シナリオ詳細
<チェチェロの夢へ>泡沫ブーク・カドゥール
オープニング
●新しい伝説
「この複雑に絡み合った世界を、解きほぐしてゆきたいのです。あなたと」
『神翼獣』ハイペリオン (p3n000211)は、あなたの目を見て優しく言った。
未知のそよ風が吹き抜ける、前人未踏の草原で。
空に浮かぶ島、アーカーシュを巡るこれは英雄の伝説である。――あるいは、全く新しい神話の物語だ。
この物語をかたるために、いくつかの出来事を語らねばならない。
まずは何から語ろうか――。
●星霜戦域に異常あり
前人未踏の浮遊島、アーカーシュ。鉄帝国上空に発見されたそれは、未知の遺跡と無数の古代獣、そして精霊とゴーレムたちでできていた。
勇者王時代よりも更に昔。はるかいにしえに眠った古代人の遺跡。それこそがアーカーシュ。
そして途方もない月日を超えた今……。
「のんびりですね~」
「そうですねえ~」
ユーフォニー(p3p010323)とマリエッタ・エーレイン(p3p010534)が、並んでドラネコさんを抱っこしながら緑の草と花がさく野原に座ってのんびり日向ぼっこをしていた。
ほんのりと温かく、それでいて涼しい。丁度良い陽気に気持ちがまったりしてしまったようで、二人とも顔がちょっぴりとろけていた。抱っこされたドラネコたちも同じようで、なんか勝手についてきた霊体の雑草ムシャムシャくんに至っては白いお花やら草やらをむしゃむしゃ食べては『ウマイ!』つってはしゃぎまわっていた。
「熱気と冷気の精霊さんたちが戦争ごっこをしていたときはハラハラしましたけど……終わってみると平和ですね。古代人はこれがほしくてアーカーシュを作ったんでしょうか」
「どうなんでしょう。素敵な風景だとは思いますが……」
振り返る二人。草原としてのエリアはごく僅かだ。そこから一歩出れば足場などなく、広大な大空があるのみである。
そう、ここはアーカーシュの更に上空。アースマーンと呼ばれる領域にある星霜戦域。精霊たちが気が遠くなるほど長きにわたって戦争ごっこをしていた場所である。
それはつい最近(具体的には昨日)終わったのだが……。
「ちょっとちょっと、二人とも! 大変よ!」
両腕をばたばたさせた熱気の精霊がぴゅーんと飛び込んできた。
追って冷気の精霊も飛び込んでくる。それぞれプロミネンスの炎めいた髪をした女性と、雪ダルマのようなぽわぽわした髪の女性を象った中位精霊である。戦争ごっこが終わってあとは飲めや歌えやの宴会をした翌日のことなのだが、様子はどうにも大変そうだ。
「アースマーンの低位精霊たちがなんかすごい殺気立ってるの! 意味わかんない、急によ!?」
「私達の言うことも聞いてくれないのです。これじゃあ天候を決めるどころじゃあ……」
言いかけた精霊たちに、激しい突風が吹き付けた。きゃあといって吹き飛ばされる精霊たちを、ユーフォニーとマリエッタはそれぞれキャッチする。
突風が吹き抜けたかと思うと、風の向こうから大量のウィンドエレメンタルが。更には火、水、氷や雷といった様々な低位精霊が荒れ狂ったことでうまれた精霊系モンスターが大挙して押し寄せていた。
「これは……戦争ごっこじゃ済みそうにありませんね……」
「話して分かって貰う段階でもなさそうです。構えてください!」
その日、『空の先』の意味を持つ領域アースマーンにて低位精霊たちの一斉蜂起が始まった。
あらゆる精霊たちはイレギュラーズたちへ襲いかかり、その様はまるで免疫機能が異物を排除しようとするかのようであったという。
これらが地表部のレリッカ村にまで至れば、村人たちはおろか駐留している鉄帝軍とてただではすまないだろう。
ここで戦い、彼らを止めなければならない!
●陰謀は蜂蜜に浸けておいてね
「よくやってくれたわね。偉いわリュカシスちゃん、褒めてあげるっ!」
甘いお菓子のような香りをさせて、両手を腰にあててアーカーシュの羽止場へ降り立ったのはヒルディリド・サリーシュガー。軍人の名門サリーシュガー家に名を連ねる才女にして、リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)の姉である。
「お、お姉……」
出迎えに現れたリュカシスは頬をひくつかせ、顔をずいーっと近づけてくるヒルディリドから目をそらすように小声で『さま』と続けた。
「お姉ちゃまって呼びなさい。ほら、昔みたいに?」
「う、ううう……」
ジモトじゃ狂犬と恐れられるリュカシスも姉の前ではこの通りである。
そんな彼の肩に腕を回し、くるんと反転させたヒルディリドは同じく出迎えにやってきていた何人かのイレギュラーズの顔を見た。
そして最後に視線をとめたのは、エッダ・フロールリジ(p3p006270)である。
「うちの子を『連中』から守ってくれてありがとね、大佐」
「……いいえ」
多くは語らず、目を閉じて頭を下げるエッダ。
ここはアーカーシュはレリッカ村付近に作られた羽止場である。
飛行による移動が多いこの場所に適応するため、イレギュラーズや覇竜領域出身者たちによって整備されたワイバーン小屋などが並ぶ施設だが、そんな中にでかでかと停泊する飛空艇があった。
ちょうどついさっきヒルディリドがおりてきた船だ。
この世界に飛行手段は山ほどあるが、飛べるからといってはるか天空にあるアーカーシュまでぱたぱた飛んでいくのは骨の折れることだ。泳げるからといって海をわざわざ泳いで東京湾をわたるようなものである。船があるなら乗るものだ。
そしてその船を手配したのが、鉄帝でも名の知れた技術屋『ハンドレッド』……本名シア・クローシスである。
「やあやあサリーシュガーのお嬢さんがヒッチハイカー感覚で船に乗り込むものだからびっくりしたけどこれでも一応紳士なんでね。それにボクとしては将来有望なお嬢さんをお近づきになっておいて損はないのさ。なああんて――」
喋りすぎたね、と真顔に戻るハンドレッド。後ろから現れた武器商人のファイが後頭部をゴツンと堅いもので叩いたせいだ。
「ま、冗談だよ。そろそろ出ないと間に合わなくなる。来たまえ」
急速に声のトーンをシリアスにしたハンドレッドに促されるように船へ乗り込んでみると、中ではルクト・ナード(p3p007354)が黙って待機していた。
レイリー=シュタイン(p3p007270)もだ。
ハンドレッドはコホンと咳払いしてからマイクを手に取――ろうとしたところで、レイリーが強引にそれを奪った。
「あなたの話は長いんだから。代わりに説明するわね」
『そうしてくれて助かる』と目でうったえてきたファイとルクトに頷きかえしてから、レイリーはハンドレッドに船を出すようにサインした。
しずしずと運転席に座って船を発進させるハンドレッド。
羽止場から飛び立った船は、巨大な気球に鳥のようなボディをくっつけた独特な形をしている。
「島に眠っていたセレストアームズ……いや、その上位機種である『ハイアームズ』があちこちで起動を始めたわ。彼らは収容や捕獲の手を逃れ、アースマーンへと向かってるの。
今までにない規模での、それも急激な変化よ。何者かが何かのトリガーをひいたとしか思えないわ」
心当たりはある? と問いかけるような視線をむけるレイリーに、ルクトやリュカシス(姉から髪をハーフツインにされている)は首を横に振る。
そんな中で肯定の意志を示したのはエッダ……と、佐藤 美咲(p3p009818)であった。
先に口を開いたのは美咲のほうである。
「私達はアーカーシュの地下遺跡探索を進める中で、いくつかの重要そうな施設を発見してまス。その中では古代文字で書かれた文章がいくつか発見されていて……一部には『魔王イルドゼギアを讃えよ』とありました」
「機能を終えたとはいえ、このアーカーシュがその『魔王』にむけたものであることは確実。他にも気になる記述があちこちの探索で見つかっています。それらの情報を鉄帝軍の『特務派』があさっていることも」
エッダが付け加えるように言って、リュカシスたちの脳裏に『オーリー・バイエルン』という特務派軍人の顔が思い浮かんだ。丸眼鏡を反射させ張り付けたような笑顔をする胡散臭い男である。
「彼らが、トリガーとなる何かを掴んだのかもしれません。まだ確証はありませんが……」
「伏せているということはまだ『決定的』でないということでス。今のうちにハイアームズたちを倒して狙いを潰すことが出来れば、企みに追いつく事が出来るでしょう」
「見えてきたよ!」
ハンドレッドの声に応じて振り返ると、飛空艇のずっと先の空をハイアームズ(天空闘騎)の一団が飛行しているのが見えた。ずっと上に向かっているところからして、行き先はアースマーンだろう。
「この飛空艇で援護はするが……あまり期待はしないでくれたまえ。結局資本となるのはその身体のみということさ」
「要するに、ハイアームズの一団を撃滅すればいいのだろう」
回りくどいやり方をする……とルクトはつぶやき、発進用の通路へと滑り込んでいく。美咲たちも、身を折りたたむように格納されていたワイバーンたちへと乗り込み発進準備を整えた。
伝声管に向けて呼びかけるハンドレッド。
「いいかい? 敵の目的は不明。能力も不明。おまけに戦場ははるか空の上ときている。それに――」
「なんだかわからないけど放っておけば大変なことになりそうなのは確実よ。特務派の連中はなんだかネチャネチャしててイヤだけど、狙いを物理的に潰してやればアドバンテージをこっちに引き戻せるはず!」
意気揚々と語ろうとしていたハンドレッドからマイク(?)を奪い、ヒルディリドが叫んだ。
「なんだかわからない陰謀をぶち壊すのよ! それじゃあ発進、ゴーゴーゴー!」
●はるか天空の伝説。アースマーンにて。
花の香りが優しく流れる、そこはウェッジ・ガーデン。『楔の庭』を意味する浮遊小島である。島の主にして唯一の住人、精霊種アイル=リーシュはこの島より外に出ることの出来ない身であった。あるいは、出ないことを決めたと言うべきだろうか。
「ですが良いこともあります。この島は精霊の流れの中心にありますから、精霊達の声は伝え聞くことができますし、この場所(アーカーシュ)の異変にも気付くことができるのです」
アイルが手をかざすと、蒸気が集まって光の幻影を作り始めた。
映し出されたのは球状の物体。複雑な紋様の描かれた球体は、近くを飛ぶ鳥たちと比較して遥かに大きかった。巨大な球状建造物、と表現してよいだろう。
「――『ブーク・カドゥール』」
意味を深く込めて述べたアイルは、球状建造物をさしてすこし悲しげな目をした。
「この建造物の名前です。アースマーンとあなたがたが呼ぶこの領域で、現状最も危険なエリアだと言って良いでしょう」
「それは、強力な精霊がいるってこと?」
話を聞いていたジェック・アーロン(p3p004755)は、これまでアースマーンを探索して得た情報からすぐに推察できた。
アースマーン――『空の先』を意味するこの領域は真の前人未踏領域であると同時に精霊達の住処だ。
より厳密にいうなら、アーカーシュのシステムとして組み込まれていた精霊達のバックルームである。
だが遙か昔に停止し、永きにわたる時の中でエラーをはき続けたアーカーシュに晒され怒りの因子に満たされた精霊達はいずれもが荒れ狂い、危険な動きを見せている。彼らを正常に戻す方法は極めてシンプルで、戦って倒すことで怒りの因子を消し平常化できるのだという。
実際、これまでいくつものエレメントモンスターと戦い、倒し、これらを正常化してきたのだから間違いない。
「はい。ですが……ここへ近づくだけでも、きっと難しいでしょう」
アイルが両腕を広げると幻影が更に拡大され、『ブーク・カドゥール』周辺の様子を映し出した。
よく見れば、そこに大量の石が浮いているのが分かる。
ただの石ではない。茶色く透けた宝石だ。大小の違いはあれど、その数は膨大である。
幻影に顔を近づけるジェック。
「これは――」
「これは――」
ジェックと全く同じ言葉を、しかし全く違う表情でジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)は呟いた。
宝石にうっすらと浮かび上がる紋様の意味が、彼女には分かったからである。
文字に置き換えると二つ。死や終わりを意味する言葉だ。
そこへ精霊の力が流れ込み文字を一つ加え、真実を意味する言葉へと変化させる。
「ゴーレム展開術!」
そう、ここは『ブーク・カドゥール』前。広大に広がる浮遊島の上。
無数に浮かぶ宝石群がぱきぱきと音を立てて周囲の岩を吸い上げると粘土のように変形させ、人型ゴーレムを成形させていく。
宝石はまるで単眼のように頭に収まりギラリと意志を光らせる。
「冗談じゃないわ、こんな数がいっぺんになんて」
ジュリエットも対抗してゴーレムを展開。ぱきぱきと音を立てて組み上がったゴーレムが防御の姿勢で前へ出ると、ブーク・カドゥール産のゴーレム通称『ブーク・ゴーレム』の拳を受け止める。
能力は……ややこちらが勝る程度か。しかし数が多すぎる。
「数を揃えておいて正解でしたね!」
更なる追撃をさけるべく、華麗な跳び蹴りをゴーレムへ叩き込んでからムーンサルトジャンプで戻ってくる澄恋(p3p009412)。
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)も戦闘の構えをとるが、その視線はゴーレムたちの遥か先――宙に浮かぶ球状建造物『ブーク・カドゥール』へとむけられていた。
「見て、あそこ。誰かいる!」
「誰!?」「ヤデ!?」
ハッとして視線を向けるミスト(p3p007442)とトリヤデさんたち。
皆の目に映ったのは……茶色く光る美しい宝石。いや、宝石のように輝くひとりの少女。いや、それも違う。
「『黒冠』の――セレンディ!」
耀 英司(p3p009524)が思わず声を上げる。その言葉は皆の脳裏へ同時に浮かんだことだろう。
なぜなら、ここへ至る前にアイルからこの存在を聞かされていたのだから。
ベルトに手を添え、戦いのモードへと思考を切り替える英司。
「『ブーク・カドゥール』に封じられた強大なる大精霊のひと柱。奴がそうか!」
「皆さん、気をつけて! あの子は正気を失っています。防衛本能のままにこちらを攻撃してくる筈です!」
叫ぶハイペリオンから加護を受け、カイト・シャルラハ(p3p000684)が空へと飛び上がる。
「任せてくれハイペリオン様! あの精霊を正気に戻せばいい、ってわけだな!」
「だがセレンディの元までたどり着くにはゴーレムの層が厚いでござる。こちらは拙者らに任せるでござるよ」
咲々宮 幻介(p3p001387)が刀に手をかけ、走り出す。
戦いはもはや、避け得ない。
- <チェチェロの夢へ>泡沫ブーク・カドゥール完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別長編
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年06月16日 22時05分
- 参加人数31/30人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 31 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(31人)
リプレイ
●罠が甘いなら、トーストに塗ってしまえばいいのよ
「なんだかわからない陰謀をぶち壊すのよ! それじゃあ発進、ゴーゴーゴー!」
伝声管ごしに響くヒルディリドの声に、『拵え鋼』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)は世にもフクザツな顔をした。
(姉上が来るには危ないからボクがアーカーシュで頑張ってたんだ。それなのに……)
小さな声で、というか自分の袖に口を押しつけて『授業参観じゃないんだぞ!』て叫ぶとリュカシスは発着口から飛び出した。
「頑張るのよリュカシス、ぼこぼこにしちゃいなさい!」
「ちょうしがくるうー!」
そういえばハーフツインにされてる髪をぱたぱた風にあおらせながら、リュカシスは白いジャケットの胸から伸びた紐をひく。軍用にも採用されているスタイルのややごついシルエットのジャケットは、背部より魔法の翼を広げたかと思うと大きく羽ばたき幻影の羽根を散らした。
そして思い切り急上昇。前方(正確には頭上)のハイアームズ(天空闘騎)がちらりとこちらを見下ろすように頭を動かし、一つ目めいたカメラレンズを赤く光らせた。ギョウンというなんともいいがたい音をたてて。
「まずはボクが引きつけます! 皆サン、そこを叩いて下さい!」
ハイアームズたちが太くごつごつした両手を翳すと、五指それぞれが銃口に変わり熱光線を発射した。
両腕を翳し、ぶかぶかの袖の内側に畳んでいた増加装甲を展開。拳から肘までを覆う巨大なメタルグローブ変えると、リュカシスは光線をその甲によって防御した。
急接近をかけ、まずは思い切り殴りつける。
ハイアームズたちの視線が一斉にリュカシスへと集まる。
そこが狙い目だ。
「ミーナ、後ろから援護はお願いね。貴女の所にいかせないから」
「オーケー」
『蒼穹の戦神』天之空・ミーナ(p3p005003)と『白騎士』レイリー=シュタイン(p3p007270)は翼竜ブリッツシュトュルムの背に相乗りすると、凄まじい加速をかけてリュカシスたちを追い抜きハイアームズの頭上をとった。
ミーナはワイバーンの背から離脱し、剣を水平に翳す。ダイヤモンドダストの魔術をぶっ放すためだ。
「よけろよリュカシス、一気に攻める」
大量の鮮血めいた色をした氷塊が生成され、ハイアームズたちへと殺到していく。
(何年振りだろうかね、空での戦闘は。まあ、私は元々足に地をつけて戦う方が得意なんだが。
だからって手を抜くつもりはないがね。愛する女にみっともないとこ見せる趣味はねーからよ!)
ミーナは小さく笑うと、レイリーに『行け』と呼びかけた。
「私の名はレイリー=シュタイン! 鉄帝の騎士! さぁ、私を倒せるものはいる!?」
レイリーが狙いを付けたのはリュカシスの誘導にひっかからなかったハイアームズたちだ。密集することを避けて離れようとするところへ急速に回り込み、レイリーは両腕を広げた。
ガパッと展開した腕のアームドコンテナからそれぞれ槍と盾が折りたたまれた状態で出現。
レイリーをはねのけようと五指の熱光線を乱射してくるセレストアームズに対して盾を翳すとそれを防御した。
「空中でもここは要塞!私が倒れるまで誰も通させない!」
レイリーの堅牢さをたった一度撃ち合っただけで判断したようで、ハイアームズは即座に狙いをレイリーからシフト。ミーナへと腕と目を向ける。
が、それを許すレイリーではなかった。
ブリッツシュトュルムに足で合図を送ると、急速にミーナと敵との間に割り込ませる。
何発もの光線がレイリーを襲い、レイリーの盾が押しのけられる。
ボディに激しい火傷がおこりボンッと小爆発まで発生した。
「余り気負う必要はねーよ、レイリー。私の実力は知ってんだろ」
「分かってる……ミーナ! 今よ!」
だがレイリーはそこまで織り込み済みだった。脚部に格納していたアクアヴィタエを膝からポンッと放出すると、片手で掴んで即時発動。レイリーの身体を蝕んだ傷を一瞬のうちに修復してしまった。
逆に、攻勢に出たミーナのフルルーンブラスターがハイアームズの顔面を破砕する。
小爆発をおこして墜落していくハイアームズ。
排除が難しいと判断したのか、一部のハイアームズが背部からジェット噴射をかけて上空へと加速していった。
急激にこちらを引き離そうとするハイアームズ。
そうはさせまいと追いかけるレイリー。
ミーナは戦線が広く伸びきったことを察知すると、懐から『エルメリアの妄執』を取り出して発動させた。
「引き離せば範囲ヒーラーが死ぬと思ったか? 甘いんだよ」
超広範囲に向けて爆発でもするように解き放ったミーナの『サンクチュアリ』術式が、激しく打ち合いを始めたレイリーとハイアームズ、更にはどかどかと殴り合いに発展しているリュカシスたちにまで行き渡る。
「ぶっつづけで使う。リミットは30秒だ。それまでにケリをつけろ! いいな!?」
「それだけあれば充分であります」
『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は跨がっていたワイバーンの背にぴょんと立ち乗りすると、両腕を顔の前でクロス。ガントレットをした拳を一度ガッと開き、より強く握り直した。
ワイバーンの背を蹴って跳躍するとハイアームズの光線を回避。空中をくるくると回転しながら勢いをつけ、自慢の拳を思い切りハイアームズの頭部へと叩き込んだ。
浸透した衝撃がそのままハイアームズの胴体装甲を内側から破壊。対抗したハイアームズがエッダの腕を掴み、もう一方の腕で拳を作った。
(魔王なるものは、果たして未だこの地に……いや、よそう。今は目の前のことに集中だ)
いかにも殴り合いになるその瞬間においてもフラットな思考を保ったまま、エッダは猛烈に殴りかかるハイアームズめがけ思い切り殴り返しにいった。
「アルヴァ様、美咲様。上へ向かうハイアームズの追跡を」
「了解っ」
エッダの指示を受けて、『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は急激な加速をかけて上空のハイアームズへと追いついていく。
「精霊の暴走にゴーレムの一斉起動、ただ事じゃないんだろうな。
こちらを明確な敵として認識しているのも、余所者を排除する意思を感じる。
魔王イルドゼギア……魔王なんて御伽噺だけのものだと思っていたが、いやはや」
独り言は風のなかに消え、アルヴァの加速力を前に逃げ切れないと判断したハイアームズが左手の熱光線を乱射。
アルヴァはそれを上向きのバレルロールというなんともアクロバティックな機動によって完全に回避してしまった。
「よしなって、この先に行くのは。飛行が得意なんだろ、俺と遊ぼうぜ?」
アルヴァは不敵に笑って急接近。
魔力宝珠『神風』が妖しく光り、射程距離にとらえたライフルが火を噴く。
対するハイアームズは直撃こそうけたものの、腕を変形させ命中精度に優れた形態をとるとアルヴァめがけてホーミングする光線を発射してきた。
得意の超機動によって回避しようとするも、巧みに追尾する光線が着弾。どうやら必中弾のようだ。
「飛行するゴーレムに潤沢な武装、ねぇ。技術力とか、そういう話じゃねぇんだろうな」
だが空中戦ではアルヴァに軍配があがったようだ。
アルヴァは相手をかき乱すかのような複雑な機動でハイアームズの周囲を飛び回ると、死角からライフルを撃ちまくった。
「土塊如きに空を征されちゃ、航空猟兵を仕切る俺の面目丸潰れだっての」
アルヴァの巧みな空戦技術に敗れ墜落していくハイアームズを見下ろしながら、フウとため息をついた。
「おっと」
墜落してくるハイアームズを回避する『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)。厳密には、彼女の跨がるワイバーン・バーベ。
タンデムシートと空戦用装甲を施されたガチガチの戦闘騎竜となったバーベに、予めとっておいたエリザベスアンガス正純の塩焼きをポンと放ってやると素早くそれにかぶりついた。
一口で飲み干し満足げに舌なめずりするバーベに頷くと、バーを握ったまま自動拳銃の狙いをつける。
眼鏡の内側に仕込まれたAR映像がハイアームズの次なる攻撃と移動位置を予測、表示した。
「これ滅茶苦茶に目がしぱしぱするんスよねえ」
ぼやきながらも銃を発砲。仕込まれた特殊弾頭に刻まれたハガルのルーンが特殊な結界を発動させる。
次なる光線を放とうとしたハイアームズの腕がプシュンと音をたて、黒煙を出す。どうやら誤作動をおこしたようだ。
今だとばかりに追撃を撃ちまくる美咲。
小爆発をおこして墜落していくハイアームズを見下ろしながら、うーんと唸っていた。
「どうした」
並んで飛行する『蒼空』ルクト・ナード(p3p007354)が問いかけてくる。美咲は再びうーんと唸ると、小首をかしげてもう一体のハイアームズに視線を移す。
「動き方がこれまでのセレストアームズと全然違うんスよね。試しに……こんぶ!」
突然おにぎりの具を叫んだ美咲は、その後も「こんぶこんぶ! しゃけ!」と叫びまくっている。
ハイアームズの反応はなし。むしろバーベがきょろきょろしはじめた。
「…………」
ルクトが『こいつ狂ったか?』みたいな目で見てきたので、美咲はぱたぱたと手を振る。
「ち、ちがうんでスよほら『グレートクイーンアネル3世』ていたじゃないっスか」
「ああ……」
アーカーシュのゴーレムパーツを集めて組み直して復元したという話を、ルクトはなんとなあく伝え聞いていた。その集まりに顔を出したことがないのでちゃんと知らないが、確か特務派が組み立てたやつがそんな名前だったはずだ。
なんでも、『こんぶ』と『おにぎり』しか喋らなかったらしいが。
「『グレートクイーンアネル3世』ってなんか……物流倉庫に置いてある自動メンテナンスAIみたいな動き方するんスよね」
「何だって?」
「人間でいうと整備士っス。無口で細かい作業が得意そうで同じこと永遠にやってくれそうな感じっス。けどハイアームズってなんか……メチャメチャ軍人っぽい雰囲気するんスよね。ミサイル弾頭に搭載されてる兵器AIって感じ」
「む……」
ルクトにはどちらもピンとこなかったが、いつだか練達で戦った戦闘ドローンに近いなとは確かに思えた。
「回路からして別、ということか……過去に類似したケースがあればいいんだが」
ハンドレッド? と振り返るように呼びかけてみると、飛空艇がようやく追いついてきたようだ。
「今は援護を頼む。そのあとで解析を任せる。機体の回収は美咲がやる」
「えっ?」
「撃墜するから、構えていろ」
ルクトはスラスターから勢いよくジェット噴射を行うとハイアームズの射程圏内へと侵入。
両手を翳し、広範囲に向けて牽制射撃を放つハイアームズだがルクトは機体をくるくると回転させながら激しく上下にゆれるというとても人間業とは思えない機動でその全てを回避した。
「さぁ、思い通りには動かさんぞ……私たちの相手として、付き合ってもらおうか!」
早速ミサイルポッドを解放。激しく絡み合う軌跡を描きながら一斉発射されるマイクロミサイルがハイアームズへと殺到し、それを回避しようと引き撃ちを始めるハイアームズだが――。
「ハンドレッド!」
「こうかな?」
飛空艇から機関銃が動き、ハイアームズめがけて激しい砲撃が始まった。
着弾と同時に炎と有毒ガスが広がる特殊な弾だ。
「『MRBL』か? いつのまに」
「キミの兵装を誰がいじってると思ってるんだい?」
そうだったなとルクトは苦笑し、そして折りたたみライフルを展開した。
「……兵装変更。放て!」
炎に包まれていたハイアームズが姿を見せたその一瞬を狙い――強烈な射撃を叩き込む。
ハイアームズの胸部が撃ち抜かれ、爆発を起こし墜落していった。
あわわといいながらワイバーンでキャッチしようと試みる美咲。
ルクトはその様子を眺めながら……古い記憶を少しずつ手繰っていた。
ハイアームズの武装やパーツ。あれに、どこか覚えがある気がするのだ。
●ゴールデンスウィング
アースマーン、星霜戦域。永きにわたる精霊達の戦争ごっこが終結したのもつかの間、周囲の低位精霊たちの一斉蜂起が巻き起こった。
「どういうことなのマジありえないんだけどアタシの話ぜんぜん聞いてくれないし!」
「この世の終わりなんですか!? わたしたちしぬんですか!?」
熱気精霊のポポッカと冷気精霊のフラペペとが手を合わせてぷるぷるしている。誰だって、それまで普通にあった自然が突如牙を剥いたらこうもなる。実際、精霊の蜂起は突発的自然災害のそれとかわらないのだ。
「穏やかではないね。ヒヒ……火に、氷に、風に、雷に……大盤振る舞いだこと」
ゆらりと妖しい雰囲気をまとい前に出たのはローレットの初見殺し、あるいは大群殺しの『闇之雲』武器商人(p3p001107)である。一部のローレット・イレギュラーズは武器商人の出現で大体安心してしまう程度には猛者であり、歴戦のなかでその実力は証明済みだ。
「我(アタシ)とハザックを止めることは叶わんがね。ご苦労様」
『ハザック』と使役しているワイバーンを呼び止めると、上空を旋回飛行していたハザックが武器商人の横を抜けるような軌道で一時低空飛行を仕掛ける。その瞬間に素早く手綱を掴みハザックに飛び乗った武器商人は、早速『破滅の呼び声』を発動させた。
広域に散らばり、中には武器商人のゆくてを阻もうと立ち塞がるせいで全てを引きつけるには足りないが、しかしかなりの範囲に向けて精霊たちのヘイトをコントロールすることができたようだ。
大量の熱が、電撃が、真空の刃や氷の棘が武器商人を襲うが、強力なBS耐性と特異なカウンタースキルを研ぎ澄ました武器商人にとってはむしろ好都合なシチュエーションである。
「でもって、俺がこいつをぶち込めば完璧ってワケよ」
『最期に映した男』キドー(p3p000244)は『出番だぜ』といっていたずらな妖精達を召喚。
『ワイルドハント』と総称されるそれらは、黒い犬や八本足の馬など奇怪な外見特徴をもった妖精たちだ。
謎の妖精が先頭に立って角笛を持ち上げると、キドーは約束事を口に出した。
「まかせな、この時計が25時を刻んだ時に俺は必ず狩猟団の末席に加わると約束するぜ」
とかいって釘打ちして動かなくなった懐中時計を晒した途端、契約は結ばれたとばかりに角笛が吹き鳴らされる。突撃する邪妖精たちが、武器商人に群がる妖精達へ凶悪なバックアタックをしかけるさま……を眺めながら、キドーは咥えたばこに火を付ける。
「ちっ、なんだってんだよいきなり。
どうにも今までの暴走とは……訳が違うみてェだな。規模もだが、あまりにも急すぎる」
精霊の暴走、あるいは妖精の暴走は新緑あたりでも経験したが、それには明確な環境変化が先にあった。冷蔵庫の原理然り、『過程を飛ばして影響のほうを先に起こす』というのは人為の特徴だ。
キドーの脳裏に、彼に出方をうかがってきた特務大佐の顔が浮かぶ。
「いやまてよ? あのこんぶこんぶ言ってたゴーレムがなにかやらかすならともかく、精霊ってのは繋がりを飛ばしすぎじゃねえ?」
キドーが把握していないミッシングリンクがある。
とか思っていると、範囲外の精霊たちがキドーを見つけて襲いかかってきた。大量の火の玉が飛んでくる。
「おっとやべやべ!」
キドーはそれを飛び退いて回避すると、くわえていた煙草を投げつける。謎の爆発がおき、精霊達が吹き飛んだ。
「せっかくエレメンタルの中にはかわい子ちゃんもいるのになあ! どうせならこんな事よりもっと、別の体力の使い方したかったぜ! なあ!?」
カラになりかけた契約のネタを袋から取り出しつつ、キドーは叫ぶ。
一方で、ローレットにおけるまた別の初見殺しこと『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)が物凄い数の精霊に囲まれ滅多打ちにされていた。
「屈しろ」
しかし美少年を形作る素肌の一枚から睫の一本にいたるまでの一切を傷つけることは、どうやら叶わないようだ。
セレマが『影の獣』の群れを解放すると、精霊たちが食い散らかされていく。
「怒れる精霊、ね…なるほど、ここまで数が揃えば面倒だし厄介でもある。
怒り狂う群衆とは人の話を聞かないものだ。
だが、感情を持つからこそ通じてしまうものもある……それは美に対する畏怖と、力に対する恐怖。
だが美しいものに傷一つつけることは適わない」
再び『屈しろ』とつぶやき眷属をけしかけるセレマ。
対して精霊たちはセレマに対抗する手段を持ち合わせないことを心底悟ったのか、いくつかの属性を集合させハイエレメンタルへと合体した。
セレマにとって戦闘とはある種の心理戦だ。
敵はこちらが非常にタフか、あるいは過剰な回避能力をそなえているか、はたまた外見をごまかす能力を備えているかを推察しているだろう。というより、ハイエレメンタル程度に知能を発達させないとそこまで考えることはできないだろう。
セレマはセレマで、相手が【必殺】属性の攻撃を仕掛けてこない状態を絶対に維持しなければならない。もし偶然にでもそれに触れたら敗北は確実だ。ゆえに堂々と、まるでこうなることが当然であるかのように振る舞う必要があった。
相手のHPや所有スキルが見えないという事実が、セレマの『初見殺し』さを担保しているのだから。(仮にHPが見えていたら、割とすぐにEXF戦法を見抜くだろう)
「もう少し凌いでてくれよ」
『悠遠の放浪者』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)は義手の連射ボウガンを展開すると、矢が大量に入ったマガジンを装填。折りたたみクランクを回しハイエレメンタルめがけ矢を連射した。
セレマの対応と推察に追われていたハイエレメンタルが急襲によって崩れ、そして消滅(沈静化)していく。
「しかしどうなってんだ!? 大精霊が暴れてるって聞いたがその影響が低位精霊にまで波及するってことか?」
極論してしまうと、精霊とは自然の一部だ。雪崩や干ばつや地震が起きるとき、精霊は一切の意図なく上位の動作従って動く。そういう意味では、ブーク・カドゥールでおきているという大精霊の目覚めがここまで影響を及ぼしているという線もなくはないだろう。
「けどよ、だったらその『原因の原因』はなんなんだよ。大精霊だって偶然目覚めて偶然暴れるなんてこたあねえだろう」
剣を抜き、背後に迫るエレメンタルを切り払う。
「全く数が多いったらありゃしねぇ、取りこぼした奴がいたら言ってくれ。俺がなんとかする!」
周囲を既に複数のエレメンタルが囲んでいるのがわかる。
取り出した『テスタメント・プロテクト』の発動媒体を握りしめ、バクルドは聖なる微光が自らを包むのを感じた。
全方位からの一斉攻撃。
バクルドはテスタメント・プロテクトの効果をある程度はアテにしつつも横っ飛びに氷の矢を回避。草地を転がり、追撃の炎が吹き付けられるのをマントで払って強引にかわすと腰に差していたスローイングダガーを投げつけた。
ファイアエレメンタルへダガーが突き刺さり、ボウッと音をたて渦巻く炎のような姿をしたエレメンタルが消えた。ダガーだけが残り、地面に落ちる。
すると周囲のエレメンタルが次々に合体を開始。ハイエレメンタルへと変化していく。
「第二ラウンドってわけかよ。たまんねえな」
無数の属性を組み合わせたハイエレメンタルが、高熱をもった砂風の刃を何本もはやして叩きつけてくる。
それを、『空に願う』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)は魔術障壁を展開することではじき返していた。
彼女の頑強な防御能力をもってしてさえ、じりじりと体力を削り取られる実感があった。
「さすがにここまでのハイエレメンタルとなると手強い……けど、そう簡単に突破はさせないよ!」
複数の色が混じり合い、おぼろげな人型をとりはじめたハイエレメンタルは両腕を広げるような動きを見せ、水分を急速に加熱し霧に変え、周囲を濃霧で包み込んだ。
ヴェルーリアの指先にパチッと静電気のようなものがはしる。
まずい――と思った瞬間には全方位から激しい雷が暴れ周り、ヴェルーリアとその後ろに庇う仲間達へと襲いかかった。
「わっ!?」
ドラネコさんを庇うように抱きかかえた『ためらいには勇気を』ユーフォニー(p3p010323)がつま先立ちになり、同じく抱えた『炯眼のエメラルド』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)と背中をぴったりあわせてくっつく。ヴェルーリアの展開する球状の魔術障壁の中なら一応安心とはいえ、目の前で電撃が荒れ狂っていれば誰だって驚く。
「状況さえ違えば幻想的な光景だったのでしょうけれど……ここは抵抗しないといけませんね。今井さん! エーちゃん! 頼みましたよ!」
ピッとキザな敬礼ポーズをとる今井さん。立体ディスプレイに『ฅ^•ω•^ฅ』の顔文字を浮かべるエイミアがフードの中から飛び上がった。
ユーフォニーはそんな二人(?)に指事を出すと、今井さんはキングサイズのペーパーファイルを取り出しハイエレメンタルめがけてぶん投げてくれた。
「のんびりぽかぽかというわけにはいかなくなってしまいましたね」
一方のマリエッタは『隠影血華』の魔術を発動。ウィンドエレメンタルによって傷つけられた腕をスッと指でなぞると、指先についた血が膨らみ大鎌へと変化する。
思い切り斬りかかるマリエッタの鎌が、ハイエレメンタルのおぼろげな人型を真っ二つに切り裂いて行く。
「この土地に新たに踏み入れた人々に対して、防衛機構が働いているよう……この島が生き返ったとでも? あるいは、防衛機構の一部が……」
敵のラッシュに遭っているというのに、案外胸の内が落ち着いていることに気付くマリエッタ。
思考はスムーズに流れ、どこか相手を冷笑しているような気分にすらなる。
が、マリエッタは首を振って気持ちを切り替えた。
「文字通りここが戦場の最終防衛ライン。やりましょう、皆さん」
「そ、そうね! 手伝うわ!」
「あのリュコスさんもブーク・カドゥールに行っているんでしょう? そのこの分まで頑張ります」
マリエッタに応えるように、フラペペとポポッカも自らの力を解放した。
熱気と冷気が混じり合い、爆発力となってハイエレメンタルをふきとばす。
どうやら彼らの戦いは上手くいったようで、星霜戦域で広く勃発した戦闘は収拾されつつある。
最後のハイエレメンタルを倒したところで、ユーフォニーはぷはあと息をついて草の上に座り込んだ。
「ムシャア……」
そのまわりでぺたーんと座り込む雑草ムシャムシャくん。
「あれ、まだ居たんですか? あぶないから逃げて下さいと言った気が……」
まあそうはいっても一緒に旅する身。小さな花のついた身体をそっと指でなでるようにしてやる……と、雑草ムシャムシャくんたちが突然ぷるぷる振るえだした。
「ど、どうしたんですか!?」
「離れて下さい。危険です」
ユーフォニーの前にずいっと出た今井さんが眼鏡を装着しキャンパスノートを二刀流で構える。
マジでなにがあったのと不安そうにフラペペたちが観察するなかで、雑草ムシャムシャは『ムシャア!』と叫んでとびあがり――そして謎の発光を起こしたあとなんだかぽわーっとした雰囲気になった。
「こ、これは!」
「わかるんですか今井さん!?」
「わかりません!」
「だったら分かったような反応しないでください!」
「精霊化よ。厳密には精霊進化ね」
ポポッカが代わりに話、マリエッタが二度見する。
「え、そういうことあるんですか?」
「ウェッジ・ガーデンのアイル=リーシュだって、ひとひらの花から精霊へと至った存在よ。花が循環させる水や土、日差しや空気。そんな自然が混じり合って精霊になるケースがあるわ。激しい自然現象に触れたときなんかにもね」
「せ、せいれい……」
ユーフォニーは『ほええ……』とつぶやき、精霊と化した雑草ムシャムシャくんを両手でそっと持ち上げた。
「な、なにか凄い力にめざめたり……」
「ムシャア」
「大体の草を美味しく食べられるようにできるって言ってるわ」
「あっそこは変わらないんですね」
変なことがあったせいでびっくりしてしまったが、ひとまず騒動は解決したようだ。
「次は、精霊たちが急に暴れた原因をつきとめないといけませんね。他の場所でもこうして暴れ初めているかもしれません」
フラペペの言葉に、集まってきた仲間達も同意を示している。
このアーカーシュが、変化しようとしている。
そしてその変化は、あまり人間たちにとって優しいものではないらしい。
●泡沫ブーク・カドゥール
「皆さん、よろしくおねがいします!」
叫び、翼を広げ突入チームを背に乗せて飛び出すハイペリオン。
その前方には、行く手を阻むべく構えたブーク・ゴーレムたちが立ち塞がっている。
無数の球形の岩と泥を組み合わせたような姿に知性こそ感じられないものの、ギラリと光る宝石からは強力な魔力がみてとれる。
「ハイペリオン様、かつては勇者王の翼となり大陸中を飛び回っていたのですよね
初対面時は目覚めたばかりで少し飛べる程でした、今や前人未踏の浮遊島まで駆け巡れるなんて……そんなのこの目で見たいに決まってます!
此度の空旅ではわたしたちがハイペリオン様の翼となりましょう。その白き太陽の翼がのびのびと羽ばたけるよう、全力で支援させていただきます!」
ゴーレムへと我先に突き進む『太陽の翼』澄恋(p3p009412)。
振りかぶり殴りつけたゴーレムの拳を、澄恋はクロスした腕でガードする。
「重い――ですが、事前にハイペリオニウムを充分に接種したこの私に隙はありません! あの日天啓の如く舞い降りたこの技で!」
澄恋はそっと翳した手の甲に、恥じらいながらも口づけをした。
拳に宿るか弱さが、ふわりと紅の香りをたてる。
流すように見つめたゴーレムへ、澄恋のか弱さが――。
「セイッ!」
「ヴォフ!?」
か弱き正拳突きによってゴーレムの胸を中心とした半径1mほどが掘削されたかのように消えた。
思わず声みたいなものをあげてしまったゴーレム。
「作戦時ジュリエット様が起動源となる文字を宝石ごと割れって教えてくれました。これぞ弱点攻撃。部位破壊ですね!」
「部位?」
むしろ破壊されてない部分の方が少なくないか? と思った『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)が深く突っ込むのはやめた。これで長い付き合いである。
英司はやれやれといった様子で額に人差し指をつけ首を左右にふると、それまで何も持っていなかったにもかかわらずジャランという金属音と共に突然ふたふりの剣を両手に握り翳した。
「やれやれ、俺ぁ涙を拭う怪人だが……ベイビーの夜泣きまで拭う事になるたぁね」
天空を多う暗雲。暴れる雷。
立ち並ぶゴーレムのずっと先には、目覚めたばかりであろう大精霊セレンディの姿あった。
「寝起きにグズったやつがおっかねぇのは人間も精霊も変わんねぇな! おはようの時間だぜ! しっかり目ぇ覚ませ!」
走り出す英司を支援するように、『無幻皇帝』ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)がその横を走り始める。
「過去に読んだゴーレム魔術に関する文献でも、終わりを意味する「メス」の2文字に1文字を付け加え、真実を意味する「エメス」という言葉にする事でゴーレムが起動すると書いてあった。目の前のブーク・ゴーレムが起動するプロセスにも共通点を見出すことができる」
「ああ、あの読み方わかんねー文字、そう読むのか!」
「あれは厳密には文字ではなく紋章だからな。……ともかく、ゴーレムは私に任せろ。あなたはセレンディからの攻撃への対応を頼む」
殴りかかるゴーレムの攻撃をムエンは展開したリフレクターオーブによる結界で防御すると、流れるように回り込んで剣をゴーレムの胸に打ち付けた。
宝石が砕け、崩れ去るゴーレム。
だがムエンはゴーレムとは別のところに意識を向けていた。
「この気配……精霊たちの声か?」
高密度で集合した低位精霊たちの声だ。人語による解釈ができないくらい微弱な意志が、集まることによって何かの意志を感じさせた。
それはひとえに……。
「泣いている? 己の不幸を嘆いているのか? セレンディは、望まれて生まれた大精霊ではないというのか……?」
動かぬ表情の内で僅かに困惑するムエン。その隙をついたわけではなかろうが、ゴーレムが二体まとめて襲いかかり、ムエンを思い切り蹴り飛ばした。
宙を舞い、くるくると回転するムエン。
「ムエーン!」
英司は叫びながら、しかし機敏に動きハイペリオンの頭上へと跳躍していた。
黒い雷が束となり、ハイペリオンへと襲いかかるのだ。
「くっ!」
交差した剣で防御。しかしそれを貫くほど激しいダメージが英司の全身をはしった。
爆弾を胸に抱えたかのような酷い衝撃をうけ地面をバウンドする英司。
「こんな攻撃をハイペリオンにぶつけるつもりだったのかよ。こんな可愛い顔したやつに? 正気(シラフ)じゃねえな……!」
「だから私達がいるのだろう! まだ立てるな!?」
ムエンは剣を地に突き立てるようにして立ち上がり、呼びかけてくる。
当然! と叫び英司もまた立ち上がった。
「成程読めたで御座る」
『刀身不屈』咲々宮 幻介(p3p001387)は刀を抜いた姿勢のまま、だらりと腕と刀身をさげていた。
まるでリラックスしたような姿勢だが、なぜだか次の一瞬には人の首をはねてしまえそうな殺気が漏れ出ている。
「ゴーレムによって足止めし、その間に協力な雷撃をぶつけつづけ勝利を収める。セレンディによる無敵の布陣……と。だが、まだ守りが手薄で御座る」
ぬらりと光をかえす『命響志陲 ー黎明ー』まるで意志を持ったかのようにきらめくそれを手に、幻介は高速で飛び出した。
駆け抜けるハイペリオンの更に先へと駆け出し、ありえないほどの距離を一瞬で埋めると幻介の剣はゴーレムの胸。それも宝石のあった場所を貫いていた。
「いやはや、召喚前の合戦場を思い出すで御座るなぁ。
この程度の窮地、幾度も経験したものよ……拙者を退かしたくば、もっと精鋭を揃える事で御座るな」
糸目にしていた両目を開き、左右から殴りかかるゴーレムたちに閃きをかえす。
8の字を描いた光が消えた時には、ゴーレムのたちの腕は輪切りにされて落ち始めていた。
「足止め、捨て駒には慣れたもの……そこから生還するのも含めてな」
今度はしっかりと両手で剣を握り、幻介は高速の回転斬りをしかけた。
「邪魔はさせん、此処を通りたくば拙者……いや、拙者達を倒す事だな」
バガッと上下に分割されたかのように切断されるゴーレムたち。
「ご苦労!」
『善なる饂飩屋台』御子神・天狐(p3p009798)はひいていたうどん屋台からペレレーレレっていう謎の音楽(多分うどん屋台の到来を知らせる音楽)を鳴らすと、仲間達にうどんの力を付与し始めた。具体的には動きが恐ろしく機敏になり軽く空も飛べる力である。
「伊達に足腰鍛えて峠を屋台で攻めていた訳では無いからのう!
RTAが求められているこの戦場において後手に甘んじるなんて勿体ないじゃろう?
全力で1万1千回キッチリ踏み込むぞ!」
『開幕からフルスロットルなのじゃ!』と叫ぶと天狐自身も加速を開始。うどん屋台の後方のフタが開きジェット式スラスターが露出すると、屋台両側面から折りたたみ式の翼が展開。
「セレンディよ! 正気に戻れぃ!」
ドゥッというとてつもない、それでいて鋭い爆発音を発した屋台は赤い炎と青と黄色の残光をひいてセレンディめがけ突進。
もはや屋台による体当たりではない。直径3m程度の弾頭による砲撃である。
それはゴーレムたちを突き抜け、凄まじい初撃をセレンディへ与えることとなった。
宙に浮かびこちらを見据えていたセレンディは片手を翳し、茶色いチョコレートフォンデュマシンのような魔術防御膜を展開。
バギンという金属をぶったたいたような衝突音が鳴り響き、天狐を止める。が、天狐は止まったとはいえ諦めたわけではない。
「最高速のわしを、もはやとめられはせぬのじゃ!」
屋台をひくバーをアクセルリングのごとくひねると、天狐は更なるジェット噴射で加速をしかけセレンディの防御膜を破壊。幼い少女のようなそのボディめがけ、屋台ごと突撃しそのまま後方の球形異物ブーク・カドゥールの外殻を割って内部へ突っ込んだのだった。
そのことに気付いたゴーレムたちだが、やることは変わらない。
空いた穴を埋めるかのように集まり、仲間達の行く手を阻む。
これでは折角ハイパーうどん女じゃなかった天狐が付与した効果が意味を成さなくなってしまう。……だが心配はいらない。
「ときほぐしにいこう。みんなで!」
『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)が高速でゴーレムへと飛びかかり、胸の宝石めがけて鋭い跳び蹴りを叩き込んだ。
流石にこう何体もやられていれば気付くのか、ゴーレムは腕を翳し宝石を防御。リュコスの蹴りがとめられる。
「ここはなんとかするからおねがい……セレンディを助けてハイペリオンとみんなで戻ってきて……」
リュコスはそう仲間によびかけると、ゴーレムのよる反撃のパンチを受けて地面に叩きつけられた。
あまりの衝撃にバウンドするリュコス。その足が掴まれ、振り上げられ、また地面に叩きつけられる――かに見えた瞬間、リュコスは器用にも自らを掴む腕を肘を打ち付けることで破壊。高速を逃れるとその流れのままゴーレムに第二のキックを浴びせかけた。
防御しようと翳す腕もろとも破壊し、その無効にある宝石を砕いたのだ。
崩れ落ちるゴーレム。
なんとか着地するリュコス。
そこへ更なるゴーレムたちが数体がかりで襲いかかってきた。
防御や回避が間に合うようには見えない。
だが……。
「トリヤデさん!」
「「ヤルヤデ!」」
突如としてどこからともなく増えたトリヤデさんたちが殴りかかるゴーレムたちとの間にはさまり、なんかむにゅって細くなった。
「ツブレタヤデ」
紙みたいに補く(あるいは薄く)なったトリヤデさんがひらひらと地面に落ち、他のトリヤデさんがやってきて空気ポンプでしゅこしゅこやって元にもどしていた。
そしてミストはリュコスの横に立ち、ガッツポーズをとってみせる。
「一緒に戦えば大丈夫。ハイペリオンさまを送り届けようね!」
「ヤデェ」
同じようなポーズをとるトリヤデさん。
そのなかの一人(?)が、セレンディが押し込まれたブーク・カドゥールのほうを向いて小さく「ヤデェ」と呟いた。
「精霊さんたちが心配なの、トリヤデさん?」
「大丈夫だよ。みんながついてる」
リュコスはミスト(とトリヤデさん)がとめてくれたゴーレムめがけ跳躍すると、今度は翳す腕をすり抜けるように手をひっかけて懐へ潜り込むんだ。膝蹴りが宝石を一撃で粉砕する。
崩れ去るゴーレム。
やがてゴーレムたちはリュコスたちを排除すべく密集してくるが……。
「こここそ、俺の出番だぜ!」
ゴーレムの密集したエリアめがけ、紅蓮の巨槍が突き刺さった。
いやちがう。
紅蓮のエネルギーを纏った『太陽の翼』カイト・シャルラハ(p3p000684)が突入したのだ。
エネルギーはそのまま周囲のゴーレムたちへとまとわりつき、意識をかき乱すように周りをくるくると飛び回りはじめる。
一部のゴーレムは訳も分からず近くのゴーレムに腕を叩きつけてしまい、そうでないゴーレムもそのまま通り抜けやや攻撃可能な距離で対空するカイトへと走り出す。
「ハイペリオン様親衛隊(自称)として、ハイペリオン様の邪魔はさせねぇぜ?
正中(神の通り道)を押し通らせてもらうぜ! この太陽の翼にかけてな!」
ビッと自らの翼を親指で示すと、カイトは次々と殴りかかるゴーレムたちの間をアクロバティックに駆け抜けていく。
ズザッと地面に足を付け、振り返り手招きをしてみせるカイト。
「ハイペリオン様には指一本触れさせねえ。あのお日様モフモフは俺たちのものだ!!!!!」
顔面めがけてのパンチをのけぞりによって回避。
「いや独占はしないけど!」
足払いをコンパクトなスピンジャンプによって回避。
「布教するけど!!」
着地の動作と同時にゴーレムの後ろに回ると、手にしていた三叉蒼槍で背をついた。
槍に込められた力を受け、がくりと膝をつくゴーレム。
「わざわざ全て倒す必要はねぇんだ。思いっきり引きつけて、セレンディとの戦いが終わるまで足止めできりゃあそれでいい」
カイトに例をいって駆け抜けていく英司たちに手をかざし、カイトは笑った。
「ハイペリオン様を頼んだぜ。……太陽の翼の加護があらんことを」
「複雑に絡み合った世界を、あなたと解きほぐしてゆきたい……ね。口説き文句としては悪くないわ」
腕組みをして、『紅蓮の魔女』ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)は薄く笑った。
片足のつま先が、トントンとリズミカルに地を叩いている。
彼女の後ろには新たなスピネルサーヴァントがパキパキと組み上がり、その大きさはブーク・ゴーレムの1.5倍に相当した。
「受けて立とうじゃない、伝説の物語に魔女の名を書き加えてやるわよ」
殴りかかるブーク・ゴーレムの拳を、真正面から手をかざすことで受け止めるスピネルサーヴァント。
スピネルサーヴァントは魔力を集めた単眼めいた宝石をギラギラと光らせ、そこから真っ赤な光線を放射。ブーク・ゴーレムが光線を受けてどろどろと溶けていった。
「精霊たちの暴走がエラーの蓄積によるものならセレンディも同じ。単純な手段としてはあの精霊を倒すこと……」
ジュリエットはそう呟きながら、腕組みを解いて大きく足を踏み出した。
土を踏みしめる彼女の脚に呼応するかのようにスピネルサーヴァントが突進を開始。
まるで怯むようにその巨体を見上げたゴーレムを腕のひとふりでなぎ払うと、別のゴーレムの顔面を掴んで思い切り振り上げた。
「ブーク・ゴーレムの起動方法はスピネルサーヴァントと同じ……ということは、魔力の通電が起こってるはずだわ」
スピネルサーヴァントがゴーレムを空中で反転させ頭から地面に叩きつけるさまを観察しながら、ジュリエットは独りごちる。
●黒冠のセレンディ
「私の出番――ですわねっ!」
腰にさげていたメイスを手に取り、回転をかけながら放る。
殻の割れたブーク・カドゥールの内側は、まるでプラネタリウムのように空に偽りの星座が描かれている。そのひとつひとつが僅かに灯す光に照らされて、聖句の刻まれたメイスがあやしく光る。
落ちてきたそれをキャッチする『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)。ふとみるとハイパーうどん女もとい天狐が逆さにひっくりかえってブーク・カドゥールの縁にひっかかっている。どうやら結構な一撃を入れたかわりに思い切り反撃されたらしい。
強力な防御能力を持つ一方で、攻撃力もやはり高いということだろう。今目の前にゆっくりと浮かんでいるチョコレートのような色の精霊は、圧倒的な『格上』ということだ。
「ヴァレーリヤさん、お気を付けて」
己の加護を飛ばしてくれたハイペリオンに頷きながら、ヴァレーリヤは頷いた。そして小声で返す。
「大丈夫。私に秘策あり、ですわ」
聖句をなぞるように指をはわせ、ヴァレーリヤはセレンディめがけて走り出す。
――『主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を』
再び展開したチョコレート色の防御膜がヴァレーリヤを阻むが、構うことなくメイスを叩きつける。
――『どうか我らを、憐れみ給え』!
衝撃が太陽のごとき炎となって迸る。膜を突き破りセレンディを飲み込む――が、セレンディは炎の中をあろうことか突っ切ってヴァレーリヤの顔面を片手で鷲掴みにした。
「!?」
「ヴァレーリヤさん!」
隣で構えていた『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)が咄嗟に振り返る。その横を大きくすり抜け、セレンディはブーク・カドゥールの壁面めがけてヴァレーリヤを叩きつけた。
紫色の雷が爆発し、咄嗟にオリーブは自らを守るように長剣を翳した。
ぷすぷすと焼けたおとをあげるセレンディとヴァレーリヤ。受けたダメージは同等といったところなのだろうか。しかし圧倒的格上のセレンディが持ち合わせる体力に比べると、ヴァレーリヤのタフネスといえど競り負けるということだろう。
セレンディはそれでも満足しないようで、空いた手からバチバチと雷をたてながらヴァレーリヤを見つめている。
「離れて下さい!」
オリーブは吠えるように叫ぶとセレンディへと突進。
豪快に繰り出された彼の剣を、しかしセレンディは翳した手だけで払いのけてしまった。
実質的に空振りした剣をしっかりと持ち直し、オリーブは更なる斬撃を繰り出しにかかる。
ヘルメットによってくぐもった声でウオオと叫びながら、オリーブの剣がセレンディの頭部めがけて撃ち込まれる。
展開した魔術防御膜を切り裂きながら迫る剣を、セレンディは無表情のまま再び払いのけよう――とした所で、力尽きたかに見えたヴァレーリヤがぴくりと動いた。
ゴウッと音をたてて至近距離から撃ち込まれる高熱のメイス。
つい不意をつかれたセレンディの顔面にメイスが、そしてサンドするようにオリーブの剣が叩き込まれる。
直撃だ。セレンディの形の良い顔が僅かにゆがみ、血でも出たように流れた魔力を拭うとオリーブとヴァレーリヤを今度こそなぎ払う。
目に見えるほどの圧力が走るなかを、しかし直立姿勢のまま不動のものがあった。
短く切った髪をさらりと払い優雅かつ美麗に立つ『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)である。
繊細な模様の入った日傘を傾け片目を覗かせる彼女は背景に巨大な百合の花を咲かせると――
「大精霊セレンディ! 相手にとって不足なし!」
日傘を投げ捨て美少女踏みで右足を出した。
石の上であるにも関わらずぴちゃんと静かな湖の水面を撫でたような音がして、ありもしない清らかな波紋が広がる。
「白百合清楚殺戮拳、咲花百合子、いざ参る!」
いや、波紋はあった。百合子を中心に広がる美少女力が波となり、非現実的な速度でセレンディとの距離を3センチにまで縮めたのだ。
肩からタックルを喰らわせる百合子のそれを踊るようなスピンでかわすセレンディ。
が、そこへ鋭く差し込まれた手があった。
『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)の手、である。
あまりにも洗練された、茶室で優しく腕を撫でるかのような手付きでセレンディの頬に触れた沙月の手は、しかし必殺の威力を持ってセレンディの首をへし折った。
地面を靴底で削ったにもかかわらず、しゃん――と鈴の鳴るような音でターンをかけた百合子が拳を握り、握ったその一点を中心に並行世界のあらゆる百合子が重なり合う。
「しかし、これほどの存在が正気ではないとは残念である事よ。
正気であればこそ、強大な御身の力十分に味わい尽くせたであろうに!」
キュンと音をたて流れ星が空へと打ち上げられる。否、百合子の拳が放った衝撃が残光を描いたのだ。
「全力で相手をさせて頂きましょう。レリッカの村に被害を出させる訳にはいかないですから……」
上品に立つ沙月は一度だけ閉じた目を開くと、一呼吸の間に二十七回の動作を完了させていた。
突き、払い、ねじり、あらゆる動作を組み合わせまるで奇妙な芸術品のような、それでて優れた伝統芸能のような動きでセレンディへ全ての連撃をヒットさせる。
それも、一発一発が必殺の、である。ゆえに対するセレンディは前衛芸術さながらの歪みをみせ、もはや人間の形状など保ててなどいなかった。
誰もが勝利を確信するほどの……だが。
それを成功させた沙月本人は、どこか悲しげに首を振った。
「仕留め損ないましたね」
途端、セレンディの形状が高速逆再生のごとく修復され、その流れのまま百合子と沙月に掌底を繰り出す。
二人は放たれた弾丸の如く吹き飛び人間の形状すら残されない――かに思われた、が。
「ギリギリ、セーフ!」
セレンディの手のひらを自らの両手でがっしりと受け止めていた『可能性を連れたなら』笹木 花丸(p3p008689)が、ガチッと歯を食いしばって立ち塞がっていた。
「魔王に特務派、聞けば聞くほど何だか色々ときな臭い感じがするけど!」
両手の恋人つなぎの要領でセレンディを掴むと、振り払おうとするセレンディに軽やかなステップで追いついていく。
まるで踊るようにくるくると回る二人。
「先ずは目の前の状況を何とかしないとねっ!」
強引に花丸の身体を上に振り上げるセレンディ。
が、花丸は空中でギュルンと反転すると掴んだ手へ更に力を込め、セレンディをまるで後ろから抱きしめるよな姿勢で着地した。物理的にセレンディの腕が360度ほどねじれきったはずだが、まるで何事もないかのように修復されている。
「ごめんね。けど、離さないよ」
ここぞとばかりに正面に回り込んだ沙月がセレンディの腹に貫手を放つ。
内部を探るかのように手首をねじると、セレンディは目をぎゅっと瞑って痛みに耐えるような表情を見せた。
やっと手応えを感じた。そう思えた沙月はもう一本の手を差し込もう――とした所で、自らの身体がセレンディから強引に離されたことに気付いた。
厳密には、右手首からこっち側の身体だけが、である。
「――ッ」
とはいえ取り乱すことはなく、手首に手を当て大きく引き下がる沙月。
「ちょっと……!」
花丸が困惑の表情を見せるその瞬間、彼女の両手がセレンディによって握りつぶされた。
目を見開き、振りほどかれる花丸。
素早く振り返ったセレンディは突き出した血塗れの手から激しい雷撃を放ち花丸の身体を焼き尽く――せは、しなかった。
花丸は口に含んでいたアクアヴィタエの棒付きキャンディをガリッとかみつぶすと両手を緊急修復。
雷撃をその身でガードした。
防戦一方か? そう思われたが、そこはやはり花丸であった。
「ねぼすけさん。この一撃はちょっと痛いよっ!」
それまでの防御をかなぐり捨て、握りしめた拳でセレンディの顔面を殴りつけた。
奇しくもヴァレーリヤの炎を突っ切って掴みかかるセレンディと同じフォームで。
思わず吹き飛ばされたセレンディはブーク・カドゥールの外へと放り出された。
ぷるぷると顔をふり、ゆがみかけた顔を元通りに戻すとめをぱちくりと瞬きさせた。
「あ、あ、うー。あう」
口をちいさくぱくぱくとさせ、そして周囲を見回す。
ブーク・ゴーレムとイレギュラーズたちが激しく戦う風景が広がっていた。
セレンディは困惑したようにその風景を見回すと、くるりと身を反転させ上空へと飛行しはじめた。
「えっ、ここで撤退!?」
「そうは問屋が卸しません――のでして!」
驚き身を乗り出す花丸たちの頭上を超高速で突き抜けて飛行する『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)。
「セレンディさん、申し訳ないのです。
ルシアたちは、今だけは侵入者っぽいことをするのですよ。
怒りで満ちた場所に閉ざされて、ずっとずっと苦しんでいる所から助けるために……!」
広げた翼で推進力を保ちながら、抱え込んだ『IrisPalette.2ND』を構える。『トゥインクルハイロゥ』が輝きを放ちながら開店を始め、高圧縮された魔術詠唱が行われる。
更に仕込んでいた『居寤清水』の効果を発動。激増したエネルギーは歴戦のイレギュラーズですら一撃で葬るだけのエネルギーを完成させた。
「もう、空が晴れるのですよ」
凄まじいエネルギーがルシアのライフル内に蓄積され、トリガーをひいたその瞬間に空を貫くまっすぐな光が生まれた。
「――!?」
戦場を無理矢理離脱しようとしていたセレンディははやりその線上にあった。
例の防御膜を展開したが当たり前のように貫通してしまったらしい。
雲すら切り裂いた光は太陽の光を差し込ませ、セレンディが爽やかな光に包まれる。
「これならっ!」
ルシアはレバー操作を行って弾をリロード。
再びエネルギーを高速チャージした。
次々に飛び出していく仲間達が可能な限りの一斉砲撃をしかける――が。
くるりとこちらへ振り向き肉体を高速修復させたセレンディが、ハアと息をついた。
「そこまで、です」
直立姿勢で片手を翳す。
ただそれだけのことで発生した巨大な魔術障壁。
美しい紋様や魔術式が描かれたそれは、ルシアによる超強力な魔力砲撃を完全に撃ち弾いてしまった。
「なっ!?」
「ちょっとまって! 今のを防げるの!?」
ハイペリオンに乗って空へとあがってきた『炎の剣』朱華(p3p010458)が目を見張る。
素の状態で5000台のダメージを発揮するルシアの砲撃を完全に防げる相手など、どうやってダメージを与えようというのか。
どころか、障壁がルシアの放ったエネルギーを吸収し、反射を始める。
「よりによって――! 『赫焉瞳』!」
朱華が発動させた『赫焉瞳』の権能が発動しセレンディの反射効果が消失。同時に『赫焉瞳』が輝き始める。
「効果はもっても40秒だよ! その間に!」
「つまりわしの出番じゃな!」
いつのまにか復帰していた天狐がバラッバラに砕けた屋台からエンジン部分だけを担いで現れた。
「まとめて叩き込めば一発くらいは当たるのじゃ! 強烈な目覚まし時計を今度こそブチこんでくれよう!」
ドッと音をたて突進する天狐。
天狐の力をうけて飛行能力を得た仲間達が一斉に飛翔。
朱華はそれに並んでセレンディへと突っ込むと、魔術障壁めがけて剣を抜いた。
交差させ炎をあげる剣。
「やってやろうじゃないっ! 『灼炎剣・烈火』!」
身体を大きく回転させ勢いをつけると、解放しきった力を障壁へ叩きつける。
それだけではない。ヴァレーリヤが聖句を唱え限界まで燃やしたメイスと、オリーブによる全身全霊の打撃と、飛び上がった英司が二刀で円月を描いて湧き上がらせた漆黒の雷を込めた斬撃。
更に百合子と沙月が合わせた洗練されきった掌底が撃ち込まれ花丸自慢のパンチがそこへと重なる。
ルシアが再びリロードをかけ、『白砂糖の指先』ジェック・アーロン(p3p004755)へとアイコンタクトをだした。
ジェックは頷くと、乗っていたハイペリオンから跳躍した。白く美しい魔法の翼が広がり、ショットガンを構える。
「キミが行くならその背にはアタシがいないとね。そうでしょう、ハイペリオン?」
「ええ、大地の子――勇者ジェック。あの子をこの島から解き放ってあげましょう」
その言葉に、ジェックは心の中で呟いた。
『ただ防衛機構として生きるなんて、不本意でしょう』と。
「早く、目覚めてね?」
集合した力によって今度こそ破壊される魔術障壁。
炎によって広がる魔法の翼を纏い、朱華が両手の剣をまとめて大上段からセレンディへ叩きつけた。両腕を翳して防御するセレンディだが、あまりの衝撃に地面へと急降下。
「はなれて、くださいっ!」
ちいさなクレーターを作る勢いで地面に激突したセレンディは、朱華を拒絶するように蹴りつけた。
それだけで思い切り吹き飛ばされた朱華がハイペリオンのおなかでキャッチされる。
だが、それで終わりではなかった。
朱華が何かに気付いて顔をあげ、そして叫んだ。
「皆避けて!」
途端、セレンディを中心として全方位にむけて雷が迸った。
回避も間に合わず直撃をうける朱華たち。
次々と墜落し、地面には仲間達が転がっていた。同じく墜落したハイペリオンが『うっ』と呻きながら身体を起こす。
彼女のそばに転がった朱華の手の中で、『赫焉瞳』が塵となって消える。タイムリミットだ。
ふたたびセレンディに反射フィールドが展開。
ゆっくりと立ち上がるセレンディは、はあはあと荒く乱れた息を胸に手を当てて整えていた。
「今度こそ、おわりです。もう、やめてください」
仲間達の殆どは倒され、なんとか庇われたジェックたちも体力があと僅かといった様子だ。
セレンディを撃ち抜くだけの攻撃はできるだろうが、反射フィールドによって受けるダメージに耐えきれるとは思えない。
「わたしは、無敵の盾、セレンディ……」
セレンディは左目を覆うように片手を顔に当てると、頭の痛みをこらえるように顔をしかめた。
「魔王、イルドゼギアに、栄光を……」
ふらつく身体をなんとか支え、まだ荒いままの息で酸素を欲するように喉を鳴らした。
その様子はまるで……。
「洗脳?」
「精霊を兵器として使役するなんて」
ここで引き下がるしかないのだろうか。
苦しむ少女を前にして。
だが、そんな中でジェックはひとり立ち上がった。
ライフルを構える。
「ジェックさん!?」
無言のまま発砲。
着弾した弾にセレンディの反射フィールドが発動――しなかった。
ジェックの腰には、もうひとつの『赫焉瞳』がさがっていた。
そのことに気付いて目を見開くセレンディ。
咄嗟に魔術障壁を展開しようとするも、ジェックが更なる弾を撃ち込むほうが早かった。
一発、二発、三発と立て続けに撃ち込んだ弾はセレンディの頭を吹き飛ばし――そして。
「は、ふう……」
すっきりとした顔をしたセレンディが、風のふく草原の真ん中に寝転んでいた。
「わたしは、いままで……どうしていたのでしょう」
「寝てたんだよ。寝相は悪かったけどね」
ふとみると、そばにジェックが体育座りをしていた。ガスマスクを外して地面に置くと、手を伸ばす。
「おはよう、セレンディ」
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
ブーク・カドゥールを中心におこった精霊暴走事件を解決しました!
GMコメント
アーカーシュの更に上空。精霊たちの領域『アースマーン』にて異常が発生しました。
低位精霊たちがモンスターとなって暴れ回り、遺跡に眠っていたハイアームズたちが起動しアースマーンへと向かっています。
これらが何を意味するのかは分かりませんが、『ブーク・カドゥール』にて『黒冠』のセレンディなる大精霊が目覚めたことと無関係とは思えません。
あなたはこれから語る三つのパートのいずれか一つへと参加し、この動乱の渦中へと飛び込むのです!
●特殊ルール『新発見命名権』
浮遊島アーカーシュシナリオでは、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
発見者には『命名権』があたえられます。
※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
命名権は放棄してもかまいません。
※放棄した場合には、何も起りません。
■■■プレイング書式■■■
迷子防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
・一行目:パートタグ
・二行目:グループタグ(または空白行)
大きなグループの中で更に小グループを作りたいなら二つタグを作ってください。
・三行目:実際のプレイング内容
書式が守られていない場合はお友達とはぐれたり、やろうとしたことをやり損ねたりすることがあります。くれぐれもご注意ください。
■■■パートタグ■■■
以下のいずれかのパートタグを一つだけ【】ごとコピペし、プレイング冒頭一行目に記載してください。
【天空闘騎】
ハンドレッドの船から発進し、ハイアームズ(天空闘騎)たちと空中戦闘を繰り広げます。
戦闘可能な飛行スキルを持っているならそれを用いて戦って下さい。(媒体飛行や簡易飛行は戦闘に使うことは出来ません)
飛行スキルを持っていない場合はハンドレッド手製の小型探査艇に乗り込んだりレンタルワイバーンを用いて空中戦闘を行うことになります。
優先参加:ルクト・ナード(p3p007354)、レイリー=シュタイン(p3p007270)、エッダ・フロールリジ(p3p006270)、リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)、佐藤 美咲(p3p009818)
・エネミー『ハイアームズ(天空闘騎)』
ハイアームズはアーカーシュ各地で発見されたゴーレムを戦闘に特化させ、飛行能力を標準搭載させたモデルです。
優れた近接戦闘能力に加え、熱光線を放つなど非常に厄介な敵となるでしょう。
・フィールドと注意
このフィールドは空中です。飛行戦闘ペナルティが敵味方全員にかかっています。
【星霜戦域】
アースマーン全域にて低位精霊たちが蜂起をおこし、イレギュラーズたちへ無差別に襲いかかっています。
既にイレギュラーズが拠点化しているいくつかのポイントを中心にして精霊たちへの反撃を行いましょう。
精霊は荒れ狂い攻撃を仕掛けてきますが、戦闘で倒すことによって怒りの因子を排除し正常な状態へと戻すことが出来ます。
優先参加:ユーフォニー(p3p010323)、マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
・エネミー『各種エレメンタル』
ファイア、アース、ウィンド、サンダーなど各種エレメンタル(精霊)がモンスターとなって襲いかかってきます。
各エレメンタルは属性ごとに異なるBS攻撃を得意としています。中でも光の精霊ことライトエレメンタルはブレイク攻撃をもっているので付与スキルのタイミングにも注意してください。
また、一部の精霊は合体することで複数の属性をもったり戦闘力を増幅した『ハイエレメンタル』となることがあります。ご注意下さい。
【ブーク・カドゥール】
アースマーンの中でも最も危険なエリア『ブーク・カドゥール』へ調査のために訪れたあなたは、無数のゴーレムが生成されあなたたちへ襲いかかるという事件に遭遇します。
ここでは大精霊セレンディが目覚め荒れ狂った状態になっているようです。これを止めるための作戦が急遽決行されました。
このパートは『ゴーレムたちと戦いセレンディへの道を切り開く』ためのパートです。
少数精鋭をハイペリオンに乗せてブーク・カドゥールへ突っ込ませるので、皆さんはハイペリオン様を守るように展開しゴーレムたちを次々に倒して行かなければなりません。
優先参加:ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)、澄恋(p3p009412)、耀 英司(p3p009524)、リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)、ミスト(p3p007442)、カイト・シャルラハ(p3p000684)、咲々宮 幻介(p3p001387)
※このパートの優先参加者は【黒冠】パートへの移動も可能です
・エネミー『ブーク・ゴーレム』
ブーク・カドゥールにて突如大量に発生したゴーレムたちです。
こちらを排除すべく動き出しています。戦闘能力は格闘に寄っており、激しい殴り合いが想定されます。
【黒冠】
突如目覚め荒れ狂っている大精霊セレンディを沈めるための作戦です。
ハイペリオンに乗って『ブーク・カドゥール』へ直接突っ込み、少数精鋭でセレンディへと挑みます。
このパートは実質的に一段階上の難易度になっています。
セレンディの強さはとびきり高いので、精鋭を揃えてぶつけましょう。
優先参加:ジェック・アーロン(p3p004755)
・エネミー『セレンディ』
水属性の大精霊です。高い防御力が予想され、激しい反撃もおこるでしょう。
特に重要なのは防御を突破するだけの鋭い攻撃です。
これを短時間のうちに次々と叩き込み、セレンディを倒し正常な状態へともどしてやってください。
この作戦は時間がかかればかかるほど失敗リスクが増大するので、(敵の性能も相まって)味方の犠牲をある程度無視して攻撃に極振りすると成功率があがるでしょう。
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