シナリオ詳細
<夏祭り2018>幻燈の灯 夢現の楼閣
オープニング
●夢現楼閣への招待
「限られた夜しか行けない、トクベツな招待状をもらったのです!」
浴衣に身を包んだ『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が、ネオ・フロンティアから特別な招待があったと話しはじめる。
「海洋の海はとってもひろいので、いろんな生き物がいるとされています。なかでも、この時期だけ出現する特別な霊獣『蜃(しん)』がすごいのです!」
姿かたちは『大ハマグリ』といわれるこの霊獣。
人畜無害で、ふだんは海の底を漂っているのだが、この時期の祭りの夜だけ、ネオ・フロンティアの沖に特殊な幻術を使った楼閣を出現させる習性があるという。
「海の真ん中にとつぜん建物があらわれることから、『蜃気楼(しんきろう)』というコトバの語源になったとかなんとか……。
ともあれ。この楼閣は風物詩となって、毎年地元の方々にも親しまれているようなのです。ご興味のある方は、ぜひ行ってみませんか?」
楼閣は海のど真ん中に出現するため、専用の渡し舟に乗って向かう。
楼閣内のドレスコードは、『浴衣』着用。
手持ちの浴衣を着て来ても良いし、当日、その場でレンタルすることも可能だ。
「楼閣は、海の真ん中にあっても目立つくらい、背のたかい重層の建築物です。艶やかな朱塗りで、とっても豪奢なんだそうですよ」
階層ごとに多くの部屋が用意されているため、大人数で押しかけても大丈夫。
下層階の各部屋には、軒先に数百という『風鈴』が吊り下げられている。
周囲にはすぐ海が広がっているため、潮騒と風鈴の音を楽しみながら涼むことができる。
また、この階層は意図的に灯りの数を少なくしているという。
上層階の喧騒もここまでは届かないので、静かに夜を過ごしたい場合におすすめだ。
中層階の各部屋では、楼閣に飾る『とうろう』を手作りすることができる。
和紙を使ったとうろうなので、和紙部分はそれぞれにアレンジが可能だ。
墨や画材、工作道具などはひととおり揃っている。
作ったとうろうは、楼閣消滅時に大ハマグリが海にのみ込み、作り手の厄落としをしてくれるという言い伝えがあるらしい。
この時期らしい、お祭りっぽいことをしたい者には良いかもしれない。
最上階は、360度オーシャンビューの大広間となっている。
楼閣出現中は定期的に『花火』の打ち上げが行われており、いつでも夜の華を楽しめる。
この場所に限り、食べ物屋台などの露店が並んでいるため、飲食も可能だ。
賑やかに過ごしたい者は、ここで絶景を楽しむもの良いだろう。
施設の手伝いの他にも、場を賑やかにするような提案があれば、歓迎されるかもしれない。
「単独での参加はもちろん、誘いあっての参加も大歓迎なのです!」
大ハマグリは海の向こうから来たとも言われているので、浴衣の客人が大勢訪れれば、きっと喜ぶだろうから。
ユリーカはそう告げて、招待状を配って回った。
- <夏祭り2018>幻燈の灯 夢現の楼閣完了
- GM名西方稔
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年08月03日 21時31分
- 参加人数62/∞人
- 相談5日
- 参加費50RC
参加者 : 62 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(62人)
リプレイ
●下層
浴衣姿で船着場に向かえば、招待状を確認した船頭が次々とイレギュラーズを楼閣まで案内する。
着いた先は、朱紅の楼閣の最下層。
波音と薄明りのなか階段をあがれば、数多の風鈴が軒先に揺れていた。
――ちりん、りん、りり。
リムリト(p3p002786)は、祭り事には参加したことがない。
場の雰囲気がよくわからず、ただあてどなく楼閣の下層を彷徨っていた。
(この風鈴の音はとても心地よく、いつまでも聞いていたい気持ちにさせてくれる)
――自分の庭にも付けようかな。
音色に浸りながら歩いていると、たどり着いた部屋に灰色狼の男が佇んでいる。
「良い夜だね、お嬢さん」
声を掛けたのは、グリムペイン(p3p002887)。
ここから海が見えるのだよと、窓の外を示して。
「蜃の幻とはまた珍しいものが見れたねえ。もしも海が割れて歩いていけるなら、この目でみてみたいと思うものだが」
リムリトは、グリムペインが何を言っているのか、よくわからず。
その様子をみてとって、男は笑んだ。
「ふふ、想像こそが何よりもそのものを美しくさせる、かな? ヘビとキジの間に生まれるというのは本当だろうかな」
首を傾げる少女のオッドアイを受け止めながらも、彼の脳裏にはギフトによる知識が次々と流れ込んでくる。
「ああ、こうゆう時はギフトは切っておくのが正解だねえ。何もかもが分かってしまうのは、面白くないものだよ」
佇む少女と一緒に、ただ、耳を澄まそうと決めた。
「なるほど、これは一見の価値がありますね」
『触れる事すら可能な幻術とは、興味深いな』
アーラ(p3p000847)は少女イリュティムとともに、霊獣の幻術に興味津々。
どうにか風鈴を持ち帰れないものかと部屋で様子をうかがっていると、グレイル(p3p001964)がやってきた。
「……こんばんは。……上は賑やかみたいだけど……。波の音と……風鈴の音色……。それだけを楽しむ……こっちの方が……僕は……好きだから……」
「心洗われる風景ではありますね」
『これも、ある種の芸術といえるのかもしれないな』
交互に語る様子を見やり、グレイルは窓の側に近寄って。
「……そういえば……花火は……、ここから……見えるのかな……?」
窓から空を仰ぐも、幻術の演出ゆえか、欠片も見えないようだ。
「……後で……上に行ってみようかな……」
呟く様子に、それは名案とばかりに賛同する。
「中層でも、何やら催しをやっているとのことでしたし」
『灯篭ではなかったか?』
引き続き機を伺いながら、清廉な修道女を演じた。
――り、りん、ちりん。
「見て下さい。この風鈴、何だか鼎さんに似てませんか?」
銀に黄の模様をあしらった風鈴。
可憐で愛らしい音色を響かせるひとつを示す『儚き雫』ティミ・リリナール(p3p002042)へ、
「ふふ、似てると言われるとなんだか嬉しいよ。それなら、ティミ君にはこっちの風鈴が似てるかな?」
淡い儚げな風鈴を示したのは、鼎(p3p000741)。
嬉しいです、と微笑む様子に、鼎はおもむろに眼を閉じて。
「響きあっていい音だね」
「聞き分けられるんですか? すごいです」
「ふふ、ほんとだよ? ほら、こうして目を閉じても……」
ティミが指先でつんと鈴を揺らせば、ちりんと、奇麗な音色が響く。
「今鳴ったのが、ティミ君な風鈴かな?」
芯に強いとこのあるティミ君に似た音色、と零せば、
「ふふ、嬉しいです」
くすぐったそうに微笑む様子を、鼎は穏やかな表情で見守る。
おろしたての夜色の浴衣をまとい、一室の隅で涼むのはウィリアム(p3p001243)とマリア(p3p001199)。
「涼しいんですのねー、この浴衣というものはー」
慣れない浴衣に戸惑いもあるが、着心地は悪くない。
「……ふふ、ウィリアム様、お似合いですのー」
「確かに過ごしやすいな、これ。……あー、マリアのも似合ってる、と思うぞ」
紫陽花柄の浴衣をちらと見て、小さく零す。
あたりを満たす涼やかな音色。
夜風と相まって、身も心も涼んで澄んでいく気がする。
「最近はどうですのー……? 何か変わった事はありましてー……?」
「変わった事? ……うーん、特には無いかな。マリアの方こそどうなんだ?」
冗談混じりに「好きな人でもできたか?」と問えば、
「す、好きな人、ですのー? ……ひ、秘密ですのー……!」
「ふーん、秘密、ねえ」
「そ、そういうウィリアム様はどうなんですのー?」
「……俺? 俺は……いや、居ないし、よくわからないな」
薄闇のなか、互いの顔色は、見えそうで見えなくて。
――ちりん、り、りり。
訪れた沈黙を隠すよう、ひときわ大きく、鈴の音が響いた。
海風に揺れ、風鈴が一斉に鳴り響く。
「なんか、向こうの世界に戻ったみたいやわ……こうしてると」
蜻蛉(p3p002599)の言葉に、雪之丞(p3p002312)も頷く。
「懐かしい音。ですね。耳に心地良い音です」
呟き、ふらり揺れた肩を、とんと支えて。
「眠たなったら言うてね、いつでもお膝貸しますよって」
「大丈夫です」
「もう少し。蜻蛉さんとお話をしたいですから」と続けるも、海遊びの心地よい疲労が、まどろみに手招いて。
見かねた蜻蛉が、ぽんぽんと、自分の腿を叩く。
「少しだけ」
「ええ子や、たまにはこういうのも、ね?」
囁くような声音。
不安になる心地も、柔らかな温もりと匂いで溶けていく。
「……甘えてしまっても、いいのでしょうか」
「甘えたらええよ。その方が、うちも嬉しい」
髪を撫でられる心地と、睡魔に身を任せて。
「蜻蛉さんは、陽だまりのような方、ですね――」
やがて、波音と風鈴の音に、膝上の娘子の寝息が重なって。
髪を撫でながら。
やがて蜻蛉も、夏夜の夢のなかへ。
飾られた鈴がどこから伝わったものかは、定かではないが。
混沌肯定『崩れないバベル』――最高級の自動翻訳機能が訳するに、それは異世界で『風鈴』と呼ばれている物と近しい物だったのだろう。
「……まぁ。細かい事はいいか」
眼前の光景を懐かしいと感じつつ、ルナール(p3p002562)はルーキス(p3p002535)と共に鈴の音に耳を澄ます。
「はいルナール先生。足も痛いし、ちょっと休憩したーい」
「あぁ、悪い。下駄は慣れないと足が痛くなるな。休憩しようか」
適当な窓辺に座り脚を伸ばせば、
「折角だし膝枕でも如何?」
と、ルーキスが手招き。
身を任せ横になれば、他愛ない問いが降り注ぐ。
「水着と浴衣どっちが好き?」
「うーん、どっちも捨てがたいんだよなぁ……」
「個人的には水着のほうが気楽だけど」
「俺的には、浴衣の方が安心かな……」
吹きすぎる風に、ふと、祭りの終わりを想って。
「帰りはまた、足痛くなりそう」
「ルーキスなら軽い」
それならお姫様抱っこしていくよと、ルナールが笑った。
船頭へ礼を告げ、シーヴァ(p3p001557)が最寄りの欄干へ腰掛ける。
順に揺れる風鈴の音色を聴いていると、風の姿が見えるよう。
「明るいうちはとても暑いから、此処の潮風は心地好いわ」
誰にともなく言葉を零せば、
「昼の海は暑く眩しかったから、こうして暗く涼しいのは助かる」
思いがけず、背後から声が返った。
佇んでいたのは、ラダ(p3p000271)だ。
「浴衣と言ったか、この衣装も」
存外風を通すので、来年あたり一着作ってみるのもいいと、シーヴァの葡萄茶の浴衣を見やる。
会話の合間に、また鈴が鳴って。
「この鈴も、件の霊獣が作り出したものだったか。一体何処で覚えたのか」
随分とロマンチストに思えると呟くのへ、
「お祭りの夜だけなんて、勿体ないけれど……。だからこそ、風情があるのでしょうね」
ラダの言葉に頷きひとつ。
「帰る前に、ひとつ買ってみるのもいいか」
幻想やラサでも同じように感じられるかは、帰ってからのお楽しみだなと、歩き去る背中を見送る。
暗い海。
姿の見えない、霊獣へ。
「とても素敵な夜をありがとう」
シーヴァはそっと、語りかけた。
●中層
下層からしばらく階段を昇れば、徐々に灯りが増えていき。
煌々と光の満ちる部屋には、いくつもの卓が並んでいる。
「ミラージュのタワー……なかなかに面白い! 『とうろう』とやらは夜を照らし、スピリットに供えるものと聞いた!」
部屋の入口で、テンション高く叫ぶのは豪斗(p3p001181)。
「フーリッシュ・ケイオスに在ってはそれほどのパゥワーは出せぬが……今宵、このミラージュに集いしヒーローズ&エンジェルズの為に! ささやかながらゴッドが照らそうではないか!」
素通りしていく人々をよそに、『神格者』はなおも語る。
「つまりは、ゴッド自身が『とうろう』のロールを果たす! このゴッドの威光(ギフト)を以って!」
カッ!と神々しい光をはなち、灯篭の列に加わって。
「ユー達のプレジャーこそがゴッドのトレジャー! ゴッドはここでモーニングを迎えよう!」
宣言する様子を(ギフトの効果で)無視できないまま、人々は思った。
――彼、海に沈むんじゃないかな。
灯篭のひとつとなった男の喧騒をよそに、
「混沌の霊獣と言うのも凄いものですね。幻術で、こうも立派な楼閣を作り出せるのですから」
「そんな場面に立ち会えたのも神の配剤でしょう……。今日はゆっくりと、この場を堪能させていただくとしましょう」
「今日の良き日を楽しまなければ……ですね」
ノエル(p3p006243)は卓で同席したコーデリア(p3p006255)と共に、のんびりと作業を進める。
慣れない作業も互いに教えあい、無事に完成!
飾り付ける前に、他の人の作品を見たいと、
「こんばんは、どのようなとうろうを作られたのですか?」
袖をたすき掛けし、気合十分な風体のグレン(p3p005709)に声を掛けた。
グレンは手にしていた自作の灯篭を掲げ、「俺のは、ご覧のとおり」と披露して。
「そういうアンタたちは、どんなのを作ったんだ?」
問われ、コーデリアは「こう見えても、手先の器用さには少し自信があるのですよ」と微笑む。
「私は、我が家の家紋を描きました。僅かなりとも、家の……民の安寧となるのであれば幸いなことです」
「私は、先ほど見た『花火』を描きました」
渡し舟から見たそれは美しく、折角なので、その光景を描いてみるのも良いと思ったのだ。
「儚くも美しい、ってやつかね。どうだい、お二人さん。高い所に飾るなら手伝うぜ」
グレンの呼びかけに、二人は喜び、頷いて。
まだ灯りのすくない他の部屋へと、連れだって行く。
ハイド(p3p000089)も卓のひとつに着席し、絵筆を手に取る。
「物作りなんて何時ぶりになりますかねぇ……。上手く完成出来ると良いのですが」
どんな色を灯篭に浮かべましょうかと、しばし思い巡らせ。
やがてさらさらと、朝顔や花火を描きだす。
「夏らしく、鮮やかなものに仕上がります様に」
――他に参加された方々は、どんなものを作られたのでしょう。
視線を巡らせれば、同じ卓で作業をしていたシャルレィス(p3p000332)と目が合った。
「あ! 朝顔の絵、同じだね!」
自分の浴衣の柄をお手本にしたのだと、1面は絵を。
2面は和紙を使ったちぎり絵に。
残る1面には、ハマグリを描いた。
海の中だから、会えないのは残念だけれど。
「ハマグリさんのおかげで楽しめているんだもんね! 絵だけでも一緒に、ね!」
「花火の絵は、お姉さんとおそろいねぇ」
灯篭を完成させたアーリア(p3p004400)も、他の人の作品を見たいと声をかける。
「せっかく花火が打ち上がってるから、描いてみたのよぉ。この楼閣が一時の夢のように、花火も一瞬の夢だもの」
「限られた夜にだけ行ける不思議な楼閣、って素敵よねぇ」と、改めて室内を見渡して。
「あなたは、何を描いてるのぉ?」
と、別の卓で作業をしていたリディア(p3p003581)の手元を覗き込む。
一枚目が、一枚の霊樹の葉というのは、わかる。
聞けば他の3枚は、霊樹ファルカウ、木漏れ日の差し込む森の中の泉、火事で燃え盛る森を描いているという。
「私、海洋に来るまで海がこんなに広いものとは知りませんでした。だから、私はこんな場所から来たんですよって、海の底にいる蜃にも伝えてみたいんです」
その声を聞きながら、レオン・カルラ(p3p000250)も赤毛の人形たちと絵付けのご相談。
「お月様は夜の道しるべ」
『"とーろー"は暗い世界を照らす光』
――それならお月様にしてあげたほうが、喜ぶよね?
――ハマグリさんの海は暗そうだもの。
完成した灯篭は、ハマグリさんがぱっくん。
皆の悪いやつと一緒に、海の底まで連れていってくれる。
――それって美味しいのかなぁ? ……そうだ!
「おやおや?」
『あらあら?』
――えへへ、飴の模様。ハマグリさん、食べたことなさそうだから。
薄明りにキャンディを散らして。
――海の底にも、届くかしら?
霧玄(p3p004883)も、ギフトによって生み出した零夜と一緒に、絵付けの作業中。
浴衣の柄は、霧玄が星、零夜が月。
それぞれ改造を施した、お揃いの一着となっている。
灯篭の色も夜をイメージしようと、淡い紺色に染めあげて。
四面のあちこちに、星と月を散りばめていく。
「これからも一緒に居られるように」
「お互いが、お互いを照らしあえるように」
願いを込めて、丁寧に筆をはしらせていく。
「夏といえば海、みたいなところあるけど、こういうのも趣があっていいよね」
「とうろう作りは初体験ですが、石像作りが趣味な私の血が騒ぎます」
アレクシア(p3p004630)とオーガスト(p3p004716)も、肩を並べて作業に勤しむ。
頑張って可愛く仕上げたい!という気合はともかく、和紙を使っての組み立ては、想像以上に繊細な作業で。
「どう? うまくできてるー? 私、結構苦戦しててさ……」
視線を感じアレクシアを見やれば、あちらも、見本のようにはうまくいかない様子。
「やっぱり難しいですね」
苦笑いを浮かべ、『石柱万歳!』と書いた和紙製の旗を刺しておく。
我ながら自分の美的感覚を疑うが、終わり良ければすべて良し。
綺麗な灯篭に混ざって、すこし不格好な灯篭がふたつ。
完成した灯篭を部屋に並べ、アレクシアに微笑みかける。
「今日はお誘いありがとうございます」
「オーガスト君こそ。付き合ってくれてありがとね!」
また一緒に、同じ時間を共有できますように――。
「朝には消える一夜城とは、風流だねぇ」
マナ(p3p000350)の浴衣姿もよく映えてると、縁(p3p000099)が卓の前に陣取って。
小さい頃に作ったきりだが、案外覚えてるモンだと、マナへ向けて灯篭づくりの指南に掛かる。
「『和紙』と呼ばれる紙を木組みに貼り付けることで、ほんのりとした灯りを生み出すのですね……」
「紙がたわまねぇよう、貼る時はこうやって端からやるといい。皴を伸ばしながら……そうそう、上手だ」
小さな手元を覗き込み、何を描いたんだと問いかける。
「私のとうろうには、明るく綺麗に見えるようにという思いを込めて、花火の絵を描いてみました。い、いかがでしょうか……」
色鮮やかな大輪の花火に、
「マナには灯篭作りの才能があるぜ」
やわく頭を撫で、自分の灯篭も仕上げにかかる。
問うような赤の瞳に、縁は眼を細めて。
「おっさんは何を描いたかって? ……さて、な、秘密だ」
よく通る声で、一句。
――泡沫の 夢を飲み酔う 熱帯夜。
また別の卓では。
「ガハハ、とうろう作りなんて初めての経験だが、やるからには張り切るとしようか!」
「ふふ、頑張りましょうね、ガドルさん」
ガドル(p3p002241)とカシエ(p3p002718)が、並んで絵付けを行っていた。
「俺はどうも細かい作業は苦手なんだよなぁ」
しかし、やる以上はイイ物を作り、楽しい想い出にしたい。
ガドルはカシエをイメージし、白と金を基調とした明るい絵を描いて。
「明るい赤に暗い緑を差し色として……。太陽のような花を描きましょう」
カシエはガルドをイメージしながら、大胆に色を置いていく。
絵が仕上がったなら、次は組み立て。
「すまんカシエさん、ここはどう作れば良いと思う?」
「あら、えぇと、ここはまず此方を……」
互いの手元を覗き込み、四苦八苦。
失敗しながらも作りあげた灯は、愛着もひとしおで。
「これが沢山海に飲み込まれる様子は……きっと、とても美しいのでしょうね……」
海の見える窓際に、ふたつ、灯りを並べる。
【LAW】の4人も、揃って灯篭作りへ。
「浴衣姿だと、なんだか別人みたいだね。こういうの新鮮で楽しいな~」
ニーニア(p3p002058)の言葉に、ヘイゼル(p3p000149)が同意する。
「涼しげで、海洋の夏の夜には良いものですね」
「ヤマトナデシコ揃いですねえ、わたしを含めて」
クァレ(p3p002601)の言葉に、一同が笑って顔を見合わせて。
「しかし、慣れなくて転びそうになるよ! 全く、気をつけないと……」
嘆息しながらも着席し、
「その上『とうろう作り』なんて、全く初めての経験だ。長生きもするものだ」
マルベート(p3p000736)が、感慨深げに机上の道具を見やる。
「『とうろう』と云うのは、紙の照明器具なのですね」
ヘイゼルの扱う照明器具は、盾代わりに使っているほど頑丈な代物。
和紙を前に、まるで想像がつかない。
「皆にまた会えるコトを祈り、LAWにちなんだ美味しいものをテーマにするのです」
「ここは、やっぱり自分らしくいかないとね」
クァレ、ニーニアに続いて、マルベートも鋏を手に作業を進める。
ヘイゼルは楼閣に飾られた灯篭を参考に、筆を手にして。
「描く模様だけは、オリジナルのものを墨で一気に!」
勢いにのせて絵付けを行う様子に、3人が歓声をあげた。
「さてさて、皆様はどのようなとうろうを作ったのでせうか?」
ヘイゼルがスタンダードな灯篭を手にする一方、
「僕はポストカード風の絵を張ったデザイン。とうろう流しのように想いを届ける意味でも、郵便屋さんらしいデザインがいいかなって」
ニーニアに続いて、マルベートも華やかな灯篭を掲げて。
「白い和紙を幾つか羽のように切り飾って、いつか見た天使の羽が舞い散る様子をモチーフにしてみたよ」
きっと厄を退け、幸福を呼び込んでくれるはずだと、「私達の未来に幸あれ、だね」と微笑む。
「ふふふ、皆と並べるだけでもなんだか嬉しいね!」
ニーニアも満面の笑み。
「お腹すいたのです。皆で、屋上の屋台の美味しいもの食べないです?」
クァレの提案に、3人も賛成!
来た時と同じく、賑やかに昇降機へと歩いていった。
●上層
下層から昇降機で一気に上まで。
あるいは、階段を使って最上階まで昇れば、そこは一面のオーシャンビュー。
幻術による『花火』が、一定ごとに夜空を彩る。
「ん? あれは何でしょう、何か激しくはじけて光ってやがりますが……」
綿菓子を頬張るイヴ(p3p006216)の独白に応えたのは、近くで夜空を見上げていたランバート(p3p002402)だった。
「花火。炎色反応を用いて彩るものだな。本機のデータにも勿論存在している。……こうして見るのは初めてではあるが」
「ハナビ?」
好奇心でこういう場に来てみたが、イヴの住む世界には無いものだらけで。
「リチウム、ナトリウム、カリウム、バリウム、銅。本機の世界ではそう作られるのであるが、此方でもその様な作り方をするのだろうか」
難しい言葉はわからないけど、とイヴは前置いて。
「この楼閣も大ハマグリの幻術だっていうし、ハナビもそうなんじゃないですかね?」
言われ、それもそうかとランバートが頷く。
「無粋な事を聞いた。この場は楽しむ者の場であったな。しかし、……成程。確かに、夜であるこそ栄えるものである」
次々と撃ち上がる花火は、キラキラと夜空に散って。
「たーまやー♪」
背後から、突然の声。
「ふふ。花火があがったら、この呪文をとなえるのがお約束なんだよね☆」
チョコバナナを頬張りながら、ミルキィ(p3p006098)がご機嫌な様子で微笑んでいた。
「花火を見ながらの食べ歩きも、癖になっちゃうよ」
きみたちも楽しんでねと手を振り、リンゴ飴の屋台へ入って行く。
イヴはというと、金魚すくいに向かった。
食用魚として扱えるか尋ねれば、
「え、食べられない? なら何故、みんな必死に捕まえようとしてるですか?」
「そういう出し物だからだよ」と、店主の声に首をひねる。
「何だか、本当に良く分からない世界でやがりますね混沌は……」
イシュトカ(p3p001275)とセレネ(p3p002267)が歩くたび、ちりりと鈴の音が響く。
音を辿れば、互いの手首に揃いの鈴。
「あの、普段のお召し物も素敵ですが。浴衣も、とてもお似合いです」
「君の浴衣も、とても素敵だ」
ありがとうございますと礼を告げ、レースがお気に入りなのだとセレネが応えて。
――ど、どん、どどん。
音に顔をあげれば、皆が空を指さしている。
「花火、上がり始めました」
揃って同じものを見上げる様子に、
「どうして、こう……人は花火が好きなのでしょう。儚い、からですか?」
「儚い、か。そうかもしれないね」
イシュトカが応え、椅子のある方へと、手招く。
「終わるということは、同時に何かが始まる兆し……予感を含んでいるということでもあるけれども」
「ひとつ賢くなりました」
席を確保して、並び着席。
「こういう事を考える子供はおかしいですね」
うつむく様子に、イシュトカは告げる。
「強いて子供でいる必要もないし、無理に大人になる必要もないさ。その感性を大事にしたまえ」
「……はいっ!」
大きな瞳に、夜空に咲く大輪の花を映して。
セレネはふわり、微笑んだ。
「焔さまの浴衣、藍の色合いがとても素敵ですね! よくお似合いですよっ。私の浴衣は……ふふ、どうかなぁ?」
くるり、回って見せるアニー(p3p002602)に、
「アニーちゃんの桜色の浴衣もすっごく可愛いよ、よく似合ってる!」
焔(p3p004727)は笑顔を返し、まずは屋台でリンゴ飴を買おうと手招く。
人の波を縫って楼閣の端まで行けば、眼の前には海だけが広がって。
「ほらほらアニーちゃん、ここからならよく見えそうだよ!」
「いつ始まるかな? どうしましょう、もうドキドキしてます!」
「見たらきっとビックリするよ。夜空にね、パッって光のお花が咲くんだ!」
そう両手を掲げた瞬間、
――ど、どん、どおん!
次の瞬間、腹の底に響いた音に、アニーは思わずリンゴ飴を取り落としそうになって。
「少し遅れて聞こえてくる……!」
「そっか、初めてだと音にもビックリしちゃうよね」
焔が笑い、まだまだ続くよと、宙を仰ぐ。
「すごい……ほんとうに光のお花が咲いてるみたい……綺麗……」
リンゴ飴に口を付けたのは、結局、花火がひと段落した後だった。
花火の音を背景に、屋台の真ん中でミニュイ(p3p002537)は腕組み。
「りんご飴にいちご飴、飴細工。カステラ、大福、揚げアイス……。あと暑いから、水分も多めに確保しないと」
買い物後に女王(p3p000665)と合流する予定だが、あまり沢山持っていくとレジーナがパンパンに膨れてしまう。
しかし、数分後。
「ふふふ。ミニュイは何をもってきてくれたかしら?」
女王の手には、たこ焼き、カステラボール、バナナチョコ。
自身の似顔絵入りの、落書きせんべいまであって。
花火の見える椅子に腰かければ、
「ほらミニュイ、口を開けて? 我(わたし)手ずから食べさせてあげる」
さっそく、食べさせあいっこ開始。
大きく口を開けて、ぱくり。
潮風に吹かれながら食べるたこ焼きは、絶品で。
「レジーナ。この飲み物も美味しいよ」
花より団子。
互いのお勧めを味わいながら、夜の華を仰ぎ見る。
「んー、この果物あまくて冷たくておいし~」
しゃくしゃくとスイカを食べるサクラ(p3p005004)は、ひとり祭りを楽しんでいた。
身体の奥底まで響く初めての花火にも、いたく感動して。
「すっごい迫力! 綺麗だし、どーんっていう体に響く音もなんだか良いなぁ」
大迫力の花火と静かな海。
涼しい空気に甘いスイカを楽しみながら ほぅっと夢見心地のため息をつく。
周りを見渡すと、カップルが多い事に気づいて。
――いつか自分にもそういう人が現れて、そういう人と、こういう場所に来るのだろうか。
「んー、まだちょっと、想像つかないや」
ぼやいた背中に、ふいに、声がかかった。
「やあ、お隣空いているかな? 失礼するよ」
男は、クリスティアン(p3p005082)だと名を名乗り、
「初めて見る花火に少々張り切ってしまってね! 屋台で色々と買ってきたんだ、君も一緒にどうだい?」
両手いっぱいの食べ物や飲み物をさし出して、笑う。
「あ、どうぞ」
急な事に、気の利いた言葉など出るはずもなく。
隣に腰掛けたクリスティアンを見やった。
彼は花火を仰ぎ見ながら、
「僕の故郷には無かったものだから……迫力と美しさに圧倒されてしまうよ」
誰もかれもが眼を輝かせ、夜空に魅入る様子に、微笑んで。
「フフフ、流石の僕も夜空に煌めく大輪の花には勝ち目がないね」
何だか憎めないオーラに、サクラがくすりと笑って。
「私も。今日、初めて花火を見るんだ」
良かったらこれもどうぞと、もうひとつのスイカをさし出した。
ただのひととき こわれてきえる
だれよりみじかい せつなのいのち
そのときあなたは だれよりも
かわいくきれいで せつないの♪
カタラァナ(p3p004390)の歌に拍手を送るのは、エマ(p3p000257)。
浴衣を着て、友達と一緒で。
何から何まで、今回は特別で。
「えひひひ。そういえば今更言ってませんでしたが、私は幻想の貧民街で生まれ育った盗賊でしてね」
儚く消えていく花火を横目に、エマは続ける。
「物心ついたときには親もなく、というところです。まともに行事に参加できたこと何て今まで全然なかったんですよ。ましてや、外の国でこうして花火を見るなんて」
――鯨の骸。路地裏の猫。あなたの事も。
――怯えて、怖がって、でも諦めたりはしない、なのに脆くて儚くて触ったら壊れそう。
壊したら、きっと綺麗だろうなって思う。
でも、壊れたらやだなって思う。
「言ったことなかったけど、僕ってば海洋の貴族なんだよ。一応」
ぐちゃぐちゃの感情を抱えて。
それでも、伝えようと思った。
「ひひ、浮世離れしてるなぁとは思ってましたよ」
「でも、小さなことだよね」
確かめるように、願いを込めるように、カタラァナは言った。
「僕達はともだちだよ。……だよね?」
「勿論ですとも、些細な事です。友達、友達!」
二人を鼓舞するように。
どん、どん、ぱらりと、夜の華が爆ぜる。
「いろんな食べ物を買ってきましたよ。アランさんの焼きそばやかき氷。……喜んでくれたら嬉しいですが、どうでしょう……?」
探るような視線を向ける悠凪(p3p000885)に、リジア(p3p002864)は感心したように、言った。
「お前は毎度食べ物を持ってくるな。……食べるが」
並んで見あげる、夜の華。
それは、リジアの世界にも存在したという。
「私の世界ではこの娯楽――道具らのために、一生を費やす生き物がいたそうだ」
故に、世界を超え残存する物が存在することは喜ばしいことなのだろう、と零して。
ふいに、悠凪が向き直る。
「リジアと出会ってから、結構経ちますね。これまで、私のわがままに付き合ってくれてありがとうございました」
「……急にかしこまるな。私は大した存在じゃない」
「できればこの縁も、長く続けばいいのですが……。あはは、ここに来てもわがままですね、ごめんなさい」
「お前がよろしくしたいというのであれば……。私はそれに応じるまでだ。これからも、この先も」
その言葉に、悠凪は安心したように、微笑んだ。
●夜台決戦
「祭りと聞いたからには、勝負と洒落込むかアラン?」
その一言から始まった、屋台売り上げ勝負。
夜天の下くりひろげられる大勝負――故に、人はこれを『夜台決戦』と呼んだ。
最上階の一角にて。
クロバ(p3p000145)と、アラン(p3p000365)は、向かい合わせになり、火花を散らしながら屋台をひらいていた。
アランがつくるのは、中央に大きな目玉焼きの載った『太陽焼きそば』。
太陽の勇者という名声を頼みに、今回はできる限り荒い口調も直して臨む。
対するクロバは、アランが焼きそばでくることは予想済み。
自身は、得意の甘味で勝負!
目玉は、夜天下でも映える『七色わたあめ』である。
パフォーマンス用のライブクッキングも用意し、準備万端。
「王道に対してこちらも王道。さぁ、残念なく奮うとしようか!!」
「やーあやあ! 美味しくて熱い屋台バトルだよ! 皆、胃袋でしっかり美味しさを確かめてね!」
周囲で売り子兼、整列係を担当するのはシグルーン(p3p000945)。
紺地に、青やピンクの朝顔を咲かせた浴衣で、帯は橙色。
目立つ容姿とあいまって、花火にも負けぬ華やかさだ。
「焼きそば……? 七色わたあめ……?」
猫柄の浴衣を着たエリーナ(p3p005250)が呼び声に足を止め、召喚物(ペット)の妖精と一緒に店を覗きこむ。
そこへ、
「おう、リゲルじゃねぇか? 俺の応援に来たのか?」
「アラン兄上、クロバ、お手並み拝見!」
冗談交じりに「俺の方だけ贔屓しろよ」と告げる兄の前で、勇みやってきたリゲル(p3p000442)が両店の品を注文。
近場にあった立ち食いテーブルに移動し、いただきますと手を合わせる。
「まずは、兄上の焼きそばから!」
熱々の麺を一気にかきこめば、たっぷりの具と、ソースの香ばしさが鼻をついた。
「野菜と肉と麺をふんだんに用意して、鉄板で熱々に焼いたところを濃厚ソースで絡める! 暑い夜に冷たいエールと一緒に頂くのが最高だ!」
もっとも、リゲルは酒が飲めないため、この場は炭酸ジュースで代用して。
「クロバのこれは……七色わたあめ? 色付きの綿飴はたまに見るが、7色同時は初めてだな」
これは子供受けするだろうとかぶりつけば、
「凄いな、カラフルな綿菓子だ! 見た目も綺麗で、甘くておいしいぜ!」
――夏祭りでは遊んでばかりだったので、ここでは屋台の手伝いを。
と、意気込んでこの場に来ていたヨハン(p3p001117)だったが。
「……よ、よだれが……! ちょっとだけ食べてから手伝わせてもらえませんか……? ふ、ふふ……!」
たまりかねて、両方の品を注文。
一緒になって立ち食いをはじめ、あっという間に平らげてしまった。
リゲルとヨハンの様子に、迷いに迷っていたエリーナも手を挙げる。
「うーん、どちらも食べたことが無い料理ですね。せっかくですし、両方食べてみましょう。両方ください!」
「確か、アランと死神の人の子が夜台を出して、リゲルはその手伝いだと言っていたが……」
娘のノーラ(p3p002582)と屋台を探していたポテト(p3p000294)は、
「おじさーん! ご飯くださーい!」
急に駆けだした娘を追いかけ、ようやく店先へ。
「あ、パパだー! パパも遊び来てたのか!」
「ノーラ、ポテトもよく来たな」
「リゲルもアランもお疲れさま。何か手伝うことあるか?」
声を掛けるも、今は間にあっているとの返答で。
せっかくだから味わって行ってくれと、椅子のあるテーブル席へ案内される。
「いただきまーす!」
幸せそうに焼きそばを頬張り「ちょっとパパの味に似てる!」と喜ぶノーラに、ポテトも手を挙げて。
「折角だし、私にも一つ頼む。オム焼きそばはできるか?」
半熟の目玉焼きを乗せてもらい、揃って舌鼓を打つ。
「あ、綿菓子もある! 一個くださーい」
お金を手にしたノーラが、背伸びをして。
「おまけでリンゴ飴も付けよう。落とすなよ」
「わあ! マフラーおじさん有難う!」
その場でひと口頬張れば、「ふわふわしゅわしゅわー」と、笑顔が広がる。
「パパー、ママー、おじさんも食べよー!」
そうして。
親子の和やかな様子を見た客たちが、次々に店を訪れたのは言うまでもなく。
その後、リゲルはどちらも美味いと豪語して。
両店の品20個を手に、皆に配りに行ってしまった。
「はーい! クロバの七色わたあめの屋台に並ぶ人はこっち! あ! アランの太陽焼きそばの屋台に並ぶ人はあっちに並んでねー!」
シグルーンの呼び込みや整列もあり、客入りも回転も上々。
呼び声につられてやってきたアドリ(p3p004604)は、
「アランさんと……クロバさん? やっほー、どうしたの? バイトか何かァ?」
聞けば、売り上げ勝負をしているという。
美味そうに頬張る人々に、いい香り。
――ぐぅ。
控えめにお腹が主張して。
「えっ……と、私も買ってこうかな!」
特に、どちらを応援するとは決めていないのだが。
「アランさんは6個。クロバさんは7個、お願いできる?」
今日は財布も自重しない。
食べきれない分は祭りの人々と分け合えば良いと、買えるだけの注文を頼む。
「ぶははっ、なかなか面白いことしてるみてぇじゃねぇか!」
決戦の噂を聞きつけたゴリョウ(p3p002081)が、浴衣姿で「ごっつぁんです!」と一同に声をかける。
「売り上げに貢献するため、オークさんは喜んで金を落としていくぜ! クロバの方も良さげだが、ここはオークらしくガッツリ食えるアランの焼きそば優先かな!」
向かいに立つ男を睨みつけ、アランはやってきたゴリョウを歓迎する。
「アラン! 焼きそば三つだ! ガッツリ頼むぜ!」
「おう、それじゃあ1500Gな」
気前よく支払いを済ませ、その場で豪快にかきこんで。
「海での味も良かったが、縁日で頬張る焼きそばもまた格別だな!」
三つの皿をぺろりとたいらげた後、ゴリョウはクロバの店先も覗きこむ。
「んん? 『七色わたあめ』……?」
「おい、冷やかしならごめんだ。どうする。食べるのか? 食べないのか?」
強気な物言いに、ゴリョウはダン!と勘定を叩きつけた。
「ええい! 美味そうなら、それが正義だ!」
――結局。
祭り終わりには、どちらの店も全品完売。
用意した具材も綺麗になくなって。
見れば、クロバの七色わたあめは海洋住民の好評を博したとかで、現地情報誌の取材攻撃を受けている。
あの様子では、しばらく掴まったままだろう。
弟に、その家族。
手伝ってくれた知り合いたちが、笑い交わすのを前に。
「混沌にも、すっかり慣れちまったもんだ」
アランは小さく、口の端をもたげた。
楼閣が海に消える時刻、間近。
最後の花火を見送って、ノースポール(p3p004381)はルチアーノ(p3p004260)に向き直った。
「凄かったね!」
興奮気味に告げる手には、少ししか口を付けていないリンゴ飴。
繋いだ手も、ぎゅうと強く握られていて。
「花火は大きくてカラフル……だけど。色で例えるなら、ポーの表情も喜怒哀楽がはっきりしていて、虹色みたいだよね」
「虹色かぁ……。ふふ、嬉しいな。ありがと! でも、ルークといると『喜』一色になっちゃう」
告げる間にも、ノースポールの頬はリンゴ飴のようにほんのり染まって。
「華やかな花火は今日限りだけど、ポーは今日も明日もいつだって、僕の傍に居てくれるんだと思うと、とっても幸せなんだ」
「わたしも……。ルークがこれから先も傍にいてくれるって思うと、とっても嬉しいし、幸せだよ♪」
「いつも見守ってくれてありがとう。僕もポーを守っていくからね。大好きだよ!」
手の甲にそっとキスを落とし、照れながら微笑む。
耳まで真っ赤になりつつも。
ノースポールは、花火のような、この鼓動を伝えたくて。
「わ、わたしも! だっ……大好き!!」
思いきって、ルークの胸に飛びこんだ。
同じころ。
中層でいまだ光をはなっていた豪斗は、それまでにない異変に気づいた。
「……ぬう、ミラージュが消えてきたぞ!?」
そして――。
●
夜もすっかり更けたころ。
楼閣を訪れていた客たちは、約1名を除く全員が、渡し船に乗って陸へ戻っていた。
やがて、海のど真ん中に盛大な水柱があがり、朱紅の楼閣が、渦巻く海へと呑みこまれていく。
「またね、ハマグリさん」
「……大ハマグリさん、これからの私達の厄を払ってねぇ。そして、来年もまたお会いしましょ~」
「気をつけて帰ってねー!」
レオン、アーリア、シャルレィス。
それから、楼閣を見送るべく残ったイレギュラーズたちが、手を振って。
波たつ船着場から、過ゆく夏と、沈みゆくゴッドとを見送った――。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
ご来場、まことにありがとうございました。
たくさんの浴衣の方々を見て、大ハマグリも満足したようです。
命知らずな客人(まれびと)へは、霊獣『蜃』より称号を贈ります。
――【不知火(ゴッドミラージュ)】。
GMコメント
●
こんにちは、西方稔(にしかた・みのる)です。
海洋(ネオ・フロンティア)にて。
夏祭りを楽しむイベントシナリオです。
シナリオは、夢現楼閣『蜃気楼』に到着したところから始まります。
当日は「晴れ」。
描写時刻は「夜間」のみです。
大ハマグリ本体は海の中なので、会えません。
●ドレスコード
『浴衣』着用。
(当シナリオ参加者は、自動的に浴衣を着用していることになります)
●行動選択
【A】風鈴の間で涼む
下層階にて、軒先に吊り下げられた『風鈴』の音を楽しみます。
最低限の灯りの中、静かに過ごしたい方はこちら。
【B】とうろうを作る
中層階にて、楼閣に飾る『とうろう』を手作りします。
どんなとうろうを作るか、プレイングに記載してください。
お祭りっぽいことをしたい方はこちら。
【C】花火を楽しむ
最上階にて、『花火』を楽しみます。
ここでは、食べ物屋台などを利用しての飲食もOKです。
賑やかに過ごしたい方はこちら。
【D】その他
施設の手伝い、屋台など、A~Cに該当しない活動や出し物はこちら。
■プレイング記述
下記の注意を必ず守り、プレイングをご記載ください。
守られていない場合、描写されない可能性がありますのでご注意ください。
1行目:【行動選択】(A~Dよりアルファベットを1つ選択)
2行目:同行者のフルネーム(ID)、【グループ名】 ※単独参加者は不要。
3行目以降:自由なプレイング
■グループ参加の方へ
会話相手が居る場合は、相手のフルネーム(ID)を併記するようお願いします。
(セリフのみだと、やりとりの確認ができないことがあります)
■同行者の呼び方にこだわる方は、フルネームとは別に、呼び方も記載してください。
(姓 or 名 or あだ名など)
■単独参加が良い方は、その旨お書き添えください。
(なにも記載がない場合は、ほかの参加者と会話等を行う場合があります)
★注意点
参加者全員が気持ちよく過ごせる場となるよう、マナーを守ってご利用ください。
・戦闘系スキル、非戦闘スキルは使用不可。
・ギフトは、場に適したものであれば使用可。
それでは、どうぞ楽しい一日を。
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