PandoraPartyProject
戦の後、これまで
「漸く、終わりましたね」
ウルリカ(p3p007777)が実感を持ってそう言えたのは戦いからたっぷり時間が経ってからの事だった。
帝都スチールグラードに刻まれた確かな爪痕と、我が身の痛みと重さばかりが、嘘のような戦いが完全に本当だった事を告げていた。
「全く、今考えても悪い冗談みたいな時間だったわね」
ゼファー(p3p007625)の言葉に頷いたのは一人二人だけでは無かった。
取り分け強烈な激戦となったリッテラムの攻防戦は良くも悪くも強烈な記憶となって彼女等の中に焼き付いている。
幾重にも積み重なった絶望を超えて、最悪と呼ぶべき破壊の時間を回避したイレギュラーズは漸く人心地をつけたという訳だった。
「これで、終わったんだね……」
「……ええ、少なくとも、当面の危機は過ぎ去った筈」
マリア・レイシス(p3p006685)の傍らでヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が頷いた。
バルナバスの撃破により新皇帝派の主立った戦力は武装を解除し、抵抗を諦めている。
「でも、これからですわ」
「そうだね」
しかして、未だ騒然の燻る帝都である。
それに何より。バルナバスの引き起こした災禍は彼だけのものではありえない。
長い時間の中で沈殿し続けたこの国の歪みこそがこれからの鉄帝国民の戦わねばならぬ敵である事は明白だった。
「でも、きっと良い方向に行く筈さ。だって――」
「――私達はあの『憤怒』を倒したのですものね」
「ありがとう」と呟いたヴァレーリヤにマリアは小さく頭を振った。
失われたものは余りに大きく、決して戻らないものばかりだけれど。
二人はクラースナヤ・ズヴェズターの――アミナの道行と同じように、先には希望があると信じていた。
「それにしても――」
「――まったく、何て人騒がせな爺なんだよ……」
綾辻・愛奈(p3p010320)の言葉をアルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が悪態交じりに継いでみせた。
二人の網膜に焼き付く光景は黒い太陽を食い止める為にその身を捧げた鉄の戦艦と、船と自分達の両方を優しく守った大きな手である。
戦艦グラーフ・アイゼンブルートは衝突の前に爆発四散して地上へ墜落した筈だったのだが――
――あ、危うく死ぬ所だったわ!!!
「……アレで生きてるか? 普通……」
『特攻』が完全に成功しなかった事が逆に幸いしたと言う他は無いのだろうが。
提督たる宰相バイル・バイオンはあの結末にも奇跡的な生存を果たしていた。
無論、全身複雑骨折をはじめとした絶対安静である。助からなかったクルーも非常に多い。
しかし、かの船は撃墜にも関わらず、バイル以下信じられない位に多くの生存者を残していた。
それは――
「――もしかしたら、ガイアドニスさんの奇跡の欠片だったのかも知れませんね」
愛奈の言う通りだったかも知れない。
事実、バイルは墜落の時、声を聴いたと証言している。
それは奇跡の残照。祈りの一欠片。最後まで逆転を信じる『誰か』の――
「……」
概ね『良かった』としか言えない結末の中で微妙な顔をして自らの掌を見つめるのはシラス(p3p004421)だった。
「……逃がしちゃったね」
「ああ」
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)も、その言葉に頷いた彼も戦いの『本当』を知っていた。
仲間がバルナバスを討った以上はイレギュラーズ陣営自体の勝利を疑う余地は無い。
しかし、彼等がマッチアップしたナルキスなる魔種との決着は――
――あーあ、まさかのまさかだ。大将がやられてやんの!
最後の最後まで悪意も負の感情も碌に見せずに戦いのみを愉しんでいたそれはあっけらかんと勝負を次に預けて消え失せた。
引き分け、痛み分けと言えば聞こえはいいがローレットでも寡兵とはいえトップクラスの戦力で挑んだ戦いは決してそう称せるようなものでは無かった筈だ。
「……悔しいね! 頑張れたとは思うんだけど……!」
「作戦への評価と個人戦の感覚は同じ、とはいかないわね」
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)やアンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)も同じである。
城内で遊撃戦力となっていた魔種陣営のTOP3――ナルキス、鎧、悪魔は何れも戦線から離脱した。
彼等が魔種である以上、今後の禍根を考えれば倒しておけるに越した事は無かったのだが、その辺りは本丸(バルナバス)の戦いがギリギリ過ぎた事を考えれば痛し痒し、止むを得ないと言う他は無いのだろう。
「……でも、シラス君」
「うん?」
「私達は――ううん、皆、出来る事をやり切った筈だよ」
言い切ったアレクシアにシラスの表情が少しだけ和らいだ。
「皆が諦めなかったんだ。これは、皆が自分を信じた結末なんだ」
――だから、これは何より一番の結果だったんだよ。
その言葉は間違いのない真実だ。
振り返ってもやり直す事は出来ないけれど、可能性の獣はその力で恐らく最良の一つを掴み取ったのだから。
「――胸を張りましょう」
日車・迅(p3p007500)の言葉はきっと誰しもの代弁だった。
「それが、きっと。戦いで散った全ての英霊への慰めになりましょう」
自然に皆が首肯した。
大魔種バルナバスの悪夢は消え去ったのだ。
笑おう。
ゼシュテル鉄帝国は長い冬を終え、これから暖かな春の息吹を迎えるのだから――
※バルナバス・スティージレッドが倒され、リッテラムにゼシュテルの旗がはためいています!
※帝都決戦に勝利しました!!
※All You Need Is Power(鉄帝国のテーマ) 作曲:町田カンスケ
※ラサでは『月の王国』への作戦行動が遂行されています!
※昨日(4/1)は何もなかったよ……?
鉄帝動乱編派閥ギルド |
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