PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<夏祭り2018>オレンジ

完了

参加者 : 50 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 沈む寸前の西日は、波打ち際にきらきらとした光を投げかけていた。
「ん、ん~~……!」
 ひときわ大きな伸びをした後、ふと『駆け出し冒険者』アルテナ・フォルテ(p3n000007)は、手にした果実を夕日に重ねた。

 隠し切れない夕日の眩しさ。それから半分だけになった太陽と丸いオレンジの不釣り合いに、くすくすと笑う。
 数舜の後、自分の行動に少し気恥ずかしさを感じた彼女は、きょろきょろと周囲を見渡してから頬に手の平を添えた。
 ずいぶん遊んだものだが、これからどうしたものだろうか。

 何かに事件に追われる訳でもなく。自らの明確な意志で休息する。
 そんなバケーションは、遠い幼少の記憶にしかないから。
 休む時はしっかり休まなければ――などと言うナンセンスな命題を頭から振り払い、彼女は大きなあくびをした。

 いっそこのまま心地よい疲れに身を任せ、目の前のビーチチェアに座って飽きるまで海を眺めているのもいいかもしれない。
 とはいえ陽光に火照った身体もすぐに冷えてしまうだろう。
 ならば羽織る物でも持ってくるべきだったろうか。

 そんなことを考えていると、良い匂いがしてくる。
 近くの水上バンガローは、さっそく夕食の提供を始めたらしい。
 お腹の当たりから小動物の鳴き声のような音が聞こえてきて、アルテナはもう一度辺りをきょろきょろと見回す。
 割とお腹が空いていることを、彼女は初めて自覚した。思えば昼前から遊び倒して何も食べていない。
 手のオレンジを眺める。このまま剥いて食べるのもなんだか億劫に思えた。

 あそこで何か食べてから考えようかなと、アルテナは波打ち際をゆっくりと歩きだす。
 砂浜ではなく、わざと波打ち際を縫うように。
 のたりと揺らぐ波に、時折足元をさらわれそうになるのがなんだか可笑しくて、彼女はまた微笑んだ。

 先ほど気まぐれに買ったオレンジは、あそこで何かジュースかシャーベットにでもしてもらおう。


 水上バンガローに足を踏み入れれば。古い甲板を再利用した床の上で、サンダルが小気味よい音を立てる。
「いらっしゃい」
 料理人の声。
 喧噪。夕日の傾き加減に合わせるように、水上バンガローがやがやと賑やかになりつつある。

 既に何人かのイレギュラーズが、注文をはじめているようだ。
 調理場からは相変わらず、肉を焼く良い匂いが漂ってきている。

 水着姿のウェイトレスからタオルと羽織物を受け取り、とりあえずテラス席のほうへ行ってみた。
 透明な海に反射する夕日はどこまでも美しく――

 きゅう~。

 お腹空いたな。
 アルテナは小さな溜息をこぼし、チェアに腰かけた。
 さて、せっかくだから。誰かと一緒したい所ではあるが。

GMコメント

 遊び疲れた身体を休めるフェーズ。
 けれどそこでも遊んで、夜も遊ぶ訳ですよ。
 モヒートが飲みたいpipiです。

●目的
 夕暮れ~宵の浜辺でリゾートする。
 自由だ!

 自由と言われても困ると思いますので、ありそうなものを書いておきます。

●ロケーション
 沈む夕日。遠浅の砂浜。
 ゆったりとした波。
 食事を提供する水上バンガロー。
 そんな感じです。

 タオルや羽織物は貸してくれるようです。

 おひとり様でも、お友達同士でも、恋人同士でも。
 はたまたグループでも。
 ゆっくりお楽しみ頂ければ幸いです。

●プレイング書式
【グループor同行者ID】
【A】
本文

 上記の形式でお書きください。

例:
アルテナ・フォルテ(p3n000007)
【A】
ごはんたべるぞ!

●出来る事
 適当に英数を振りましたので活用下さい。

【A】夕方のバンガロー
 ディナータイム
 水上バンガローでお食事が楽しめます。

【B】夜のバンガロー
 バータイム
 オトナの時間。
 軽食やお酒が楽しめます。
 未成年の飲酒喫煙は出来ません。

 メニューはだいたい上に同じです。
 乾き物なんかもあります。

【C】サンセットビーチ
 ビーチチェアとテーブルがあります。
 提供される料理を持ち込んでも良し。
 もう少しだけ泳いでもよし。
 お散歩にも最適です。

【D】夜のビーチ
 沖のほうで花火が上がるようです。
 お散歩したり、ゆっくり景色を楽しんだり。
 ゆっくりお酒を飲むのもよし、ワイワイお酒を飲むのもよし。
 自由だ!
 水の中はちょっと寒いかも。

【E】その他
 夕~夜のリゾートなビーチで、できそうなことができます。

●おしながき
 適当に並べますが、他にもありそうなものはだいたいあります。

・グルーパー・フィンガーズ
 白身魚のフライに、たっぷりのタルタルソースを添えて。ビールが進みます。

・シチュー
 たっぷりのお野菜とスパイスで、温まるスープシチューです。
 お肉はヤギか牛が選べて、ベースのお味も違います。

・青菜の香味炒め
 お芋の葉を使った野菜炒めです。ココナッツミルクが決め手。

・ポークフライ
 名の通り。豚肉の唐揚げです。ライムを絞って頂きましょう。

・セビーチェ
 まずはさっぱりと、カクテルグラスに盛り付けた魚介と香味野菜のマリネを。

・タコス
 エビや豚肉なんかをお野菜と巻いて、がぶりと頂きましょう。

・ジャークチキン
 スパイシーな鶏肉料理。切って食べてもよし。ほぐして巻いても良し。

・ジャンバラヤ
 定番のお米料理。チョリソーと一緒に豪快にバクついちゃいましょう。

・ソパ
 トマトや玉ねぎが入った優しいコンソメスープ。キュっとライムを絞って頂きましょう。

・ポソレ
 おまめやホウレン草等の色とりどりなスープ。
 海で冷えた身体が芯から温まります。

・エンチラーダス
 たっぷりの具を巻いたトルティージャに、サルサとチーズをかけてオーブンで焼き上げます。
 やわらかなチーズと、ギュっと味がしみ込んでやわらかになったトルティージャがたまりません。

・ワカモレ
 トマトとアボガドという最高のディップ。
 トルティーヤチップスにたっぷりとつけて頂きましょう。

・チキンのチョコレートソース煮込み
 少し不思議な異国情緒があるお味です。

・デザート類
 トロピカルなフルーツの盛り合わせやケーキ。
 プリンなんかもあるようですよ。

〇ドリンク
・フレッシュドリンク
 しぼりたて。オレンジ、桃、レモン、葡萄等。色々あります。
 シャーベットにも出来たりします。

・サマーティー
 果物やハーブを混ぜた数種類の紅茶です。
 ミントとマスカットが爽やかな『緑』
 グレナデンの甘さと夏のお花がほんのり香る『赤』
 フレッシュな柑橘が爽やかな『橙』

・コーヒー
 浅煎りの薫り高いコーヒーです。
 提供はサイフォン式。
 そのままでも。ミルクを入れても。

・ビール
 瓶にカットライムを入れちゃいましょう。軽やかな味わいが楽しめます。

・カクテル
 だいたいあるようですが。そうですね。
 モヒート、カイピロスカ、キューバリブレ、フローズンダイキリ。
 マタドール。パナシェ、ソルクバーノ。
 マリブ、ロングアイランドアイスティー。
 あたりはいかがです?

・ラム
 サトウキビのお酒。人気です。ホワイトとダーク。
 カクテルベースにも。

●同行NPC
・『駆け出し冒険者』アルテナ・フォルテ(p3n000007)
 絡まれた程度に描写します。

  • <夏祭り2018>オレンジ完了
  • GM名pipi
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年07月29日 22時35分
  • 参加人数50/50人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 50 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (50人)

夢見 ルル家(p3p000016)
離れぬ意思
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
クロバ・フユツキ(p3p000145)
死神二振
ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
銀城 黒羽(p3p000505)
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
エト・ケトラ(p3p000814)
アルラ・テッラの魔女
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
トリーネ=セイントバード(p3p000957)
飛んだにわとり
シキ(p3p001037)
藍玉雫の守り刀
ブラキウム・アワリティア(p3p001442)
宿主
佐山・勇司(p3p001514)
赤の憧憬
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢
アルル・キャラハン(p3p001781)
鋼鉄の小姫
ティミ・リリナール(p3p002042)
フェアリーミード
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
セレネ(p3p002267)
Blue Moon
メルト・ノーグマン(p3p002269)
山岳廃都の自由人
アグライア=O=フォーティス(p3p002314)
砂漠の光
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
蜻蛉(p3p002599)
蒼き夜の隣
九重 竜胆(p3p002735)
青花の寄辺
ライセル(p3p002845)
Dáinsleif
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
神埼 衣(p3p004263)
狼少女
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹
アマリリス(p3p004731)
倖せ者の花束
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
星影 瞬兵(p3p004802)
貫く想い
最上・C・狐耶(p3p004837)
狐狸霧中
星影 霧玄(p3p004883)
二重旋律
ココル・コロ(p3p004963)
希望の花
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)
煌きのハイドランジア
剣崎・結依(p3p005061)
探し求める
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
ロク(p3p005176)
クソ犬
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
ミルキィマジック
イアン・フォン・ベルヌウェレ(p3p006209)
赤銅
ノエル(p3p006243)
昏き森の

リプレイ

● きらきらとした夕日に照らされた砂浜。

 両手いっぱいにお皿。たっぷりと盛られた南洋の食べ物を抱えて、ルル家はテーブルに着いた。
 どれも幻想では見慣れぬ物ばかりでご満悦だ。
「ものすごく美味しいですね!」
「美味しいのは分かったから食べながら喋らないの。ほら、口元も汚れてるじゃない」
 早速もぎゅもぎゅと食べるルル家の口元を拭い、やさしく窘める。
 師匠と慕われる竜胆ではあるが、どのか保護者然と見えるのは気のせいだろうか。
 ともあれ綺麗になった。また汚れそうではあるけれど、さておき。

「でも拙者は毎日食べるならお師匠の料理のほうが暖かくて好きですよ」
 ふと真面目な顔でそう述べ。
「……あー、もう! ホント、何処でそんな言葉を……」
「レオン殿がこういう場所では愛を囁くものだとおっしゃっていましたので……」
「って、レオンね」
 さもありなん。
「イイ? 愛を囁くって言ってもソレは基本的に異性に対してよ。
 まっ、暖かいって言ってくれたのは素直に嬉しいけど……ね」

 ――だから、ありがと。
「でも拙者、お師匠と出会えた事は本当に幸運だと思ってますよ!」
 それは。
「私もルル家と出会えて良かったって思ってるわ。
 偶にじゃなくて、結構な頻度でやらかすけれど、何だかんだ言って楽しいもの」
 互いの本心なのであろう。
「さぁ、お師匠!腹ごなしにひと泳ぎといきましょう!」
「ホント、仕方がない子ね」
 手をひかれ、呆れたように呟く竜胆だが、その声音はとても優し気で――

 夕日に海が煌いている。
 決意一つ。メルトが沈む夕日を目指すように泳ぎだした夏。
 夏と言えばサマー。
 まだまだ砂浜をエンジョイする少女の姿が見える。
 ドレッシーな水着に大きめのサングラス。
 バカンス中のセレブを思わせる出で立ちの狐耶だ。
 ハイビスカスを飾った青いドリンク片手に、そりゃもうエンジョイ。
 山のように用意された食べ物。海だけど。提供すること山の如し。
 手に取ること風の如し、食べること火の如し?
 いやいやセレブはがっつかない。林じゃない。そう。狐耶はセレブだから。

「トリッキー君、こっちのビーチチェア空いてるみたいだよ♪
 ふっふー、ここで海を見ながらデザート楽しもう☆」
 セイラー風の水着に身を包んだミルキィが愛らしい顔をほころばせて。
 呼ばれたTricky・Stars――稔が賛同する。
 友人。否、甘味を愛する同志たる二人である。
 食するはデザートのみ。はしたない真似など出来ようはずもなく。
「トリッキー君はデザート何を選んだのかな?」
「トゥッティフルッティのアイスクリームだよ」
「おー。ボクはね……じゃーん! プリンだよ♪」
 二人の探究心は尽きず。
「一口交換しよっ♪」
 食べ終えて浜辺を歩き出しても甘味の話題は尽きない。
「菓子と言えば、先日のイベントで頂いたミルキィ君の手作りクッキー。あれは美味だった」
「あ、あの時のクッキー気に入ってくれたんだ! 嬉しいな♪」
 稔は心からの礼を述べる。
「君の腕前は素晴らしい。舌の肥えた俺が言うのだから、間違いはないさ」
「よかったら今度新作スイーツ作ったときに味見お願いしてもいいかな?」
 同志二人の求道はこれからもずっとずっと続くのだ。

 いつもの青でなくオレンジに染まる波の眩しさに、セレネが目を細める。
 とても綺麗だと思った。
 だからだろうか。ちらりと見上げたライセルの顔はいつもと違って見えて。
「疲れたかい?」
 優しい声が返る。
「大丈夫です、疲れていません」
 この通り。そう言ってくるりと舞うと、浮き輪が軽快に鳴いた。

 一日遊んで、けれど名残惜しかったから、もう少しだけと歩いている。
 この日、この時間はもう二度とやってこない。
 だから二人は砂浜をゆっくり、ゆっくりと歩く。
「この時間は海も空も同じ色で、何だか不思議な世界に迷い込んだ気分になるよね」
「はい、綺麗なオレンジ色……キャンディーみたいです」
 ふと。触れ合う指と指。
「……きゃっ!」
 足がもつれたセレネの手を、ライセルが咄嗟に捕まえる。
 慌てた子猫のように離れようとする手を、けれどライセルは離さず。
「大丈夫?」
 優しく包み込み。
「あ、あの…」
 少女の頬を染めるのは、赤さを増した夕日のせいだけではないのだろう。
 高鳴る心臓に、余裕などはまるでなく。
「夕日が沈むまで――このまま、掴まえていても構わないかな?」
 セレネの小さな頷き。
 二人に芽生えた感情。まるで橙色の果実のような。


 砂浜を歩けば。
「……なんかいい匂いする」
 海面へと伸びる水上バンガローにたどり着く。さながら小さなレストランだ。
 ここで夕食にしようと、テーブルに着いた衣。
「メニューをお持ちしました」
 注文は、まずは夕日のようなオレンジジュース。そして。
「えっーと。店員さん。お肉いっぱい欲しい」
 メニューはどれも新鮮で。知らない料理、おしゃれな料理に悩みつつ。
 ソーセージに、店員さんオススメのヤギシチュー。ポークフライ。お野菜も一皿だけ。
 見た目は愛らしい少女のようだが、驚くほどの食べっぷりだ。
 お気に召したのはスパイシーなジャークチキンだろうか。
 夕方なのでお酒はまだにして。最後はデザートを頂くのであった。
 さておいくらか。お金の心配がない衣ではあるが、なかなか贅沢をしている。
 しかしなんとなんと。この日の衣達は招かれた客人。遊び放題に食べ放題だったりするのだ。

 こうして輝く夕日と共に、ディナータイムが始まった。
 海はこうして色々な楽しみ方があるから良いと、マルベートは思う。
 泳ぐのが楽しみの全てではない。いや、泳げない訳ではないのだ。断じて。
 彼女はお肉とワインに目がない、ちょっと悪魔のような見た目の可愛らしい少女なのである。
 ともかく。絶好のロケーションで夕食を楽しむのだ。
 前菜は山盛りのジャークチキンでお腹を目覚めさせ、良く冷えたホワイトラムを一口。
 それからポークフライ。ヤギのシチューはお肉たっぷり目でお願いする。
 デザートは……チキンのチョコレート煮込み。香り高いワイン煮のような感じで、好き嫌いは分かれそうだが悪くない。
 こちらはダークラムがよかろうか。

 さて、そんなバンガローへ。
 食い倒れに来たのは愛らしい魔女のエト。結依の片目に映る鶏さん。なぜか見ていると腹が減――もとい特別な感情を喚起されやすいトリーネ。【こけ】の面々である。
「ふふ、バンガローって初めて! 景色も食事も素敵なんて贅沢ね……!」
 そう述べたエトが、ゆったりと翼を広げるトリーネに微笑む。
「トリーネ、どっちがたくさん食えるか、俺と勝負しよう」
「ふっ……私と大食いですって? 負けないわ! こけー!」
 エトの視線の先ではトリーネは南洋風のスパイシーな味付けになったお魚のフライを頬張り、つぶらな瞳を輝かせ。
 結依はポークフライに齧り付きながらも、次なるジャークチキンを手に取る。
「チキン……」
 隣で早食いするチキ――トリーネを見るとなぜか食欲がマシマシに。
 そんな熱い、というか寒気を感じる視線を受けるトリーネであったが、気温はまだまだ高い。気のせいだろう。むしろ涼しくて丁度良い。

 という訳でエトは仲良くなった二人と親交を深めに来たのだが。
 目の前の二人が壮絶に食べるのである。付き合うのは少々荷が重そうだ。
 ならばプリンにフルーツを乗せてアラモードにしてみた。
 そっとに一口。フルーツの甘酸っぱさと、とろけるようなプリンのハーモニーがたまらない。
「あ、エトちゃんが食べてるの美味しそう! ちょうだいちょうだい!」
 優雅なエトを見ていると、ただでさえ美味しそうなプリンが三割増しぐらいに美味しそうに見える。

 そんなこんなでわいわいと。
 食べたり食べさせたり。パーティは続くのだ。

 水着姿のウェイトレスからタオルと羽織物を受け取り。
「へえ……リゾートって凄いなぁ! 至れり尽くせり。って感じだ」
 お礼を一つ。透けた麻の上着を羽織ったヨルムンガンドがゴリョウを招く。
「ご飯もとっても美味しそうだ、二人で全メニュー制覇して……お気に入りの料理探してみよう!」
「ぶははッ! メニュー制覇か? 良いねぇ、望むところだぜ!」
 いかにも出来そうなゴリョウ。抜群のスタイルからは俄に想像できないが暴食の竜たるヨルムンガンド。
「よし、じゃあ注文はメニュー全部でぇ……!」
 端から端まで、片っ端から食べつくしてやるのだ。

 オークフ……じゃない。ポークフライにライムを絞って頂けば。
「すごくおいしいな……!」
 なんだか目の前のゴリョウまで美味しそうに見えてきて。
「ぶははッ! おいおい勘弁してくれ、俺にライム絞っても良い香りがするだけだぞ?」
 取り合ったジャンバラヤに、おすそ分けのチョリソー。
「……えへへ、私のも分けるから許してくれ!」
 お肉も、お魚も、サラダも。このまま二人で全部頂いてしまおう。

『人生は メシが美味けりゃ 大体よし!』

 なのである。
 そんな二人が浴衣に着替え、大変な好評を博すのはもう少し後になってからだろうか。

 ――

 ――――

 思い切り遊んで、料理まで用意されている。
 優遇されすぎているようでドキドキしてしまうルチアーノである。大丈夫なのだろうか。
 たしかにこの歓待は海洋の期待であろうから、タダより怖い物はないとも言える。
 そういった事を、この柔和な男は苛烈な経験で知っているのだろう。
 けれど。
「遊び倒してお腹ぺこぺこだから、いっぱい食べるぞ~!」
 そんな風に楽し気なノースポールと一種に居られることは幸せなのだ。

 そんなポーが頼んだのはチキンのチョコレート煮込み。
 ルークはレモネードに、味わい深いスープ。ジャークチキンだ。

 恐る恐る口に運ぶと、ちょっとスパイシーでチリコンカンに近いだろうか。
「ルーク、凄いよこれ! ルークも食べてみて!?」
「凄っむぐぐ……!? た、確かに美味しいね……」
 香りに好き嫌いはあるであろうが、とてもおいしい。
 それよりなにより、あーんされたことに頬を染めるルークであったが。
「ルークの料理も美味しそう!」
 フォーク一口分のおすそ分け。
「いいの? ありがとー♪」
「は、はい、あーん……!」
 あーんとぱくり。
「んん~♪ こっちも美味しい! 大人の味って感じかも!」


「あの。ご一緒しませんか?」
 迷っているアルテナに、シフォリィは声をかけてみる。幻想蜂起ぶりだろうか。
「あ。シフォリィさん。うんうん、たべよ」
 結構混みあってきた所で、席はテラスに面した大テーブルが空いていて。
「相席頂いてよろしいでしょうか」
「構いませんよ」
 一人で食べるのもつまらないと思っていたアグライアは快諾する。
 さて。羽織物は貰ったものの、このままでは冷えてしまう。なにか暖かい食べ物が欲しい所だ。
「もう三名ほどご一緒の席となってよろしいでしょうか?」
「えっと……はい」
 そう促すウェイトレスの声は、丁度知り合いを増やしたいと考えるノエルにもうってつけだった。
 こうでもされなければ、なかなか難易度も高いものだ。

 礼を述べて椅子に座るシフォリィ達に。
「私はノエル。今はただのノエルです。どうか今後、宜しくお願いしますね」
「うん。私はアルテナ。よろしくね」
「シフォリィと申します」
 メニューを回していると。
「おいっす」
「こんにちは。アルテナさん……で良かったかな? 隣、いいかな?」
「うん。一緒にたべよ」
 勇司にサクラに次々と。
「そっちは何を食べるか決めたか?」
「そうね。これにしようかな」

 程なく並んだのは暖かなスープにグルーパー・フィンガーズ。ジャンバラヤ。それからシチュー。
 大したメニューだと勇司は感心する。
「良ければ色々と教えていただけませんか?」
 ノエルにとって、生憎と初めて見る料理が多くて。
 彼女の言葉に勇司が腕を組み、詳しくはないと述べた上で解説してみる。
 勇司としても少しでも覚えられたら、自分で作ってみてもいいと思っていた所だ。スパイスの使い方が鍵になるだろうか。
「おひとつどうでしょう?」
 ならばと促すシフォリィに、アグライアも優しい味わいのバタード・キャラルーを提供する。
 海洋と言うと魚介のイメージが強かったが、野菜料理もあるのが彼女にとってはうれしい所。
 大皿をみんなで分け合うのも楽しいものだ。

 水平線の向こうに沈む夕日が眩しくて、魚のフライを取り分けるシフォリィの手が止まる。
 視界の全てを黄金に染める太陽の残滓が美しかったから。
「海って初めてきたけど、楽しいねー。天義にいた頃はこういうバカンスとは無縁だったよ」
 そう述べるサクラ。
「実は私も海って初めてだったの」
 所で。
「アルテナさん……すっごくスタイルいいね!」
「あの」
「触って良い? 駄目?」
「ちょっと。ええええ」
 迫る少女の指先に、思わずのけぞり、なぜかシフォリィに助けの視線を求めるアルテナ。
「駄目かー」

 さて。皆でデザートを食べ、アグライアが爽やかな夏の紅茶を飲み終えた頃。もう少しすれば花火の時間だろうか。
 一同が席を立つ。今の内から良い場所を確保しなければ。


 満天の星空を花火が彩り始めた頃。

「いやー……」
 心地よい振動に身を任せ。アランは一人、ダークラムのグラスを傾ける。氷が澄んだ音を立てた。
 去年はかの大規模召喚で、夏を満喫するなどという空気ではなかった。
 それに引き換え、今年は良く遊んだものだ。海の家で働きながら、遊べそうな所を軒並み梯子したといっても過言ではない。
「にしても焼きそばが結構好評だったなァ……」
 明滅する花火の煌きが、アランの頬を微かに照らす。ほんのりほろ酔いか。
 海の家の収入は、ほとんど立ち上げの借金と闇市に消えてしまったのだが。
 オッサンのパンツとか、誰が売り物にしたのだ。

 さて。
 独りで飲むのもそろそろ寂しくなってきた頃。
 賑やかな席に移動してみるのも悪くないと、アランは席を立つ。
 酔っぱらったオッサン扱いされぬよう、気をつけねばなるまい。
 一応。まだ二十四歳ではあるのだ。

 可憐な浴衣姿でダイキリを片手にテーブルに着いたクロジンデ。
「あてはこのエンチラーダスってのにしてみよー」
 唐辛子のソースが掛かった料理をつつきながら、彼女はメニューを見上げた。
「あたりまえだけど、国が違えば料理も全然変わるよねー」
 幻想国には無い料理の数々が並ぶが、酒は知っている物も多い。
 後学の為にとりあえず。
「メニューこっからここまで全部ねー」
 ダイキリを飲み干し、次に選ぶはミント香るモヒートか。

「ふっ、たまには一人過ごすのも悪くはないです」
 グラスを傾けながら四音は一人呟く。勿論グラスの中はオレンジジュースだ。カクテルを飲んでいる風だがオレンジジュースだ。大丈夫。問題ない。オレンジジュースであれば。
 小麦色の肌に白い水着。片手にグラス。絵になるだろう。物語に発展する予感もあるだろう。
「駄目駄目、私は物語を楽しむ方なんですから」
 そう、できれば可愛い女の子が恥じらう姿なんかを……。
「アルテナさんの所に行きますかあ!」

 大量の料理をテーブルに並べたイグナートはそれらを食みながらビールを煽った。
 良い飲みっぷりにアランが感嘆する。
 四音に。ブラキウム・アワリティアに。アルテナに。人が人を呼び、イレギュラーズ達が集まってきた。

「たまにはのんびりしても罰は当たらないさね」
 うんと伸びをしたアワリティアはカクテルを舌に転がした。
「偶にゃ、作ってもらうのも悪くないねぇ」
 ギフトでこっそり料理を増やしつつ、腹を満たしていくアワリティアにブラキウムは苦言を呈する。
『我が契約者殿が満足ならばいいがな』
 そこへ通り掛かったアルテナにアワリティアは声を掛け。空いた席に誘った。
「まぁ、良ければ一杯どうだい?」
「ありがとう。ちょっと喉が渇いていた所なの」
 夏の宵に小さな出会いが灯れば――

「改めてカンパーイ! じゃあ今からヤシのミを握りツブすイッパツゲイをやるよ!」
 やんややんやでヤシの実を持ち上げたイグナート。
「なんならヤシのキを根元から抉りトレるよ!」
「はははっ!」
 思わず笑うアラン。イグナートのムーブは完全なる酔っぱらいだ。

 夜風と共にバンガローへやってきたイアンは端の席に座りメニュー表に向き合った。
 始めはビール。この小腹具合はタコスも入るであろう。
 初めてキンキンに冷えたビールを飲んだ時は驚いたものだが。今となってはぬるいエールよりも喉越しが良い様に感じるから不思議なものである。
 腹を満たしたところで、パフェをひとつ。大の男が甘味を頼むのは勇気がいるのだ。
 仕方ない。そうギフトを使うのもやぶさかではないのだ。

 夜の海に浮かぶ星空と民家の灯りはぽつりぽつりと揺らめいて。
 そこに広がる幻想的な景色にヘイゼルは、ほうとため息をついた。
「おや、こんな夜半なのに船が見えると思いましたら」
 夜空に咲く大輪。七色に光る花火がヘイゼルの瞳に映る。
「ふふふ、綺麗ですね」
 丁度いい感じの岩に腰掛けて、バンガローから貰ってきたスープと鶏肉を手に花火を楽しむのだ。
 ゆるりゆるりと夏のひとときは過ぎて行く。

「夜の浜辺ってのは中々幻想的だな。水平線の上からだと月がよく見える」
 ぽつりと呟いたクロバの声にエリーナが頷く。
「夜のビーチも静かでいいですね」
 耳に揺れる漣と砂を踏む音だけが聞こえてくるから。
「しかしその水着似合ってるな」
 白い水着と薄紫のパレオはエリーナの肢体を華やかに彩っていた。
 頬を染め「ふふ、ありがとうございます」と紡ぐ彼女の声に花火の音が重なる。
 次々と打ち上がる花火に目を輝かせるエリーナは、ふと隣のクロバへ問うた。
「……そういえば、クロバさんのいた世界にも花火はあるのでしょうか?」
「花火か……あれみたいな派手なのもオレの世界にはあったぞ。あとは線香花火っていう小さいのもな」
 妹と灯した小さな思い出を辿り。
 この夜空の大輪が咲き終わったら、小さな雫を灯してみるのも良いだろう。

 夏の夜は長いのだから――


「浜辺の方に行ってみませんか? 花火があがるらしいのです!」
 跳ねるようなココルの提案に。
「勿論行くよっ!」
 この浜に来た目的の一つが、この花火だったのだから。
 そんなこんなで、先ほど丁度相席になったココルとアリスが砂浜を歩き出す。

 煌く光の羽をはためかせ、ココルは舞うように――
「だ、大丈夫!?」
 こけた。
「はい!」
「駄目だよー、暗くなってるんだから足元に気を付けなきゃ……」
 砂を飛び散らせながら元気よく顔を上げたココルの視線の先で、光が今、花開いた。
「わあ……」
 遅れて胸の奥深くに響く、重く低い音。
「――綺麗」
「すごいのです!」
 ならば。
「行こう――もっと高く、あの花火がもっと見える場所まで」
 だから二人は手を取り空へ。
 もっとあの花火の近くまで――

「間近で見ると大迫力なのです!!!」
「えへへ、そうでしょ?」
 炸裂する花火が投げかける光が二人の姿を夜空に照らす。
 この席は、妖精と魔法少女に許された特権なのだろう。
 綺麗で、迫力があって、胸に響く。だからアリスは花火がすごく好きなのだ。
「アリスさん、ありがとうなのです!」
「どういたしまして、ココルちゃんっ!」
 それから。
「良ければまた一緒に見に行こうね?」
「はい!」

 そんな夜空の下。
 夜の砂浜を歩く二人。
 潮風で錆びぬよう、刀袋に真なる己自身を入れて。
 ティミはシキの手をとり波打ち際、海のほうを歩く。
「夜の海は冷たいですね」
「……そうですね」

 寒く、ないですか?

 笑顔のティミに、ふと問うシキの顔を眩い光が白に、赤に、黄色に染める。
「ひゃわ!?」
 重い音が響く前に、シキは鯉口を切っていた。
「……花火でした」
 そう言うティミは、シキの背にしがみつくようにしていた自分に気付いて。少し慌てて。頬を染めて。
「……あれが、花火……大きな音、ですね」
 そんなティミの頭を。
「大丈夫ですよ」
 シキはそっと撫でた。

「――あ」
 続けて上がる花火の光が、浜辺の桜色を浮かび上がらせる。
 小さな貝殻だ。
 拾い手の平に乗せると、再び花火の明滅が照らし上げる。
 僕と私にとって――特別な花。桜。
「……これ。……リリーさんに、あげます」
 特別な人に持っていて欲しいから。
「これ……」
 あの日。冬の砂浜で見つけた貝と同じ色。
「ありがとうございます。嬉しいです」
 オレンジの空は、いつの間にかディープマリンに姿を変えて。
 桜色の貝殻を照らす花火は。
 綺麗で、苛烈で。

 まるで――すらりと美しい刃(シキ)のように。

 ――

 ――――

「今日は沢山遊んだな」
 ほっと一息つける時間だ。
 微笑むポテトの手を優しく握り、リゲルはゆっくりと夜の浜辺を歩く。
 おかげで泳げるようにもなったと嬉しそうなポテトの顔を、天を舞う花火の煌きが照らして。
 海と夜空を覆う光の乱舞に、二人は思わず息を止めた。

「わぁ……花火、凄いな」
 降り注ぐ光の滝のように。ひと際大きな花火が空を覆い。
「あ、今までより大き……」
 やわらかな感触に、ポテトが目を見開く。
 ――驚きと、胸に染み込むような甘い感情に頬を染めて。
「びっくりした……!」
 そう言いながらもやわらかに微笑んで。
 そんな表情が見たくて。愛おしくて。リゲルもはにかむ。
「もぅ! 仕返しだ!」
 頬に口づけを返して。デモニアを殺す死力の聖剣も、やはり彼女には敵いそうにない。
「寒くはないかい?」
 冷えてきた身体に、そっとパーカーを羽織らせて。
 少し大きいが、残る暖かな体温が心地よい。
「ぶかぶかだろうが、こんなアンバランスさも似合っているな」
 腕を伸ばして袖先をゆらすポテトの頭を、リゲルはくしゃりと撫でて微笑む。
「アンバランスだと可愛いのか?」
 きょとんと首を傾げるポテトの手をもう一度やさしく握り。
 さて。
 だいぶ歩いたから。あのバンガローで良く冷えたオレンジジュースでも飲もうか。

「……これが、海ですねっ」
 初めての海に笑みを浮かべるアマリリスの横で。久しぶりの海にシュバルツも高揚を隠せない。
「しかも花火も上がってるとは、中々に贅沢な光景じゃねぇか……」
 見上げるアマリリスへ向けて。
「よっ!」
 波を両手にひとすくいして放ってやる。
「わぷ!? 冷ッ!?」
「はは、冷たいか」
「な、なにするんですか!! 相変わらず、いじわるですね……!! もう!!」
 頬を膨らませたアマリリスは、けれどいたずらっぽく微笑んで。
「おっと!」
 シュバルツを抱きしめるように捕まえた。
 打ち寄せる波が二人の足先を濡らして、シュバルツはしなやかな身体を抱き留める。

「海洋は素敵な国ですね」
 そうされたまま、アマリリスがふと呟いた。
 大海原に、高い空に、暖かな空気。そして恋人もそばに居る。

 このまま時が止まれば良いのに――

「あぁ。俺もそう思うさ……」
 だが残念ながら、時というものは過ぎ去るもの。
 楽しい時間もいつかは終わる。
「いつか終わる、ですか……」
「だから、終わっちまう前に、悔いが残らねぇ位、今をめいいっぱい楽しもうぜ?」
「それが、命令であれば、理解しました」
 そんな様子に苦笑一つ。
「ほら、次はあっちに」
「はわ、お待ちになってシュバルツ。いいえ、リヒト・リッケンハルトさま」
「ん?」
 重なる影と影――頬に柔らかく触れる唇の感触。
「………粋な事しやがって。お返ししねぇとな?」


 リネンのシャツにチノパンツ。
 リゾートスタイルの寛治がグラスを傾けた。
 彼の人生の半分以上をホワイトオークの中で過ごした酒が、アーモンドにバニラ。それからナッツ。
 視線をあげると、一人空を見つめる女性が目に留まる。
 風になびく髪と、ゆったりとしたワンピースが美しくて。
「よろしければ一緒に飲みませんか?」
 つい声を掛けた。
「ああ、失礼。私はファンドマネージャの新田と申します」
「あらぁ、いいわよぉ?」

 重なるグラスが澄んだ音を立て。
「カクテルがお好みですか?」
 それなら少々心得があるから。
「あらぁ、貴方が作ってくれるのぉ?」
 それならこの雰囲気に合う一杯をとアーリアが願う。

 ウォッカ。メロンリキュール。フランボワーズ。パイナップルジュースをステアでなく、あえてハードにシェイクする。
 更にそれをロックアイスでなくクラッシュドアイスを詰めた銅のタンブラーへ注いだ。
「夏向けのカクテルだと思います」
 あえて通常レシピでなくアルコールの主張を徹底して抑え、人を蕩けさせる魔性のスタイルで提供する。
「美味しいわぁ……!」
 甘酸っぱい果実が香しく。
「なんて名前のカクテルなのぉ?」
「名前を口にするのは、少々憚られるのですがね――」
 セックスオンザビーチと囁き。
「それはお誘いを受けているのかしらぁ」
 そんな大人の夜の駆け引きを、夜空の煌きが包み込んで。

 そんなバンガローの外。薄明りの砂浜。
 雲を流す涼やかな夜風に、十夜は嘆息一つ。
「花火には風がいりますよって」
 煌く夜空の透明な濃紺に、花火はひと際良く栄える。

 カクテルを片手に砂浜を歩けば。
「せっかく綺麗な格好してるのに、もったいないねぇ」
「ひやこて、気持ちええよ?」
 波が裾を濡らすのも構わずに。素足で波打ち際の砂を踏みしめる。

 空を覆う光の乱舞。
 僅かに遅れて胸に、重く響く音。

「ねぇ……花火見ると切なくならん?
 咲いたと思たら消えてしまう」
 ふとした蜻蛉の呟きに。
「……切なくなるから、見たくなるのさ」
 十夜が天を仰ぐ。
 刹那の光が二人の頬を照らして。
「永遠に続くモンはねぇのを思い出して、今を大事にできる。
 忘れられねぇ未練がましさも、全部花火のせいにできる」

 それならいっそ――蜻蛉は想う。

 花火と一緒に消えてなくなって欲しい。
 それともそれは――強がりなのだろうか。

 立ち止まる蜻蛉に、十夜はおっさんの自論だと笑いグラスを煽った。
 ジュニパーベリーとアンゼリカが鼻腔をくすぐり。冷たく鋭い北国の風と共に、熱が身体の中に落ちてくる。

 ――どうしようもない人。

 二度目の呟きは、寄せ返す波の音にさらわれて。
 真夏の夜風はなぜだか、艶やかなスミレの香りがした。

 ――

 ――――

 夜の砂浜でデートの誘いを受けたクリスティアンが辺りを見回す。
 彼女とは良く遊ぶ仲だが、改めてデートと言うと、なんだか胸が高鳴るものだ。
 ともあれ、女性を一人待たせる訳にはいかない。

 と。遠く佇む影に。
「あ、見つけた! おーい!」
「あっ! 王子待ってたよ!! こっちこっちー!!」
 楽し気な彼女の誘いに、クリスティアンは颯爽と駆けだす。
「待たせてしまってすまないね! 今そちらに行くよ!」
「あははは!」
「ウフフフ!」
 月明かりの下で戯れる影と影。
 クリスティアンがロクを追う。
「さあ、わたしを捕まえてみせて、王子!!!」

 駆けるロクがひときわ高く飛び――
 それを追うクリスティアン。神々しささえ感じさせる水着を纏う、その姿が――突如掻き消えた。

 振り返ったワンちゃん。もといコヨーテは想うのだ。
 浜辺で単なる追いかけっことか、絶対つまらないと。

 深い。深い落とし穴を覗き込みながら――


成否

成功

MVP

クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子

状態異常

クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082) [重傷]
煌めきの王子

あとがき

 依頼お疲れ様でした。
 リゾートをこれからの活力として頂ければ幸いです。

 MVPは『オチ』を担当された方へ。

 それでは。
 またのご参加を心待ちにしております。pipiでした。

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