シナリオ詳細
<Jabberwock>この世界を守るために
オープニング
●滅亡は空を泳いでやってくる
遠く。塔が傾き倒れるのを見た。爆発が連続し、黒い煙があちこちにあがるのを。
「どういうことだ? マザーの暴走騒ぎは済んだはずだろう」
緋翠 アルク(p3p009647)が道具屋の店先へと出て空を見た。
錬金術機材が手に入りやすいからと訪れていた探求の塔に亜竜たちが群がり、振り向けば『実践の塔』、『想像の塔』も同時に亜竜の群れに襲われていた。
あちこちの路上からミサイルタレットがせりあがるも、その殆どは故障しているかそもそも動きもしないものばかりだ。
「ワイバーンの襲撃……いや、ドラゴンか!」
またも振り向くと、中央のタワーを複数のドラゴンが襲撃し、希望ヶ浜地区やその他セフィロト重要施設へと飛んでいくのが見える。
外見の大きく異なるドラゴンたちだが、見ただけでそれが圧倒的な力をもつ存在であることがわかる。個人の力で太刀打ちすることなど、到底不可能だということも。
「みなさーーーーん! 無事っすかーーー!?」
アムタティ・エンリベール(p3p010077)が落ちてくる瓦礫をよけながら、両腕にネコや鴉を抱えて走ってくる。普段から一緒にいる三毛柄のネコのみならず、その辺で仲良くなったらしい野良猫たちを山のように抱えてだ。
「今からシェルターに行くっす! この子達も! 一緒に! シェルターにー!」
シェルターを二回言った。だいぶ混乱しているらしい。
「みんな完全に怯えてるっす。マザーが暴走したときの比じゃないレベルっすよ」
そんな彼らの頭上に、翼を羽ばたかせたワイバーンが襲来した。
鋭い牙をむき出しに、弦楽器を滅茶苦茶にひっかいたような耳障りな鳴き声で叫ぶ。
咄嗟に身構えたアルクとアムタティだが、全く別の方向から飛来したサンショウオ型の魔術構造体がワイバーンへと激突。悲鳴のような声をあげ、ワイバーンは墜落した。
「離れて! トドメをさすっ」
駆け寄ってきたトスト・クェント(p3p009132)が小さな杖を振り、さらなる魔術を形成。かわった形状の魔方陣から先ほどのようなサンショウオ型魔術体が放たれ、放物線を描き群れを成してワイバーンへと降り注ぐ。
暴れ、振り払おうとするワイバーンへと大きく飛び上がったのはブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)。高く振りかざしたグレートメイスの重量をそのままに、ワイバーンの頭部を思い切り叩き潰した。
「練達じゅうがこんなので一杯なのですよ! 住民も復興活動中でしたから、避難がおくれてるです! 今、ローレット全体に向けて依頼受領の知らせがあったです!」
スマホの画面をピッと見せつけるブランシュ。
ちょうど同時に、アムタティやアルクへと専用伝書鳩が飛んできた。カプセルに入っていたメールテキストは、ブランシュが表示して見せたのと同じものだ。
――練達国にて、怪竜Jabberwock襲来。
●
「おりゃー!」
たこ焼き型の手榴弾を放り投げる道頓堀・繰子(p3p006175)。
突撃してくる人型の亜竜モンスターたちめがけ粉が舞い、自動着火による爆発が起きる。
「ちょっぴりお茶目な暗殺者、グリコちゃん参上! 復興中たぁいえ再現性歌舞伎町はうちのシマやか――らぁ!?」
そんな爆発をも抜けて突っ込んできた亜竜人兵(デミリザードマンウォーリア)は骨でできた剣を作りだし、繰子へと斬りかかる。
顔面を狙った一撃を、しかし繰子は隠しホルスターから素早く抜いたカランビットナイフを指でくるりと反転させ、逆手持ちにして剣を受け止めた。
「せめて! 台詞を! 最後まで!」
聞けやぁ! と叫びながら相手に膝蹴りを入れ、流れるような喧嘩キックで亜竜人兵を突き飛ばす。
よろめくも倒れない亜竜人兵。そこへ白鳳 山城守 楓季貞(p3p010098)とエーレン・キリエ(p3p009844)が全く同時に襲いかかった。
青き鞘から抜いた刀が、踏み込みと同時に抜刀され燕が中を返るような閃きを残し再び鞘に収められる。
エーレンの刀は亜竜人兵の腕を切り落とし、更には首筋に深い切り傷を刻んだ。
その血しぶきが上がるよりも早く、楓季貞の白い鞘から抜かれた刀が相手の脇腹を抜けて切りつけられ、バランスを崩した亜竜人兵は転倒。血しぶきを今度こそ吹き上げる。
刀を抜き放った姿勢のまま、見栄を切るかのように残る亜竜人兵たちを楓季貞はにらみ付けた。
「緊急の用と聞いて駆けつけてみれば……これは如何なる動乱ですか」
「もしや、噂に聞く亜竜の軍団というやつかな」
次なる術を構えたまま、周囲を観察するエーレン。
「なんでもええ。むつかしーことは偉い人等が考えるやろ。ンなことより」
繰子はナイフを構え直し、膝のホルスターからピストルを抜いた。
「かかった火の粉は払いのける。請けた仕事はキッチリこなす。
つまりはシンプルに、『ブッコロ』や!」
●
大空を舞うワイバーンの群れあえて無視し、ルブラット・メルクライン(p3p009557)は嘆息した。
個々人にあわせた方法でローレットへ一斉送信されたメールテキストによれば、こうだ。
「練達へ襲来したJabberwockは、複数の竜と大量の亜竜で構成された軍勢を引き連れセフィロトを襲撃。
マザーの暴走に始まる一連の騒動によって防衛能力を著しく欠いた練達国は、このまま行けば竜に蹂躙される」
手紙を読む手を止めぬまま、ルブラットは懐から抜いたメスをシュッと投げた。
建物の影から飛び出し襲いかかろうとしたドレイク(四足の獣めいた亜竜)の喉へとメスが突き立ち、泡を吹いて倒れる。
「練達三塔主及びマザーより、ローレットへ救援依頼が寄せられ、これを受託。受託した時刻をもって、ローレットは人数枠無制限で練達に入り込んだ亜竜の群れを撃退せよ……か」
毒を無理矢理克服して起き上がり今度こそ飛びかかるドレイク。
が、すっ飛んできた暁 無黒(p3p009772)のムーンサルトむくろキックがドレイクの顔面をへこませ、そして地面へと今度こそ崩れ落とした。
「おまえかーーーー! おまえっすかーーーーー! 俺の収録データのバックアップサーバーを壊したのはーーーー!」
一難去ってまた一難。マザーの暴走諸々によってネットワークが破壊されPCライフが破壊された無黒は、再び訪れた練達崩壊の危機に怒りを再燃させていた。
のけぞるほどの勢いで頭を抱え、実際首ブリッジ姿勢になって叫ぶ。
「やっ――――っと元の生活に戻れると思った矢先に! これっすか! ゆるせねー! ドラゴンゆるせねーっす!」
「以下! 同文っ!」
天閖 紫紡(p3p009821)が絵になるほどキリッとした顔で無黒の横に並んだ。
長袖のジャケットを羽織っていたが、スッと開くと『←右に同じだ』と書かれたシャツがあった。台詞と顔とシャツが一致していないせいで脳がバグったのか、後に続くドレイクの群れがジトッと足をとめる。
紫紡は謎の早き替えで美しい衣装へとチェンジすると、抜いた刀に冷気のオーラを纏わせる。雪結晶のようなエフェクトを散らす刀身から鋭い斬撃を放つと、ドレイクたちの足元を凍らせ動きを更に鈍らせた。
「馴染みのTシャツショップが……物理的に潰れた恨みっ! ここで晴らさせて頂きます!」
亜竜の群れは練達全域といっても良いほどに伸びていた。
それは、常識の結界で守られた再現性東京希望ヶ浜地区ですら例外ではない。
「いくら倒してもきりがないっ!」
アスファルト道路をうねうねと、そして外見からは想像できないような俊敏さで突き進んでくる巨大なニワトリ型の怪物バジリスク。
尾には蛇の頭を持ち、相手を石化する光線を放つという凶悪な怪物だ。
山本 雄斗(p3p009723)と皿倉 咲良(p3p009816)は左右に飛び退くことでそれを回避し、反撃とばかりに近くに転がった煉瓦ブロックを投げつける。
ニワトリ型といえど亜竜。直撃したにもかかわらず砕けたのは煉瓦の方だ。固い毛皮に守られた顔面を向け、ぎょろりと睨むバジリスク。
「けど、逃げ出すわけにはいかないよね……」
ちらりと咲良が後ろを見ると、燃える街があった。
空をワイバーンが飛び、デミリザードマンとドレイクが逃げ惑う人々を追い回す。
『平和な現代日本』を摸して作られた光景は、いまこのときをもって破壊されつつあった。
「正義の味方『皿倉咲良』としては、ね!」
「それなら、僕だって!」
雄斗は腕に装着していた変身ブレスレットを操作すると、全身を青い光りに包んだ。
「フォーム、チェンジ――『疾風』!!」
雄斗はパワードスーツを装着すると、バジリスクへと高速で迫り、そして鋭いパンチをたたき込んだ。
ブロック塀へと三角跳びをかけ、別方向から蹴りつける咲良。
そこへ更に、数発の銃弾。
「ムサシ・セルブライト、現着であります!」
52SHERIFF-SP(シェリフ・スペシャル)を両手でしっかりと構えた宇宙保安官ムサシ・セルブライト(p3p010126)による特殊弾頭の銃撃である。しかも、専用のコンバットスーツを着用済みだ。
油断なくしっかりと狙いをつけ続けるムサシの前で、バジリスクがどさりと倒れる。
が、息をつく時間は無い。今も亜竜に住民たちは襲われ続けているのだ。
「この街は……いや、この世界は自分が守るであります!」
叫んだと同時に、歌が聞こえた。
希望ヶ浜北区神代小学校、屋上。
柊木 涼花(p3p010038)は取り出したギターをかき鳴らし、空に向かって歌い始めていた。
戦場に響き渡る歌声は、戦う人々の、そして日常を破壊され絶望の淵にあった人々の心を震わせ、立ち上がり、そして前に進む一歩目をふみだす力を与えた。
(もうダメだって、誰もが思ったかもしれない。おしまいだって、膝をついたかも。
けどわたしには聞こえたんだ。皆のMaydayが。踏み出せる足がある。歌える喉がある。届くだけの空がある。だったら――)
「わたしは、歌います。この世界を守るために!」
この日、練達は滅亡の縁についた。
国を滅ぼすレベルの、災厄級の竜たちが押し寄せる中。
ローレット・イレギュラーズたちの戦いが突如として幕を開けたのだ。
そしてそれは、あなた――イレギュラーズの戦いでもあるのだ。
- <Jabberwock>この世界を守るために完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別決戦
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年01月31日 22時06分
- 参加人数109/∞人
- 相談5日
- 参加費50RC
参加者 : 109 人
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参加者一覧(109人)
リプレイ
●神話よりドッグファイトを込めて
空想できようか。竜が空を割り、亜竜の軍勢を引き連れ街を蹂躙するさまを。
ひび割れノイズのはしった青空を、ワイバーンが飛び回りながら竜の魔法で雷や炎をはき散らかし、ビルを次々に倒壊させていくさまを。
そうして倒れゆくビルの下をくぐり抜け、急上昇をかける影があった。『子供を救出する魔法少女』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)である。
偵察に飛ばしていた小鳥が撃墜されたことで、自らもまた戦場のただ中へ現れたのだ。
大本命であり敵の首魁であるジャバーウォックとの戦いはあまりに過酷。実力が足らなければ己のみならず周囲の者まで死にかねない。
ハイデマリーは『自分に出来ることを』と強く唱え美しく揺れる首飾り『魔術礼装リリカルエメラルド』を起動。魔法少女衣装に変化すると、こちらを睨むワイバーンへと重火器を構えた。
砲撃――と同時に別の角度からもガトリングガンによる砲撃がワイバーンへ浴びせられた。
「とべねぇアザラシはただのアザラシだ!
空飛ぶ竜にゃあ空飛ぶアザラシで対抗だぜ! オイラのガトリングで片っ端から撃ち落としてやるぜー!」
二人はワイバーンの上下を交差して飛び、そしてターン。
「空を抑えられちゃ皆もマトモに戦えねー! ここを守れるのはオイラたちにしかできない役目だぜ!」
「……で、ありますね」
ハイデマリーは頷くと、ワモンと共にロケットランチャーを構えた。
マジカルRPGとマグロミサイルが二重の螺旋を描いてワイバーンへと着弾。爆発。
傷付いたワイバーンは力を振り絞って振り返り、開いた口から破壊の光を――。
「出来る事を、出来る限りに……だっけ」
凄まじい速度で横切った『夜を歩む』アムル・ウル・アラム(p3p009613)。ワイバーンは何をされたのかも分からず翼を破壊され、きりもみ回転しながら墜落していく。
それを見下ろして、アムルはほうっと息をついた。
(……こういう時、ブラムさんは……蘊蓄を聞かせてくれる。
アヴニールはきっと、これが食べられるかばかり、気にして。
……全部、終わったら)
想像して、それを停止する。なぜなら新たなワイバーンが彼らを狙い襲来したからだ。
開いた口から放たれるブレス砲撃。雷撃を圧縮した弾が大量に飛来し――更に上空より急降下した『夢みるフルール・ネージュ』クロエ・ブランシェット(p3p008486)が癒やしの光を展開して防衛した。
「こんなにたくさんのワイバーン、どうして襲って来るんですか!? 理由を知りたいしやめてほしいけれど……」
「竜種とかお伽噺の世界じゃなかったウサ? しかもなんかナチュラルに戦うことになってるウサ……」
ぶいーんと耳コプターした『特異運命座標』望春 ばに(p3p009739)が隣へと上昇してくると、小さなウサギ人形が載った戦闘機をおもちゃ箱から何機も発進させた。
自分も赤いリボンのついた可愛らしい銃を抜くと、ワイバーンめがけて滅茶苦茶に打ちまくる。
「てあっ、戦闘機が耳にっ!」
自分に向かってターンしてきた戦闘機をばしばしやりつつ、慌てるばに。しかしそれによって生まれた隙(?)にクロエが翼に光を纏わせて突進。別の方向から現れた『enigma box』ティヴァ(p3p010172)がワイバーンの背へと飛びつき、剣を思い切り突き立てた。
「ティヴァ、ヒトの笑顔スキダヨ。ダッテ、笑顔見てると、ガンバレル!」
暴れ、やがて力尽きて墜落していくワイバーン。
(ティヴァ、空飛べるカラ、空で戦うコトにシタヨ。
練達ッテ場所、ティヴァのイタ世界にちょっとニテル……。
マダ、この世界きちんと知ってナイケド、助けられるヒトは、ミンナ助けるようスル!)
決意を固めティヴァは落ちていくワイバーンを見下ろした。
区画中央の塔、それも最上階を目指して飛ぶワイバーンの群れがある。
「これを放置すれば都市の政治中枢が落とされかねない。急げ!」
『ちがうんですこんなはずじゃ』赤羽 旭日(p3p008879)は紅蓮の翼を羽ばたかせ、思い切り加速するとワイバーンの前へと躍り出た。
軍用ライフル『スコルピウス』を構え、真正面に立ち塞がるかのように撃ちまくる。
数発はワイバーンのバレルロール機動によってかわされるも、偏差撃ちした一発が翼に命中。
旭日はジャバーウォックと戦う騎兵隊の事を想いながら、もう一発を構えた。
「こっちはお留守番なんだ。笑顔でお帰りって言えるように気張っていかなきゃな!」
別ルートから駆けつけ、先周りできた『特異運命座標』ルリ・メイフィールド(p3p007928)と『流浪の“犬”客』安宅 明寿(p3p004488)が構える。
近接戦闘になれば今はこの二人が適任だ。
「――」
キュッと両手を伸ばしピアノでも奏でるように指を巧みに操作すると、腕力を直接魔力へと変換。生成された魔力アダプタに両手を突っ込み、治癒力を味方めがけて放出した。
味方というのは勿論、刀に手をかけて空を走る明寿である。
「人々に仇をなす輩は、たとえ強敵、亜竜であろうと、倒すさねばならん。
某はしがない剣客、いや、犬客にて。
されど斬り捨ててみせようぞ!」
牙を剥きだしにし、魔法の炎弾を連射してくるワイバーン。何発もの直撃を受けるも、それはルリの治癒力によって強制的にカバーされた。
完全にではないが……近づき、斬るだけの時間が稼げれば充分。
明寿の斬撃がワイバーンの翼を切り落とす。
その横を、数匹のワイバーンが豪速で突破。
一匹を犠牲に塔頂上を攻撃するつもりだろうが……。
「空飛ぶ糞蜥蜴共が、生きて帰れると思うなよ?」
対する塔の頂上より、『隻腕の射手』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は大空へと飛び上がった。
高機動ジェットパックが火を噴き、空を飛んだアルヴァは『エルメリアの妄執』を使用。
仲間達の補助によって命中精度を引き上げたヘイトコントロール術が、ワイバーンたちを自分へと引きつけた。
そのまま上昇をかけ、塔から自分へ狙いを集中させたアルヴァは大声で呼びかける。
「『航空猟兵』、一斉攻撃だ!」
途端、『輝きを目指して』ダリル(p3p009658)が悪魔めいたボックスフォームで目をぎょろりと動かした。
鎖がとけ、開いた箱からどす黒い堕天のオーラが放出される。
「フハハ! 誰が呼んだか我が来たぞ!
我が名はダリル! この混沌を統べるべく蠢く堕天の尖兵な……あ、やめ! 痛いのじゃ!」
アルヴァがひきつけきっていないワイバーンについばまれそうになりつつも、砲撃によって追い払うダリル。
『珪素生物』イ型 8號(p3p008874)は側面へと回り込んで双発式パイルバンカー『双竜』をアクティブモードにかえると、つい先ほど追い払ったワイバーンの腹めがけて殴りつけ――そして撃ち込んだ。
「空が暗く見えるほどとは……全く恐ろしい数だな。地獄の門が開いたと見える」
打ち出された杭が腹を貫く。
まき散らされる血と墜落していくワイバーン。
いかに大空を自由に飛ぶ彼らといえど、この高さから落ちればひとたまりもなかろう。
『航空猟兵』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)はその横を抜け、アルヴァに集中していたワイバーンたちへとグレートメイス・ゲレーテを構えた。滑腔砲を接続。ガキンという硬質な音と共に、ブランシュの眼球内にターゲットマークが出現。距離その他を計算して導き出されたマークが中央で重なった瞬間
「航空猟兵部隊は、こういった時の為に作られたエキスパート部隊だって事ですよ!」
ブランシュはトリガーをひき、砲撃。ワイバーンを貫いた次の瞬間、その高さまで急上昇した『燃えよローレリアン』山本 雄斗(p3p009723)がムーンサルトキックをたたき込む。
「君たちがどうしてここにやって来たかは分かんないし、もしかしたら戦わなくて済んだかもしれない。けど――」
思い切り蹴り抜き、そのまますぐ近くのワイバーンへと衝突させる。
ゴキンという嫌な音を鳴らし、ワイバーンたちはもつれあって墜落していった。
「暴れると言うなら僕は……故郷を守るために戦うよ」
この階層の下には、己の故郷である希望ヶ浜地区がある。
そこへもワイバーンたちが入り込んでいるという。仲間達は、大丈夫だろうか……。
「無数の竜から仲間とともに街を守る。かつて小娘だったころに夢見た物語のようです」
黒く鍵十字のマークが刻まれたフライトバトルユニットを背負い、翼を広げアサルトライフルを撃ちまくる『天空の魔王』ハンナ・フォン・ルーデル(p3p010234)。
幾度かのワイバーンとの撃ち合いの末、放り投げた閃光手榴弾が爆発し、目をくらませた隙に取り出したパンツァーファウストを発射。大爆発に巻き込まれたワイバーンが墜落していく。
「不謹慎かもしれませんが……正直に言ってしまいますと私、少し高ぶっています!」
●灰と絶望のおとぎ話
今や考えられない話だが、魔種というものはおとぎ話の中だけの存在であった。
現代日本の人々に『おばけ』を説明するくらい非現実的で、しかしそれが実在し幻想や天義に大打撃を与えたその時でさえ、竜はまだおとぎ話の存在だった。
絶望の青を踏破するその時になってやっと実物を目撃しても、その噂すらまだ疑問視されるほど。
だが――。
「この年になって、竜の軍勢から街を救う英雄譚とは、のう」
『信仰問答』バク=エルナンデス(p3p009253)は逃げ遅れた市民達を守りながら、治癒の光を広く展開。周囲を聖域化し始めた。
「ま、救う為ならば偶像として動くも良かろう」
建物の瓦礫を払い、立ち上がる四足獣型の亜竜ドラルク。
その周囲には二足二腕の亜竜ドラゴニュートたちが骨の武器を握り展開した。
バクの援護を受けながら、市民が逃げる時間を稼ぐべく路上に立ち塞がる『遊戯盤上の道化師』マリア・ピースクラフト(p3p009690)。
「負けない、負けられない……!」
いかにもOLが持っていそうなバッグから小さなマジカルステッキを取り出すと、星型の光を浴びて変身した。
「魔法少女セイントマリー。
清き灯火で悪しき空気を浄化します!」
いつどの方向から撮影されても問題ない熟練のレイヤーポーズをとると、パッと紫の光が弾けた。ただのポーズではない、見る者がうっかり注目し集中してしまう強烈なポーズだ。
市民には希望を、亜竜たちには敵意を。それぞれ集めた彼女はパチンとウィンクし仲間に合図を送った。
(今です――!)
すぐそばの建物の屋根。挟んで向こう側からパルクルールによって素早く駆けつけた『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)が、跳躍と同時に剣を抜いた。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ! 俺の目の黒いうちは決して練達の民に手は出させない!」
「――!?」
振り向き骨の剣を翳すドラゴニュートだが、その程度の武器は打ち砕けるだけの速度とタイミング、そして重量が乗っていた。
そこへ一緒に飛び込んでくる『正義の味方(自称)』皿倉 咲良(p3p009816)。
別のドラゴニュートの死角から掛けより、渾身の飛び膝蹴りで後頭部を割った。
「正義の味方として、困ってる人を無視して逃げるわけにはいかない。
アタシには仲間がいる! へこたれる暇なんかない。皆を引っ張るんだ!」
心の中の言葉を正直に叫ぶと、グッと拳を握った。無自覚に湧き上がる青い微光。コンビネーションパンチがドラゴニュートの防御を打ち砕く。
「絶望的な状況でも諦めるもんか! 絶対に皆を救うんだから!」
そこへ、二人の戦士が駆けつけた。
「ここから先は自分達が行かせない!
『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)! 任務了解であります!」
超高速で装着したコンバットスーツから、どこからともなく召喚されたゼタシウムライフルを構える。
「ゼータライザー!」
「C.S.F.キャノン砲、っと」
同じく背部から展開したキャノン砲をドレイクたちへ向ける『STARGAZER』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)。
「災害から立ち直ろうとして、普段通りを取り戻そうとしてたのに、邪魔するなんて空気が読めないのかしら!」
一斉砲撃。
ドラゴニュートたちが次々に巻き起こる火花と爆発に倒れていく中、ドレイクがこちらへと突っ込んでくる。
ちらりと空を見れば、上空で戦う仲間達が墜落させたワイバーンが振ってくるところだった。
丁度良い。そう考えたノアは大きく飛び退きながらキャノン砲を再び発射。
「空は彼らに任せて、私はみんなが逃げれるように奴らを叩く! みんなを安全な場所へ誘導をお願い!!」
呼びかけを受けた市民が頷き逃げていく一方、ムサシはレーザーソードをベルトバックルパーツから抜くように出した。
「レーザーソード展開! これが必殺の――ゼタシウム・ダイナミック!(であります!)」
飛び込んでくるドレイクを踏み込み、剣を振り抜いてすれ違う。見栄を切ったムサシの背後で爆発が起こり、同時に墜落してきたワイバーンが無数の追尾光線によって貫かれ爆発した。
遠くで起こる爆発に、『漆黒の妖怪斬り』黒田 清彦(p3p010097)と『光の女退魔侍』白鳳 山城守 楓季貞(p3p010098)は反応しない。
するべきは、今自らを円形に取り囲んでいるドラゴニュートたちであるべきだからだ。
「柳生での百鬼夜行を思い出すな、清彦」
「確かにあの頃もこんなにバケモノだらけだったな」
二人は背を突けあい、抜いた剣をまっすぐに構えている。
それぞれ別方向から二体ずつ、そして絶え間なく斬りかかるドラゴニュートたち。
清彦は彼らの放つ骨の剣を刀で払い、斬り、楓季貞もまた次々と払い、斬り伏せていく。
幾たびの剣戟がおこった後だろう。
二人は背を向け合ったままの姿勢へと戻り、どちらからともなく刀を鞘へとおさめた。
ぐらりと傾き、仰向けに倒れる最後のドラゴニュート。
「今回も、生き延びたな」
「まだ終わりじゃあねえさ。しくじるなよ、楓」
無論。とだけ短く呟き、楓季貞は唇の片端だけを小さく上げた。
東京ウラハラストリート。
いつもそこに止まっていたはずのクレープワゴンは今はない。車両ごと避難したためだろう。
代わりにあるのは、桜花の軌跡をひいて剣を振るう『要黙美舞姫(黙ってれば美人)』天閖 紫紡(p3p009821)と、バチバチと黒いスパークを纏いながら大蛇の顔面を殴りつける『No.696』暁 無黒(p3p009772)であった。
リンカルスという亜竜は魔法の力によって巨大化・強化された大蛇である。
体内で生成した毒液を吐き出すリンカルスに対して、無黒は地面をドンと踏みならすことで黒い電撃を周囲に展開。
自分達にかかる毒液を無理矢理焼失させた。
「くっそがあああ! 俺から甘味を奪おうとする奴は万死じゃ足らないっす!!!
死にたくなる程の苦痛を永遠に味合わせてやるっすよおおおおおおおお!!!」
吼える無黒。その様子にびくりとしたリンカルスめがけ、紫紡が斬りかかった。
「これ以上、この街の平穏を壊されてたまるかあああああああっ!!!」
スパン、と美しい軌道を描いた剣がリンカルスの首を通り、一瞬遅れて首を落下させる。
そこへ更に集まる亜竜たち。ワイバーンがどすんと路上へ着地し、放置されていた自動車を踏み潰す。
「ワイバーンといえば幻想の貴族が昔、卵を食べたいとか言ってたっけ?
となるとこの光景はさしずめワイバーンミートのバーゲンセールってとこかしら……?」
『もふもふハンター』リカナ=ブラッドヴァイン(p3p001804)が大砲を担ぎ、ロレイン(p3p006293)もまたライフルを構える。
「神託に言われる滅び。どうにもピンと来なかったけど、この光景はわかりやすいんじゃないかしら……?」
「練達には美味しい物も、もふもふ集めたカフェもあるの。勝手に滅ぼさないでもらいたいわね!」
吼え、そして魔法を放ってくるワイバーンたちへ反撃の魔力砲撃を放つリカナ&ロレイン。
たまたま集まり集中しただけのワイバーンと、友情によって結託した二人ではその連携能力が大きく異なる。
「でも人間は生きようとするし、私たちは足掻く。さぁ、滅ぼしたいあなたたちと生きたい私たちの勝負よ」
魔力の塊が、ワイバーンたちを打ち抜いていく。
そこへ増援として駆けつけたのが、なんと『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)であった。
「ジャバーウォックには大勢が行ったし、ボクらの担当はやはりこっちだろうね」
電動車椅子で停車したシャルロッテはスキルを解放。自らを中心にした仲間達の能力を格段に引き上げていく。
そんなシャルロッテの左右にザッと現れたのは……なんとも統一性のないメンバーだった。
「この面子、以前もお会いしましたね…? ご縁があるようです」
清らかなシスターのような風情をした『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)。
懐から抜いたリボルバーピストルを鈍く光らせる。
「はいどうも!!! ちょっとね!! 大変みたいなんでね!
偶然会った人達と初対面でも仲良く挨拶……いや、君たち前会った?」
大きなポーズでひょこんと出てきた女幽霊こと『爆音クイックシルバー』ハッピー・クラッカー(p3p006706)が両手を広げ、くるりと振り返る。
「揃いも揃って胡乱な面子だなあ」
やれやれといった仕草をするが、シャルロッテの表情は笑っている。
ハッピーは『いくぜー!』と叫んでワイバーンの開いた口の中に自ら飛び込むと、両手両足(?)で顎に突っ張った。
「幽霊生活も悪くないけど、今は生きておいた方がオススメだぜい!!ミ☆」
「説得力があるようなないような……」
ライは片目を僅かにぴくりとだけ動かし、そしてワイバーンの目を的確に狙って撃ちまくった。
こんな芸当ができるのも、シャルロッテの強化スキルのたまものだろう。
「皆さん聞きましたか? 胡乱な面子だそうです。ここはひとつ私が――」
「よせ、ぜってー悪化する」
『蛇霊暴食』セレステ・グラス・オルテンシア(p3p009008)が前髪をふぁさあっとやる横で、『一歩ずつ』ザハール・ウィッカ・イグニスフィア(p3p008579)が手をかざして止めた。
「そうですよセレステ。胡乱………………胡乱とは、どういう意味でしたっけ?」
ふんわりと首をかしげる『特異運命座標』白ノ雪 此花(p3p008758)にザハールがつんのめった。
「ダメだ! 俺一人じゃツッコミきれねえ! アーマデルがいりゃあなあ!」
「しかしこのワイバーン、フォルムが美しくないですね。どう見ても蛇の方がボディラインが優美で美しいでしょう?」
「それは曲線が多いという意味ですか?」
「あああああっ!」
もーどーにでもなれ! と叫んだザハールはワイバーンへと突撃していった。
「俺はツッコミはツッコミでも、物理的なヤツなんだよォ!」
ヒャッハーと笑いながら殴りかかるザハール。
セレステはフッと笑いながら死霊術を展開。骨の矢を撃ちまくり、此花は抜いた剣で斬りかかる。
そんな彼らの頭上を、『ツッコミ不在』という文字が横切った。
●禁断の果実はいま腐り落ちた
セフィロト各地に存在するシェルター群はこうした状況に対応するためにある。つい先日マザーの暴走によっておきた防衛ドローンの襲撃事件にも十全に機能したことからも分かるとおり、最悪セフィロトの機能がダウンしても効果を発揮してくれるだろう。
だが欠点として、各シェルターが寸断されていることで医療チームを分散して派遣しなければならないという点がある。
「癒やしてまた戦線に送り出したいわけじゃないけど……」
後衛テントとして設営された111番シェルターの通路を早足で歩きながら、『特異運命座標』釈提院 沙弥(p3p009634)は医療処置用のボックスを手早くワゴンからひっつかんだ。
火傷を治癒する軟膏や皮膚と癒着して回復を早める包帯などのセットだ。
「怪我人は放っておけないじゃないの」
開いた扉の先には、無数の兵士たちが転がっている。大半が民間軍事団体の人間だが……。
「皆さん、落ち着いて行動をお願いします。傷ついた方はこちらのほうで回復いたしますので」
『レディ・ガーネット』海紅玉 彼方(p3p008804)は困惑したままシェルターに逃げ込んできた民間人の案内を行っていた。
毛布を敷いた床に座った民間人に手をかざし、治癒魔法をかけていく。ちらりと見ると民間人の腕に色紙のテープが巻かれている。『重傷、軽傷、手遅れ』といった段階を示すための優先度シグナルで、数字の低い順に対応するのだと教えられていた。
もしこの場所に亜竜が入り込めば最悪の事態になるだろう。そうならないように、外で戦う仲間達に任せるしかない。
「―――」
そこへ、『黒翼演舞』ナハトラーベ(p3p001615)が負傷した兵士を連れて飛んできた。
空から飛び込むためのハッチから来たのだろう、風除室越しの扉が開く。
高い運搬能力と機動力をもった彼女だからこそできる救助方法だ。亜竜側も、わざわざ追いかけづらい彼女を優先して狙うより、彼らにとって手強いイレギュラーズたちと戦うことを優先しているらしく救助活動は順調なようだ。
「来たか、こっちへ運んでくれ」
『知識が使えない元錬金術師』緋翠 アルク(p3p009647)が手招きをしながら、片手で薬剤をかき混ぜている。
その場で調合してできあがった軟膏を包帯に塗り、運ばれてきた兵士の傷口へと巻き始める。
「おちおち買い物も出来んな。困ったものだ。まぁ、そんな悠長なことを言っている場合でもなさそうだが……」
ほら、とパスされた包帯をキャッチする『料理人』テルル・ウェイレット(p3p008374)。
「『よく聞く傷薬』は作らないのですか?」
「副作用はリスクだからな。身体がゲーミングカラーに光る程度ならいいが……」
肩をすくめたアルクにテルルは苦笑し、作ってきたサンドイッチを交換するようにアルクへパスした。
テルルの運んできたワゴンには大量のサンドイッチが積み込まれている。皆彼女が作ったものだ。
ふと見ると、急に異次元からにゅっと出てきた手が塩とマヨネーズを持ってワゴンのトンと置いて去って行く。
「なんだあれ……」
「害のない親切なものなのでおきになさらず」
そういって配布を再開するテルル。美味しい料理というものは人を日常に帰してくれる。逆にそれができず、ハンバーガーショップに入店することすらできなくなる兵士も多いほどだ。
「それにしても、次から次へととんでもない事態が押し寄せてくるわね」
サンドイッチをひとつつまみながら、『マッドドクター』ミシャ・コレシピ・ミライ(p3p005053)が芸術的な手際でけが人の治療を進めていく。
この辺りは流石エキスパートといったところだろうか。
「白衣を着ていますけれど……お医者様ですか?」
「専門は魔動機だけどね。人体には詳しくなるのよ、この分野は」
そこへ、医療セットを抱えた『サメ映画は概念』サミィ・ザ・タイフーン(p3p009026)が部屋へと(早歩きで)駆け込んできた。
「サメさん、お願いしますっ!」
雑なホログラムめいた水精霊バッド・シャークが地面からザバッと飛び出し、重傷の傭兵へ食らいつ――くかと思いきやソッと取り出した軟膏を傷口にやさしく塗り始めた。
最後に頭をなでなでして地面にばしゃんと帰って行く。
「貴方にサメのご加護がありますように!」
「お、おう……」
トドメをさされるかと思った、と呟く傭兵の声は聞こえないようで、壁面のディスプレイに映る外の風景に目をやる。
「空を埋め尽くす無数のワイバーン、これが全てサメだったら……まるでサメ映画みたいですね! トルネード的なほうの!」
「お、おう」
「あ、見ます? 二作目がお勧めですっ」
シャッと扇状に広げたDVDケースを見せるサミィ。
「…夢じゃないのね、本当に…」
綾辻・愛奈(p3p010320)はそんな彼女たちの補助として動いていた。軟膏を塗られた傷口に包帯を巻き、優しく止血の魔法をかける。
科学も魔法もサメもごちゃまぜにしたとしても十全に効果があるというのが、この世界のかわったところだ。
そしてそれは、愛奈の魅惑的な容姿が人を和ませるという点でも有効だった。
(昔、兄様にこの命を救われたわたしが、誰かの命を救いたいと思うのはあたりまえのこと……)
また別のシェルター。ここには負傷したローレット・イレギュラーズが多く収容されていた。
唯月 茜音(p3p010256)は足を引きずってやってきた仲間へ賢明に治癒魔法をかけ傷口を塞ぎつつ、キッと目に力を込めた。
「……誰一人として死なせはしません。誰一人として代わりのいる人間などいないのですから」
「その通りです」
茜音の言葉を横から肯定したアリステル・ブルー(p3p010282)。
「この国では大変な事があった、とローレットで伺っています。せっかく大事を乗り越えたのに!」
アリステルは比較的軽傷な仲間を見つけて傷口を包帯でまいて治癒魔法をかけていく。
(この戦場にいる方も、もっと危険な場所にいる方々もどうか皆さん無事に帰って来てください。私には誰かに祈る事しかできませんけれど)
ローレットの仲間達は『死にづらい』といえど死にに来ているわけでは勿論ない。怪我をすればすぐに仲間に任せて撤退し、こうして後衛テントで回復してから前線へ戻るということを繰り返していた。
「大丈夫です。敵は近くには居ないようです」
周囲の警戒をしていた『旋律が覚えてる』ガヴィ コレット(p3p006928)が扉を開き、不思議なコンパスを開く。指し示した方角を見て、『こちらが吉と出ていますよ』と優しく囁いた。
彼女に礼を言って走って行くイレギュラーズ。
入れ替えになる形で、重傷を負った仲間に肩を貸した『カイカと一緒』カシャ=ヤスオカ(p3p004243)がシェルターへと飛び込んでくる。
(うう……ボクは、死者を弔う家のものだけど……死を求めてるわけじゃないし、大勢が死ぬのは、怖い。
万が一のとき、死体を適切に管理(衛生面とか)する、けど……)
目に宿った炎は、死者を弔うための炎ではない。
「さ、させない、死なせない……!」
横を走る鎮墓獣カイカが医療品の入ったボックスをくわえて先にシェルターへと入り、振り返る。
「大丈夫、カイカ、ボクは頑張れるから」
「ほら、こっちへ!」
『神の手』帆呉 希佳(p3p006117)がけが人を引き受け、指に治癒の力を込めてグッとツボを押していく。
「まったくもー! 折角開院した整体院もお客さんいっぱいになってきたのにー!
街はめちゃくちゃになるしドラゴンはくるし! けど、こうなったらやるしかないよね!」
私にできることを! と言って今度は十指全部に力を込めてツボを巧みに押しまくる。
びっくりするほど早く怪我の治るツボとかいう嘘みたいなマッサージで本当に骨折が治っていた。
「ドラゴン……まさかこんなに急に攻めてくるなんてな……。
まだ覚悟も全然出来てないが……やれるだけのことをやろう」
他のけが人を治療し終えた『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)が駆け寄ってきて、額の宝石をキラリと光らせた。
放射された赤い光が負傷者の傷口を綺麗に治療していく。
一通り治療すると二本脚で立ち上がり、透明な手袋をしてガラス辺の除去などを始める。見た目に反してめちゃくちゃ器用な手である。
「一難去ってまた一難、という奴じゃな。既にあれだけの戦いが起こったというのに……」
「うん。この間はろぼっと? さんで、今度は大きなとかげさん? なんだか大変だね」
『特異運命座標』フロル・フロール(p3p010209)と『太陽の恵み』マナ(p3p009566)が連れだってやってくる。他の負傷者を治癒し前線へと戻したばかりのようだ。
前回の戦いでちょこちょこポジションが被っていたからか、あるいはグリムアザース繋がりか、今回は一緒に動いているらしい。
「わたしも、わかるよ。だって、木や草、お花さんたちも、痛い痛いっていってるから。精霊さんも怖がってるから」
「そうだな。だが……」
新たに負傷者を二人がかりで治療しながら、フロルは強く言う。
「しかし敢えて言おう、『それがどうした』と。
わしは知っておる。特異運命座標達の強さを、この国の人々の強さを。
……負けぬよ、わしらは!」
「うんっ!」
マナは太陽のような明るい笑顔で頷いた。
希望は潰えていない。いまここに、生きているのだから。
●トーキョードランンズ
「はいというわけでね! こんな時だからこそやって行きますよ配信者魂! 練達からこれ見てる人はさっさと避難してね!」
スマホを自撮りモードにしながら『新米P-Tuber』天雷 紅璃(p3p008467)は横ピースすると、流れるコメントのまばらさに苦笑した。
いかな希望ヶ浜民といえど、思い切りドラゴンが突入してくれば『自発的な平和ボケ』もしていられないのだろう。『俺は逃げる』『後は頼んだ』『来週発売のラスファン買うまで死ねない』『ハンハン完結まで死なない』など半数はまだふざける余裕があるらしいのは、やはり紅璃のテンションにひっぱられてのことだろうか。
「ってことで行くよー!」
地味に二台持ちしているスマホを操作し『マクロ:エレクトロバグ』のショートカットアプリをタップ。解き放たれた雷撃が、飛来するワイバーンに直撃した。
「希望ヶ浜地区には素敵なカフェや、わたしが園芸講師として働いている学園などがございますので――」
そこへ追撃を仕掛けたのは『子連れ紅茶マイスター』Suvia=Westbury(p3p000114)であった。
ポケットに紅茶のパックをいっぱいにつめて、『ソーンバインド』の魔術を発動。ツタがワイバーンの脚とガードレールを結ぶように結束され、飛行にミスったワイバーンが直前でつんのめったように墜落した。
彼女たちの攻撃がここまで見事に炸裂しているのは、勿論彼女たち個人の経験値もある一方、『ただ、歌を』柊木 涼花(p3p010038)による支援も大きく影響していた。
印象的なイントロをギターで奏で、強く亜竜たちの群れを見つめる。
SInG-AS Voyager(スズシロギター-アコースティックシリーズ・ボイジャー)が、キラリと偽りの陽光を照り返す。
(直接戦闘だけが戦いじゃない。
皆の強さを引き出すのが、全力以上を発揮できるように最大限の支援をするのがわたしの役目!
だから、この音に勇気を、闘志を、精一杯の応援を
わたしのありったけを詰め込んだ音楽を
戦場に届けます!)
力強く響く彼女の歌声が、戦士たちのみならず、配信先の誰かの心を奮い立たせていた。
「この程度の絶望くらい、跳ね除けてやりましょう! だって、ここは“希望”ヶ浜なんですから!」
涼花の歌が広く町中で流れるなかで、『名状し難い軟泥状のもの』古野 萌乃(p3p008297)たちは家屋を破壊し住民をあら探しするドレイクの群れへと挑んでいた。
「TKRy・Ry…! 練達が破滅してしまうと我の研究にも影響が出るからな! 一肌脱ぐしかあるまい!」
(私の役割は半不死のこの肉体を肉壁として使い、味方を守ることだ…z……z…)
半分寝てる『モルフェウス』Thusxy=Hgla=Azathdo(p3p005090)をスッと取り出し、ドレイクたちが食らいつくマトにする。
滅茶苦茶脆いが案外死なないAzathdoに困惑し、『あっそうだ必殺攻撃しなきゃだ』と相手が思う頃に萌乃の『ライトニングライフル:モデルB』による電気ショックが浴びせられた。なんならAzathdoごと。
「アリスの元いた世界…それと、ここに来てから大切な人と一緒に過ごした思い出の場所……竜なんかに壊させない…絶対…!」
そんな光景を割と冷静に、あるいはシリアスにとらえていた『泡沫の胸』アリス・アド・アイトエム(p3p009742)は『深紅の罠糸』を発動。ピッと切った傷口から垂れた血がそのまま蜘蛛の糸へと変じ、ドレイクたちを縛り上げていく。なんならAzathdoごと。
(動けぬ…z……z…)
「いいぞアーザード! この調子で初見殺しをしていけ!」
「いいのかな……」
などと言いつつ新たな群れめがけてそおいとAzathdoを投擲するアリス。
盾役がハッキリしているというのはなかなかいいことだ。
図書館の壁を破壊しながら現れたヒュドラが無数の蛇頭を一斉にこちらへ向けるが、『ローゼニアの騎士』イルリカ・アルマ・ローゼニア(p3p008338)は迷いなく突進。咄嗟にヒュドラの放った毒液を跳躍でかわすと、スカイタップシューズで作った簡易足場を蹴って後方へと回り込み、ナイフをその胴体へと突き立てた。そして直接魔力を流し込む。
「できることから片っ端からやる……だよねっ」
衝撃に暴れるヒュドラ。半分野外ということもあって後退しづらいらしく、そのまま前へ出るしかないが……。
そんなヒュドラの前を子供が横切っていく。無防備そうな子供だ。一瞬しか見えなかったが追いかけるには充分――と首を伸ばした途端、『白い影』ミリアム・リリーホワイト(p3p009882)が幻術を解いた。
ぱっと消えた子供の幻影の代わりに、突如としてフル装備状態になったミリアムが現れたのである。
「…おや? こういう場所に見覚えがあるようなないような?
そんなことを来た当時は考えたんだっけ?
明後日の方向に一人で話し続けてるなんて、可笑しいと思わないかい?」
ちらりと振り返るミリアムが手をかざすと、魔力の砲撃――と同時に死角に潜んでいた『傭兵』吉田 鉄史(p3p008538)がライフルの引き金を引いた。
タンッという独特の音と共にヒュドラの頭が一つ撃ち抜かれ、続けて仲間達の射撃が浴びせられる。
「ヘッドショットが何発も必要とはな、滅茶苦茶な怪物だ」
レバーを素早く操作し空薬莢を排出。まるでそう設計された機械のごとく高速で弾込めと再照準を行うと、別の頭に向けて打ち始める。
そのまた別方向から『パープルハート』黒水・奈々美(p3p009198)が、魔法のステッキで残ったヒュドラの頭を叩き潰した。血が吹き出る代わりに星型の綺麗なエフェクトが吹き出るのは、そういう仕様だからだろうか。
「混沌に来て結構いろいろな相手を見てきたけど……これ、現実なんだよね……?」
「魔法少女ナナミ! 今こそ魔法少女するときだよ! スカートはためかせながら空とんで! 具体的には5mくらいの位置を飛ん――ぎゃああああ!?」
無言でマスコット生物をぎゅっと掴んだ奈々美が、こちらを見つけて砲撃してくるワイバーンにむけて盾にした。
「このまま食べられちゃうわけにはいかないっていうか……やっつけないとね!」
「もうやだーーーー!!
再現性東京復興しきってないのに
空気読まずに襲撃してくるんじゃないばかー!」
ここは再現性東京1870地区。『旅人2世な女子高生!』彷徨 みける(p3p010041)は次々と襲いかかるワイバーンを剣で切り払いながら走っていた。
そこへザッとスライディングぎみに駆けつけた『ぼんちゃんといっしょ』滋野 五郎八(p3p010254)。同時に足元に現れた神鶏『梵天丸』がコケェと鳴いた。
「そこの人、乗って!」
そう叫ぶや否や、梵天丸がずどんと巨大化。金剛梵天丸となるとそこへ五郎八が跨がった。手を伸ばした五郎八に引っ張られるかたちでみけるが相乗りすると、梵天丸が謎の光を機関銃のように吐き出しワイバーンを牽制しながら走り出した。
「現実感がなくて笑えちゃうけど……大丈夫だよ。ぼんちゃんがいれば怖くない! 行こう! わたしたちが“東京”を守るの!」
そうして更に駆けつけた先では、『社籠り』葬屠(p3p008853)が昏沌樂團『血徒死』や昏沌樂團『血類燻雄』を駆使してワイバーンと戦っていた。
「…ここは…いいところだよね…」
旧くから続く安寧と新時代の活力が混ざり合う特異な時代。変わりゆく時代、変わりゆく人々。それを葬屠は縁側で番茶を啜りながら眺めるのが好きだった。
戦いは好きではないが……。
「ここを守るためには……」
かちりと妖刀を構え、ワイバーンの首を切り落とす。
そして一方こちらは再現性歌舞伎町1980地区。
「おーおー!? 人を斬るんはしょっちゅうやっとるけど。
トカゲは初めてやなぁ。それにしても用心棒の仕事の範疇超えとんのとちゃうか。こりゃ後でボーナス請求せなあかんなぁ?」
「金なら払ったるから仕事せんかい!」
眼帯をした鮫島のニーサンがバットでデミリザードマンを殴り倒す。
『化猫』道頓堀・繰子(p3p006175)はけらけらと笑ってリザードマンの喉にナイフを突き立てた。
そこへ『声なき傭兵』白鷺 奏(p3p008740)がガンブレード・アイギスのトリガーを引きながら割り込んできた。
リザードマンたちが一斉に斬りかかったことによる骨の剣を、まとめて打ち払うためだ。
(奏にとってこの地は生まれ育った故郷。
かつては在る筈の幻想から目を逸らしていたこの街が、今は幻想に襲われている。
あまり好きな街ではない、辛い思い出もある街…。
それでも、自分の生まれ育った故郷が、こんな風に終わって良い筈がない)
長い前髪で本心を隠しつつ、さらなる剣を払う。
そこへ更に、ピンクかつハート型の砲撃が次々に撃ち込まれた。
「ここなら知り合いもいねえか……」
などと呟いて建物二階の窓から飛び降りてきたのは、『フレジェ』襲・九郎(p3p010307)だった。
ピンクツインテールの、それもバリバリの魔法少女だが、振る舞いや口調はぶっきらぼうな男のものだ。
「おれは守ったりだの何だのは全く向いてないからな。そういうのは任せるぞ」
そうとだけ言うと、ピンクの刀を抜いてリザードマンたちへと構えた。
放たれる骨の剣を強引に打ち上げ、くるりと回し短く持ったライフルを相手の顎に突きつけて引き金をひく。吹き飛んだ頭から血ではなくピンクのハートが飛び散るが、九郎はむっつりと口を引き結び目を細めた。
「おれも今は気が立ってるんだよ。ワイバーンだろうがなんだろうがぶちのめしたい気分だ」
そしてここは再現性東京1970地区。昭和のかおりが残るエリアは、今まさにワイバーンたちによって物理的な破壊を受けていた。
『ラジヲ』と書かれた看板が地面に落下しひしゃげる。
「ゲヘヘ…いやぁ懐かしいなぁオイ!
火炎瓶に角棒にヘルメットか!
俺も若い時にゃさんざ暴れたからなぁ!
ここらは余所の土地って気がしねぇぜ!」
『特異運命座標』ゲンゾウ(p3p009219)がげらげらと笑いながら、降下してきたワイバーンへと魔術を放つ。
かわそうとしたワイバーンを追尾し、鋭く命中した魔術によたついたその時、屋根を走った『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)が大きく跳躍。
(この東京は、少し古めかしいがよく出来ている)
英司の生きていた年代とは異なるが、こんな雰囲気の街をよく見た。撮影のセットの中でも。
「ここはこちらの慣れ親しんだ街。お上りさんにはキツい奇襲でお帰りいただきます。ってな!」
抜刀した双怪刃『煌月・輝影』。大上段から振り下ろした剣が、ワイバーンの翼を切り落とす。
そこへ更に追撃を仕掛けたのがアヴニール・ベニ・アルシュ(p3p009417)だった。
建物の影からスッと身を乗り出したアヴニールが、狙い澄ました砲撃でワイバーンの頭を撃ち抜いたのである。
ずしんと音をたてて倒れるワイバーン。
「いつもはブラム様が常識的な判断をシて、アムル様が世間知らずな判断をするノです。
僕は…神霊的な意味で常識的だと思うノです」
日常を懐かしむように、あるいは慈しむように胸を張ると、アヴニールはこの言葉で締めくくった。
「二人とも無事に戻ってくるノです」
そうとも。皆、帰ってくる場所を守って戦っているのだ。
衝撃と共に家屋が吹き飛び、ひときわ巨大なワイバーンが降下する。
ドラゴンほどの威圧感はないが、舐めてかかれば容易に死ぬというような相手である。
他のチームが集めた情報によれば『レッドホーン』というネームド個体であるそうだ。
……であるにも関わらず、『涙の婦警』十鳥 菖蒲(p3p005069)は抜いた拳銃(チーフスペシャル・カスタム)を両手で構えニッと笑った。
「とにかく撃って撃って、平和を守ればいいんでしょ?
それなら私の十八番! この街の平和は、私が守る!」
本能に任せて銃を撃ちまくる。防御も回避も考えず正常射撃姿勢のままそれをこなしているのは、『未熟な盾』EL=ARMOR(p3p010316)に防御を完全に任せているからだ。
(未熟なわたしにできること…それは誰かの「盾」になることだけだから…)
などと言いながら、レッドホーンの放つファイアブレスをを防御する。翳した盾が炎を弾く。完璧な防御とはとても言えないが、一発を防ぐには充分な盾だ。そして一発を防ぐことが、戦いには重要だった。
なぜならその10秒間で、逃げ遅れた市民がシェルターへと走って行く時間ができたのだから。
「ここは…是が非でも守り通します!!」
そして、一斉攻撃を仕掛けるチャンスもまた生まれる。
「あらまぁ、元の世界で竜退治の経験はあるのだけど、こちらでは初めて~。
あちらは結局相打ちだったのだけど、今回もそのくらいのつもりでないとダメそうねぇ~」
『竜の呪いを受けしおばあちゃん』スガラムルディ・ダンバース・ランダ(p3p000972)が魔力を杖にあつめ、振り払うようにして放出する。
「おいたは駄目よぉ、悪竜さん」
渾身の魔力塊がレッドホーンの顔面へと炸裂。かなり頑丈な鱗に覆われているが、流石にしのぎきれなかったようでぐらりと身体をよろめかせた。
「や~」
気の抜けた声でぽいーんと飛びつく『ほよもちクッション魔王様』あい・うえ男(p3p002551)。
ただのクッションがぶつかっただけにも関わらず、謎のゴッという音と共にレッドホーンが吹き飛び近くのビル外壁へと激突。べきべきと窓ガラスにヒビがはいる……かに見えたが、予め保護結界をはったおかげかヒビ入ったのはレッドホーンの鱗だけだ。
反動で戻ってきたうえ男をキャッチし、『応竜』華懿戸 竜祢(p3p006197)が再び放り投げた。『わ~』といいながら飛んでいくうえ男の攻撃に遭わせ、竜祢は『蒼翠剣・八十禍津』を振り翳した。
「くくっ、あぁ素晴らしいなぁ……イレギュラーズ達の輝きが実に美しい!
強者に対し不屈の火を灯し、勝利の為に覚悟を魂に宿すその姿!
無下にはするまい、絶やすわけにはいくまい
この力、彼らの為に存分に振るおうではないか!
四霊が筆頭代理、『応龍』華懿戸竜祢、存分に暴れさせてもらう!」
剣に宿したエネルギーをギラリと光らせ、ほぼ正面から斬りかかる竜祢。
……というのも、建物の影に身を潜めていた『真庭の諜報部員』イスナーン(p3p008498)による奇襲を成功させるためだ。
自らの仕えている真庭家の避難を完了させたイスナーンは仲間たちの戦闘に加わるべく、こうしてじっと身を隠していたのである。
魔導形状記憶合金製グローブに魔力を流し爪の形にすると、レッドホーンの脇腹へと突き立てた。
「国が燃えておる……。この世の終わりのような光景じゃ。
ここはわしらが奮起せねば。本当に終わってしまうぞ!」
『慈鬼』白妙姫(p3p009627)は美しい波紋をした刀『朧月夜』をふわふわと惑うかのように動かすと、その動きにつられて頭を動かしたレッドホーンへ一瞬で距離を詰めた。
刀を払う動きも、あるいは両手でしっかりと握る動きも見せなかったが、しかしタンと強く地面を踏んだその時には既に、レッドホーンは動きをとめていた。ずるりと首に切れ目が生じ、そのまま斜めに首が落ちる。
さて、次は。と振り返ると大空より無数のワイバーンが降下してくるのが見えた。
「これは、長丁場になりそうじゃな」
●アデプトの空が割れた日
「竜だなんて……! あんなのが襲い掛かったらひとたまりもないよ!
僕でも、少しでも被害は減らさないと」
『ちびっ子鬼門守』鬼ヶ城 金剛(p3p008733)は崩落するビル群の中を走り、幼い少年をかっさらうように抱きかかえた。
直後、すぐ後ろに瓦礫が落下し急降下してきたワイバーンが大きく口を開く。金剛ごと食いちぎろうというのだろうか、大きく前に飛び退いて転がる金剛――と同時に側面から浴びせられたアサルトライフルによる連射がワイバーンの顔面を逸らさせる。
『Sweeper』マルカ(p3p008353)がアサルトライフルを構えたまま金剛に顎で『行け』と示し、今度はスモークグレネードのピンを抜いて放る。ライフルのEMPオプションを起動しマガジンを銀色のものに交換すると、表情を変えずにもう一度ワイバーンへと撃ち始めた。
「ういうい、お掃除案件っスね。
歩くトカゲに飛ぶトカゲ、問題ないっスね。
いつも通りさっさと片づけるっス」
「このような竜如きに、弱い者を蹂躙しながら世界が滅ぼされるようなこと等あってはならない! 私も助太刀するぞ!」
常に冷静無表情なマルカとは対照的に、『表裏一体、怪盗/報道部』結月 沙耶(p3p009126)が情熱的に叫びクロスボウに矢をつがえた。
建物の影から飛び出し、狙いすまして発射。
魔術を込めた矢がワイバーンの身体に刺さり、突如として茨が飛び出す。
起動していた人助けセンサーの反応が遠のいていくことに安堵しつつも、自分の身を守るべく走り抜ける。すぐ後ろの地面がワイバーンによる『斬撃』で粉砕された。風を払うようにして遠くへと斬撃を飛ばしたのだ。
(私ができるのはせいぜいこれくらいだ、というのが辛いな。練度を上げて行けば、いつかは私も……)
「どうも、無事っすか?」
ワイバーンの後ろから現れ、何かを囓り取るような衝撃でワイバーンの翼を攻撃する『囂々たる水の中で』桐野 浩美(p3p001062)。
よく見れば右手を狐のような形にして何かの力を発動させていた。
「なんだ、鬼の類いか?」
「鬼と言えば鬼っすねえ」
浩美は目を細め、右手の狐形をぱくぱくさせて『わんわん』と声に出した。
すると、腕がはなれ巨大な狼となってワイバーンへ食らいつく。どうやらあれは狐ではなく狼の形であったらしい。
「練達の防衛が弱っているうちに襲撃するとは、敵は本気っすね。けど吸血鬼は他の生き物ありきっすから。にへへ」
翼をもがれたワイバーンが暴れようと頭を起こす――が、その直後に『微笑みに悪を忍ばせ』ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)が自動車の屋根へ駆け上がり大きく跳躍。
ぎゅっと握りしめた拳に力を込め、思い切りワイバーンの顔面へと殴りつけた。
崩れ落ち、力尽きるワイバーン。
「この国の技術には利用価値が残っていますので」
などといいながら、手首をふる。
物陰からそおっと顔を出した住民を見かけ、同じようにおそるおそる顔を出した住民達を指し示した。
「彼らの避難を。あなたにしか頼めないんですよ。竜共は、私たちに」
胸に手を当てるウィルドの紳士的な、それでいて強い圧のある雰囲気に住民は頷き、周りの人々をまとめてシェルターへと走って行く。
練達セフィロトの中でも表層に位置するドーム内が、最も被害を多く受けているポイントである。なぜならジャバーウォックによる被害を直に受け、入り込む亜竜たちが一番最初に破壊したエリアだからだ。
それはどんな建物でも例外ではなく、勿論大きな病院も含まれる。
(竜が攻めて来るとは思わなかったのです。
何にせよ練達は重要地点です。適性はありませんが少しでも竜を倒さないとなのです)
病院から患者を連れて近くのシェルターへと逃げ出す看護師たち。
彼らを先へ行かせ、『鋼鉄の冒険者』ココア・テッジ(p3p008442)は通路の中心で銃を抜いた。
ドッと壁を破壊し通路に転がり出てくる四足獣型亜竜ドレイク。
こちらを睨むと猛烈な速度で走ってくるが、迷わずココアは銃を撃ちまくった。
距離がみるみる近づき――そして、扉をガッと開いた『泥塗れの白』アムタティ・エンリベール(p3p010077)が割り込み、ドレイクの開いた牙を両手でがしりと掴んで止めた。
パワーの違いかアムタティの靴底がフロアタイルを1mほど擦らせるが、そこまでだ。
「考え直して下さいっす! こんなの、悲しいだけっす!」
ドレイクへ呼びかけるアムタティだが、ドレイクはまるで血肉を渇望するかのようにうなりを上げた。その様子に全てを察し、悲しげに目を細めるアムタティ。
(生き残りたい、それがボクの原動力っすけど。
だからって他の人見捨てて逃げる訳にはいかないんすよ!)
直後、すぐそばの窓ガラスを貫いてライフル弾がドレイクの首元へと命中。
(故郷がなくなる系の話はホント勘弁……普段なら適度に働いてお給金! って感じなんだけど)
窓とカーテン越しに状況を透視していた『多言数窮の積雪』ユイユ・アペティート(p3p009040)は、すぐにリロードして次の銃弾を発射した。あまりに芸術的な手際で、ドレイクが飛び退く暇もこちらを警戒する暇も与えない。
「『やぁ、助けに来たよ!』なんて柄じゃないから――明日もどうなるか分からない練達で、悪いけどボクのエゴのために助かってね!」
放った弾が今度こそドレイクの頭部を粉砕。
が、その銃声を聞きつけたのだろう、別の扉が破壊され新たなドレイクがユイユのいる部屋へと出現した。
部屋には医者と患者らしき子供が一人ずつ、隅で小さくなっている。
そこへ新たに現れたのは『収監5日』ディアーヌ・アーベル・アルノー(p3p010063)だった。
槍を構え立ち塞がると、医者たちに『逃げろ』とサインを送った。
子供を抱きかかえて運ぼうという気持ちがフッとわいたが、ディアーヌは首を振る。
「まったくこんなに大きな事件が重なるなんてねぃ…。
これじゃおちおち即売会もできないし、新刊も出せないのよさ。
そしたらあまたの同士(ショタコン)が涙を流すねぃ…なんちゃって」
等と入ってまた現れたのは『魔性のちっぱい』リルカ・レイペカ・トワ(p3p007214)。
ディアーヌと並び、『少年は世界の宝』と呟いて頷きを得ていた。なんか意味が違いそうだけれど。
突っ込んできたドレイクに魔動機の剣を抜き、真正面から斬りかかる。
「いち国家の危機をほっとくわけにいかないだわさ。あたしも練達のために尽力するのよさ!」
黒いライオンの耳と尻尾が揺れる。
横転した自動車やのぼる黒煙やくずれた立体道路を背景に、道路の真ん中に『ネメシス・トレーニング!』アルトリウス・モルガン(p3p009981)が立っていた。
「オレは強力な殲滅技も、誰かを支援するような技も持っちゃいねぇ。ただ……」
身体に気合いを入れ、カッと黄金の瞳を輝かせた。
「継戦能力と嫌がらせにゃ自信があるんだ――」
飛びかかるのは無数のデミリザードマン。
骨の剣による攻撃を、己の身ひとつで受け止める。
一人で相手しよう……などとは思っていない。
ただ、側面建造物の窓をかち割って飛び出した『特異運命座標』ポルカ(p3p010301)の奇襲を成功させるには充分な陽動である。
(初陣がコレとか、ツイてネー……コソ泥にワイバーン相手しろとかどうかしてるゼ、全くヨ)
ヒュッとナイフを放つポルカ。完全に注意を失っていたリザードマンの首に突き刺さったナイフを握って引き抜くと、激しく血が吹き上がった。
「おっと、こっちには来んなヨ?」
急いで飛び退くポルカに変わって、『日々吐血』鏖ヶ塚 孤屠(p3p008743)が飛び込んで点滴スタンドのような変わった形の槍をぐるんと振り回した。
赤い血しぶきのような衝撃が広がり、リザードマンたちを打ち払う。
「おっと、助かった色白の人!」
「久しぶりのお勤めですけど、やることは変わりありませんね!
刺して、穿つ。ただそれのゴッフ!?」
思い切り吐血する孤屠。
「色白の人!?」
「大丈夫、大丈夫。いつものことですから」
「いつもその量吐血してるんデス?」
その後ろからひょっこりと顔を出した『特異運命座標』レミファ=ソラージット(p3p007739)。
孤屠はごふごふと咳払い(吐血)し、その血が煙となってのぼっていく。
「ま、ともかく――ここはレミーに任せるデスよ」
パチンとフィンガースナップを鳴らしたレミファ。空中に突如現れた2振の剣型デバイスが巨大魔方陣を描き、3mフルサイズの砲身を召喚した。
「レミーすぺしゃる、Fire! デス!」
ばっと突き出した手の動きに併せたように大砲が発射され、激しい魔光がリザードマンたちを地面ごと吹き飛ばしていく。
数匹だけなんとか砲撃を逃れて転がったが、それを逃す『孔雀劫火』天城・幽我(p3p009407)であない。
(僕の力はこういう時の為にあるって信じたい。一人でも多くの人を救えるように、僕にできることをしなきゃ……!)
魔方陣を展開し、強力な範囲魔法を放出。
流石に避けきれないリザードマンたちが魔法の光に包まれて散っていった。
人工的な川から無数のデミドラゴ・コモドドラゴンが這い上がってくる。
一般市民達が悲鳴をあげるが、『微睡む水底』トスト・クェント(p3p009132)が間に割り込み安心させるために手をかざした。
「おっけー、もう大丈夫! あとで一緒に行くから安心して」
そう呼びかけると、トストはサンショウオ型の魔術体を無数に作り出しコモドドラゴンへと放った。
次々に爆弾のように炸裂する魔術体。
その中へ、『電ノ悪神』シャスラ(p3p003217)が猛烈な勢いで突っ込んでいった。
(他の竜と戦う者達が自らの敵に注力できるよう、私達もこの場を収め、練達の施設と人的資源を防衛しよう)
心の中で自らの役割を唱えると、カッと目を光らせる。人造の竜としての誇りなのか、それとも彼個人の矜持なのか。
防御特化形態をとったシャスラは食らいついてくるコモドドラゴンの牙を掴み、振り払う。
そんな場所へ、空からワイバーンが飛来――したかと思うと別の方向から放たれた狐火がワイバーンへ直撃。飛行能力を失って川へと墜落した。
「あれは……っ」
「お待たせしましたっ! 火を操るのはドラゴンだけではないんですよ!?」
『力いっぱいウォークライ』蘭 彩華(p3p006927)がガードレールの上にぴょんと飛び乗って一旦自己アピールすると、そのまま「とうっ!」と叫んで跳躍。川から飛び出そうとするワイバーンめがけて白と黒の剣を振りかざした。神社にありそうな飾りのついた、弥生時代めいた青銅剣である。が、纏う神威はかなり強力なものであったようでコマ回しのように繰り出した連続斬撃がワイバーンを再び川へとたたき落とす。
追撃の準備は済んでいる。『セクシーの魔法』フィノアーシェ・M・ミラージュ(p3p010036)が急速に距離を詰め、ワイバーンの首をたたき切った。
(復興が追い付いていない状況での追撃…
…そうまでして敵が練達を滅ぼす事、滅ぼそうとする事に意味があるのか?
……亜竜は殲滅する。それが我にできる事なのだろうから)
「後で酒の一杯でも呑みたい気分だ」
一方で、『ここが安地』観月 四音(p3p008415)が自動販売機の影から顔をのぞかせた。
(うぅ、まさか元現代人憧れの練達でこんな事が起きるなんて……っ。
逃げたいですけど、流石にイレギュラーズとして何もせずに居る訳には……)
ぷるぷると首を振り、困惑している一般市民たちへと手をかざす。
「皆さん、一緒に逃げましょう! こっちです!」
こういうとき、『逃げる』ことはとても重要だ。生きることと同じくらいに。
高いフェンスに囲まれた軍事施設。ジープや大型戦闘ドローンが並ぶヤードは、いま炎と黒煙に彩られている。
「竜の襲撃……え、竜、現実ッッッ!?!??
われさっきROO出たよね!? ここ間違いなく現実だよね!?」
きょろきょろしながらその光景に困惑する『裁断者』ウサーシャ(p3p007848)。
が、困惑している場合ではないと悟って剣(鋏)をとった。
真っ赤な鱗のワイバーンが目の前に降下し、こちらをにらみ付ける。両手の爪が鋭く、そしてゆれる陽炎のような形状をしていた。
「奴は『フランベルジュ』……ネームド個体の亜竜だ」
ブラム・ヴィンセント(p3p009278)がブラッディニンジャ式完全武装で剣を構える。
「フラ、え? これ強いヤツ?」
「気を抜くと死ぬ。行くぞ!」
ブラムが走り出し、こちらに向けて放たれる炎のブレスをアンデッド召喚によって防ぐ。
地面からおきあがったスケルトンたちが壁になった途端炎で消し飛ばされ、その脇を走ったウサーシャがハサミをフランベルジュへ突き立てる。
(最大の危機を乗り越えたばかりの練達に再び最大の危機――正直、どちらの危機がより大きいかは私には測りかねるのですが――というのは、混沌で平穏に暮らしたい私にとっても到底許せるものではありません)
『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)がその隙に着地。後方から檻術空棺の術を行使した。
フランベルジュが突如黒い棺につつまれ、内部に激しい苦痛の魔術が満たされる。
が、それで死んでくれるほど脆い相手ではなかったようだ。棺を吹き飛ばし、吼えるフランベルジュ。
「……異世界とはいえ、やはり人の危機は捨て置けまい」
『花咲く龍の末裔』咲花 イザナ(p3p010317)は棺から出たばかりのフランベルジュの背に飛び乗り、旗と薙刀が合体したような武器を思い切り突き立てた。
フランベルジュが暴れるたび旗が大きく振られ、イザナは振り落とされまいとしがみつく。
「トドメは任せた。小生、混沌入りでだいぶ弱くなってしまっているのでな」
許せ、と呟くイザナに『機竜殺し』ルブラット・メルクライン(p3p009557)がなんとはなしに歩いて行く。
暴れるフランベルジュがルブラッドを斬り割こうと爪をふるう――が、ルブラットはあえて避けない。
「私はこの地で以前、機械の竜を相手にしたことがあったんだ」
身体を貫く爪。ともすれば死にかねないダメージだが、どうやら巧みに致命傷を避けるように『刺させて』いたようだ。
ルブラットは袖から手の中にメスを滑り出すと、フランベルジュの腕へとそれを突き立てる。
「なるほど。機竜と同じかそれ以上……といった所」
毒が回って崩れ落ちるフランベルジュ。
ルブラットも無事ではすまなかったようで膝を突く。
「亜竜でこれとは、ドラゴンというのはどれほどのものなのだろうな……」
先ほどルブラットが述べた機竜というのは、練達が開発していた大型ドローン兵器である。ROOで観測された亜竜のデータをもとに作られた強力な兵器――の筈だったが。
「機竜!」
吼えるような声と共に墜落し、地面に激突する機竜。
それを、緑色の西洋竜めいた亜竜が降下と共に踏み潰し首を食いちぎった。
爆発し完全に破壊されてしまった機竜を見て、『ブーストナックル』モモカ・モカ(p3p000727)がグッと奥歯を噛む。
「とにかく今のアタイにできるのはこいつらをぶっとばすことだけだ! 思いっきりやってやるぞ!」
退いてはなるものかとばかりに四肢の機械からジェット噴射をかけると、亜竜めがけて殴りかかる。
クリーンヒット。亜竜の顔面をへこませる――が、強引に振り払う動きによってモモカは吹き飛ばされビルの外壁へと激突。そのまま壁を壊してフロア内へと転がり込んだ。
「おーおー、こりゃ鱗のひとつでも剥ぎ取ったら高く売れそーな個体じゃん」
フロアの中では、『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)が四足獣型の亜竜を倒して煙草を吸っていた。
交代しなと入って外壁の穴へと身をさらすことほぎ。
「あれが亜竜? 竜じゃねーの?」
「本当に竜であれば、今頃死んでいたでしょうね」
『《Seven of Cups》』ノワール・G・白鷺(p3p009316)がどこからともなく現れ、シルクハットをくるりと回した。何枚も吹き上がるように飛び出したトランプカードを掴み、亜竜へと放つ。
「そうそうお目にかかることはありませんし、興味深いのですが……満員御礼、こうも大所帯で押し寄せられると、それどころではありませんねぇ」
ことほぎも肩をすくめつつも紫煙の魔弾を無数に作り出し、その全てを亜竜めがけて解き放つ。
二人がかりとはいえ重機関銃なみの砲撃を受け、亜竜は大きくビルから飛び退く。
そしてこれ以上の砲撃は我慢できぬとばかりに腕を振り、生まれた雷撃がビルを建物事破壊していった。
「なんと……もしや『雷爪』か!」
『闇討人』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)はその様子に瞠目した。物語の中に語られる亜竜のネームド個体というわけだ。
雷爪は縦の傷がついた片目をぎょろりと咲耶へ向ける。
そのプレッシャーに、近くの一般市民が足を竦ませたが……。
「足を止めてはならぬ! 早く安全な所へ逃げよ!」
咲耶の呼びかけによって再び走り出す。
絡繰手甲・妙法鴉羽『宿儺』を火縄銃のような形に変形させ、『黄泉迦具土』を発射。殺意を具現化したぬばたまの業炎が雷爪へと浴びせられ、同時に『ひつじぱわー』メイメイ・ルー(p3p004460)が物陰からひょっこりと飛び出した。
「ま、守れるのは、わたし達、だけ…。
行かなくちゃ、です、ね。こわい、けど、隙を、つけば…きっと」
雷爪の死角となる位置から、黒いひつじさん精霊へと呼びかける。こくんと頷いたまるっこい精霊は次々と飛び出し、雷爪の目に体当たりをしかけた。
ぼっふんと広がる黒い煙が目に染みたのか、雷爪が首を振ってひつじ精霊を払いのける。
「練達を潰す? せっかくの面白い街なのに、潰すなんてとんでもない!」
などといいながら、『老兵は死せず』リョウブ=イサ(p3p002495)が仲間達をつれて展開。
強力な治癒魔法を詠唱しはじめた。
(それにね、これでも出自は里長の家。ただ暮らす人々を守りたい、という気持ちだってちゃんと持ってるのさ)
リョウブの治癒魔法は今まさに攻撃を仕掛ける『遺産の探究者』ルル・ドロップ(p3p000961)たちを補佐するものだ。
雷爪が再び腕を振るい激しい雷撃を放つ一方、なんとか攻撃を掻い潜ったルルが巨大な時計のついた大砲をキャリーケースから引っ張り出した。
(僕、練達のすんごい技術に憧れてて、時々色んなことを技術者さんから教えてもらって…みんなは、無事かな。
僕は神殿に召喚されてからも、ずっと裏方ばっかりで…でも、今日ここにいるならやらなきゃ!)
時計がガコンと音をたてて午前零時をさした途端、大砲から大量の懐中時計が山なりに発射される。勿論ただの時計ではない。それら全てが午前零時をさした途端、次々に爆発し始めたのだ。
「人間の軍隊のように統率されて組織だった動きは無さそうです。強力な個体を倒せれば、制圧はかなり楽になるはずです」
『深き森の冒険者』ルカ・リアム・ロンズデール(p3p008462)は霊樹の枝から作り出されたらしい魔法の杖を振ると、まばゆい光を雷爪めがけて放った。
二つの光を織り交ぜたそれは、雷爪の身体に不思議な光の膜を作る。
「出し惜しみはしません。今ですっ」
ルカが叫ぶや否や、『風雅なる冒険者』志岐ヶ島 吉ノ(p3p010152)が走り出す。
「山の如き竜の大群! 相手取るに不足無し!!
いざや我が刀の錆としてくれよう!!」
跳躍し、刀を大上段に振りかざす。
隙だらけの吉ノめがけて雷爪が再び腕を振り雷撃を――放とうとして、その腕が空振りした。
「!?」
当然雷撃は放たれない。なぜなら、ルカの魔術によって一時的に力を封じられていたからだ。
「ここで終わりだ、『雷爪』よ!」
最大の隙を見せた雷爪の首へと刀が滑り込み、そして藁束でも斬るように美しく、その首を切断した。
激しい音をたてて倒れ、そして動かなくなる雷爪。
ふと見上げれば、あれだけ空を飛び回っていたワイバーンたちの姿が殆どない。僅かに飛んでいる個体も、空飛ぶ仲間が撃ち落としていった。
「街を……」
「ああ、守れたみたいですね」
ノワールが、無事なことほぎやモモカたちを連れて現れる。
割れた空からは、遠く澄んだ青空が覗いている。
それは紛れもなく、ローレット・イレギュラーズたちの守った空だった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
皆さんの活躍によって練達の亜竜たちを倒すことに成功しました!
GMコメント
■■■プレイング書式■■■
迷子防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
・一行目:パートタグ
・二行目:グループタグ(または空白行)
大きなグループの中で更に小グループを作りたいなら二つタグを作ってください。
・三行目:実際のプレイング内容
書式が守られていない場合はお友達とはぐれたり、やろうとしたことをやり損ねたりすることがあります。くれぐれもご注意ください。
■■■パートタグ■■■
以下のいずれかのパートタグを一つだけ【】ごとコピペし、プレイング冒頭一行目に記載してください。
【市街】
おすすめ:『とにかくバトルだ』『近未来都市で戦いたい』『危ない市民を救出したい』
セフィロト郊外を襲撃している亜竜の群れを殲滅します。
亜竜に襲われている市民や、取り残されている市民を救出するのもこのパートの役目です。
【天空】
おすすめ:『空を飛んで戦いたい』
※飛行(飛翔含む)等の戦闘可能な非戦スキルを有している場合のみ参加できます。
亜竜の中にはワイバーンをはじめ空中戦闘を可能とする個体も多くあり、放っておけばアドバンテージを取られてしまいます。
なのでこちらも空中戦闘可能なイレギュラーズを空に飛ばし、ワイバーンたちへ戦いを挑む作戦が立てられました。
【東京】
おすすめ:『現代日本的都市で戦いたい』
主に再現性東京希望ヶ浜地区での戦いになります。
他の再現性東京エリアで戦いたい場合はプレイングの三行目あたりに『再現性〇〇』と記載してください。また、同じエリアで一緒に戦いたい人がいる場合は可能な限りグループタグを利用して下さい。
【医療】
おすすめ:『医療班として活躍したい』
戦場での負傷者が撤退してくる後衛テントで治癒する部隊です。
この部隊が活躍すればするほど味方の重傷者が減ります。これはローレット・イレギュラーズにも、本作戦に参加している練達の兵たちにも適用されます。
■■■エネミーデータ■■■
このシナリオで戦う敵は全て亜竜となります。
(真の竜はあまりに強すぎるため、別シナリオで特別チームが組まれています)
モンスターは複数種おり、フィールドを問わず広くばらけて分布しています。
また、このリストにない種類や特別強力なネームド個体が現れることもあります。
・ワイバーン
空を飛ぶ亜竜です。牙や爪で攻撃し、時には魔術を行使することがあります。
・リザードマン(厳密にはデミリザードマン)
人型の亜竜です。亜竜種とは決定的に異なるドラゴンの眷属で、竜の骨から作られたという武具で戦います。
・ドレイク
四足の獣めいた亜竜です。虎や豹のように俊敏で鋭い牙による食いつきや爪の攻撃は脅威となります。たまに、これに騎乗したリザードマンライダーがいます。
・バジリスク
ニワトリの頭と蛇の尾を持つ亜竜です。石化の光線を放つなど個体として強力です。
・ヒュドラ
複数の頭を持つやや強力な亜竜です。飛行能力を持ちませんがその分強力な魔法などの攻撃手段を持ちます。
・コモドドラゴン(デミドラゴ・コモドドラゴン)
野生動物に近く、魔法的に強化・ないしは進化した種類の亜竜です。巨大なトカゲ型モンスターで、壁を這うなどの器用な動きが可能です。
・リンカルス(デミドラゴ・リンカルス)
野生動物に近く、魔法的に強化・ないしは進化した種類の亜竜です。巨大な緑色の毒蛇です。毒攻撃を得意とし、対象を丸呑みにします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●決戦シナリオの注意
当シナリオは『決戦シナリオ』です。
<Jabberwock>の決戦及びRAIDシナリオは他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません。(EXシナリオとは同時参加出来ます)
どれか一つの参加となりますのでご注意下さい。
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