シナリオ詳細
<廻刻のツァンラート>隔絶された街
オープニング
●
「おいおい、どうしたってんだ」
荷馬車を止めた農夫が困ったと言うように門を見上げる。いや、荷馬車を止めたと言うよりは『馬が止まってしまった』と言う方が正しいか。野菜を卸す直前になって馬が立ち止まってしまったのだ。
彼は荷馬車を降り、馬の横へ回り込む。毎日荷馬車を引いてくれた相棒は困ったような、怯えたような瞳をしていた。
「もうすぐそこだぞ? ほら、あと少しだ」
そう告げて馬を引こうとしても進むどころか後退しようと足を踏ん張らせる。どうしたものか、いやどうしようもないか――農夫は諦めた。
「仕方ないな……人を呼んでくる、ちょっと待っててくれ」
視線を御者台に向けると、そこに座っていた青年が頷く。農業を共に営む息子だ。彼は馬を心配そうに見ながらも往来があった時邪魔にならないよう、道の脇へと荷馬車を移動させ始める。それを見届けるより先に農夫は街へ小走りに向かい始めた。
こんな街の目の前で盗人が出るとも考えにくいが、早く戻れた方が自分も安心する。何、市場まで走る程度ならまだまだできるもんよ――。
「のわっ!」
唐突に何かへぶち当たった農夫は地面へひっくり返った。誰かに当たってしまったかと顔を上げても何もない。首を捻りながらも立ち上がり、街へ入ろうとすればまた跳ね返される。まるで見えない壁がそこにあるかのようだ。
「なんだぁ?」
立ち往生した農夫は困ったように門を見上げる。そこへ見かねた息子が駆け寄ってきた。
「親父、さっきから何してんだ」
「何してるも何も、通れねぇんだ」
遮るものなど何も見えないというのに変な話ではあるが、息子が試してもダメだった。野菜が卸せないと連絡を入れようにも、裕福ではない一般人が通信手段を持っているわけもなく。ならば向こうから連絡が来るのを待つしかあるまいと引き返したのである――が。
「全く、アンタと一緒なんて」
「行くって言ったからでしょ?」
『アイドル闘士』パルス・パッション(p3n000070)の傍で嘆くのは『Sクラスの番人』ビッツ・ビネガー(p3n000095)である。2人の関係性としては――喧嘩するほど仲が良い、とでも言うべきか。
ともあれ2人は鉄帝南部、幻想との国境へ程近い場所にあるツァンラートという街へ向かっていた。最近、周辺住民から『音信不通で行き来ができない』と報告の上がっている街である。
「時計かぁ、綺麗な蓋の付いてる懐中時計とか素敵だよね!」
「あら。アンタでもそういうのに興味があるのね」
流し目を向けたビッツにパルスが頬を膨らませる。これでも妙齢の――もうお酒も飲めるようになった――女性である。可愛いものだってまだまだ好きだけれども!
今しがた向かっている『ツァンラート』という街は時計を中心とした精密機器によって発展した街である。中央には大きな時計台が聳え立ち、街の発展とともにあった時計の博物館もあるのだとか。
時計の副産品として、各所でスチームパンクなアクセサリーを売っているとも聞く。時計やそれらを求めて観光客が訪れ、さらに街が活気付く――というわけだ。
ところが、ここ半月ほどその往来は一切行われていない。高い職人に弟子入りしたい者、観光客、卸業者さえもだ。併せて街にある通信機器への通信もできない。街に入ろうとした者は皆、口を揃えてこう言うそうだ。
「『見えない壁に弾かれるよう』だなんて」
「不思議な話だよね。ゴリ押しでいけるのかな?」
首を傾げたパルスにビッツは小さく肩を竦めた。
彼女らはラド・バウ闘士たちの中から選ばれた先行隊である。報告の上がる者たちが一般人ばかりだったために『力ある者ならゴリ押しで倒れるのでは』なんて馬鹿げた意見も出たわけだが、それによって派遣されるというなんとも言えない結果なのだった。
「力でだなんてアタシは性分じゃな――」
「あ、見えてきた! あの時計台だよね!」
憂いあるビッツの言葉を遮ってパルスが彼方を指さす。そこには塔のようなものがそびえ立っていた。駆け足になったパルスを追いかけとっ捕まえ、ビッツはツァンラートへの道を行く。
「何で走り出すのよ」
「うーん……思わず? でもほら、もう目の前だよ」
パルスの言葉に視線を向ければ確かに、ツァンラートの門はすぐそこだ。壁の付近では帰るに帰れないのか、数人の青年たちが野営をしている。聞けば弟子入り希望の者だとか。
到着するなりパルスは門の前へ立つ。手を伸ばしてみると確かに、見えない壁のようなものに押し返される感触がした。それでも尚反発するように押し込むと――。
「あれ?」
パルスは街中に立っていた。目を瞬かせ、振り返って外へ出る。なんなく通れた。
「通れちゃった」
「みたいね」
外から眺めていたビッツが頷く。抵抗感は確かにあったが、本当にゴリ押しで通れてしまった。特に怪我などもなければ、街内で体の負担なども感じていない。
「でも、なんだか気持ち悪いって言うか……」
「気味が悪いわね」
瞳を眇めたビッツは踵を返す。その背中に「ビッツは入らないの?」と投げかけられたが、今しがた気味が悪いと称したところへ誰も進んで行きたくはないだろう。
そもそも――パルスが通れた時点で、こんな辺境まで来た目的は達せられたのだ。
●
「皆さん、鉄帝国から依頼なのです!」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がローレットで声を上げる。今日も賑やかなギルドは当然人も多く、依頼書を見にくるイレギュラーズでいっぱいだ。
「ツァンラートって街をご存知ですか? 時計で有名な街なのです」
時計職人を多く輩出することでも知られているだろう。ツァンラート出身の職人が作り上げた時計は混沌各所で見ることができる。
「この街では今、異変が起こっているみたいなのです。それを調べて欲しいってお願いなのですよ」
遡ること半月前――毎日市場に野菜を卸す農夫が最初に異変を察知した。
門前払いの言葉の通り、どう足掻いても門より内側へ入ることができず跳ね返されてしまう。ならば内側から連絡が来るのを待とうと引き返したが、いつまで経っても来やしない。
その次には旅行予定だった観光客が。その次には時計職人へ弟子入りするつもりだった青年たちが。そしてツァンラートに旅行へ行ったまま戻らないと言う者たちの親族が。そうしてようやく鉄帝からの先行隊ならぬパルスとビッツが訪れたのだそうだ。
「鉄帝に住む一般の方も弱いわけではありませんが、やっぱり強さがモノを言うのです」
パルスが突破したと言うことはイレギュラーズも問題なく通り抜けられよう。未だ原因は定かでなく、しかし気味の悪い事象に取り組めるほど鉄帝も暇ではないのだ――という話を聞いている。その言葉の真偽は兎も角として、不気味な街に関わりたくない、丸投げしてしまおう――そんな意図もありそうだ。
「街の中は一見普通だったそうですが……どういう状況なのかボク自身ではわからないのです。こういう時こそボクがビシッと決めたかったのですが」
イレギュラーズではありませんから、とユリーカは苦い顔だ。代わりにと差し出されたのはツァンラートの観光案内パンフレットである。
「こういう場所に行ってみると良いと思います。あ、折角ですから観光でももちろん。皆さん、いっぱい情報を持ち帰ってきてください!」
- <廻刻のツァンラート>隔絶された街完了
- GM名愁
- 種別長編
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年02月28日 22時21分
- 参加人数30/30人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 30 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(30人)
リプレイ
●
『見えない壁』を無事に突破したイレギュラーズたちの面々は、これまで聞こえてこなかった人々の喧騒に目を瞬かせる。確かに至って『普通』の町には見えるが――本当に?
一同は各々の向かうべき場所へ。情報収集、観光と目的は分かたれるが、為すべきことの為に1歩を踏み出したのだった。
朝と言うこともあってか市場は大賑わい。どこでも見るような市の隣にはこのツァンラートらしい、機械部品を扱う市がある。そちらを訪れた『紹介係』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は雑多に何でも置いてあるような店――ジャンクショップを見つけると店主へ声をかけた。
「代用品になりそうな、汎用性の高いパーツを探しているんだが」
「へいよ。お前さん、何にパーツを使うんだい?」
「武器にね。最近、機械式の武器を使うんだ」
店主はアルヴァの言葉に頷くと、大きめのトレーを出し、アルヴァが使えそうなパーツを吟味して乗せ始める。それを見ながらアルヴァは視線を巡らせた。
「この時間、客はいないのか?」
「そうさなあ。どいつもこいつも夜型だってのは多いね。たまぁに規則正しい奴もいるが。お前さんもかい?」
「あぁ、そうなるな。最近弟子入りしたばかりの新米でね」
「通りで見ない面だ」
はいよ、とトレーを見せられるアルヴァ。情報収集の面を持ちつつも、出されたパーツ自体には純粋な興味があって視線が寄せられてしまう。が、忘れてはならぬとアルヴァは鉄帝でも使われている懐中時計を懐から出した。
「師匠からも『お使い』を頼まれていてね。こんな懐中時計に使えそうなパーツはあるかい?」
「おお、待ってな」
新たなトレーを出してパーツを吟味し始める店主。なんでも彼は元技師――ではなく、ただのパーツマニアらしい。
「最近の面白い話なんて知ってるか?」
「んん? そうさなあ」
首をひねる店主。技術的な話ならボチボチ早起きの技師たちがやってくるだろうという話にアルヴァは視線を外へ向けた。明るい外。こちらの市は人がまばらだが、増えて来るのならそれを狙ってパーツショップをはしごしてみよう。
アルヴァは出されたパーツのいくつかを購入し、次の店を探し始めた。
一方、『Stella Cadente』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は野菜や魚といった食材の並ぶ市を眺め歩いていた。その足は八百屋で止まり、並ぶ野菜をモカはじっと観察する。
瑞々しく、鮮度はどれも実の良さそうだ。
「ふむ……この市場の品物は素晴らしいな」
「嬢ちゃん、ここは初めてかい?」
店主はにかっとモカへ笑みを浮かべる。彼女は店主へ『飲食店を開こうと半月前に来たのだ』と告げた。
「へえ、じゃあお得意さんになってくれんのかい? 俺の卸す野菜はいつだってこの品質を保ってるぜ!」
この品質、と示された野菜を手に取ってより間近に見る。外見だけということもなく、至って良い野菜だ。
(街の内外で行き来が出来ないなら品薄かと思っていたが……いや)
「この野菜の仕入れ先は、一体?」
「おっと、それは企業秘密ってやつだ。悪いね」
仕入れ先を知られて直接取引でもされようものなら、彼の利益はなくなってしまうということか。それ以上の深追いはせず、モカは野菜を吟味するフリをしながら周囲の声に耳をそばだてた。
(私たちは普通に通れたけど、街に入れないってどういうことなんだろ? 結界?)
『希望の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)は秋奈と同じように市場までの道を歩いていく。そして市場もまんべんなく。物流が滞っているような姿は見られないし、どうやら野菜なども仕入れ先は街の外だと言う。
「特産品とかあるのかな?」
「嬢ちゃん、この街で特産品って言やぁやっぱ時計だろ」
成程、生ものではないらしい。そうだねと頷いたアリアは一旦市場を離れ――装いを変えて再び現れた。先ほどまでのラフなそれではなく、しっかりビジネスウーマンの装いであった。
「失礼。私、この町を拠点に新たな取引ができないかと模索していまして……」
取引をするならば街の不足を補ってこそ。なにか困りごとはないかと問うアリアに、市の者は首をひねる。
「そうだな……あっちのパーツ市のほうが、足りないパーツをよく嘆いているが」
「なるほど、時計の街ですからね。ちなみに、ここ半月ほどの観光客はどんな感じでしょうか?」
「観光客はまあ多少減ったが、年末年始は決まって増えるからなあ。例年通りさ」
隣の精肉店の男がそう告げる。年始の人の減りはいつものことらしい。
「是非その時にも伺いたかったですね。しかし……人が多いなら、変な人やおかしなことも起こるのでは?」
「それもまあいつもの事さ。自警団の奴らがすぐさまとっちめるから安心してくれよ」
彼らの口調からして、それは恐らく『ただの』変人だったりするのだろう。ああでも、と続けられたのはフードを被った怪しい男。何をするわけでもないらしいが――。
(この街じゃないとダメだった? それとも偶然? それを判明させる『鍵』は……)
不意にアリアは視線を感じた気がして、はっと振り返った。
「すごい活気……!」
『la mano di Dio』シルキィ(p3p008115)は市場の入り口に立って目を輝かせる。初めての場所はすでに『早朝』という時間を過ぎてしまっているが、それでも人が多い。中でも食料品を扱う場所を周りながら、鼻をくすぐる匂いに顔を綻ばせる。どうやら素材だけでなく総菜なども売っているようだ。
「あ、美味しそう! ひとつくださいなぁ」
途中の露店でサンドイッチを購入しつつ、シルキィはこの街に売っている美味しいものを問う。
「グルメスポット巡りとかしたいんだぁ。あ、わたしみたいな旅行客が集まる、宿屋とかもあるかなぁ?」
泊りがけの強い意志を感じたようで、露店の店主――とその近くに居た街の住民――が次々と教えてくれる。それを魔導手帳に記したシルキィは彼らと分かれ、本日の宿を取るために教えられた宿屋へ行くことにした。
(もしかしたら、他の旅行客にも会えるかも)
全てではないが、旅行へ行ったまま戻らない人の事は調べてある。宿屋ならば出会う可能性も高いだろう。
(時計の街、ツァンラート。一体何が起こってるのかなぁ……?)
冬の風がさぁ、と街を駆けていく。早足になったシルキィは宿屋へ辿り着き、丁度出てきた男女へ声をかけた。
「ここに泊まってる旅行の人かなぁ?」
「ええ。あなたもここに泊まるの?」
そうだと告げれば女性が微笑んだ。ここはいい場所だから、ゆっくりしていくといいわ、と。
「2人はいつからいつまでいる予定?」
「私たちは年明けに来たの。あと1週間くらいいるかしら」
随分と長い旅行である、と思いながらシルキィは暫し彼らと話していたのだった。
(うんうん知ってる知ってる! これって『中だけ時空が違う』ってヤツっしょ!)
事前に店の位置を訪れたことがある者から聞き込みしていた『奏でる記憶』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)はたったか入口から市場へ向かって軽快な足取り。視線はきょろきょろ、あちらこちらへ。
(変わったものはなさそう? 空に何か浮いているとかも……)
見上げた空に黒い点。しかし残念、あれは上空から調査する仲間だった。
街は嗅いだことのない匂いに包まれている――というか、これがこの街の匂いなのだろう。勿論美味しそうな匂いがすることも、鉄やオイルの臭いがすることもあるけれど、異臭らしい異臭といえばそれくらいだろうか。
「とうちゃーく! ええっと、店は――」
メモ書きを元に市場を歩く秋奈。店はこの通りを真っすぐに抜けた先らしい。変わらず五感でツァンラートの街を感じながら活気ある市場を通り抜け、秋奈は見せのドアを開けた。
カラン、カラン。
「こんにちはー! このお店の時計を見て、直接買いに来ましたっ!」
「おや……それはいつぐらいの時計かね?」
店主らしき初老の男性はニコニコしながら冊子を出す。どうやらこれまで扱った時計の型であるらしい。
「そんなに前じゃないんだけれど……おじいさん、最近出荷した時計っていつぐらい?」
笑顔で問う秋奈。店主は疑う素振りもなく別の――帳簿だろうか――を取り出す。
「最近は……ええと、年末だね。型はこれだ」
示されたそれを見ながら秋奈は大体の日付と時計を記憶する。街から各所へ運ばれていった出荷記録全てを確認できているわけではないが、おそらく間違ってはいないだろう。
「そういえば、近々この街のはぐれ魔獣が討伐されるらしいね?」
なんて世間話を振りながら、秋奈は聞き耳を立てる客がいないかそっと探ったのだった。
(ふむ、良い野菜が揃っている……これとそれと……)
『闇と土蛇』カイロ・コールド(p3p008306)は買う野菜を選別し、店主へ会計をしてもらう。その途中でカイロは店内へ視線を向けつつ、店主に口を開いた。
「少し宜しいですか、店主。此方の野菜って、どこの物なのでしょう?」
カイロは商人だ。故に鉄帝という厳しい気候では育つ作物も限られると知っている。だというのにここにある野菜はどれも質が良い。
そう告げると店主はうれしいねぇと笑った。
「詳細には言えねえが、幻想の農家から取引させてもらってるよ」
「幻想の農家から?」
「そう。国境は超えるがそれなりに近いし、気候も良いからな」
聞き返したカイロにそう店主は返すが、驚いたのはそこではない。
(街を通れる農夫がいる? それとも実は自給自足……?)
前者はこれまで街を通れなかった者たちがいるからないだろうが、自給自足だってどこの店元はいくまい。どちらも不自然である。
カイロの足は次に鮮魚店へ。こちらもやはり鮮度は良さそうだ。
「兄ちゃん、見慣れねえ格好だな」
「ええ、神官であり商人なのです。珍しいでしょう?」
なんて言葉を交わしつつ、こちらもどこから仕入れているのか問う。海洋、それに鉄帝の沿岸部ときた。
「私も魚の商売に乗っかろうと考えていましてね。タダでとは言いません、詳しく教えて頂けないでしょうか?」
「おっと……そいつぁすまねえな、できねえ相談だ」
ラサでの口利きというカード――出まかせである――も出してみるが、相手は頑なである。仕方あるまい、とカイロは引き下がった。
「先遣隊として派遣された以上、少しでも情報を持ち帰りたいところですね……」
「ああ。この中で『普通に生活している』なんて異常はさっさとどうにかしてやりたいな」
『地上の流れ星』小金井・正純(p3p008000)とシラス(p3p004421)は街の入り口から視線を巡らせる。街の外へ通れない、なんて通常は騒ぎになるはずだ。同時にこうして街の中へ入ってきたイレギュラーズへ注目しない訳もない。
だというのに実際はどうか。街の者は皆日常を過ごし、入ってきたイレギュラーズにも軽い一瞥をくれるだけだ。
「現状をおかしいって思ってる人間がいるかどうか、だな」
「ええ。外壁の方から見てみましょうか」
というわけで2人は街の中心部へ向かうのではなく、敢えて外壁付近を沿っていく。あまりギリギリを沿って行こうとすると魔獣の気配を感じたため、少し内側寄りだ。
「シラスさん、お願いできますか?」
「任せな、俺は魔法使いなんだぜ」
にっと笑ったシラスは感情探知を展開させる。半径100メートル以内で起こっている『疑問』の感情。街の異変を感じている人間を炙りだすのだ。
「結構いるな……関係ないものも混じっているかも」
「玉石混合と言いますから、順番に当たっていくしかありませんね」
というわけでシラスの案内により正純は順に疑問の感情を抱く人物へ話しかける。アノニマスで一般人らしい雰囲気を出した彼女はその優しい笑みと言葉で巧みに疑問を引き出すが――。
「猫の元気がないからどうしてだろう、鍵をどこへやってしまったか……あとはなんでしたっけ」
「いや、思い出さなくていいよ。関係ないことばかりっていうのはよくわかった」
『疑問』を追いかけていて仲間と鉢合わせたこともある。中々この街の住民からそれらしい話題は出てこない。
「あ、市場ですよ」
「少し寄ってみるか」
2人はそのまま市場の中へ。産地は街の外であるらしい商品を見ながら、正純は時計職人たちから話が聞けないかとパーツ市の方へ向かう。
「時計職人の方でしょうか? お変わりありませんか?」
「ん? ああ、外から来た人か。そうだね、年末年始過ぎて少し落ち着いたよ」
どうやら年末年始は忙しいらしい。節目の時間を正しく知る為、修理や制作の仕事が大量に舞い込むのだそうだ。
「それは……お疲れ様です」
「この町の象徴も時計だもんな。点検だって時間がかかりそうだ」
シラスは空を仰ぎ、中心に立つ巨大な時計台へ視線を向ける。あれもこの街の技師がメンテナンスしているのだろう。
「正純、特産品を探しに行ってもいいか?」
「ええ。でもこの街の特産品って……」
「あ、違うよ。『他の街から流れ着いた』ものさ」
流通があるのならば、外から入ってくるものがあるはずだ。野菜、魚、肉……それ以外も仕入れている筈である。
(半月入れていないんだ。無くておかしくない)
のだが。
「あるのかよ……」
シラスは示されたそれに絶句した。外から入ってきていないはずの物が、どうしてここに存在するのか。
(以前から入っていたものが出されているとか? それともここは異次元なのか……?)
明らかな違和感に、しかし誰も気づいていない。
――あまりにも、不気味だった。
「それでは葛籠様、鉄帝観光と参りましょう!」
「ああ、よろしく頼む」
『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)と『神仕紺龙』葛籠 檻(p3p009493)は連れ立って市場へ向かう。特殊な状況の街であるが、まずは事態を知るために市井を知るべき。2人は市場へ向かって歩いた。
「賑わっていますね……」
不思議だ、とリュカシスは瞳をキョロキョロ動かす。品物の流通が制限されるのだからギリギリの商売かと思ったが、そうでもないらしい。
「あ、露店です! 行きましょう!」
その観察の最中、串焼きの店を見つけたリュカシスに誘われ檻は露店へ。串焼きを食べ歩きしながらパーツ市へと移動する。
「見てください葛籠様。こんなにカッコいいパーツがたくさん! 宝の山です!」
「ふむふむ、これが汝の宝たるものなのであるか」
興奮するリュカシスが示したのはジャンクパーツたち。機械仕掛けに疎い檻であるが、リュカシスが本当に楽しそうな表情でそれらを眺める様は微笑ましいもの。檻は近くに居た者に話を聞きつつ、リュカシスが好きそうなジャンクパーツを沢山取り扱う店を聞いてみる。
「リュカシス殿。この先にもっと大きく構えている店があるそうだ」
「本当ですか!? あ、でも観光ですから! 葛籠様が行きたい場所にも行きましょうネ!」
ジャンクショップを巡りつつ、リュカシスは観光客におすすめの場所はあるかと現地民へ問う。その相手は街の中心を仰いだ。
「あの時計塔にはもう行ったかい? まだなら行ってみるといい、登って街を見下ろせるんだ」
「ありがとうございます!」
丁度買い込んだ串焼きも食べ切って。2人の足は市場から離れ時計台へ。
(それにしても、皆さん普通ですね……)
リュカシスは街を歩きながら、内心驚愕していた。この状況、普段通りという方が難しいだろう。隠しているのかもしれないが、全員が全員こうも完璧に隠し通せるとは思えない。
本当に、知らないのだ。
「む、着いたようだぞ」
「あそこから登れるみたいです。行きましょうか!」
時計台の階段を上り、暫し。やや疲れた頃に展望台へ辿り着いた2人はバルコニーとなった部分から街を見下ろした。
「あれは……魔獣か」
良く見える視力で檻は外壁の近くに黒い影が蠢いているのを見つける。建物で見えない部分もあるが、それなりに広範囲――外壁の近くに行けばほぼいるのではないだろうか?
「葛籠様、高くて楽しいですね! 何か見えますか?」
「うむ、見えたものはだなぁ」
とリュカシスへ特筆されることを伝えていく。それを聞いた彼曰く、このツァンラートは他の鉄帝より『お上品』なのだそうだ。
「どこでも戦っているわけではありませんが、凄く平和ですよね」
魔導手帳にまとめながらリュカシスが告げる。そういうものなのか、と檻は再び外を見た。
「そういえば、ここには封鎖されてるエリアがあるんでしたっけ?」
足場が悪いとかかなあ、とリュカシスは視線を巡らせ、封鎖されているエリアへ目を留めた。
少し時を遡り。『木漏れ日妖精』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)は『ティブロン海賊団“大海原の探知者”』ルチア・アフラニア(p3p006865)と共に観光地を巡っていた。
「ねぇ、私の友達たち、いるかしら?」
街は賑やかで、風の精霊でもいないものかと声をかけつつ。オデットは時計台『グラヴィアン』へと足を運ぶ。遠くからでも大きく見えたが、近づけば近づくほどに荘厳な場所だ。
「時計ってすごいのねー……」
ほう、とため息ひとつ。この大きな建築物はこの街の者が作り上げたのだろうか。時計は十中八九この街の技師、職人たちが作り上げたのだろうが、一体どれだけの人数がこの時計台制作に関わったのだろう。
(妖精仲間の友達だったら喜んだだろうなぁ)
そう思いながら、オデットは後方を振り返って笑った。
「さあ、登ってみましょ!」
今日のお友達は飛べないから。一緒に階段で、展望台を目指しましょう!
(ツァンラートで『謎のバリア発生!』ってことだったンで古代の遺産か何かかと思ったンすけど……)
どうなんだろうか、と『EAMD職員』キャナル・リルガール(p3p008601)は空を仰ぐ。普通の青い空だった。
入ってみれば一見、至ってなんらおかしなところのない街である。古代遺産が起動しているような様子も話もない。それらしきものといえば――どこでも見つけられる時計台、だろうか。
(立ち入り禁止エリアも怪しいっスね)
まずはあそこへ行ってみようとキャナルは動き始める。立ち止まっていたってどうしようもない。地道ではあるが調査を始めるとしよう。
時計塔まで辿り着いたキャナルはカンカンカンと階段を上がっていく。同じような者も少なくない。これだけいてエレベーターのひとつもないのか、とは思ったがそちらはそちらでそれなりの人数が待っていた。あれを待っていたらいつ昇れるかわからない。
「おーいい眺め」
展望台まで上がると街が一望できる。どうやら仲間たちも上がってきているようだ。視線を巡らせ、丁度目が留まった人物へキャナルは立ち入り禁止エリアについて問うてみる。
「何があるとかって聞いたことないスか?」
「いやあ……俺も旅行でここに来ていてね。良くは知らないんだ」
聞けば1週間ほど前に訪れたのだとか。ならばとキャナルはフロアにいたスタッフらしき人物へ声をかける。
「立ち入り禁止エリアって、何があるっスか?」
「皆さんがご覧になっているのとは別の方角から街を一望頂けます。生憎、今は諸事情により閉鎖しているのですが」
成程、場所自体は何でもない展望の一部らしい。キャナルは礼を言うと階段を降り、街へ繰り出す。
何をするのかって? 今後の為にも、羊皮紙とペンを用意して地図作りである!
「半月くらい往来が無かった筈なのに……一見普通って変な話だよね?」
「そうだね。早々直ぐにどうにかなる事はないにしても……」
『はなまるぱんち』笹木 花丸(p3p008689)の指摘に『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)は眉根を寄せた。もっと殺伐としていてもおかしくなかろうに、不安がっている人も見ない。
(とは言っても、全てをマルっと解決するには規模が規模だし……)
(全部が普通なのか、どこかに違いがあるのかもまだ分からないし……)
「「――観光だね」」
2人は顔を見合わせて頷く。花丸は下調べ、と言いつつもすっかり観光気分だ。それで良いのだろうかとサクラは思う反面、普通に街を見るだけでも得られるものはあるだろうと自ら納得する。
「サクラちゃん、時計台登れるんだって! 行ってみようよ!」
はしゃぐ花丸は遠くからでも見える時計台に目を輝かせる。彼女を見てくすりと笑うサクラに、花丸はあっと声を上げた。
「べ、別に遊びに行く訳じゃないし? 街を一望出来るって事なら地上からじゃ見えないものも見えるかもだし??」
「ふふ、そうだね。正直、私もちょっと興味あるし……」
「本当!?」
自己弁護に必死だった花丸はサクラの言葉にぱあっと表情を輝かせる。ならば、そう、善は急げ!
花丸に手を取られ、時計塔まで一直線。その下までやってきた2人はようやくゆっくり階段を登り始める。
「天義の塔みたいなところには登った事あるけど、時計塔は初めてだねー」
「天義にもこういう感じの塔があるんだ?」
なんて話しながら、2人は展望台へ。花丸はここまでと変わらず、ハイセンスで周りの声を聞きながら街を一望する。
「門の外は……誰もいなさそう?」
「うん。そう『見える』ね」
より正確に言うなれば、そこでなんらかを確認している仲間らしき姿は見えるが。
「あ、あそこの影は魔獣みたいかな」
「そうだね……見えづらいけれど」
また別の方角をサクラが示す。花丸は相槌を打ちつつも、スタッフの姿を探した。
「いた! すみません、この時計塔のお話を聞きたいんですけれどっ!」
サクラと共に向かえば、スタッフはにこやかにこの時計塔の成り立ちから説明してくれた。
この時計塔はツァンラートを象徴する建物。集落から街へ発展していく際に、その時身を寄せていた技師たちが総出で設計し、選りすぐりの材料を揃え、完成させたのだとか。それからこの時計台はいつでも休むことなく時を刻み続けているという。
「よろしければ、あちらにパンフレットがございますよ」
場所を示してくれたスタッフへ礼を言い、2人はパンフレットを取りに行く。その際に花丸はちろちろと走る何かを隅の影で見た。
本来ならばこのような場所で姿があってはならないのだが、人気もない場所である――鼠の1匹2匹、いてもおかしくないわけで。
花丸はそれを使役すると、封鎖されたエリアを見に行くよう命じる。五感を共有させた花丸は、1人その閉ざされた空間を確認したのだった。
(はてさて、奇妙なこともあったものだ)
『自称破戒僧』インベルゲイン・浄院・義実(p3p009353)は時計台の階段を登っていく。
半月ほど人の出入りがない街、ツァンラート。さぞかし荒れて、食糧事情も危ういと思っていたのだが――実際はどうか。殺伐とした様子もなければ、食糧に困っていると言う声も聞こえてこない。
(まるで時計の針が止まってしまったかのよう……いや、それにしては活気づく場所もある)
止まったというよりは繰り返している、のだろうか。実際にそうと断定できるわけではないが、近い状態なのではないだろうか。
それを調べるためにはやはり、怪しい場所に乗り込むしかない。そして目下で最も怪しいと思われるのは時計台――その封鎖されているエリアである。
階段を登り切った吉実は堂々とした足取りで封鎖されているエリアへ近づく。そのフロアは両扉を固く閉ざしているようだったが、そこへ辿り着く前にスタッフの一人が吉実を止める。
「申し訳ございません。こちらは立ち入り禁止のエリアになっています」
「ああ、今回の件には私も参加させて貰うことになったのだ」
経歴をでっちあげた吉実。しかし突然そのようなことを言いだせば懐疑的に見られるのも必然であり。
「特にそのような連絡は来ていませんが……」
「突然のことだったのでな。連絡より先に到着してしまったようだ」
連絡もないままに吉実が現れた事には納得してもらえたが、身分証の提示を求められて吉実は内心詰まる。もちろん、表面上はちゃんと探す素振りを見せて。
そして当然そんなものは偽造していないので、上司に連絡を取ってくると離れる吉実。スタッフの見えなくなるところまで来ると、吉実はそっとそちらの方向を振り返ったのだった。
「不思議な街、ですね……」
結局は入れた理由はなんだったのだろうか、と『うつろう恵み』フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)は首を傾げる。何かの共通点があるのだろうか?
「今考えても仕方がない。まずは情報を集めよう」
同じように『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)も疑問には思う――が、立ち止まっていては分かるものもわかるまい。2人は揃って、どこにいても目立つ時計台を目指した。
(流石に原因もわからない中、軍を回すわけにもいかないのだろうな)
十七号は依頼を寄せてきた鉄帝の事を考える。或いは幻想に近いとあって、波風を立たせたくなかったか。
時計台へ辿り着いた2人は展望台へ上がる。フェリシアはきょろきょろと辺りを見渡した。
(ラッキーで何か見つかれば良いのですが……)
《さまよう禍福》。その幸運と不運は程度を選べないのだけれど、それでも情報が得られるならば。
(――?)
不意に視線を感じ、フェリシアは振り返った。しかしそれをはっきりと視界に留める直前、バルコニー側から悲鳴が上がって注意が逸れる。
「おいアンタ、何やってんだ!」
「え、いや」
その先にいるのは十七号。バルコニーから外壁へ張り付いたところを他の客に目撃されたのである。
実際、飛び降りたかったとかそういうわけではなく。若干の見え辛さと物足りなさから天辺へ登りたかっただけなのだ。しかしてこの人が多い日中、自殺志願者と思われても――まあ、流石に、仕方ない。
こうしてバルコニーへ引きずり戻された十七号。未だざわつく中で再度の挑戦は難しいだろう。ならばこの展望台からの景色で譲歩しよう、と十七号は――バルコニーの端から十分距離を取った上で――観察することとなった。
一方のフェリシアは、その騒動がひと段落したのを見届けるとスタッフらしき人へ接触する。
「あの、立ち入り禁止の場所は何か理由が? 面白いお話とか、噂とか……あるのでしょう?」
「申し訳ありませんが、諸事情により閉鎖させて頂いております。面白い話も噂もございませんよ」
首を振るスタッフ。しかしフェリシアもまた食い下がる。
「お土産話にもなるかと思うのです……今日街に来られなかったお友達に、お話しできますし……」
ぜひ聞かせてくれ、とぐいぐい押していくフェリシア。しかし――スタッフもまた、強かった。
「申し訳ありません。広められるようなお話でもございませんので、ご容赦頂けますと幸いです」
むむ、とフェリシアは唸った。かなり粘ったつもりなのだが、ここまで固辞されてしまうとこれ以上押していくのは不都合が生じるかもしれない。今ばかりは引くのが賢い選択か。
2人は時計台を出て、周囲に怪しい者がいないかどうかそっと確認しながら歩く。互いにどうだった? と視線を向けて。
「……あそこまで登るとわかるな」
「はい……空まで、覆われていました」
揃って視線を空へ。地上からではわからないが――空が、不自然に揺らめいているようだった。
●
(さてさて、どうしたものか)
『心臓もさもさらしいわ!?』ヨハン=レーム(p3p001117)は一先ず観光客として街を歩いていた。何かしら情報を掴まねば、と全員が気負っては流石に怪しい。今後の対応があることを考えると、ここで住民たちから悪印象をもたれるのは良くないだろう。
心の中に渦巻く不安を押さえて。余計な事をせず無事に終わるよう祈って。彼の足は時計博物館『シュテーウング』へ向く。観光地としては最もそれらしいのではないだろうか?
(僕自身もそこそこ、時計の構造と華は興味ありますし)
時間を鐘で知らせる――ボーン、ボーンというアレや、鳩時計というモノ――時計はうるさくて苦手であるが、その仕組みは別だ。
中は静かで、必然とヨハンも口を閉ざす。耳を澄ませばカチコチと、秒針の動く音が響いていた。
世界の時計が展示されているコーナーから、時計というものの変遷を展示されているコーナーまで。時計に纏わる書籍の収められたコーナーでヨハンはこの街の事を知れないかと背表紙を眺めみる。
「……あ、これかな? 『ツァンラートと時計』……」
開いて概要を読むと、この街と時計の結びつきについてらしい。暫くそれを読んだヨハンは、続いてお土産コーナーへ足を運んだ。
「やっぱりどこにでもあるんですねえ、こういうの」
時計は少々値が張るが、それでもお土産。使いやすそうな時計はあるだろうかとヨハンは吟味する。
「この時計なんて如何ですか?」
ポッポー。ポッポー。
「ハトはごめんなさい!」
なんてやりとりもあったものの、おおむね満足してヨハンは博物館を出た。
「時計って色んな仕組みで動いてるんやな……」
『砂原で咲う花』箕島 つつじ(p3p008266)はディスプレイされた時計のパーツをほうと眺める。時計を解体するなど中々ないので、こういう場所に来ると新しい知識が沢山転がっている。不思議なからくりもあったものだから、つつじはすっかり見入ってしまった。
(珍しい時計もあるんやったな。どんな時計やろ?)
世界の時計が展示されているコーナーへ向かうつつじ。とても楽しんでいる観光客であるが――こんな場所にも何か仕掛けられるのでは、と観察は怠っていない。
(壊れたり修復した痕はなさそう……スタッフの不自然な動きもなさそうやな)
不自然なスペースも一見見当たらなそうだ。つつじはそう判断し、近くのスタッフへ声をかけた。
「ウチはこの街に来るの初めてなんですけど、おすすめの観光スポットとかあります?」
街のパンフレット片手にそう問う彼女――にも見えるが彼かもしれない――へスタッフはパンフレットを示しながらいくつかのスポットを挙げてくれる。ここを出たら行くとしよう。
「そういえば、ここは暖かいですね。今日は……近頃もですか? 寒いと思うんですけど」
つつじの質問に、スタッフは確かに近頃ずっと寒かったと告げる。故にこの博物館はリラックスして眺められるよう、暖房をきかせているのだそうだ。
「そうなんですね。あ、最近展示が始まった時計とかあります?」
そうつつじが話を振ると、スタッフの表情が一気に満面の笑みで彩られた。恐らく、純粋に時計が好きなのだろう。
そうして何事も無く見学と調査を終えると、つつじは博物館のパンフレットをゲットして次の観光スポットへ足を向けたのだった。
(非戦クラスの俺でも入れるんだな……)
『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は半ば感心しながら街を進んでいた。非戦クラスと言えどイレギュラーズ、その基本的な力があれば壁を抜けられると言うことだろうか。
そんなサイズは鍛冶屋の勉強がてらと博物館へ。時計を眺めたり、この街の勉強をするには最適だろう。
(一応根っからの鍛冶屋だし、俺自身が呪物でもあるから……何かしら魔力が籠っていれば見抜ける自身はあるが)
それをもすり抜けてしまうパターンが有り得る以上、警戒して行かないといけない。
心構え十分で展示を見て回るサイズは、魔力のこもった時計に足を止める。すわ原因はこれかと思ったものの――。
「なになに……魔力を動力源に動く時計?」
ゼンマイ式ではなく、魔力を込めることで動かすということらしい。ディスプレイの中なので触ることはできないが、見ている限りただの変哲もない時計である。
さらに展示を回っていたサイズは動かなくなっていた時計で再び足を止めた。説明を読むに、パーツの型番がなくなるほど古い時計らしい。
「あの、これは直さないんですか?」
「もう修理パーツが存在しない時計ですね。下手に手を出して壊すわけにもいかないので、このまま展示しているんです」
ということは直させては貰えなさそうか。職業病を発症したサイズは名残惜し気にそれを見つめる。
(道具のよしみとして直してあげたかったが……)
時計の街で下手に手を出せないと言う以上、観光客の1人である自分が触らせてもらえるはずもないか。サイズは視線を逸らし、時や時空に関した展示などがないかと探し始めた。
皆が街へ繰り出す一方で、入口に留まり続ける者たちもいた。
白夜 希(p3p009099)は自警団の勤める場所を住民から聞き出し、そこから1人の青年に同行してもらっていた。
「この時間に野菜の卸だって?」
「いつまでも立ち往生してしまっていると」
懐疑的ながらもついてくる青年。彼を先導しながら希はひとつの仮説を立てていた。
そもそもこの出入りができない状態で、観光など出来るはずもないだろう。外から入ってくれば根掘り葉掘り聞かれるのが『正常』だ。
しかしそんなことは一切起こらなかった、となればこの事態を把握できていないと言う事。一定時間でループし、リセットされているのかもしれない。連絡が取れないと言う話もこの事態の発覚が夜になり、ループ直前で対応が間に合っていないのかもしれない。
「いないじゃないか」
「外壁近くに留めようとしていたそうなので」
あちらの方に、と指すと青年は門を出て行こうとする。それを瞬きもせず観察して――。
「――え?」
「いなかったじゃないか。君、悪戯ということで勘弁してあげるけれど気を付けなさい」
「今……」
「なんだ? ちゃんと見てきただろう」
戻ってきた青年は希に注意して立ち去ろうとする。それを引き留め、見て欲しいと外から持ってきた情報誌を渡すと青年はぱっと表紙を見て希に突き返した。
「3度目はないよ」
その言葉に希はそれ以上の言葉を止める。ローレットの者であるとか、パルスなども関与しているのだとか言おうとしたけれども。
希は小さく首を振った。これは、一体、どういうことだろう?
その頃、『金色のいとし子』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は外にいた。野営をして街に入れるのを待っている青年たちに助力を乞うたのだ。
「見えない壁について検証してみたい」
エクスマリアだけでは成し得ない。『入れない者』がいなければならないのだ。
協力してくれる彼らを伴い、エクスマリアは壁の前へ。まずは壁を通り抜けられないことの調査である。エクスマリアが先に中へ入り、外へ顔と手を出す。それを掴んだ青年を街へ引き込もうとしたが、青年の指が壁へぶつかると同時に勢いよく跳ね返された。
「次」
別の青年が入り口に立ち、エクスマリアが彼を街へ押し込む。これは一緒に跳ね返された。
「次」
エクスマリアは壁の中へ入り、腕などでわっかを作ってその中へ手を伸ばしてもらう。……つもりだったのだが、この壁、結構な反発力がある。中々難儀した上、この方法でも青年たちは通ることができなかった。
(物理的なものではなさそう、か?)
協力してくれた彼らに礼を言い、さらに次の検証である。エクスマリアは飛行し、上昇していく。この壁がどのような形状であるのか確かめるために。
そうして街を見下ろしながら、ふと思う。
(観光くらいは、考えてみてもよかっただろう、か……?)
多くの者たちが観光へ、或いは街の中で調査をするため向かっている。羨ましい気持ちがなくはない、が。
(まずは、検証を終えねば、な)
アーチ状なのか、円筒形なのか。飛び越えるのは不可能なのか。そうして上った先では『壁を超えよ』杠・修也(p3p000378)が同じように調査をしていた。
(さて、一体何が起こっているんだろうか)
修也は鳥のファミリアーを使役し、エクスマリアと同じように飛行で空を飛んでいく。その手にしているのはざっくりと手書きした街の地図だ。
上空に近づけば近づくほど、不自然な揺らめきのようなものが見える。手を伸ばしてみて反発感を覚える場所を探していくと、どうやらこれはドーム状になっていることが伺えた。
(中心部となると……時計台か?)
だが、あちらは他の仲間も調べている筈。何かあれば打ち上げがあるだろう。
ファミリアーである鳥も外周を巡るように飛んでくれている。その視界を共有する修也は、外壁近くにたむろする魔獣たちを眺めた。
(数がいるな……はぐれ魔獣はどこだ……?)
これらも対処しなければならない。そのためにも、その生態を知るきっかけになりそうな群れからはぐれた魔獣を倒したいものだが、なかなか孤立しているとなると難しいか。
(いや――)
遠目に見えるが、少ない魔獣と戦う仲間たちがいるようだ。修也は加勢をするべく、そちらへ向かい始めた。
「ふうむ。確かに、抵抗はあっても通れはするな」
『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は通り抜け、出てくる。まるで強者だけを選別しているようだ。
「カラクリはどうあれ、可笑しい状況なのに……人も街も、存外に普通なのねえ」
『never miss you』ゼファー(p3p007625)もまた入って、街の風景を眺める。普通。うん、普通だ。
そんな彼らは『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)と共に外壁越しを進んだ。魔獣が住み着いているということだったが、それは外壁『外』ではなく『内』だったらしい。外壁の意味は、とか駆逐しなくてどうするんだ、とか思うところは沢山ある。
が、軽く聞いてみたところ『瞬く間に繁殖した』こと、そして『今のところは住み着いただけで住民に被害を及ぼしていない』ということで、街の自警団は駆逐の体勢を整えはじめたところなのだとか。
とはいっても彼らも敵戦力の把握はできていないらしい。故に3人は当初の予定通り、はぐれ魔獣を探して倒すことにしたのだった。
「一般人の野営に影響がないのならばまだ良いが、武者働きをして民らを安心させるのも務めであろう」
早くしなければいつ動き出すとも限らない。百合子の言葉に汰磨羈は頷く。仲間がこちらを調べたさそうにしてもいたし、早い所排除してしまおう。
「まぁ、腕っぷしをブン回すほうが向いてますしぃ?」
くすくすと笑うゼファー。勿論油断とかはナシで。
まず百合子が魔獣を見つけ、どんな手合いであるかモンスター知識を元に観察する。四つ足の獣とは聞いていたが、その体は黒く、外壁の影に入ってしまえばその細部を観察することは難しい。狼のような形状ではあるが、そう断定してしまうのは早そうだ。
「群れているようだな」
「この3人だけで群れを相手取るのはキツそうね?」
「どこかで孤立している魔獣は……」
観察を切り上げ、3人は小さな群れ、もっと望むなら単体の敵を探して静かに移動する。暫しして見つけたのは3体――こちらとの頭数もあっている小さな群れだった。
「それでは行くとしようか。……ゼファーと組むのは初めてだな? 宜しく頼む」
「ええ、よろしく頼むわ? 晩御飯が美味しくなる程度に、ゆるーくやりましょ!」
飛び出すゼファー。ソニックエッジで仕掛けると、魔獣たちが揃って唸り声を上げる。
「お前との相手は私だ!」
汰磨羈が薙ぎ払う剣の軌跡。それによって形成される輪状の霊刃が回転し始める。
そんな中、白百合清楚殺戮拳の開祖が編み、伝わる法則にて世界を騙した百合子は――一瞬、姿を消した。実際には百合子の動きに動体視力が追い付けないだけであるが、その一瞬で敵へ肉薄した百合子は鋭利な乱撃で仕掛けて行く。
(攻撃はそこいらの獣と変わらないわね)
爪や牙での攻撃を避けつつ、ゼファーも乱撃を繰り出していく。ここで力を溜めても仕方がない。ハイペースに攻めて行く彼女に続き、汰磨羈も輪状霊刃でゼファーが追い打ちしやすい状況へ持って行く。
「中々に面倒くさい相手ではある、なっ!」
集中攻撃を食らう彼らも集中攻撃をというのか、3体で百合子を狙っていく。しかも世界を置き去りにするような百合子に負けず食いついてくる俊敏さと高い攻撃力。百合子は攻撃を受ける際に何らかの――不可思議な力によるダメージを感じていた。
だがしかし『咲花・百合子』という人物は美少女である。容易く倒れるような者ではない。
「その命脈、散らしてくれよう!」
白百合百裂拳が炸裂し、1体が倒れ伏す。数の利がイレギュラーズに傾く。そうなれば彼らが敗戦濃厚となるのも時間の問題だった。
「さて」
「ああ」
百合子と汰磨羈は死骸を見下ろす。バラして中身まで調べてくれよう。食べられそうなら野営して粘っている青年たちへ持って行ってやっても良い。
食べられるのか? 魔獣とて獣である。肉は肉。しかも倒したての新鮮な――。
「む」
百合子の手が止まった。鼻をつくのは腐ったそれ。いや、戦闘中もなかったわけではないのだが、まさかこの獣からだったとは。
「臭いな」
「……シャワーでもあとで借りた方がいいんじゃないかしら?」
ゼファーの言うとおりである。それが随分粗末な骨と腐肉でできていたことを確認し、一同は立ち上がった。流石にこの肉を野営していた者たちへ渡すわけにはいかない。
「街を襲わず、壁の近くに住みつく……壁を守る為の魔獣か?」
呟いた汰磨羈は首を振った。まだわからない。メモの情報を精査する必要がありそうだ。
「吾は野営していた青年たちの元へ戻ろう。何処に弟子入り希望であったか、聞いてやりたい」
「じゃあゼファー、シャワーを浴びたらあとで一杯――ああ、いや。未成年だったな、御主」
「お生憎様ね。当分先じゃないと」
肩をすくめたゼファーは視線を死骸へ巡らせた。
(然しまぁ……雲をつかむ様な感覚って奴よね)
一体、この街で何が仕組まれているのか。
(何やら不穏な気配はするのだけど……さて、どうしたものか)
『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)はそう考えながら酒場へ赴く。その土地の飲食物を楽しむならばここが最たる場所である。相席やカウンター席で街の住民とも話しやすい。とはいえ、少し来るのが早かったか。この『彼』がはずれであったなら、その頃きた別グループに混ぜて貰っても良いだろう。
「おや、隣いいかい?」
ちょうど1人でいた男性の隣に座り、肉料理でおススメを注文する。勿論、酒も。どちらも折角だから特産のものを楽しみたい。
「最近面白い事や変わった事はあったかい? 噂や事件でも。そういう話を聞くのが好きなんだ」
食事ばかりを楽しんではいられない、と表面上には出さないようにしつつもマルベートは隣の男へ声をかける。
見えない壁が発生した理由はまだわからない。その目的もまた然り。しかしこの街で発生したのならば『この街である事の必然性』があるはずなのだ。
(この街に思い入れのある存在の犯行か、それとも街の何かが目的の為に必要なのか……怨恨や陰謀の線もあるけれど)
まずは情報収集だ。都合よく聞けるとは思っていない。けれどもマルベートの『愛する旅人の子』は地を知る事、そしてそこに生きる人を知る事は大切だと言っていたから。
「うーん、噂ねえ……メシの不味くなるモンは流石になあ」
「おや。じゃあそれは食事の後ででも聞かせてくれないかい? なんなら……今宵の宿は決めていないんだ」
手酌するマルベート。ああ、面白い話が聞けそうな予感だ!
市場が閉まる頃合いになれば、人もだんだん増えてくる。モカも混ざって酒を手に人の話へ耳を澄ませる中、『薄桃花の想い』節樹 トウカ(p3p008730)は周囲を見回して機械技師らしい者を捜した。
機械油の臭いがする、もしくは油汚れのついた作業着の者。汚れが酷ければ着替えるだろうが、酒場に来るとき全員がわざわざきっちり着替えてくるとは考えづらい。
「相席、いいかい? この街の技師と話したくてね」
それらしいグループを見つけ、近づいたトウカは椅子をひとつ持って混ざらせてもらう。そしてつまみを一皿注文して「ささやかだが礼だ」と自らの奢りであることを告げた。
「アンタ、ここは初めてか?」
「ああ。俺は豊穣ってとこからここまで来たんだが、時計台って凄いな」
自分の済んでいた豊穣の辺境にもからくり細工はあったものの、あそこまで大きな時計を作れるようなからくりは中々ないだろう。
「そうだろうそうだろう。先祖に恥じない技師でいようって、皆いまでもがんばってんだ」
「俺は力はあるけど、細かい作業は苦手でね。見てる分には少年心がくすぐられるんだが」
なんて時計や機械の話をしながら打ち解けてきたころ、トウカは気になっていたことを技師たちへ打ち明ける。
「機械技師さんたちの作業を見学できるところってあるのか?」
「見学?」
その口ぶりだとなさそうか。そう考えながらもトウカは続ける。
「あと20も若ければ向上心出して弟子入りしてたんだが、こんなおっさんが混ざったら迷惑だろう? 弟子入りしたい若者が毎日来るんだろうし、観光客の相手もあるだろうが……」
「まあ、それなりではあるなあ」
「でも例年この時期は比較的落ち着いてるだろ? そういうのを考えてもいいかもな」
などと言い合う技師たち。これ以上観光客を増やすのか、と渋る声もあるが。
(外部の人たちが入れなくなっている状態には……気づいていない?)
それが作業で根を詰める技師だからかどうかは、わからないが。
(さて、駄目で元々。失敗を恐れず行こうか)
新聞社の前に立ったイレギュラーズは1人きり。『ヴァンガード』グリゼルダ=ロッジェロ(p3p009285)は新聞社『パピーア』へ覚悟を決めて踏み込む。
「こっちの記事回してくれ!」
「校正終わったぞ」
「印刷機まだ空かない!?」
……大忙しであった。しかしこれに怖気付くわけにはいかない。グリゼルダは手近な人物へ声をかけ、ネタを提供したいと告げた。
「なんだ、根も葉もない内容ならたたき出すぞ」
「聞いて貰わねばわからない。そうだな……『郊外の魔獣討伐』なのだが」
その言葉に男はぴくりと片眉を上げた。続けろ、という言葉にグリゼルダは従う。
郊外に住む正体不明の恐ろしい魔獣。それを屈強な冒険者たちが征伐しようとしているのだと。
「自警団たちがノロマな準備を始めたって話じゃなく、冒険者なんだな?」
「ああ。群れからはぐれた魔獣と戦うことで敵の能力を把握しに行っていたよ」
もう終わっているかもしれない、という言葉の前に男が勢いよく立ち上がり、社員の1人へ声をかけ外へ向かわせる。まあ、上手くすれば写真の一枚も取れるかもしれない。
「大規模討伐までの流れをインタビューしたり、新聞でシリーズ化しても面白いかもしれんぞ?」
「ああ、本当に……情報が本当か確認でき次第、情報料を払わせてもらおう」
「いや。金の代わりに情報が欲しい」
グリゼルダは聞く気になった男へ『真実』を告げた。この街は外部と遮断されているのだ、と。その言葉に男は唖然としたあと、ため息をつく。
(駄目そうだな)
「そんなバカげた話があるか? 実際、そんな声は街の誰からも上がってないだろう。あったならとっくに新聞で公表してるさ!」
駄目そうである。しかし代わりに、と本日の新聞を無料で貰えたのは僥倖か。
外へ出て、それを眺めようとした瞬間――はっとグリゼルダは顔を上げた。
――今日という日を終わらせるように、時計の長針と短針がかぶさる。
「……静かだわ」
オデットの零した声は小さく、闇に溶ける。太陽という光源が隠れた街は、さっさと眠ってしまおうと言わんばかりに明かりを消していた。ちらほらと見えるのは酒場の灯りだろうか。
日付を跨ぐ瞬間には変化なく。『次の日』は容易にやってきたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
色々と情報が集まり始めたようですね。それでは次回をお楽しみに。
またのご縁をお待ちしております。
GMコメント
●ご挨拶
愁です。
この<廻刻のツァンラート>は鉄帝の街『ツァンラート』を舞台とした全4回予定の長編シリーズです。
最初からでも、もちろん途中からでもご参加頂けます。
今回はとある1日に、皆さんでツァンラートを訪れます。さあ、いってらっしゃい。
●成功条件
ツァンラートでの情報収集
●情報精度
このシナリオの情報精度はD-です。
基本的に多くの部分が不透明であり、その情報収集こそがこの依頼で課せられたオーダーです。
●プレイングについて
この長編シリーズではパートが分かれています。
プレイングの1行目にパートの数字を、
プレイングの2行目に同行者の名前or同行タグを、
プレイングの3行目から本文を書いてください。
例:
1
【ひよこ隊】
時計台に登ってみよう!
●パート1:街を観光する
何があるのかも分からない状態、まずは街を観光してみても良いでしょう。後述のパート2で誰も彼もが聞き手に回るのはかえって怪しまれるかもしれません。
時計で有名な街であり、観光箇所も多いです。遊びついでにちゃっかり何らかの噂話が聞けたら上場と言ったところでしょう。
●パート2:聞き込みをする
一見、みんな普通に生活しているように見えます。あまり攻めた質問は怪しまれるかもしれませんが、こちらとて解決の糸口を掴みたいもの。何でもいいから情報が欲しいですね。
うまいこと手分けをして、情報の集まる場所へ聞き込みに行きましょう。
●パート3:はぐれ魔獣の討伐
見えない壁を早く突破するため、怪しい外壁を調べたいところですが……どうやら外壁付近には魔獣が住み着いている様です。魔獣の情報もまた少ないですが、はぐれた魔獣を見つけて倒すくらいなら可能かもしれません。併せて敵についても知りたいですね。
魔獣は四つ足の獣のようなことのみ分かっています。
●パート4:その他
1から3のパートに囚われず自由行動できます。ただし、その行動に対して成功は保証されません。
●スポット紹介
・時計台『グラヴィアン』
街の中央にある広場へそびえたつ大きな時計台。上へ登ることができますが、今は封鎖されているエリアもあるようです。
高い建物がない限りは地上から良く見えますし、時計台からも街を一望することができます。
・酒場『トワイライト』(夕方~夜のみ)
街にある比較的治安の良い酒場。観光客も来るような場所であり、宿も併設されています。
客は主に機械技師や周辺にある市場の関係者、観光客が多いらしいです。たまに酒癖の悪い者もいるので気をつけて下さい。
・市場『フリッシュ』
野菜、魚、肉、調味料などを扱う普通の市と、主に技師が訪れるような機械部品を卸している市が併設されています。ジャンクパーツなども売っているそうですよ。
朝方であれば食材を買いに来た者がいます。時間を問わず技師たちも訪れているようです。
・新聞社『パピーア』
街に拠点を構える新聞社。印刷所も併設されており、記事を書く者、印刷する者、仕分けから配達をする者と忙しい者が多い様子です。
新聞に取り上げられるようなネタがあればしっかりと話を聞いてくれるかもしれませんが、適当なことと思われてしまったら体よく追い出されてしまうでしょう。
・時計博物館『シュテーウング』
この街で作られてきた時計とその歴史が集められています。様々な年代の、種類豊富な時計が展示されており、中のパーツひとつひとつに至るまで説明がされているのだとか。
また、混沌中でも珍しい時計が展示されているとも言われています。
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