PandoraPartyProject

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死蝶は夜に舞う

「ほんに、憤懣やるかたないとはこういう事を言いますやろなぁ――」
 軽く聞けば『はんなり』とした調子の声色に人を呪い殺す位の毒が滲んでいる。
 サリュー動乱の夜、正門で戦いを演じる雪之丞等と同じように紫乃宮 たては(p3n000190)もまた多数の影と会敵する事になっていた。
 雪之丞とそんな彼女の違いはと言えば簡単である。
「――ほんにお暇な人達やね。助けが無きゃうちが負けるとでも思うてはるの?」
 たてはの元に駆け付けたヨハン=レーム(p3p001117)彼岸会 空観(p3p007169)が受け取ったのは歓迎の言葉ではなく、忌々し気な憎まれ口。むしろ友好さえ感じさせる調子で邂逅に感謝した雪之丞とは逆の――失格もいい位に分かり易い『京仕草』そのものであった。
「暗殺者相手に裏門配置、安直すぎて涙が出るよ。
 恋のさや当てに放り込まれた道化が言うのも何だけどね――生き残れたらお茶でもどう?」
「結構です」と鼻で蹴散らされたヨハンが何とも言えない顔をした。
 放り込まれた『職場』はコミュニケーションが大変に難しく、
「折角こうして馳せ参じたのです。お邪魔にはならぬようにいたします故」
「……特に、あんたが! そっちの子供はまだええけど。あんたが余分って話やろ!」
 取り分け、涼しい顔でかわす空観とたてはの間は一瞬即発である。
(帰りてぇー……!)
 ギスギス職場はこれより生じる『激務』と同じ位にヨハンの胃を苛むのだろう。
 ……実際の所を言うのならこの増援は孤立無援より幾分か裏門の戦況を楽にしていた。
 幾ら強いとは言え、圧倒的な多対一は元来一対一(タイマン)を最得手とするたてはに向いていない。
 ヨハンの絶大な支援能力も、純粋な攻撃力――暴力装置として機能する空観の太刀も今、たてはに足りないものを補う助けである事は明白だった。
 とは言え、大紫はそんな事を認めない。認められるような性質をしていない――
「そう言えばたてはさん、先日梅泉様が我が領地にお茶をしにいらしまして」
「!?」
「その時に、色々とお話をさせて頂きました。そう、色々と……
 気になりますか? 然し男女の『秘め事』は大っぴらに語るような話では……ううむ。
 では……この戦いで私より多く敵を倒せたらお話する、という事で」
 ――そんな彼女を空観はここぞと煽る。上手く煽る。
「今すぐ始末してやりたい位や」
 舌を打つ言葉も態度も荒いが取り敢えず『友軍』の否定をしない辺り、邸内の『彼』への心配が伺えた。
 彼女が裏門に留まる理由は偏に彼の信頼が故だが、恋する乙女には割り切れない感情もある――
「『勝負になると思ってはるの? この紫乃宮たてはを向こうにおいて』」
 全身より紫色殺陣を立ち昇らせ、凶相を浮かべたたてはは視えぬ斬撃を四方に放つ。
「うお!?」
 思わず飛び退いたヨハンにたてはは嗤った。
「『あら、惜しい。アンタ達ごと斬り捨てれば一番早いに決まっとるのに』」

サリューを舞台にした『暗闘』は静かに進行しています……!

※リミテッドクエスト『<太陽と月の祝福>Recurring Nightmare』が公開されています!

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