PandoraPartyProject

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Survivor's guilt

 屹度、『わたし』だけが助けってしまうと後悔するのだ。あの時、ああすれば良かったと――

『センセ、定時報告だよ……!
 今日は急ぎ伝えるね。正義の教皇庁にパラディーゾが現れたんだ! それに、大聖教会にも敵襲が……!
 此れは屹度、スターイーターとの戦いが進展したからパラディーゾ達が動き出したんだと思う……』

 そう告げた練達の研究員紅宵満月(p3y000155)の言葉に澄原 晴陽(p3n000216)は頷いた。
 現実と虚構の同時侵略が練達そのものを巻込んだ大事件へと発達してから幾分か時間が経つ。澄原病院の避難シェルター『地下講堂』で身を寄せ合う希望ヶ浜市民達は一様に不安を抱えている。
「パラディーゾが動くとなれば、まだまだ事態は落ち着きませんね……」
『そうだね……。終焉の獣『ベヒーモス』には神光の援軍が到着したよ。航海の拠点設営も行われてる。
 此処が正念場だと思うんだけど……援軍要請を受けて竜の領域から『亜竜姫』が来てくれそうなんだ!』
「成程……あれだけの巨大な敵ならば竜種の力を借りた方が良い、と言うことですね?」
 素晴らしい援軍だと頷く晴陽に満月はモニター越しに苦い笑いを零した。竜の領域は終焉(ラスト・ラスト)に程近い。
 故に、『亜竜姫』琉珂とオルドネウムの救援妨害がラグナヴァイスによって行われているそうなのだ。
『私たちは、隊を分けて各地の救援に行くよ! それで――……』
 モニターの通信が乱れる。晴陽は「満月さん?」と何度もその名を繰り返した。
 応答がありません。
 その文字列だけが無機質に踊るモニターを眺めながら晴陽は唇を尖らせた。
 直に通信が回復してくれれば良いのだが――

 ――Error.

 別のモニターに目をやってから晴陽ははた、と息を呑んだ。それは『澄原』が管理する練達のとある施設内部を観測するモニターである。

 ――Error.

  その無機質な文字は応答を返さなくなったことを表している。晴陽は唇に指先を当ててから如何したものかと頭を抱えた。
 指先をキーボードへと滑らせてコードを打ち込み……応答なし。全ての通信が遮断されているのだろうか。
 あの施設には複数のイレギュラーズの体が保護観察されている。
『ログアウト・ロック』された者達の健康観察を晴陽が行っていたのだ。
「……どうして……」
 晴陽は呟かずには居られなかった。何時いかなる時でも看護師が駐在し、連絡が取り合えるように気を配っていた。目を離したのは満月による定期連絡の最中だけ。つまり、今だ。
 この僅かな時間に保護施設が突如として何者かに乗っ取られたとでも言うのか。
「龍成……」
 弟の名を呼びながら、晴陽は別のモニターを参照する。
 各地の保護施設を一覧で眺められるそれは全てが応答ナシErrorの表示になっているのだ。
 晴陽は息を呑んだ。嘘だと言いたくなる気持ちを抑えて、情報を収集する。希望ヶ浜の中では出来ることが限られているか。
 ――僅かな時間の後、晴陽がスマートフォンでタップしたのは『燈堂 暁月』の名であった。

『もしもし、珍しいね』

 今、自分にとって一番頼りになると分って居ながら、今、一番聞きたくない声がスピーカーから聞こえる。
 晴陽は「急ぎの用です」と震える声でそう言った。
 各地のログイン用及びログイン中の肉体の保護を行っている施設の応答が消滅した。セキュリティシステムが機能せず、管理さえ侭ならないのだ。
 現地に何かが起っている可能性があるのだ。
『――成程。廻からもある程度は聞いているよ。
 『龍成』達イレギュラーズは『アバター被験者管理システムAI』の管理下にあると。
 彼らはそれに、いや、其れだけでも無いかも知れない何者かに脅かされているという認識で良いかい?』
「はい。同様に私が管理していた『ログアウト・ロック』されたイレギュラーズの肉体も何者かの襲撃を受けているはずでしょう。
 恐らくは私の管理下や龍成以外のイレギュラーズが利用している『ログイン装置』のある施設にも同様の事例が起っている可能性はあります……」
 晴陽は同様の事例に関しては情報を収集し、別途対応を求めなくてはならないと告げた。一先ずは二例が具体例として観測されたと言うことだ。
『……それで?』
「分かっておられるでしょう」
『まあね。……晴陽ちゃん。貸し借りはなしだと言うことで良いかい?
 ――祓い屋はテアドールに脅かされているイレギュラーズの保護に向かう。勿論、君の可愛い弟もね』
 暁月の笑い声に晴陽は苛立ちながらも「結構」と応えた。それ以上の言葉が出なかったとも言えようか。
「私は、私の管理下に入って居るイレギュラーズの救援へ行きます。では――」
『晴陽ちゃん』
 通話を切ろうとした晴陽へと暁月は静止するように声を掛けた。
『君は臆病者だから、イレギュラーズに頼るのは中々難しいかも知れないが声を掛けてみてはどうだい?
 例えば、異世界に一緒に行ったアフタヌーンティーの約束をしただとか――屹度、素晴らしい仲間達と駆け付けてくれるだろうさ』
 そんなジョークに晴陽は何も答えないまま通話を切った。
 言われたことを其の儘実行するのは癪だが、晴陽は直ぐにイレギュラーズへとaPhoneで連絡を取った。

 ――救援をお願いします。

 ※<ダブルフォルト・エンバーミング>に動きが見られました!(複数のシナリオが公開されました)
 <ダブルフォルト・エンバーミング>シナリオの出発が迫っています!

これまでの再現性東京 / R.O.O

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