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シナリオ詳細

<Scheinen Nacht2022>星に願いを込めて

完了

参加者 : 29 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「「輝かんばかりの、この夜に!」」

 『Blue Rose』シャルル(p3n000032)とブラウ(p3n000090)が異口同音にイレギュラーズたちへ声をかける。イレギュラーズたちもまた同じように2人へ言葉を返した。
「集まって頂いてありがとうございます! さあ、行きましょうっ!」
 意気揚々と先導し始めるブラウ。その背中は以前より大きくなったように感じるが、その背へとシャルルは呆れ混じりにため息をつく。
「ブラウ、説明ゼロでいいわけ? 歩きながらでもいいから説明してあげなよ」
「ちゃーんと皆さん、チラシを読んできたに決まってるじゃないですか! でも勿論そのつもりでしたとも――ぴぎゃ!」
 ドヤ顔で振り返りかけたブラウ。その足が滑り、どってんと尻餅をつく。まあ、身長が伸び始めてもなかなか性質は変わらないだろう。
 シャルルやイレギュラーズの手を借りて助け起こされたブラウは、お尻についた雪を払い、苦笑いを浮かべながら今度こそ行きましょうと告げた。
「深緑に不思議な湖があって、紙飛行機を飛ばすと消えてしまうんです」
 歩きながら話すブラウの話によると、こうだ。
 その不思議な湖は手紙を紙飛行機にして、飛ばすことでどんな状況下でも届けることができる――という噂がある。真偽のほどは定かでないが、数年前に何名かのイレギュラーズも試していた。
 手紙を入れると消えること以外は、変哲もないただの湖である。この真冬に入れば水は冷たいし、飲むことだってできる。湖に入ってこれまでの手紙が見当たらないことを確認した幻想種もいるらしい。
「集まってきたってことは、皆も誰かに手紙を出したいんだよね。普通じゃない――普通には届けられない、届けたくない手紙を」
 この湖の噂で奇妙なところは、『どんな状況下でも届けることができる』ことである。
 例えば、相手が思い出せなくても。
 例えば、相手がどこにいるかわからなくても。
 例えば、相手が世界を越えた先にいたとしても。
 誰がどう確認したかもわからないのに、そのような噂が立っている。これもまた、噂が噂として広まる理由だ。真実味はなく、しかして興味を持つ一定の人間がいるから立ち消えない。
「いつもはただの噂かもしれませんけれど、もしかしたら、もしかするかもしれませんよ?」
 ブラウは小さく笑って、その身を横に避ける。視界が大きく広がり、誰からともなく感嘆の声が漏れた。

 毎年、12月24,25日は戦いの禁じられる日だ。
 どんな強者さえも剣を置き、輝かんばかりの夜に思いを馳せる。深緑に住まうとある魔女がヤドリギの木に祈りを込め、和への祈りは、満願への成就にも通じたと言う。
 この夜は今や、願いを捧ぐ夜へと変わった。ある者は冒険の成功を、ある者は恋の成就を、人々の思い描く――時として身勝手な――願いがこの夜には満ちている。
 そんな特別な日には、雪のように流星が煌めき続けている。静寂を保つ湖にも、また。
「輝かんばかりのこの夜なら――ね?」
「……まあ、そうかもね」
 星に願いを、手紙に想いを。
 イレギュラーズたちは各々散らばって、手紙を書き始めたり、さっそく紙飛行機へと折りたたみ始めるのだった。

GMコメント

●すること
 手紙を紙飛行機にして飛ばす
 湖のほとりで過ごす

●ロケーション
 深緑の森にある湖。OP中は夜ですが、24〜25日の間なら日中にきても構いません。夜は輝かんばかりの星々が湖に映っています。落ちたら危ないので灯り必須。寒いので暖かくしてきてください。雪は降っていませんが、多少積もっています。
 湖に落ちたら確実に寒中水泳です。

●紙飛行機
 ただの手紙では届きません。紙飛行機にしましょう。不恰好でも格好良くても、『想いのこもった紙飛行機』なら湖は呑み込んでくれます。

●NPC
 私の所有するNPCはお呼び頂ければリプレイに登場する可能性があります。
 尚、ブラウは湖のほとりで羊皮紙とペンを用意しているようです。シャルルは夜の湖のほとりを散歩するようです。
 いずれもお誘いがあればお客さまに合わせます。

●注意事項
 本シナリオはイベントシナリオです。軽めの描写となりますこと、全員の描写をお約束できない事をご了承ください。
 アドリブの可否に関して、プレイングにアドリブ不可と明記がなければアドリブが入るものと思ってください。
 同行者、あるいはグループタグは忘れずにお願い致します。

●ご挨拶
 文字書きのリハビリになります。愁です。見ていただきありがとうございます。
 輝かんばかりのこの夜なら、本当に遠くまで届いてしまうかもしれませんね。
 こちらの手紙に関して、PC様同士で了承が取れるのであれば『湖へ飛ばした紙飛行機が、いつのまにか相手の手元にあった』として構いません。ロールプレイのきっかけにもお使い下さい。
 勿論手紙を出さず、湖の周辺を散策する等の自由行動も可能です。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

●関連シナリオ
 Dear.(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2397)

  • <Scheinen Nacht2022>星に願いを込めて完了
  • GM名
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2023年01月12日 23時00分
  • 参加人数29/31人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 29 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(29人)

建葉・晴明(p3n000180)
中務卿
クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
セララ(p3p000273)
魔法騎士
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
キミと、手を繋ぐ
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
武器商人(p3p001107)
闇之雲
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)
白いわたがし
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
エストレーリャ=セルバ(p3p007114)
賦活
ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)
懐中時計は動き出す
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
虚栄 心(p3p007991)
伝 説 の 特 異 運 命 座 標
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)
復讐の炎
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
水天宮 妙見子(p3p010644)
ともに最期まで
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女
トール=アシェンプテル(p3p010816)
ココロズ・プリンス
瀬能・詩織(p3p010861)
死澱

サポートNPC一覧(2人)

シャルル(p3n000032)
Blue Rose
ブラウ(p3n000090)

リプレイ


 シャイネンナハトを祝ったカップルへ届くように、と心が紙飛行機を投げる。その瞳からはなかなかに虚無を感じさせ、手紙も呪いのような言葉が綴られているのだが――たかが手紙、実害はない。
 多少過激な内容の手紙が投げ込まれることもままあるだろう。それくらいには興味の惹かれる噂であるのだ。
 思い出せない相手にも届くと言うから、祝音も2通の紙飛行機を投げ入れる。元の世界で大切だっただろう人たち。名前と共にわからなくなってしまったもの。どうか自分であることがわかるように、白猫の縫い包みのイラストを添えて。
 チャロロも世界を超えた先へ。突然いなくなったことの謝罪と、いつか戻ると言う約束。それから近況を訪ねる内容だ。
(返事がくるとは思わないけど……皆が読んでくれたら嬉しいな)
 一思いに飛ばせば、まるで吸い込まれるように紙飛行機が湖へ潜って行った。

 ――拝啓、コルボ様。地獄は如何ですか。

 死人に手紙を出すなどまともではないと自覚すれど、止める理由はなく。キドーは久しぶりにあの男へ手紙を綴る。
 死人が現世に手を出すことはない。仮に彼がキドーの近況を知ったとて、地獄で指を咥えて見ている他ないのだ。いつかキドーが地獄へ行った時、悔しそうな顔を見るための挑戦状は、真っ直ぐに空気を裂いて湖へ飛び込んでいく。
 ほたり。頬を滑った雫にセレナは目を瞬かせ、手紙の消えた湖を見下ろす。
(届いてくれるかしら)
 家族を思えばやっぱり寂しくて、いつか帰れるだろうかと不安もよぎる。心配させまいと手紙には無事であり、日々のことを連ねたけれど、その慌ただしさも感じない今は風の冷たさばかりが残る。
 家族の温もりが、恋しい。
 手紙を出したい人は沢山いる。それは激動の一年だったからだとクロバは思う。
(でも、なんか今は違うんだよな)
 ふっと小さく笑って、クロバは手紙を書き出した。大した迷いもなく、さらさらと短い手紙を書き上げて湖へ飛ばす。返事など期待していないが、願うのはタダだから。
 あの男が色々なことを為そうとしてから暫くが経った。家族で、保護者で、どうしようもない大人で。それでも返事が欲しいと書き連ねるくらいの存在なのだ。
 魂さえもこの手紙は読めるのだろうか。ヨゾラは手から離れていく紙飛行機に目を細める。
 この肉体はヨゾラのものではなく、持ち主たる魂は最早観測されていない。
 観測される域から飛び出して、逃げ切れていたなら良い。自分達の観測出来得ない場所で幸せに過ごしていたらと思う。
 そんな想いを知ってもらえたら――そしていつの日か、再開できたなら。ヨゾラの想いを乗せた手紙が湖へ飛び込んでいく。
「鹿も紙飛行機を飛ばしたくって」
「いいね。一緒に行こうか?」
 シャルルの言葉にポシェティケトがふぅわりと笑う。クララが周囲を飛び回れば、まるで2人も輝かんばかりの夜の中を歩いているようだ。
「誰に出すの?」
「ワタシねえ、『家族』に出したいのよ」
 魔女のお姉様も大好きなお友達も。すぐ会えるヒトも会えないヒトも。沢山の大好きと息災を願って、ひとつひとつ丁寧に紙飛行機を飛ばすのだ。
「流れ星みたいね」
 まあ、消えちゃった! ポシェティケトがくすくすと笑ったなら、釣られたようにシャルルも柔らかく微笑んだ。
 リディアが特異運命座標となって5年の月日が流れた。けれどこの間、リディアが両親と再会を果たしたことは一度だってない。
 実家におらず、深緑での知名度を上げても情報はなく。かつて命がけでリディアを逃した2人は、もしかしたらこの混沌にいないのかもしれないと思わせる。
 けれど諦めたくなかった。どんな形でも生きていて欲しかった。――リディアの想いを伝えたかった。
 両親への想いと希望を込めた手紙が飛んでいく。手紙を飲み込んだ湖を、リディアは暫くじっと見つめていた。
 ソアとエストレーリャは連れ立って、けれど途中でまた後でと別れる。
(あまり字が得意じゃないから恥ずかしいな)
 それでも書きたい。書いていると胸が暖かくて、幸せな気持ちになるから。ソアは3年の月日を思い浮かべながら手紙を認める。長い月日を生きてきたのに、この3年はなんとも鮮烈で、それより前のことなんて霞んでしまった。
 きっと、彼のくれる時間に酔っている。ふわふわで、ぽかぽかで、幸せなのだ。
 一方のエストレーリャは、手紙には花の香りを添える。この香りをソアが嗅ぐのは明日か、明後日か、もっと未来か。
(その隣に僕が居られたなら、とても幸せ)
 彼女の全てを愛しているから、ずっと隣にいたい。大好きと愛してるを、いつだって隣で伝えるのだ。
 それから暫くして、エストレーリャはもう1通の手紙を飛ばす。いつかの未来――人間になった彼女へ届きますように。
 沢山の願いと思いが湖へ飛び込んでいく。けれどそこには『届いて欲しい』ばかりではない。
(この気持ちも、手紙にして飛ばしたら消えてくれるのでしょうか)
 届くかはさておき、手紙が消えることは確かだと鏡禍は紙飛行機を飛ばす。恋人への重い感情はまだ本人へ告げたことがない。こんな風に想われているなど、本人からすれば思っても見ないことだろう。
 自分だけを見て、考えて。他へよそ見をしないように閉じ込めてしまいたい――なんて。
 飛ばした手紙は届いて欲しいのか、否か。どちらにしても矛盾した行動に、鏡禍の顔には自嘲的な笑みが浮かんだ。
「あの時、紙飛行機に何書いたか覚えてる?」
「前、前ねぇ……覚えてない? かなぁ〜」
 タイムの問いかけに夏子ははてどうだったかと視線を巡らせ、しかしその手に持ったいつぞやの手紙をタイムが目ざとく見つける。
 どのように届いたかは定かでない。けれど折角だから読もうかと手紙を広げた夏子の読み上げに、タイムがぽんと頬を赤くした。
「は、恥ずかしいから!! ……というか、あれ? わたしには手紙がこないの?」
 なんで? と夏子を見上げれば、しまったという顔をして彼が頬をかく。まさか。まさか!
「し、信じられない~~~! あんなに沢山紙飛行機投げてたのに!?」
「確かに、明確に、タイムちゃん宛とは……書いてなかった、ね」
 目を逸らす彼に、タイムの頬が別の意味で赤くなる。ついでにつねられて夏子の頬もちょっぴり赤くなる。
「今日は絶対わたしの為に書いて!」
「モチのロンだよ! 超書くよ!」
 せかせかと書き出した夏子を横目に、タイムも怒りに任せて一筆。これでもまだこの人が好きなんて、馬鹿は自分も一緒かもしれない。
 けれど仕方ないとも思うのだ。だって7通の手紙を湖へ飛ばした彼が、振り返りざま小さく笑ってこんなことを言うのだから。
「でもまた来れると良いね。一緒にさ」

 セララとハイデマリーは揃って手紙を認め、紙飛行機へ折り畳む。
(サンタさん、どこかで見てるかな?)
 マリーとずっと楽しく過ごせるように、見ていたら是非願いを叶えて欲しい。
 一方のハイデマリーは遠くまで飛ぶようにと紙飛行機の折り方を工夫する。遠くまで飛ばす勝負、負けたくはない。
「「せーのっ」」
 2人の想いが遠くへと向けて飛び出す。手を握りあった2人の目の前で、それらはどこまでも並行して飛んでいく。まるで、いつまでも続く絆を示すように。
「それにしても、ブラウは随分背が伸びたね」
 びっくりしちゃったなあ、というイーハトーヴにシャルルも頷く。
 時間の経過は早いもので、この湖に来たのも久しぶりだった。伝えたいことを伝えなければ、あっと言う間に時は過ぎてしまう。だから今日も伝えなくちゃと彼はシャルルを見た。
「今日も一緒に過ごしてくれてありがとね、シャルル嬢」
「ふふ、ボクこそ」
 喋っても喋らなくても、そこに2人いるだけで特別な時間。思い返せばそれは勇気や気力を与え、前へ進む力をくれるのだ。
 トールはダメで元々、と元の世界で仕えていた王女へ書き出す。
(この世界は平和とばかりは言えないけれど、でも楽しい)
 女装バレは死活問題だが、それでも人には恵まれていると思う。帰りたいとは思うが、それは迫られるほどではない。
 ――いつの日かまた、笑顔で再開できることを切に願っています。
 伝えたいことは山ほどあるけれど、ぎゅっと絞ってしたためた。輝かんばかりのこの夜に、世界をも越えてくれと星に願って――そっと、飛ばす。
 静かだと思うのは、周りに誰もいないからかもしれないとユーフォニーは思う。ドラネコも、ムシャムシャくんも皆お留守番。世界には争いも起こらなくて、平和ばかりが満ちている。
 けれど元居た世界はこのような平和な世界だったのだろうか。ユーフォニーは何も覚えていない。
(でも、微かに聴こえる音と淡く感じる色。きっとこれが、私の鍵)
 だから、一言だけ記して、問うてみる。
 あなたはだれですか。ずっと聴こえる微かな音。そして、淡い色のあなた。
「詩織、お前は足元注意だ」
 ウルフィンと詩織は湖のほとりで立ち止まり、手紙を取り出す。こんな夜だからではなく、未来の為にとしたためたウルフィンのそれは詩織の呪いを解呪したいという強い願いが込められている。どんな情報でも、欠片でもいいからと強い筆圧で書かれたそれは、手の力も籠ってか少しばかりよれていて。飛び方も多少危ういけれど、願いが届けば良いのだ。
 一方の詩織もまた手紙を飛ばす。ウルフィンの宿敵だと言う『赤ずきん』へ宛てられたそれは、世界を超えてでも呪い殺すと言う決意を秘めていた。
「飛ばし終わったか」
「はい」
 ウルフィンはそこに重ねられていた2枚目に気付かない。其れで良い。
(私は貴方が、ひと時でも心休まる場所で在ろうと思います)
「星夜の散策でもどうだ」
「是非。星も綺麗ですもの」
 流れる星の下、2人の足音が小さく響く。そんな音ですらも良く聞こえる静寂は、安寧の時であると示しているようだった。
「妙見子殿は教え方が上手いのだな」
「そう言っていただけると嬉しいです……!」
 妙見子に紙飛行機の折り方を教わり、倣って飛ばす晴明。お互いにどんな言葉を書いたのかと語り合うけれど、妙見子が晴明宛てに書いたことは言わない。だって気付いてもらいたいから。
 実際のところは「妙見子殿は博識であられるな」と感心されただけになってしまったが。
「晴明様は何を書かれたのです?」
「主上へ書いた。俺の主は聖夜に生まれたのだそうだ」
 霞帝が居なければこのような未来は訪れなかっただろう。いつか会って欲しいと言う晴明に頷いた妙見子は、ふるっと身体を震わせた。
「あの……寒いですし、お傍によっても差し支えないでしょうか?」
「あ、ああ、済まない。気が付かなかった」
 少し慌てたように晴明がストールを妙見子へ纏わせ、傍へよる。うっすら涙を浮かべた彼女に、次はその身を冷やさないよう決意する晴明であったが――。
(緊張してちょっと涙目に……陰キャな自分が憎い……)
 こんな陰キャな自分にも晴明は優しいと、妙見子はまた涙ぐみそうになる。いけない心配させてしまう。小さく深呼吸した妙見子は存外彼との距離が近いことに今度はドギマギしたりしながらも、そのひと時を過ごしたのだった。
 ヨタカのくしゃみとともに、カンテラが小さく揺れる。武器商人はその音に顔を巡らせた。
「小鳥、寒い? この辺りでココアでも飲もうか」
 丁度見晴らしもよく、星が綺麗だ。2人はその場に腰かけて、暖かなココアを口にする。
「きれいだ……」
「ふふ、小鳥はこういうの好きだろう?」
 うん、という返事に武器商人の笑みが深まる。そんな武器商人へ、ヨタカはココアのカップを置くとぎゅっと抱き着いた。
「どうしたんだい?」
「ん……? ふふ、寒いからくっ付いただけ……」
 本当にそれだけ。でも幸せで、ヨタカは笑みをこぼす。いいことも悪いこともあったけれど、武器商人がいま一緒に居てくれるから。
 抱き着いたヨタカの手を取って温めるように包み込んだ武器商人は、湖に映る星々へ視線を向ける。
「2人でこの日を過ごせてよかったよ。来年も、その先もまた隣にいてちょうだいね。我(アタシ)のヨタカ」
「うん。来年も、紫月と素敵なシャイネンナハトにしたい……」
 ヨタカが体を起こし、武器商人の頬へ口付ける。武器商人は小さく笑みを浮かべると、同じように彼の頬へとキスを落とした。
 リンディスは誰へ宛てたか内緒。マルクは、来年の自分たちへ。
「元気ですか、とか。無事に次のシャイネンナハトを迎えられましたか、とかね」
 2人の距離が近くなったのか、も書いたけれど、これは彼女に内緒だ。
「それは素敵ですね。きっと私たちのところへ届きますように」
 微笑んだリンディスは、実はマルクへ宛てて感謝とささやかな詩を贈っている。元の世界への手紙は迷って、やめた。今の自分ではどうすればいいかわからなくなってしまいそうだったから。
(もしも、この紙飛行機の手紙が、彼女の元居た世界へと届くのならば)
 マルクも考えることがある。自分と彼女は、住んでいた世界が物理的に違う。帰り道が示された時、彼女は帰ることを望むのか。自分は笑って送り出せるのか。
「さ、帰りましょう? 不思議な飛行機が、届くように」
「そうだね。あ、忘れてた」
 輝かんばかりの、この夜に。そう呟いた2人の手が握られ、繋がる。今はこのつないだ手が離れないようにと、願うばかりなのだ。
 久方ぶりに訪れた湖は冷え込む。ヴィクトールはいつか書いた手紙は隣人に当てていたことを思い出した。微睡みの中にいた頃のことだ。
「誰にお書きになったのですか?」
「今日は……出す相手が、決まっているのです」
 曖昧に微笑む。息子にあてた、謝る事しかできない、贖罪の手紙。自分のせいで苦しんでいるだろう子供に対して、只々『ごめんなさい』を。
「この優しい夜に届いたのならば、屹度、許してくれましょう」
 大丈夫ですと未散の微笑みが背中を押す。遠慮なく飛ばしてあげてと。
(此の感情は醜い嫉妬だ)
 したためた手紙を胸にしまって、記憶を取り戻した彼へ完璧に咲って見せる。
(コレは喜ばしい事なのでしょうか?)
 ヴィクトールの失われていた記憶は、思い出せば思い出すほど自分を押しつぶそうとする。
 ――知らない事のほうが、幸せが気がするのは、気のせいだろうか?

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加有り難うございました、イレギュラーズ。
 手紙の内容はRP等で続きをお楽しみください。

 それでは、またのご参加をお待ちしております。

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