PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ダブルフォルト・エンバーミング>ワールド・エンド・ゲーム

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●正義国の決断
 決戦の時より、少しだけ時はさかのぼる――。
「『天の杖』の起動を視野に入れたい」
 教皇庁の教皇の間にて、アストリアはシェアキム・ロッド・フォン・フェネスト六世へと告げた。
「首都防衛に備えてか」
 シェアキムが厳かに頷く。天の杖とは、正義国に伝わる10の聖遺物の一つである。フォン・ルーベルグを守るための紋章砲台、非常に強力な防衛兵器だ。だが、アストリアは頭を振った。
「否……妾たちは、もっと攻勢に出ねばならん」
 アストリアは、真剣な眼で、シェアキムを見つめた。
「先ごろ帰還した特異運命座標たちにより、スターイーターの情報はもたらされた。特異運命座標たちの協力者によるバックアップと、そのデータを組み込んで読み上げた予知によれば、スターイーターは『伝承国に姿を現す』と出ている」
「なんだと?」
 シェアキムは意外な顔をした。
「何故だ……否、そうか。近頃報告のあった、砂嵐国の異変……禁断の地よりいでし件の怪物の行く先が、『伝承国』であるならば……」
「そうじゃ、シェアキム。これはおそらく、敵から仕掛けてきた最終決戦じゃと思う。ワールドイーターたちも、多くが伝承国に姿を現すじゃろう。ま、それで正義国をほうっておいてくれるか、と言えば答えはNOじゃ。首都に向けての攻撃も予知されておる」
 なるほど、とシェアキムは嘆息した。
「奴らは全勢力を結集して、世界を壊すつもりじゃ。ならば妾たちも、正義国に閉じこもっているわけにはいかん」
「同意見だ。これはもはや、我が国を守るだけの戦いではない。世界を守る戦いであるというのだな?」
 シェアキムは厳かに頷いた。
「だが……天の杖の起動範囲は、あくまでもここ、フォン・ルーベルグに留まる。伝承国にまで影響を及ぼすことは」
「可能のはずじゃ。すべての聖遺物を結集すれば」
 その言葉に、指物シェアキムも瞠目した。
「……有史以来、10の聖遺物が一堂に会し、その真威を発揮したことはない。単体でも戦局を覆せるほどの力を持っているからだ。
 故に、すべての聖遺物は、正義国の各家に分散・管理封印されている。
 だが、10の聖遺物の本来の役割は、兵器などではない。すべては、真なる0番目の聖遺物を起動するための鍵にすぎぬ。
 その鍵を開けると、言うのだな?」
「もとより、世界の危機じゃ。今使わずに何を使う」
 アストリアは笑った。
「命が惜しいか、シェアキム? 確かにそうじゃ。天の杖単体の起動ですら、多くの聖職者の生命力を吸う。
 真なる0番目の聖遺物を起動したら、そうじゃなぁ、きっと死ぬじゃろうなぁ、妾たち」
「ふ、そうだな……」
 シェアキムは笑った。
「だが、命を惜しんで何が我らが矜持か。
 よかろう、アストリア。これより我が国は非常態勢にはいる。
 正義聖騎士団は必要最低限のみを残し、全軍を伝承国へ派遣。
 同時に、すべての聖遺物を運用する。現在所在が分かっているのは……」
「『エンピレオの薔薇』は妾の星見に組み込んで居る。後は、『天の杖』『コンフィズリーの聖剣』『ミルフィールの神槌』『ロウライトの神旗』『アークライトの地槍』辺りは管理されておるはずじゃ。
 ……『ヴァークライトの聖骸布』は現状行方不明じゃったな。ワールドイーターに食われたやもしれん」
「ギリギリまで確認と捜索を続けよう。とにかく、可能な限り聖遺物を結集し、星見に組み込む。
 すべての聖遺物が集まらねば、おそらく十全の力は発揮できんが……何もしないよりはいいだろう。
 ふっ……忙しくなるな、アストリア。こんな気持ちは、お前と共に正義国の改革にいそしんだ時以来だ」
「そりゃテンションも上がるじゃろ! 世界を救う戦いじゃぞ!」
 アストリアはにぃ、と笑った。シェアキムもまた、静かに笑ってみせた。

●世界の終わりの遊戯
 時は巡る。決戦の時は来る。
 R.O.OVer4.0、<ダブルフォルト・エンバーミング>。世界がアップデートされたとき、訪れたのは破滅であった。
 世界の各地が、大規模な異変に襲われ、終焉の獣が、或いはこれまで世界を襲ってきた異変が結集し、世界を滅ぼすべく行軍を開始する。
 その戦列が一つ。先頭に、それはいた。
 一言で言うならば、巨獣である。
 終焉の獣もかくやたる巨大なる体躯。眼は炎のように赤く輝き、映る餓えの感情が、世界を喰らいつくさんと睥睨する。
 それは、星喰い。元来は、餓えだけを持った小さなバグ。
 それは特異運命座標たちのデータから形を得、目についたあらゆるデータを喰らい続けた。
 喰らって、食らって、喰らって。
 それでもまだ足りなく。
 ああ、まだ食いたい。食い足りない。
 全てを喰らいたい。
「うーん、相変わらずだね」
 その足元に、少女がいる。
 元々は、無垢なデータだった少女は、許容できぬ記憶を喰らい、心の器にひびを入れた。
 天国篇第九天 原動天の徒。その外見はスティアによく似た、スティアではない存在。
「食べる事しか考えてないや。ま、その分、私の言うことも聞いてくれやすいんだけど」
 原動天が笑う。己の特殊能力により、原動天は『獣』を操ることが可能だ。それは、オリジナルであればサメを操る様なものだったが、しかし原動天が操るのは、世界を喰らう怪物たち。
「食べたいんでしょ。いっぱい食べさせてあげる。
 正義国を狙えないのはちょっと嫌だけど、伝承国を食べちゃえば、まぁ最終的には終わりだから! この際どっちでもいいよね!」
 原動天が無邪気に笑った。
 もう終わらせたかった。
 こんなくだらない世界(ゲーム)を。
 考えれば考えるほど、辛くて苦しくなる。
 壊れてしまいそうになる。
 どうして、私の家族(ああ、そんなものはいない。これは他人の記憶だ)はひどい目に遭ったのに。
 この世界は、それを覆い隠して、嘘だったみたいにみせているのだろう。
 どうしてみんな、いい人だったみたいな顔をしているのだろう。
 あなた達は醜くて、
 悍ましくて、
 汚くて、
 クズで、
 生きていてもしょうがないような奴らだったでしょう?
 そんなあなた達が、善人ヅラして幸せに生きているのが。
 たまらなく辛いの。
 たまらなく苦しいの。
「だから、壊しちゃおうね、みんな」
 原動天が笑った。
 スターイーターが吠える。
 週末の獣たちが吠える。
 ビーストマスターによる、終焉の行進が。
 今、あなた達の前に立ちはだかっている――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 終末の獣は放たれ、星喰いの怪物は目覚めました。
 彼らは原動天の指揮の下、伝承国へと向かっています。
 今こそ決戦の時です。
 世界を救うゲームを始めましょう。

●成功条件
 すべての敵の撃破

●状況
 決戦の時です。皆さんの前には、伝承国へと攻め込もうとしている終焉の獣たちとパラディーゾ、そしてスターイーターがいます。
 このすべてを撃破しなければ、このクエストは完了できません。
 総力戦です。やることはシンプルです。全滅させてください。
 フィールドは、スターイーターによって食われ、荒廃した大地と化した伝承国の大地です。
 あたりには何もありません。ただ大地だけがあります。

●第一節について
 皆さんは、今まさに敵の軍勢の正面に立っています。
 立ち向かうべき敵は、小型の終焉獣たち。そして、パラディーゾ・天国篇第九天 原動天の徒です。スターイーターには、まだ手を出さない方がいいでしょう。
 小型の終焉獣を撃破しつつ、原動天の少女を撃破してください。
 皆さんの行動により状況が進めば、節が進行するはずです。

●正義国の10の聖遺物について
 現在、正義国にて、10の聖遺物を使用した援護攻撃の準備が進んでいます。
 ラリーシナリオの節が進む際に、この援護攻撃が行われる可能性は充分にあります。

●重要な備考
 皆さんは<ダブルフォルト・エンバーミング>系ラリーのどのシナリオにも、同時に何度でも挑戦することが出来ます。

●重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 R.O.O_4.0においてデスカウントの数は、なんらかの影響の対象になる可能性があります。

●重要な備考『ログアウト不能』
 <ダブルフォルト・エンバーミング>ではログアウト不可能なPCは『デスカウント数』に応じて戦闘力の強化補正を受けます。
 但し『ログアウト不能』なPCは、R.O.O4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』が敗北に終わった場合、重篤な結果を受ける可能性があります。
 又、シナリオの結果、或いは中途においてもデスカウントの急激な上昇等何らかの理由により『ログアウト不能』に陥る場合がございます。
 又、<ダブルフォルト・エンバーミング>でMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
 MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
 指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
 予めご理解の上、ご参加下さいますようお願いいたします。

●敵NPC
 スターイーター
  今回の大ボスです。バグによって生まれた巨大な怪物。
  特異運命座標たちが一度遭遇したため、ある程度のデータは入手されています。
  なお、超巨大な怪物ですが、あくまで通常の1ユニットとして計算されるため、敵の全長の概念などを考慮する必要はありません。(例えば、近接攻撃でも凄いジャンプして顔面を斬りつけることができますし、足元から顔面を狙うには長距離レンジになる! と言うようなこともありません。もちろん、飛行すれば敵を攻撃しやすくなりますが、落下のペナルティも存在します)
  以下のようなスキルを使用してくるでしょう。

  クラッククロー
   前方を強く薙ぎ払う巨大な爪。出血系列・ブレイク・飛

  バーストブレス
   長距離を貫通する一陣の火炎。火炎系列・乱れ系列

  データクラッキング(獣)
   データを喰らう餓獣の牙。高威力・ログアウト不能状態を付与する可能性あり。


 パラディーゾ・天国篇第九天 原動天の徒
  パラディーゾの少女。その外見や戦闘スタイルは、スティア(p3x001034)さんに酷似しています。
  パラメータ傾向、スキル傾向などは、スティアさんのそれに非常によく似ています。
  ただし、相手はシステム上大幅に強化されています。現実の七罪ほどとは言いませんが、相応の強敵であることは覚悟してください。
  なお、原動天として、以下の特殊スキルを持ちます

  データクラッキング(刃)
   データを喰らう剣閃の冴え。高威力・ログアウト不能状態を付与する可能性あり。

  精霊従属(獣)
   ワールドイーター・スターイーター・終焉獣は、原動天の意向を順守する。


 終焉獣
  敵側の兵隊です。2mほどの、奇妙な外見をした二足歩行の怪物です。
  大量にいる分、大ボス級の二人よりは御しやすくなっています。
  蹴散らしつつ進んでください。

●味方NPC
 当シナリオでは『各国のNPC』が援軍に訪れる可能性が大いに存在しています。
 具体的には『正義』のNPCは皆さんと共に戦うためにこの戦場へと向かっています

 以上となります。
 それでは、皆様の活躍を、お待ちしております。

  • <ダブルフォルト・エンバーミング>ワールド・エンド・ゲーム完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別ラリー
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年12月11日 22時10分
  • 章数3章
  • 総採用数207人
  • 参加費50RC

第3章

第3章 第1節


「こ、これは!?」
 スティアが叫ぶ。気づけば世界は、清らかな光の中にあった。戦場全てが、すっぽりと覆われるほどの光。強力な、光の魔法陣!
「これこそが、すべての聖遺物の力を持ちて放つ、完全聖域『アイン・ソフ・オウル』……!」
 レオパルが呻いた。この光の中に居るだけで、強烈な力がわいてくる。そして、権能はそれだけではない。
「み、見てください! 星喰いが……!」
 聖騎士の一人がスターイーターを指さした! 星喰いがもがき苦しんでいる! 


――システムメッセージ――

 特異運命座標たちの視界に、突如としてそのような文字がポップした。

『完全聖域「アイン・ソフ・オウル」が発動しました。
 これは、プレイヤーの皆さんの力を増強し、常に十全の力を発揮させるモードです』

「じゃあ……これで何とかなるって事か?」
 Hが声をあげた。確かに、その身体には以前とは異なる力がみなぎっている。

『また、スターイーターが『世界を捕食する』行為を妨害することができます。
 これにより、この結界内で倒せば、スターイーターが復活することはありません』

「なんじゃ、最後の最後にチートを持って来よって!」
 玲が笑った。

『ですが、この効果には時間制限があります。具体的には、首都でこの結界を維持しているものの生命力が尽きるまでです。
 その刻限までに皆さんがスターイーターを撃破できねば、このクエストは失敗となります』

「ちょ、ちょっとまって! 今シェアキムが命削ってるって事!?」
 きうりんが叫んだ。
「まさか、アストリアもか……!?」
 Goneが独り言ちる。

『それでは、刻限までにスターイーターを撃破してください。
 皆さんの、健闘をお祈りしています』

 それを最後に、システムメッセージは消滅した。

「なるほど、ならば、立ち止まっている暇はないね!」
 鬼丸が言った。仲間達は頷く。
「もう一度……奴を倒す。今度こそ、完全に!」
 CALL666の言葉に、仲間達は力強く頷いた。
 時間は無い。
 さぁ、最後の戦いだ!
 スターイーターを、完全にせん滅せよ!


――システムメッセージ――
 本システム『完全聖域「アイン・ソフ・オウル」』の補足説明です。
 まとめます。
 このシステムにより、まず皆さんの身体能力に大幅なバフがかかります。
 また、敵スターイーターの『世界捕食』スキルの使用を止めることができます。『世界捕食』スキルは、世界を捕食することで、己の血肉に変えるスキル。ありていに言ってしまえば、無限回復スキルです。これを阻止できます。

 ですが、この『完全聖域』を維持するために、シェアキムやアストリアなどの、正義国の聖職者たちの生命が刻一刻と消耗しています。
 この聖域を、長く展開することはできないのです。
 皆さんは、シェアキムやアストリア達の生命が尽きる前に、完全聖域の発動が解除されるまでに、スターイーターを撃破する必要があります。

 スターイーターですが、戦闘能力は著しく向上していますが、弱点の面では第2章までと変わりはありません。
 つまり、足元を破壊すれば、機動力と回避値・命中値低下。脚へのダメージが増大し、
 背部角を破壊すれば、赤い雷を放つ範囲攻撃の威力低下や、ブレスチャージ速度が低下して、背部角へのダメージが増大し、
 口腔を破壊すれば、ブレスチャージ速度が激しく低下し、ブレス威力が激しく低下し口部分へのダメージが増大します。

 また、とりこまれた『ぱらすち』ですが、まだ意識があるようです。何か語り掛けてみても、反応があるかもしれません。

 以上となります。
 それでは、皆様の健闘を祈ります。


第3章 第2節

すあま(p3x000271)
きうりキラー
セララ(p3x000273)
妖精勇者
ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)
叫ぶ流星
夢見・マリ家(p3x006685)
虎帝
カイト(p3x007128)
結界師のひとりしばい
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
Λ(p3x008609)
希望の穿光
ヒロ(p3x010030)
子供の矜持

 光が、降り注ぐ。静謐なる光。神聖なる光。
 光の降り注ぐ世界に、勇者たちはいる。
 その光が、勇者たちの力となる。
 萎えた足は再び自らの身体を支える力を取り戻し、震える腕は武器を取り、力強く敵へと構える!
「……信じられません。敵は強大。すべてのパラメーターは桁外れ。
 しかし、それにも負けぬほどに、私達の力も上昇している……!」
 それこそが、『完全聖域』の力。悪しき者の力を封じ、正しき者に強大な力をあたえる、偉大なる神の恩寵。
 だが――その発動も、決して長く続くものではない。それは、黒子の認識も一致していた。
「完全聖域『アイン・ソフ・オウル』……かっこいい!
 ……って言ってる場合じゃない、皆や正義の人達が頑張ってるんだ」
「ええ、この能力の発動には、現実での天の杖同様、正義国の人々の生命エネルギーを必要とするとの事……」
 黒子が言う。
「それじゃあ、もたもたしてられないよね!」
 ねこの言葉に、仲間達は頷く。
「決着をつけましょう! サポートを開始します!」
「了解だ! まずは脚! それと背中を破壊するぞ!」
 カイトが頷いて、叫んだ。その手を複雑に動かす。結ぶ、印。発動するは、七星結界!
「あの大型ペットの動きを止める! 攻撃集中!
 誰だよ、大型ペットの手綱を離した奴は! 大はしゃぎじゃねぇか!
 もう一度、首輪を括り付けてやるよ!」
 打ちだすは、楔。印によって生み出さられたそれが、星喰いの足に突き刺さる! たたん、とリズミカルに次々と撃ち込まれ、それが陰陽七星の結界を描いた! ばぢん、と結界がはじける! 内部に生じた冷気が、音を立てて星喰いの足を凍らせる!
「冷凍お肉だね、解凍しちゃいけないのが残念」
 飛び込んだのはすあまだ! その両の手の爪を、回転するように振り払う! 結界内、凍り付いた肉が砕け、辺りに飛び散る――だが、敵の動きは、以前にもまして機敏になっている! 振り払うように、星喰いはシンプルに足を蹴り上げた――それは、まさに巨大な壁が迫ってくるようなものだ!
「皆、構えて!」
 すあまが叫ぶ――強大な壁による圧殺、いや、表皮を包む毛の一本一本は鋭いニードルに等しく、さながら片面アイアンメイデンじみたものだ!
「いってぇな! くそっ!」
 叩きつけられた一撃に、カイトが吠える。
「だがな、追い詰められてから本番ってのは、アンタの専売特許じゃねぇぜ!」
 カイトが再び印を組む――その印より放たれるは、貪狼の咆哮! 強烈な、いうなれば冷凍ビームが、迫る壁の勢いを殺す!
「貴様に食わせる☆(ほし)はない! ウィッシュ・スター・ランチャーーーー!!」
 ねこが放つ、強烈なビームがそれに続いた! 熱と凍。相反する二つのエネルギーは一点に収束し、強烈な爆発を引き起こす!
 さらに、すあまがその爪で、ニードルのような体毛を切り裂いた。
「なんか、君みたいな生き物、時々世界に生まれるよね。
 食べてないと息することもできないような、そういう子。
 ……ねぇ、今もずっと、お腹すいてて苦しいのかな。
 食べたくて食べたくて……わたしもお腹はすくけれど。
 それだけしか考えられないのって、辛いから。
 よしよし、いい子いい子。もうすぐ、あと少しで楽になるからね――」

 一方、背部角方面でも戦いは激化している。先ほどよりも、目に見えて強烈になった雷は、降れただけですべてのモノを炭化させてしまうほどに強烈だ!
 その雷の雨の中をかけるヒロ!
「くそ、厄介な雷を! こんなもん、あっちこっちにぶちまけられちゃ困るんだよ!!」
 ハンドガンを構える――発射されるは蛇毒の呪い。狙いを定める必要はない。撃てば必ずどこかしらに当たる。背部角はそれほどまでに巨大、それほどまでに多数。
「まずは下地処理だ! 蛇毒に溺れろ!!」
 攻撃放つヒロの近くに、赤の雷が落着する。跳びはねた雷のほんのわずかなそれを浴びただけで、強烈な痛みが走った。痛みに歯を食いしばりながら、しかしヒロは蛇毒を打ち込み続ける!
「俺も いつまでも回避し続けることはできない……だがな、それがどうした!
 死に戻りがあるから大丈夫とか、そういうんじゃない!
 もしこれが現実でも、俺はこうしたはずだ!
 こっちの世界の人達だって、命かけてんだ! 俺らだってそん位しなきゃ、勝てないし、カッコ悪いってもんだろ!」

 敵の攻撃は苛烈。そして俊敏さでもはるかに増している。飛び交う雷。そして振るわれる巨体は、それだけでも強烈な凶器として機能する。
 誰もが無事ではいられない。ほんの少しのタイミングのずれが、そのまま命取りとなる。特異運命座標たちも、多くは散っていく。
 死の激痛。それに耐えながら、しかしもう一度死に戻り(リスポーン)して、なんどでも、何度でも、星喰いに立ち向かう!
「うおおお!」
 爆裂する雷の中を飛び交うのは虎帝・マリ家! 鋼鉄三皇帝が一人! それが今、正義国を守るために飛ぶ!
「戦場の皆を守るのです!
 そして聖遺物まで持ち出して下さった正義国の皆様の期待に応えねばなりません!
 拙者! 皇帝ですので!」
 対外的な問題ではない。今、自分たちの勝利を信じて、この先にあるより良き未来を信じて、正義国の人々は命を預けてくれた! それを! その手を!
「振り払うことなどできますか!」
 打ち放つ、無数の電磁串! 完全聖域にによるバフのかかったそれは、まるでミニガンのような強烈な勢いで、星喰いの顔面につきささる! 星喰いは鬱陶しそうにマリ家を睨みつけた!
「マリ家さん、攻撃を引き付けられるかい?」
「Λ殿! お任せあれです!」
 マリ家は飛んだ! 刹那、強烈なブレスがマリ家を追って空を蹂躙した! 超高熱、もはや炎を通り越して光の帯と化した火炎のブレスが、完全聖域を破壊せんばかりに打ち放たれる!
「ご武運を――」
 マリ家が光の中に消えていく。Λは頷いて、その四肢に刃を漲らせた。
「弱点は変わらず……なら、目ももろいのだろう!?」
 突撃! 全スキルをフル稼働する、決死にして全身全霊の一矢!
 だが、それを迎撃するように、空に無数の『バグの槍』が生まれた。パラディーゾを飲み込んだことによって扱えるようになった権能が一つ。
「あのログアウト不可槍か! いいね、でもボクには効かない――!」
 一気に解き放たれたバグの槍が、Λを貫く。全身を襲う激痛に耐えながら、Λは一心に、獣の目に向けて突撃した。
「四刃生成……星喰い何するものぞ! 喰らえ、魔哭連旋――」
 強烈な斬撃と爆発が、星喰いの顔面に巻き起こる。その爆発に身を煽らせながら、セララは口腔を目指して、ひたすらに奔る!
「正義国の皆がくれたチャンス! 皆の祈りと希望をこの一撃に!」
 高らかにとんだ! 掲げる刃、それに雷を纏わせ――いや、この完全聖域の場においては、世界のすべてが正しき者に味方する! 完全聖域の光が、この時さらに力を貸すべく、セララの刃に宿った!
「アルティメット・ギガセララブレイク!」
 突き出した剣と共に、セララは星喰いの口腔に無理やり突撃する! 同時、内部にて振り下ろされた刃が強烈な爆発を起こし、口腔内に大きなダメージを残したのだった。

成否

成功

状態異常
セララ(p3x000273)[死亡]
妖精勇者
夢見・マリ家(p3x006685)[死亡]
虎帝
カイト(p3x007128)[死亡]
結界師のひとりしばい
Λ(p3x008609)[死亡]
希望の穿光
ヒロ(p3x010030)[死亡]
子供の矜持

第3章 第3節

梨尾(p3x000561)
不転の境界
エイル・サカヅキ(p3x004400)
???のアバター
真読・流雨(p3x007296)
飢餓する
きうりん(p3x008356)
雑草魂
天川(p3x010201)
國定 天川のアバター

 この心地よい光は、人の命の光だと知っている。人の可能性を消費して起こす奇跡だと知っている。
「シェアキム……!」
 きうりんは呻いた。この光が……この命が、正義国の人々の命の光だと知っているから。
「でも、まずは……うーん……金星天エイルくんに託されちゃったからなぁ……!ㅤきうりはおまけっぽかったけど!!
 まぁ、ちょっと声くらいかけてあげますか!」
 駆ける! 降り注ぐ強烈な雷! その合間を縫いながら、きうりんは叫んだ!
「世界の敵だからなんだよ!!ㅤ敵だったら愛されないとでも思ってんのか!!
 ぱらすち!ㅤ私がお前に生きる意味を与えてやるよ!ㅤお前は私を殺すために生きてんだよ!!
 そうすれば、私がお前を愛してやる!!ㅤだからもっと抵抗しろ!!」
 雑草パワーで、星喰いの腕を殴りつける。ぐん、と衝撃に動かされた星喰いの腕が、しかしすぐに反撃とばかりにきうりんへと叩きつけられた。
「スターイーター! ずっと言ってるけどね!ㅤ食べるなら私を食べろよ!!ㅤ世界なんてちっぽけなもん食べてないでさ!!
 それともお野菜は嫌い!? ここにきてわがまま言ってんなッ!!」
 ならばお望みどおりにしてやろう、とばかりに、星喰いはきうりんの身体をわしづかみにした。そのまま口中へと放り込まれる。ぐわん、と口が閉じると、PCが死亡するエフェクトが破裂する。
「うりっち!」
 エイルが叫び、星喰いの顔面を思いっきり蹴りつけた。エグい一撃、ヒールがランスのごとく星喰いに突き刺さるが、星喰いはじろり、とエイルを見返すだけだ。見るだけでもい竦むような視線。捕食者による、絶対的な実力差……! いや!
「ギャルのこんじょー舐めんなし!
 ぱらすち聴こえるー!?
 聴こえてなくても喋るけど!」
 振るわれる腕をジャンプして飛び越えて、エイルは叫んだ。
「偽アタシことぱらえるはギャルバトルに負けて消えました!
 ぱらすちの応援に行きたいって言ってたけど……ごめん、あたしが殺した」
 少しだけ、胸が痛む気がした。
「ぱらえるはさー、ぱらすちとタピったり、映えスポット行きたがってて、ぱらすちのこと『友達』って言ってたし「うちのスティアっち、お願いね」って託された!
 ギャルは約束守るんだわ! だからぱらすち、ガン無視しないで返事しろやー!」
 叫びが、赤の雷に飲み込まれていく。いや、たとえ消し飛ばされても、何度でも、何度でも、声が届くまで叫んでみせる!
「『うおおおおおおおっ!!!』」
 仲間を焼いた雷の雨。その合間を縫って、梨尾は星喰いの顔面へと突撃する!
「『何が遅い!
 遅い事なんてない! うちの次男だって、理弦だって間に合ったんだ!
 遅い事なんて、ぜったいに、ない! いつだって手を伸ばせば……その手を取ってくれる人はいる!』」
 梨尾は閉じかけた口中に、無理矢理入り込む。上下から迫る天井仕掛けじみたその内部に入り込み、
「『聞こえるかぱらすち! このままスターイーターと一緒に死んだらお墓にぱらすち、ここに眠るって書かれるぞ!
 それでいいのかぱらすちー!』」
 叫びながら、内部で攻撃を続行する――その身が押しつぶされるまで、叫び、叫び!
「嬢ちゃん! 皆言ってるがな! アンタを助けたい連中は大勢いるだろ!」
 天川は、刃を翻し、跳んだ。
(あんまりじゃねぇか……。
 やっとあの嬢ちゃんの本音が一部でも聞けたってのによ。
 ……でも諦めてねぇお人好し共はまだいるみてぇだな! はは!
 殺しはもう、うんざりするほどやった……。
 どうせなら次は誰かを助ける方がいい!)
 体に飛び降りてみれば、星喰いの体毛は、まるで生きているかのように蠢く。そして、それ一本一本がニードルのようにするく、天川を突き刺し殺すべく迫る!
 それを刃で切り裂きながら、天川はなお叫んだ。
「おい! ぱらすちの嬢ちゃん! 本当にこのままでいいのか!?
 俺はともかくアンタを助けたい連中は大勢いるぜ!
 それと、俺との斬り合いが途中だろうがっ!
 消化不良なんだよ! 出て来い! 試合でもしようぜ!」
 天川の叫び――だが、その言葉を朝笑うように、星喰いの体毛が一斉に、『ぱらすち』の持っていた刀に変貌を遂げた。
「おいおい、駄獣が。それはお前が握っていい刃じゃねぇ」
 無数の刃に相対する天川が、錨の言葉と共に、刃の群れへと突撃する。

 ああ、ああ、不愉快だ。
 流雨は静かに――静かに、星喰いを見上げた。
 多くの者たちが、言葉を尽くして彼女を救おうとした。
「お前はそれを台無しにしたな。
 全く。全く、お前は。全くマジで。
 現実だけでは飽き足らず、またも僕の獲物に手を出すか。
 ――良いだろう。あの時と同じ様に。あの時以上に。
 塵も残さず喰い尽す」
 流雨が、己のアバターを変えた。それは、本来の流雨の姿。
 今はそうだ、喰らう事しか知らなかった化け物の姿に戻ろう。
 お前はそれがお望みだろう?
 喰らいあおうじゃないか。存分に。
「今度も、僕がお前を喰らいつくす」
 跳んだ。怪物が! 星喰いに挑む!
「ぱらすち君。君が望もうと望まないと助けにいくさ。最短距離でぶち抜いてな。
 どうせ喰われるなら僕にしておきたまえよ――これは冗談だがね」

成否

成功

状態異常
梨尾(p3x000561)[死亡]
不転の境界
エイル・サカヅキ(p3x004400)[死亡]
???のアバター
真読・流雨(p3x007296)[死亡]
飢餓する
きうりん(p3x008356)[死亡]
雑草魂
天川(p3x010201)[死亡]
國定 天川のアバター

第3章 第4節

ルフラン・アントルメ(p3x006816)
決死の優花

 特異運命座標たちがたたきに望む一方、正義国聖騎士達も戦場に残り、終焉獣たちとの戦闘を続けていた。
 星喰いのパワーアップに呼応するように強化された終焉獣たちだったが、しかし完全聖域の力は、聖騎士たちも相応に強化させている。
「けど、あたしたちみたいに無敵になったってわけじゃないからね!」
 ルフランは杖を掲げた。あまい、あまい、アップルパイを模した杖。
「世界を食べるのはダメだよ! 食べるなら、甘いものにしておけばよかったのにね……そうしたら、きっと!」
 ルフランが編み上げる術式が、甘い甘いお菓子を生み出す。それは完全聖域の地からを受け手、まさに聖菓、とでもいうべき神々しさを発していた!
「サクラさん、アンナさん、大丈夫!?」
「は、はい、勇者様」
 聖遺物によって生命力を吸収されているのだろう、アンナは苦しげな表情だ。
「確かに、聖遺物によって、私達も生命力を提供しています。
 でも、それは天の杖を起動しているシェアキム猊下や、アークライト騎士団長たちに比べればはるかに軽い負担のはずです……!」
 サクラはそう言って、気丈に笑ってみせるが、とはいえ、苦しそうなことに変わりはない。
「無茶はしないで! そのぶん、あたしが頑張るから!
 ぜーったい、負けないんだからー!」
 決意の声と共に、ルフランは絶え間なく術式を編み続ける!

成否

成功


第3章 第5節

すあま(p3x000271)
きうりキラー
グレイ(p3x000395)
自称モブ
蕭条(p3x001262)
叩いて直せ!
白銀の騎士ストームナイト(p3x005012)
闇祓う一陣の風
Dr.S(p3x008208)
蛇遣いの意志を継ぐもの
壱狐(p3x008364)
神刀付喪
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
アズハ(p3x009471)
青き調和
ゼスト(p3x010126)
ROO刑事ゼスティアン

「敵の攻撃は――」
 黒子が言う。今最もこちらの攻撃の手を妨害しているものは何か。
 赤い雷。ブレス――その全てを弱化させる手段があるとしたら、それはとにもかくにも、背部角部分の破壊である――。
「ならば、今狙うべきは、背部角です! それで――」
「敵の攻撃力は30%は減……この場合の30%は、狙うべき30%です!」
 壱狐がそう叫ぶ。自身のデータ解析によって導き出された解! それが告げている、狙うべきは、敵の牙たる背部角!
 だが、敵とて黙ってそれを見逃してくれるわけがない。現れた、無数の『バグの槍』。そしてさく裂する赤黒い雷が、特異運命座標たちを打ち据える! 『バグの槍』は、扱いきれていないためか、ログアウト不可を与える確率は極端に低いようであったが――。
「来ますよ! 一発一発が10回死んでもおつりがくるほどのダメージ量です!」
 壱狐が叫ぶ!
「私は脚部への攻撃を続行しつつ、サポートを行います! とにかく攻撃の兆候が見えたら……こういう言い方は好みませんが、『死ぬ気でよけて』先に進んでください!」
 黒子が叫ぶ――同時に、無数の槍が、雷が降り注ぐ! 飛来するバグの槍をすあま、そして『ラダ』が飛び移って回避! がちゃん、と鎧の音を立ててバグの槍に着地した『ラダ』が、すあまの首根っこを摑まえるや、全力で放り投げた!
「ラダ、後で合流ー」
 くるくるくる、と回転しながら飛んでいくすあま。頷いた様子を見せて、『ラダ』がバグの槍と共に地に落下していく。すあま以外にも、多くの特異運命座標が、各々思い思いの方法で――シンプルに飛んだり跳んだり、或いは身体を駆け上ったりだ――目指すは星喰い背部!
「正義を奉ずる国の者たちよ! 貴君らの想い、力、確かに受け取った! この白銀の騎士ストームナイト、君たちの意志に必ず報いよう! ――世界を救って、な!!」
 背後で戦いを続ける正義聖騎士たちにも聞こえるように、ストームナイトは叫んだ! そのまま、まさに疾風のごとく星喰いの身体を駆けあがる!
「見つけたぞ……いや、見つけ出すまでもない! 目標は巨大!」
 ストームナイトが刃を構えた。同時に鋭く突き出すや、その衝撃は光の槍となって背部角へと突き刺さる!
「我が剣閃は嵐槍の一撃――!」
「そして、私の刃は陰陽五行が太刀ッ!」
 壱狐が、その背後から飛び掛かる! ストームナイトの衝撃波に合わせるように放たれた剣閃光が、強烈な衝撃を生み出し、背部角に深くひびを生み出した!
「そして、俺の機械鋸は機械鋸だぁぁぁぁぁぁっ!」
 上空から飛び込んでくるグレイ! 叩きつけられた機械鋸が、ぎゃりぎゃりぎゃり、と強烈な音を立てて赤い背部角にめり込む! 同時、ひびが一気に広がり、半ばからへし折れた背部角が落下していく!
「足を止めない! 次をへし折るっ!
 それに、聞こえてるんだろ、君! 『この世界だって、捨てたもんじゃないよ』……後は忙しいから、それだけ聞いて!」
 グレイは機械のこの腹を蹴り上げて無理矢理持ち上げると、そのまま次の獲物へと取り掛かった。剛毛ごと背部角に斬りかかり、機械鋸を激しく叩きつける!
「正義国の皆さんの応援は心強い応援ですが、命を削っている、なんて聞いてしまうと此方ものんびりとはしていられませんね。がんばります殺意!!」
 殺意! 蕭条が、機械鋸の叩きつけられ、斬り込みの入った部分に強烈な体当たりをぶちかます!
「どすこーい!! へし折れるまで何度もどすこーい!!!」
 ずどん、ずどん、と爆発のような音をあげて叩きつけられる蕭条!
「脊髄ごとよこせコラーーッ!!」
 流石に脊髄は出ないだろうが、それはさておき強烈な連撃が、また一本の背部角をへし折った。落ちていく角が、地面に落着してすさまじい音をあげる。
「彼らがチャンスを作ってくれた……そして俺達に賭けている。
 ……無駄にできるわけがない!」
 目を見開いて、廃物の地帯を駆け抜けるアズハ。その光を、この光景を目に焼き付けるために。その光が尽きる前に、全力で戦うために。
「まとめて撃ち抜く……!」
「ならば、自分もそれに倣いましょうッ!!」
 ゼストが叫んだ!
「正義国の人々、その想い! それに応えて彼らを救わねば……ヒーローの名折れでありますともッッ! ゼスティアン、任務了解でありますッッ!」
 ばしっ、と構えて見せるゼスト。
「敵は強大、ですがこの場にはダブルヒーロー……いや、トリプル、フォー……ええい、沢山のヒーローが! そう、誰でもヒーローになれるのですッ! その胸に正義の熱い心があればッ! その心を燃やすのは今ッ!」
「ああ、そのヒーローの心はよくわからないけど、全力を出すなら今だ!」
 アズハが叫び、同様に構えた。その手に装着された拳闘武器、それを力強く突き出す! 同時、その手に巻き起こる、強烈なエネルギーの奔流!
「そして自分はッ!
 アイン・ソフ・オウルの力を……みんなの力、お借りするでありますッッ!」
 十字に構えたその腕に、強烈な光が発生する。そう、その光こそ、ぜすてぃ案の必殺技!
「スペリオォォォォル…ゼタシウムゥゥゥゥ……光線ッッッ!!!」
「技名は……ないけど!」
 二人が放った強烈なエネルギーの奔流が、特異運命座標たちの攻撃により脆さを見せていた赤い背部角をまとめて光のうちに飲み込んでいく。巨大な背部角は、それすら飲み込まんばかりのエネルギーの奔流に飲み込まれて、光のうちに消滅する!
「雷撃、きます!」
 黒子がシャウト! 同時、無数の雷が、その背中に叩きつけられる! 擦過しただけでも強烈なダメージを受けるその一撃に、何名かの仲間達は死亡状態に追い込まれる。
「ちっ、バケモンかよ!」
 Dr.Sは舌打ち一つ、治療術式を展開した。アイン・ソフ・オウルの光に負けぬ光が特異運命座標たちへと降り注ぎ、その傷を瞬く間に癒していく。アイン・ソフ・オウルのバフにより、スキルの威力も強化されているのだろう。
「良いか! 正直、死んでも幾らでもやり直せるってのは生命への冒涜みたいで好きじゃねぇんだが……大勢の生命を護る為に使えんなら話は別だ!!
 治療に使えるもんは何だって使う!! それが医者だ!! 幾らでも治してやるし幾らでも補給してやるからぶちかましてこい!!」
「任せて、この子もいい加減、やすませてあげたいからね」
 すあまが声をあげた。その身体に、雷撃によるやけどを負いながら、懸命に身体の上を走り抜ける。
「いったーい! 滅茶苦茶痛いのでやつあたりの体当たりもはかどりますねーーー!!」
 蕭条がすあまの横を駆け抜けていく。その勢いのままずどん、と背部角に体当たり。
「よーし、もう一本、へしおるぞー!」
 背部角へ、すあまはその鋭い爪を叩きつけた――!

成否

成功

状態異常
白銀の騎士ストームナイト(p3x005012)[死亡]
闇祓う一陣の風
壱狐(p3x008364)[死亡]
神刀付喪
アズハ(p3x009471)[死亡]
青き調和
ゼスト(p3x010126)[死亡]
ROO刑事ゼスティアン

第3章 第6節

――システムメッセージ――
 背部角部位の破壊進行度が60%に到達しました。
 敵範囲攻撃群の攻撃範囲、威力が低下し始めています!
 


第3章 第7節

シフォリィ(p3x000174)
クィーンとか名前負けでは?
ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
玲(p3x006862)
雪風
かぐや(p3x008344)
なよ竹の
きうりん(p3x008356)
雑草魂
エイラ(p3x008595)
水底に揺蕩う月の花
H(p3x009524)
ダークナイツ
CALL666(p3x010222)
CALL:Beast

「にゃーっはっはっはっ!
 ズルにはズルか! 考えた喃!」
 次々と降り注ぐ『バグの槍』。その威力は低下し始めていたが、されど脅威は健在だ。玲はそんなバグの槍の雨あられを飛び交いながら、星喰いの顔面へと向かう!
 星喰いの顔面は、最もリスキーながらもっともリターンの大きい部位ともいえる。何せ敵の急所の一つ。だが、そこは最も激しく攻撃の飛び交う激戦区でもあるのだ。
「じゃがなぁ! 虎穴にいらずんばなんとやらじゃ!
 星を墜とすんじゃぞ、リスクなしで成し遂げられるか!」
 玲が吠える。手にしたハンドガン、ドレッドノート&デザートホーク。黒と白銀のそれが、今、アイン・ソフ・オウルの力を乗せて、強烈な銃弾を撃ちだす!
「おおっと、めっちゃ威力あがっとる!
 よーし、いいぞ! ドレッドノートよ、彼の意を撃ち墜とせ!
 てってー的に攻撃するのじゃ! めっちゃふんばるのじゃ!」
「じゃぁ、エイラが攻撃を引き受けるよぉ」
「きうりんもだよ!」
 きうりん、エイラが飛ぶ! 星喰いの鋭い眼光が二人を睨み、刹那、その口を蛾張り、とひらいた。途端、拡散するように無数の、礫のような火炎のブレスが吐き出される!
「うおっ! なんか芸が増えたっ!?」
 きうりんが叫ぶ。その前に立ちはだかったエイラが、盾を掲げて散弾を受け止めた!
「命中力は上がってるけどぉ、一発一発の威力は落ちてるみたいだねぇ」
「よくあるパターンだ!
 おらぁ、舐めた攻撃してないで、また喰らってみせろよ!」
 きうりんが、敵の口中に向けて飛んだ。
「全くどいつもこいつも! 生命と引き換えに、とか、誰かが犠牲になって、とかいっちばん嫌いなんだよね!
 きうりんは怒ってるよ! 私は正義も悪も全員ハッピーな大団円がいいの!
 例えどちらかが死ぬまで終わらないとしても、後悔しながら死なないで!!
 いつ死んでもいいくらい全力で生きろよ!!
 私は常にそうやって生きてるぞ!!
 だから、みてろよ、きうりんの生き様を――!!」
 散弾のブレスをまともに受け止めながら、そのまま星喰いの口の中に突っ込んでいくきうりん! 口の中で、きうりんに直撃した散弾ブレスがはぜ、星喰いがたまらず悲鳴をあげる。
「すごいねぇ。エイラも頑張るねぇ」
 エイラが、ふわり、と飛ぶ。その視線の下に、星喰いを……或いは、『ぱらすち』を観ながら。
「ぱらすちぃ、お友達が欲しかったんだねぇ。桜とぉ友達になりたかったんだねぇ。
 謝るのはぁ未練の証だからぁ。
 きっとねぇ。死んでも死にきれないんだよぉ?
 ならぁ墓守としてぇ君の死をやりきれない死にはしないんだよぉ」
 再び吐き出される散弾のブレス。エイラはそれを受け止めながら、仲間達に攻撃を促す。
「いまだよぉ、みんなぁ」
「はい!」 
 シフォリィが声をあげた。その掲げた手から放たれる、女王のオーラ。ポーンからクィーンへ、その力を向上させる、気高きオーラだ。
「正義国の人々……最後の一押しを命を削ってまで使うなんて……ですが私達には止める権利はありません、その選択を取ったのなら、助けとなるのはいち早く目標を満たす事! そして、あきらめていない人に手を貸すことです!」
 その手を高く掲げる! 放たれたオーラが、次々と仲間達に降り注いでいく!
「ぱらすちさんに、私が駆ける言葉はありません……伝えられる言葉は、私にはない。ですが、手を貸すことは許される、私はそう信じたい!
 皆さん! 行きましょう!」
「かしこまりですわ!!
 おっしゃぁぁぁぁぁあ! 出番ですわねぇぇぇぇっ!!」
 かぐやが吠えた! その両手には、無数の竹槍が構えられている! そのまま地上から跳躍! シフォリィの横を跳んで、さらに空へ!
 なんかすごいものが採り過ぎた衝撃にシフォリィが若干あっけにとられたがそれはさておき。同様に、地上からCALL666も、矢を構えていた。
「喰らいたいのなら、喰らわせてやろう、星喰いよ。
 だが、俺の矢を喰らうのであれば、それは腹が膨れた、等では済まないぞ」
 ぎり、と力強く弦を引き絞る。
「一斉攻撃だ。まずはあの口を開ける。そうしたら……」
「……あの人たちが飛び込むのですね」
 ハルツフィーネが言った。
「良いでしょう。元よりそれが、戦局を変えるかもしれないのなら。
 ……それに、囚われの誰かを助けるとか……あの子が聞いたら随分と喜びそうで……」
 ハルツフィーネが頭を振ると、
「皆さんで遠距離攻撃を……私のクマさんと、Hさんの刃で、最終的にあの口を切り開きます」
「頼むぜ、アイツを消えさせたくはないんだ」
 Hが言った。ハルツフィーネが頷く。
「では……行きましょう!」
 ハルツフィーネが飛ぶ。続いて、Hも跳んだ!
「遅かったですわね!」
 かぐやが、星喰いの身体の上から叫ぶ!
「さぁさぁ、のどちんこの奥まで、竹槍をぶっ込んでやりますわ!!」
 ぐい、とかぐやが竹槍を構える――次の瞬間、かぐやはその竹槍を思いっきりぶん投げた! 一本、二本、三本! 竹槍の後ろに竹槍が突き刺さり! その後ろに竹槍が突き刺さる! 無限連結竹槍! いや、連続してぶつけられる竹槍の衝撃!
「よし、此方も……まずは一矢!」
 CALL666がそれを確認するや、強烈な光放つ一矢を撃ち放った! 竹槍! そして光の矢! 打ち放たれたそれらが、正面から星喰いの口に突き刺さる!
 ずだだん、と音を立てて、連撃が星喰いの口に衝撃を与えた! 同時、飛び込んだハルツフィーネ、Hが、クマさんの爪を! 剣戟の衝撃波を! 叩きつける!
「アンタが消えたら、アンタの傷も消えちまう!
 忘れたくない喜びも、怒りも、悲しみも! これからの楽しさも全部消えちまう!
 俺が止めてやる、絶対にこの口を閉じさせねぇ!
 だから叫べよ! アンタを助けてくれるお節介共が、ここには居るだろうが!」
 Hが、叫ぶ。
(この世界のアストリアは、親友なのだとか。
 …ええ、いくら世界を救う戦いであっても、親友を奪われるのはいけません。
 この世界で研鑽してきた力は、きっとこの時のために)
 ハルツフィーネは想い、
「彼女が憧れる勇者様として、さっさと撃破してやりましょう!」
 そして叫ぶ! 特異運命座標たちの連続攻撃が、強烈な打撃と衝撃を生み出し、星喰いは悲鳴をあげるように、溜まらず大口を開ける。
 その隙をついて、二つの影が内部へと侵入していった――。

成否

成功

状態異常
きうりん(p3x008356)[死亡]
雑草魂
エイラ(p3x008595)[死亡]
水底に揺蕩う月の花

第3章 第8節

――システムメッセージ――
 口腔部位のの破壊進行度が30%に到達しました。
 ダメージが蓄積しています。引き続き攻撃を行ってください!


第3章 第9節

スティア(p3x001034)
天真爛漫
桜(p3x005004)
華義の刀
真読・流雨(p3x007296)
飢餓する

 二つの影が、大口を開いた星喰いの口中へと突入していく。
「いいよね、スティアちゃん!」
「オッケー! 行くよ、サクラちゃん!」
 二人はお互いに頷き合いながら、その体内へ――迷宮めいた其処へと侵入していく――。

 声が聞こえていた。

『世界の敵だからなんだよ!!ㅤ敵だったら愛されないとでも思ってんのか!!
 ぱらすち!ㅤ私がお前に生きる意味を与えてやるよ!ㅤお前は私を殺すために生きてんだよ!!』
 殺すために、なんてすごいと思ったけど、でも、自分を鼓舞してくれていることは分かった。

『ぱらえるはさー、ぱらすちとタピったり、映えスポット行きたがってて、ぱらすちのこと『友達』って言ってたし「うちのスティアっち、お願いね」って託された!』
 あの子が、自分を友達だと思っていた子とに気づかなくて、すごく、申し訳ない気持ちになった。

『聞こえるかぱらすち! このままスターイーターと一緒に死んだらお墓にぱらすち、ここに眠るって書かれるぞ!』
 それはたしかに、ちょっと笑っちゃうかも、とか思った。

『おい! ぱらすちの嬢ちゃん! 本当にこのままでいいのか!?
 俺はともかくアンタを助けたい連中は大勢いるぜ!』
 本当に……聞こえる声が、その想いは分かって。

『ぱらすちぃ、お友達が欲しかったんだねぇ。桜とぉ友達になりたかったんだねぇ』
 そうだね。もしかしたら私は、友達が……優しさの証明が欲しかったのかもしれない。

『アンタが消えたら、アンタの傷も消えちまう!
 忘れたくない喜びも、怒りも、悲しみも! これからの楽しさも全部消えちまう!
 だから叫べよ! アンタを助けてくれるお節介共が、ここには居るだろうが!』
 そうなんだ。どうして。どうして、そんなに。

「みんな、どうして……私なんかにそんな声をかけてくれるの」
 『ぱらすち』は呟いた。どうしてか、自分の身体が再構築されているのを知っている。この星喰いの体内でなぜか、生きている。
 それは……無意識の抵抗だった。もしも、特異運命座標たちが、ただ彼女を倒すのみの存在だとしていたら……彼女は喜んで星喰いに飲まれ、その一部になっていただろう。 
 だが、特異運命座標たちがかけた言葉が、彼女の心に楔を穿った。
 それが――こうして、彼女の身体と意識を維持し続けさせたのだ。
「どうして……?」
 きゅい、と何かが鳴いた。ぱらすちが顔をあげてみれば、なぜかは分からないが、目の前にサメがいた。
「は?」
 思わず目が点になる――同時、肉の壁面を切り裂いて、傷だらけの人影が躍り出てきたのだ。
「もう、サメちゃん、変なルート通り過ぎだよ!」
 スティアがサメちゃんにめっ、ってした。隣にいる桜が、ぱらすちに微笑んで見せた。
「ぱらすちちゃん、助けに来たよ」
「どうして……?」
 ぱらすちは、呆然と呟いた。
「どうして……どうして? わからない。私……敵なんだよ? 私は、魔種みたいなものだって、知ってるよね……?」
「知ってる。でもね、敵対した人たちとだって、話をしてきたんだ。
 ぱらすちちゃん、貴女の願いは……私達友達になる事。それでいいかな?」
 スティアの言葉に、ぱらすちがぱくぱくと口を開く。
「だって……私は、どう転んだって、消滅するだけの命なのに……!」
「ぱらすちちゃん。
 たとえ明日潰える命だったとしても……大切な願いを叶えるために努力することは、悪でもみっともない事でもないんだ。
 私は言ったよ、友達になろう、って。
 もう一度、言わせて。
 友達に、なろう?」
 桜が。スティアが、ゆっくりと、手を差し出した。
 ぱらすちは――その手を。
「よし、帰るよ!」
 スティアが笑う。
「でも、どうやって……?」
 ぱらすちが言うのへ、桜が頷いた。
「一直線で帰る!」
「結局そうなるんだね。でも、それが一番シンプルだね!」
 スティアが笑う。
「それに……聞こえるでしょ、外からの音!」
 桜がそう言って、刃を構えた。

「ああ、そうだな。そうだとも。思えば、あの時君からもらった一撃が『贈り物』であり、今使うべき武器なのだ。ガラスの靴というには少々色気が無かったが……おかげで死ぬほど強くなれた。そして、その爪は、今ここで振るうべきだ」
 流雨が、跳んだ。
「君を、助けるために!」
 星喰いの腹――そこに、流雨の爪が、一文字の傷跡を作る。
 深い、深い、傷痕。そして、内側からその傷口を切り裂いて――三人の少女が、飛び出してきた――。

成否

成功


第3章 第10節

「おかえり、姫君。帰ってきたところ悪いのだが、正直状況はギリギリだ」
 流雨が言う。ぱらすちは頷いた。
「うん、中から状況は把握してるよ。で、勿論……手伝わせて?」
「大丈夫、ぱらすちちゃん?」
 スティアが尋ねるのへ、ぱらすちは頷いた。
「友達のためだもん」
「一緒に頑張ろうね、ぱらすちちゃん」
 桜が笑いかけるのへ、ぱらすちは頷いた。
「今から、スターイーターに、私の権能を使って妨害をかけるね。
 私も、その力の殆どをスターイーターにとられちゃってるから、完全に操ることはできない。
 でも、動きを邪魔するくらいはできる」
 ぱらすちの言葉に、特異運命座標たちは頷く。
「……私が言えた義理じゃないけど、皆、頑張って。
 それじゃ、行くよ!」
 ぱらすちが、その手を合わせ、意識を集中した――刹那、星喰いがその動きを目に見えて鈍化させた。まるで鉛の重しをつけられたかのように。
「こっちも長くはもたない……もともと制限時間付きでしょう?
 あとを、お願い!」
 額に脂汗を流しながら叫ぶぱらすちに、特異運命座標たちは頷く。

 もはや憂いは無い。
 星喰いを、せん滅せよ!

――システムメッセージ――
 特異運命座標たちの活躍により、パラディーゾ原動天、通称『ぱらすち』が一時的に協力体制に入りました。
 ぱらすちの権能の効果により、『スターイーターの行うあらゆる行動の判定にマイナスが生じる』が発生しています!


第3章 第11節

ヨハンナ(p3x000394)
アガットの赤を求め
梨尾(p3x000561)
不転の境界
ロード(p3x000788)
ホシガリ
ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
メレム(p3x002535)
黒ノ翼
エイル・サカヅキ(p3x004400)
???のアバター
ルフラン・アントルメ(p3x006816)
決死の優花
Dr.S(p3x008208)
蛇遣いの意志を継ぐもの
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
Λ(p3x008609)
希望の穿光
しきみ(p3x008719)
愛屋及烏
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

「っつしゃ! おかえりぱらすち!」
 エイルが笑顔を向けた。ぱらすちは、意識を集中しつつ、笑い返して見せる。
「ありがとう、あなたの声も、聞こえたよ」
「うん。ぱらえるとの約束も果たせた……でも……ごめんね、アタシは……」
 ううん、とぱらすちは頭を振った。
「金星天も、水星天も……私達パラディーゾは、その末路を常に覚悟していたから。気にしないで……というか、あの子にも名前つけてたの?」
「えへへ、いきおいって感じでね!
 所で、ちょっと真面目っぽくね? ぱらえるが友達だったんだから、アタシも友達でいいっしょ? もっと砕けた感じでいーよ! おけまる?」
「お、おけまる……」
 ぱらすちが苦笑する。エイルは笑った。
「待っててね! ぱらすちが作ってくれた時間、絶対に無駄にしないから!」
 エイルが駆けだした。ぱらすちは、それを見送りながら、再び『権能』の意地に全力を尽くす。
 前線では、アイン・ソフ・オウルの光に照らされた特異運命座標たちの決死の猛攻が続いている。
(ギャルっていうのは、情に厚くて、強くて格好いい――そういう生き方よね)
 その中に、飛び込んでいくエイル――その背中は、優しさを背負って。
「お姉様! ぱらすちお姉様は助け出されました!
 あとはこの怪物を倒して、結婚式を挙げましょう!」
 しきみが叫ぶ。強烈なブレスが地を薙ぎ払うのを、しきみは跳躍して回避。
「さぁ、みなさい! この公的書類に燦然と輝く配偶者記載アリの印を!
 つまりもう結婚! この後は結婚式を挙げて、3回くらいはお色直しも致します!
 というか、ぱらすちお姉様とお姉様で、これはもしかして両手に花なのでは!?」
 しきみのもつ公的書類から放たれる、配偶者記載の公的な圧が、星喰いの体を圧した! アイン・ソフ・オウルの光によって強化されたそのエネルギーが、結婚前の男に対する圧力のように強く叩きつけられる!
「ぱらすちお姉様! いまも必死に戦っておられる貴女に、私は声をかけ続けましょう!
 ぱらすちお姉様――あなたの最後の終わりは幸福でなくてはならない。
 それが天国篇と名付けられた、貴女に相応しい終わりでしょう?」
 配偶者記載の圧が、再び星喰いを叩いた! 星喰いが雄叫びをあげつつ、散弾の炎のブレスを地へと吐き出す!
 荒野のあちこちに灼熱地獄が顕現するが、いまさらその程度のダメージが、特異運命座標たちの足を止めるものか!
「なるほど、大したデカブツだ。あれを一秒でも早く殺れば良いンだな?」
 ヨハンナの言葉に、
「その通りです」
 と黒子が応える。
「弱点は――」
「知ってる。顔、背中、脚。分かりやすいじゃねぇか。
 星を食うなんぞ」
 (アストリア達が力尽きるなんぞ)
 胸中でそう付け加えながら、
「そんなバッドエンドは認めねぇさ。ああ、認めてやるものかよ。
 アンタが司令塔だな、黒子? 情報頼むぜ。俺は、脚を潰す!」
 ヨハンナが駆ける! 振り上げられた星喰いの足、それが落着する刹那、ヨハンナはその脚力を利用して力強く地を蹴り、強烈なステップ――無理矢理方向を変え、振り下ろされた脚部を回避!
「死を恐れるつもりはないがな、だが、無駄死にはごめんだ」
 ぶちり、と指をかみちぎる。そこから迸る鮮血が、巨大な槍の姿を取った!
「その脚、地面に縫い付ける!」
 投擲――放たれた槍が、星喰いの足元を地に縫い付けた!
「動きを止めた! 大型のバグとはいえ、獣の姿だ! 腱を斬れ!」
 ヨハンナの叫び、ロードが頷く。
「よし! 了解だ、ぶっ飛ばそう!」
「皆頑張るなぁ、元気な私も負けてられないネ」
 メレムも同時、飛び出した! ロードが掲げる、その手。そこに渦巻く強大な魔力が、巨大な剣の形を作り、現出する!
「シェアキムとアストリア達がぶっ倒れる前にスターイーターを倒す!
 勝つしかない、なんていつも通りだ!」
「そうだね! 斃せばいいだけなら、複雑に考える必要もないからね」
 ずず、とメレムの影が、その脚元より立ち上がる。粘性の液体のように立ち上がったそれが、さながら行ける刃のごとく、蠢きながら形をとり、今獲物を見つけて、歓喜に打ち震える。
「さぁ、行くよ?」
「その脚、止める!」
 メレムが、ロードが、その手を振るった。二つの刃、魔力剣と影の刃が、星喰いの足、その腱に向けて振り下ろされた!
 ヨハンナによって縫い付けられた脚は、よける事すらできない! 斬! 肉を、筋を、切り裂く刃! 鮮血がほとばしり、星喰いが雄叫びをあげた!
「脚部破壊を確認しました!」
 黒子が叫ぶ! 星喰いの動きが、目に見えて鈍るのを、特異運命座標たちは確認していた!
「なら、もう一押しだね!」
 ルフランが叫ぶ!
「ほら、Dr.Sさん! 一緒に頑張ろう!
 こっちはいくらデスカウントを稼いでもいいって言っても、攻撃できる時間が減っちゃうからね!」
「分かってる。治すのが、医者の仕事だ。
 ……しうし、あのパラディーゾの女性の心を、皆の声が動かしたのか。
 医者でも、心の傷はそう簡単には治せねぇ。それを短期間で、な」
 Dr.Sは笑ってみせた。
「そうだね……もしかしたら、翡翠の方で暴れてるあたしも――なんて、夢見ちゃった。
 ううん、今は忘れなきゃ!」
 ぱちん、と自分の頬を両手で叩いて、気合を入れるルフラン。
「皆! 思いっきり支えるから! みんないっけーっ!」
「生命の輝きは等しく尊いものだ、何処でだって変わらねぇ。
 こんな電脳空間でも必死に終わりに足掻いて、未来を渇望する声があるなら医者は見捨てねぇ!!」
 この戦場に置いて、2人はまさに生命線だった。一撃一撃が死に直結する攻撃、その擦過だけでも強烈なダメージを与えられる、星喰いの攻撃。
 だが、それを受けてなお立ち上がる特異運命座標たちの傷を癒し、背中を押し、力を揮わせ、想いを奮わせる!
 それは、今ここにいる、2人にしかできない事だ!
「多くの人達の想いがここにある。あの子の想いも、私の想いも……!」
 ハルツフィーネが、クマさんの背に乗って飛ぶ。温かな仲間の心を感じながら、目指すは顔面! 星喰いの急所!
「ぱらすちの救出は、まさに僥倖でしたね。目に見えて動きが鈍っているのでしたら、私の補助も無駄ではありませんでした!」
「そうだな、囚われの姫さんは救出した。だが、それだけじゃない……俺達が時間をかければ、犠牲者は増える」
 梨尾の言葉に、ハルツフィーネは唇をかんだ。今も痛みに耐えているだろう、もう一人の自分。そして、彼女の親友であるもの達、親しみを持った者たち……そんな人たちも、今、命を懸けているのだ。
「世界もあの子の親友も、全部纏めて守ってみせます。
 世界が変わろうと、私達はイレギュラーズなのですから――」
「ああ、そうだ。そうだとも。この世界を護る。
 守って……俺はこの世界で生きているはずの、理弦を迎えに行くんだ。
 初めてのクリスマス、それを大切な思い出にするために……!」
 目指すは顔面、狙うは口腔! だが、そんな二人を迎撃するように、強烈な散弾のブレスが巻き起こる!
「クマさん!」
 ハルツフィーネが、クマさんを巧みに引っ張りながら方向を変えて、ブレスをギリギリでよけていく。礫のように放たれるそれらは、擦過しただけでも、強烈な熱に激痛を感じるほどだ!
 だが、仲間達が随時放つ癒しのスキルが、傷ついた端から仲間達を癒していく。止まらない。止まれない、この程度では!
「クマさんで口をこじ開けます……今まで通り!」
 ハルツフィーネが、クマさんと共に口部へと突撃! 振るわれる巨大な爪が、アイン・ソフ・オウルの光によってさらに強化、巨大な爪へと変貌を遂げる! その一撃が、星喰いの下あごを、開くように殴りつけた!
 がん、と無理矢理口を開かされた星喰の口中に、梨尾が突撃する!
「さぁ、リフォームの時間だ。
 舌は濡れてて絨毯にしては感触が気持ち悪いし、
 牙があったら転んで事故が怖いからな。
 まずは――そうだな、基本。まっさらにするのが基本だ!」
 先ほどのブレスでできた、梨尾の傷。その傷口から、一気に炎が巻き上がった! さく裂する無数の炎が、口腔内で暴れまわり、その内部を強烈に焼き尽くしていく――!
 がぁ、と悲鳴をあげる星喰い! 苦し紛れに吐いた極太の火炎のブレスが、空に解き放たれる――その光景を見ながら、ルージュ、そしてΛが突撃!
「みんな頑張ったんだなー、ここまでくればあと一息だぜ。
 それじゃ、聖域の維持のために頑張ってる人が居るしな、そろそろ終わらせようぜ!!」
「愚直と言われようとも、奇跡を、希望を手繰り寄せる為の布石だからね……。
 勝利の女神さまとやらが駆け寄ってくるぐらいの行動は、示してみせるよ」
 Λは声をあげて、空中で静止した。
「ルージュさん、行くよ」
「まかせろよねーちゃん! 一気に決めてやろうぜ!」
 ルージュの言葉に、Λは頷く。その全身のブーストを完全開放。装備したミサイルラック、魔導砲……全てを、星喰いの顔面へと向ける!
「後は、この身も弾丸にして……くれてあげるよ!
 全弾発射――そして!」
 言葉通りに、放たれたΛの全弾! 無数のミサイルが帯を引いて、そして巨大な魔導砲が光を描いて、星喰いの顔面に殺到! すべてを直撃させ、巨大な爆炎をあげる――だが、間髪入れず、Λは四肢に刃を展開し、突撃!
「左!」
 Λが叫んだ。
「じゃあ、右!」
 ルージュが叫んだ、空中で方向転換星喰いの左右に回り込むと、お互い宣言した方向から、星喰いの顔面へと向けて突撃!
「スターイーター。あんたのした事は酷くて色々な人を苦しめたけどな。
 この世界(ROO)が平和になったら、バグじゃなくて普通の生物にでもリビルドされて……。
 こんどこそ飢えの無い平和な生き方ができると良いな」
 ルージュが、少しだけ優しそうに笑った。そのまま、二つの流星は、挟み込むように、両側から星喰いの顔面を、斬りつけ/殴りつけた!
 衝撃が、逃げようのない衝撃が、星喰いの顔面に踊る。爆発せんばかりのそれが、星喰いの顔面に強烈なダメージを与えた――。

成否

成功

状態異常
梨尾(p3x000561)[死亡]
不転の境界
Λ(p3x008609)[死亡]
希望の穿光
ルージュ(p3x009532)[死亡]
絶対妹黙示録

第3章 第12節

――システムメッセージ――
 特異運命座標たちの猛攻により、
 部位破壊『左脚』が完遂されました!
『機動力と回避値・命中値低下。脚へのダメージが増大』します!


 特異運命座標たちの猛攻により、
 口腔・顔面部位の破壊進行度が70%%に到達しました。
 ダメージが蓄積しています。引き続き攻撃を行ってください!


第3章 第13節

すあま(p3x000271)
きうりキラー
白銀の騎士ストームナイト(p3x005012)
闇祓う一陣の風
Dr.S(p3x008208)
蛇遣いの意志を継ぐもの
スイッチ(p3x008566)
機翼疾駆
アズハ(p3x009471)
青き調和

 背部角――星喰いの攻撃性能の殆どを担う器官。
 赤い雷。バグの槍。或いは、ブレスのチャージ。そう言ったものを担うポイントである。
 特異運命座標たちの攻撃は、星喰いの足を破壊。そして次なる標的として、その背部角の完全破壊を狙う!
 だが、星喰いも必死の抵抗を見せる! 先ほどまでよりは威力は落ちたとはいえ、赤い雷が、不完全な――ぱらすちの離反により、さらに威力を減じ不完全となった――バグの槍が、もはや自らの身体を傷つけることもいとわずに、特異運命座標たちを狙い、撃ち放たれる。
「まだまだだ!」
 一撃を刃で受け止め、弾き飛ばし――その痛みにこらえながら、ストームナイトは星喰いの背中をかける。
「死に戻る時間も惜しい! こうしている間にも正義国の者たちが命を削っているのなら、死んで休むなどというぜいたくはしておれぬ!
 『この世界』で確かに生きている者たち。彼らの、ただ一つしかない命のために、私ができることを! 全力で! 何度でも!!
 その背中、叩き砕く!!!」
「同感、ダメージ値は60%を突破したらしいしね。こういう時、ゲームだとシステムメッセージなんてものが出てきて、便利だよ。
 着実に……キミが弱ってるってわかるからね」
 スイッチが声をあげる。駆け抜けるストームナイトをしり目に、ホログラムでできたターゲットスコープを、己の眼前に出現させた。覗き込めば、狙う的はすでに見えている。
「千夜斬……幾千の夜の果てに、人は夜明けの光を見る。
 夜明けを見るのは俺たちだ。君は、千夜の闇に――」
「眠るがいい!」
 ストームナイトのシンプルな、しかしそれ故に強烈な斬撃が、嵐と共に巻き起こり、背部角を破断!
 続いて振るわれたスイッチの刃、四方から振るわれる見えない斬撃が、その背部角を細切れにし、粉砕してみせた! 破片が地に向けて落下していく。その痛みに悲鳴をあげるように、星喰いは赤の雷を降らした。先ほどよりさらに威力の下がったそれ、だが、一撃一撃は未だ重い。
「大丈夫だ! 治すのは俺に任せろ!」
 Dr.Sは叫んだ。歌様に紡がれる、癒しの術式。それは絶え間なく旋律となって、仲間達を包み続ける。
 たとえ今、詠唱に乗って喉をやられようとも。ここにいる者達を、立たせ続けることができれば、Dr.Sの『勝ち』だ!
「後のことなんか考えるな! 前をみて思いっきりぶつけてやれ!
 ……この世界も、たとえ現実のコピーに過ぎないとしても……うまれ出でたのなら、それは新しく生きる一個の生命だ!
 誰も奪わせない、何も奪わせない!
 ましてやお前に――食わせるものもないっ!」
 紡ぐ旋律が、仲間達の背中を押した。ぴょん、と飛び跳ねるすあま。その隣で、アズハが構える。
「……まだまだ! 止まるものか!
 このまま、押し切る!!」
「ぱちぱち飴も食べ収めだね」
 すあまが駆ける。アズハは武器を構え、エネルギーをチャージ。そのまま、一気に解き放った。一発。二発、いや三! 四! 五! その腕が悲鳴をあげても、星喰いの雷が身体を打ち据えても――アズハ止まらない! 止まることはない!
「もう少しで……此処を破壊できる!」
 システムメッセージが、インターフェースの端っこでずっと警告を上げ続ける。背部角破壊進行度、70%、80%――。
「――ぱらすちは、こっちについてくれたんだね。
 そうなると、キミは本当に、独りぼっち、なんだ」
 すあまが、少しだけ悲しそうに、そう言った。
 でも、きっと。星喰いは、それを悲しいとか辛いとか思う心も、持っていないのだろう。ただ、飢えだけが……食べたいという気持だけが、その頭を埋め尽くしているのだろう。
 それもまた、悲しく、辛い事だ、とすあまは思った。
「あとすこしで、終わるからね」
 そういって、すあまは飛び跳ねる。その足元を、アズハの闘気のエネルギーが駆けていく。
「これで終わりに!」
「了解ー」
 アズハが撃ち抜いた闘気のエネルギー、それに追撃するように、すあまはその爪を振るった。火車。その爪が強烈な熱を巻き起こし、周囲の背部角を薙ぎ払った。
 背部角破壊進行度、100%に到達。
 システムメッセージがそう告げた刹那、星喰いは苦痛に叫び声をあげた。

成否

成功


第3章 第14節

――システムメッセージ――
 特異運命座標たちの猛攻により、
 部位破壊『背部角』が完遂されました!
 『各種範囲攻撃の威力・チャージ速度の低下、背部角へのダメージが増大』します!


第3章 第15節

シャドウウォーカー(p3x000366)
不可視の狩人
ヨハンナ(p3x000394)
アガットの赤を求め
フー・タオ(p3x008299)
秘すれば花なり
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
たこさんウィンナー(p3x009509)
おいしさはじける
天川(p3x010201)
國定 天川のアバター
CALL666(p3x010222)
CALL:Beast

「背部角、破壊いたしました!」
 無数の角の破片が、降ってくる。震動が、大地を揺らす。
 その真ん中で、黒子は叫んだ。
「左脚も破壊されています! より機動力が落ちているのは左側面……左側からの進軍、攻撃を!」
(……なるほど、この戦場には…出来る策士が居る様だ。助かる)
 ヨハンナが胸中で呟きつつ、黒子を一瞥。攻撃、状況把握と八面六臂の活躍を見せる黒子だ。ヨハンナから見ても、ありがたい存在であることは確か。
「終幕と行くか。もちろん、この物語はハッピーエンドで締めだ。
 俺は諦めが悪くてなァ。バッドエンドは拒絶してやる!!」
 ヨハンナが、跳んだ――その身体を死角から駆け上がり、特異運命座標たちは、敵顔面へ! 
「おい、デカブツ。その口。節操なく物を喰らってるその口だ。
 ──いい加減に閉じて貰おうか」
 振り上げるように放たれた手から、鮮血がほとばしる――その鮮血は槍と化して、星喰いの下あごから上へ向かって強かにたたきつけられた!!
 がおん、と無理矢理閉じられた顎。めきめきと、骨が、牙が、圧迫されて強烈な痛みを発生させる。がが、と星喰いは呻いた。叫び声をあげる事すら能わず!
「ナイス、ヨハンナ!
 でもその牙、口を閉じるのに邪魔じゃない!?」
 シャドウウォーカーが同時に攻めた!
「おう、じゃあもっとぴったり閉じられるように――斬り落としちまえ」
 ヨハンナが、にぃ、と笑ってみせた。頷くシャドウウォーカーが牙にナイフを叩きつける! ヒビに撃ち込まれた楔(ナイフ)は、傷口より毒素を送り込みつつ、てこの原理でヒビをさらに押し広げる!
「……そのまま壊れちゃえっ!」
 叫びと共に、シャドウウォーカーは手をふり上げた。がうん、と音をあげて、牙がヒビから裁断される。牙が落下していく――その牙の上に飛び移り、さらに跳躍するフー・タオの姿がある。
「さて、大分弱らせた所での遅参で、美味しい所だけ持っていくようではあるが、その分の働きはさせてもらおうかの」
 ふっ、と笑うフー・タオ。
「大丈夫! 今は一人でも、攻撃手(フォワード)が欲しい所!」
 シャドウウォーカーの言葉に、フー・タオは頷く。
「なら任せるが良い。
 さぁ、星喰いとやら――この蒼火の全て、喰らいつくせるかの?」
 ぼう、ぼう、ぼう、とフー・タオの周囲に蒼火が巻き起こる。罪業にまみれたものよ、その蒼火に触れる事を禁ず。もし触れたのであれば、その罪業によって、罪人の身体は燃え尽き、その罪過は浄化されるであろう。
 ぼう、と、無数の蒼火が一気に解き放たれる! 蒼火は次々と星喰いに着弾! その飢えが罪であるとするならば、蒼火が焼くのはその飢えか。強烈な炎が、星喰いの顔面を焼く! GAAAAAA! ヨハンナの拘束を引きちぎるほどの勢いで、星喰いは吠えた! そのまま、ようやくチャージの完了した火炎のブレスを吐き出す! 蒼火と、餓火とでもいうべき二つの炎が衝突! 強烈な爆発を巻き起こす!
「まぁ、強烈ね」
 たこさんウィンナーはうっすらと笑った。餓火は、食べるものを探すサーチライトのように、天を貫き続ける。
「かわいそうな、ちいさなこども。私には、あなたがそのように見えるわ。
 おなかがすいて、でもママがミルクをくれなくて、ずっと泣いているの。
 おなかがすいて……世界ごと食べてしまいたい。
 気持ちはとてもわかるけれど。もっとおいしいものも、きっとこの世界にもあるわ。
 もし生まれ変わりがR.O.Oにあるなら、次はデータそのものじゃなくて、そこに込められた味を感じるようになってほしいわね。きっとおいしくて楽しいわ」
 にっこりと笑って――たこさんウィンナーは、ブレスの切れ目を狙って、口中へと突撃した。すでに焼きただれた内部の肉を、たこさんウィンナーが、その脚(?)を使って切り取り、捕食分解してみせる。
「すこしでも、私にしてあげる。一緒に美味しいものを探しに行きましょう?」
 微笑むたこさんウィンナー。一方、星喰いは吠え声をあげつつ、再びブレスをチャージし始める。
「こちとら、何度死んでもあきらめないたちでな! ブレスのチャージに大口を開けているなら、それがチャンスだ!」
 天川が叫び、口中へと飛び移る。手にした刃を煌かせ、口中の肉をそぎ落とした!
「もう長いこと……愛やら正義が勝つなんて理想とは無縁だったけどよ……。やっぱり良いもんだな……。
 ぱらすちの嬢ちゃんにスティアの嬢ちゃん達……こっからだぜ」
 静かに呟き、笑い。
「俺は今、機嫌がよくてな……剣の冴えも、今まで以上だ!」
 一方、口腔の外から、間断なく放たれる強烈な矢の連撃。それは、CALL666の放つ、強烈な狙撃のそれだ。
 静かに、敵を見据えながら――CALL666は言う。
「俺は――お前と相対するたびに自分が強くなるのを感じている。
 俺の進化する矢はもっと上の力を与えて貰えた。
 その力、お前に受けてもらう。
 彼女の心を動かしたように、お前にも人の力の神髄を見せてやる」
 ゆっくりと、矢を引く。放つ。矢を引く。放つ!
 ひたすらに、真っすぐに――攻撃の手を止めず、今はただ、撃ち、討ち、打つ!
 だが、ばぢばぢ、と星喰いの口中にエネルギーが発現する。
「ブレスが来るか。だが――今は、俺は、俺たちは死を恐れるような真似はしない。
 さあ、後何度死ねばお前は死ぬ?」
 冷たくそういうCALL666――。
「もう十分食っただろう? そろそろ御馳走様する時間だぜ! もう倒れろ!」
 叫ぶ天川、煌く剣閃。
 特異運命座標たちの強烈な攻撃に、苦し紛れのようにブレスが解き放たれる――!

成否

成功


第3章 第16節

――システムメッセージ――
 特異運命座標たちの猛攻により、
 口腔・顔面部位の破壊進行度が90%に到達しました!


第3章 第17節

セララ(p3x000273)
妖精勇者
梨尾(p3x000561)
不転の境界
メレム(p3x002535)
黒ノ翼
玲(p3x006862)
雪風
Λ(p3x008609)
希望の穿光
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録
ゼスト(p3x010126)
ROO刑事ゼスティアン

 特異運命座標たちの懸命なる攻撃。命を削られ、命を削り。そのやり取りの果てに訪れた、一つの好機。
 敵の顔面はすでにボロボロである。口腔内は様々な傷にただれ、その顔は、眼は、崩壊の色を見せ始めている。
 だが……此処に来てもなお、星喰いの胸の内にあるのは、飢えであった。痛みも、苦しみも……全て、この飢えに比べれば、感ずるまでもないものである。
 それほどまでに……この怪物の根源には、飢えがあった。
「もうすこし、もうすこしじゃ!」
 玲が叫び、銃弾をぶち込む。アイン・ソフ・オウルの光によって強化・巨大化された弾丸が次々と着弾、星喰いの顔面の肉を削り取る。
「とはいえ喃、くそ疲れたのじゃ!
 本当にもう少しじゃろ? 本当け?
 終わった後、褒美もなにも無かったらへこむぞ!
 厭じゃ厭じゃ厭じゃあ! めっちゃ労ってもらえないのはいやじゃあ!」
 じたばたとわめきつつ、しかし攻撃の手は緩めない。一撃一撃を、とにかく叩き込む! その先にあるのが勝利であるのならば……それを掴むまで、諦めてはならない!
「えーい、妾のカッコいい語録もネタ切れしてきたんじゃぞ!? ちったいい加減にせいよ!
 その残り少ないストックから――ドレッドノートよ、ショウタイムももう一息じゃ! ジャムるなよ!?」
 振るわれる、星喰いの強烈な腕、それに玲は蹴りを入れて高度を維持しつつ、再び顔面に銃弾を見舞う。
「確かに、敵の生命力は強大だ。でも、愚直に……奴が落ちるまで、何度でも立ち上がるしかない」
 Λの言葉に、玲は頷く。
「わかっとるわ! ただ、ただかっこいい語録のストックがつきそうで、どうやってフィニッシュを決めようか悩んどるだけじゃ!」
 にぃ、と笑ってみせた。Λもくすりと笑って頷く。
「カッコよく、か。なるほど。でもボクは、泥臭く決めよう。
 何度打ち滅ぼされても、何度打ちのめされても、飛ぼう。
 我思うゆえに我あり。ボクも人によって造られた身……多少はパラディーゾ達の葛藤はわからなくもないからね。
 ……でもボクにもこの世界に愛着ってものがある。
 故に……さあ、終焉を終わらせよう」
 Λが飛ぶ! 終焉を撃つために!
「え、ちょっとまって、普通にカッコ良いセリフじゃない!?」
 玲が叫び、慌てて追撃する。一方、メレム、そして梨尾も、顔面への攻撃を続行していた。
「こういうのは地道なダメージ蓄積が重要だからねー」
 体を駆けあがりながら、狙撃によるダメージの蓄積を狙うメレム。その脚が顔面を踏みしめたと同時、メレムは高く高く跳躍。
「おはようございまーす!
 んふふ、言葉が通じてるかはさておき。こういうのって気分でしょう?」
 その手を振り下ろした。同時、放たれた影の刃が、星喰いの顔面を無尽に切り裂く! GAAA! 星喰いがたまらず雄叫びをあげた!
「スターイーター。お前が生きたいように俺達も生きたい。
 お前を倒した後もラスボスとか色んなまだ見ぬ困難が未来で待ち構えているだろうけど。
 友達仲間家族恋人……大切な人と笑い合える明日を迎えたいんだ!!」
 梨尾が叫ぶ! 踊る影の刃、そのサポートを受けながら、口腔へと突撃! 噛みつくように閉じられる口、その牙をかいくぐりながら、梨尾は飛ぶ――だが、その眼前に、巨大な牙が立ちふさがる。
「それが、どうした!」
 梨尾が叫んだ!
「そんなものはへし折ってみせる! いまさらそんなもので! 俺達の勢いを止められるなんて思うな!」
 突撃! 二振りの赤い刃、そして先行する灰銀狼! 灰銀狼が、その牙に力強く噛みつく――同時、無数の影の刃が、その牙を斬りつけた!
「よーし、サポートだよ! 勢いよく、つっこめー!」
 メレムの言葉に、梨尾は頷いた。そのまま、二振りの刃をひらめかせ、眼前の牙を破砕!
「行くぞっ!」
 そのまま口腔内部に到達し、梨尾は氷のごとく冷たい炎を展開する! その炎が、閉じた口、あらゆる隙間から、外へと爆破するように漏れ出でた!
 口腔・顔面部位の破壊進行度、95%に到達! システムメッセージの文字が踊る!
「攻撃は効いてる。脚は砕いた、頭部はもう少し、
 けど最後の最後がもう少しだけ届いてねー!!」
 ルージュが叫び、攻撃を続行する! 部位は破壊した。だが、あと少し。もう少しという所で、敵の命に届かない。
「けど、もう少しだ! 絶対に!
 まずは頭部をぶっ壊す! そうしたら……絶対に、チャンスが来る!」
「そのとおりでありますッ!」
 ゼストが叫んだ!
「もはや、後は圧し続けるだけ……今こそこの命、心を燃やすときッ!
 我々ヒーローならば、今こそその使命を全うする!」
「そうだね! 勇者として、なすべきことは、いま!」
 セララが、その刃を高らかに掲げた! 降り落ちる雷。アイン・ソフ・オウルの光。それが重なり合い、混ざり合い、セララを包み込む。
「この光こそ、永遠に消えぬ栄光の光(エーヴィヒカイト・グランツ)――突っ込むよ!」
 セララが叫ぶ! 同時、光が、閃光が、帯を描いて奔る!
「よーし、にーちゃん、おれたちも負けてらんないぞ!」
 ルージュはにっ、と笑って、そのハンマーを振り上げて飛んだ!
「ええ、そうでしょうとも!
 ならばこの力、今こそ開放するとき!」
 ゼストも跳ぶ。星喰いによって放たれる赤の雷を紙一重でよけながら、三人は、いや、三つの希望の光が、今攻撃にうつる!
「撃ち抜けッッ! 極・電磁シュートォォォォォッッ!!!」
 ゼストは、頂点から顔面に向って飛び蹴りをぶちかました! 雷のごとく振り下りる、ゼストの雷! 星喰いの顔面に撃ち抜かれる。強烈な攻撃痕!
「セララねーちゃん!」
「おっけー! 技名は、うーんと、うーんと……エーヴィヒカイト・グランツ・シュヴェールトでどう!?」
「勢いがある! 採用! いっくぜー!」
 二人は飛んだ。同時、セララを掲げるようなポーズを、ルージュはとった!
「無茶をしてでもなーここは譲れねーんだよ!!」
「神域必殺! エーヴィヒカイト・グランツ・シュヴェールトだーっ!」
 二人の攻撃が、ゼストの与えたダメージ痕へと突き刺さる! 強烈な光が、打撃が! 星喰いの顔面を打った!
 轟、光が天へと昇る! その衝撃――同時、システムメッセージがこう告げた。
 部位破壊『顔面・口腔部位』が完遂されました!
 と――。

成否

成功


第3章 第18節

樹里(p3x000692)
ようじょ整備士
スティア(p3x001034)
天真爛漫
桜(p3x005004)
華義の刀
リュカ・ファブニル(p3x007268)
運命砕
真読・流雨(p3x007296)
飢餓する
H(p3x009524)
ダークナイツ

「……! やったのか!?」
 リュカ叫ぶ。天に上った光。強烈な一撃と、部位破壊成功のメッセージ。
 だが、星喰いはそれでも……なお、それでも動くことを止めない!
「強烈な飢餓が、己を動かしてるってわけか……だがな!」
 リュカが、眼前に迫る右足に、強烈な一撃を加えた! 赤竜の一撃。シンプルにして、強烈な、それは竜の怒りだ! まさに大樹のような右足を、リュカはその一撃でぶち抜いて見せた。GAA! 星喰いが吠える!
「お前さんは大層な化け物だったが……ここに集った『タダの人間』の方が覚悟が遥かに勝ってたな!」
 そうだ。もし、この怪物をここまで追いつめた決定打があったのだとしたら。
 それは、人間の意志。人間の覚悟。それが、より良き可能性をその手に導く、唯一最強の武器だ!
「……! 他の連中は、腹を攻撃に行ったか!」
 リュカが呟く。見れば、先ほどぱらすちが救出された腹部分を狙って、攻撃を重ねている仲間達がいる。
「さぁ、いけ! ぶっ倒しちまえ!!
 スターイーター、俺達の力を見せてやる!」
 リュカが叫んだ。その言葉に応じるように、仲間達は駆ける!
「すこしでおくれ感はいなめませんが、てかずがふえてこまることはないはずです。
 というわけで、じゅりアイズで覗いてみたところ、次なる攻撃ポイントは……おなかと見ました。
 すでに、傷がついているようですね」
「ああ、さきほどお姫様が、あそこから救出されたところでね!」
 Hが応える。
「お姫様? お腹から出てくるのは、赤ずきんか子ヤギでは?」
「なら、新しいおとぎ話を作ってやらなきゃだな!」
 Hが切り裂く――腹部の傷跡を。強烈な一撃に、腹部より鮮血がはじけ飛んだ。だが、その血液の中から、何かぐにゃり、としたものが起き上がる。
「これは――」
 Hが呟くのへ、じゅりは、ぴーん、と指を立てて、何かを感知した。
「おそらく、はっけっきゅう、の様なものかと。
 つまり、からだの防衛機構です。これだけ大きい敵ですから、そういうのもおおきいのかな、と」
 ぐにゃり、とスライム状のそれが、Hたちへと襲い掛かる!
「ここにきて雑魚の追加か? だが――」
「そうだとも。こんなものは、もはや僕らにとっても餌ですらない」
 クローで切り裂く、流雨。この程度の妨害などは、もはや特異運命座標たちの足止めにすらなるまい!
「天義の正騎士、サクラ・ロウライト! 推して参る!」
「ならば、スティア・エイル・ヴァークライト! 推して参るよ!」
 二人の剣士が、駆ける! 赤と、蒼。二つの影。二つの心。二つの、優しき刃が。
「させない! これ以上、誰か犠牲になんて、絶対に!」
 桜が叫ぶ! 振るわれた刃が、星喰いの傷口をさらに抉った。内部から血が迸り「白血球」が飛び出してくる。だが、氷の花弁が舞い散った刹那、その白血球は真っ二つに切り裂かれ、消滅する! スティアの刃だ!
「叔母様、力を貸して……いま、世界を救うために!」
 見よう見まね、だがその威力は充分。スティアの刃が、次々と白血球を斬り捨てていく!
「私たち二人に、斬れぬものなどない、ってね!」
「行くよ、サクラちゃん!」
「行こう、スティアちゃん!」
 斬! 二つの刃が、二振りの刃が、傷口を抉りだした。腹部はすでに無数の傷がひらかれ、露出し、巨大な弱点として、その姿をさらけ出している。
「なら、狙うなら今か」
 流雨が呟いた。
「星喰い……僕にはパラディーゾはいなかったが、もしいたとしたら、君がそうなのだろう。
 そう、君は僕なのだ。他者の存在は全て餌でしかなく、他者の存在を必要としない存在。満たされぬ飢えのみで動く怪物。この世界がイフの世界でもあるならば。バグが星喰いの姿を取ったのも意味があったのだろう」
 だが……流雨は、愛無は、変わっていった。様々な出会い。守りたいもの。そう言ったものが一つできるにつれて、世界は色づき、ただ飢えを満たすだけがすべてではないことに、気づけた。
「この世界も。僕にとっては守りたいものの一つなのだ。星喰い。
 もう一度、決着をつけよう。今ここで。
 だが……僕はあの時より、ずっと強い。守るべきものを知ったのだから」
 流雨が、爪を振るう。切り裂かれた傷痕。あふれ出る血液と『白血球』達。特異運命座標たちは、最後の力を振り絞りながら、立ち上がった。
「スターイーター。憎い訳じゃねぇ。何もかも食らいつくすありようも否定はしねぇ。
 だが、俺ぁアンタを生涯養える方法を知らねぇんだ。
 だからよ…これぁ生存競争だ」
 Hが吠える。その刃を、叩きつける。白血球に。星喰いに、想いを、力を、叩きつける。
「わたしの言葉は星ではありませんが……人々から生まれ、わたしが受信するそれは。星すらうめつくす無限の言の葉。どうぞうけとってくださいね」
 樹里が呟く。胸のうちより湧き出ることば。それを唇にのせる。聖句。それは、まさしく託宣か。わからない。だが、この言葉は、この世界にいるすべてのもの代弁だ。
「けっちゃくのときまで、あとすこし」
 樹里が言った。
 その言葉は、きっと真実だった。

成否

成功


第3章 第19節

――システムメッセージ――
 特異運命座標たちの猛攻により、
 部位破壊『顔面・口腔部位』が完遂されました!
『ブレスの威力、チャージ速度が激しく低下し、顔面・口腔部分へのダメージが増大』します!

 また、特異運命座標たちの活躍により、隠し攻撃ポイント『腹部』が解禁されました!
 この地点は、大ダメージを与えることができる反面、『白血球』なる防衛機構による妨害が予測されます。
 ……ですが、この程度の妨害などは、皆さんの足を止めるには至らないはずです。
 決着の時まであと少し。
 全力を!


第3章 第20節

入江・星(p3x008000)
根性、見せたれや

「し、信じられない……! あの、あんな怪物が、追い込まれて……!」
 驚いたような――驚愕とも興奮ともつかぬ声が、聖騎士たちの間からも上がる。
「トーマス、びっくりしてる場合じゃないぞ! まだ雑魚共は押し寄せてるんだ! 勇者様たちが、あのデカブツに集中できるように……一匹たりとも、あちらに向かわせるなよ!? セルゲイ、お前もついてこい! 行くぞ!」
「はい、隊長! 世界を救うために――!」

 ――懐かしい顔を見た気がした。
 彼は……この世界の彼はきっと、自分の事など知らないだろう。
 一方的な親近感。一方的な絆。でも。それでも。それが仮想世界の幻だとしても。
「まだ踏ん張れるっちゅうもんや!」
 星喰いの傷跡から、しとどに滲み出す、白血球たち。どろどろとした怪物に、星は対峙する。
「今なぁ、ちぃと気分がいいんや。我ながら現金なもんやな。
 せやから……」
 星がその手を掲げる。アイン・ソフ・オウルの光に負けぬ、天に輝く星。
「やるで。あらゆる毒を以って、お前の身を削る。
 白血球? しらんわ。病原菌扱い上等。
 食った星で腹壊せ!」
 振り下ろす、手を。振り落ちる、星が!
 無数の星が降り注ぐ中――特異運命座標たちの、最後の突撃が始まる!

成否

成功


第3章 第21節

シフォリィ(p3x000174)
クィーンとか名前負けでは?
セララ(p3x000273)
妖精勇者
ヨハンナ(p3x000394)
アガットの赤を求め
グレイ(p3x000395)
自称モブ
スティア(p3x001034)
天真爛漫
ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
メレム(p3x002535)
黒ノ翼
桜(p3x005004)
華義の刀
かぐや(p3x008344)
なよ竹の
きうりん(p3x008356)
雑草魂
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影
現場・ネイコ(p3x008689)
ご安全に!プリンセス
ゼスト(p3x010126)
ROO刑事ゼスティアン
天川(p3x010201)
國定 天川のアバター

「全戦力を腹部へと集中! 決着の時です!」
 黒子が叫ぶ! 傷口から零れ落ちる白血球が、次々と形を成していく――その端から、メレムが、イズルが! それが動き出す前に次々と切り裂いて、無力化していく!
「あっははは!
 いいねぇ、大型生物の攻略って感じがするネ!
 まぁ、今は前菜の兵隊狩りだけど――」
 メレムが笑いながら、無数の影の刃を放つ。メレムの足元から湧き上がった影の刃が、生命持つかのように躍動しあぶくのように沸き上がった白血球の胴を薙ぎ払った!
「ま、でもこれを潰さないといけないらしいからね!」
「そうだね。中に突撃するメンバーがいるなら、その為の露払いと行こう」
 イズルが呟く。羽が舞い散るや、それが刃となって白血球たちに突き刺さる。ばぼん、とはじけるような音を立てて、白血球が散った。だが、どぶどぶと流れ出る血液から、それはあぶくのように現れ続ける。
「やれやれ、出血多量で死ぬのを待つ……なんて時間は無いからね。
 ……それに、ここが作られた世界だとしても。スイッチ一つで消えてしまう世界だとしても。そんなのは、どこの世界も大体そうなんでね。
 そこに存在するすべては、確かに『生きて』いる。
 それをただ喰らい、すべてを無に帰そうとするなら――」
「君達が世界の癌なら、イレギュラーズは差し詰めその免疫ってとこかな!
 イレギュラーズの底力を文字通り全身で味わいたまえ!」
 イズルが駆ける。メレムが駆ける! 二人が通った道に、無数の白血球の残骸が切り裂かれて地に染みていく!
「シフォリィ様、可能な限り援護をお願いします!
 残りのメンバーは、このまま傷口を広げ、突入部隊の足掛かりに!
 白血球の枯渇をまったり、造血細胞を狙う暇はありません! このまま押しきるのが最善・最短です!」
「はい! 正念場です、一気に行きましょう! この世界を絶対に、壊させたりしません!」
 シフォリィは頷き、己の放つ、クィーンのオーラを展開! 手持ちの兵(ポーン)を、女王(クィーン)へと変える……いや、今ここにいる者達は、兵ならぬ、基準(ルール)に縛られぬイレギュラーズ達であるならば! 彼女のもたらすオーラによって、彼らはクイーンならぬ、存在しえぬ駒、救世主(セイヴァー)へと姿を変えるはずだ!
「私達の双肩に、この世界がかかっているのですから!
 こんな所で、逃げたりはしません!
 終焉をもたらすものだとしても、星を喰らうものだとしても!
 あなた達の終焉が、今ここにあることを……教えて差し上げますっ!」
「ゼスト様、かぐや様! 砲撃を開始してください!」
「おまかせですわああああああっ!!」
 かぐやが叫ぶ!
「わたくしにある箱の竹槍一本。この一本で世界を制し、世界を救いましょう!
 さぁ、さぁ、さぁ! やりますわよ、ゼスト様!
 相手のガード? 白血球? 関係ありませんわね!
 相手のガードから必殺の竹槍を死ぬまでぶち込み続ければいいだけの話!
 君が! 死ぬまで! 殺すのを止めないッ!!」
 その隣にて、ゼストは構える。
「敵の生命力は甚大――それでも。それでも! と叫びつつけましょう!
 スターイーター! お前だけは……必ず止めるであります!!
 自分の命を全て賭してでも……っ! ログアウト不可能になろうとも!
 ここで……止めるッッ!!」
 二人に、クィーンの祝福が降り注ぐ。背中を押された二人が、力強く踏み出す!
「いきますわ! いきますわ! いきますわよ!!!!!!!」
「食らえスターイーター!
 ファイナルゥゥゥ……ゼタシウムッッ!! 光ぉぉぉ線ッッッ!!!」
 放たれた、ゼタシウム光線が、強烈な熱を伴って、宙を奔った! アイン・ソフ・オウルの光を乗せて、人々の祈りを乗せて、仲間達の想いを乗せて、ヒーローの光が白血球を蹴散らす! そしてそのあと追うようにに飛翔する、竹槍! 轟! 轟! 轟! 強烈な爆風を纏い、それは突進!
 ゼタシウムの光が、竹槍が、星喰いの身体につき去り、爆裂! その傷口を巨大に開き上げた!
「今です! 全員、突撃を!」
 黒子が叫ぶ。
「おっしゃー!」 突撃だーーー!!」
 きうりんが頷いて、腹の中へと突入!
「よーし、勝負を決めにいくよ! 準備はいいかな?」
 スティアの声に、
「うん、少し休んだ分、全力で行くよっ!」
 ネイコが、そして仲間達が頷いた! そして、仲間達は白血球の群れを突破しながら、内部へと突撃!
 迷宮めいた内部構造は、通常の生物の常識は通用しない。周囲の壁から、ぼたり、ぼたり、と白血球が落着する。
「いや私食材だから!ㅤ妨害とかいいから!!ㅤお勤めご苦労様です!!」
 気雨林が叫ぶ。同時、
「それで逃してくれたら楽なんだけどね!」
 メレムの声が響いた。影が飛び込み、白血球たちを切り裂いていく。
「入り口はこのまま確保する」
 イズルが言った。
「とにかく……内部からダメージを与えるんだ。立ち止まっている暇はない」
「いいねぇ、巨大怪物戦らしくなってきた!」
 メレムが笑った。一方、きうりんがよっしゃー、と再び気合を入れる。
「きうりんは胃に向かうよ! お腹いっぱいにしてきてあげる!」
 きうりんが駆けだす。その様子を頭をかきながらヨハンナが眺める。
「自由だな。ま、それも俺ららしいか」
 にぃ、とヨハンナは笑った。
「アストリアやシェアキムの命がかかってる。とにかく手あたり次第、効きそうなことは全部試すしかねぇ。一分でも、一秒でも、速く、だ」
「ええ、その通りです」
 ハルツフィーネが頷いた。
「あの子も……その友達も。もう何一つとして、この獣に奪わせるつもりはありません。一気に、終わらせます!」
「だなぁ、腹いっぱい食わせてやるか……俺たちをな。
 おい、デカブツ。喰い過ぎも体に毒だぜ?
 だから……お前が食ったこの世界のデータ、ひとつ残らず吐き出してきな」
 ヨハンナが、指先を噛みちぎる。吹き出した鮮血が槍になって、星喰いの内壁に突き刺さった!
「狙えるなら、臓腑を狙いたいね!」
 グレイが叫ぶ。
「オーソドックスに考えたら、奥か?」
 天川が言うのへ、
「じゃあ、最短距離でぶっちぎって行こうか!」
 セララが頷く。その身を、栄光の光にて包み!
「『永遠に消えぬ栄光の光(エーヴィヒカイト・グランツ)』……それがボクたちイレギュラーズだ!
 そして、人々の束ねた祈りを今ここに!」
 その刃が、光が、巨大な剣となる。光に包まれたセララが、勇者が、その刃を振り下ろした! 斬! 巨大な光の斬撃が、特異運命座標たちの進むべき道を、文字通りに切り開く!
「いこう、皆! 妨害はあるけど……」
「まとめてぶった切れば関係ないよ!」
 グレイが叫んだ。
「もう一息! あと少しで倒せる! みんな頑張って!」
 桜が叫んだ。想いは、見据える先は、皆同じだ。
「いくよ皆! 突撃!」
 ネイコの声と共に、仲間達が進撃する! 不気味に脈動する体内迷宮、そこを切り裂いて道を作った一行は、一直線に、奥へ、奥へ!
「白血球、来るぞ!」
 ヨハンナが叫んだ。体内を傷つけた分、白血球の発生も速い。だが! この程度の雑兵、特異運命座標たちの足を止めるには至らない!
「防衛機構か何だか知らねぇが! 今更その程度で俺達を止められると思うのは舐めすぎってもんだぜ! 逆に体が暖まるってもんよ! もう休め!」
 天川が叫び、白血球を切り裂いた。一体、二体、三体! 次から次へと染み出す白血球を、天川は切り続ける。
「おっと、こっちもだ!」
 グレイが機械鋸を起動し、白血球たちをぶった切った! そのまま壁も思いっきり切り裂いてやる! おそらく、内部で巻き起こる激痛に、星喰いが身をよじったのだろう。地震のように、迷宮が揺れた。
「効いてる、効いてる!
 このまま何か所かで、継続的にダメージを与えてもよさそうだ」
 グレイが言うのへ、
「じゃあ、ボク達でここを攻撃し続けよう!」
 セララが言った。
「了解だ。奥は任せるぞ!
 とにかく今は、ダメージを叩き込むのが先決だ!」
 天川が叫ぶ。
「よーし、機械鋸で、まとめてバラバラにしてやる!
 星喰いなんか、この鋸の敵じゃないッ!」
 グレイが叫び、
「というわけで、奥はお願い!」
 そう言って、仲間達を送り出す!
 一方、先へ進むにつれて、隊名が脈動しているのに気づいた。恐らく、心臓のような、そう言った場所に近いのだろう――必然、白血球の数も増加する!
「ちっ、あと少しだが……ハルツフィーネ、抑えるぞ!」
 ヨハンナが叫び、脚を止めた。
「わかりました」
 ハルツフィーネが言う。
「楽な戦場です。適当に振るっても、敵にあたります。
 今この場では、戦術家の深慮遠謀なども必要ないのでしょう。
 ……不満点があるとすれば」
 ハルツフィーネは、むす、と息を吐いた。
「……クマさんが、酷く汚れてしまう事です」
「確かになぁ。じゃ、終わったらいいクリーニング方法を教えてやるよ。
 戦い方の性質上、俺も服がよく血で汚れるもんでな」
 ヨハンナが、にぃ、と笑う。
「……時間が無い。正義国の連中も、完全聖域とやらに命を張っている」
「ええ。ですから一分一秒でも惜しい。行きましょう、ヨハンナさん」
 かくして、鮮血が、クマさんの爪が、星喰いの体内で舞う――!

 星喰いは――。
 この時、まさに死にかけていた。
 それは、生まれて初めて覚えた感覚。
 飢えとは違う。何かひどく、寒くなるような感覚。
 死の到来。その感覚。
 飢えが、星喰いの思考を支配する。それは現実逃避にも似ていたが、本能的なものであった。
 喰らおうとする。世界を。餌を。それはできない。完全聖域が、悪しき者の力を封ずる結界が、彼、或いは彼女を抑え込んでいるのだから。
 その強烈な飢えが、脳を焦がす。思考を焦がす。嗚、嗚呼。
 この飢えは、いつ――満たされるの、だろう。

「今満たしてやるってんだよーーーっ!!」
 胃と思わしき場所に到達したきうりんは、とにかく大量のエメラルドプラント(キュウリ)を噴出した。自分が押しつぶされたとしてもかまわず。ひたすらに、ひたすらに。
「お腹いっぱいになった?ㅤなったよね! まだか!? ほしがりさんだね星喰いだけにッ! よし任せろッ!!」

 強烈なダメージが、星喰いの身体を揺らす。死に近づいた身体が、隊内を循環させようと激しく脈動する。桜は、スティアは、ネイコは、その中心――コア、へとたどり着いていた。
「ここが……!」
 桜が叫ぶ――同時に、無数の白血球と相対する、サクラとスティア。
「このままじゃ、押し切られる!」
「だったら、私達で道を開こう、サクラちゃん!」
 スティアが叫んだ。
「見せてあげようよ! どんなに強大な敵であっても、生きている限り倒せないものは無いって!
 そして、これが諦めない事だ、って!
 見せつけてやるんだ。世界に、絶望に、星喰いに! そして、ぱらすちちゃんにも、希望を見せるんだ!」
「うん……ぱらすちーちゃん! もう少しだけ待っててね! すぐにこいつを倒すから!」
 桜が、スティアが、白血球たちに切り込む!
「ネイコさん! 行って!」
 桜が叫んだ。
「終わらせよう、この戦いを!」
「わかったよ……!」
 ネイコが叫ぶ。その手に、刃を。希望をもって。
 一歩一歩! 駆け抜ける1
「皆の想いが、意思が、ここまで届かせたんだ。
 だから、絶対に終わらせない。
 貴方が終わりを齎そうとするなら、
 私達は皆の生きたいって叫びを胸に全力で戦うんだっ!」
 跳んだ。脈動する、コアに向けて。
「希望の光よ、此処に集え。
 仮初だとしても、私は私に託された真価を果たして魅せる!
 全力全開を越えた更に先――行くよ。超必殺、プリンセスストライクっ!」
 放たれる、一撃が。
 コアを突き刺した時――。
 ネイコは、そこに、小さな生命を見た気がした。
 まるで、小さな、ワームのような、本当に小さな生き物。
 ――ああ、君は、本当はそんなにも。
 そう思った刹那――。
 世界に光が満ちた!
 大地が……いや、星喰いの体内が激しく揺れて、上下左右が、視界が、訳が分からなくなった。
 そして――そして――。

成否

成功


第3章 第22節

 特異運命座標たちを迎えたのは、呆れる位に青い空だった。
 みな、道端に倒れていた。ふかふかとした草の感覚が、心地よかった。

 ここには、何もないはずだった。
 すべて喰われて、ただただ、荒野だけが広がっているはずだった。
 其処に……。
 いま、草木がある。虫の声がする。鳥のさえずりがする。
 小川の流れる音がある。風の流れる音がする。
 太陽の温かさが頬をあたためて、草木の臭いが鼻孔をくすぐる。
 ある。
 生命の息吹が、ある。

 星喰いに食われていた全てが、今ここにある。

「倒した……の、ですか?」
 シフォリィが、声をあげた。
 まるで、何もなかったかのように、世界は平和な姿をさらしていた。
 先ほどまでの戦いも、激闘も、何もなかったかのように。
「らしいな……?
 おい、聖域が解除されている!」
 ヨハンナが叫ぶ。
「では、正義国の皆さんは……!?」
 ハルツフィーネが言うのへ、かけてきたのは、正義国聖騎士の一人だった。
「ゆ、勇者様方! 伝令です!」
 泣きそうな顔で。
 伝令が叫ぶ。
「さ、先ほど、シェアキム猊下以下、都市に残った皆様が――」


「……やれやれ、どうやら生き恥を晒してしまったようだな」
 『聖域』と呼ばれる教皇庁の一室で、シェアキムは痛む体に顔をしかめながら、そういう。
「なぁぁぁにを、格好つけているんですか」
 隣にたたずむ司祭……ナチュカ・ラルクロークが呆れた様子で言った。
「そこの、エルベルト様、イェルハルド様。アークライト様。皆さんも。そう。
 というか、男の人って、いつもそう!
 そうやって、「人は死んでも意思は受け継がれる~」とか、なんかカッコつけて納得して命を粗末にするんですから!
 特異運命座標たちの戦いに、もっと時間がかかっていたら……私達、有志の聖職者や市民たちが、避難を切り上げて、戻ってきて……生命エネルギーの供給に手を貸していなければ、本当に死んでたかもしれませんよ?」
 ナチュカの言葉に、シェアキムは苦笑する。
「結局……我々もまた、市民に護られているという事か」
「それが分からなかったなら、あなたも引退するなんてまだまだです。
 それに、前に言いませんでしたっけ?
 私、生命と引き換えに、とか、誰かが犠牲になって、とかいっちばん嫌いなんですよ。物語は、ハッピーエンドじゃないと」


「馬鹿野郎! 一人で無茶するんじゃない!」
 アストリアが気づいたときに、傍らに、サンディとベークがいることに気づいた。
 彼ら二人もまた、消耗しているようだった。どうやら気づかぬうちに、彼らは戻ってきて……同様に、アストリアの生命エネルギーの損耗を肩代わりしていたのだろう。
「今回ばかりは、僕も怒りますからね、アストリア君!
 人には無茶するなって言って、なんですかこの体たらくは!」
 ベークが、流石に少しばかり頬を膨らませていった。
(生きておる……シェアキム、お前も生きておるのか……?)
 アストリアは胸中で呟くと、痛む体を抑えて、立ち上がった。
「……すまん」
 そう言って、2人を抱きしめる。
「すまんかったな……妾はやっぱり……汝らと一緒にいたい……今強く、そう思う」
「俺達もだ、アストリア」
「そうですよ、これからも、ずっと一緒です」

「全員、無事……?」
 桜が、ぼんやりと呟いた。
「はい、教皇猊下以下……全員無事! また、ワールドイーターは消滅、或いは逃走し……首都も、無事です!」
「やったぁぁぁぁ! 大勝利だ!!」
 セララが、ぴょん、と飛び跳ねた。
「よかった……」
 ぱらすちが、ゆっくりとやってくる。それに警戒する伝令だったが、
「彼女は、いい。味方だ」
 Hがそれを制した。
「ぱらすちちゃん。お疲れ様」
 スティアが、にっこりと笑う。
 ぱらすちは、少しだけ戸惑ったような顔をした後。
「――おつかれさま、皆」
 そう言って、微笑んだ。

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