シナリオ詳細
<ダブルフォルト・エンバーミング>ワールド・エンド・ゲーム
完了
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オープニング
●正義国の決断
決戦の時より、少しだけ時はさかのぼる――。
「『天の杖』の起動を視野に入れたい」
教皇庁の教皇の間にて、アストリアはシェアキム・ロッド・フォン・フェネスト六世へと告げた。
「首都防衛に備えてか」
シェアキムが厳かに頷く。天の杖とは、正義国に伝わる10の聖遺物の一つである。フォン・ルーベルグを守るための紋章砲台、非常に強力な防衛兵器だ。だが、アストリアは頭を振った。
「否……妾たちは、もっと攻勢に出ねばならん」
アストリアは、真剣な眼で、シェアキムを見つめた。
「先ごろ帰還した特異運命座標たちにより、スターイーターの情報はもたらされた。特異運命座標たちの協力者によるバックアップと、そのデータを組み込んで読み上げた予知によれば、スターイーターは『伝承国に姿を現す』と出ている」
「なんだと?」
シェアキムは意外な顔をした。
「何故だ……否、そうか。近頃報告のあった、砂嵐国の異変……禁断の地よりいでし件の怪物の行く先が、『伝承国』であるならば……」
「そうじゃ、シェアキム。これはおそらく、敵から仕掛けてきた最終決戦じゃと思う。ワールドイーターたちも、多くが伝承国に姿を現すじゃろう。ま、それで正義国をほうっておいてくれるか、と言えば答えはNOじゃ。首都に向けての攻撃も予知されておる」
なるほど、とシェアキムは嘆息した。
「奴らは全勢力を結集して、世界を壊すつもりじゃ。ならば妾たちも、正義国に閉じこもっているわけにはいかん」
「同意見だ。これはもはや、我が国を守るだけの戦いではない。世界を守る戦いであるというのだな?」
シェアキムは厳かに頷いた。
「だが……天の杖の起動範囲は、あくまでもここ、フォン・ルーベルグに留まる。伝承国にまで影響を及ぼすことは」
「可能のはずじゃ。すべての聖遺物を結集すれば」
その言葉に、指物シェアキムも瞠目した。
「……有史以来、10の聖遺物が一堂に会し、その真威を発揮したことはない。単体でも戦局を覆せるほどの力を持っているからだ。
故に、すべての聖遺物は、正義国の各家に分散・管理封印されている。
だが、10の聖遺物の本来の役割は、兵器などではない。すべては、真なる0番目の聖遺物を起動するための鍵にすぎぬ。
その鍵を開けると、言うのだな?」
「もとより、世界の危機じゃ。今使わずに何を使う」
アストリアは笑った。
「命が惜しいか、シェアキム? 確かにそうじゃ。天の杖単体の起動ですら、多くの聖職者の生命力を吸う。
真なる0番目の聖遺物を起動したら、そうじゃなぁ、きっと死ぬじゃろうなぁ、妾たち」
「ふ、そうだな……」
シェアキムは笑った。
「だが、命を惜しんで何が我らが矜持か。
よかろう、アストリア。これより我が国は非常態勢にはいる。
正義聖騎士団は必要最低限のみを残し、全軍を伝承国へ派遣。
同時に、すべての聖遺物を運用する。現在所在が分かっているのは……」
「『エンピレオの薔薇』は妾の星見に組み込んで居る。後は、『天の杖』『コンフィズリーの聖剣』『ミルフィールの神槌』『ロウライトの神旗』『アークライトの地槍』辺りは管理されておるはずじゃ。
……『ヴァークライトの聖骸布』は現状行方不明じゃったな。ワールドイーターに食われたやもしれん」
「ギリギリまで確認と捜索を続けよう。とにかく、可能な限り聖遺物を結集し、星見に組み込む。
すべての聖遺物が集まらねば、おそらく十全の力は発揮できんが……何もしないよりはいいだろう。
ふっ……忙しくなるな、アストリア。こんな気持ちは、お前と共に正義国の改革にいそしんだ時以来だ」
「そりゃテンションも上がるじゃろ! 世界を救う戦いじゃぞ!」
アストリアはにぃ、と笑った。シェアキムもまた、静かに笑ってみせた。
●世界の終わりの遊戯
時は巡る。決戦の時は来る。
R.O.OVer4.0、<ダブルフォルト・エンバーミング>。世界がアップデートされたとき、訪れたのは破滅であった。
世界の各地が、大規模な異変に襲われ、終焉の獣が、或いはこれまで世界を襲ってきた異変が結集し、世界を滅ぼすべく行軍を開始する。
その戦列が一つ。先頭に、それはいた。
一言で言うならば、巨獣である。
終焉の獣もかくやたる巨大なる体躯。眼は炎のように赤く輝き、映る餓えの感情が、世界を喰らいつくさんと睥睨する。
それは、星喰い。元来は、餓えだけを持った小さなバグ。
それは特異運命座標たちのデータから形を得、目についたあらゆるデータを喰らい続けた。
喰らって、食らって、喰らって。
それでもまだ足りなく。
ああ、まだ食いたい。食い足りない。
全てを喰らいたい。
「うーん、相変わらずだね」
その足元に、少女がいる。
元々は、無垢なデータだった少女は、許容できぬ記憶を喰らい、心の器にひびを入れた。
天国篇第九天 原動天の徒。その外見はスティアによく似た、スティアではない存在。
「食べる事しか考えてないや。ま、その分、私の言うことも聞いてくれやすいんだけど」
原動天が笑う。己の特殊能力により、原動天は『獣』を操ることが可能だ。それは、オリジナルであればサメを操る様なものだったが、しかし原動天が操るのは、世界を喰らう怪物たち。
「食べたいんでしょ。いっぱい食べさせてあげる。
正義国を狙えないのはちょっと嫌だけど、伝承国を食べちゃえば、まぁ最終的には終わりだから! この際どっちでもいいよね!」
原動天が無邪気に笑った。
もう終わらせたかった。
こんなくだらない世界(ゲーム)を。
考えれば考えるほど、辛くて苦しくなる。
壊れてしまいそうになる。
どうして、私の家族(ああ、そんなものはいない。これは他人の記憶だ)はひどい目に遭ったのに。
この世界は、それを覆い隠して、嘘だったみたいにみせているのだろう。
どうしてみんな、いい人だったみたいな顔をしているのだろう。
あなた達は醜くて、
悍ましくて、
汚くて、
クズで、
生きていてもしょうがないような奴らだったでしょう?
そんなあなた達が、善人ヅラして幸せに生きているのが。
たまらなく辛いの。
たまらなく苦しいの。
「だから、壊しちゃおうね、みんな」
原動天が笑った。
スターイーターが吠える。
週末の獣たちが吠える。
ビーストマスターによる、終焉の行進が。
今、あなた達の前に立ちはだかっている――。
- <ダブルフォルト・エンバーミング>ワールド・エンド・ゲーム完了
- GM名洗井落雲
- 種別ラリー
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2021年12月11日 22時10分
- 章数3章
- 総採用数207人
- 参加費50RC
第2章
第2章 第1節
「ここまで近づいてきた……正義騎士たちの援軍も、中々使えるみたいだね」
原動天が舌を巻く。すでに数名の特異運命座標たちと交戦した原動天。ダメージと言う点では消滅には至らないが、しかし、このペースで自陣迄攻め込まれたのは想定外と言えた。
「……ちょうど、スターイーターも目覚めたみたいだね。なら、ちょうどいいかな」
原動天がくすりと笑った。
「スターイーター。砲撃を開始。目標、南東の正義騎士部隊」
特異運命座標たちは、倒しても倒しても復活して戻ってくる。
だが、この世界の人間はどうだ?
一度死ねば蘇れまい。
「まずは、突き崩しやすい所から崩していこうか」
原動天の微笑に、スターイーターは咆哮をあげた――。
――システムメッセージ――
クエストが第二章へと突入しました。現状を簡単におさらいします。
皆様特異運命座標たちの活躍により、終焉の獣たちは押しのけられつつありました。同時に、正義騎士団第一部隊が到着。聖遺物を持った指揮官、NPCのサクラの下、終焉の獣の掃討に動き出しています。
これにより、第二章では、皆さんはより原動天・スターイーターへの攻撃に注力できるようになりました。
しかし、目覚めたスターイーターは、強烈なブレス攻撃を、正義騎士団へ向けて準備中です! これを放っておけば、正義騎士団に甚大な被害が発生することは避けられません。また、NPCのアンナ、サクラが死亡した場合、聖遺物は力を失い、今後の展開に甚大な影響を与える可能性があります。
これを防ぐためには、一定量のダメージをスターイーターに与え、ブレス攻撃を停止させるしかありません。
しかし、原動天もそれを黙って観てはいないでしょう。
原動天を制止し、同時にスターイーターへ攻撃を行ってください。
現時点で、スターイーターの弱点などは分かっていません。また、強烈な反撃が、皆さんに甚大な損害を与える可能性があります。ですが、やるしかありません。
全戦力を結集し、ブレス攻撃を停止させてください。
以上、健闘を祈ります。
第2章 第2節
記憶を魂と仮定するならば、私は誰かの魂を持って生まれた。
知らない誰かの魂。
その魂を植え付けられた私は、
どうすればよかったのだろうか?
その人に、なればよかったのか。
その人を、壊せばよかったのか。
だとしても――私とは、誰なのか?
スターイーターのブレス。特異運命座標たちの戦線を突き崩すべくチャージされたその力に、しかし特異運命座標たちは決死の猛攻を仕掛けている。
「だろうね、けど、邪魔はさせない……!」
原動天がその刃を抜き放ち、迎撃にうつろうとした刹那、鋭い飛び蹴りが、その身に迫った。原動天は慌てて身を反らせると、その頬を、鋭いヒールの先がかすめていく。
「みつけたっ、偽スティるん!」
「金星天……ううん、オリジナルのエイル・サカヅキだね……!?」
原動天は刃を振り払い、エイルと距離を置いた。エイルは着地しつつ、すぐに飛び出す。
「流石スティるん、かきーんって跳ね返しちゃうんだ! でも!」
回し蹴りが、原動天の持つ刀を叩いた。ぎり、と受け止めた原動天の手に、痺れが奔る。
「あの時は会えなかったね! だからご挨拶!」
「あの時、金星天にすら勝てなかったあなた達に、原動天たる私が倒せるとでも……!?」
挑発するように言う原動天に、エイルはにやり、と笑ってみせた。
「一人じゃ勝てない! けど、アタシの仕事は、原動天サマ……アンタに隙を作る事!」
エイルの姿が掻き消える! 同時、飛び出した人影! 刃! 天川の繰り出した二対の刃が、連続して原動天へと迫る!
「あのデカブツを動かして真打登場ってか? デカイのは他の連中に任せるとして、アンタを先に排除させてもらう。
確実に、後々厄介なことになるし、それに……やり合ってみてぇってな! 同じ剣士として!」
「悪いけど、私はそういうのには興味がないんだ!」
原動天が刃を振り払う。その技はコピー。されど、オリジナルより強化さr手た一撃が冴え渡り、天川の身体を裂いた!
「はっ……鋭い! やるじゃねぇか!
ああ、いってぇな! こいつはお返しだ! 受けられるかい? お嬢ちゃん!」
天川の刃は、追い詰められてこそなお冴え渡る。先ほどより鋭く振りはな足られた斬撃を、原動天は何とか刃で受け止めた。衝撃が、その身体にダメージとなって駆け抜ける!
「くっ……さっきのはけん制、こっちが本命だね……?」
「正解だ! もう一発……!」
「させないっ!」
原動天が反撃の刃を繰り出す。流石のダメージを、天川は耐えられない。
「ちっ、流石大ボスサマ! だが、一撃繰り出せれば充分だ……!」
自分一人で倒す必要はない。此処には多くの味方がいる。自身が光の粒子に包まれて消滅するのへ、その光の粒子の影から、飛び込むは蕭条!
「魚……!?」
原動天が叫ぶのへ、蕭条がその尾びれを思いっきり振り回してやった。扇のような尾ひれが、原動天へと叩きつけられる。
「隙あらば邪魔してやるアターーック!!」
べちん、と言う音と共に、叩きつけられる尾びれ、原動天がたまらず後方へと跳躍。
「面白いアバターだね!」
「でしょう!? でも至って真面目ですっ! こっちも防御抵抗上げ上げで挑んでますが、ええ、御強いですよね! 知ってた!
そんなの相手にふざけてなんかいられませんっ!」
飛ぶ蕭条。アバターは特殊だが、その戦闘能力は充分以上だ! 蕭条はサメのバズーカをぶっ放す! さめー、と鳴き声をあげるサメが原動天に迫り、原動天はそれを切り裂いて回避!
「なんだか、サメは懐かしい感じがするね……!」
舌打ち一つ、原動天が走り出す――が、それにクシィ追従する! ナイフを繰り出し、原動天へ一撃! 原動天はそれを刃ではじいた。
「よう、俺を見な! お嬢さん!」
「……っ!」
鋭く振り払われる刃に、原動天は防戦に徹することにした。連続で斬り放たれる刃。原動天の刃が煌き、激しい剣戟音が鳴り響く。
「別物なんだ。偽物どころか、似ているだけで違うんだよこの世界は!
俺も馴染みの顔に会ったが、関わるほど別人だと分かった!
関わって理解しろとまでは言わねェ!
見た目と情報に誤魔化されんな。一つズレれば別物だ! お前だって!」
記憶を魂と仮定するならば、私は誰かの魂を持って生まれた。
知らない誰かの魂。
その魂を植え付けられた私は、
どうすればよかったのだろうか?
その人に、なればよかったのか。
その人を、壊せばよかったのか。
だとしても――私とは、誰なのか?
すべてが借り物の、虚構の魂だとしても。
今思う、私の心に生まれた憎しみだけは本物だ……!
「私を私と定義づけるのは、魂じゃない! 今、この瞬間に生まれた私の想い……憎悪だけだよ!
私はスティアじゃない……知ってる! じゃあ、私は何なの!?
私を慕ってくれる人もいない!
私を愛してくれる人もいない!
私と友と呼んでくれる人もいない!
私にあったのは、生まれた瞬間に植え付けられた記憶と言う名の魂!
それに対して浮かんだ、この世界への憎悪と嫌悪!
私は――私は――ッ!!」
力強く振り払われた刃が、クシィを弾き飛ばす。
「……アンタはなぁ!!」
クシィが、吹き飛ばされつつナイフを投げつけた。きぃん、と原動天はそれをはじき返す――同時! CALL666の遠距離射撃が、強烈なエネルギーの奔流が、原動天をその場に縫い付けた!
「お前の境遇は正直解らない」
CALL666が、ゆっくりと弓を構えた。同時、吹きあがるエネルギーが強烈な光を放ち、矢として顕現する。
「だが、俺たちを葬ろうとするなら……世界を消そうとするならば。
見せてやろう、死に物狂いの融資の力と言うものを!」
CALL666が、再びエネルギーを撃ち放つ! 青の奔流が原動天に降り注ぎ、その衝撃により足を止める!
「邪魔を……!」
原動天が呻くのへ、追撃とばかりにHが魔剣を振るった。
「お前がオリジナルと違うというのなら、お前の名を言ってみろ!
お前は誰だ! 言ってみろ、お前自身の名前を!」
「……ッ!」
原動天が刃を振るった。魔剣から放たれた衝撃波が、原動天を圧すように、降り注ぐ。脚を止められたこともあり、原動天はそれをよける事できず、受け止めることで流す。
「見せてみろ、何を選び、何を大切にして生きていきたいのか!
それは破壊で得られるものなのか!」
「……! 私には、それしかないんだよ!」
「違う! あるはずだ! 手を伸ばせ! 声をあげろ! つかみ取るならば、今この瞬間のはずなんだ!
もし悲しいだけの破壊なら、俺が止めてやる……!」
「……ッ!」
原動天の刃が、旋風を伴ってHに迫る。斬撃! 空間を越えて切り裂くそれが、Hの身体を切り裂いた!
「止めてせてよ……!」
「なぁ、君は何故、そんなにもつらそうにしている」
流雨が、言った。
「なぁ、ぱらすて君。ああ、これは君の名だ。僕がつけた。
パラディーゾのスティア君だからぱらすて君だ。名前は大切だぞ。最初に貰うモノだからな。僕も貰った」
「名前……?」
「そうだ。君はスティア君ではないからな……。
それはそれとして、君はバグだ。世界のルールに拘る必要もあるまい。それが執拗に拘る。怖いのかね? 己で選ぶのが」
「……」
「生まれてきたのは君の罪では無いが、それからは君のモノだからな。自分に何もないと思い知らされるよりは、役割に盲進したのが楽ではあるだろう。「親の敷いたレール」というヤツだ。
だが、つまらないだろ?
この世界の僕(星喰い)を見ろ。あれは僕の分身のようなものだと考えているのだが……さておき、あんなに楽しそうだ。君も役割に邁進するなら、せめて、もっと楽しそうにしたまえ」
「お礼は言うよ。パラスチ。ふふ、可愛いかもしれないね。
でも」
原動天はゆっくりと構えた。
「あなたに私の何が分かるの?」
「わからんね。だから聞いている。言葉は、人と人とのコミュニケーション初歩だと、僕は教えられた」
「そう。答えは拒絶。貴方達とコミュニケーションを取るつもりは――」
ない! 原動天は叫び、跳んだ。刃が流雨を切り裂く刹那、飛び込んできたネイコがその刃を受け止める。
「見つけた……!」
「あの時の!」
ネイコの呟き、原動天は叫んだ。ネイコの振るう刃が、原動天を圧す。
「……あの時より、強くなったのかな?」
「こっちも本気だからねっ! ……桜さんっ!」
「原動天! こっちだよっ!」
同時、斬り込む桜が、原動天に接敵した。斬撃。原動天はそれを後方へ跳躍して回避、が、すぐにネイコが切り込む。桜とネイコのコンビネーションが、原動天をじりじりと追い詰めつつある。
「貴方の憎しみは、わかる……きっとそれは正当なもので、私たちの……ロウライトの罪すべてを、贖う事は出来ない……!」
「わかってるんじゃない!」
原動天は叫んだ。スティアと同じ目に輝く、深い憎悪の色。い竦むようなソレに、桜は、ネイコは、僅かに息をのむ。
「あなたのせいで、『私』の家族は……!」
「そうだね、それを悩まなかったことはない。けど、それが誰かの救いになるなんて、うぬぼれてもいない……だから!」
桜が踏み込む。斬撃が、原動天の刃を打った。剣戟の音が響く。
「貴方の憎しみ、それでも幾分でも晴れるよう、貴方の怒りを私にぶつけてきなさい!
我が身を持って受け止めましょう。
……故に! 天義の正騎士、サクラ。参る!」
「う、うっ!」
憎悪に歪む、原動天の表情。力を込めて振り払われる刃が、桜を圧した。
「許せない……貴女を。でも、それ以上に……どうして……!」
原動天が叫んだ。振るわれる刃、その衝撃波が、桜と、ネイコを弾き飛ばす。ネイコと桜は空中で回転すると、着地。すぐに飛び込む。
「それは……分かってるんだよね、桜さんが、大切な友達なんだって……!」
ネイコの言葉に、原動天は叫んだ。
「違う! 違う、違う……!」
でたらめに振るわれる刃が、2人を襲う。それでもその威力は脅威的だ。二人は何とか刃で受け止めると、距離を取る。
「違わないよ。貴女に、私の記憶があるのなら、わかってるはずなんだ」
ゆっくりと、スティアが言った。
刃を、構える。
「貴女は、私じゃなくても。でも、私の記憶を、想いを分かってくれるなら……憎しみだけじゃないって、知ってるはずなんだ」
「違う……! 私は!」
原動天が、叫んだ。
「思い出して。私に優しくしてくれた人がいた事。私を愛してくれる人がいた事」
「それは、貴女だ! 私じゃない!」
「違う! 貴女が私のコピーだって言うのなら、私が受けたやさしさだって、貴女にコピーされてるんだ!
それに……もし貴女が私と全然違うんだとしても、そうなら助けてほしいって言えばよかったんだ。
『貴女』に手を差し伸べてくれる人だっているはず……皆が傷つけるだけの人なんじゃない!」
スティアが、刃を構えて、踏み出した。原動天が、刃を構えて、それを迎え撃つ!
「桜ちゃんも、ネイコさんも。私を助けてくれた人たちがここにいる!
貴女にだっているんだ!
目をそらさないで! 目を背けないで! 世界は、悪い事ばっかりじゃない!」
スティアの斬撃を、原動天が受け止める。剣戟と衝撃が、辺りを空気を震わせていた――。
成否
成功
状態異常
第2章 第3節
原動天と特異運命座標たちの激闘は続いていく。多くの特異運命座標が、その前に立ちはだかった。ダリウスもそうだ。
「すばやいね、けど……!」
原動天の斬撃を回避しながら、ダリウスは叫んだ。
「いいね! だが、剣先がブレてるな……!?」
わずかに鈍る原動天の斬撃を、ダリウスは容易に回避してみせた。とはいえ、ぎりぎりの綱渡りであることに変わりはない。確かに敵の攻撃は鈍ったが、それでも、こちらを殺すのに充分な鋭さは持ち合わせているのだ。
同時、スターイーターを討伐すべく向かったもの達も、戦闘に突入するのを、ダリウスは見ていた。原動天を抑えつつ、スターイーターの攻撃を阻止する。
言うは易く行うは難し、ではあるが、しかし今この場でこれを実行できなければ、負けはみえているというものだ。
「ま、どれだけ厳しくても、俺のやることは一つだ。
こっちは抑える……命に代えてもな!
デカブツは頼んだぜ、皆……!」
スターイーターとの闘いを続ける仲間達に内心でエールを送りながら、ダリウスは原動天と対峙し続けた。
原動天は、ダリウスらに抑えられる、スターイーター攻撃チームの妨害を防がれている。
そして場面は、スターイーター攻撃チームへと移る――。
成否
成功
第2章 第4節
さて、場面は星食いとの対決にうつる。星喰いの周囲には強烈なエネルギーの奔流が見えた。恐らくこれが、敵がチャージしているエネルギーなのだろう。これが極限までたまった時に、破滅のブレスは吐き出される……!
轟! 星喰いは吠える! それは、やがて存分に飢えを満たせるという事への、歓喜の声にも聞こえた! すさまじい大音声が、戦場の空気をびりびりと震わせる!
「でかい声で叫びおって、耳が痛くてしゃあないわ!」
星は大地から、星食いを見上げる。巨大な体躯。まさに山のようなそれが、ゆっくりと歩いてくる。
「星喰い、とは舐めた名前しとるやないか。
星がただで食われてやるとは思わへんことやな?」
その手を高らかに掲げる――同時、煌く星の瞬きが、流星のごとく降り注ぐ! 星喰いの身体に次々と着弾する星の瞬きが、その身体の表面で爆発を起こす。
「一発でアンタが倒れるとは思っとらんわ! やけどな、オマエに喰われた程度で、星の輝きは消えん。星の光はどこにでも届く。関係あらへん。
さあ、飲み込めや!」
星々が瞬く! 星喰いの表面で次々と爆発を引き起こす。ごう、とわずかに吠えた星食いへ、マリ家が跳躍、空中から接敵する!
「スターイーター! 相手に取って不足なしです! いかに強大であろうと! 打倒して見せますとも!」
放たれるバルカン、いや、串が、どどど、と星喰いの表皮に突き刺さる! 流石に痛みを感じたのか、星食いはわずかに身体を揺らせた。星食いは怒りをあらわにするようにその右手を振るうと、薙ぎ払うように振るった。マリ家は身をひねって、それを回避――が、腕を揮う過程で発生した風の奔流が、マリ家の体勢を崩し、吹き飛ばす!
「おおっと!」
バランスよく体勢を立て直し、着地。同時、シフォリィの回復術式がその身体に刻まれた疲労を回復していった。
「焼け石に水かもしれませんが……!」
シフォリィがそう言うのへ、マリ家が笑った。
「いいえ、そんなことはありません! 少しでも長く戦場に立てるよう、お願いいたします!」
そう言って、飛び立っていくマリ家。シフォリィは再び、祈る様に回復の術式を編み上げる。
「星を飲む獣……! 本当にこの世界を終わらせようとしているのだとしても、私たちは負けるわけにはいきません!」
シフォリィは祈る。この世界に生きるものがいる。その人たちにとって、この世界はまごう事なき現実なのだ。だったら、その世界を壊させるわけには、行かない!
「少しで、ほんの少しでも、私が力になれるなら……!」
シフォリィの編み上げた回復術式が、空に光となって飛んでいく。聖なる祈りは仲間達の背中を押す力となって、強大な敵に立ち向かうための活力となる。
「おおおらぁっ!」
そんな祈りを背に受けて、雄叫びと共に♱✧REⅠNA✧♱が突撃する! 振るわれる杖の一撃は、敵の体毛に阻まれてダメージを与えられていないかのようにも見える。いや、そもそも、特異運命座標たちの一撃一撃が、本当にダメージを与えているのかもわからないのだ。敵の体力バーの様なものは視えない。
「ったく、絶望的な状況になると現実逃避したくなるけどな!」
愚痴りつつも、しかしその攻撃の手を休めない。
「ほんとに止められるのかって思うけど……止められなきゃゲームオーバーだ! 世界はまだまだ壊させはしねぇぜおい!」
♱✧REⅠNA✧♱が懸命に攻撃を続ける。同様に、多くの特異運命座標たちも攻撃を続けていた。休んでしまえば、その分破滅に一歩進むことになる。息つく間もなく、間断なく攻撃を続けなければ、この怪物は止まるまい。
「……っ! スターイーター……こんな、まるで何もなくなってしまうような景色を……!」
シュネーは跳躍しつつ、周囲の光景を見た。そこにあったであろう景色は、削り取られた様になく居なっていた。後にあるのは、赤茶けたむき出しの大地の身。すべてが、スターイーターによって食われたのだ。いや、まだ地面があるだけましなのだろう。その本能を解き放ったのならば、おそらくここ一体は本当の虚無に至る……!
「でも、まだ完全な無ではない! みんなが立っているなら……わたくし達が立っているから!
ならばわたくしたちは、それを護りましょう。そのブレス、止めさせていただきます!」
シュネーの放つ、雪のような魔力の奔流が、星喰いの身体を奔る! 薙ぎ払うように払われたそれが、星喰いの左ひざ、その表皮を削り取った!
「そこに撃ち込めば……! グリュック! 魔力チャージ頼む!」
「うきゅー!」
フェアレイン=グリュックが叫び、荷電粒子砲を構える! その砲にチャージされる魔力が、ばぢばぢと夜色に染まりつつスパーク!
「荷電粒子砲に溜まった魔力を物理的衝撃へとコンバート……発射!」
言葉とともに発射された夜闇の砲が、黒の帯を引いて赤焼けの空を薙いだ。夜闇の魔力が、表皮をはぎ取られた星喰いの肉へと突き刺さる!
「誰かの大切な者は奪わさせない!」
叫びと共に、魔力はさらに強力に巻き起こる! 一方、Λはその周辺を飛びながら、裂けた肉へと、己の持つ全武装の照準を合わせる。
「スターイーター……星喰らい、ねぇ? 随分と大仰な名を冠しているけれど……ちょうどいい、この世界にとらわれたこの身、図らずも得た身体強化……君で試してみようか!」
その全身から、焔の如きエネルギーの奔流が巻き起こる!
エーテルコンバータードライブ、魔導鋼翼展開! 全ミサイルラック開放! 遠慮はいらない! 全弾もってけ!
「連装魔導噴進砲斉射! 更に魔力極限まで収斂……ターゲットロック……目標スターイーター……周りの終焉獣諸共貫け魔導砲!」
轟! 轟く轟音! 強烈な銃撃の斉射が、ウィークポイントと化した左ひざの肉を貫く! 星喰いが、この時、ごう、と悲鳴をあげた。それは、特異運命座標たちの攻撃の成果を現すものであった――。
成否
成功
第2章 第5節
星喰いの怪物。
原動天。
二つを相手取った、特異運命座標たちの激闘は、終わることなく続いている。
一方、小型の終焉獣たちと戦いを続ける正義国聖騎士団。拮抗するその戦場に、新たな影が差していた。
「聖騎士団本隊、どうやら間に合ったようだな」
レオパル・ド・ティーゲルに率いられた聖騎士団第二陣、本隊が、ついに戦場へと到達したのである!
「全軍、第一陣へと続け! 敵は終焉の獣たち、そして星喰いだ!
これは世界をかけた戦いだ! 命を賭してでも、勝利を勝ち取るのだ!」
レオパルの号令と共に、騎士たちがなだれ込む!
かくして正義国よりの援軍はこの地に到着し、特異運命座標たちのバックアップを開始したのであった。
第2章 第6節
「あれは……レオパル氏っスね。よく見たら、前に鋼鉄のフレイムダウン作戦の時に見かけた騎士の人もちらほらと……」
星喰いと相対しつつ、ミミサキは後方に展開した聖騎士たちを見やる。かつて共闘したレオパル、そして聖騎士たちもまた、この戦場へと駆り出されたようだ。そうだろう、この戦場は世界の命運をかけた決戦の場。彼らが手を貸さないはずがない!
「……じゃ、死なれたらちょっと寝ざめが悪いっすね。しゃーない、やりますかー……!」
わずかに笑みを浮かべつつ、ミミサキは星喰いの前方へと立った。星喰いの背中がバチバチと放電し、赤い雷が周囲へと降り注ぐ。ミミサキはそれを受け止めながら、跳躍。
「レアドロップはこっちっスよ……あんまり好きじゃないっスけど、根競べと生きましょう。ま、今日の私はそう簡単にはおれないスけどね……!」
その身に雷を受けながら、ミミサキは笑ってみせる。痛みが身体を駆け抜けるが、しかし、いまはその身を挺してでも守らなければならない者たちがいる。
「エイラも手伝うよぉ」
ふわり、と浮かんで、エイラがミミサキの隣に立った。共にその身を挺して、星喰いの雷を受け止める。
「へへ~、エイラぁ、火力ないからぁ。皆を守って、その分、皆が攻撃できるようにするよぉ」
「そうっスね……もうひと頑張り行くとしまスか」
エイラの言葉に、ミミサキは頷く。かくして、二人の楯が戦場をかける! その一撃、攻撃を己が身に引き受け、仲間達を守るその姿は、まさに守護神と言った所か。
一方、守る、と言う点に関していえば、ルフランも同様。といっても、こちらは傷をいやすことで仲間を守るのだ。リンゴの光があたりを照らし、それは特異運命座標たちを、そして聖騎士たちを包み、傷を癒していく。
「ほんとはこんなこと思っちゃダメなんだけど……。
天義で、皆でこういうふうに戦った時の事を、懐かしいって思い出しちゃう。
あの時は、まだまだあたしはひよっこで……守ってもらうような立場で」
正義の聖騎士たちの姿を見ながら、かつての天義の騒乱を思い出す。
あの時の事。あの時の自分がやった事。出来なかったこと。
この戦いを、その代替物にするわけじゃないけれど。でも、あの時の恩を、少しでも開けせるなら……!
「あたしは、もう護られるヒーラーじゃない! 現実だって、こっち(R.O.O)だって、皆を護れるようになったんだから……!」
蜂蜜のような光が、仲間達を包み込む。それは、戦旗を掲げ戦場をかけるR.O.Oのサクラやアンナにも降り注いだ。
「これは……暖かで、優しい光……」
サクラが心強そうに頷く。
「ありがとうございます! 勇者様!」
アンナが、手にしたハンマー片手に手をふってみせる――と、そこに飛び込んできた終焉の獣。その鋭い爪がアンナに触れる直前、クマさんの爪が獣を薙ぎ払い、吹き飛ばした!
「もう! ですから、よそ見をしてはいけないと……!」
ハルツフィーネがアンナに駆け寄る。アンナは少し申し訳なさそうな顔をした後、
「申し訳ございません。不謹慎ですが、少しワクワクしてしまいまして……」
総いうあんなに、ハルツフィーネは胸中でぼやいた。
(でしょうね! よくわかります……それが少し腹立たしいですが……!)
こほん、とハルツフィーネは咳払い。
「いいですか? 貴女は聖遺物を持つ存在。戦いのキーになるかもしれないんです。
ここから、戦いは激しさを増します。私から、絶対にはなれないように。
良いですか! 絶対に! 死なないで下さいね!」
「わ、わかりました、フィーネ様!」
こくり、と力強く頷くアンナ。とはいえ、本当にわかっているのだろうか、と頭を抱えたくなるハルツフィーネであった。
成否
成功
状態異常
第2章 第7節
「さて、戦いも大詰めですね」
黒子が呟く。相対するは巨体、星喰いの怪物。その処理能力が導き出す援護能力が、立ち向かう仲間達の背を押す。
「敵は強大。そして巨大。果たして我々は、象に挑むアリでしかないのか……。
いいえ、アリの一穴とてダムを破壊する。
アリが象を殺す所を、ごらんに入れましょう」
黒子がその処理能力をフルに活用した。見て、観て、視る。視覚、聴覚、否、すべての五感を総動員し、敵の動きを察知する。
「さぁ、行きましょう皆様。止めますよ、あの怪物を」
「まっかせよーい!」
玲が叫び、一気に飛び出す!
「ええいっよくもやってくれたな! スターイーター!
ちょっと痛かったぞ! 一瞬で乙ったからな!
これはあれじゃな、いわゆる「DPSちぇっく」と言う奴じゃな!?」
じゃきい、と両手に小銃を構えながら、玲は笑う。
「どこが弱点かはわからんが、じゃったらなおさら! その巨体目がけてとにかく撃つべし、じゃ! マッハでハチの巣にしてやるぞい!!」
その言葉通り、両手の小銃が火を噴く! ダダダダダダダダダ! 問答無用の銃撃が、星喰いに雨あられと降り注ぐ!
「ちゅうても、ギミック処理? もせんといかんパターンかもな!」
「ギミック。何処か破壊できるところを攻撃したり?」
ぴょん、と星喰いの身体に飛び込み、その皮膚をもぐり、と『捕食』してやったのはすあまだ。
「ぺっぺっ、おいしくないね。ダメージは入ってるみたいだけど……」
ぴょん、とすあまが飛びずさる。同時、身をよじった衝撃で震動が起きた。あのままその場にいたら振り落とされていただろう。
「玲の言う通り……弱点を探すのが大事かも!
どういう所を狙うべきだろう? 関節とか、お腹の下とか?」
「むー、じゃが、見ろ、あの腹、毛皮。腕には鱗っぽいものあるしなぁ、中々見つけ出すのも厄介そうじゃぞ?」
例が言うのへ、すあまがむー、と唸る。
「とにかく、走り回って攻撃するしかないかな……こっちの攻撃は、ダメージや不利な効果とかはきいてるんでしょ?」
すあまがそう言うのへ、ヒロが頷いた。
「どうやら!」
ヒロの掲げた武器から放たれた蛇神のエフェクト、それは敵の巨大なサイズに合わせるように巨大化し、その腕へと絡みついていた。ぎり、ぎり、とその腕を押さえつける。
「効いてはいるみたいだな……けど、この効果が例のブレスにきくかはわかんねぇ!」
「ゲーム的に考えたら、おそらくDPSチェックじゃから、ブレスの発動自体にBSは関係ないと思うぞ? なんかメタ発言ぽいな!」
玲の言葉に、ヒロは頷いた。
「まったく、現実なのに非現実的な気持ちになるぜ。とにかく、こっちは少しでもあいつの動きを遅らせる! その間に攻撃か、弱点! 探してくれ!」
ヒロが再度、その手を掲げる。洗われた巨大な蛇が、残るもう一方の腕を締めあげた。ぎゃおう、と星喰いは悲鳴をあげる。傍から見れば、巨大な蛇と巨大な怪物の戦いだ。迫力はあるが、見入っているわけにはいかない。
「スイッチ、何かわかった?」
すあまが言うのへ、スイッチが頭をふる。
「まだだよ……と言うか、スケールが大きすぎて、とにかく強い、って事しかスキャンできない……!」
「でしょうね……」
梨尾が言った。
「……なぁ、パラディーゾ。これがお前さんの望みなのか?
お前さんも知ってるはずの痛みを……誰かが死ぬ苦しみと悲しみを、心を砕かれるような痛みをまき散らす……それが、望みなのか……?」
梨尾の言葉は、きっと激闘を繰り広げる原動天には届くまい。だが、言葉にせねばいられなかった。
「……やるしかないんです。この世界に、そんな痛みをもたらすつもりなら……自分の屍を積み上げてでも!」
「……梨尾、キミは……」
スイッチは呟くと、軽く頭を振った。
「とにかく、俺も引き続き見続けるから……諦めないで、戦い続けよう」
「もちろんです」
梨尾が、怪物へと向かっていく。スイッチは、その怪物を観た。果たして、敵のウィークポイントはどこか。どこを狙うべきであるのか……。
「てやぁあああ!」
一方、接近するカノンが、魔力を刃のごとく束ね、怪物の表皮を切り裂く。皮を斬った。だが、肉を切るにはまだ至らず、さらに骨を断つとなればさらなる攻撃が必要だろう。
「まったく、これではキリがありませんね……!」
ぼやきつつ、再度の斬撃を見舞う。斬り放たれた肉から、鮮血らしきものがほとばしる。だが、これではかすり傷だろう。とにかく攻撃を続けなければならない。
「――っ!?」
だが、星喰いも黙ってやられてくれるわけではない。振るわれた爪が、カノンの身体を切り裂いた。激痛――それを通り越して無。死に至る痛みを、脳は受け取ることを拒絶した。
「……! けどっ!」
カノンは吹っ飛ぶ意識を無理矢理つなぎ止めた。デスカウント? そんなもん、少しくらい増えたところで知った事か! そんなものが怖くてこんな戦場には出てこない!
「私はそう簡単にはやられませんよ!」
カノンは痛みをこらえながらも、再度の斬撃を繰り出す。
「うーん、どこか、戦況をこっちに傾けるポイントが欲しいね……!」
セララが星喰いの体中を飛び回りながら、あちこちを見回した。果たして、弱点はどこか。狙うべきポイントは。
「ボクが狙うなら……どこかな? 目? 口? ……敵はエネルギーをチャージ中。だったら、エネルギーをためるところ。それはどこ?」
ばぢり、と、背中から雷が奔る。背中の角。まるでヒレか何かのように生えるそれらは、先ほどから周囲に落下する、赤い雷(はんいこうげき)を行うための機関のようだ。
「スイッチ! 背中の角のあたり見て! エネルギーが集中してたりしない!?」
セララの言葉に、スイッチが頷く。
「……! 確かに、そうだ! 試してみる価値はあるかもしれない!」
「皆、集中攻撃! 狙うのは、あの背中の角!」
セララが叫ぶ。
「まかせてください!」
梨尾も頷いた。その時、近辺にいた特異運命座標たちが、一斉に角へとターゲットを定める!
「うーん、堅そうだけど、そのぶんばりばりしてておいしそうだね」
すあまが言う。
「おっ、角の破壊はハンティングゲームの基本じゃな!」
玲が銃を構える。
「引き続き蛇で抑える、やっちまえ!」
ヒロが叫んだ。
「援護はお任せください」
黒子が言う。
「私も、お手伝いします!」
カノンが、魔力刃を展開する!
「よーし、皆、いくぞー! ギガ、セララ、ブレイクーーーっ!!」
セララの攻撃が、仲間達の攻撃が、星喰いの背中、角に集中する!
一斉攻撃を受けた角にひびが入り、やがてそれは中央から砕けて裂けた。砕けた角が、その破片を隕石のように周囲に落とす。同時、星喰の絶叫が響いていた。
成否
成功
状態異常
第2章 第8節
破滅の空を龍が飛ぶ。いや、それはSikiが変化した姿だ。その背に仲間達を乗せ、星喰いの顔面へと向けて飛翔する!
チャージを必要としない、低出力のブレスが、宙を奔った。火炎のそれが空をかけるのを、Sikiは高度を下げて回避した。飛行機雲のように黒煙が空を奔る。
「全く、皆無茶をする子達だよね」
Sikiが苦笑するのへ、P.P.が笑った。
「こんな作戦に付き合う方も相当よ」
「そうかなぁ?」
Sikiが笑う。
「ええ、この場にいる奴は皆無茶する馬鹿よ。そんな馬鹿たちに通達!
さぁ、蒼穹作戦を始めるわ!
あのデカブツを倒して、この世界の青空を取り戻すわよ!」
P.P.の声に、
「任せろ! いっちょ盛大にブチかましてやるとしますかね!」
Tethが吠える! 飛翔からの突撃! まるで虫を落とさんとするように振るわれる星喰いの腕。その巨大な腕を飛行してよけながら、
「悪いが、俺様はハエみてぇに落とされたりはしねぇんだよ!!」
Tethが、その手に雷をまとわりつかせた。同時、巨大な星喰いの腕にたたきつける!
「行け! コイツは俺様が抑える!
顔面を殴れねぇのは気に入らねぇが――こいつで我慢してやる!
鬼丸! アンタはそのまま飛べ!」
そのまま、雷を放ちながら降下! 自身を叩きつけるように、星喰いの腕を殴りつけるTeth!
「了解だよ」
鬼丸はSikiと共に飛翔を続けた。ガァ、と星喰いが吠える! 砕かれた背中の角から放たれる赤い雷が、雨あられとSikiたちを狙い落下する!
「では、私が参りましょう」
イデアは一礼をすると、星喰いの身体に降り立つ。その雷を誘導するように、イデアは星喰いの身体を奔った! イデアその足跡を追うように、赤の雷が星喰いの身体を打ち据えていく!
「私を狙って自らを痛めつけては意味がありませんね……」
イデアが攻撃を引き付ける。一方、sikiたちは目標眼前まで迫る!
「さぁて、ここからだ! ド派手に突撃、勝てばまさに英雄!
――にしても、鎌持ち3人とは…変な縁を感じるね!
我/オレはキミ達と関わり無いはずなのに!
なんか――うれしい!」
ルォーグォーシャの言葉に、Goneは肩をすくめた。
「言われてみれば確かにそうだ。ま、これも縁だ。頼んだぜ、皆!」
「任せなさい、Gone、アイ、ルォーグォーシャ……ルォーでいい?」
P.P.の言葉に、ルォーグォーシャが頷く。
「おう!」
「じゃ、ルォー! チャンスは一回……って言っても、向こうが呆れるまで何度も繰り返すわ! 狙うはあたし達から見て左側! アイツの右目! でっかく死角を作るわよ!」
「任せてくレ、この世界の空を取り戻そウ」
アイが頷くのへ、仲間達が頷いた。
「突撃、いくよ!」
Sikiが叫ぶ――同時、その巨大な顔面が眼前に迫った! Sikiが、変化を解く――その勢いのまま、メンバーが星喰いの首元へと降り立つ。
「走レ!」
アイが叫んだ。同時、背中から放たれた赤い雷が、こちらを振り落とすべく迫る。
「ちっ、ただじゃやらせてくれねぇか!」
舌打ち一つ、Goneが走り出す。仲間達も合わせて走り出した。
「Sikiは!?」
P.P.が叫ぶのへ、
「わからん! 離脱してくれてればいいけど……!」
ルォーグォーシャが叫ぶ。が、その声も間近に落着した赤い雷に遮られる。敵は巨大。その背で止まっているわけにもいかない。とにかく、仲間達はその首筋を奔った。星喰いが首を動かすたびに、体勢を崩して落下しそうになる。それをこらえながら、目指す! 目標は、右目!
「見つけた!」
P.P.が叫んだ。同時、その武器に、鎌に、黒い炎がまとわりつく!
「ぶち抜いてやる――!」
振るわれたその鎌は、しかし刹那に閉じた瞼によって防がれた。鮮血が、P.P.の身体を押し流す――!
「くっそ、後お願い!」
P.P.がそのまま落下していくのへ、続いたのは鬼丸だ! 遠距離から砲撃を仕掛ける! 瑪駕閃光砲・捌式が、瞼を焼き付けた! じゅおう、と言う音と共に、肉の焼ける臭いが迸る!
「ちっ、硬い……!?」
二射目を放とうとした鬼丸に、しかし星喰いの雷が迫る! 直撃! 鬼丸は落下していく!
「しまった! あとは!」
「まかせろ!」
続くのはルォーグォーシャだ! その手にした鎌を力強く瞼へと叩きつける! だが――通らない! 確かに、傷はついた。だが、まるで軟骨のような瞼が、貫通を許さなかった!
「くそ、ここまで来て……!」
ルォーグォーシャが呻くのへ、
「いいヤ、そこでいイ」
と、アイが声上げた。
「僕の魔眼は、そこでいいと言っていル……その鎌、しっかり持っていてヨ」
アイが飛び込む! その鎌の背から、文字通りの全力全開の一撃を叩き込んだ! ずる、と、ルォーグォーシャの鎌が、刃を走らせる。二人で叩き込んだ一撃が、この時、その瞼を切り裂いていた。
ずるり、と刃が滑る! その勢いのまま、支えを失ったルォーグォーシャとアイが、顔面から滑り落ちていく!
「後は――」
「まかせろ!」
ルォーグォーシャが叫ぶのへ、Goneは頷いた。
「くたばれ、デカブツがっ!」
Goneが叩きつける、巨大な鎌! それは、星喰の右目、その眼球を強かに切り裂いた。
があああ、と! 星喰いが悲鳴をあげる! 眼球が切り裂かれ、鮮血がほとばしる――Goneが、その勢いに飲まれ、落下していく。
「ざまぁみろ、だ」
Goneがそう呟くのへ――同時、飛行するTethがその背を受け止めた。
「どうやらストライクだな!」
Tethの言葉に、Goneが頷く。
「いったんひくぞ! 死角ができた! このまま顔面をぶん殴ってやる!」
「わかってる、まずは体勢を立て直してからだ!」
Goneが叫んだ。果たしてTethは、Goneと共に星喰から距離をとる。仲間達の強烈な打撃を受けて、星喰いのダメージは確実に、大きく蓄積していき、今ここに大きな死角を生み出すことに成功していた。
成否
成功
状態異常
第2章 第9節
「こいつの弱点……どこだって思ってたけど……!」
ルージュが叫ぶ。特異運命座標たちの決死の猛攻により、左足はダメージを蓄積し傷跡を残し、背中の角は破砕され、そして今、右目を失い、巨大な資格を生み出している。
だが、星喰いは止まらない。視覚は生んだ。傷も残した。
だが、エネルギーの蓄積が遅くはなったものの、止まる様子を見せない。未だ敵は、健在なのだ。
「だったら……仕方ねーか。
こうなったら、おれ達にしかできない場所を攻撃するしかねーな」
ルージュが言うのへ、かぐやが頷いた。
「ふふ、何となく察しましたわ……つまり! 狙うは敵の口! カチコミですわね!
ええ、ええ、わたくしの竹槍を65536発ブチ込むとスターイーターは死にます!
古事記に書いてありましたので間違いありません!」
「そ、そうなのか……すげーな、古事記? って言うの」
ルージュが苦笑する。一方、かぐやは得意げに、
「と言うわけで! わたくしが道を切り開きましょう! ええ、スターイーターも原動天も正義騎士団も、まとめてわたくしの竹槍の獲物ですわ!」
「いや、正義の騎士団狙ったらヤバくない?」
シャドウウォーカーがそう言う。こほん、と咳払い。
「とにかく、今なら死角が出来てる。その隙に乗じて、口を狙えば……」
「やれるってことですわ!」
びしっ、とかぐやがサムズアップ。
「さぁ、行きますわよ、シャドウウォーカーさん! ブッコミカチコミどんとこいですわ!」
叫び、竹槍を取り出す。ぐっと力を込めて、星喰いの口へと向けて放り投げた!
その速度はまさに銃弾のごとし! 迫る強烈な竹槍が、星喰いの牙へと突き刺さる! その後を追ったのは、シャドウウォーカーだ! 長距離から、突如として相手の背後に移動するスキル、一撃離脱のそれが、敵の牙へと迫る。
「ぶっと、これ、ナイフで斬れるのかな……って、もうここまで来たらやるしかないよね!」
閃光。ナイフが煌き――刹那、巨大な牙が、竹槍の突き刺さったポイントを中心に、真っ二つに裂けた――。
「今!」
シャドウウォーカーが叫ぶ! 同時、ルージュは跳んだ! 自己強化スキルを存分に重ねがけして、折れた牙の隙間から、口腔内へ入り込む!
「正直自爆みたいなもんで嫌だけど……これしか手がねーってのも事実だかんな!
おれもめっちゃくちゃ痛いからさぁ! あんたも、ま、がまんしてくれよ!」
叫ぶと同時。口腔内で強烈ななエネルギーがさく裂した!
星喰いの口腔内を粉砕する、強烈なエネルギー! デスカウントとログアウト不明による基礎威力の向上も相まって、それはとてつもない爆発を巻き起こした!
――そのエネルギーが収束した後には、口内をボロボロにただれさせた、星喰いの姿があった――。
成否
成功
状態異常
第2章 第10節
強烈な爆発が、背後で炸裂したのを、原動天は察していた。
そんな。馬鹿な。あのスターイーターが、押されている?
原動天は、僅かに焦る思考をどうにか冷静に引き戻そうとした。が、それもままならない。眼前には、多くの特異運命座標たちが、自身の命を狙い、攻撃を仕替えてきているのだ。
現場・ネイコ。桜。そして……。
「スティア……!」
迫る、青の剣閃。自分と同じ、けれど違う、刃の冴え。それが、自身を狙う。
「止めて見せる。わからせて見せる……世界は、苦しい事ばかりじゃないって事!」
スティアが叫ぶ。原動天もまた、確実に追い詰められつつあった――。
――システムメッセージ――
特異運命座標たちの猛攻により、スターイーター、原動天、共に追い詰められつつあります。
特にスターイーターは、特異運命座標たちの活躍により、以下の状態異常を受けています。
死角・右半身
右側からの攻撃に対する回避値と防御技術値が低下する。
部位破壊・左脚
機動力と回避値・命中値低下。左脚へのダメージ増大
部位破壊・背部角
赤い雷を放つ範囲攻撃の威力低下。ブレスチャージ速度が低下。
背部角へのダメージ増大。
部位破壊・口腔
ブレスチャージ速度が激しく低下。ブレス威力が激しく低下。
口部分へのダメージ増大。
ブレス発動阻止迄もう一息です。スターイーターを無力化してください。
また、正義聖騎士本隊が到着し、終焉獣の相手は、全て聖騎士たちが行ってくれます。特異運命座標たちは、特に終焉獣の存在を意識しなくても大丈夫です。
では、引き続きの健闘を祈ります。
第2章 第11節
決戦の終わりの時は間近に。
確かに見える、巨体は崩れ。
その肉を晒し。その骨を晒し。
今まさに――その巨体は崩れ去ろうとしている。
「たとえ山のごとき巨躯を持つ獣が迫り来ようとも!
我が背に護るべき存在あるならば一歩たりとも引きはせぬ!
たとえ地を揺るがす力が迫り来ようとも!
我が剣はそれを打ち祓い、断ち切るであろう!
正義と勇気と平和の守護者、ストームナイト!
巨悪を断つため、只今推参!!」
騎士の宣誓はその言葉のままに。
小細工無用。
ただ真っすぐに行く!
ただ真っすぐに往く!
その刃に風を巻き起こし、ストームナイトが戦場をかける!
失わせるものか。
この世界で生きる命を。
この世界で戦う者たちを。
誰一人として失わせはしない!
「いくぞ、スターイーター……決着の時だ!」
ストームナイトが吠える。
その言葉と共に。
英雄たちは、星喰いへと向けて、突撃を敢行した!
成否
成功
第2章 第12節
「スターイーター! 仲間達はやらせません!」
死角から星喰いの身体へと駆けあがるマリ家! 放たれる電磁加速串が、さながらマリ家の足跡のごとく身体へと突き刺さっていく。
だだだだだっ! 串が一つ突き刺さるたびに、星喰いの力からエネルギーが抜けていく。背部にたまっていたエネルギーが、徐々に、徐々に、減衰していくのが分かるのだ。
「あなたのエネルギーがどれだけ強大であろうとも! 拙者はそれを見事削り切ってみせましょう! それが拙者の矜持なのですから!」
その足跡を追うように、すあまが星喰いの廃部へと飛びのった。巨大な背部角、その中心に立って、強烈な爪の一撃を見舞いしてやる。いくつもある背部角に、ビキビキと音を立てて巨大な亀裂が入る。ばきり、と音を立てて、角が砕けた。すあまはそれをぱくり、と口に放り込む。
「硬い感じと、びりびり痺れる感じ。ぱちぱち弾ける飴みたいな感じだ」
バリバリと噛み砕くすあま。ぱちぱち弾ける飴に似ているが、雨ではないので舐めてとけることはないだろう。
「きみはここで倒しちゃうよ。
……でも、たぶん、わたしが沢山食べてあげるから、そうすればきっと、私の一部になるんだと思うから。
そうしたら、今度は一緒に美味しいものを食べよう。
空腹は一番の調味料だって言うけど、誰かと一緒に食べる御飯が、一番おいしいよ!」
にこにことすあまが笑う。その上空を飛びマリ家の串が星喰いの背部角に次々と突き刺さり、さらに細かく粉砕していった。仲間達を撃つ赤の雷、その発生源である角が破壊され、雷の威力は如実に低下している。
「致命打にはならないだろう……けど、ここを削れれば、それだけ他の仲間達への負担が減るはずだから!」
スイッチは声をあげ、斬撃を繰り出す。最初の一撃を代わり気に、司法から見えない刃が、背部角を次々と削り取っていく。巨大な角は一撃、また一撃を喰らうごとに脆さを見出し、さらなるスイッチの斬撃が、そのもろくなった角をさらに削り切っていく。
「……もう充分かな……本体への攻撃を行った方がいいかもしれない」
スイッチの言葉に、マリ家が頷いた。
「では、お二人は本体への攻撃を! 拙者は変わらず、エネルギーを削り続けますので!」
「うん、お願いね。
スイッチ、行こう。この子の苦しみ、終わらせてあげよう」
すあまの言葉に、スイッチは頷く。
「うん……さぁ、行こう! もうすぐ、もうすぐ戦いは終わるはずなんだ……!」
成否
成功
第2章 第13節
背部角、そこから発生する赤い雷。それが確実に、弱まっていく。
攻撃を加えていた鬼丸は、あらかた背部角を破壊しきったことを仲間達と確認すると、そのまま右半身を見下ろすように飛んだ。
「狙うべきは……脚かな!」
飛行する。その先には、Λが肉の露出した足を、いや、それに付随する腱や人体を狙い、攻撃を仕掛けている!
「やぁ、鬼丸君、首尾はどうかな?」
「角の方は充分かな……君は?」
Λが笑う。
「みての通り……絶賛攻撃中だよ」
四肢に発生するは虚無の刃。その全てを使いながら、Λは星喰いの足を切り刻んでいく。鮮血が、肉が飛び散る。だが、その筋を切り裂くにはまだ至らない。
「と言うわけで、手を貸してくれると嬉しいかな!」
「了解!」
瑪駕閃光砲・捌式がエネルギーをチャージする。刹那、放たれた閃光が、星喰いの足を焼いた! その傷跡に向けて、Λが四肢の刃を突き刺す。そのまま飛翔! 切り上げる形で、星喰いの足の肉を断裂!
はるか上空で、轟、と星喰いの雄たけびが聞こえた。確実にダメージは蓄積している。そして、確実に、星喰いはその進撃速度を低下させている。
「とりゃー」
と、声が上がる。みれば、ああああが、ウィンドウを手に持って足をひたすら殴りつけているではないか!
「誰に断ってあたり更地にしてんの……?
オートトラベルバグって迷子になったじゃん……。
ていうか、あたいの最適化しまくったスーパーマイルート塞いで何してんのこれ……まじギルティ……」
ごすっ、ごすっ、と結構ヤバい音がする! つきささるウィンドウの角!
「すねの……あたりを……執拗に…………叩く…………!」
ごっ、ごっ、ごっ。痛そうな音が響くのへ、Λは肩をすくめた。
「あれはあれで効果がありそうだ」
「う、うん……そうだね……」
鬼丸は苦笑する。と、そんな二人を、ああああが見上げた。
「あ……此処は共闘って事で……このデカブツ、コアダンプ吐くまでボコりまくるからさ……おらおら、もっとバグ出せよ……」
げしげし、とウィンドウの角で殴りつけるああああ。
「う、うん……それは良いんだけど……」
「まぁ、いいじゃないか。ダメージは出ている様だし」
Λの言葉に、鬼丸は頷いた。
「そ、そうだね……今は少しでも、ダメージを与えなきゃ……!」
「そういうこと。さぁ、行こう」
Λが四肢に刃を発生させ、鬼丸は瑪駕閃光砲・捌式を再び起動する。
かくして左脚で起きた戦いは、星喰いの進軍速度を遅らせ、またその動きを確実に低下させつつあった。
成否
成功
第2章 第14節
戦局は少しずつ、特異運命座標たちへと傾いている。多くの者たちが、星喰いに攻撃を集中している。
「――では、終わりにしよう。スターイーター。
原動天は止めるべき者たちが止めろ。俺はその邪魔をするこいつを取っ払ってやろう。
我が矢、流星として星喰いを穿つ――!」
CALL666が構える。弓矢。鋭く打ち放つ――一閃!
放たれた矢は星喰いのもがく腕をすり抜け、破砕された顔面、口へと突き刺さった! 轟、と悲鳴をあげる星喰い――間髪入れず、続く二射が、三射が、次々と口中へと飛び込む!
「お前が潰えるまで、根競べと行こう。
だが、俺たちが簡単にあきらめると思うな。
最後まで、足掻く。幾たび死の恐怖を味わおうとも、幾たび死の激痛を味わおうとも! お前を! 止める!」
渾身の一矢が放たれる――さく裂する一矢が、口中を貫いた。星喰いが、反撃とばかりに大地に爪を突き立てる。鋭い爪が、まるで五本の大樹のように、大地に突き刺さった。
その攻撃を誘導する、梨尾――赤茶けた粉塵舞う大地をかけながら、錨火を叩きつけ、そこを基点にぐるり、と跳躍。
「攻撃は、可能な限りこちらで引き付けます……!」
梨尾が言う。
「俺たちは、この世界で死んでも死なない……でも、他の人達は、そうじゃない。
だったら、無理できる俺が……俺達が! 屍を築き上げてでも、あすへの道を作るんです!」
「ええ、同意します」
黒子が頷いた。
「原動天の動きは、此方でもけん制します。もしこちらに向かうようなことがあれば、すぐにでもお伝えしましょう。
まぁ、いま原動天と相対している者たちにとって、それはなさそうですが。
いずれにせよ、バックアップはお任せを。全力で、奴を止めましょう」
黒子が頷く。己の全性能、すべてをかけて、戦場を俯瞰する――守るべきもの。倒すべきもの。すべてが乗った盤上。その上を。
(原動天か……世界には美しさも醜さもある。その醜さを強く見てしまったのなら……気持ちは分からなくはない)
星喰いの死角から宙を飛び、顔面へ向けて接敵するアズハ。
「けど、こっちは壊されたくないし、喰われたくもないんだ……!」
アズハが構える。
「口を閉じたな……CALL666さん、こじ開けるぞ!」
「了解だ。全攻撃を、その牙に集中させる」
アズハの言葉に、CALL666は頷いた。同時、アズハは拳闘武器を構え、エネルギーを練りあげる。
「吹き飛べ!」
放たれた、エネルギーの塊が、CALL666の一矢と共に、閉じた口の牙へと突き刺さる! 幾重もの攻撃が突き刺さり、牙が粉砕した!
「口の中! 突撃できる!」
アズハが叫ぶ! 先ほど、仲間の行った口中攻撃。そうやすやすと何度も決めさせてはくれないだろうが、こうしてサポートの上で、隙をつけば……!
「ルートは指示します! 敵の攻撃をかいくぐって口中へ向かってください!」
黒子が叫ぶ。
「攻撃自体は、俺の方へ引き付けます!」
梨尾が叫んだ。
「突っ込むぞ、グレイ!」
「了解! 口内突撃2番手組、いってみよう、やってみよう、ってね!」
ヴァリフィルドとグレイが、口中に向かって飛ぶ!はたき落すように振るわれた腕の合間を縫って、ただひたすら、上へ! やがてその眼前に、巨大な口の隙間が現れた。へし折れた牙の隙間。ヴァリフィルドとグレイが、そこから内部へと突撃!!
「ふむ、既にかなりダメージが入っているようであるな……なら、その傷口広げてやるとするか!」
口中に侵入し、ヴァリフィルドが吠える。
「さぁて、口内炎まっしぐらだ!」
グレイが機械鋸を起動した! ぎゃりりり! 鳴り響く機械音が、口中の柔らかい部分を傷つける! 舌、口蓋、頬! 流石に外側が堅かろうが、内側から攻撃されればもちろん、溜まったものではあるまい。さらに言えば、先に口内で攻撃を行った仲間の傷跡も多数残っているのだ。
「良かろう、ならば口中から星喰い、喰らいつくしてやろうぞ」
ヴァリフィルドが、牙の根元の歯茎に噛みついて、引きちぎった! 激痛が、星喰いを襲う! 舌でつぶすように、あるいは牙ですりつぶすかのように、口中が激しく脈動する!
「おっと、これじゃ脱出は難しい……!」
「かまわん! このまま食道でつぶされるまで食らいついてやろう!」
四方八方から滅多打ちにされながらも、グレイとヴァリフィルドは攻撃を敢行する。果たして二人が内側に押しつぶされて消滅するまで、その一連の攻撃は続いた。そして、そのダメージは、確実に星喰いへと蓄積していったのだった。
成否
成功
状態異常
第2章 第15節
「ううん、なんかほんとに、こっちのアンナさん楽しそうって言うか、イキイキしているって言うか……!」
ルフランは聖騎士たちを援護すべく、小型終焉獣との闘いに従事している。聖遺物の力もあるのだろう、聖騎士たちは士気抜群、一気呵成に敵陣になだれ込み、攻撃を繰り広げている。
ルフランの言う通り、R.O.Oのアンナの勢いは、まさに破竹のそれと言えただろう。手にした聖遺物の力もあるのだろうが、なにより勇者である特異運命座標たちと戦える、と言うのがテンションの上がっている原因か。
アンナ以外にも、R.O.Oのサクラやスティアと言った面々も活躍しており、なにより合流したレオパルはすさまじい勢いで敵陣へと斬り込んでいる。
「って、感心してる場合じゃかなった! 聖遺物が起動するまで、2人を守り抜かないと……!」
降らせるは砂糖菓子の雨。きらきらと輝くそれは、本当の雨のよう。しかし、それは人々に活力を与え、背中を押すための力だ。
「頑張ろう、皆!
正義の聖遺物、きっとすっごい力になるから――大逆転だって、してみせる!」
ルフランは笑って、敵陣へと突撃した。
成否
成功
第2章 第16節
星喰いは、その身に確実にダメージを蓄積している。ブレスへのチャージに用いていた背部の角は粉砕され、進撃を進めるための足は破壊され。
そして今、口中すらも、攻撃のターゲットに過ぎない。
だが、それでも……忠実に命令を護るかのように……いや、己のうちに眠る餓えの衝動を開放するために、星喰いは轟くほどに吠える。
破砕された角から、それでも弱化した雷で、特異運命座標たちを薙ぎ払う。
剛腕は周囲を飛び跳ねる特異運命座標たちを狙い、振るわれる。
むしろ……これほどまでにダメージを受けて、なお生命の危機に陥らないという点を、驚異的とみるべきか。だが、攻撃能力と言う点に置いてみるならば、それは確実に、著しく低下していったのである。
「満身創痍だねぇ。原動天より先に、君から墜とそうかぁ」
エイラがふわり、と浮かぶ。その手に掲げる盾。振るわれる剛腕を、しかしその小さな体が受け止めて見せる。
「エイラはぁ、やられないよぉ。
……そんな弱い一撃じゃあ、エイラを墜とす事なんて、出来ないねぇ」
ふわり、と浮かぶエイラ。それを狙い放たれる左腕の一撃がエイラを薙ぎ払うが、しかしエイラはそれにギリギリのところで耐えて見せる。
いや、元より耐え切るつもりなどは無い。今この身が果てたとしても、何度でも立ち上がることができるのだ。
攻撃をくぐりぬ根毛ながら、特異運命座標たちはもはや弱点となった顔面へと攻撃を集中させる。とはいえ、リスクは大きい。チャージ中のそれとは異なる、小規模な(それでも威力は充分だが)なブレス攻撃が砲撃のごとくはなたれ、直撃すれば消し炭と化すことは間違いはないのだ。
「にゃーっはっはっはっは!
もはや虫の息ではないか、スターイーター!
この緋衝の幻影が、引導を渡してやるとしよう!!
……もう、めっちゃ疲れたのじゃ! 本当に、これで! 引導じゃ!」
くるり、と銃をゆびで回転させる玲。
「ゆくぞ、ドレッドノートよ! 総てを穿て! バレットリベリオンッ!」
擦過する火炎のブレスを紙一重でよけながら、玲はありったけの銃弾を叩き込む! ダダダダダ、突き刺さる銃弾が、星喰いの皮膚に無数の傷跡を残す!
「よぉし、一斉攻撃じゃ! 中途半端に削って発狂モードとかは行ったらいやじゃからな! ここで叩きつぶすぞ!」
「りょー、かいっ!」
シャドウウォーカーが、影から飛び出した。へし折れた牙、その傷口へ、ぽずんナイフを思いっきり突き刺す! ぎりり、と音を立てて、鋼鉄のような歯の歯髄を、ポイズンナイフが削り取る!
「うえぇ、見てるだけで痛くなるのう! 歯医者みたいじゃ!」
玲が言いつつ、自身も銃弾を歯の傷口に叩き込む!
「そうだね、麻酔も必要だったね!
遠慮はいらないよ、コレでも貰ってけ!」
シャドウウォーカーは電気を帯びたそれへと切り替えると、再び歯髄へと突き刺す! 血管を通った毒が、星喰いの体内を汚染した!
轟、と吠え声をあげて、星喰いが顔を振るう。その暴風の如き風圧に、溜まらず特異運命座標たちは吹っ飛ばされた。
距離を取らざるを得ない。だが――。
「諦めてやるわけにはいかねぇな! 敵の弱点は口の中だ!
何度死んだって構いやしねぇ……。絶対にやらせねぇ!
泣いてるガキ一人救えねぇんじゃ、生きてる甲斐がないんだよ!」
Hが構える。振るわれる刃。一文字斬りから放たれる、暗黒のエネルギー!
飛来する、雷をまとったそれが、口中へと続く道をこじ開ける!
「閉じさせねぇぞ、この道は! 何度でも、何回でも、こじ開けてやる! そして――」
Hが再度振るう、暗黒の剣戟波! それが幾度となく星喰いの口に直撃し、さく裂!
「道は開いた! 開け続ける! だから――」
「ええ、まだ止まらない。まだ終わらない。
ブレスが止まるまでは猛攻を続けるのみです」
シュネーがそう呟いた。敵の攻撃は、エイラが引き続き、引き付けている。とはいえ、永くは身が持たないだろう。そしてHの、シャドウウォーカーの、玲による果敢な攻撃……それが、シュネーを、仲間達を、いま、攻撃の場へと導くのだ。
跳躍だ――シュネーが飛ぶ。いや、シュネーだけではない。カノンが、ハルツフィーネが、共に、今、戦いの場へと向かう。
(……あの子は、いますね。此処からでも良くわかる。きっと無事なのでしょう)
ハルツフィーネが、眼下を見下ろしながら言う。その視線の先には聖騎士たちの一団がいて、その中に、この世界で生きる自分自身の姿がある。
(……現実では私は家族に置いていかれる側でした。
こちらでは置いて行く側なんて……そんな事は絶対に許しません!
あの子を……この世界を護る。私は……その為なら!)
ハルツフィーネが、クマさんと共に飛ぶ! 口中へ向けて!
「どうせ短時間しか保てないのです、捨て身で最大火力をぶつけてやりましょう」
仲間達がひらいた道へ! ハルツフィーネたちが突き進む! 果たして入り込んだ口中は、さながら生物的な巨大洞窟と言った所か。鍾乳洞、いや汚らしく濡れる牙、そして蠢く舌。おぞけの走るような光景が、そこにある。
「多分、長くはいることはできません」
カノンが言った。その通り……いつまでも、口中に留まることを許してはくれないだろう。
「チャンスは一撃……全力で、攻撃をくわえます!」
カノンが、その手にした魔術書を掲げた。同時、輝く魔力が一陣の刃を形成する!
「よろしい、喉の奥まで、ぶちかましましょう!」
シュネーが、その手にした弓を構える。同時、渦巻く魔力がその矢にまとわりつき、光放つ強烈な閃光と化す!
「クマさん、お力を。ここで、あの子のためにも……!」
ハルツフィーネがクマさんのクローを掲げる。
同時。
攻撃が放たれるや、口腔より閃光が放たれた! また、内部より迸る鮮血が、それが強烈なダメージであったことを物語っている。
だが、その攻撃を行たものも、無事ではいられないはずだった。その間髪入れる間もなく、口の中を浄化するように、虚空へ向けて強烈な火炎が放たれたのだから。
成否
成功
状態異常
第2章 第17節
星喰いは、まさに満身創痍の状態に見えた。
背部の角は粉砕され、エネルギーをまともに収集することも出来ず。
わずかなエネルギーを細々と蓄えるだけの器官は、空しく明滅する。
脚は多くの攻撃に萎え、進軍もままならない。
顔は醜く血を吹き、多くの攻撃が、その口腔で炸裂したことを物語っていた。
これでは、まともにブレス攻撃のターゲットを捉えることは出来まい。
だが……。
「まだです! 確実に止めるまで、攻撃を続けます!」
壱狐が叫んだ! もしかしたら、もう攻撃の手を緩めても問題ないかもしれない。吐き出されるブレスは明後日の方へと向かって、被害なんてもたらさないかもしれない。
いや、それではだめだ! 確実に、ブレスを止める!
「被害にあうのは……この世界に生きる命なんです……!
私達とは違って、死んだらお終いの人達なんですから!」
壱狐は、その眼で敵を見る。ブレス攻撃は、おそらく最弱の段階までその威力を減じていることだろう。ならば、あと少し。
「根競べの時間ですよ。私は文字通り死んでも諦めませんけどね!」
ならば、今、ここで自分たちが倒れたとしても……!
諦めなければ、道はある!
「ふふ、宴もたけなわと言った所だね」
パルフェタムールが飛ぶ。仲間達の間を飛び交い、もたらすのは『栄華の福音』。
「直接……とはいかないけれど、盛り上げ役も重要だろう? 福音をもたらそう。これはメインディッシュによく合う、そうだね、美酒だよ」
天使は飛ぶ――戦場を! その福音を振りまきながら、天使は一筋の道を作る。
「さぁ、行こう。ふふ、導きの天使とは、私も中々、板についてきたかな?」
「いくよ! みんなで一気に、顔面を攻撃するよ!」
セララの言葉に、仲間達は頷いた。飛翔する! 最後の攻撃へ!
反撃に放たれる赤い雷、著しく弱化したそれが、疾く運命座標たちに降り注ぐ!
「そんなもの、あたらないっ!」
セララは空中で無理やり体勢をひねって、その雷を回避してみせた。
「えーい、お前の攻撃は通さないよ!
お前の攻撃は! 全部! このきうりがうけてたつっ!」
きうりん飛翼を使って上昇、さらに上昇――スターイーターの頭上へと飛び出す!
「狙うなら私を狙え!!ㅤ私が!ㅤお前に喰われてやる!!」
放たれるには、火炎のブレス! 本命のそれとは違うが、強烈な一撃が、きうりんを狙った! 轟! 恐ろしいほどの熱量が、きうりんを襲う! 熱さ、激痛……でも!
「これくらい、耐えられる! お前が死ぬまで、私は死なないぞ!!ㅤ星よりデカいきうりの密度に震えろ!!」
きうりんが吠えた! その圧力に、僅かに星喰いが身をよじらせた……一方、セララ、そしてルージュが星喰いの眼前に迫る!
「あいつは散々、口の中をやってるんだ。そう簡単に、もう口は開かないよな」
「そうだね、どうする?」
セララが尋ねるのへ、ルージュは笑った。
「簡単! だったらその閉じた口を二度と開かないようにしてやるぜ!!」
ルージュが跳躍! セララもそれに倣った! 吐き出される、炎のブレス! 対空砲火のようにまき散らされるそれを、二人は身をひねって回避!
「きうりんを狙ってるって言っても、流石に近づくとよけづらいな……!」
「でしたら! お任せしてほしいであります!」
ゼストが、地上から大声を張り上げる。
「本来は本命用の技でありましたが、使うなら今でありますな!
奴の顔を、思いっきり上空へ向けてやりましょう!
きうりんさん、合わせてください!」
「りょーう、かい!」
きうりんが、翼を使って高く飛翔する――追うように、星喰いも高く上空を見上げた! 同時、ゼストは力強く構えを取る。
「ちょうどいい、私の福音もどうぞ?」
パルフェタムールが己が翼をふらせて仲間達の背中を押した。
「ありがとうございます! 壱狐さん、お手伝いを!」
「分かりました!」
壱狐も構える。狙うはむき出しになった喉元!
「陰陽五行――一太刀!」
「フルパワー……ゼタシウム光線ッッッ!!!」
放たれる、弐つの閃光。刃。そして、光撃。
放たれたそれが、星喰いの喉元を強かに打ち据える!
さく裂! 衝撃が、星喰いの口を叩いた! バランスを崩した星食いが、あらぬ方向へブレスの炎を吐き出す!
「今です!」
壱狐が叫ぶのへ、セララとルージュは頷く――同時、空より飛来したたこさんウィンナーが、にこり、と笑んで見せた。
「ごめんなさいね、今のわたしはとても弱いから……先に行かせてもらうわね?」
く、と加速して、たこさんウィンナーが突撃する。わずかにあいた歯の隙間、そこに入り込む。
「ワールドイーター。スターイーター。ふふ、親近感を感じる言葉ね。
わたしがこの世界でもっともっと強ければ、手に手を取ってダンスもできたでしょう。
でも残念。今のわたしはとてもとても弱いから……あなたにおいしく食べられて、舌に辛味を残しましょう」
同時、さく裂するブレスが、たこさんウィンナーを焼き尽くす――が、その反動が、口中内にて爆発する! 荒れ狂うブレスを、星喰いは制御できない!
「セララねーちゃん! おれは、頭から叩く!」
「じゃあ、ボクは下から叩くよ!」
空中でお互いを押し合って、軌道を変えた。そのまま星喰いの身体にいったん着地、すぐに顔面へと飛び込む!
「牙ごと圧し折れて、消滅しろーーー!!」
「ギガ・セララ・ブレイクだーーーっ!」
交差する、弐つの攻撃。
上空に向けられた星喰の顔。その、上部から。下部から。
放たれた衝撃が――星喰いの口を、強制的に閉じさせた。
同時! 爆裂する衝撃が、星喰いの顔面を破砕した!
ずず、と、星喰いが倒れる。倒れていく。地に沈んでいく――。
成否
成功
状態異常
第2章 第18節
斃れていく。沈んでいく。
星喰いが、地に。
その状況に置いて、星喰いに浮かんでいモノは、飢えであった。
まだ食べたい。
まだまだ食べたい。
ずっとずっと、食べ続けたい。
それは、星喰いが……いや、そうなる前にうまれた、ちっぽけなバグであった時から、ずっと抱き続けていた感情だった。
それが、全て。
それだけが、そのバグのすべて。
ああ。
腹が減った。
食べたい。
食べたい。
もっと力あるものを。
もっと腹が膨れるものを。
――それは、目の前に、ずっとあるものだった。
故に――。
第2章 第19節
「スターイーターが……?」
原動天が静かに呟いた。
「そう、タイムリミットだね。随分と、手ひどくやられたみたい」
そういう原動天へ、天川は刃を構える。
「こう何度も死んで生き返るってのは自分でも理不尽とは思うが、利用できるもんは利用させてもらう。
お嬢ちゃん、そろそろ疲れて来たんじゃあねぇか? 退く気はねぇよな?」
「それで退いて……私はどこに行けばいいと思う?」
原動天は言った。
「この世界に、私の居場所なんてない。知ってたよ。パラディーゾは、そういうものだから。
……でも、だからこそ、この心に生まれた想いだけには、居場所をあげたかった。
憎しみ。たまらない、憎悪。それだけが、私の心に生まれた、ただ一つの……」
ふっ、と原動天は笑った。
「言っても意味がない事だよね」
「かもな。俺は國定 天川。お嬢ちゃんの名は?」
「ないよ。しいて言うなら原動天……」
「いいや、ぱらすち、と言っただろう?」
流雨が言った。
「自分の居場所も何もないなら、名前くらいは持っておくといい。
なぁ、ぱらすち君。君はあれだな、つんでれと言う奴なのだな?
うむ、良いと思う。キャラづくりというのは大切だ。スティア君との差別化も図れるだろうしね」
些か困ったような顔をした原動天は、
「うん、まぁ、それでいいよ。ぱらすち、で。
それで、どうするのかな? 私はお話とかする気はないよ」
「会話をぶった切りで聞く気ナッシングはコミュ力検定的不合格よ?
もちっと向かい合ってくれてもよくない?
ほらさータピるとかレインボーわたあめとか」
エイルがそう言うのへ、ぱらすちは笑った。
「金星天にも、それ言われたんだよね。
でも、お断りするよ」
ち、とぱらすちは刃を構える。冷たい冷気。諦観のない表情。
だが、頼みの綱である星喰いが滅んだ今、彼女のその表情の意味は――?
「星喰いは死んだぞ」
流雨が言う。
「本当にそう思っている?」
ぱらすちが笑った。
「セーフティネットはあるんだよ。教えてあげるのはここまで」
「おっけー、後で語り合うのは、拳って事で」
走る――天川が、エイルが。ぱらすちへと向けて。
「これしかねぇがこれで十分だ! いくぜっ! 全身全霊でアンタを斬る!」
天川が、刃を翻した。背水廻刃。ただ一つ、使える技。全身全霊の技。緩急をつけて放たれるその一撃が、ぱらすちの刃を捉える。
きぃん、と音を立てて、つばぜり合いが起こる――同時、飛び込んできたエイルのヒールが、ぱらすちの左肩にめり込んだ。
「っ……!」
痛みにうめくぱらすち。確かなダメージの蓄積が、疲労が、ぱらすちにも見て取れた。
「……なんかさ、ぱらすちは全部敵! クズ! って感じで見てるけどさー。
この国だって、いーとこ沢山あるんだよ。
それに気付けなかったのは勿体無いよ、ぱらすち」
「……それを覆い隠すくらいの辛い事も、あるよ」
ぱらすちがにらみつけた。だが、その眼も些か精彩を欠いている。
「ぱらすちさん……で、いいのかな?
確かに原動天とかもう一人のスティアさんって呼び続けるのもアレだもんねっ!
こんな時じゃなかったらもっとうんと考えて素敵な名前を考えたんだけど。――コホン」
咳払い一つ。ネイコが言った。
「世界とどう向き合うかはいつだって自分の意志次第。
変わろうと思えばいつだって変われる筈だよ。
それは人によってはとても難しいのかもしれない。
苦しいモノなのかもしれない。
それでも、一歩を踏み出して手を伸ばすのなら私達は絶対に掴んでみせるから。
ぱらすちさん、貴女はどうなの?」
ぎり、とぱらすちは、左腕を抑える。
「パラディーゾは、世界の敵だよ」
「そんな世界の敵とだって……話したりは出来るんだよ」
ネイコが言う。
「でも……だからって、何も変わらない! 私が何者でもないことも、私が独りであることも……この憎悪の行く先も! 何も!」
「全てのことから目を背けて世界を破壊したとしても貴女の望みは達成されないよ」
スティアが、静かにそう言った。
「それに慕ってくれる人もいないと言うけどそれは本当なのかな?
金星天のエイルさんも。この場にも貴女に向けて話かけてくれる人も、沢山いる。
貴女は……大丈夫、愛されてもいいんだよ」
その言葉に、ぱらすちは、強く、強く唇をかみしめた。
「もう……もう遅いんだよ」
「遅くなんて、ない!」
桜が叫んだ。
「貴方を助けたいと思ってる人は今もここに沢山いる!
貴方を愛する人も、貴方の友人も……今はいなくても、これから先にきっと出来る!
私がこんな事を言う資格は無いのかもしれない。
でも……後悔したくないから、言わせて。
もしよかったら……まずは私と友達になってくれないかな?」
優しく。
桜は手を差し出した。
ぱらすちは、静かに、刃を取り落とすと。
悲しげに笑った。
「もう、遅いんだ」
「それは……!」
桜が叫ぶ。
「さっき言ったよね。セーフティネット。もしもスターイーターが倒れた時の保険。
スターイーターは、喰らう事だけが目的のバグ。その矛先は、本来は私達パラディーゾだって例外は無い。それを抑えていたのは、私の原動天としての権能があったから」
ぐわ、と。
巨大な手が、ぱらすちを抑え込んだ。
「ぱらすちちゃん……!」
スティアが、叫んだ。
それは、瀕死のスターイーターの手だった。
「スターイーターが消耗し、私が消耗して権能が弱まった時……本当の意味で星の獣は解き放たれる。
ただ喰らいたいだけを喰らう、飢えの怪物。
それが……極上の餌(わたし)をほうっておくと思う?」
ぐわ、と。手がぱらすちを握りしめて、空へと昇っていく。
立ち上がった瀕死の怪物が。
その喉元に、ぱらすちを落とし込む。
「ごめんね、桜ちゃん。友達に、なれなかったね」
ごくり、と。
ぱらすちが、飲み込まれていく。
刹那――咆哮が響き渡り――。
あたりが、ぐわり、と食い荒らされた。
成否
成功
第2章 第20節
世界が揺れる。世界が食われる。
蘇ったスターイーターは、原動天というくびきを解き放たれ、その本来のありようを取り戻した。
ただ、喰らう事。
ただ、喰らいついづける事。
データを喰らい、世界を喰らい――それを己が身と変える事。
「……マジかよ」
ルージュが、呟いた。
あれだけ加えた打撃痕はすでになく。
決死の覚悟で与えたダメージはすでにない。
喰らうものがあれば。データがあれば。世界があれば。
星喰いは、何度でもその姿を取り戻す。
畢竟――世界が存在する限り、星喰いを倒すことはできない。
「諦めてはだめです!」
マリ家が、叫んだ。
「何か手があるはずです……!」
「でも、それこそ奇跡でも起きなくちゃ……!」
グレイが叫んだ。
そうだ、理不尽な滅びに対抗するには、奇跡が必要だ。
「あります」
と、アンナが言った。
「アンナさん……?」
ハルツフィーネが、声をあげた。
「聖遺物が……奇跡が! わたくしたちを、救ってくださいます!
そのために、わたくしたちは、来たのですから」
「アンナさん!」
ハルツフィーネが叫ぶ。アンナは微笑んだ。
「フィーネ様。勇者様。皆様と戦えたこと、光栄に思います」
その手にしたハンマーが、光に包まれる。
ハンマーだけではない。
戦場にあった聖遺物が。そして、はるか正義国に存在するすべての聖遺物が。
清らかな光を放っていた。
そして――。
聖都フォン・ルーベルグ。その聖遺物、『天の杖』より――。
一筋の光が、決戦の場へと向けて、放たれた!
その光は戦場を満たし――すべてを、光のうちに包み込んだ――!
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
終末の獣は放たれ、星喰いの怪物は目覚めました。
彼らは原動天の指揮の下、伝承国へと向かっています。
今こそ決戦の時です。
世界を救うゲームを始めましょう。
●成功条件
すべての敵の撃破
●状況
決戦の時です。皆さんの前には、伝承国へと攻め込もうとしている終焉の獣たちとパラディーゾ、そしてスターイーターがいます。
このすべてを撃破しなければ、このクエストは完了できません。
総力戦です。やることはシンプルです。全滅させてください。
フィールドは、スターイーターによって食われ、荒廃した大地と化した伝承国の大地です。
あたりには何もありません。ただ大地だけがあります。
●第一節について
皆さんは、今まさに敵の軍勢の正面に立っています。
立ち向かうべき敵は、小型の終焉獣たち。そして、パラディーゾ・天国篇第九天 原動天の徒です。スターイーターには、まだ手を出さない方がいいでしょう。
小型の終焉獣を撃破しつつ、原動天の少女を撃破してください。
皆さんの行動により状況が進めば、節が進行するはずです。
●正義国の10の聖遺物について
現在、正義国にて、10の聖遺物を使用した援護攻撃の準備が進んでいます。
ラリーシナリオの節が進む際に、この援護攻撃が行われる可能性は充分にあります。
●重要な備考
皆さんは<ダブルフォルト・エンバーミング>系ラリーのどのシナリオにも、同時に何度でも挑戦することが出来ます。
●重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
R.O.O_4.0においてデスカウントの数は、なんらかの影響の対象になる可能性があります。
●重要な備考『ログアウト不能』
<ダブルフォルト・エンバーミング>ではログアウト不可能なPCは『デスカウント数』に応じて戦闘力の強化補正を受けます。
但し『ログアウト不能』なPCは、R.O.O4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』が敗北に終わった場合、重篤な結果を受ける可能性があります。
又、シナリオの結果、或いは中途においてもデスカウントの急激な上昇等何らかの理由により『ログアウト不能』に陥る場合がございます。
又、<ダブルフォルト・エンバーミング>でMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
予めご理解の上、ご参加下さいますようお願いいたします。
●敵NPC
スターイーター
今回の大ボスです。バグによって生まれた巨大な怪物。
特異運命座標たちが一度遭遇したため、ある程度のデータは入手されています。
なお、超巨大な怪物ですが、あくまで通常の1ユニットとして計算されるため、敵の全長の概念などを考慮する必要はありません。(例えば、近接攻撃でも凄いジャンプして顔面を斬りつけることができますし、足元から顔面を狙うには長距離レンジになる! と言うようなこともありません。もちろん、飛行すれば敵を攻撃しやすくなりますが、落下のペナルティも存在します)
以下のようなスキルを使用してくるでしょう。
クラッククロー
前方を強く薙ぎ払う巨大な爪。出血系列・ブレイク・飛
バーストブレス
長距離を貫通する一陣の火炎。火炎系列・乱れ系列
データクラッキング(獣)
データを喰らう餓獣の牙。高威力・ログアウト不能状態を付与する可能性あり。
パラディーゾ・天国篇第九天 原動天の徒
パラディーゾの少女。その外見や戦闘スタイルは、スティア(p3x001034)さんに酷似しています。
パラメータ傾向、スキル傾向などは、スティアさんのそれに非常によく似ています。
ただし、相手はシステム上大幅に強化されています。現実の七罪ほどとは言いませんが、相応の強敵であることは覚悟してください。
なお、原動天として、以下の特殊スキルを持ちます
データクラッキング(刃)
データを喰らう剣閃の冴え。高威力・ログアウト不能状態を付与する可能性あり。
精霊従属(獣)
ワールドイーター・スターイーター・終焉獣は、原動天の意向を順守する。
終焉獣
敵側の兵隊です。2mほどの、奇妙な外見をした二足歩行の怪物です。
大量にいる分、大ボス級の二人よりは御しやすくなっています。
蹴散らしつつ進んでください。
●味方NPC
当シナリオでは『各国のNPC』が援軍に訪れる可能性が大いに存在しています。
具体的には『正義』のNPCは皆さんと共に戦うためにこの戦場へと向かっています
以上となります。
それでは、皆様の活躍を、お待ちしております。
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