PandoraPartyProject

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忘れることのない願い

 星穹(p3p008330)は記憶喪失の女だ。拾われ子だ。
 忍びとして育て上げられた女は相棒がいる、愛しい人だ。気付けば奇跡の余波で子が産まれた
 ――そうして、星穹は失った記憶を埋める様に沢山の者を得続けた。
 苦難ある道のりも、険しいだけではないと笑っていられるような。
「セナさま」
 メイメイ・ルー(p3p004460)が呼んだ男の名に星穹の肩が揺らいだ。
 天義に来て、戦いの最中に見付けたその人は兄だという。セナ・アリアライト、騎士たるその人は星穹にとって唯一の『真っ当に残された血縁』だ。
 道を違えた両親も、己を育て上げようとした男も、星穹にとっては忘れ去りたい記憶そのものだった。
 それでも、取りこぼさないように兄と共に来た。
 星穹は、『セラスチューム・グラヨール』として兄『セアノサス・グラヨール』と向き合った。
 それはヴェルグリーズ(p3p008566)が居なければ為し得ぬもので。
 そして、仲間が居たからこそここまで駆けてきた。
「セナさま」
「報告に感謝を。マスティマテレサは破られたか。しかし――」
 彼の姿がない。『ネロ』。メイメイは絶望の淵に立たされたような顔をして居た。
 失意の最中に立ち竦んでいてはならない。未来がなくては再会する事も出来まい。戦う理由はひとつ、そこにある。
 それに『女の子』だからこそ、メイメイにカロル・ルゥーロルゥーの気持ちが良く分かったのだ。

 ――ルスト様。私、言いたいことがあるんです。……聞いて下さる?

山賊は男だった! ルルハウスくんは帰ってきた! 始めるか……!
 世界の命運をかけたラストバトル! 行くぞおおおお! うおおおー!!!」
 雄叫びを上げて駆けるのは黒衣の少女だった。聖騎士の装束は後方に控える聖騎士団の精鋭達を奮い立たせることであろう。
 緋い刀身が風を切る。茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)は『決戦兵器』である己の身を顧みない。
「ハッハァー! 決戦じゃん決戦! マジヤバくね? 先陣を切ってみんな駆けてくぜぇ!
 ま、騎兵隊の反応も良き良き。というわけでー……戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 貴様を抹消する!」
 戦神を名乗る娘は容易に倒れない。共に立つは紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
「はじめましてルスト! そしてさようならだ!」
 ルストに『風穴を開けた』のはグドルフと紫電が言ったか。
 ――いいや、『アラン・スミシー』だ。キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)は声を張り上げる。
「俺ァ悪党だ。グドルフ・ボイデルと同じだ。だからな、間違った評判が我慢出来ないんだよ。
 俺のダチ、山賊グドルフはイレギュラーズを裏切り、そしておっ死んだ。悪事の限りを尽くした悪党らしい最期だ。
 その後、ルストの胴を穿ったのはリゴール・モルトンの友にして、聖職者アラン・スミシーだ」
「およ」
 秋奈は振り向いた。紫電は「いいのか」と問う。彼が身を挺して風穴を開けた。
「いいんだ。この方が正しい。だから、絶対に譲らねェぞ!」  堂々と告げるキドーに「なら、それでいいだろう」と紫電は笑った。ルル家が賭けに勝った。『アラン』が一撃を放った。
 全力でルストに突撃をするキドーと共に紫電は『全ツッパ』で駆け抜ける。
 叫ぶ紫電は秋奈との連携を絶やさない。その様子を見ながらキドーは、先を行く『海賊』と『山賊』を思い出した。
(楽しかったなァ。酒場『燃える石』でさ、安酒かっくらってバカみたいな言い争いをしたモンよ。
 ……俺、あんな楽しい思いしたことなかった。
 元いた世界じゃあ、まともに扱われた事なんてなくて。特に歳上の男からは目に見えてすらいないみたいだった)
 身体は小さく力は無い、盗みも平凡だった。ゴブリンに向上心なんてものはなかった。
 それでも自分が扱える程度の小さなラッキーを何時も探して――今じゃ、老いて行かれたくないと『彼等』の背を追うのだ。

 随分――遠くまで来たな。

 遠くまで来てしまったのは、皆同じだ、とカロルは感じていた。
 此度だけは『シンデレラ』として護ると微笑むトール=アシェンプテル(p3p010816)も、楽しげに微笑むメリーノ・アリテンシア(p3p010217)も。
 そして、不安ならば尾をもちもちとして居なさいと笑った水天宮 妙見子(p3p010644)も。
(羊羹ちゃんも、普通の女だもの。もちもちだし。
 ううん……心の何処かで私、分かって居たわ。
 聖女だったけれど、神様を信じていたけれど、感情があって、それにばかり左右されている内はただの女でしかないの。
 それでも、好きだったのになあ。本気だったけどなあ。
 勘違いなんかじゃ、なかったのだけれどなあ。
 世界が色褪せて言ってしまう意味は、まだ分らないけれど)
 カロルは俯いていた。妙見子も、星穹も、自らを守る為に居る。彼女達だけじゃないと知っている。
「カロルよ、敵に護られるのはどう言う気分だ」とルストの声が降りカロルは緩やかに顔を上げた。
「聖竜が何を為したとて、お前は所詮はお前だ。
 天義建国に携わり、人心を誘惑した罪に問われた魔女だった。この国が憎らしかった筈だろう」
「私は……」
「そうやってお飾りのトロフィーになって流され続けていきたくはないと俺の手を取ったのだろう。
 利用されるままに利用され、生きていくのが苦しいと。だからこそ俺はお前がアレフと共に在ろうとも『許して遣った』――が、それが間違えだったか」
 ああ、そうだ。あの人は『否定しなかった』。
 何れだけ苦しみ喘いだとてそれを聞いていてくれたのだ。まるで神のような悪意が善意にすげ変わるような慈悲深さだった。
 ルストの目が、己を見ている。カロルはそれだけで嬉しかった、筈だった。
 ルストの声が、己を名を呼んだ。カロルはそれだけで嬉しかった、筈だった。
 その掌に集まっていく焔が己を射貫き、アレフの心臓をも燃やし尽そうとしていること何て理解出来た。
 頭が理解しようとも身体は上手くは動かなかった。その刹那に、『すっごい幸せそうで、ちょっと妬けちゃうような』あの子が来た。
 何時だって、幸せそうだった。苦難をも撥ね除けるほどの愛に包まれていた。
 真綿のような以上に包まれていると思っていた。『カロル』には無い物を持っていると。
 ああ、本当――本当に、命を賭しても良いなんて、想ってくれる優しさも強さも、妬けちゃうくらいに羨ましい。
(アレフ。どうか守る力を与えてほしい。
 このままでは真っ先にルル様が殺される――そんなのを未来として叶えるなんて認めない)
 掴んだ未来を、星穹は離したくなかった。
「ねえ、応えてくれますか、アレフ。約束は必ず守ります。
 ……誰かの帰る場所であるこの国と、ルル様が笑う未来を、守りたい。私は――」
 星穹の盾に聖竜の加護が宿った。応えてくれたそれは、身を軋ませ痛みを走らせ、それでも、守る為の力を与えてくれる。
(それでも――私だって守りたかった。
 ようやく何も気にせずに、ルル様が笑える未来を。
 お兄様と一緒に家族を弔う未来を。ヴェルグリーズと歩んでいく未来を。だから引くわけにはいきませんのよ)
 ふらつく身体を支えてくれた『相棒』と共に、女は倒すべき『神』を見た。
 聖竜が宿された盾はルストの焔を喰らい己の糧にしたかのようにさえ見える。カロルのための守護の力か。
「貴方が屠れるものなんてもう何も無い。
 この理想郷だって崩れていくのに、貴方だけ生き延びられるなんて思わないで。
 沢山の人の命を踏み躙って今更生きたいだなんて、願わせない!」
 空が崩れる音がする。ぱきりと欠片が降り注ぐ。崩れ去っていく『理想郷』の中で冠位傲慢は苛立ちを込めた雷を降らせ続ける――

 ※別たれていた『聖竜』の力が『1つ』、使用されました――


 ※神の王国に対する攻撃が始まりました!!

 ※『プルートの黄金劇場』事件に大きな変化があった模様です……

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

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