シナリオ詳細
<Scheinen Nacht2020>瓶の中に夜を詰めて
オープニング
●
「雑貨市?」
「はい! お手頃な価格で色々な店舗が出店しているのですって!」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がにっこりと頷く。今宵、シャイネンナハトはどこもかしこも人だらけで、商売人にとっては稼ぐチャンス。しかしそんな中で豊かではない者も楽しめるよう、低価格な雑貨を出品する市かあると言うことだった。
しかし手頃な価格とは言っても杜撰な作りというわけではない。技術はそのまま、素材をより安価に。そして利益は普段の比べて微々たるものと『量で稼ぐ』方法を取る者が多いらしい。故に毎年大好評なのだとか。
「まあ、それでミーロさんが力尽きちゃったんですけれど……」
苦笑したユリーカが視線を移す。追いかけるとカウンターに突っ伏して真っ白になった女性、ミーロがいた。
彼女が営むのは瓶詰め屋。基本的にはオーダーメイドで瓶の中に独特な世界を作る、ということをしているが彼女も雑貨市の――出品者としての――常連である。今年はオーダーメイドの期間が押したそうだが、それでもどうにかせんとイレギュラーズを頼って先日依頼を出したのである。
「それで材料が来るなり爆速で作り始めたらしいのです。あれは年末までダメになるやつなのです……」
簡単な手伝いならと申し出たイレギュラーズもいたが、流石に作業の直接的なところまでは関われない。手伝いがいることで負担は明らかに軽減されたはずだが、それでもって『あれ』である。ユリーカの言も納得できよう。
その時、ふとミーロが身じろぎした。
「あ。……ミーロさん、大丈夫ですか? おうちに帰れますか?」
「……うりこ……」
幽鬼のような声と雰囲気である。虚ろな目をした彼女はたまたま通りかかった者の腕をがっしりと掴んだ。
「ん?」
「うりこ……」
「ミーロさん、その人は売り子さんじゃないのです。フレイムタンさんなのです」
掴まれた『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)は困惑した表情でユリーカに説明を求める。だがミーロは待ってくれない。
「うりこ」
「いや、話を」
「うりこ」
「聞きた、」
「うりこ」
こわいのです、とユリーカが呟いた。助けに行くべきなのだろうが、こわい。ミーロはどうやら売り子を欲しているらしいが、これはたまたま通りかかったからという理由で標的を定めていそうだ。
「フレイムタンさん、やるって言ってください」
「なんだそれは」
「後で説明するのです。早く!」
ユリーカに促されたフレイムタンが渋々言われた通りにすると、ミーロはあっけなく彼の手を離して元の態勢に戻る。それを見届けた彼はどういうことなんだとユリーカへ視線を向けた。
「ミーロさんの出店する瓶詰め屋の売り子なのです」
「……我がすべきか?」
「いや、ミーロさんも覚えていないと思いますけれど……フレイムタンさんが良ければってことになるんじゃないでしょうか。あ、勿論イレギュラーズの皆さんでやりたい方がいればそれでも良いと思いますが!」
どうですか? と視線を向けるユリーカ。元々は出店イベントへ『客』として訪れるための案内ではあるが、『店員』としてでも良いというのであればそれはそれで構わない。フレイムタンも手伝いする分には構わないそうだから、誰もいなかったら彼がやるのだろう。
「ミーロさんは責任もっておうちまで送るのです。皆さんは出店を楽しんでみてはいかがですか?」
瓶詰めだけではなく沢山あるみたいですよ、とユリーカはチラシを皆の方へ差し出したのだった。
- <Scheinen Nacht2020>瓶の中に夜を詰めて完了
- GM名愁
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2021年01月12日 22時11分
- 参加人数30/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 30 人
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参加者一覧(30人)
リプレイ
●
「食べ物のお店じゃないの!?」
美味しいものを食べられる――そう思ってフレイムタンの元を訪れたメルティメルトは愕然とした。無理だ。まず意欲がない。そして会計は間違える自信がある。
だが雑踏に踏み込むのは疲れるだろうし……そうだ、客と話をしよう!
「それに精霊種の仲間って初めて見るし! タンさんで良いかしら?」
うっとりと視線を向ける彼女にフレイムタンは苦笑いを浮かべながらご自由に、と返す。
「やあ、なんだかえらい圧だったねぇ」
そこへ声をかけてきたのはミニスカサンタ2人組こと姫喬と雛乃。店番を変わるという2人にフレイムタンが立ち上がるとメルティメルトが眉尻を下げるが――。
「あら、素敵な人!」
すぐさま別の男が目に映ったらしい。寄ってきた客に姫喬はにっと笑みを浮かべた。
「どうだい? 一点モノだよ」
「へえ、すごいなあ」
マジマジと眺める男はメルティメルトとの会話に興じながら1つの小瓶を選ぶ。受け取った雛乃はふわりと笑みを浮かべた。
「とっても可愛いですよね! プレゼントですか?」
そうなんだ、と照れ臭そうな声を聞きながらラッピングする。そっと隣を見れば、会計をしている姫喬がいて。
ひなも、いつかなれるかなぁ。
その言葉が聞こえたのかどうか―― 姫喬はちらりと雛乃を見て笑う。わたわたし出す愛らしい彼女を促して、商品は客の元へ。
「姫喬お姉ちゃん、次も頑張りましょうね!」
「いっひひ、そうだねぇ」
願いを、想いを届けるために。2人で気合を入れたなら寒い夜だってへっちゃらだ。
「随分と手頃な値段になってるのね……」
ルチアは色々な店を回りながら呟く。どこも商品はしっかりした、それこそ普通の店に置いていたっておかしくないくらいの質だ。だと言うのに安い値段を見るとほとんど利益がないのではと思ってしまう。
なおさら大事にしなきゃ、と思いながらルチアはあちらへ、こちらへ。小物も欲しいし髪結紐だって欲しい。友人へのお土産だって選びたい。そう、もちろん瓶詰めだって。
「すいませーん! 恋人同士をモチーフにしたアクセサリーありったけくださーい!」
そう告げて商品を買い占めていった心は、人気のない場所に出てそれらを地面に放る。見下ろす視線は――酷く冷たい。彼女はその手に持った置物を躊躇なく振り下ろした。
「にわかカップル死ね! 毎年シャイネンナハトの度に湧いてくるにわかカップル死ね!」
無残な形になっていくアクセサリー。それも、彼女の行動も見つからないのは果たして幸か不幸か。
そんなことが行われているとはつゆ知らず、皆楽しそうに店を巡る。
「あ、猫モチーフだ」
ヨゾラは雑貨市を周りつつ、猫アイテムをすかさずチェック。その足が向かうのは仲間たちが店番をする瓶詰め屋だ。
「夜を詰めたような瓶詰めとか」
「いっひひひ。こんなのどうだい?」
示されたそれに一目惚れしたヨゾラは手に取ってみる。うん、これが良い。
「輝かんばかりのこの夜に!」
雛乃から受け取って次は暖炉の前へ。暖かい場所にはやはり――猫がつきものである。
店番を交代したユージェニーはほう、と商品を見てうっとり。
(はっ、しっかりと店番をしないと!)
客ではないのだから、とすべきことをおさらい。金銭のやり取りは大丈夫なはず。客との会話は――苦手だ。話をしたいというメルティメルトにお願いしよう。
(それにしても、本当に素敵ですわ……)
客ではないけれど、やはり見張れてしまう。作者であるミーロもまたきっと素敵な人なのだろう。だって、訪れる客がとても嬉しそうな顔をするのだもの。
「ラサとは違うな」
「まあ、そうなのですか?」
雪之丞は出店へ向けていた視線を傍らのラダへ注ぐ。今日は約束の市巡り。そして互いへの贈り物探し。彼女の話を聞きながらも視線は移ろっていく。
(ラサも賑やかそうだけれど、こちらも随分と賑やかで)
活気がある事は良い事だ。そう微笑む雪之丞はラダに手招かれ、アクセサリーの出店を見に行った。
「これいいな」
「あら、」
なんて互いに自分用を見つけてしまったり。そんな中で雪之丞はべっ甲色の髪飾りへ視線が吸い寄せられた。
(似合いそう)
もちろんラダに、だ。その彼女はと言えば、隣で売っていた茶器――ティーセットを購入していた。
「これを。湯呑で飲む習慣があるなら、きっとこちらの茶器で茶を試しても楽しいと思う」
まあ、とそれを受け取った雪之丞は顔を綻ばせる。自分には何が渡されるのだろうかと緊張の色を見せるラダへ、髪飾りがつけられるまで――もう少し。
(店番なんてそう出来る機会もないだろうからね)
ヴェルグリーズは防寒バッチリにして店の椅子に腰掛ける。商品を見て楽しそうな客を見ると、動いてもいないのになんだか温かくなるようだ。
「おや、迷っているのかい?」
なんて声をかけたなら、少年は丸い瞳で見上げて母にあげたいのだと告げる。
「なるほど、それじゃあ俺と一緒に合いそうなものを探してみよう」
さまざまな世界観が閉じ込められた瓶詰めは、見れば見るほど迷ってしまいそうで。けれどヴェルグリーズの語る印象を聞いていた少年は、どうやら素敵な出会いができたようである。
「必ずや立派に勤め上げてみせましょう。ね、イーさん!」
「うん、一緒に頑張ろうね!」
店番バトンタッチしたリュカシスとイーハトーヴはやる気満々。そしてイーハトーヴに至っては待ち時間の準備も万端である。
「オフィーリアチャンと瓶詰めのコラボ! 絶対に可愛いよ!」
書くものを呟けば隣で喜ばれるものだから、彼もいっしょにと誘って。絵はイーハトーヴが、文字はリュカシスが、と。
「君の書く字、すっごく好きなんだぁ」
「へへ、ありがとう! 色々な字体で書いてみるよ!」
照れ笑いしたリュカシスが文字を書いて、完成した絵を店に飾る。ウェルカムボードの代わりだ。
「あ、いらっしゃいませ!」
客がやってくるなら接客を。2人で客の『とっておき』を見つけるお手伝いをしたならば、返ってくるのはとびきりの笑顔だ。
「お客さんの笑顔、嬉しいねぇ。それにすごくいい刺激を貰った感じ! 3日は部屋に籠れちゃう!」
「ボクも! 武器の改造してきたくなったなあ」
リュカシスとて集中したならば籠りきりになってしまうだろうから――見せあいっこは完成した後に、ね?
「うちにある食器、こんな感じの……雑貨屋さんで買ったやつなんです」
「え、雑貨屋さんで買ってるの?」
佐里の言葉にタイムは興味津々な目で彼女を見る。色々な物が、そして様々なセンスの雑貨が売られている場所だ。当然食器なども売っているが――どんなものを持っているんだろう?
「今度お見せしますね」
とお家訪問の約束をしつつ、2人は気に入ったものがあればと歩を進める。
「タイムさんは春って感じがしますよね。温かい感じの……アクセサリーかな」
「それじゃあわたしも、佐里さんに似合うアクセアリー探してみるね!」
目を瞬かせる佐里にタイムはにっこり。こうして似合う物探しが始まった。
(すべての音が静寂に包まれた雪景色のような、そんなイメージで……)
タイムはシンプルなシルバーのネックレスを。対して佐里は桜色のネックレスを手に取る。お互いの首に当てて、2人は微笑みあった。
「プレゼントさせてください」
「え? それじゃあわたしも! プレゼントさせて!」
店番を仲間と交代したガウスは残っている商品を眺める。店番をしていたら『彼女』は来るだろうか?
(これ、アイツにやったら喜びそうだな)
ふと目に留まった商品に触れる。店番の交代が来たら買うとして――それまで取り置かせてもらおう。
「っと、いらっしゃい」
それをバックヤードに回したところで来客だ。好きな男の子にあげたいのだと言う少女にガウスは笑みを浮かべ、お勧めの商品を紹介し始めた。
「こういうの久しぶりかもっ!」
「見ているだけでも楽しくなりますね」
花丸とリンディスは連れ立ってお店めぐり。買わずとも個性豊かな芸術品は目を楽しませる――が。
「こ、これは……っ!?」
「あら? 花丸さん?」
リンディスが振り返ると、途中で止まってわなわなする花丸の姿。かと思えばばっとリンディスの方を向く。
「見て見て! これ、これだよっ!」
「食べ物……の小物ですか」
最初は食品かと思ったが、近くでよくよく見ると雑貨やアクセサリーだとわかる。
「思わずピーンって来たんだっ! ってことで、これくださいっ!」
迷いなく購入する花丸。驚くリンディスへこういうのは一期一会なのだと力強く語る。
「なるほど。それなら……花丸さんと色違いのアクセサリーを買いましょうか」
「わぁ、お揃いっ!」
彼女が手に取ったそれに花丸がにっこり。けれどここで満足するにはまだ早い!
(このような場所にも、出されているのです、ね)
閠が顔を巡らせれば、そこにいるのは一般人――そこまで裕福ではない者ばかり。2年越しに再び結ばれた縁だ、本人がいない分店番を頑張らねば。
「おにーさん?」
「おねーさん?」
そこへひょこひょこと顔を覗かせたのは双子の子。辿々しくも商品を紹介すると、閠の近くにいた人魂と黒狼の霊もそれを手伝う。
「「お揃いにする!!」
「ありがとう、ございます」
2人でお揃いと嬉しそうに駆けていく背を見送り、閠はふと霊たちの方へ意識を向けて。
「お土産に、ひとつ……いえ、みっつほど、購入して帰りたい、ですね?」
――3人での、お揃いに。
「赤い頬っぺたごと、食べたい言うたら……また怒られてしまうやろか?」
「も、もう……!」
蜻蛉が去年の餅を思い出してくすりと笑うと、メイメイはさらに赤くなった頬を押さえて蜻蛉へ視線を向ける。そんな彼女らが向かったのは瓶詰めの出店だ。
「きらきらで、かわいらしいです、ね」
「ほんに……綺麗やねぇ」
ひとつひとつが異なるけれど、どれも美しさでは引けを取らない。2人は悩みながらもそれぞれ小瓶を手に取った。
蜻蛉は雪のようにラメが煌めく小瓶。中では小さな羊が眠っている。
「あれ、」
そう呟いたメイメイは同じような――けれど中にいるのは優雅にくつろぐ黒い猫で。
「誰かさんによお似とる」
「ふふ、こちらも似てらっしゃいます、よ」
まるで対になっているみたい。2人はそれを購入して、腕の中に抱きしめる。
大切なもの、大事な思い出と一緒に。
これください、という声にセリアははっと正気着いて金額を提示する。いかんせんやることがない。愛想とかも期待しないでほしい。
(ま、伝言くらいなら聞くけど)
今頃本当に力尽きているから、代わりに最後まで付き合おうと店番を買って出たのだ。ちゃんと売り切れてほしいし、想いのこもった言葉は伝えたい。
(材料集め手伝った身としてはなんとなく嬉しいし)
瓶を綺麗に揃えながら、その視線は今しがた瓶を買っていった親子へ。
「……よい、輝く夜を」
「ね、プレゼント交換しよ! ほら、こ……友達っぽいでしょ?」
「うん? まあ、構わないが」
やけに気合が入っている、と世界はMeerを見る。どこがと指摘するのは難しいが、全体的に気合が入っているような。そんなにこの雑貨市が楽しみだったのだろうか?
何はともあれ、交換こをする流れである。渡すとなれば真剣に考えなくてはならない。
(お菓子は食べたら終わっちゃうよね……)
(どうせなら使えるものの方がいいよな)
喜んでもらえたらいい。そう考えながら選ばれたのはカトラリーセットと十徳ナイフ。
「ね、そのカトラリーセット、僕のとお揃いなんだけど……」
「ん、いいんじゃないか」
良かった、と笑うMeer。ここで2人の内心はそれなりに食い違っているのだが、言いださなければ分からない。
Meerはプレゼントに貰った十徳ナイフを見てひっそり決意した。
――このナイフみたいに器用な子になって、今は塩でもいつかは砂糖みたいな甘い雰囲気に!
「やっぱり限界だったみたいだね……」
「倒れちゃったら元も子もないのに」
ミーロの身を案じつつも、彼女が成功させたかったものを引きつごうと、アレクシアと焔は店番に名乗り上げていた。店主が立っているわけではないが、商品には文句のつけようもなし、いくつもの笑顔が見られて2人の表情も綻ぶ。
ただ、気がかりなのは――ミーロもこの笑顔を見たかっただろうということで。
「ねえ、ノートとかに買った人たちからメッセージ貰ったりできないかな?」
「寄せ書き見たいな感じだね! 持ち帰れるメッセージカードもいいかも!」
あとからお店へこっそり送る事もできる、と2人は色々用意し始める。ミーロが直接見ることはできないが、何かを通して喜びが伝わるように。
「良かったらお願いします!」
「あとからお店に送っても大丈夫ですよ!」
小瓶の購入者へカードを渡したり、ノートに書いて貰ったり。字が書けない子には代わりに書いてあげたりと、少しずつメッセージが集まり始めていた。
「フィルティス、今日は買い物か」
アルテミアが振り向くとベネディクトが片手を上げる。小さく笑みを浮かべた彼女は折角だから買い物を、と返した。その視線は今しがた見ていた――赤と青の妖精を模りし、対のブレスレットへ。
「……君は、また剣を執るのか?」
「……いつまでも、情けない姿なんて見せられないでしょう?」
苦笑を浮かべたアルテミア。確かに、それを考えなかったわけではない。そしてこれから剣を握っていく理由もまだ見つからない。
けれど、1人じゃないから。向こうで待ってくれる人がいるから。
「ベネディクトさんは? どうして武器を執るの?」
「そうだな。……俺が今生きている理由を知る為、だろうか」
独り、残ってしまった。他には誰も残らなかった。……死んでほしくなかったのに。
過去に意識を飛ばしそうになっていたベネディクトは小さく首を振る。こんな活気ある往来で話す内容ではなかっただろう。
「済まんな。荷物持ちは要るか?」
「ふふ、そうね。他も見て回りたいかも」
今まで纏っていた哀愁を振り払い。2人は揃って出店巡りへ繰り出した。
「どうせ売るならしっかりと売り切りたいですからね」
「……それでボク?」
店頭に並んだ寛治の隣には、シャルル。胡乱な視線に寛治が取り出したのは――。
「ファンドモデル、ご協力ありがとうございました。折角なのでこれも店頭に飾りましょう」
「待っ――ちょっと! 恥ずかしいじゃん!!」
「素敵な絵ですよ」
赤面して大声をあげるシャルルに視線が集まり、ついでに店自体にも注目が集まる。これは予期しない――いや寛治にとってはこれすら想定内だろうか?
「ご興味がございましたらどうぞ近くへ。どれも一点物ですよ」
さりげなく入った誘導に客足が向く。寛治の営業力により残り少なかった商品もあっという間に新たな持ち主の元へ。
「……流石」
「ありがとうございます。残った利益はスタッフに還元、でどうです?」
用意した側だって多少は楽しむ余地が必要だ――寛治は売上の集計をしながら小さく笑みを浮かべたのだった。
「お待たせ、アイラ」
愛する人の差し出した手を取る。喉はまだリハビリ中だけれど、彼の名前を呼びたくて、楽しいひと時を過ごしたくて。
「……ら、ラピス。むこう、いって、みませんか」
けれど――無理をすれば、ラピスは悲しい顔をしてしまう。だから『大丈夫だよ』と。
「ボクの、傷、なおしてくれて、ありがとう。
……ボク、また、ラピスのそばに、いても、いい?」
「勿論。……僕の方こそ、ごめん」
少しの間でも彼女の傍を離れてしまったことへの後悔。こればかりはこれからの、彼女へ注ぐより一層の愛で挽回していくしかない。
「ね、ラピス。領のひとに、おみやげを、買いたくて」
一緒に選んで欲しいという妻の言葉に頷いたラピスは人混みからさりげなく彼女を守りながら歩いていく。彼女が示すのは特に――連れ帰ってきた、子供たちの事だろう。
「ボクにはなかった、ちいさいときの、しあわせを……たくさん、たくさんあげたいんだ」
「うん。少しでも笑顔を持ってくれるように、お土産だね」
温かいマフラー。手がかじかまないように手袋。帽子もセーターも、耳当てだって買っていこう。
輝かんばかりの優しい夜は、彼らにだってしあわせを降らしてくれるはずだから。
「ねえ、アイラ。皆で、しあわせになろう」
「ふふ、うん。なりましょう。しあわせに」
2人は帰路につく。領の子供たちが笑顔になるようにと祈りながら。
――星降る夜は冷たくて、けれど温かなひと時を作るのだろう。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
輝かんばかりの、この夜に!
GMコメント
●すること
出店を楽しむorミーロの出店を手伝う
●雑貨市を楽しむ【客】
ミーロの瓶詰め屋を始めとして、職人たちがお手頃価格で様々なものを出店しています。その名の通り雑貨が多く、中には掘り出し物もあるかもしれません。
手作り品が多いためペアルックのようなものは難しいかもしれませんが、それに似たようなものがあったり対になった商品などはあるかもしれません。シャイネンナハトや冬のデザインが多めですが、季節感のない商品もあるようです。
●出店を手伝う【店】
誰もいなくてもいいです。やりたい人がいたら、という程度です。いなければフレイムタンが店番しています。
ミーロの出店スペースで店番をします。基本的にはお客さんが来るまでのんびり待ち、来たら金銭のやり取りをする程度です。商品を受け取ったお客さんの嬉しそうな笑顔でほっこりしたい方はどうぞ。
●ロケーション
幻想にある大きめな集会場を借りてのイベントです。同人即売会のような感じで机やいすを並べています。
何ヵ所かに暖炉がありますが、換気のこともあり暖気はそこまで全体に行き渡りません。
暖炉前はくつろぎスポットにもなっているようなので、一休みする際はご利用ください。
●イベントシナリオ注意事項
本シナリオはイベントシナリオです。軽めの描写となりますこと、全員の描写をお約束できない事をご了承ください。
アドリブの可否に関してはNGの場合のみ記載ください。基本アドリブが入ります。
●NPC
当方のNPCはプレイングでお声がけいただければ登場する可能性があります。
ブラウは別シナリオ『明けの光に何想ふ』でカムイグラに行くとされていますが、シャイネンナハトが終わったら超特急で向かうので現時点では幻想にいるものとします。
●ご挨拶
愁と申します。
ミーロの採取依頼が上手くいったためイベントシナリオが出ました! どうぞお楽しみください。
ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
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