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シナリオ詳細

<光芒パルティーレ>煌々なるカリメーラ

完了

参加者 : 50 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 海洋王国フェデリア海域。
 其処はかつて『絶望の青』と呼ばれていた地域だ――
 だが海洋王国大号令の輝かしき成功に伴って『静寂の青』と呼ばれるようになって久しい地でもある。かつて冠位七罪の影響により覆われていた負の気配は取り除かれ、東に発見された豊穣郷カムイグラとの交友が始まれば、このフェデリア海域は外交上の航路ルートとして重要な意味を持つようにもなっていた。
 絶望の青が踏破されるまで閉ざされた環境にあった豊穣側も、外との交流には積極的な一面も存在すれば、よりその航路は活発化しうる。
 ……で、あればこそ新たに生じるモノがあるものだ。
 人と人が巡り合い、資源が流れ、商売が流通し、価値が見出され、富が排出される。
 新たなる地であればこそ、かの地に光ありと見て出資しうる者は大勢おり。
 それが噂となりて更に注目を浴びる。
 その繰り返しの果てに生み出されるモノとは何か? そう――

「リゾート地ですよ! さぁようこそシレンツィオ・リゾートへ!」

 大規模な貿易・行楽地である。
 イレギュラーズを出迎えるソルベ・ジェラート・コンテュール(p3n000075)が大仰な身振り手振りと共に指し示した先にあるのが――シレンツィオ・リゾート。燦燦と輝く太陽の光が降り注ぎ、穏やかなる大海原が美しい。
 そして。フェデリア諸島の中心に存在する大都市……の中でも一番街――
 『プリモ・フェデリア』と呼ばれ、今ソルベが出迎えてくれた場所は、この地の行政を司る機能が集まっていた。
 かつての大号令の折に建設された『フェデリア総督府』を始めとして要人が集まる地。
 此処もまた美しい。
 海洋と豊穣の建築様式が合わさった建物――『フェデリア・ハウス』は芸術的な建築物とも謳われ、一般人による観光も連日行われている程だ。和洋折衷、と言うヤツだろうか? 幾つかはR.O.Oのヒイズルで見かけた様な時代の文化的建築物も見える。
 これほどの地域を僅か数年で完成せしめるとは。
 海洋王国の手の入れようの本気が窺える……
 どこを見ても活気に満ちており、ああなんと煌びやかな事か。
「サマーフェスティバルも近付いてきて、より盛況になっておりましてね。
 豊穣からは中務卿御一行も訪れていますし。
 各国からもお忍びで訪れるお歴々もいる程です」
「――そして皆様にも是非是非このリゾート地を体験して頂ければと!
 大号令の英雄たる皆様に利用して頂ければ、箔も付くというものですし!」
 続けざま。ソルベの妹たるカヌレ・ジェラート・コンテュール(p3n000127)が指し示したのは、一番街から見てはるか向こう側……島の南西側に位置する『三番街』だ。
 三番街『セレニティームーン』は観光地第一丁目と言える程のリゾート地である。
 富裕層向けに建設された施設が多いこの場所は高級ホテルなどが立ち並ぶ。
 特に遠くからでも目についたのは……『カヌレ・ベイ・サンズ』と言われるあのホテルだろうか?
 カヌレ・ベイ・サンズは……その……なんというか……豊穣的な連重塔、歯車の大量についた鉄帝的タワー、海洋風の白くそびえ立つビルの三つが並び、その上に巨大な船が乗っている……と、とても特徴的かつ異様かつ象徴的な建物だ。
 しかしこの名前……と。

 『――ふふん! 凄いでしょう? 誉めて頂いても良いのですよ!』

 自信満々に胸を張っているカヌレの様子を見るに、彼女が関わっているのだろうか……!
「他にもこの島の多くの方々が住まう『二番街』や、休火山地帯を中心とした自然豊かな『四番街』……それから鉄星会談において鉄帝国との繋がりが在ったが為にこそ繫栄した『五番街』などもこの街には存在していますね。
 どこも面白い所ですよ。他にも幻想やラサから出資して頂けた方々もおり、彼方の文化や名が記された施設もありますし……是非にあちらこちらをご覧ください!」
「ん? お兄様、あと『無番街』が――もが!」
「ははは。後は、まぁ、地図も整備中だったりする所がありますが……一番街と三番街は我々も案内出来ますし、今回は是非そこを中心に楽しんでいただければと思います。ええ、三番街の多くの施設を無料利用できる期間限定チケットも用意しましたので」
 んっ――? 今カヌレが何か言おうとしていたが、咄嗟にソルベがその口を手で塞いだ。
 ……何かソルベの手に余っている場所でも存在しているのだろうか?
 彼はイレギュラーズに非常に友好的だが、同時に海洋王国貴族筆頭でもある。彼には彼なりの思惑もあるか――このイレギュラーズの誘致にしろ、来るべき王国一大イベントサマーフェスティバルに向けての宣伝と布石なのは間違いない事であろうし……
 ま、此処を訪れたばかりのイレギュラーズは知らない所も多いのだ。
 ひとまずは彼が言った一番街と三番街を中心に楽しんでみるのも一興かもしれない。

 カヌレのデフォルメされた顔がプリントされた小さな券……『カヌレ・チケット』があれば、今日一日は三番街の多くの施設を存分に楽しむ事が出来るだろう。『カヌレ・ベイ・サンズ』や『天衣永雅堂ホテル』と言った高級ホテルを利用してもいい。
 ホテル自慢の豪勢な食事や、柔らかいベッドによる一夜を楽しむ事も出来るだろう。
 昼は絶景が窓より見え、夜になれば街の灯りがきっと貴方の目を楽しませる。
 ああ夜になると言えば『ウィンフェデリア・カジノ』と呼ばれる煌びやかなカジノへと出向いてもいいだろうか――チケットを使用すれば、きっと大量のチップと交換してくれるはずだ。それでポーカーやらルーレットやら……偶には賭けに興じても良いかもしれない。

 或いはチケットが無くても『コンテュール・ビーチ』と呼ばれる、カヌレのプライベートビーチは、イレギュラーズならいつでも利用できるとの事だ。
 ふふふ。暑くなってきた昨今……そういった場所で涼しむのもいいかもしれない。
「あぁそれから私に声を掛けて頂ければ、行政地区の中も自由に出入りしても構いませんよ。もしかしたら皆さんの知古の方もいたりするかもしれませんね」
 それから。ソルベの紹介があらば一番街の行政地区も自由に入れるだろう。
 『フェデリア総督府』を始めとして、大使館や軍事拠点などもある。
 軍人や要人と言った人物達は此処にいたりするだろうか――? 他の地区と比べれば清閑な場所とも言えるだろうし、この辺りでゆっくりと過ごすのもいいかもしれない。
 さて……様々な施設があるシレンツィオ・リゾート。
 どこへと赴こうか。どこへとその目を巡らせてみようか。

 煌びやかなる観光地に貴方の足が――出向かんとしていた。

GMコメント

●目標
 シレンツィオ・リゾートで一時を過ごしましょう。

●シレンツィオ・リゾートとは?
 元々は『絶望の青』に閉ざされていたフェデリア海域。しかし大号令の成功と、東に発見されたカムイグラとの活発的な交流の狭間で急速に発展した観光地――それがシレンツィア・リゾートです。
 所謂リゾート地。詳細は特設も是非是非ご覧ください!
 特設:https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio

●一番街(プリモ・フェデリア)
 島の『南側』に位置する行政地区です。
 軍事施設、大使館、総督府などが置かれており要人や関係者が集う地と言えるでしょう。
 ただ一般人に縁がない場所かと言うとそうでもなく、後述する『フェデリア・ハウス』の芸術的な建築様式は観光スポットとしても名が知れており、親しまれています。その為、独特なる文化の形成を見に来る人も多いみたいです。
 また、ローレット・フェデリア支部も存在し、ローレットのイレギュラーズであればワープポイント機能を利用していつでも訪れる事が出来そうです。
 以下、主なスポット地となります!

・フェデリア総督府
 この島で最初に作られた軍事拠点です。今ではファクルの指揮とエルネスト総督の管理によって運営されています。

・フェデリア・ハウス
 元は軍事拠点でしたが役所として再利用されるにあたって豊穣と海洋の建築様式が合わさり見事な芸術的建築物ができあがりました。

・ローレット・フェデリア支部
 かつて大遠征の中でフェデリア島を拠点とした際に設営したワープポイントがあり、ローレットのイレギュラーズはいつでもこのフェデリア島へとやってくることができます。

●三番街(セレニティームーン)
 島の『南西側』に位置する、いわゆるリゾート地です。
 高級ホテルやカジノ、セレブリティビーチなど富裕層向けの観光資源が集まっています。
 ここは様々なスポット地がありますので、詳細は特設ページ(https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio)の三番街もご覧ください。

 今回は此処、三番街の多くの施設を無料利用できる限定チケットも、ソルベから配布されました――例えばホテルの食事やふかふかのベッドを楽しんでもいいでしょうし、巨大なプールもあったりするでしょう。
 カジノに行けば大量のチップと交換して盛大に楽しむことが出来るかもしれませんね!
 ルーレットやポーカー、ブラックジャックなどなど……賭け事も盛んかも!
 ちなみにOP上で出た施設や、カヌレが関わっている主なスポット地としては以下があります!

・カヌレ・ベイ・サンズ
 有名高級ホテルの一つ。豊穣的な連重塔、歯車の大量についた鉄帝的タワー、海洋風の白くそびえ立つビルの三つが並び、その上に巨大な船がのっかった異様かつ象徴的な建物です。船はプールになっており、広大な海やフェデリアの景色が一望できます。

・コンテュール・ビーチ
 カヌレ・ジェラート・コンテュールの出資によって建設されたプライベートビーチです。一般人は入れませんが、ローレットは入ることが許可されています。靴を脱いでパウダーサンドを歩いてみましょう。

・天衣永雅堂ホテル
 有名高級ホテルのひとつ。厳密には旅館。豊穣主導で建設された豊穣風の客室が人気です。
 オールスイートの当旅館は全室に露天風呂が備えられ、セレニティ・ブルーや雄大な山々を一望しながらくつろぐことができます。

・ウィンフェデリア・カジノ
 巨大なスロットマシンにも見えるようなアーティスティックビルの中に建設された巨大カジノです。フェデリアに複数あるカジノの中でここが最も巨大だと言われています。

●ソルベ・ジュラート・コンテュール
 海洋王国の重鎮の一人。貴族派の筆頭たる飛行種です。
 今回は主に一番街の方にいると思われます。
 彼が許可を出していますので、今回皆さんは行政地区の中にもほとんど自由に出入りする事が出来ます。或いは彼自信となんらか話してみてもいいでしょう。

●カヌレ・ジュラート・コンテュール
 ソルベの妹です。シレンツィオ・リゾートにも多く出資しており関わりも深いとか。
 今回は主に三番街の方にいると思われます。
 カヌレ・ベイ・サンズの出来栄えには自信をもっている様子。ふふん!

●その他のNPC
 茶零四所有の「ギルオス・ホリス」「リリファ・ローレンツ」に関しては登場可能です。
 恐らくギルオスは一番街か三番街のどちらかに。
 リリファは三番街のカジノで大穴賭けようとして滅茶滅茶負けてると思います。
 プレイングなどでご指定があれば登場する可能性があります。

  • <光芒パルティーレ>煌々なるカリメーラ完了
  • GM名茶零四
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2022年07月13日 22時06分
  • 参加人数50/50人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 50 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(50人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
武器商人(p3p001107)
闇之雲
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
クリム・T・マスクヴェール(p3p001831)
血吸い蜥蜴
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
アイリス・アニェラ・クラリッサ(p3p002159)
傍らへ共に
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)
救いの翼
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
斉賀・京司(p3p004491)
雪花蝶
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
イサベル・セペダ(p3p007374)
朗らかな狂犬
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
鵜来巣 冥夜(p3p008218)
無限ライダー2号
一条 夢心地(p3p008344)
殿
花榮・しきみ(p3p008719)
お姉様の鮫
ハリエット(p3p009025)
暖かな記憶
ユイユ・アペティート(p3p009040)
多言数窮の積雪
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
朔(p3p009861)
旅人と魔種の三重奏
アレン・ローゼンバーグ(p3p010096)
茨の棘
綾辻・愛奈(p3p010320)
綺羅星の守護者
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
百合草 瑠々(p3p010340)
偲雪の守人
ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)
ラッキージュート
ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)
焔王祈
アンリ・マレー(p3p010423)
亜竜祓い
紲 寿馨(p3p010459)
紲家
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女
フーガ・リリオ(p3p010595)
君を護る黄金百合
エミリー ヴァージニア(p3p010622)
熱き血潮
水無比 然音(p3p010637)
旧世代型暗殺者
雑賀 千代(p3p010694)
立派な姫騎士

リプレイ


 晴れやかなる空。蒼き水平線。
 あぁ美しき全てが誰しもを出迎える――
「……だが出迎えるのがアレってのは……いやまぁ。
 カヌレお嬢様が何やら色々やってたのはなんとなく聞いてはいたが……うむ……」
 が。エイヴァンは己らの眼前に在りしカヌレ・ベイ・サンズを眺めてながら意味深な言を呟いていた。いやぁなんというか、この、随分と特徴的と言うか、その……まぁ、この手のものに出資者の名前を使うのは普通といえば普通か。
「素晴らしいでしょう? コンテュール家の名に恥じぬ建築物を目指しましたから!」
「あぁ。俺もこのホテルの見た目自体は嫌いじゃない――それはそうとスイーツも充実してると聞いたが? まさか天下のカヌレお嬢さんが、そこに手を抜くなんて事はないよな?」
「むむ、当然ですわ! イレギュラーズの皆さんの為に大層用意しておりますので!」
 ともあれ。自慢げなカヌレを些か茶化しながら、彼はホテルの方へと足を運ぶものだ。
 折角の招待。楽しませてもらおうと――さすれば。
「どうもお世話になっております。サヨナキドリです。本日はシレンツィオ開店のお祝いとビジネスのお誘いに。こちらはマネージャーの斉賀。私は経理兼秘書の百合草と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「ご機嫌麗しい皆様、本日は社会勉強も兼ねてお話伺いしたく。
 やはり観光地と市街では流行も食べ物も違いますから」
「おや! サヨナキドリの方々……とても仕事熱心ですのね!」
 次いで瑠々と京司もカヌレの下へと来るものだ。
 その目的はサヨナキドリのシレンツィオの開拓の為――
 何を売りとして展開しているのか。何処が人の集まりし場所であるのか。
 この辺りでも有力者であろうコンテュールに話を通して……調査せんとするものだ。
「此方のホテルですが……我々に一枚噛ませていただけませんか?
 世界全土に広がるサヨナキドリなら、此方のホテルの系列展開も出来ます。
 決して損はさせませんよ。具体的な事業展開につきましては後程……」
 更に。作らんとするのはビジネスの取っ掛かりも、である。
 他貴族や企業主にもこの機会にと顔を通し、あわよくば彼らの流通に介入せんとする。
 如何なる機がサヨナキドリの拡大に繋がるか知れぬのだから……!
「商人の秘書だからあまりないが、秘書は会談場所や取引先への手土産の手配もするから、ホテルの料理や雰囲気を頭に入れといて。それぞれの場や相手によって『合う』モノってのは違うからね――最善をつかみ取るのが重要さ」
 同時に京司も瑠々へ言を紡ぎつつ、周囲の様子を目敏く観察する。
 秘書たる身としての鉄則を心に。新事業に繋がるヒントを少しでも……と。
「ほほう。そなたが噂のカヌレ殿か――此処は素晴らしい所だな。
 いやそればかりか……カヌレ殿地震も負けず劣らず麗しい。敢えて実に僥倖だ」
「あらあら、エミリーさんですね? お褒め頂き光栄ですわ! 是非とも楽しんでいってくださいね――あぁプールの方が気になられるなら日差しは如何ですか? 涼しくなりますよ」
「うむ。そうだな、一つ拝借させて頂こうか……気を抜くと灰になりそうだ」
 さすればエミリーもまたカヌレへと挨拶の言を。一通りホテルを巡ったエミリーだが、プールの景色は特に良いと……眺めていれば、カヌレが日傘を一つ。やれ、まぁどこを巡るにせよ吸血鬼たる身に日差しは厳しいものだと思考を重ねて。
「あぁしかし。良い所であるが故に、是非に相応しき着飾りをしたいものだな」
「おや。では後程ドレスでも如何でしょう――私の部屋には沢山ありますよ」
 はは。お付き合いしてくれるとは嬉しいものだ、と。
 にこやかに紡ぐその姿。どことなく確かなる気品を感じさせるものである……
「こんにちはカヌレ様。豊穣の歴史に鉄帝の威風、海洋の美しさ……全てを内包したリゾート地、実に素晴らしいですね。これほどの代物を作り上げる事など、そうそう誰にもは出来ない事でしょう」
「えぇ、えぇそうでしょう弥恵さん! ふふ。自慢ですのよ!」
 そして続けざまカヌレの下へと至ったのは弥恵だ。
 彼女は誉め千切る。カヌレを。微笑みを携えながら……
 そうして彼女の魂が滾らせた――後に。
「ええ、そしてですね。更なる栄誉の為、二人で水着を着て宣伝すれば世界中でカヌレ・ベイ・サンズの名が世界に轟く事間違いなしですよ――ええ、こちらの『水着』で、どうでしょうか?」
「えっ!? こ、この『水着』でですか!? いや、しかしその……」
「お美しいカヌレ様とご一緒したいのです、私と一緒に来てくれませんか?」
 彼女が指し示したのは――随分とでんじゃあな水着だ。
 物凄く肌面積が広い気がする……! さしものカヌレもあわわと慌てるものだが、弥恵は優しい口調の儘に彼女に話を通さんとするもの。し、しかしこんなもの来ては、コンテュール家が、コンテュール家がー!
 慌てふためくカヌレ。
 だけれども、陥落するまであと一歩かと弥恵は素の儘に彼女を誘うものだ――
 どうか二人でと。

「はぁ、はぁ……おや、そこに居らっしゃるのはカヌレ様……!
 失礼、カ、カヌレ様ならばご存じではありませんか――『ろこもこ』なるモノを!」
「え、えっ? 『ろこもこ』です、か?」

 と、その時。なぜか疲労困憊気味である然音もカヌレの下へと至るものである。
 然音は探し求めていた。謎の『ろこもこ』の正体を知るべく。その結果――複数のビルの間をぐるぐる巡りて、ぶっちゃけ迷ってしまっていたのである……!
「ああ、ロコモコですね! それでしたら此方ですよ――!」
「お、おぉ……これが『ろこもこ』……! なんとも香ばしき匂いが食欲を沸き立たせて……!」
 故にこそ然音の瞳に映りしロコモコはより輝いて見えるものだ。白米の上に貴重たるワイバーン肉のハンバーグと目玉焼き。掛かっているソースの匂いが漂えば、最早我慢など出来ようものか――! あぁ美味なり!
「カヌレ、チケットの方ありがとう。これはまた凄い所だね。
 でも海洋所縁の建物って、此処だけじゃないよね? あっちに見えるのもかな?」
「あぁティアさん来ていただけたのですね! ええ、折角ですから一緒に如何でしょう?
 ふふ。他にも目玉になりそうなモノを沢山仕入れているのですよ」
 直後。ロコモコを堪能する然音と入れ替わりでカヌレへと至ったのは、ティアだ。
 穏やかなる声色。共に各地を巡り往こうか……と、その時。
「あ! 危ない――っと……怪我は無かった?」
「え、ええ! 大丈夫ですよ――わ、わわ。ティアさん、あの、その」
 プールの付近。歩めばぬかるんでいたのか、カヌレの足が滑りて。
 咄嗟にティアが支えるのだが――その手が咄嗟だったが故か、カヌレの胸を掴んで――
「あっ……! ごめん。わざとじゃないんだ」
「え、ええ! いえ、こちらこそ助けて頂いてありがとうございます。
 そ、それより次の場所を案内しましょうか! ええ、滑らない場所を!」
「うん――」
 離れる二人。心の臓の鼓動が早いのは、さてどちらであったか。
 ……今のは不慮の事故だったが、しかしティアは思うものだ。
 この案内の後――彼女と一緒に寝泊まり出来ないか、と。
「……ねぇカヌレ。あの、良かったら後で一緒にお風呂にでも入らないかな?」
「お風呂ですか? ああそれでしたらいい温泉の場所が――」
「ううん。その、備え付けの露天風呂に、ね」
 一緒に背中でも洗い流せないかと。ティアは誘うものである。
 さすればカヌレはまたも慌てふためくものだ――あわわ、と。
 あぁ。そういう所も可愛いなぁ……なんて。ティアはカヌレの手を引きながら想うものであった。


 そしてカヌレ・ベイ・サンズの外でも楽しむ面々は多かった。
 多くの建物や店が立ち並んでいるのだ。一日歩いても全て堪能できるかどうか――
「あぁこりゃハネムーン日和ってヤツだよなぁ、リリー! さ、あちこち巡ろうぜ!」
「うんうん、ハネムーン? だよっ! それにしても、前はとんでもない場所だったのに……あそこがこんなにキレイになるなんて……すごいねっ」
 故に、その渦中を飛翔するのはカイトと彼に抱かれしリリーだ。
 共に名を同じとしてからの二人の一時。
 小さき身体をカイトが、しっかりと抱擁しながら往くのは三番街。
「おっ。見えてきたぜ――此処が噂のアクセサリーショップか!
 うーん、どうだリリー? お揃いのピアスはあるから……指輪なんてよ!」
「指輪? うん! ……でもリリーに丁度合う大きさあるかなぁ?」
「そういう時の為のセミオーダーだぜ! ま、いざとなりゃネックレスって手もな!」
 ニュー・キャピテーヌストリート。
 そこは繁華街であり、多数の世界的有名ブランド店が並ぶ通り。どこを見ても煌びやかなる店が目に入り……故にこそ二人は、かの地へと赴くものだ。
 だってハネムーン――
 新婚旅行なのだから。
 色褪せぬ想い出を、どこまでも作っていきたいから……
「さて……どこに行ってみるかねぇ。流石カヌレの嬢ちゃんとソルベが張り切って宣伝していただけあって、見所はあちらこちらにありそうだが……この辺りはちっとばかし、高級すぎる気もするな」
 続いて三番街をぶらりと巡るは縁だ。なんとも気品を感じさせる店も多く……だからこそ少しばかり、縁のゆるりとした気質とは逸れる所もあるが。
「ま、これからの時期を考えりゃ――いつも以上に賑やかになるだろうしなぁ。
 俺も偶には雰囲気だけでも楽しませてもらうとするかねぇ……」
 貰ったチケットを天へ翳し、指先にて弄びながら。
 さぁさ何処へと往こうかと。彼の歩みは、緩流の如く……
「や~此処はいいところだね~あれだけ大変なこともあったのにね~」
「いや、本当。あのときはこうして観光できるようになるとは思わなかったな。
 観光はおろか、生死の関わる場所だったからな……随分と時間も経ったもんだ」
「でもどれだけ時が過ぎて、変わったとしても忘れられる様な出来事じゃないわね――ま、と言っても確かに。あれからこんな風に楽しく遊べる場所になるとは思わなかったけれど」
 次いでアイリスにミーナ、レイリー達も三番街を巡っている。
 その脳裏に浮かぶは、かつての戦い……だがあの時とは一転した様子なのがシレンツィオだ。黒ビキニスタイルのアイリスや、レイリーが白のフリルビキニ姿で出歩く事が出来る――正にリゾート地。いやはや本当に様変わりしたものだ――
「いろいろありましたもんね、ここ。いやぁ時の流れとは実になんとも……
 ……ところで私の体、生臭くなってたりしませんよね? 大丈夫ですよね?」
「ん、なんだ? なにかあったか?」
「あ、いやいややっぱりなんでも! 大丈夫、ええ、恐らくセーフの筈ですので!」
 しかしクリムは一変したフェデリアよりも、別の心配事に気がそぞろだ。いえ、無いとは思うんですが念のため腕の匂いでも嗅いで、ミーナ達の嗅覚でも確認を……い、いややっぱりやめておきましょう。多分恥ずかしい想いをするヤツですから……!
「美味しいフロートの屋台見つけたから、みんなの分も含めて買ってきたわよー
 さ。色々買ったから好きなのを選んで頂戴。どれがいい?」
「フロート!? 私赤いの! 赤いのが欲しいです! ミー……血の色なので!
 ブラッドオレンジ!? ああミーこれが是非に良いです!!」
「フロート美味しそうだね~私は何にしようかな~? ん~このハワイアンにしようかな~」
「はは。今の内に色々補給して楽しんでおけよ――
 今夜は全員寝かせるつもりはないからな? 覚悟しとけよ?」
 ともあれと、レイリーがフロート屋を見つければ皆に別けるものだ。好みたる色を見つけ、すかさず確保するクリム。どれが良いかとまじまじ眺めるアイリスに――そして、そんな肌色多い水着の様子を一歩引いた場所から眺めるミーナ。
 ……え? そういえば今回なんでこんな水着なのかって?
 そりゃ――ただ単に私が皆の水着を見て楽しみたかったから呼んだの。
「え!? 今夜は寝か……!? そ、それってもしか……い、いいいいいですよ!? こちとら吸血種なんです! 夜更かしには強いので! 枕投げだろうがピロートークだろうがなんでもこーい!」
「ん~? 枕投げでもする~? 他の事でもいいよ~? トランプとか持ち込もうか~あ、となると夜の為のお菓子とかもあった方が楽しいよね~」
「ミーナ、それはこちらの台詞。みんなで朝までゲームとかお酒とかで楽しもうね。
 ……あれ、どうしたのクリム? 随分と顔が赤いけれど?」
 ブ、ブラッドオレンジの所為ですかねぇ! と、何やら焦った様子のクリム。
 あぁ寝かせないとは一体どんなことをしてくれる事やら。
 まだまだ今日と言う一日は楽しめそうだと――誰しもが思うものであった。
「ふむふむ。これがシレンツィオ……海洋と豊穣が仲良くすると……こーんなにお金の匂いがするんだねぇ……ふふー。やっぱり国同士が近いと仲良しになって、色々と『廻り』が良くなるんだねぇ!」
 三番街を更に見て回るのはエイユもだ。今流行りのシレンツィオ……領地運営の参考にならないかと興味津々。歩き回りて各地の様子を直に見て回らんとし。
「美味しいご飯も豪華な寝床もチケットでOKなんて、お得~
 ふぁあ……えーと、あのお店は綺麗だったなあ。ああいうのがあると領民の人達も楽しいかなぁ? うーんと、うーんと……ぐぅ……ぐぅ……」
 そして最後はホテルの、立派なベッドにダイブしながら今日の事をメモせんとし……
 しかし柔らかな感触に負けて。いつの間にやら目を閉じていたのであった。
「あぁ……なんつーふかふかベッドだ……こいつは中々味わえない感覚だぜ……」
 そしてフーガもまた、一足早く自らの部屋へと直行していた。
 味わうのはベッドの感触。ああ……まるで蕩ける様に沈み込む、これは……
「今まで使っていたベッドより数千倍ほど気持ち良すぎる……ハッ!? そうか、コイツが旅人の間での噂の『人をダメにするベッド』ってヤツか……!? くそ、ダメなおいらが益々ダメになっちまう……! 早く離れねぇと……あ、ダメだ、波の音が……穏やかに……」
 ぐぅ。余りの心地よさが、彼の辛抱という概念を遥かに上回るものだ。
 一日中……いや一生眠れてしまいそうな極楽が、彼の既知を塗りつぶしゆく――ぐぅ。
「ふむ……想像以上の規模だな。これほどの開発計画が進められていたとは……商会の参考になるかと思っていたが、これは正直ちょっと規模が違いすぎるな」
「ジグリ嬢の感想も、尤もだな。しかしこちらは商会。あちらは、国家事業だ……一概に見て比べられるモノでもない。焦らず、今はじっくりと観光と視察に洒落こませてもらおう。ありがたい事にチケットも貰った事だし、な」
 同じ頃。ラダとジョージは三番街の喫茶店にて一時休息を取っていた。
 二人は、自分達の港町との航路を各地に築かんと様々な知見を学んでいる最中の招待であった――故に渡りに船とシレンツィオを見て回っているのだが、なんとも規模が大きすぎる。
 三番街だけでもこれほどとは……他の区画も見ていくとすると、一日ではとてもとても。
「ああそうだな――驚きもあったが、同時に海上交易の力の大きさを再確認できた。事業は始めて正解だったよ。ファレン殿には一歩先を越されてしまったかもしれないが、しかしパレスト家の存在はラサが参入する余地の証明であると考えれば、希望もあるものだ」
 それでも彼女の瞳には活力が宿っている。
 このシレンツィオこそ、ラサから海洋を経由し豊穣へと繋がる航路の開拓、発展を目指すジョージとの計画の展望になろうと。各国の有力者の手が入っているならば、イレギュラーズにもいずれ……
「その内一枚噛んでやろう。例え満席であっても、椅子を作りねじ込めばいい――」
「ふっ、それは頼もしいな。ここの稼ぎに食い込めれば、流れを掴めそうだ。
 さて、どうだ。この後は目玉のカジノにも寄ってみるつもりだが……その前に料亭でも」
 そしてジョージはラダへと告げる。立ち上がり、彼女に手を差し出して。
「――さ、お手をどうぞ、レディ?」
「カジノ、か……あぁ。エスコート、よろしく頼むな?」
 さすれば。彼女もまた重ねる様に。
 共に歩みの道へと――赴くものだ。

「ヒヒッ。こいつはすごいねぇ……シレンツィオ。
 コンテュールの旦那はさぞや以前から準備していたと見える――」
「おやおや。武器商人さんではないですか――貴方がお越しとはサヨナキドリ絡みですか?」

 そして一番街に座すソルベの下へと訪れたのは武器商人だ。
 一大リゾート観光地。然らば本音では小鳥とデートしたりラスと一緒に家族の触れ合いをしたりと色々やりたいことはあるのだけれど……我もお仕事だよ。ちぇー。口端には笑みの色を浮かべなが、ら。
「まぁねぇ。こんな地があると知れば、一枚噛みたいと思う同業もいるだろうさ。サヨナキドリの販路。その中に差し込めないかね――我らも腰を落とせるなら、海洋へ活発に商人や商品を回すことも出来るってものさ」
「ふむ。この地は多くに拓かれています。幻想やラサ、その他にも参入の意思があるならば……そこにサヨナキドリの参入ですか。いいですよ、考えておきましょう。イレギュラーズの皆さんも至るのであれば、良き宣伝ともなります」
 至る交渉。武器商人の慣れた口の滑りがあらばソルベも良き色を返すものだ――

「よう鳥貴族! まだちゃーんと生きてたんだ?
 カヌレ嬢は三番街かな、あとで挨拶にいかないと、鳥貴族なんて放っておいて」
「むむ! 生きてたとは酷いですねぇ、全くこれだから史之さんは!」
「はは。まあ生きてたんならなによりなにより――あ、そうそう。俺結婚したんだよ。
 こちらが俺のご主人さまこと奥さんの睦月ね……怒ると怖いよ」
「えっと、ソルベさん。貴族の筆頭なのですね。
 ……しーちゃん? 今なんて言いました? 誰が起こると怖いって?」

 そして。更にソルベへと挨拶するは史之に睦月である。
 むむっ。しーちゃんったら、ひどいやひどいや。むくれちゃうんだから。ぷくー!
「冗談冗談、冗談だってばカンちゃん。怒らないで、よしよし。ごめんねー」
「はははどうも奥方には頭が挙がらない様ですねぇ、流石の史之さんも」
「ま、再会とお祝いを兼ねてドリンクでもどう? はいカンちゃんにはピーチスムージー」
「わわっ。む~これで許した訳じゃないですからね。分かってますか、しーちゃん」
 そっぽ向く睦月をあやす様に己が祝福にてドリンクを差し出す史之。さすれば。
「しかしご結婚とはおめでとうございます――しかし如何なる理由にて?」
「? それは――大好きだからです」
「なっ、ちょ、カンちゃん!」
「しーちゃんは僕の幼馴染で元の世界では従者だったんです。あの頃からしーちゃんは優しくて頼りがいがあって、大好きでした。ずっとずっと一緒になりたいって思ってました――今は、とてもうれしいです」
「ふふ。惚気話を引き出してしまいましたかね――ええ。ともあれ、是非ともお幸せに!」
 いつの間にやら顔が紅くなっている史之を他所に。
 祝福の乾杯を――ソルベと睦月は鳴らすのであった。


 そして街から少し離れた所にはコンテュール家のビーチが存在していた。
 イレギュラーズには特別に開放されている地――にて。
「わー、いつの間にかこんなに素敵なリゾート施設になってたんだね。
 うんうん。なら、目一杯楽しまないとね! いこっかしきみちゃん! レッツゴー!」
「はあああ! お姉様、お姉様と一夏の思い出!? はぁ、はぁ……!! お姉様、その前にドリンクでも如何ですか! さぁさ、このストローが一つになっているタイプを一緒に――さぁ!!」
 スティアとしきみの姿があった。ふふ、お姉様とのサマー・アバンチュール!
 しきみ、この機会を逃せません。恋人ストローで一気に距離を詰めるのです。ふふ、ふふふ!
「へー、こういうのもあるんだね。じゃあ一緒に飲もっか!
 ……あれ? しきみちゃん、なんか顔赤くない? 気のせい?」
「ええ、大丈夫。私は穏やかな鬼人種ですもの。ええ。ええ――あ、お姉様何方へ? 私とお揃いの水着で……『こっちだよ』と微笑んで水飛沫が……? ああいけませんお姉様! そのような――過激ッ!」
「しきみちゃん? しきみちゃん? 何が見えてるの?
 って、わー! しきみちゃん、とってもおでこが熱いよ!? 大変だー!」
 願望に沿いすぎている何かが見えているしきみ。わぁ、どうやら彼女はねっチューしよう……じゃなくて熱中症みたいである! ぶっ倒れそうな熱を秘めながらも何故か笑顔だけど。
 うふふ。これもお姉様への愛の放射熱量ですからご心配なさらず。
 あ、介護して頂けるなら人工呼吸を! 是非、是非――!
「ドラちゃん、歩きたい? それとも熱いかな? 今日は炎天下だしね」
 ビーチを散策するアンリの足元で『んにゃー』と見上げてくるのはドラネコだ。
 折角なので抱えてあげて歩こうか。
 普段は飛んでいるからこういう場所に足を付けて歩くは新鮮だ――
 周囲を眺めてみれば他にもビーチを楽しむ者は多く。
「……ふと、思い返してみればリゾート自体は初めてかもな。
 偶にはこういう場所で羽を伸ばすのもいいもんか――」
 マカライトもまた、ゆったりと過ごしていた。
 幻想や覇竜やら各地のゴタゴタが吹き荒れていたが故に。
 彼は寝転がる。吐息を一つ零しながら……
「暴れすぎるなよ、2匹とも。貸し出されてるとはいえ一応、私有地だからな」
 近くにて自由に放った二匹へと言を紡ぐものだ。
 ティンダロスにジーヴァ。日差しを浴びつつ、ゆっくりとさせて。
「ふむ、足触り……と言うのでしょうか? 独特ですね、この感覚は。海の近くでだけ知る事の出来る感覚……ううん。ビーチに来た甲斐があったというものです」
 更にイサベルは浜に広がる砂の感触を楽しんでいた。
 靴を脱いで存分に。パウダーサンドと呼ばれる粉の様な感触を感じ得る――
 嗚呼。それにしても暖かい空気、青い海に砂浜。
「なんていい景色」
 潮の風がイサベルを撫でる。
 暑い所が好き、と言う訳ではないが。
 寒い所では味わえぬ自然の全てを――イサベルは楽しんでいた。
「わ。砂がサラサラしてる……砂浜を裸足で歩くの、気持ちいいね」
「ああ。でも直射日光で熱を帯びてるからね。一通り楽しんだら、サンダルでも履こうか」
 そしてハリエットもイサベルと同様に砂浜を楽しむ一人であった。
 彼女の傍にはギルオスもいれ、ば。
「ギルオスさん。泳ぐって難しい? 私、ちゃんと泳いだことない」
「泳ぎか――そうだね、慣れが必要ではあるかな。折角だ、試してみるかい?」
「うん。泳げるようになりたいな……教えてもらっても?」
 勿論。と、ギルオスが紡げば、二人して海の方へと。
 知らない事ならば彼から教わりたい。
 きっと、彼の腕に導かれるならば、己の心は安寧と共にあるだろうから……
「あっ……」
 と。さすれば彼女はどうしても思い起こすものだ。
 先日の――部屋での一件を――
 ギルオスは、どう思っているだろうか。
 大人だから、子供を抱えて寝るぐらい……普通、なのかな……?
「――ハリエット、実は、その。この前の事なんだけど」
「え。あ、あぁ、うん。その」
「悪かったね。ついつい……なんだか、安心しきって完全に眠っちゃったみたいなんだ。いつも自分の部屋以外だとあんまり寝つきがよくないんだけどね――なんだろう。とっても、落ち着いたんだ」
「――――」
「……って変な意味じゃないからね! その、まぁ、何だ次は気を付けるよ!」
「……? 変な意味ってどういう意味?」
 ああ、いや、だから、その……
 しどろもどろとなるギルオス。『意味』ってなんだろうと、ハリエットは首を傾げるものだ。彼女はまだまだ自己にしろ他にしろ『疎い』面があり……ただ。なんとなし分かった事もあった。
 あの日の、彼の眠りはきっと穏やかだったのだと。
 己が腕の内に収まっていたのは――
 きっと気を張り詰める彼にとって『異』を感じさせるものではなかったのだろうと……


「みーつけた!! ギルオスさん、ご一緒させてもらうわ!!」
「わぁ!? ――あっ、京かい!? 君もシレンツィオに来てたのか!」
 そして。ビーチでの語らいの後に旅館へと戻って来たギルオスを京が見つけるものだ。温泉入り潮を流さんと……その推測は見事に当たり、発見。なお、捜索の為にかなり先んじて張ってた事は秘密だ。偶然にも今見つけた風を装って。
「浴衣姿、似合ってるね――あっ! 温泉入ると汗をかくでしょ。
 フルーツ牛乳、一本多く買っちゃってさ――ど、どう? 一本飲んでくれない!?」
「おっと、そうなのかい――? 丁度喉も渇いてた所なんだ。
 ありがたく頂くよ。ごめんね、京。気を遣わせちゃったみたいで……」
「ううん! いいのよ! あ、そうだ、これから晩御飯も一緒にどうかな!」
 更に逃さぬ。この好機を……!
 互いに浴衣姿。湯に入り、体を整えた後は美味なる食を共にするが自然なる流れ。
 ……お酌なんかもしてあげて、日頃の苦労を労わってあげようか!
「よし、よし……!」
「ん、どうしたの京――ガッツポーズなんてして」
「い、いやなんでも! さ、いこっか!」
 計画順調! 後はゆっくり共に過ごそうかと――思考を巡らせるのであった。

「ふぅ……流石はシレンツィオのホテルですね。これほどの絶景を独り占めできるとは」

 そして。湯に身を委ねるは愛奈もであった。
 彼女は天衣永雅堂ホテルの個室――に備えられている露天風呂に入浴中。
 其処より見えるオーシャンビューを楽しみながら、湯に浮かばせているは地酒だ。
 桶の中に入りし小さな代物ではあるが、これがまた極上を誘うもので。
「……おっと。うたた寝してしまいそうですね。
 いけません。のぼせる前にあがらせて頂きましょうか――後は本でも」
 が。故にこそ心地良すぎて意識が飛びそうだった。
 危ない危ないと、バスローブ羽織りて部屋の中へ……
 後は本でも読んで過ごそうかと――偶にはこういう日も、悪くはないものだ。

「い、いやいや待て待て待て! 帰ろうとすんなって! なあ! ねえ! 待って!!」
「そう言われてもねぇ……こんな事してるヒマがあったら領地の仕事のひとつでも片付けて欲しいもんだよ。今どれぐらい仕事が溜まってるか知ってるかい? ん? どうなんだい?」

 同じ頃。三番街のグランド・バルツ・ホテルにいるは――キドーだ。
 その隣にはアリアンヌもいる。領地の執政官をも務める彼女を誘った、はいいのだが。
「いや謝るよ……デートって言い方が悪かったな。これはつまりだな、俺の領地ルンペルシュティルツで執政官として日夜身を粉にして働いてくれているお前をたまには労ってやろうっていう、領主としての責任と福利厚生を今こそお前に」
「正直に言いな――カジノで幾ら溶かした?」
「え? いや、その、違う。違うんですよ。あの時は確かに俺の手元に沢山残っ」
 ……なぜかお説教が始まってしまっていた。うーん、これが二人の日頃なのかもしれない。
 が。些か照れ臭いが、ちゃんと感謝を伝えておきたい事実もあるのだ。
 だから彼女が落ち着けばとびっきりの海鮮料理でも奢って……え、下心があるかって? い、いやいやそんな、まさか、ねぇ? ええ、はい、その――あるよ!!
 直後。拳骨が飛んできたか否かは――また別の話としよう。

「……ふむ。三つの文化の交錯点で『公演を成功させ続ける』とは簡単な話じゃない。
 客層選び、劇団の質、公演内容の吟味――それら考慮した上で脚本と言い回しを想定し、改変する至高の技量がなければあり得ない。いやなんとも……如何な劇があるのかと出来心程度の気持ちで来た筈が、衝撃たる雷鳴が轟いた様なモノだ」
「それは結構な事だが……よくもまぁ小一時間を遥かに超えて語り続けられるものだ」

 そして近くのカフェではセレマと百合子の二人が――というかセレマが捲し立てる様に語り合っていた。ああ本当にコイツはいつもこうだと、百合子はついぞ思ってしまうものである……すぐに吾が目の前にいること忘れるんだから!
「然り。純粋に良いものを愛でる瞬間だけは、他の万象を忘れるものだ。陶酔……そう。微笑まんばかりの陶酔が心を満たし、反芻の甘味をこそ味わずして、存在せぬ意味があろうか――あぁ。如何にあの感動を噛み砕きて伝えればいいものか」
 ……だけれども。好きって人に言える事があって、今も夢中になってるっていうのは少し羨ましいし尊敬する。調子が戻ってきた時に聞く考察も理知に富んでいて――
「面白いしな」
「むっ? 今なんと?」
「あぁおはよう。ようやくこっちに意識が降りてきたか?」
 赤ワインを口に。セレマが余韻から覚めるまで彼女は待ち続けられるものだ。
 それは恋仲が故に? 否。
 互いに尊重し合い、し合える仲だと……それだけだ。
 百合子は、彼は彼だと。そしてセレマも彼女は彼女だと。
 ……かつてセレマも、彼方側の執着を見据えた事があったから。
 だからこれは。この場は、二人に通ずる世界なのだ。
 どちらか一方だけが繰り広げている訳ではない――共有し合えている世界なのだ。

 そしてクレーロス・ロイトン・ベイ。
 三番街にある高級ホテルに集っていたのは――ムエン達であった。
「……こういう所、初めてだからちょっと緊張するな」
「つい数か月前まで狭い村で暮らしていた私からすると異世界すぎます……
 わぁ……凄いですねこれ、大理石っていうんでしょうか……?」
「でもせっかくなので何かルームサービスも頼みたいですね。わわ、沢山ありますよ」
 他にもマリエッタやユーフォニーも集まって女子会である。ルームサービスで何か頼めないかと視線を巡らせながら……なんだか高そうなお酒と、ソレらに合いそうな食べ物も頼むもの。生ハムの……なんだろう、よ、読めないが、なんか高そうだ!
「あっ、ムエンさん。深緑での怪我はまだ痛みますか――? 今の内に治療しましょうか。
 マリエッタさん。パンフレットとか本は一旦カバンの中に!」
「うん。ありがとう――あ、マッサージは……痛くないようにしてくれ……うぐ~」
「あ、本はダメですか……はい、預かっておいてください……それにしてもムエンさんの顔、またアレになってますね? ソレどうやるんですか? え、顔を両手で挟んだら出来……出来ないですよ?」
「うーむ……私のはギフトだから、やっぱり色々勝手が違うのか(・∞・)」
 ともあれ。お酒が届くまで――パジャマパーティと洒落こもうか。
 マリエッタとユーフォニー。二人してムエンの(・∞・)を真似せんとするが、中々出来ない……ふふ。だけれども、その必死な顔が、なんともかわいいものだ――

「おーさーけー もっとー のーみーたーいー もっとぉ もっとぉぉ~ ……
 ユーフォニー~ マリエッタ~ もっと~~!」

 が。そうこうしている内にアルコールが届けば――ムエンが普通に(・∞・)化してた。
 むぅ! これが(・∞・)絡みというヤツか……!?
「まったくもう……ムエンさんはこれだから。水を飲みましょうね。
 ああ。もう完全に(・∞・)が固定化されちゃってますよ……!」
「わぁ、ムエンさんがたくさん酔ってますね……まぁ、今日くらいはいいんじゃないでしょーか。わたしもワイン、もうすこしのみたいですし……♪ それにしても、この感覚……これが『ママ』というものなんですね……まなびました」
「ユーフォニーさん? ユーフォニーさんもちょっと酔ってますか?」
 だめ? だめ?(・∞・) とねだってくるムエンをあやすユーフォニー。
 ……彼女は二人と一緒にいる時が、恐らく一番楽しいのだろう。
 だから少量の酒でも酔いやすい。
「ずっと一緒! ずっと! ずっと!」
「はいいっしょですよムエンさん――あ。おかしといえばチョコミントです。
 これ、とっておきですけど、おふたりにあげますね。
 えへへ、ずっといっしょです♪(・∞・)」
「あれ? 今一瞬ユーフォニーさんも(・∞・)だったような……
 ああ。二人とももうぐっすりと……」
 疲れたのか酔いが回ったのか、眠りに付くムエンとユーフォニー。
 その二人を眺めながら――マリエッタは夜更かしするものだ。
 ……悪夢を見るのはまだ怖いから。
 そして何より――二人の寝顔を大事に、大事に。覚えておきたいから。


 ――さて。夜が深くなってくるが、それでも明るい場所がある。
 三番街の一角に存在する、カジノだ。その中、で。
「むきゃー! どうして、どうして負けるんですか、どうして――!!」
「びぇえええ!? 滅茶苦茶負けましたぁぁぁ! どうしましょうリリファさん!
 このままじゃ二人そろって借金地獄への片道切符ですよ!」
 リリファと千代が盛大にボロ負けしていた……!
 ガタガタ。二人して肩を抱き寄せあい、怖がっている。きっとこの後こわいお兄さん達が奥の方から出てきて謎の部屋に連れていかれるんだ……! いかがわしい恰好、例えばバニーみたいなのを無理やりされて、裏モノとして流されちゃうんだ……! ぴえー!

 ――フフフ! は傭兵団『雑賀煉獄衆』の頭領候補にして『煉獄組』の娘の一人!
 ――任侠者たるもの賭け事は嗜みよ! いざや目指すはドリーム! 一攫千金――!
 ――リリファさん、勝負師ですね! 燃えてきました! どっちが勝つか勝負です!

 そんな事を三十分ぐらい前に千代は言っていたのに、どうして――!!
「うわー! だ、大丈夫ですよリリファさん、きっとカヌレさんに土下座すれば、へっちなビデオへの出演だけは避ける事が出来ると思います! 何が何でも借金を帳消しにしてもらいましょう――!」
「ひぃひぃ、千代さん、地獄に落ちる時は一緒ですよ……ちょっと! そのお胸で抱きしめるのは止めてもらえますか、ちょ……話を聞い……むきゃあああああ!!」
 豊満なるお胸に包まれるリリファ。
 思わずもぎ取らんとする感情に包まれるものである……あ、負けた同士で争いが!
「ふふ……リリファ氏らはなかなかドツボにはまっているようで。
 何の勝算も無しに大穴に賭けても負けに行ってるようなもの。
 ――こういうのはもっと適した遊び方ってものがあるんスよ」
 その光景を余裕ありげに眺めるのは――美咲だ。
 ふっ。素人はこれだから困るス……と、彼女が挑むはルーレットだ。低倍率のマスに賭け、少額のチップを賭け、負けたら前回の倍、買ったら最初の額という感じで賭けていけば――ほら。
「あああ!? 全然プラスにならないじゃないスか! クソッ!!
 理論上これで勝てる筈なのにどうしてスか!!
 もう良い、確率なんて信じるか――オラッ! 36倍一点賭けっ! 行け――!!」
 数十秒後。美咲の悲痛なる叫びが聞こえてきたのは――別の話としておこう!

「勝った方が負けた方のいうことを一つ何でも聞く――で良いわよねぇ?」
「ええ、ええ……きっと、とてもどきどきして楽しめますこと。
 やっぱりこういう賭け事はスリルがあってこそ、ですねぇ」

 そして同様にルーレットを楽しむのはアーリアにミディーセラだ。
 アーリアは思考する――ふふん、いっつもミディーくんにはそう、いろいろ……いろいろ負けっぱなしだから、今日こそは勝ってみせるの! ギャンブルだけは運の勝負。技術の介在せぬ場でこそ負けぬと……!
「ふふ。勝ったら何してもらおうかしら。そうねぇ、バニーさんなんてどうかしら?
 或いはもっともっと可愛らしい……いやスーツミディー君も悪くな――あら?」
「あら。一点賭けも偶には……悪くないものですねぇ」
 が。順調に勝っていた、筈が。
 最後の最後でひっくり返った。何度見ても、玉はミディーセラの賭けた所で……
「う、うそぉ!! え、え、その、待ってミディーくん! ま、まだ、まだ終わりじゃ」
「いいえ。これも運の勝負と言う事で……では、何をしていただきましょうかね」
 刹那。ミディーセラの妖艶なる笑みが――口端に見えた気がした。
 あぁ。一体何がどうなるのか。アーリアの余裕なる色はどこぞへと消え失せて……

「……あれ? レナ? あれ? なんか、どっか行ったね?」

 そして同様にカジノへとミニュイも至っていた――のだが。
 おかしい。同行していた筈のレジーナの姿が……どこにも見えない。
 どうして? まぁいいかと、適当にルーレットにでも興じていれば……おや。なんだか流れが来ているのか滅茶滅茶当たり出した。これは投機筋。乗らないと損――と、その時。
「ふふふ。みにゅ、いつから錯覚していたのかしら?
 戦うのが――ディーラーと客だけだって」
「あっ、レナ、いつの間に」
「さぁ勝負よ! お互いの賭け金どちらかがゼロになった時点で負け。
 ――あぁそうね。負けた方は勝った方のいう事を何でも聞く、っていうのはどうかしら?」
 レジーナが現れた。逃れえぬ賭けを行わんとしたタイミングで、勝負を仕掛ける様に。
 ふふふ。こういう条件……王道でしょ?
 ミニュイも勝っていて互いのチップはまだまだ沢山。
 さぁ――GOLDジャブジャブ使っていくわよ!

「な――――っはっはっは! 賭け事とは、運否天賦のみではない。
 人と人の駆け引き……それを制する者こそ、ぎゃんぶらー王となるのよ!」

 同時。賭場には夢心地の姿もあった――
 双六、賽子、かるたに花札……賭け事と言えば麿の出番だとばかりに。チョイスが全部和風じゃないですか、ぎゃんぶらー夢心地!? ともあれ彼はでぃらぁにも勝負を仕掛けるものだ。
 思考を読まれぬ変顔! 進行役に笑いを誘いて集中を乱し、隙を作らんと……あっ! 何をしておるか、玉よ! そこではない! 赤に行くのじゃ赤に! あ、あ、あっ――!!
「……まったく。皆してどうしもそうも……ああ全く。
 もうちょっとだけだぞ? 無駄遣いしないようにな……?」
「びええ、サイズさんありがとうございます~!」
 あちらこちらで聞こえる阿鼻叫喚――いや一応勝ってる者もいそうだが――とにかく、サイズは堅実な遊びを心掛けていた。それ故かチップには多少の余裕が出ていて……だからこそ爆死した者達へと少しだけあげようか。
 深緑で激しい戦いを行った直後だからと、ゆったりサイズは場の流れに身を委ねるものだ。
 今は忘れよう。傷跡を。楽しむべき明日を――瞼の裏に夢見て……
「ひゅ――!! いいじゃないこんなデカいカジノが出来るなんてねぇ!
 朔! 朔はおるか!! アンタカジノ来たことある!?
 行く!? 行っちゃう!? 行っちゃお!? ちょっとだけ行こ? ね? ね?」
「おい待て分かった、分かったから! 詰め寄んなし、近い近い近い!
 オーケー! オーケー! 落ち着けェ!!」
 ハイテンションの化身たるはコルネリアだ――彼女に引き摺られる形で朔も続く。
 カジノ。その存在にコルネリアは目を輝かせ、挑むはポーカーより。
 それからブラックジャック、ルーレット……あぁまだまだルーレットもあるか!
「おらぁ! フォーカードよ、どうよ!!」
「ひーなんでそんな強ぇんだよ……ま、命賭ける訳でもねぇし存分にやりゃいいさ。コスパもいいだろうしな――しっかし、見てるだけでも心躍るもんだなぁ」
「そいつが賭けの醍醐味だからね。さぁて、そろそろ切り上げて、折角だしホテルも行きましょうか」
「はっ!? ホテ……!?」
「ええ。プールがあるらしいし、泳ぎましょ?」
 あ、あぁ、プールね……
 刹那に高まった心の臓。いやいや俺も男だぞ……驚くわ、とは心の内で。
「此処はポーカーもやっているのか……これなら覚えてるからやりやすいが、どうかな?
 この間は無表情で続けるのだったんだけど――アンタは無表情得意?」
「ポーカーね、できるよ。無表情のままゲームを続ける……面白いね。
 ポーカーフェイスってヤツかな? その時の話も後で聞かせてくれる?」
 勿論。と、続いてポーカーの場に付いたのは寿馨とアレンの二人である。
 噂のリゾート地だと微かに滾る好奇心の儘に訪れてみれば、カジノの様な場まであるとは……散財せぬ程度に遊んでみようかとアレンは思考するもの。一戦、遊ぶ程度であれば破産も何もない――
「あぁいいよ、一勝負した後にその時の話もしてあげる。
 ――さぁて手札はどうかな。この一枚を捲る瞬間こそが、ポーカーの楽しい所だね」
「んー、手札いいの来ないかな。ああ、これも表情に出しちゃいけないんだっけ。
 保たなくちゃね。無表情を」
 さてさてどちらが勝利の女神に微笑まれる事か。

 ……だが。ヴァレーリヤは真理に気付いていた。

 カジノなんてどれだけ頑張っても胴元が儲かるだけだと。だから。
「つまり私の酒代を増やすためには、そう! ユリーカ直伝の『ないない』ですわ――!」
 彼女は強行した。
 金 庫 を ブ チ 破 っ て 悪しき金を聖職者として浄化する為に――! ホホホ! これは聖職者としての務めですわ――! って、あ、あら!? いつの間に警備員が此処に来て!?
「あ、あらー……どうしましたの? ごめんあそばせ。お手洗いを探している内に、どうやら迷ってしま……あっ! こら離しなさい! このバールは金庫inお手洗いのマスターキー(物理)なだけですから――! あー! どうせすごく儲けているのだから、少しくらい良いではありませんの!」

 ――22時54分。ヴァレーリヤ容疑者、逮捕。(※翌日解放されました)

 ……なにはともあれ、リゾート地の一日が過ぎていく。
 多くの者らが集まり、多くの者らが楽しむこの地は、如何なる物語が紡がれる事か。
 いずれにせよ。今日と言う日は皆が思い思いに過ごし、安寧たる時を過ごせた。

 シレンツィオ・リゾートへようこそ。イレギュラーズ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 リゾート地での一日、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 お楽しみいただけたなら幸いです~シレンツィオへようこそ!

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