シナリオ詳細
<ダブルフォルト・エンバーミング>ワールド・エンド・ゲーム
完了
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オープニング
●正義国の決断
決戦の時より、少しだけ時はさかのぼる――。
「『天の杖』の起動を視野に入れたい」
教皇庁の教皇の間にて、アストリアはシェアキム・ロッド・フォン・フェネスト六世へと告げた。
「首都防衛に備えてか」
シェアキムが厳かに頷く。天の杖とは、正義国に伝わる10の聖遺物の一つである。フォン・ルーベルグを守るための紋章砲台、非常に強力な防衛兵器だ。だが、アストリアは頭を振った。
「否……妾たちは、もっと攻勢に出ねばならん」
アストリアは、真剣な眼で、シェアキムを見つめた。
「先ごろ帰還した特異運命座標たちにより、スターイーターの情報はもたらされた。特異運命座標たちの協力者によるバックアップと、そのデータを組み込んで読み上げた予知によれば、スターイーターは『伝承国に姿を現す』と出ている」
「なんだと?」
シェアキムは意外な顔をした。
「何故だ……否、そうか。近頃報告のあった、砂嵐国の異変……禁断の地よりいでし件の怪物の行く先が、『伝承国』であるならば……」
「そうじゃ、シェアキム。これはおそらく、敵から仕掛けてきた最終決戦じゃと思う。ワールドイーターたちも、多くが伝承国に姿を現すじゃろう。ま、それで正義国をほうっておいてくれるか、と言えば答えはNOじゃ。首都に向けての攻撃も予知されておる」
なるほど、とシェアキムは嘆息した。
「奴らは全勢力を結集して、世界を壊すつもりじゃ。ならば妾たちも、正義国に閉じこもっているわけにはいかん」
「同意見だ。これはもはや、我が国を守るだけの戦いではない。世界を守る戦いであるというのだな?」
シェアキムは厳かに頷いた。
「だが……天の杖の起動範囲は、あくまでもここ、フォン・ルーベルグに留まる。伝承国にまで影響を及ぼすことは」
「可能のはずじゃ。すべての聖遺物を結集すれば」
その言葉に、指物シェアキムも瞠目した。
「……有史以来、10の聖遺物が一堂に会し、その真威を発揮したことはない。単体でも戦局を覆せるほどの力を持っているからだ。
故に、すべての聖遺物は、正義国の各家に分散・管理封印されている。
だが、10の聖遺物の本来の役割は、兵器などではない。すべては、真なる0番目の聖遺物を起動するための鍵にすぎぬ。
その鍵を開けると、言うのだな?」
「もとより、世界の危機じゃ。今使わずに何を使う」
アストリアは笑った。
「命が惜しいか、シェアキム? 確かにそうじゃ。天の杖単体の起動ですら、多くの聖職者の生命力を吸う。
真なる0番目の聖遺物を起動したら、そうじゃなぁ、きっと死ぬじゃろうなぁ、妾たち」
「ふ、そうだな……」
シェアキムは笑った。
「だが、命を惜しんで何が我らが矜持か。
よかろう、アストリア。これより我が国は非常態勢にはいる。
正義聖騎士団は必要最低限のみを残し、全軍を伝承国へ派遣。
同時に、すべての聖遺物を運用する。現在所在が分かっているのは……」
「『エンピレオの薔薇』は妾の星見に組み込んで居る。後は、『天の杖』『コンフィズリーの聖剣』『ミルフィールの神槌』『ロウライトの神旗』『アークライトの地槍』辺りは管理されておるはずじゃ。
……『ヴァークライトの聖骸布』は現状行方不明じゃったな。ワールドイーターに食われたやもしれん」
「ギリギリまで確認と捜索を続けよう。とにかく、可能な限り聖遺物を結集し、星見に組み込む。
すべての聖遺物が集まらねば、おそらく十全の力は発揮できんが……何もしないよりはいいだろう。
ふっ……忙しくなるな、アストリア。こんな気持ちは、お前と共に正義国の改革にいそしんだ時以来だ」
「そりゃテンションも上がるじゃろ! 世界を救う戦いじゃぞ!」
アストリアはにぃ、と笑った。シェアキムもまた、静かに笑ってみせた。
●世界の終わりの遊戯
時は巡る。決戦の時は来る。
R.O.OVer4.0、<ダブルフォルト・エンバーミング>。世界がアップデートされたとき、訪れたのは破滅であった。
世界の各地が、大規模な異変に襲われ、終焉の獣が、或いはこれまで世界を襲ってきた異変が結集し、世界を滅ぼすべく行軍を開始する。
その戦列が一つ。先頭に、それはいた。
一言で言うならば、巨獣である。
終焉の獣もかくやたる巨大なる体躯。眼は炎のように赤く輝き、映る餓えの感情が、世界を喰らいつくさんと睥睨する。
それは、星喰い。元来は、餓えだけを持った小さなバグ。
それは特異運命座標たちのデータから形を得、目についたあらゆるデータを喰らい続けた。
喰らって、食らって、喰らって。
それでもまだ足りなく。
ああ、まだ食いたい。食い足りない。
全てを喰らいたい。
「うーん、相変わらずだね」
その足元に、少女がいる。
元々は、無垢なデータだった少女は、許容できぬ記憶を喰らい、心の器にひびを入れた。
天国篇第九天 原動天の徒。その外見はスティアによく似た、スティアではない存在。
「食べる事しか考えてないや。ま、その分、私の言うことも聞いてくれやすいんだけど」
原動天が笑う。己の特殊能力により、原動天は『獣』を操ることが可能だ。それは、オリジナルであればサメを操る様なものだったが、しかし原動天が操るのは、世界を喰らう怪物たち。
「食べたいんでしょ。いっぱい食べさせてあげる。
正義国を狙えないのはちょっと嫌だけど、伝承国を食べちゃえば、まぁ最終的には終わりだから! この際どっちでもいいよね!」
原動天が無邪気に笑った。
もう終わらせたかった。
こんなくだらない世界(ゲーム)を。
考えれば考えるほど、辛くて苦しくなる。
壊れてしまいそうになる。
どうして、私の家族(ああ、そんなものはいない。これは他人の記憶だ)はひどい目に遭ったのに。
この世界は、それを覆い隠して、嘘だったみたいにみせているのだろう。
どうしてみんな、いい人だったみたいな顔をしているのだろう。
あなた達は醜くて、
悍ましくて、
汚くて、
クズで、
生きていてもしょうがないような奴らだったでしょう?
そんなあなた達が、善人ヅラして幸せに生きているのが。
たまらなく辛いの。
たまらなく苦しいの。
「だから、壊しちゃおうね、みんな」
原動天が笑った。
スターイーターが吠える。
週末の獣たちが吠える。
ビーストマスターによる、終焉の行進が。
今、あなた達の前に立ちはだかっている――。
- <ダブルフォルト・エンバーミング>ワールド・エンド・ゲーム完了
- GM名洗井落雲
- 種別ラリー
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2021年12月11日 22時10分
- 章数3章
- 総採用数207人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
「それじゃあ行くよ、気合入れていこう、すぅぅ……Engageィィイイ!!」
それは、強烈な鬨の声! 戦の始まりを告げる雄叫び! まさしく接敵の声をあげて、彼らは、我らは、今まさに戦場のただ中へと突撃する!
敵は終焉の獣たち! そして星喰い、憎悪の原動天!
「それがどうした! 原動天さんよ!
聞こえるか! 聞こえないとは言わせない!」
目の前にいた、不気味に光る人型の化け物の首を、電磁鋸で跳ね飛ばした! ぶおん、と振るわれるその刃を、勢いのままに左隣の怪物にも叩きつける!
ぎゃりり、と音を立てて、鋸が怪物を斬り捨てる。ケミカルに光る不気味な体液は、鮮血のように吹き飛び散る。
「人間はクズで、悍ましい。醜い……だからなぁに? って感じ」
ケミカルな返り血にまみれながら、グレイは指をくい、と曲げてやった。かかって来いよ、のハンドサイン。
「そんなのどの世界でも当たり前で当然で……苦しいのもつらいのも、君だけじゃない! うぬぼれるなよ! 原動天!
君の言うクズ人間どもの悪あがきってもの、たっぷり見せてあげるから……俺達にかかって来いよ、自己中パラディーゾ!」
その答えに応じるように、無数の終焉獣が、グレイに襲い掛かる! 鋸が最高潮にエンジンをうならせた! まとめて薙ぎ払う! 雄たけびと共に、グレイは敵の群れへ襲い掛かった――。
成否
成功
第1章 第2節
かくしてグレイの雄たけびを鬨の声をとして、戦いは始まった。此方、特異運命座標部隊。彼方無数の終焉の部隊。
この荒れ果て食われた大地には、二種類のものしか存在しない。敵か、味方か。それだけだ。
故に――この戦場で求められることは実に単純(シンプル)。
斃せ! 斃せ! 斃れたとしても、斃せ! 斃されたとしても、斃せ!
死に戻り(デスカウント)は諸刃の剣なれど、しかしその刃が自らの身体を傷つけることも、今は受け入れなければならぬ。
諸刃の刃、その方側が己の肉を傷つけようとも、もう片方が相手の骨を断てば勝ちだ!
奮い立て、振るい立て、揮い立て!
決戦の時は今である――!
「血気盛んだね」
原動天は薄く笑った。今まさに鬨と共に戦闘に入った特異運命座標を、まるで空虚なものでも見つめるようにしている。
先ほどの特異運命座標は、なんといったか……かかってこい、と言ったか? 悪あがきを見せてやる、と。
「面白いね――それじゃあ、見せてもらおうかな?
あなた達の言う、悪あがき」
原動天が、その手を掲げ、振り下ろした。轟! 終焉の獣たちが吠え声をあげ、これまでよりもさらに一気呵成に特異運命座標たちに襲い掛かる!
「はじめよっか。世界の終わりを決める、ゲームを」
原動天が刀を抜き放つ。氷の如き静謐な空気が、大地を濡らした――。
第1章 第3節
戦場を観れば、巨大な怪物が此方を睥睨している。はるか遠くにあれど、その偉容は見て取れる。巨大なる怪物、まさに星を喰らうものの名にふさわしき存在だ。
「でかくね? はー、あれ俺何個分くらいだろう?
いや、俺換算より国で考えた方が早そう。何個分くらい?」
首をかしげながら、ロードは空中で回転するように飛んだ。その後を追うように、何もない空間を終焉中の鋭い爪が擦過する。
「ひゅう、そっちは小っちゃく見えてくるな? 俺より小さいんじゃね……いや、デカいか。
身長差約75cmとみた! けどな、デカさが勝利につながるってわけじゃねぇってのを!」
その手を振るうと、氷嵐のエフェクトが巻き起こる。暴風が、終焉の獣をなぎ倒し、吹き飛ばす!
「教えてやる……ってな!」
「もっかい飛べ、ロード!」
Hが叫ぶのへ、ロードは頷きつつ再度跳躍。その足元を、Hの刃から放たれた暗黒の剣閃が、直線の敵を一気に薙ぎ倒す! 腕、腹、首、脚、直線状にあるそれを切り裂かれた終焉の獣が、ケミカルな体液を破裂させて消滅していくが、なだれ込むように次なる標的が襲い掛かってきた!
「ちっ、キリがないな!」
「なるほど、戦力を決めるのはデカさじゃなくて、数か?」
おどけるように言うロードへ、Hは肩をすくめた。
「少数精鋭、と言う言葉が好きだな。此方は向こうに比べたら数には劣るが、一人で1000を討てば、届くだろうさ」
Hは軽口をたたきつつ、再び斬撃を振るう。その剣閃は、まだ原動天には届かない。
(……善人ヅラして、か。醜い、か。耳が痛いぜ。
いらねぇって思った人間を殺す事も責めない。俺もそうしてきた。
だが……誰かを傷つけるその理由が、テメェ自身だけの為なら。させねぇよ……!)
再びうち振るう刃が、声よ届けと戦場を走る。
「辛いのなら、苦しいのなら! 八つ当たりせず助けてって叫びやがれ……!」
思いははるかに。今は未だ届かず。叫びに覆いかぶさるみたいに、次々と終焉の獣は襲い掛かってくる。そんな彼らの前方に立ち、その攻撃を引き受けるのはダリウスだ。
「終焉ども! 大層な名前の割には、俺一人捉えられないかい!」
高く跳躍、敵の斬撃を回避したダリウスへ向けて、地上の終焉獣たちが、そのマズルのような長い口を開いた。同時、中からケミカルな光が吹き出され、さながらビームのように撃ち放たれる。
「ちっ!」
舌打ち一つ、力場発生装置で不可視の楯を発現する。眼前ではじけるビームが、花火のように無数の色をはじき出した。衝撃に顔をしかめつつ、着地。が、足を止めてはいられない。四方八方から、敵の攻撃は来る。流石に連続でよけ続けることは厳しい……着地のスキを突かれて放たれた斬撃が、ダリウスに迫り――現れた梨尾が、その斬撃を身を以って受け止めて見せた。
「くっ……!」
仮想の鮮血がほとばしる。だが、痛みはリアルだ。
「大丈夫か、オイ!」
ダリウスが叫ぶのへ、梨尾は頷いて見せた。
「大丈夫です……! こんな所で、止まってはいられません!」
梨尾は立ち上がる――傷にまみれても。その両手に炎を巻き起こし、殴りつけるように撃ち放った! 復讐の炎が、終焉の獣を飲み込む。存在することを許さぬ。炎が、終焉を、焼き尽くした。
「世界を……この世界は!
確かに汚い所はあって……それを覆い隠すみたいに、綺麗事を言う人がいるかもしれません!
でも、そこに生きている人たちにだって、この世界の風景にだって……本当に綺麗な所はあるんです!」
はるか前方、原動天へ向けて、叫ぶ。
「あなたと同じ、パラディーゾでありながら、血どころかただのコピー元である俺の事を父さん、兄さんと呼んでくれた理弦が存在できるこの世界を! 一緒に色んな景色を見るために……楽しい思い出作るために……消させるものか!」
たとえこの身に変えても! この世界を守る! 決意が炎を巻き起こし、命を燃やし、終焉の獣を燃やす!
「! こうも見せられてたら、やるっきゃねぇよな!
ログアウト不可だのなんだの、こっちはすでになってるんだよ!
関係ねぇ、かかってこい! 俺はここだ!」
ダリウスが叫び、跳躍。無数の獣が、ダリウスを追って雄たけびを上げる。
「ああは言うが、ダメージは少ない方がいいからな。加勢に行くぞ、ロード」
Hが言うのへ、
「了解だ、派手に爆発してやるよ!」
ロードは笑い、共に敵陣へと突撃していく。
剣戟。術式。あらゆる手段を用いて、敵をせん滅する。
今は、道をこじ開け、突破することが最優先だ。
成否
成功
状態異常
第1章 第4節
星が降る、星が降る。戦場に星が降る。
入江・星の降らせる星が、終焉の獣たちを狙い降り注ぐ! 被弾するものもあれば、光線を吐き出して迎撃を狙うものもある。地上に落着した星が、空で撃ち落された星が、激しく輝き、光を散らした。
「しゃらくさいわっ!」
叫ぶ、星。届かないのならば、自分が星を纏い、星になればいい! 輝きを観に纏った星が、敵の群れを縫いながら突撃! 輝く星の毒手が、獣の胸を撃ち抜いた!
「次……おっと!」
横合いから振り下ろされる、獣の剛腕。星は無理矢理身体をひねって回避――同時、敵の背後から現れた天川が、獣を後背から小太刀で斬りつけた。ぎゃお、と悲鳴をあげながら、獣がデータの屑へと消滅していった。
「囮に使ったみたいですまねぇ。このやり方に慣れちまっててな」
「ああ、結果オーライって奴や。なぁに、最終的に敵が全滅してれば、この際なんでも……」
ぼうん、と、獣たちが一斉に光線を撃ち放つ。二人はその場から跳躍、刹那、地面を光撃が抉った。
「っちゅうか、正攻法で正々堂々、なんて奴らやあらへんやろ!」
「違いない!」
言いつつ、二人は着地、すぐに飛びずさり距離を取る。
「二人ともぉ、こっちだよぉ」
ひらひらと手をふるエイラに導かれた二人が、エイラの楯の後ろに飛び込んだ。同時に追ってきた光撃を、エイラは構えた楯で受け止めて見せる。
「大丈夫ぅ? 守るのはエイラに任せてねぇ~」
ふわふわとした口調ながら、そのしぐさには頼もしさを感じさせる。エイラは小首をかしげると、
「まるで、憎んでるみたいに、皆攻撃してくるんだよねぇ。
……きっとぉ、この子達を指揮してる、原動天の気持ちがうつってるのかもねぇ」
「報告にもあったな。コピー体のパラディーゾは、大元の人物の記憶を植え付けられるのに、耐えきれなかったのか」
天川が言う。エイラが頷いた。
「あの子はぁ、自分のものじゃなくてもぉ、家族の死を大切にしてる子なんだぁ。きっと優しい子なんだろうねぇ。
でも、エイラはぁ、あの子の記憶とは別人なヒト達を守るよぉ。
ここが仮想の世界だとしても……生まれが由来がどうであれぇ、心を持って生まれてきた、皆の事をぉ」
「お、ええなぁ、ほんのり暖かくなってくるっちゅうもんや! な、天川くん?」
そういう星へ、天川は肩をすくめた。
「……はっ。俺はそういうのとは無縁な人間さ。
俺の戦う理由はシンプルでいい。これは戦争だ、戦争やるって考え方がしっくりくるぜ」
「それもまた、男の戦いの理由っちゅうもんや。
ウチにも負けられへん理由はある。あの星を喰らうなんて息巻いている怪物を、叩きつぶしたる。
ウチにもなぁ、この世界を壊したくない、守りたくない理由、あるわ。
せやからな、ここが踏ん張りどころやで、二人とも」
「がんばろうねぇ」
エイラがふわふわと笑うのへ、天川が軽く片手をあげて同意を示した。
「では行くか……道を開けるぞ」
天川の言葉に、三人は再び戦場へと躍り出る。
成否
成功
状態異常
第1章 第5節
ぐらう、とそれは吠え猛る。強靭なあごが、巨大な獣の頭部を喰らい、データの破片と化してそれを喰らう。
ヴァリフィルドが顔をあげた瞬間、獣はデータの粒子となって消えていった。どすん、と四足で着地したヴァリフィルドが、轟、と吠え声をあげる。
「――ハッ! 食らう、喰らうものか! 喰らうとはこうやるものだ!」
続いて間近にて爪腕を振るおうとしている獣に体当たりをして体を倒すと、そのまま馬乗りになって獣の喉笛に食らいついた。ばぐん、と喉部へを食いちぎるや、獣はデータの粒子と消える。
「うーん、すごい。敵も味方も大食い対決かな」
すあまがそう言って、目の前の獣へと爪を突き立てた。ぱん、とはじけた獣がデータに消える。
「わたしは、こいつ等は美味しくなさそうだからパス。カリカリの方がまだマシそう。ラダはわたしにいつも美味しいご飯をあげるべき」
軽口をたたきつつ、ぴょん、ぴょん、と獣たちの頭の間を飛び回り、その都度鋭い爪で一撃を加えて回る。全身鎧(ラダ)は、そんなすあまをわたわたと追い回している。
「でも、あんなに大きいと、お腹いっぱいになれるのかな?
ずっとずっとお腹がすいて、食べ続けなきゃいけないのはつらいよね。
そういう子は、生きてるのが辛いから殺してね、って言っちゃうんだ」
「暴食、と言うのも実に悪魔的で素敵だけれど。
あれは、飢餓だろうね」
パルフェタムールが、ふわり、と翼を広げながら戦場へと降り立つ。
「暴食と言うものは、ある意味で強欲に近いようなものさ。もっと欲しい。もっと食べたい……お腹がはちきれても、欲を満たしたいって言うね。
でも、あれは、お腹がすいてたまらないんだろう。であるならば――食事を楽しむ、と言う作法にはいささかかけている。
うん、食事とはやはり、愉しむモノだよ。暴食であれ、強欲であれ。より美食を求めるべきであれ、と言う事さ」
「んー? 美味しく食べるのが一番って事?」
すあまが小首をかしげるのへ、パルフェタムールが頷く。
「ふふ、その通り」
と、赤い唇に人差し指を立てて見せた。
「彼らがもっと笑顔になれるように、私も粗食を差し上げるとしようか」
「ん、お料理かな? 材料は、あっちだ」
ぴょん、とすあまが飛び出す。同時、パルフェタムールが翼を広げるや、刃のごとく硬化した白羽が、終焉の獣たちを次々と切り裂いた。ケミカルな体液を、血のように吹き出し暴れる獣たち。それを仕留めていく、すあまの爪と、ヴァリフィルドの顎。
「素材は生が一番ではないか?」
「料理をするのもたまにはいいものだよ?」
軽口をたたくヴァリフィルドに、パルフェタムールは優し気に微笑んで見せた。
「わかる。生のお魚も好きだけど、焼いたお魚もぱりぱりで香ばしくて好きだよ」
すあまの言葉に、パルフェタムールは微笑んだ。
「ふふ、わかっているね。それが美食さ」
「だが、向こうはそう言うのとは無縁そうであるがな」
ヴァリフィルドが言った。
「まぁ、いい。喰らいつくす――この無粋なるものどもをな!」
ヴァリフィルドが吠えると、二人と共に戦線へと突入していく。
今この場は暴食の宴。
はち切れんばかりに喰らいつくせ――この戦場を!
成否
成功
状態異常
第1章 第6節
特異運命座標たちと終焉の獣たちの衝突は続く。戦場のいたるところで衝突が発生しているが、しかし目指すは一点、スターイーターとパラディーゾ・原動天の居る場所である。
「ちっ……あたりの風景も滅茶苦茶、あっちもこっちも敵だらけ。
まさしく世界の終わりって光景だな……!」
ヒロは呟きつつ、その片手をあげた。同時、その手からは放たれた光が、さながら流星のごとく降り注ぎ、獣たちを打ち貫く。ケミカルな体液を噴出しながら、獣たちは進軍を止めない。果たして、そこに自意識はあるのか。或いは、何かに操られるだけの存在に過ぎないのかもしれない。
「だとしてもな……!
こっちの世界も、故郷の練達も、これ以上荒させねぇぞ!」
「その通りです。伝承国に、彼のような怪物を連れて行くわけにはまいりません。
たとえ仮想の世界とて、この世界には生きている方々がいるのですから」
頷き、イデアが恭しく一礼。同時、周囲に浮かぶドローンライフルが、自律可動しつつ一斉に砲火を打ち鳴らした。たたたん、とリズミカルに歌うライフルが、ヒロよってダメージを受けた獣たちに、トドメとばかりの銃弾をお見舞いする。
獣たちはダメージを受けつつも、蠢くように口を開いた。同時に放たれたケミカルな光線が、地を薙ぎ払うように特異運命座標たちに迫る。
イデアは跳躍して、それを回避――、
「このまま敵を引き付け、引き連れましょう。隙を見て攻撃を」
「了解です」
と、頷いたのは傍にいた蒲公英である。
「斬ることに関しては、お任せください。ええ、終焉獣の名を冠する以上、歯ごたえはあるとしても、言ってしまえばただの雑兵!
恐るるものではありませぬ……!」
「なら、回復は『シャルロットちゃん』の役目って奴ね?」
ぐっ、と胸を張るシャルロット。が、すぐにこほん、と咳払い。しおらしく頬に手をやってみせると、
「いいえ、神に仕えるものとして、皆様の身を守るのが私の役目。オホホ。
ちょっと( ˘ω˘)スヤァってしてる間に最終決戦イベントが始まってましたが、なるほど、こういう時に健気に皆様を助けるのが、私の役目ですわ」
「あー、とにかく、背中は任せられるんだな?」
ヒロが言うのへ、シャルロットは頷いた。
「お任せくださいませ! 私、役に立ちますわよ?」
シャルロットが、ロザリオを手に天に掲げる。同時に、さわやかな光が降り注ぎ、特異運命座標たちの傷を癒した。
「……と言うわけで、この戦線は維持してみせますわ!」
「お願いします。その分、私達が切り込みます」
デイジー・ベルが頷いた。
「情報(データ)を喰らう。それは、知識を得たい私にとっては、共感する事。ですが、それ故に、世界を終わらせることには共感できない」
「あら、何か言いたいことある系ですか?
私は、あの原動天の言いたい事にはあんまりティンと来ないですけど」
シャルロットが言うのへ、デイジー・ベルは頭を振った。
「いいえ。この場にて、敵と語り合う事はありません。ただ撃滅を以って、世界捕食への意義とする。
……シンプルに言いましょう。目の前の相手は、全部この手で砕きます」
「おっけー! そういうのは好きですわ!」
シャルロットが笑った。
「さぁ、シャルロットちゃんのヒロインアピールですわよ! 皆様、突撃を!」
「了解いたしました」
イデアが奔る! 戦場を軽やかに跳躍しながら、次々と獣たちに銃撃をヒット! そのまま次なる獲物へ、次なる獲物へ、攻撃を仕掛けて敵を釣り上げる!
「イデアさんのつってきた敵に範囲攻撃を仕掛ける! 体力の減った奴を頼むぜ、蒲公英さん、デイジー・ベルさん!」
「承知――!」
イデアが集めた敵の群れの中に、比呂が再び光をふらせた。流星のような光が次々と獣を貫き、その合間をぬって蒲公英が接敵。その鋭い刃で、次々と首を刈り落としていく!
無音・そして瞬殺! 刃が獣を散らし、それを追うように放たれたデイジー・ベルの骨腕が、未だ立つ獣たちをまとめて薙ぎ払った! 払い飛ばされた獣たちが、そのまま骨の手によって握りつぶされ、鮮やかな体液をあたりにまき散らす。
「うわ、怖。皆味方で良かったですわ、オホホ」
などとぼやきつつ、シャルロットは絶え間なく言回復術式を編み上げる矢、仲間へ向けて解き放ち続ける。
かくして戦場で出会った仲間による連携は、この時獣の群れ不覚迄切り込んでいった。
成否
成功
状態異常
第1章 第7節
終焉の獣の進軍は続く。その中を縫いながら、鬼丸は手にした刃を輝かせた。
「目標、巨大魔獣とその使役者――けど、まずはその周りから片付けないとだね!」
鬼丸は跳躍すると、空中で鉄騎魔神モードへと変形を遂げる。同時、その脚部から、いく条もの青色の光線が解き放たれた。空気を凍らせながら宙を疾駆する青の光線が、次々と獣たちを狙い撃つ。正確に足元を穿たれた獣たちは、瞬く間に氷結状態へ陥り、その進軍を止めざるを得ない。獣たちが足を止めた刹那、クシィがその手にナイフを煌かせ、一気に接敵。獣の喉笛を掻っ切って、ケミカルな体液を噴出させた。
「ハッ、暴食ってやつか? 大いに結構――けど、俺の好いた男はとにかく強欲なんだ。
このままいけば、この世界をの全部を手に入れる予定なんだよ!
そんなわけだから、お前らにくれてやる世界なんてのはねぇ! 一片たりとも! なくなってもらっちゃ困るッ!」
好いた男の顔を思い浮かべつつ、乙女クシィは次々と獣を切り裂いて回る。が、獣もやられっぱなしと言うわけではない。どうにか拘束から逃れた獣が、その爪腕を鋭く振るった。クシィの背後から迫るそれを、しかし飛び込んできたエクレールが受け止めて見せる!
「おっと、後方不注意だね」
「すまねぇ、ツケといてくれ!」
前方へ駆け出すクシィを見やりながら、エクレールは発生させていた力場を、力強く圧し返して、獣の爪を押しやった。
「君達には色々と興味が尽きないが――危機的状況を打開しないといけないのでね。『財団』のためではなく、『僕たち』のために。全力で対応させてもらうよ」
力場を解除すると同時に、エクレールは後方へ飛ぶ。そのまま杖を取り出すと、力強く振るった。刃の様なエフェクトが幾重にも重なり、飛翔。着弾した周囲に、苛烈な斬撃のごとく破裂する。
「僕の得手は、Mアタック……それに、君達がどれだけ硬くても、意味のない攻撃だよ。数は多いみたいだけれど、数だけで僕たちに勝てると思わない方がいい」
「そうですっ! 数が多いなら、冒険者にはそのための戦い方がありますっ!」
カノンは魔術書を掲げると、その中に秘められた莫大な魔力を解き放った! 雷の如きエフェクト共に放たれる魔力波! エクレールの攻撃によって気力をそがれた獣たちに、追撃のごとくお見舞いされる、雷の魔力!
ばぢん、と音を立てて、それがはぜた。さく裂する雷が、獣たちをまきこなんで強かに打ち据える!
「あなた達は、確かに強敵です。パラディーゾも、星喰らうとする怪物も。
でも、巨大なる困難を前にしてただ屈するほど、冒険者は諦めの良い存在ではありません!」
「その通りだ。クシィ君、敵をまとめろ。エクレール君、カノン君、鬼丸君。範囲攻撃でまとめて吹き飛ばすぞ」
「しょうがねぇな、俺を巻き込むんじゃぁねぇぞ!」
クシィが叫び、獣たちに斬撃をくわえ、自身の方向へと誘導する。一方、神父は静かに呪文を呟き、術式を編み上げる。
「一点集中だ。行くぞ、皆」
神父の声に、皆が頷く。
「いくぞ、瑪駕閃光砲・捌式(メガビームキャノン・アハト)!」
鬼丸が、手持ちの巨大なビーム砲を構える。
「インタラプト、撃ちます!」
カノンが魔術書を掲げ、雷のエフェクトを観に纏う。
「ふむ、僕のスキルには名がないが……」
エクレールが言うのへ、
「安心しろ、俺にもない」
神父が肩をすくめた。
「おや、では一緒に、ナナシの一撃と行こうか?」
四人・四種の攻撃が、今まさに解き放たれる! 強烈なる光の奔流・或いは激しい雷の魔陣・苛烈なる火炎の暴風・そしてさく裂する刃の魔術。それぞれが一か所に集まり、苛烈な大爆発を巻き起こした。それが周囲の空間ごと獣たちを飲み込む――刹那、四人の近くに飛び込んできたのは、クシィだ。
「巻き込むなっつっただろ! いや、巻き込まれてはないけど、結構ギリギリだったぞ!」
「君なら避けられると信じていた」
そう神父が言うのへ、
「本当か? お前眼を見て言ってみろ?」
おうおう? とにらみつけるクシィと、視線を逸らす神父である。
「っと、まだまだ敵の数は減っていないよ!」
鬼丸がそう言うのへ、皆は再び構えた。なるほど、敵は次から次へとやってくる。が、こちらもただ防戦一方と言うわけではない。確実に、戦線を押し込んではいるのだ。
「続けて行きましょう! とにかく、目標までたどり着けなければ、私たちの負けです!」
カノンの言葉に、エクレールが頷く。
「そうだね。では、もう一度、今の攻撃と行こうか」
「うん! さぁ、皆、構えて!」
鬼丸の言葉に、クシィは、
「今度は俺も攻撃に参加すっからな!」
叫び、不敵に笑った。
かくして、五人の放つ範囲攻撃が、戦場の一角を再び爆発に彩った。
成否
成功
状態異常
第1章 第8節
「鋼鉄国・虎帝! 夢見・マリ家! ここに見参なのです!」
じゃきぃ、とポーズを決めて見せるマリ家。白き虎の鎧を着た虎が、今終焉の戦場を駆ける!
「タイガーソウル! 行きますよ! いざ、戦場へ!」
「……っと、あれが『鋼鉄』の皇帝の一人か。なるほどなるほど」
肩をすくめつつ、ゼロは笑う。
「なんとも、鉄帝とは随分と違う。そうだね、ここはR.O.O。現実じゃない。
……けど! それ故に! ボクはここで鉄帝国の名を掲げよう!
うん! パラディーゾだのログアウトがどうだのボクはもう考える事に疲れた!!
目の前の敵をぶっ飛ばせば鉄帝国の勝ちだ!! 鋼鉄や正義や伝承とかは知らん! 鉄帝の勝ちだ!!
ボクは鉄帝人としてこの戦場に来ている、ROOや敵方の思惑など知らん!!」
ストームブリンガーを掲げ、ゼロは突撃する! 巨大なる終焉の獣、その顔を、腹を、腕を、斬って捨てる!
「なるほど、シンプルだ。君達をぶった斬ってすり潰してぶっ飛ばせば良いんだろう!
あちらが獣ならボクだって獣になれば良い、闘争とはそういうものだ!!」
その宣言のごとく暴風のごとく戦う、ゼロ! ぴょん、と飛び込んできたマリ家が、背中合わせに不敵に笑う。
「良いね、鋼鉄の戦士にふさわしい――」
「違う! ボクは鉄帝人だっ!」
「えっ、ちょっと、あれっ!?」
マリ家をおいて飛び出すゼロ。慌てて飛び出すマリ家。二つの嵐は、周囲の敵をまとめて薙ぎ払う。
「あの、ここはR.O.Oだから――」
「しらないっ! そう言うの考えるの疲れたっ!」
「ええっ!? ま、まぁ、でも、頼りになるからヨシッ!」
バルカン掃射で敵を蹴散らすマリ家と、その攻撃を利用しつつ、敵を蹴散らしていくゼロ。鉄帝・鋼鉄。二つの似て異なる国を背負う戦士は、今まさに異国の地にてその戦果をあげていた。
成否
成功
状態異常
第1章 第9節
「……」
原動天は、動く戦況に些かつまらなさそうな顔をした。彼我の差は明白。明らかに、こちらの戦力の方が大きい。
だが、敵は……特異運命座標たちは諦めない。現にこうして、小型とは言え終焉獣の群れを突破しながら、原動天へと、スターイーターへと歩を進めている。
「……予想外に頑張るね」
少しだけ苛立たし気に、原動天は呟いた。このまますべてを潰して、世界を消滅させることが出来る筈だった。この世界を。この、嘘で塗り固めた世界を。
でも、奴らは、彼女は……此処を守ろうとしている。
どうして?
あなた達には、何の縁もゆかりもないはずなのに。
「どうして……」
原動天は呟いた。戦局は動く。
正義国から、せい騎士たちの第一陣が到着したのは、その時であった。
「正義国聖騎士団、第一陣!」
部隊指揮を執るR.O.Oのサクラ(p3p005004)が声を張り上げた。
「これより、我々は世界を守るための戦いを行う!
我がロウライトの神旗の下に集え!
全軍、突撃!」
『God Save(神の加護を)!』
無数の終焉の獣の群れに、正義騎士団第一陣が雪崩を打って突撃する!
第1章 第10節
「正義騎士団が到着した……? ま、まさか!」
ハルツフィーネは、ぴょん、とクマさんにしがみつきながら、戦場を飛んだ。撃墜の危険性はあったが、それでも行かずにはいられない。と言うのも……あの子が、来ているかもしれないからだ。
「……! ああ、案の定……!」
思わず血の気が引くのを感じた。ハンマーを振り回し、今まさに終焉の獣へと飛び掛かったのは,R.O.O世界におけるアンナ……つまり、ハルツフィーネ自身なのだ。
「てやーっ!」
可愛らしい声と共に、ハンマーを叩きつけるアンナ。その手に持つのは、聖遺物、『ミルフィールの神槌』に相違ない。慌ててハルツフィーネが地に降り立つと、顔をぱぁ、と輝かせたアンナが、手をふる。
「まぁ、フィーネ様! やはり参戦なさっていましたのね!」
「のね、じゃありません。貴女はどうして、こんな所に……」
頭を抱えるハルツフィーネに、アンナは笑った。
「それはもちろん、聖遺物を継承したものとしては、世界を救うのは当然の義務です」
ハルツフィーネが頭痛を覚える。言いたいことは山ほどあったが……此処でアンナを死なせるわけにはいかない。
「貴女が向こう見ずな所は私がよく知っています……。仕方ありません。共に戦いましょう」
「まぁ! 嬉しいです! ふふ、頑張りましょう、フィーネ様!」
にこにこと笑うアンナ、ハルツフィーネは嘆息した。不安の種が、一つ増えそうだ……。
成否
成功
第1章 第11節
かくして、二つの聖遺物を擁する正義騎士団の参戦により、戦局は強く人類側へと傾いていた。無数にいる終焉獣の相手を、正義騎士団に任せられるようになったのは大きい。
「……正義騎士達か。聖銃士は来ていないヨウダナ……」
Goneがそう呟くのへ、P.P.は笑ってみせた。
「安心した? それとも、残念?」
「何のことダ。正義国の行く末も、『ヤツ』の生死も……俺ノ知った事では無イ」
「はいはい、そういうの良いから、サンディ……いや、Goneよね。ごめん。
アンタの説教が効いたんじゃないの? 言ったんでしょ、守るために戦えって」
P.P.の言葉に、Goneはしばし思案する様子を見せた。
「……どうでも良い事ダ」
「Siki、こいつ素直じゃないぃ」
P.P.がそう言うのへ、Sikiが笑う。
「ふふ、2人とも、と思うけれどね。
さて、私も親愛なる聖銃士サンディくんと、この世界のために頑張るとしようか。
……私だって、この世界で沢山の縁を紡いだからね。一つたりだって、食べさせてやるもんか」
「そうね。何も見えない真っ黒い空なんて、クソ喰らえよ!
開けない夜も、止まない雨もない!
この世界に、澄み切った青空を取り戻すわよ!」
「行くゾ」
Goneが影へと消える。P.P.が、Sikiが、駆けだす。
「ねぇ、君ら、私の後ろに下がっておくべきじゃない? 私のパラメータ、高いよぉ?」
「不要」
「大丈夫!」
Gone、そしてP.P.が叫んだ。誰も、自分以外の誰にも傷ついてほしくない。だから傷つくなら、自分が前に出る。自分が、2人を守る。そう思っていたから。
誰もが素直じゃなくて、誰もが優しくて、勇敢だった。
「まったく、もう!」
sikiは呟くと、息を大きく吸い込んだ。そのまま吐き出す青き竜の吐息が、終焉の獣の身体を焼く。同時、つっこんだP.P.が、巨大な鎌による斬撃を見舞った。身体から吹きあがる、煉獄の炎。P.P.の眼が見開き、力を込めて敵を裁断する。
ぐるり、と身体全身を使って敵を裂断。そのまま次の獲物を、鋸のように回転しながら切り裂く。
「Gone!」
「オウ」
その影から染み出るように現れたGoneが、手にした大鎌を力強く振るった。激しい風が刃となって、目の前の獣たちを細切れにする。
(二人が前に出過ぎている。俺がもっと、前へ)
(GoneとSikiは傷つけさせない……あたしがもっと、前へ)
(二人が傷つくのも、デスカウントが増えるのも、嫌だから。私が、前へ)
前へ。前へ。大切な仲間のために。大切な世界のために。
今はただ、前へ。
成否
成功
第1章 第12節
「うわぁ、聖騎士団来ちゃったの!? シェアキムは、シェアキムは来てないよね!?」
あわてるきうりんに、かぐやがが頭を振った。
「いやぁ、教皇はここまで来ないかと」
「だよね! いや、ちょっと焦った! いや、でも十の聖遺物がどうのこうので死んじゃうかも、とか言ってるんでしょ!? 困るよ! シェアキムは教皇庁で座って優雅にお茶しててもらわないと! 聖遺物とかの力を借りなくても、私達で何とかしちゃえば問題ないよね! って言うことで、突撃だー!!
まずは実演販売だよ!ㅤみんな美味しそうに食べてね!!」
きうりんがその無防備な姿をさらす――その姿に釣られた獣たちは、我先にと押し寄せてくる。が、きうりんは死を恐れない。なーにが死だ。殺せるもんなら殺してみせろ!
「その前にお腹いっぱいにさせてやる!」
「お任せください! では私のこの! この竹槍を!
ふふふ、正義国の10の聖遺物に隠された11番目の聖遺物、そうロストナンバー! それがこの竹槍ですわあああああああ!」
ぐおん、と思いっきり振りかぶって――。
「なにがスターイーターじゃ! 星よりもたけのこの方が美味しいに決まってますわ!!!! うおおおおおおおーーーーーー死ねええええええええーーーーーーっ!!」
思いっきりぶん投げる! かくして自称十一番目の聖遺物が、唸りをあげて宙をかける! 次々と串刺しになっていく獣たちが、ぎゃあ、と悲鳴を上げて消滅!
「蕭条さん!」
「了解です!」
蕭条が、竹槍に続く。竹槍の衝撃波でダメージを喰らった獣を、手刀を文字通り刀のように鋭く放ち、その足を切り裂いていく。
「まったく、星なんて食べちゃだめですよ……そもそも、たべたても大丈夫なんですか? 胃とか大丈夫なんですか? 気になって気になって……嘘です、細かいことは後で考えます。今はとにかく――」
「道を! 開くでありますッ!」
ゼストが叫ぶ。
「このゼスティアンいる限り、この世界を終わらせなどさせないであります……! ゼスティアン、任務了解!
目標、原動天! いや、そこにつながるまでの路を!
切り開け、フルパワーァ、ゼタシウムゥゥ……シュートォ!!」
轟、轟く光線が、一直線に戦場を貫いた。爆発する高熱が、獣たちを飲みこんで爆発させた。後に残るは抉れた大地。だが、すぐにそれを埋めるように、増援の獣たちが現れる。
「道をふさぐってなら、何度でもこじ開けてやるんだ!」
ルージュが叫び、飛び込んだ。巨大なハンマーを四方八方に振るい、放たれる『愛の力』で、次々と周囲の敵を消し飛ばしていく。
「おれはなぁ、この世界でしか存在できないんだぞっ!
アバターって言われたって、現実にこの姿で出られるわけじゃないんだからなっ!
おれにとって、この世界が全部で、この世界が現実なんだっ!」
ルージュが着地した瞬間、獣たちが一斉砲火を放つ。ハンマーを掲げて、受け止める。痛い。熱い。現実のような痛み。違う。此処が、現実なんだ!
「お前にとって世界が偽物だったとしてもな。
この世界が正しく、自分の生きる世界なやつだって存在するんだぜ!!」
それは、この先にいる敵に向かって。
世を怨み、世を憎み、そして壊そうとする少女へ向けて。
「待ってろよ! ぜったい、ぜーったい! やっつけてやるからな!」
いたくても、あつくても。今この場で死んでも。必ず、必ず、突破してみせる!
「なら、そういうのは、まかせるよ! 私は醜くて悍ましくて汚くてクズだからね! なんか顔合わせづらいから、道はわたしが造る!」
きうりんが叫び、再び敵を引き付ける。
「私ごとうてー! 十一番目の聖遺物!」
「承知ですわああああああああああ!」
ぐおん、と振るわれる竹槍が、敵の群れを貫いた。きうりんごと。
「ルージュさん、どんうぉーりーですよ。ひとりで頑張らなくても、皆で頑張れば。
あ、私めっちゃいいこと言いましたね。まぁ、解決手段はパワーなのですが。と言うわけで私も行ってきます」
と、蕭条が敵陣へと突っ込む。
「さぁ、参りましょう、ルージュさん! 皆の力で、この難局を切り抜けるのであります!」
そうだ。
そうだとも。
この世界が、ルージュにとって現実の様なものであれば。
その世界で紡いだ縁も、仲間も、現実なのだから。
「わかったよ、にーちゃん、ねーちゃん!」
ルージュは笑った。そして誓う。必ずみんなで、この世界を救ってみせる!
成否
成功
状態異常
第1章 第13節
「もうすぐ……もうすぐだよ!」
戦場を走りながら、ネイコが叫んだ。目の前にそびえたつ巨体。星喰らいの怪物。スターイーター。
多くの特異運命座標たちが道を繋ぎ、その偉容は眼前へと迫っている。
「ここからでもはっきり見える……でも、その足元には……」
ネイコが言った。スターイーターの傍には、原動天が、もう一人のスティアが、待っている。
「スティアさんは、あの子と……もう一人のスティアさんと、お話ししたいんだよね?」
ネイコの言葉に、スティアは頷いた。
「うん……私の記憶を持つ、もう一人の私。
あの子が、深く悲しんでいることだけは分かる……。
だから、このままにしておくわけにはいかないの!」
スティアが、意を決したように頷いた。
「あの子の哀しみ……アシュレイさんを殺したのは、私のお祖父様。
スティアちゃんの家族が死ぬことになったのは……私の家のせいなのかもしれない」
「サクラちゃん……それは……」
ちがうよ、とスティアは言おうとした。でも、もう一人のスティアにとっては……原動天にとっては、違わないのかもしれない。
自分と同じ記憶を持つ少女が持つ、憎悪。それが、サクラ……桜にも向けられているのだとしたら。
なんて悲しいのだろうか。桜の優しを知りながら、彼女は絶望と憎しみに溺れてしまっているのか……。
「そんな私に、パラディーゾを弾劾する資格なんて、きっとないと思う。
……それでも! それでも……!
そのために、この世界を滅ぼさせるわけには、いかないから……!」
桜の言葉に、スティアは頷いた。
「うん。そうだね……そうだよ。
あの子は、サクラちゃんが、私に優しくしてくれたことだって、知ってるはずなんだ。私に優しくしてくれた人たちが、暖かかった思い出もあることを、知ってるはずなんだ」
「でも今は、憎しみに囚われて、その事実から目を背けてしまっている……」
ネイコの言葉に、スティアが頷く。
「だから……私に優しくしてくれた人たちの想いを、サクラちゃん、ネイコちゃんたちの気持ちを、踏みにじるような行為だけは、絶対にさせない。させちゃいけないんだ!」
スティアは、二人の瞳を見た。そして力強く、頷いた。
「力を貸して、2人とも。絶対に、あの子と会う。そして……わからせて見せる!」
「まかせて、スティアちゃん。絶対に、たどり着こう。そして、全部を救うんだ」
ネイコが微笑む。
「でも、その為には先ずをアレを突っ切らないとね。
それじゃ、いこっか!」
ネイコの指さす先には、まだ多くの終焉の獣たちがいる。
これを突破する。三人で。皆の力で!
「もう一人のスティアさんに想いを届ける為にっ!」
ネイコが言った。
「パラディーゾ……許してとは言えない。でも、約束する。貴女の怒りも苦しみも悲しみも、全部受け止めるって!
行こう、スティアちゃん!」
桜が言った。
思いは一つ。
この道を突破して。
「行くよ、皆!」
全部を、救ってみせる!
成否
成功
第1章 第14節
道は開かれる。
多くの仲間の力と、想いを武器に。
特異運命座標たちは、今、決戦の場へと導かれていた。
「お姉様」
しきみが、呟いた。
相対する。愛しい人同じ顔をした、敵と。
「『誰かの記憶』をお持ちなら私の事は分りますよね? 分らないとは言わせません!
そう、貴女の! 配偶者! しきみ……いいえ、しきみ・ヴァークライトです!」
原動天が、流石にぽかん、とした表情を浮かべる。ふふ、としきみは笑った。
「今結婚したっけ? って思いました? お姉様ならノールックで書類にサインしますから大丈夫です。合法です」
「えーと、しきみちゃんのことは覚えてるけど、たぶん、『スティア』も私も、結婚の方までは……?」
「合法です! ほら、配偶者欄記載アリ、と!」
ばっ、と公的書類を掲げるしきみに、原動天は困ったような顔で小首をかしげると、取り合えず迎撃する形で公的書類を裁断した。
「ああっ、私の公的書類がっ!」
「えーと、その」
原動天は困ったような顔をしつつ、
「なんか、ごめんね……また遊びに来て?」
と、しきみを斬り捨てる。しきみはなんか満足した様子で消滅(ログアウト)した。
「スティアーッ!」
シラスが叫んだ。眼下には、原動天の少女がいる。
スティア、と呼んだ。
現実のスティアとたがわぬアバター。
そのうつしみのパラディーゾ。
スティア、と言う名で呼ぶのを、抑えられなかった。
自然と、そう呼んでいた。
「シラス君、だね」
そうわらう原動天の表情は。
あまりにも、スティアに似ていた。
「お前がスティアだって言うなら世界が憎いばかりなわけないだろ!」
叫ぶ。否定するように。そうだと言ってほしいように。吐き出すのは、想いと、龍王のブレス。必中の圧壊のブレスが、上空から原動天を狙った。着弾。爆発――だが、ダメージを負いつつも、原動天は跳躍、シラスの背後にいた。
「ううん、空っぽの私の中には、憎しみだけが詰まっているよ」
振り下ろされる、刃。シラスが地に叩きつけられる。
「シラスさん……!」
シフォリィが、叫び、叩き落されたシラスへと駆け寄る。大慌てで回復術式を編み上げるが、シラスの身体が光と消えて(ログアウト)いく方が早い。
「くそ、待ってろよ、スティア……」
悔しげにうめくシラスに、原動天は微笑んだ。
「また来てね、シラス君」
原動天はぱん、と手を叩いて見せる。
「正直ね、ちょっと予想外なんだ。皆がこんなに必死になって、私を討伐に来るの。もう少し、てこずるかと思ったんだけど」
「また会えたな、原動天の少女」
真読・流雨が言う。
「憤怒とは悪を憎む正義の心、でもあるのだろうと。君を観ていて、そんなことを思い出した。
悪を憎み、不義を憎み。最後は世界が許せなくなってしまった。魔種になってしまった僕の団長だ」
原動天は、微笑んで、答えない。
「団長が許せなかったのは、世界なんかじゃない。一番許せなかったのは、自分自身なのだと思う。
……君は、どうなんだ。本当に許せないのは、何なのだろう。聞きたかった。
この世界から外に出ることもできたが、この世界に残ったのは君への「敬意」のようなものだ。
そして、好奇心でもある。
君にとって……世界とは、憤怒の対象だけなのか。他に望むモノはないのか」
「そうだね」
原動天が微笑んだ。
「私に明日があったら、少しは悩んだかもしれないね」
「ない、と?」
「私達が何のために生まれたのか、考えたことある?
世界を滅ぼすため。このR.O.Oって言うゲームを壊すため。
私達が生きるって言うのは、つまり世界を壊すって事だよ」
今回はここまで、と、原動天は言った。
「次に来たら、もっとお話ししてあげる」
「その前に、ここで君を喰らう」
流雨が、爪を突き出した。飛び掛かる――が、斬! それよりも先に振りぬかれた、青い原動天の刃が、流雨を真っ二つに裂いていた。
「ごめんね。ディウシムの時よりも、私は強いよ」
「違いない。が、僕はもっと強くなれる」
光に包まれて、流雨が消えていく。リスポーン地点へと戻される。
「……食べるのはリュートも好きっすけど、全部食べちゃったら次が食べられないっすよ」
リュートが飛び込んでくる。じゃれつくような一撃を、原動天は刃で受け止めた。
「なんで、全部失くしちゃうっすか! 全部失くしちゃって、その後は、何も残んないっすよ!?」
「それが目的だからね」
原動天が刃を振るった。速い! 一撃一撃が重く、それが何度も重なるように放たれる! リュートは受け止めながら、後方へ跳躍。
「仲良くできないっすか? 御飯も、皆で食べた方が美味しいっすよ」
「私にはね。一緒にご飯を食べる相手って、いないんだ」
ひゅう、と冷たい風が奔る。蒼い剣閃が、リュートを貫いてた。
「死んじゃった……違うね。最初から、いなかったんだ」
「そんなこと……」
リュートが寂しげにつぶやきながら、消滅(ログアウト)。シフォリィが悔しげにうめいた。サポートはしている。確実に、回復術式も編み上げている。が、目の前の怪人は、あまりにも強い!
「どうして……どんなに酷いことにあっても、どんな酷い人間であろうと、ただ憎しみで壊すのは間違っています、……間違っている、筈です!」
「じゃあ教えてよ……この憎しみを、むなしさを、どうすればいいのか」
原動天は言った。
「あなたも苦しんだのかもしれない。でも、あなたはこの世界を受け入れたの?
だったら教えてよ。私はどうやって、受け入れればいいのかな?」
「聞く耳持つなよ、どうせ癇癪で暴れてるだけだ」
Tethが言った。
「折れるなよ? 此処で折れたら、俺様たちが諦めたら、本当に世界は終わるぞ」
シフォリィにそういう。
「サポート頼むぞ、シフォリィ。目の前で俺様たちが死んで、消えて、それでも……折れるなよ、動き続けろ。信頼してるぜ」
「はい……!」
Tethが、大型ハンドガンを構える。同時、その銃口から雷が巻き起こり、原動天を狙った。
「よぉ、この間ぶりだな、第九天さんよ。デカいペット連れてお散歩か?」
撃ち放つ! 原動天は刃を振り払い、雷のバレットを切り払った。同時、その隙をついたTethが、ハンドガンに取り付けられた刃で肉弾戦を試みる。
「あの時はいいようにやられたが、今回はそう上手くいかねぇぜ!」
「ううん、今回も同じだよ!」
振るわれた刃が同士が交差する。原動天の動きは涼やか。だが、ハンマーで殴られたみたいな衝撃を、Tethは感じ取った。
「ちっ、前よりさらに厄介になってやがるな……!」
Tethが刃を振り払い、銃撃。原動天は跳躍してそれを回避すると、一足飛びにTethの眼前へと迫る!
「うん。今度は全力全開、だからね?」
振るわれた目にも見止まらぬ斬撃を、Tethは半ば本能で受け止めた。が、衝撃に、そのままフッ飛ばされる。
「ぐっ……!」
地面にたたきつけられたTeth、その首元に、冷たい刃が触れた。
「……いいぜ、また戻ってくる」
くすりと笑った原動天が、刃を振り下ろした。鮮血がほとばしり、Tethが消滅(ログアウト)する。
原動天、未だ健在。
討伐に至るには、まだ遠そうであった――。
成否
成功
状態異常
第1章 第15節
さて、決戦の場に、特異運命座標たちは突入した。迎え撃つはパラディーゾ……同時に、星喰いの怪物、スターイーターである。
特異運命座標たちがパラディーゾ、原動天の少女と戦うなか、その激戦の地を突破し、スターイーターに迫ったものもいる。
「にゃっはっは! でっかいなおい! ほんとに山のようじゃのう!」
ケタケタと笑いつつ、玲はスターイーターの身体に飛び移る。ごつごつとした皮膚の感触を靴裏に感じながら、その身体を駆けのぼった。
「デカブツと言えど、頭を潰せば動けまい! わらわが狙うのは、頭・顔面・額っつらぁ!」
ぴょん、と眼前に飛び出し、未だ動かない、その顔面に向けて銃を構える。
「星喰いよ、食い足りぬのならば妾の弾丸をとくと食らうがよい!」
斉射――無数の銃弾が、星喰いの顔面へと突き刺さる。その分厚い皮膚を貫いて、確かに銃弾は肉を裂いた――だが、その一撃が致命打とはなり得ない。
ゆっくりと。星喰いが動き出す。眼に映る、赤い光。それが飢餓に虚ろに輝くと、その巨体からは塑像も出来ぬような速度で、突如としてその剛腕が振るわれた。玲は空中で身をひねるが、その巨大な手からは逃れられない。ぐり、と握り込まれるや、星喰いはそのまま、玲を口へと運ぶ。
「ま、じ、かぁぁぁぁ!」
叫ぶ玲。牙がその身体を引き裂くのに、僅かな時間も必要なかった。
轟、と星喰いが叫ぶ。目覚めた星喰いが、ゆっくりと進軍を開始する。
「動き出しましたね……」
壱狐が呟く。その眼が、智慧が、頭脳が、スターイーターのすべてを覗き込まんと蠢動する。
「……信じられない。あれだけの巨体、良く動かせるものです」
敵の脅威に舌を巻きつつ、その場から跳躍した。刹那の後に、その場に巨大な手が落着して大地を抉る。
「バグから生まれた以上、どこかにほころびがあるはず……!」
探す。探す。だが、その巨体に綻びなど存在するのだろうか? わからない。分からないが、探し、そこを突破口にしなければ、と壱狐は思う。
「ちっ……なんつぅバケモンだよ……!」
その巨体を睥睨しつつ、アクセルは言う。跳躍し、星喰いの後方から俯瞰するが、しかし壱狐の言う綻びなどは存在するのだろうか?
アクセルが本能的に感じたのは、生物としての強大さだ。まるで、捕食者に遭遇した被食者のような感覚……いや、それは怯えの様なものではなく、敵から発せられる強烈な飢餓感、食欲に当てられて、脳がそのように変換したのだろう。
「食らうってのか……この世界を、砂嵐までも」
アクセルは、槍を構えた。紅の槍。アクセルは再度跳躍。星喰いの右腕辺りに突撃して槍を突き立てた。わずかであっても……ダメージを与え続けるしかない!
だが、そんな特異運命座標たちの想いをあざ笑うかのように、星喰いは身体を震わせた。その角のような器官の先端が仄かに輝くや、まるで裁きの雷の如きエネルギーの奔流が、辺りを巻き込み、人も、獣も、等しく塵と化した。
成否
成功
状態異常
第1章 第16節
「……で、ZERO。どうなんだイ?」
と、戦場のただ中で、アイは言う。隣にたたずむ多次元侯爵は、ふむ、と唸った。
「分からないな」
「分からなイ?」
「うむ。汝の質問は、正義国の聖遺物について。
『幾多の世界を知っている私でも、現状の正義の機密がどうなってるかまでは分からない』。これが答えである。
もとより、世界から存在を消す、と言うワールドイーターの現れた地だ。食われていたとしても、不思議はないであろう?」
ふむ、とアイは唸った。
「もし、ワールドイーターに食われていたとしたら……」
「もしそうであるならば、我がありかを知っていたとしても、どうにもなるまい。アレに触れられるのは、貴様らの様なものだけだ。
だが、それは問題ないだろう。
我はこう考える。結局のところ、世界を生かすも殺すも、貴様等……特異運命座標次第だという事だ」
ZEROは言った。
「抗え。敵がどれだけ強大であろうとも。それが汝らの在り方であろう?」
「そうだネ。その通りダ」
アイは応えた。
「行ってくるヨ。世界を救い二。
この世界には僕の大事な友人がいるからネ。
絶対護るかラ」
アイはそう言って、戦場へと向かう。
戦局は、ここにきて大きく変わりつつあった。
成否
成功
第1章 第17節
戦局が動く。
終焉の獣たちは道を譲り。
星喰いは目覚め。
原動天は憎悪を燃やす。
そして、戦いは第二のフェーズへ。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
終末の獣は放たれ、星喰いの怪物は目覚めました。
彼らは原動天の指揮の下、伝承国へと向かっています。
今こそ決戦の時です。
世界を救うゲームを始めましょう。
●成功条件
すべての敵の撃破
●状況
決戦の時です。皆さんの前には、伝承国へと攻め込もうとしている終焉の獣たちとパラディーゾ、そしてスターイーターがいます。
このすべてを撃破しなければ、このクエストは完了できません。
総力戦です。やることはシンプルです。全滅させてください。
フィールドは、スターイーターによって食われ、荒廃した大地と化した伝承国の大地です。
あたりには何もありません。ただ大地だけがあります。
●第一節について
皆さんは、今まさに敵の軍勢の正面に立っています。
立ち向かうべき敵は、小型の終焉獣たち。そして、パラディーゾ・天国篇第九天 原動天の徒です。スターイーターには、まだ手を出さない方がいいでしょう。
小型の終焉獣を撃破しつつ、原動天の少女を撃破してください。
皆さんの行動により状況が進めば、節が進行するはずです。
●正義国の10の聖遺物について
現在、正義国にて、10の聖遺物を使用した援護攻撃の準備が進んでいます。
ラリーシナリオの節が進む際に、この援護攻撃が行われる可能性は充分にあります。
●重要な備考
皆さんは<ダブルフォルト・エンバーミング>系ラリーのどのシナリオにも、同時に何度でも挑戦することが出来ます。
●重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
R.O.O_4.0においてデスカウントの数は、なんらかの影響の対象になる可能性があります。
●重要な備考『ログアウト不能』
<ダブルフォルト・エンバーミング>ではログアウト不可能なPCは『デスカウント数』に応じて戦闘力の強化補正を受けます。
但し『ログアウト不能』なPCは、R.O.O4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』が敗北に終わった場合、重篤な結果を受ける可能性があります。
又、シナリオの結果、或いは中途においてもデスカウントの急激な上昇等何らかの理由により『ログアウト不能』に陥る場合がございます。
又、<ダブルフォルト・エンバーミング>でMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
予めご理解の上、ご参加下さいますようお願いいたします。
●敵NPC
スターイーター
今回の大ボスです。バグによって生まれた巨大な怪物。
特異運命座標たちが一度遭遇したため、ある程度のデータは入手されています。
なお、超巨大な怪物ですが、あくまで通常の1ユニットとして計算されるため、敵の全長の概念などを考慮する必要はありません。(例えば、近接攻撃でも凄いジャンプして顔面を斬りつけることができますし、足元から顔面を狙うには長距離レンジになる! と言うようなこともありません。もちろん、飛行すれば敵を攻撃しやすくなりますが、落下のペナルティも存在します)
以下のようなスキルを使用してくるでしょう。
クラッククロー
前方を強く薙ぎ払う巨大な爪。出血系列・ブレイク・飛
バーストブレス
長距離を貫通する一陣の火炎。火炎系列・乱れ系列
データクラッキング(獣)
データを喰らう餓獣の牙。高威力・ログアウト不能状態を付与する可能性あり。
パラディーゾ・天国篇第九天 原動天の徒
パラディーゾの少女。その外見や戦闘スタイルは、スティア(p3x001034)さんに酷似しています。
パラメータ傾向、スキル傾向などは、スティアさんのそれに非常によく似ています。
ただし、相手はシステム上大幅に強化されています。現実の七罪ほどとは言いませんが、相応の強敵であることは覚悟してください。
なお、原動天として、以下の特殊スキルを持ちます
データクラッキング(刃)
データを喰らう剣閃の冴え。高威力・ログアウト不能状態を付与する可能性あり。
精霊従属(獣)
ワールドイーター・スターイーター・終焉獣は、原動天の意向を順守する。
終焉獣
敵側の兵隊です。2mほどの、奇妙な外見をした二足歩行の怪物です。
大量にいる分、大ボス級の二人よりは御しやすくなっています。
蹴散らしつつ進んでください。
●味方NPC
当シナリオでは『各国のNPC』が援軍に訪れる可能性が大いに存在しています。
具体的には『正義』のNPCは皆さんと共に戦うためにこの戦場へと向かっています
以上となります。
それでは、皆様の活躍を、お待ちしております。
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