PandoraPartyProject

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黒い太陽

 理由のない天体ショウを許す位に、この混沌はロマンチックでは有り得ない――
 ならば、空に浮かぶ太陽が二つになったその時から、鉄帝国は彼の『権能』に支配されていたのだろう。

 ――大寒波で多くの犠牲が出た事もあり急速に成長したのかもしれぬ。
   奴は必要な量が十分溜まった時に太陽の力を開放して国を消し飛ばすつもりなのでは?

過去演算装置ヴェルザンディ』の主機能(ヴェズルフェルニル)は彼方に距離の離れた誰かの運命すらをも覗き込む事が出来る。
 神にも等しい権能を備え、冬の帝国に君臨し続けるバルナバス・スティージレッドを覗く事は確かなリスクだったが、如月=紅牙=咲耶(p3p006128)の選択は果たしてこの局面において最も正しくかったと言わざるを得まい。
『視線』に気付いた彼に『睨み返された』時には本当に生きた心地もしなかったのだが――
「まさかもまさか、本当にそんな事を狙っているなんてね」
「いずれは地に堕ち、鉄帝を焼き尽くして灰燼に帰す――か。
『最高効率の絶滅作戦とは恐れ入る』。
 考える馬鹿が居たとしても、実行しようとする馬鹿には心当たりが無かったがな」
 ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)の推測を決定付けた情報は特異運命座標を含む鉄帝国の誰にも不可逆の戦いの始まりを予感させていた。
「実に皮肉な話です」
 リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は苦笑を禁じ得なかった。
「酷く面倒に絡む捻じれた根が、陰惨なる陰謀をも超える単純な悪意を覆い隠していたとさえ言える。
 ……丁度、『太陽の光に目を灼かれたみたいに』です」
 ギュルヴィと名乗っていた執念深い男の目する冬(フローズヴィトニル)の計画とバルナバスの狙いは『別』なのだろう。
 成り行き上、方向が重なったに過ぎないそれらは仲間と呼ぶには余りに『違う』。
 主(スコルピオ)を失った彼の『憤怒』が呼び声と繋がったのは運命の必然やも知れないが、それ程の想いが彼に二君を戴かせる筈も無い。
「何れにせよ、悪趣味な話にござる」
「全くだよ」
 咲耶の言葉にヨゾラが――三人が頷いた。

 ――バルナバスの権能が人の憎悪や憤怒を喰らい、成長するものなのだとするならば――

 魔種の思考、それも冠位七罪を冠する怪物の思考を余人が理解する事は難しいが、それでも明確な事実はある。『憤怒』たるバルナバスは唯、国を荒らしたかっただけなのだ。あの荒唐無稽で陰惨極まる弱肉強食の勅命も、終わらない冬も。内戦も。凍え死んだ人間も、無念を抱えた人間も。全てはテーブルの上のディナーだったという事なのだろう。
『バルナバスは徹頭徹尾この国を捕食場にしていたに過ぎない』。
 六天覇道の競い合いも、帝国に纏わる多くの人間の矜持も悲喜こもごもも。
 イレギュラーズの関与も、彼に与する新皇帝派の人間も全て含めて――餌にしていただけに過ぎないのだ。
 魔種の狙いか究極の目的が混沌の破壊と消失なれば、ゲオルグの言う通り『馬鹿げた最高効率』は実にバルナバスらしい権能と呼ぶしかないのだろうが――
「何れにせよ、放ってはおけぬ」
「乗りかかった船だし、何よりこれまで以上にこれは『どうしようもない』からな」
 咲耶が断じ、ゲオルグは気合を入れ直した。
 斯様な事実を把握した以上は、早晩の決戦は不可避のものとなろう。
 バルナバスが全ての準備を整えるより早く、スチールグラードに攻め入り、難攻不落の王城リッテラムを攻略し、『最強(かれ)』を沈める他はないのだ。
「……相変わらず酷いオーダーだなぁ」
 しみじみ言ったヨゾラにリースリットが今日何度目かの苦笑をした。
「『神は乗り越えられる試練しか与えないという話が本当なら、私達は本当に良く買われたものですね』」


 ※二つの太陽はバルナバスの『権能』のようです。鉄帝国の滅亡が近付いているようです……
 ※独立島アーカーシュとポラリス・ユニオン(北辰連合)に『動き』があったようです。
 ※帝政派が切り札『グラーフ・アイゼンブルート』と共に『帝都西方面』より出撃するようです!
 ※鉄帝国各地の流通網が回復しつつあります!
 ※不凍港ベデクトに届いた物資が行き渡り、全勢力の生産力が上昇しました!
 ※更にベデクトを解放していたアーカーシュと北辰連合の求心力が上昇しています!

 ※天義の都市テセラ・ニバスが消滅し、異言都市(リンバス・シティ)が顕現しました。また、遂行者勢力による天義での活動が観測されています!
 ※ラサの首都ネフェルストにて同時多発的に事件が発生し、『赤犬の群』の団長ディルクが行方を眩ました模様です……

鉄帝動乱編派閥ギルド

これまでの鉄帝編ラサ(紅血晶)編|シビュラの託宣(天義編)

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