PandoraPartyProject

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アースマーン動乱

「精霊たちが暴れ始めています」
 暖かな太陽の照る花園。楔の庭ウェッジ・ガーデンにひと柱の神霊が立ち上がった。
 その名も『神翼獣』ハイペリオン(p3n000211)
 あなたの味方にして、伝説の生き残りである。
「このままでは、この美しい景色が壊れてしまうでしょう。
 この地を守るために……力を貸してくれますか? 大地の子らよ」


 舞台はゼシュテル鉄帝国の空の上。上のまた上。
 伝説の浮島アーカーシュの上層に存在する領域アースマーン
 かつてはアーカーシュを動かすシステムの一部であった精霊たちはアーカーシュ停止と共に解き放たれ、しかし古に結んだ契約によってこの空にいつまでも捕らわれていた。
 彼らの因子はアーカーシュから絶え間なく出続けるエラーメッセージによって汚染され、その殆どが荒れ狂うエレメントモンスターへと姿を変えている。
 島に巣くう古代獣たちはそんな精霊たちを喰らい力を蓄えようとし、時には精霊の気性を利用して自らの防衛装置とするものもあった。
 しかしそれは、この悠久とも思えるほど永き時のなかで繰り返された日常によって希釈され、古代獣も精霊も、ある意味では平和に過ごしていたのである。
 ――昨日までは。
「アースマーンの精霊たちがこれまでにない規模での暴動を起こしています。一斉蜂起といって差し支えないものでしょう」
 そう語るアイル=リーシュに、ハイペリオンはうつむいた。
「私達が立ち入ったことで、いたずらに精霊たちを刺激してしまったのでしょうか」
「それは違うわ」
 強い口調で呼びかけたのはジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)だった。
 振り向いて見れば、腕組みをし脚を開いた堂々たる姿勢で立っている。
「アーカーシュでゴーレムたちの状態を色々と調査していたけど、彼らは侵入者を排除しようとはしていても『島の異物』を排除しようという意志はみせなかったわ。
 ゴーレムは嘘をつかないの。命令に対して極めて率直に機能するわ。もし異物を排除したいなら、レリッカの村は真っ先に狙われたでしょうね」
「そうだね。今まで何度もゴーレムや精霊とは戦ったけど、ナワバリに入った時やこちらから攻撃を仕掛けたときだけだった。侵入をトリガーとするなら、今更だよ」
 ジェック・アーロン(p3p004755)が続く。外していたガスマスクを手に取り、いつでも出撃できるようにとライフルは肩にかけていた。
「それよりも、別のトリガーがあると考えたほうがいい……そうだよね?」
 チラリと見ると、カイト・シャルラハ(p3p000684)がじっと遠くを見つめたまま顎をさすっていた。
「たしかにな。軍の内部でもきな臭い動きもあるらしい。無関係とは思えないぜ」
 カイトはそう言うと、アイルへと向き直った。
「精霊たちに影響を与えそうな……アンタと同じかそれ以上に力をもった精霊がここにはいるはずだ。なんといっても、アーカーシュは精霊の力で動くシステムなんだからな」
「はい。確かにいますが……」
 アイルの言葉に、ジェックが乗っかる形で頷く。
「その精霊が……というより、その精霊を動かすだけのトリガーを誰かが引いたんだ。調べにいくことはできない?」
 アイルは考え、そして宙に手をかざした。
『ブーク・カドゥール』という場所があります」

人はコインの表裏

 ゼシュテル鉄帝国の首都を発ち、天空を泳ぐように飛ぶ船があった。
 巨大な気球に船をぶら下げ翼をつけたような作りはずんぐりとした鳥のようであり、まわるプロペラが造形の機械性を露わとしていた。
 背景はやがて空一色となり。雲を追い越していくのも時間の問題だと思われる。
 そんな飛空艇シェブフンク号の中は――なんだろう、なんというか、唐突にファンシーであった。
「乗せてくれてありがとう、ハンドレッド船長さん」
 蜂蜜をたっぷりかけたパンケーキのような、甘ったるくてやわらかそうな声で言う少女。彼女はでっかいピンク色のカバみたいなビーズクッションに腰を下ろし、脚を投げ出してキャンディケインを手元でくるくると回している。
 彼女の名はヒルディリド・サリーシュガー。鉄帝軍でも歴史が深いとされるサリーシュガー家の女であり、深いコネクションを学生時代から既に持つ才女である。
 彼女に『船長さん』などと呼ばれているのもそのコネクションのひとつ。とはいっても、間違っても彼の職業は船乗りなどではない。
 シア・クローシス。またの名を『改造屋(チューナー)』ハンドレッド
 鉄帝国でこちらもまた古くから知られる技術者一族クローシス家に産まれた天才少年である。武器や兵器をいじくることを何よりの得意としているが、最近軍よりアーカーシュ探索隊に抜擢されたことでも知られていた。
「なあに、国を同じくする同輩の頼みとあらば船のひとつやふたつ。なんてことはないさ」
 歯車だらけの船内で、いかにもな形をした舵を握って振り向くハンドレッド。
 世界は今、大きく揺れている。
 深緑の地では国家存亡をかけた戦いが繰り広げられ、覇竜領域ではアリ型モンスターの軍団との死闘や竜に支配された領域への介入が起きているとも聞く。
 そして鉄帝国では、空の上にて見つかった伝説の浮島『アーカーシュ』の探索が進んでいるのだ。
 前人未踏と前代未聞もオンパレードだ。
 ハンドレッドは聞く者の誰もが聞き流してしまいそうなマシンガントークを暫くしてから、『そういえば』と舵を取りながらわざとらしく話を区切った。
「君の弟君は、どうやら特務派に目を付けられているようだねえ。リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー……うん、実に良い血筋だ。軍務派を牽制するには良い家名じゃあないか」
 話が急にギスギスした色を帯び始めたことに、ヒルディリドは大きな反応を示さない。キャンディをくわえてころころとやるばかりだ。
「わたくしは未来の流行を支配するファッションデザイナー、ヒルディリドさまよ。つよつよ軍人あそびに興味なんかないわ」
 綺麗なネイルアートを施した指を見つめ、指を波打つように動かしてみる。
「けど『あの子』は違う。あそびじゃなくて本気でつよつよ軍人になりたがってる。それも自力で。自分の手と足と友達だけでね」
「…………ほーおん?」
 いわんとすることを察したのだろうか。ハンドレッドが天を仰ぐ。
「そういう人間は、政治家の誘惑に強そうだねえ。出世や優遇を餌にされても、平気で無視してしまいそうだ。だから『彼』なのかい? 彼を、オーリー・バイエルンやパトリック・アネルらの特務派にぶつけることにした?」
「さあ?」
 ヒルディリドは肩をすくめ、鞄から取り出した卵形のチョコレートを口に含む。
「わたくしは、学校を休んでまで冒険するのが面倒くさくて弟に押しつけただけよ。
 けど強いて言うなら……」
 カリッと口の中でチョコレートをかみ砕き、ヒルディリドは笑った。
「あの子を利用しようと手を出したなら、その手を掴んで振り回されるのがオチだわ」
「それは怖い。ボクも手を出すのはやめておこう」

 船は一路、アーカーシュの羽止場へ。
 やがて、物語が動き出す。

無敵の盾

 わたしは、セレンディ。
 神たる王に仕えるもの。
 無敵の盾を与える使徒。
 わたしを呼ぶのは、だれですか。
 わたしを目覚めさせたのは、だれですか。
 わたしの心を満たすこの苦しみは。
 わたしの心を荒らすこの憎しみは。
 わたしの心を焦がすこの――。
 ああ、わたしは。
 なぜ目覚めてしまったのですか。

 アーカーシュ上層アースマーンにて異常事態が発生しています……!

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