四音もまたエメラインに向けハイテレパスをかける。
『貴女の絶望と悲しみ、憎悪と怒りを私も知って背負います。貴女の妹がどんな風に頑張ってきたかも勝手に教えます。楽しい事も苦しい事も分かち合って。そう、貴女の心を助けにきました』
『妹……カナリー。死にたくない。うぅ……たすけ、て。カナリーを助けて』
四音とミザリィの中に流れて来たのは、エメラインが死んだ時の記憶だろう。
死にたくない。でもカナリーをたすけてと。必死に訴えかける思いが伝わってくる。
『ええ。大丈夫。妹さんは助かりましたよ。ほら、見てください、貴女の前に居るでしょう』
エメラインは顔を上げた。仮面の向こうに戦乙女の姿をしたアルエットが見えた。
美しいとエメラインは思う。生きて、生きながらえて。こんな風に戦乙女の姿を見せてくれた。
ファニーが狙うはエメラインの忌々しい仮面。
「せっかくの可愛らしい顔が台無しだろう? エメライン……いや、アルエット・ベルターナ! おまえの望みを叶えてやる!」
死者は生き返らない。それはファニーもミザリィも分かって居る。
それでも、僅かな時間でもエメラインに意志があるのなら。
彼女の魂を救ってやりたいから。
「アルエット・ベルターナ、貴女の望みはなんですか?」
「私は……」
エメラインが自らの意志で言葉を紡ごうとした瞬間、彼女の内側に掛けられた呪いが弾ける。
それは周囲を巻き込むようエーヴェルトによって仕組まれたもの。
アルエットとエメラインを同時に殺せるようにと。
咄嗟に動けたのは、一番近くに居てエメラインの意志を読み取れた四音だけだ。
四音はエメラインに覆い被さり、その身で全ての攻撃を受け止めた。
「あ、四音、さ……?」
アルエットは血だらけになった四音の元へ駆け寄る。
エメラインも四音と同等に粉々に肉片を飛び散らせていた。
「無事、でよか……た」
「四音さん……、四音さん!? しっかりして、四音さん!!!!」
アルエットの声が四音の耳に木霊する。
急速に体組織の制御が失われて行くのを感じた。
――ああ、アルエットさん、もう少し貴女と一緒に居たかったん、ですが。
●
「エーヴェルト!!!! 貴様ァ――!!!!」
声を上げたのはギルバートだ。怒りが戦場に満ちていた。
遠くからでも分かる四音の致命傷。
エメラインとアルエットを諸共破壊する為の策だったのだろう。
「しくじりましたか。最後まで使えない駒ですね」
その言葉にエーヴェルトの前に突撃したのはジェラルドだ。
怒りの形相で、大太刀をエーヴェルトに繰り出す。
エメラインの心に潜む悪夢、その元凶はエーヴェルトだ。
「不屈の太陽を甘くみんじゃねぇ!!」
ジェラルドの決死の一太刀はエーヴェルトの隙を作り出すに至る一閃。
この一太刀で、流れが動き出したとマルクは確信する。畳みかけるなら今が好機!
「エーヴェルト、君はラッセルを利用したつもりだろうけど、具体的にその成果って何だい?」
マルクの問いかけにエーヴェルトは苛立ちを覚える。
「ラッセルは命を賭けて君の懐に潜り込み、重要な情報を幾つも齎した。君は内通を『知っていた』けれど、何ら逆利用できていない」
その理由をおしえてあげようかとマルクはエーヴェルトを指す。
「シンプルで決定的な理由だ。君よりも、ラッセルの方が真摯で、賢く、勇気があったらさ」
マルクの言葉にエーヴェルトに怒りが満ちた。
「力ではベルノに劣り、知恵と勇気でラッセルに負けた。それが、君の器の限界だよ」
見開いた目に憤怒の気配が迸る。
紫色のオーラを纏ったエーヴェルトはその身体をメリメリと破り己の力を誇示するように巨大化した。
「貴方は、お母様が闇の眷属だったのですね」
「……」
リースリットはエーヴェルトの来歴について斬り込む。
シグバルドの出自は何れだけ調べても謎の一言に尽きる。実子ですら何も知らない。
噂だけはある。闇の眷属を滅ぼしただとか、ハイエスタの王家を潰したなどだ。
それが何故、調停の民との和平をベルノに一任したのか。
父姓を名乗らない訳も何かあるのだろうが、問おうにも本人が既にこの世には居ない。
「……貴方はどうして闇の眷属でありながら、シグバルドに殺されず見逃されて居たか、考えた事はあるのですか。……統王は血も涙も無い人ではなかったと言う事です」
「シグバルソンを名乗る事を許されていたなら、貴方は確かに彼にとって息子だったのだと思いますよ」
「王の判断より情を選んだのです、他ならない貴方という家族の為に……貴方を独りだと、惨めにしているのは貴方自身なのです」
ジュリエットとリースリットの言葉にエーヴェルトは苛立ちを増す。受入れられぬものには拒絶で返す。何処まで行っても人間的だとリースリットは魔種を見遣った。
元々は調停の民とも友好的な関係だったかもしれない闇の眷属が、何故こうなってしまったのか。
もはや因果を断ち切るより他ないのだろう。
「終わりにしましょう。奪ったものを、返して頂きます」
リースリットはエーヴェルトへ精霊剣を向ける。
エステルの怒りはやがて憐憫に至る。それは当事者でない事もあるが何よりベルノ親子らを知った事が大きいだろう。
「親は親では変われずとも、子や孫に変化を託せる。貴様は本当に馬鹿息子だということですエーヴェルト。本当に、無駄に悪知恵ばかり。その頭脳をもっと活かせたなら……あるいは英雄となれた未来さえあったでしょうに」
悔しげにエステルは槍を走らせる。
その横から誠吾が重ねるように攻撃を放った。エーヴェルトの動きが緩慢になり重心が揺らぐ。
「そちらがエーヴェルトか。我が腕を振るうに異論なし、我が義の為。そして友の為──覚悟されよ!」
ベネディクトは剣を取りエーヴェルトへと突き立てる。
紫色に染まったエーヴェルトの表皮にベネディクトの剣が走り、痛打を負わせる。
相手は魔種であり闇の眷属だ。強大な力を有しているとベネディクトは冷静に判断する。
「ギルバート、必ず勝ってまたヘルムスデリーで語り合うとしよう」
「ああ……」
ベネディクトの言葉にギルバートは頷いてディムナと共に連続剣を繰り出した。
息の合った連携はギルバート達だけではない。
リュティスとベネディクトもまた、寸分違わぬタイミングで攻撃を重ねる。
ベネディクトを支えるのもリュティスの務め。後ろで支えるからこそ見えるものもあるのだ。
「──一発ブン殴らせてください」
ボディの放った至近距離からの四十四口径百二十ミリ滑腔砲がエーヴェルトに炸裂する。
軋むように怒りはエラーを吐き続ける。
リブラディオンの住人が自分と同類(アンデッド)になっていることを知ったボディ。
穏やかであっただろう街は壊され、住んでいた人達の死の眠りさえ歪ませて。
「……ふざけるな。生きている命を弄んででも成し遂げたいことだったのか?
悪意で全部壊してでも叶えたい願いだったのか!?」
ボディはその剣に怒りを込める。
「ならば、そうであるのならば。私は、お前の行く手を阻む壁になってやる。
……進みたければ、超えてみろ」
割かれる腕が飛んで、エーヴェルトの重心が傾いだ。
「お前は愛されていたんだよ! お前が! お前の自信の無さが! 負い目が! それを裏切ったんだ!」
愛無はエーヴェルトに食らい付き身を食いちぎる。
「この阿呆が! この馬鹿が!」
魔種に堕ちたエーヴェルトはもう元には戻らない。だからこそ愛無はこの手で何もかも無かった事にしてやりたいのだ。最後はせめて安らかであってほしいから。
懸念はエーヴェルトが『器』になる可能性だ。奴はある意味『サラブレッド』だろう。
死体(ユビル)とて器たり得るのなら警戒しておくに越した事は無い。
ザラリと愛無の背筋に嫌な予感が這い上がる。
その予想は的中していると言わんばかりに闇の気配が濃くなった。
「今日の僕はついてるんじゃないか?」
愛無は予感は当たった。自身だけでは届かぬならば、仲間の手を借りる他無い。
「燦火君、一緒に抑えてくれるかね。奴に闇の気配が濃くなっている」
「なんですって……!? 確かに、言われてみれば」
愛無と燦火はエーヴェルトの足下へ走り二手に分れた。
燦火は魔種の足元近くに射出式態勢制御用ワイヤーを打ち込み、身体を真横に滑らせる。
愛無と共に旋回した燦火はエーヴェルトの脚を絡め取った。
「ぐっ、う」
「これは、アンタが今まで弄んできた命の分――全弾喰らってから逝きなさいッ!!」
この獣の命を終わらせる為に。怒りと覚悟を決めた燦火の突撃。
愛無もエーヴェルトの動きを止める為必死に食らい付いた。
「ベルノ様ッ! お前さんは好敵手じゃッ! だからこそエーヴェルトを討ち果たすんじゃッ!」
オウェードの言葉にベルノがウルフバードを持ってエーヴェルトに突き立てる。
ベルノの脳裏にジュリエットの言葉がよぎる。
愛らしいギルバートのお姫様かと思って居たのに、芯の通った強い女らしい。
――ベルノさんはエーヴェルトをどう思っていたのですか? これが最後になるのですから伝えるべき言葉は全部言うべきではないでしょうか。家族なのですから……。
「家族……そう、お前は俺達の家族だ。エーヴェルト。だから、ここでお前の悪を討つ!!!!」
同じ釜の飯を食った家族だからこそ討たねばならない。
レイチェルの背に翼が開く。エーヴェルトの想いを知ってしまったレイチェルは複雑な表情を浮かべた。
「──唯一の家族。母の為、か」
エーヴェルトは自分と同じだとレイチェルは憂う。
「俺は両親の顔を知らない。記憶の中の家族は妹だけだった。そして、復讐鬼になった。
……俺もお前みたいになってたかもな」
だからこそ、終わらせねばならないとレイチェルは瞳を上げる。
自らの命を対価に燃やし尽くす業火を繰る。
「今だ、俺に続いて叩き込め! 燃やし尽くせ――!!!!」
光があった。
全てを奪い尽くす雷神の権能。
神輝クラウソラスがベルフラウによって解き放たれる。
「雷轟を以て冬に終わりを告げよ。
遥か遠き帝都まで春の始まりを告げよ
今此処に我が身命を賭し雷霆の息吹を顕現させてみせよう!!!!」
天より広がる光の加護が、その刃がエーヴェルトを焼き尽くした。
一つの塵も残さず、雷神の光に焼かれ。
エーヴェルト・シグバルソンは消え失せた。
それは愛無が危惧した器の乗り換えの阻止でもあった。
イレギュラーズは魔種エーヴェルトに打ち勝ったのだ。
●
リースリットはギルバートを連れてエメラインの元へ駆ける。
エーヴェルトの策によって見るも無惨な状態になってしまったエメライン。
それでもギルバートは彼女が残した言葉を聞こうと耳を澄ませた。
ミザリィとファニーが願った想いは紡がれエメラインの言葉をギルバートに届ける。
『ギルバートお兄ちゃん。もう大丈夫だよね』
涙を流すギルバートの隣にジュリエットが寄り添った。
彼女が居てくれるならもう大丈夫だとエメラインも微笑む。
「ああ、大丈夫だ……長い間助けてやれなくてすまなかった」
『ううん。ありがとう。ギルバートお兄ちゃんの声ずっと聞こえてたよ。
……ねえ、ギルバートお兄ちゃん。まだリブラディオンの人達が囚われてる。パパもママも囚われてる。
「まさか……悪鬼『バロルグ』にか?」
エーヴェルトがリブラディオンで集めた魂はバロルグの中に囚われてるらしい。
『だから、助けて』
「ああ、必ず助けると約束する。……だから、もうおやすみアルエット」
――――
――
白い光の中で、アルエット・ベルターナが四音の両頬を包み込んだ。
「無茶な人……でも、ありがとう。私の妹をその大切な人達を守ってくれて」
「貴女は本当のアルエットさんですね」
四音はアルエットと同じようにその両頬を包み込む。
「あなた、もう死んでしまうわ」
アルエットの言葉にそのようだと四音は頷いた。四音は己の身体が崩れて行くのを感じる。
「でも、まだ妹の傍に居たいのでしょう。未練があるのでしょう?」
「そうですね。まだ見てない表情とかありそうですし。行って無い場所、感動した時の顔、想いを告げた時の言葉も聞きたいなと思います」
四音の言葉に、満足そうに微笑んだアルエット。
「だったら、私の身体をあげるわ。だから、必ず妹を守ってね」
「勿論ですよ」
ふわりと、満面の笑みを零したアルエット・ベルターナは白い光に包まれて消えた。
「……おんさん、四音さん! 四音さん!!」
ぼろぼろと涙を零し、解けかけた四音の胴にしがみ付くアルエット。
「死んじゃ、やだよお!!」
覆い縋るアルエットの下で四音の身体が急速に組み上がっていく。
「おや、私は死にませんよ、アルエット」
顔を上げたアルエットの目に飛び込んで来たのは、『自分と同じ顔をした四音』の姿だった。
「え……?」
「ほほう。元の姿にも戻れるみたいですね。どっちの姿にもなれると」
目の前で自分と彼女の姿を入替える四音に目を白黒させるアルエット。
「……ふふ、おはようございますアルエット。貴女のお姉さんですよ」
手を広げた四音にアルエットはくしゃりと顔を潰して泣きながら抱きついた。
闇の眷属エーヴェルト・シグバルソンは打ち倒された。
神輝クラウソラスの光は瞬き、北辰連合の戦士達に雷神の加護を与えた。
その力を以て北辰連合は帝都東部へ一斉に進軍する――
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
無事にエーヴェルトを倒しシグバルドを弔ってやることができました。
エメラインは妹(アルエット)を託して旅立ちました。
MVPは一番熱いプレイングだった方へ。惚れ惚れしました。
GMコメント
もみじです。エーヴェルト、シグバルド、エメラインとの決着をつけに行きましょう!
※本レイドの返却は、運営都合により通常よりも延長されております。シナリオ展開によって返却が行われますので、ご了承いただけますと幸いです。
●目的
・魔種エーヴェルトの撃破
・新皇帝派の制圧
・シグバルド、エメラインの撃破・回収
●ロケーション
帝都スチールグラード東部です。
新皇帝派の軍人とローゼンイスタフ、ノーザンキングス連合軍が正面から衝突します。
皆さんは味方が敵を押さえている間に本陣に斬り込みます。
もちろん、あえて味方の指揮を取り戦場を優位に進めても構いません。
●敵
○『憤怒の魔種』エーヴェルト・シグバルソン
ベルノの異母兄弟で闇の眷属です。
膨れ上がる嫉妬が怒りに転じた時、彼は魔種となりました。
リブラディオン襲撃を企てた張本人です。
シグバルド、ベルノの実弟ユビル、ギルバートの従姉妹アルエットを殺しアンデッドにしています。
何一つ許されるものは無い『悪』でしょう。
闇の眷属であると同時に魔種なので能力値は未知数です。
非常に強力です。注意しましょう。
○『黒仮面の少女』エメライン
エーヴェルトによってアンデットにされた『本当のアルエット』です。
生前はアルエット・ベルターナ。
現在はエメラインという名を与えられています。
基本的に喋りませんが「助けて」「死にたくない」と時折呟きます。
○『獣鬼』ヴィダル・ダレイソン
左目の大きな傷と屈強な肉体を誇るノルダインの戦士です。
戦いとあればその斧を振い、荒れ狂う獣のように戦場を駆け抜けます。
その戦い振りからハイエスタの間では『獣鬼』と恐れられています。
戦士の名に違わぬ臨機応変な戦いをします。
ベルノの為にヴァルハラに居ます。
エーヴェルトと戦い重傷を負っていますが戦いは好きです。
○『統王』シグバルド
大柄の全身鎧を着た漆黒の戦士です。
エーヴェルトによりアンデッドにされた『シグバルド』です。
巨大な斧を玩具のように振り回し、凄まじい威力の攻撃を仕掛けてきます。
ヴィーザルのまつろわぬ民を、個人の武威と恐怖のみでまとめあげたとされる人物です。
○ユビル・シグバルソン
ベルノの実弟。
瞳に光の無い少年です。
五年前のリブラディオン襲撃で死んでいます。アンデッドです。
戦闘能力はそこそこです。ですが、女神ユーディアが恐れる程の底知れぬ力を秘めています。
○新皇帝派の軍人(多数)
統率の取れた行動をする軍人達です。沢山います。
侮ってはいけません。彼らも生き延びる為に必死に抗います。
○天衝種『ヘイトクルー』×30
周囲に満ちる激しい怒りが、陽炎のようにゆらめく人型をとった怪物です。
人類を敵とみなすおそろしい兵士達です。
近接武器のような幻影による怒り任せの物理至~近距離戦闘を挑んで来ます。
○天衝種『フューリアス』×20
周囲に満ちる激しい怒りが、人魂のような形となった怪物です。
怒り任せの衝撃波のような神秘中~超距離攻撃してきます。
単体と範囲があり、『乱れ』系、『痺れ』系のBSを伴います。
○アンデッド(多数)
エーヴェルトによってアンデッドにされた数多くの人々です。
アルエットの実父母等、リブラディオンの住民も含まれます。
●味方
○『獰猛なる獣』ベルノ・シグバルソン
ギルバートの仇敵。
数年前のリブラディオンで、村を壊滅に追いやった首謀者と思われていましたが、真犯人はエーヴェルトだということが判明しました。
ノーザンキングス連合王国統王シグバルドの子。トビアスの父。
獰猛で豪快な性格はノルダインの戦士そのものです。
強い者が勝ち、弱い者が負ける。
殺伐とした価値観を持っていますが、それ故に仲間からの信頼は厚いです。
ポラリス・ユニオンはベルノ達の停戦共闘を受入れました。
現在の彼らの目的はエーヴェルトの撃破です。
○『強き志しを胸に』トビアス・ベルノソン
ヴィーザル地方ノルダインの村サヴィルウスの戦士。
父親(ベルノ)譲りの勝ち気な性格で、腕っ節が強く獰猛な性格。
ドルイドの母親から魔術を受け継いでおり精霊の声を聞く事が出来る。
受け継いだドルイドの力を軟弱といって疎ましく思っている反抗期の少年です。
ですが、死んだと知らされていた妹のカナリーと再会し考えを改めました。
守る為に全力で戦います。
○『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)
本当の名は『カナリー・ベルノスドティール』。
ギルバートの仇敵ベルノの養子であり、トビアスの妹。
母であるエルヴィーラの教えにより素性を隠して生活していました。
トビアスがローゼンイスタフに保護された事により、『兄』と再会。
本当のアルエットの代わりにその名を借りています。
戦乙女の姿で剣を取り戦います。
○『翠迅の騎士』ギルバート・フォーサイス(p3n000195)
ヴィーザル地方ハイエスタの村ヘルムスデリーの騎士。
正義感が強く誰にでも優しい好青年。
翠迅を賜る程の剣の腕前。
ドルイドの血も引いており、精霊の声を聞く事が出来る。
守護神ファーガスの加護を受ける。
以前イレギュラーズに助けて貰ったことがあり、とても友好的です。
一時は苦悩していましたが無事に帰還しました。もう迷うことはありません。
また皆さんとの絆により原罪の呼び声に強い耐性を得ています。
罪滅ぼしとでも言うかのように、懸命に戦ってくれます。
○ヘルムスデリーの騎士たち×15
ディムナ、ヴィルヘルム、セシリア、クルト、エーミル、クルーエル、ギルバートの両親、関係者など。
援軍に駆けつけました。イレギュラーズを援護します。
○ノーザンキングスの戦士×30
血気盛んなノーザンキングスの戦士達です。
ヴィーザルの各地から帝都へ集結しました。
戦とあらば士気は高いです。
サヴィルウスの戦士オレガリオや魔女エルヴィーラ、重傷のラッセルも居ます。
○ローゼンイスタフ兵×60
ヴォルフの命を受けて参戦しています。
イレギュラーズを援護しますので指示があればお願いします。
剣や槍で武装しています。
●騎士語りの特設ページ
https://rev1.reversion.jp/page/kisigatari
●排他制限
こちらのRAIDに参加した場合、他のRAIDには参加出来ません。
※ラリー形式のRAIDには参加可能です。
※人数少ないですが優先は全員入れます(最大30+10=40名向けのシナリオです)。
※複数RAIDの優先がある方(ルカ・ガンビーノさん、マルク・シリングさん、ゼファーさん、レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタインさん、リースリット・エウリア・ファーレルさん)のみ特別にこちらと他RAID両方に参加可能です。
※片方のRAIDに参加した後、運営にお問い合わせから連絡いただければ、両方に参加できる処置を行います。恐れ入りますがご連絡いただけますと幸いです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●特殊ドロップ『闘争の誉れ』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争の誉れ』がドロップします。
闘争の誉れは特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
行動場所
以下の選択肢の中から行動する場所を選択して下さい。
【1】最前線
最前線でローゼンイスタフ兵、ノーザンキングスの戦士達と共に戦います。
●敵
○『統王』シグバルド
○『獣鬼』ヴィダル・ダレイソン
○『黒仮面の少女』エメライン
○ユビル・シグバルソン
○新皇帝派の軍人(多数)
○天衝種『ヘイトクルー』×30
○天衝種『フューリアス』×20
○アンデッド(多数)
●味方
○『強き志しを胸に』トビアス・ベルノソン
○『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)
○ヘルムスデリーの騎士たち×15
○ノーザンキングスの戦士×30
○ローゼンイスタフ兵×60
【2】後方支援
傷付いた戦士達を介抱し、再び立ち上がらせるための後方支援部隊です。
ローゼンイスタフの兵たちが援護してくれます。
【3】本陣
敵の本陣に斬り込みます。
●敵
○『憤怒の魔種』エーヴェルト・シグバルソン
●味方
○『獰猛なる獣』ベルノ・シグバルソン
○『翠迅の騎士』ギルバート・フォーサイス(p3n000195)
特殊兵装
以下の特殊兵装を選択可能です。
繋がりが深い独立島アーカーシュから譲渡されたものです。
【1】特殊兵装は使用しない
特に特殊兵装は使用しません。
【2】軍用浮遊式蒸気バイク『ラウフェンブリッツ』
浮いて走るバイクです。
装備:二十一口径三十七ミリライフル砲ファルケンネイグル
能力:物攻+、反応+++、機動++
【3】軍用装甲蒸気スノーモービル『ヴァイスフリューゲル』
雪上の移動に優れる乗り物です。
装備:二十二口径砲黒槍(シュワルツ・ランツィーラー)(徹甲弾)
射出式態勢制御用ワイヤー
能力:物攻+、防技+、機動+、雪上高速移動可
【4】軍用自律機動装甲『グレンツェル』
使用者に付いてきて守ってくれる、大砲を備えた壁のような盾です。
装備:四十四口径百二十ミリ滑腔砲
能力:物攻++、HP++、防技++、HP鎧(中)
【5】バイオ兵器『フリッケライ』
クロム・スタークスが開発した四天王模造兵器。
一定のタフネスと物神両面の攻撃能力を持ちます。
スキル:物至単の剣撃、神超範の攻撃魔術
【6】ゴーレム兵器『AKSアームズ』
アーカーシュに多数存在するゴーレム兵です。
一定のタフネスと物神両面の攻撃能力を持ちます。
スキル:物至範のなぎ払い、神中扇のビーム
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