シナリオ詳細
酒と肴と現金と
オープニング
●平和とは泡沫のごとくで
その日、ローレットは静かだった。
幻想は今の所色々騒がしくはなっちゃいるが、ローレットの活躍もあって色々と、色々イイ感じで推移している。大きな流れのなか、恐らく状況が変わることもあるだろうが……ともあれ「今日は」平和だった。
「静かですね……最近は依頼も安定していますし、暫くは楽ができるでしょうか……」
『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)はカウンターから右に左に視線を巡らせ、ひとまず平和な状況を満喫していた。少なくとも、依頼はそれなり以上に安定して出ているしイレギュラーズのモチベーションも高い。
よほどのことがなければ彼女が苦労することもなさそうだった。昨年の今頃との大きな違いは、『ポテサラハーモニア』パパス・デ・エンサルーダ (p3n000172)が大体の頭の悪い状況をケアしてくれるようになったことか。
最近とみに噂される海洋(特にフェデリア海域とかコン=モスカ海域)でのアレな魚とかは食用になるらしいし、色宝騒ぎの落ち着いたラサとの交易も順調だそうだ。鉄帝ではラド・バウにてイレギュラーズの活躍が聞かれるようになった。善いことだと思う。
ひとまず、ローレットは色々と活躍している。安定して。
「情報屋の方のメガネー、ちょっとなんか届け物きてるゆウチ(ローレット)宛で。サインくれゆ」
そんな中、パパスが入口から顔を出す。伝票くらいパパスさんがサインしてもいいじゃないかとは、三弦も大人なので言わなかった。
「はいはい、今行きますよ」
そう言ってカウンターから出た彼女は、背後で聞き覚えのある振動音が聞こえたのを無視した。
●「またにごわすか」
「……これは」
三弦は絶句した。
そこにあったのは、今まさに思考の隅にあった『海洋の辺境産の不思議海産物』達であった。
それでも味だけは保証されているのはなんていうか非常に……非常にアレだ。同封された手紙には「こんなものが捕れるようになって果ては養殖まで成功しちゃったのでまず毒味してほしい」という非常にアレな内容が書いてある。なぜだ。
「ひとまず物陰に移動させて保存の準備、を」
「メガネ、何ゆこの酒樽」
運送業者に指示してローレットの中に戻った三弦を待っていたのは、酒樽だった。
それは間違いなく大樽であった。三角積みにされたそれは1年ほど前を思い出す。11ヶ月前だろうか? まあどうでもいい。
パパスはその当たりしらないので、首をかしげるばかりだ……中から漏れ出す酒気は明らかにこう、高そう。
「パパスさん、ちょっとイレギュラーズ集めてきて下さい。早急に干さないとさらに樽が追加されてローレットの床が抜けます」
「そんな安普請じゃなかったはずだゆ」
「頑丈に作られてても抜けそうになったんですよ前回」
そんなわけで、ローレットにはメフ・メフィートに居を構える料理人とか呼ばれたし料理自慢のイレギュラーズも募られた。肝臓が強い者とか、普通のジュース類もイケる者も募った。
これはローレットから発効された『依頼』である。ゆえに、飲み干さなければならないしできれば報酬も約束されているとかなんとかかんとか。
余計なことはいいから、飲め。
- 酒と肴と現金と完了
- GM名ふみの
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2021年05月07日 22時05分
- 参加人数35/∞人
- 相談8日
- 参加費50RC
参加者 : 35 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(35人)
サポートNPC一覧(3人)
リプレイ
●総出で止め(られ)ました
「お酒のむんだよー!」
「駄目に決まってるじゃないですか」
「ドゥーさん10歳ですよね?!」
「大人しく可愛いどころとして若い連中にかわいがってもらってこいゆ。おまえの人当たりだけはわたち、評価してゆ」
リトル・ドゥーはお酒が飲みたい。飲みたかった。だが三弦・ドロッセル・パパスが束になって捕まえた為事なきを得た。ここまで危ないケースというのはそうないのではなかろうか?
「これは由々しき事態。前回のおよそ1/6以下の戦力で! このお酒を! 飲み干さなきゃいけないなんて! ……はぁー大変、もう困っちゃうわぁ」
「この調子じゃ、とんでもないことにならないなんて無理だよなあ」
「いえーい、かんぱーい!」
「……無理ですよねえ」
義弘は一度となく『ローレットの飲み会』を経験しているので静かに呑むのは無理だろうと分かっている。そしてシラフなのに出来上がっているアーリアのノリを見れば尚更である。乾杯の音頭をとったカイトは成人後の初陣だし、三弦(含む3名+リトル)は既にゴスメイド姿だ。
「メイドとは心の所作。すなわち炎の野に咲く一輪の吾亦紅。魑魅魍魎のこの集い、一所懸命にサーヴィス差し上げますわ」
それもこれも、ここにいる至東の手回しによるもの。当然だが、給仕に回った面々は一律この格好である。
「いえーーーーい!! 飲んでますかーーーー!! あっ私もゴスメイド着るぅ!」
そしてウィズィはといえば、仲間達に乾杯して回ってその流れで至東に絡んでいた。まあこの元町娘、アホみたいにゴスメイド似合うんだけど。
「肉を持ってきなさい! エールも樽ごとよ!」
「いい飲みっぷりっすね~! じゃんじゃん持っていくっすよ~!」
ジョッキを掲げてそう叫んだレイリーに、樽を転がしながら無黒が向かっていく。機敏な動きは、まるで相手が何を求めていたか先んじて分かっていたかのようだ。
なお、レイリーは樽を開けるなりジョッキでガンガン掬ってバリバリ飲んでいる。派手だ。
「如何ですか、お姉さま?」
「うぇーい最高よぉウィズィちゃぁん……☆」
なおウィズィは着替えるなり木苺片手にアーリアに近づき、それはそれは艶めかしい雰囲気を醸し出していた。
「昔酔っ払った時に刺されて死にかけたんだが、まさかローレット相手に殴り込んでくる奴もいねぇだろ」
「おおきなとりにくって言うなッ!」
「……内輪の騒ぎはどうしようもねえけどな」
義弘はこれを機に、とあれこれと各国の高い酒を回し飲み。以前、迷宮で強要されたのとはワケが違う。自分で選んで自分のペースで飲めるのだから、幸せという他ない。カイトは果実酒中心に飲んでいたが既に出来上がっており、あとは調理待ちという感じである。……いいのか、それで。
「タダで酒が飲めると聞いてやってきたぞ、有難く酒を仰ごうではないか」
「やった! 酒や! 酒が飲めるで! しかも変わった海産物を酒のあてにしてもええんやろ? いやぁ、楽しみやなぁ!」
ヒビキとつつじは至東が持ってきた酒と刺し身や焼き魚に舌鼓を打っていた。ヒビキは黄泉津側の強めの酒をメインに、つつじはカムイグラの酒を手に。至東のチョイスなので間違いはあるまい。やや強い酒のきらいはあるが。
「海産物も結構いけるやん! どんなゲテモノが出てくるかと思ったけど、どれも美味しい……え? キメラシャーク? 何それ……」
「ツマミとして悪くはないが……変わった魚を食べるのだな」
並べられた刺し身は、かなり魚としての色味が違うように思えた。だが、同じ種類の魚から獲れたという。
2人はまじまじとそれを見てから意を決して口にするが、普通に美味だったので胸をなでおろす。
「そろそろお酒の追加もいるでしょーかー。このお酒とか、まだ沢山のこってますのでー」
「えっ、美味そうやん! それも貰うわ!」
すかさずユゥリアリアが酒瓶を運んでくれば、つつじは咄嗟にグラスを空けて差し出しにいく。
細かいところで手と気が回るユゥリアリアの働きは、周囲の喧騒にすら負けていなかった。
「呑んで―呑んでー呑んだら呑んでーおいお代わりが足りないでありますよ。こういうのは初めてでありますか? んん?」
と、そんな2人のところに現れたのはアルハラの権化・エッダ。そこそこ気分良く飲んでいた二人のもとに暗雲が立ち込める。
「仕方無いでありますな、ツナギにヴィーシャの部屋からガメてきた年代物のワインを開けるであります」
「年代物ときたか……興味があるな」
「やったあ高いワインや! 普段飲まんから美味いの飲みたかったんや!」
……立ち込めたのだが、エッダも絡みの少ないものにそうボケ倒しはしない。いい酒を供する程度の常識はあり、そしてヴァレーリヤの秘蔵酒は干される(確ロ)。
「ふ、ついにこの日がやってきたで御座るな……! 希望ヶ浜でパンドラ(肝臓)として認定されてから早数ヶ月……貯蔵は十分、これでいくらでも戦えるで御座るぞ! さぁ、皆の者……剣(盃)を持てぃ!」
そんな状況はどこ吹く風、幻介はアーリア等にアルハラされた過去を払拭すべく盃を掲げた。己の安全装置を外して身構え、以て酒との戦いを制す。アルハラ野郎達との火蓋が切って落とされ。
「よっしゃ言ったでありますな。オラッ飲め!」
「幻介先輩にお酒をガンガン持っていけばいいんスね!」
「さぁ!! 開いた口から順番に酒瓶を突っ込みにまわりましょう! 突っ込んでも大丈夫な御仁は何人かいるようだし、僕はその覚悟、嫌いじゃないぜ?」
エッダ、無黒、そしてゴスメイドに満足げな表情を見せていた日澄の3名が連携技よろしく幻介に酒をブチ込んでいく。勇ましいのはいいんだけど相手を選ぶべきだった。ご愁傷さま。
「幻介様には強制的にゴスメイド服を着ていただきんす」
「何故にござるか!?」
ここで何故かエマにゴスメイド服を押し付けられる。当然ながら逃げの一手を打とうとする幻介だが、彼の逃げた先には運悪くコレットの姿が。壁の花として我関せずの構えであった彼女だが、しかし周囲の期待には弱い。畢竟、コレットに羽交い締めにされた幻介の生着替えショーという誰得展開が繰り広げられた。
「いやー、重傷の身にはお酒の旨さが染み渡りますねぇ」
寛治は先日、練達のVR空間に出現したバグの除去のため駆り出され、褐色ミニスカポリス姿の仲間達とくんずほぐれつ大乱闘を繰り広げた挙げ句連行され負傷した。
誰ひとりとして彼を味方として見做さなかったがゆえの悲劇みたいなモンである。で、彼は両手に花を希望して左右の手に飲み干したグラスを突き出した、の、だが。
「飲んでいるか新田殿。飲みたりんか? 懲りてない顔をしているが」
「なぁ~にィ~~?? メガネお前この宴会で手抜きしてるでありますか?」
寛治を捕まえて重傷にしたブレンダと最悪アルハリストのエッダに左右を挟まれた。ブレンダはすっかり出来上がってインナー姿だ! 青少年のなんかが危ないぞ!
「くっ、こうなったら先に宴会芸を……じゃあメガネだけで酒を飲みます。3,2,1!」
「取り敢えずメガネ割っとく?」
「グワーッ!」
「新田殿もお前達ももっと飲め飲めーい!」
……というワケで、寛治はメガネを割られエッダは止まらずブレンダは男共の誤解を招き続けたのである。
そしてそんな裏でグリムも煽りを食らってブッ倒れていた。
「レイリー=シュタイン! 一曲うたいまーす!」
「ひゅーっ! 最高よレイリーちゃぁん!」
●
「えっあのキメラシャークが何でこんなに? えっあれ本当に養殖したの?」
「キメラシャーク? ひなま? 何それおさかな?」
卓を共にしたイズマとヨゾラは、並べられた魚料理……主にキメラシャークとひなまを使った料理の数々にわずかに表情を固くした。何れもイレギュラーズを手こずらせた魚類であり、特にイズマはキメラシャークに大分手痛い目に遭わされたのだ。
「ゴリョウ様たちがお料理してくれるので、さらにおいしいはずなのです」
「確かに……この鉄板焼とか、味付け少ないのに美味しい……」
「魚だけじゃなくて野菜も多めなのはいいな。サラダも美味い」
そんな2人の給仕に回ったニルは、口々に「美味しい」と繰り返して食事を楽しむ2人を見て温かい気持ちになった。ゴリョウが用意した鉄板焼はできたて熱々で、そこから漂う匂いすら2人の表情を和らげる。ニルはその笑顔を見るにつけ、ひなまを食べたときの記憶とあわせて胸が満たされる想いがした。
「というかー、おいしいんだから猫もお魚食べていいと思うー。猫来い猫、というか来てください猫」
「……大丈夫か?」
「まだおかわりあるみたいですから、いっぱいいっぱい飲んで食べてくださいねっ」
「猫用のごはん……」
満たされたニルは、勢い余ってヨゾラに酒を勧めすぎてべろんべろんにしてしまった。イズマがいるから大事にはなるまいが……まあ、そんなこともある。
「ぶはははっ、今回も酒飲み共の宴だねぇ。実に楽しそうだ。
だが飲んでばかりだと肝臓が死ぬぞ! 合間合間にキッチリ腹に物入れとくこったな!」
「……ゴリョウ君、メイド服を無理に着なくてもいいのよー?」
その頃、ゴリョウは次々と料理を作っては給仕係に手渡し、複数の鉄板を熱しながら調理を続けるという大立ち回りをしていた。ゴスメイド服で。ギフトで細身になった状態で。
蘇芳はといえば、メイドはメイドでもエドワード調、クラシカルなメイド服。それでいてやってることは煮えたぎる油を前にした大立ち回りがメインなのだから侮れない。
「無理やり着させられたけど、一度着ちまったら脱ぐの勿体ないだろ……? 空気が悪くなる」
「真面目ねえ」
ゴリョウはこういうところで真摯なのである。それはそれとして、調理場のカウンター前に陣取って食事をしているのはエルとハクだ。
「食費が浮くから…ありがたいです! ありがとう、パパスさん!あと……確か…え~と……」
「名前を忘れるくらいなら無理に言わないでおくのも美徳ですよ」
「アッハイ」
エルはこんな感じで依頼を受注した情報屋の名前もろくすっぽ覚えていないのだが、この状況では食欲が正義なのでどうでもいい。名前をアレされた三弦は忠告しつつ心中穏やかではないが。
「ハクは……今だけ魔女見習いからフードファイターにクラスチェンジするです」
ハクは目の前に並べられた料理の数々に舌なめずりをひとつすると、勢いよく食事を始めた。フライの盛り合わせにご飯に麺類、鉄板焼にポテトサラダ。兎に角なんでも、という感じのラインナップだ。
「あっ、アヒージョ! アヒージョも食べたいです!」
「ハクもそれをお願いします」
「うどんも如何ですか?」
「「お願いします」」
エルに釣られる形で同意したハクは、即座に運ばれてきたそれを興味深げに眺めると、おずおずと口に運ぶ。エルは手慣れたように舌鼓を打つと、不意打ち気味に投げかけられた天狐の問いに咄嗟に応じた。
天狐は直前に、うどんの神様(ターバンのすがた)の天啓を受け、うどんづくりを決意していたのだ。何故か偶然咄嗟に持っていた手鏡にチラッと映った神は、「作りたいもの作って」とだけ言って消えてしまったので、彼女はうどんの神様の言うことだしと。だしだけに。
「……さあ! 『昇天ペガサスMIXきつねうどん盛り』です!」
そんな調子で出てきたモノがどうなるかは言わずもがなである。なおふたりともぺろりと平らげた。
食べっぷりを褒められたハクが鼻を鳴らして自慢気に胸を反らせたので、周囲はほのぼのとした気持ちになった。
●
「うっうっ、こんな時に飲めないだなんて! 私はただ、ほんの少し酔って暴れてカウンターを粉々にしただけなのに……」
「ヴァリューシャ…可哀そうに……君が暴れた程度で粉々になるカウンターが悪い……」
幻介はヴァレーリヤの来襲を危惧していた。だが現実化しなかった。その理由がここにある。
彼女は、皆が集まるちょっと前に酒の匂いを嗅ぎつけて現れるやいなやカウンターをブッ壊す騒ぎを起こし、ガチ気味に捕縛されたのである。なおマリアはヴァレーリヤのために手伝っている。自主的に。
「こっちにもう少しお酒ちょうだぁい! まだ飲み足りないわぁ!」
「ジョッキじゃ足りないであります。樽で来い樽で」
「はーい、注文ですのね。ただいま参りますわー!」
そんなストレスフルな状況で飲み仲間がこんな状態だったと知ったら彼女はどうするかというと。
「ていうか、自分達ばっかりズルいですわよ、私にも飲ませなさい!」
「ヴィーシャは仕事してろであります! 断固拒否であります!」
「ってヴァリューシャぁぁぁぁ!?だ 、だめだよ><;
君は悪くないけど刑期が伸びてしまうよ!? ねっ? 後でたくさん一緒に飲もう?」
当然ながら乱闘になるわけだが、マリアがいるおかげで未遂に済んでいる。なお、ガチ騒ぎになったら多分パパスが駆けつけるので何ら問題はない。
「ごめんなさいね、マリィ。貴女まで付き合わせてしまって……」
「んーん! いいんだよ! 君とこうして一緒に働くのも悪くない! むしろ楽しいとさえ思う!」
雨降って地固まるとはこういうことらしい。
「竜真おにーさんとこうして食事の席を囲むのは初めてかしら? 以前は確かカムイグラで探検したくらいでしたね」
「あの時は天守に登って、そこから飛んだだけだからな」
フルールと竜真は喧騒から離れ、静かに2人での食事を楽しんでいた。
得てしてそういう環境だと料理が遅れたりするものだが、そこはユゥリアリアの手腕が奏効し、2人のもとにはいち早く魚料理やサラダなどが並んでいる。
「キメラシャーク、というものもあるようですが……」
「キメラって、いやそれよりもサメなのかこれ」
目の前の魚料理は、見るからに『普通』のものだった。サメであった痕跡がまったくない。普通の魚とキメラシャークがどの割合で混じっているのかも不明だ(尤も、捕食対象を完コピすりゃそうもなる)。そういう意味では躊躇する必要すらない、といえるか。
「それではごゆっくりー。いいところで注文を伺いに参りますのでー」
葡萄ジュースに炭酸水、そして健康的なジュース類。果物なんかも幾つか。竜真が立つまでもなかった様子だ。
「それじゃおにーさん、周りに倣って乾杯してみる?」
「ふふ、グラスはぶつけないようにな」
フルールが軽くグラスを掲げると、竜真もそれに合わせてグラスを掲げる。両者の間で静かに視線がかわされると、グラスの中身は互いの喉へと消えていった。
「こうしてみると、壮観ですね。消化の良い海産物中心である事が救い、と言える規模ではないです……」
「あんまりガッツリ食べる機会がないから、楽しみだ!」
鶫とリコシェットは調理場とその周辺に積み上がった酒や飲料、そして未調理の魚の量に流石に驚きを隠せなかった。……それでも大分減ったほうだ、というのが更に絶望的な感じもするが。
「お魚を一杯食べてカルシウムを摂れば、背が伸びるかもしれませんよ。リコさん! 私のおすすめはマリネですよ」
「う……。鶫みたいに、すらっと伸びるといいなぁ。カルシウム。頑張って摂るぞ!」
鶫はリコシェットにマリネを差し出すと、自身も相手から差し出された刺し身に箸をつける。
キメラシャークの刺し身として供されたそれは、ほどよく弾力があり淡白な味わい……ホタテ貝のようなもの。サメとは似ても似つかぬものだ。そのミスマッチ感もまた、美味なのだが。
「あ、手がふさがってる……。鶫、一口ちょーだい!」
「欲張り過ぎですよリコさん。両手を塞ぐ勢いで食べるとか……もう。はい、あーんして下さい」
こうしてみると、すっかり親子というか、餌付けというか……微笑ましい時間は、もう暫く続きそうだ。
「生ハムとか、肉もいいけど、魚も、うーん、何頼めば‥…」
「折角海洋から海産物が届いてるって話だし、魚で良いんじゃねぇか? 味は保証されているらしいし」
メルトリリスとシュバルツは、カウンター側で次々提供される料理の数々を見て頭を悩ませていた。主に悩んでいるのは前者であったが。
「ま、なんでも好きな物を食べてみると良いさ。食べきれなかった余りは責任もって俺が食べてやるよ」
「はわ、いっぱい頼んだら、食べ、られな、ぃょ……」
あってなきが如しのメニューを片端から頼みつつ丹念にフラグを立てるシュバルツの姿に思わず弱音を吐きかけたメルトリリスだが、弱音をギリギリ飲み込む。
「騎士たるもの出されたものは残さず食べ尽くす! うんうん! マスター! こちらの方に、一番高いお酒をボトルで。グラスは、ショットで! 私はモクテルで」
(マスターいねえんだけどゆ……)
勇ましく声をあげ、その流れで飲み物を高らかに注文した姿は微笑ましくもあり。パパスは内心はともかくとしてスッと出してサッとその場を去っていく。果たして、シュバルツの前にはそこそこ高そうで強そうな酒が、メルトリリスの前には『シンデレラ』がそれぞれ供された。
「モクテルねえ。そういやアリスって今いくつなんだ?」
「私? 18歳です、今年で19歳になります。結婚できる年齢ですよ、私としますか?」
シュバルツのふとした問いかけに、返答がてらグイグイと迫るメルトリリス。微笑ましくも情熱的な一幕であった。
「今日も元気にお酒が美味しい! よし!」
アーリアは周囲を確認する。
「食べられたけど何とか復活したぜ……」
カイトは食材にされ。
「なんとかメガネだけですみました……」
寛治はメガネを割られ。
「もっと飲め飲めーい! もっと見たいか? んん?」
ブレンダは野郎どもを勘違いさせかけていた。
「……よし!」
「ニルも、後片付け、がんばりますっ……!」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
犠牲者が2人で済んだのは幸いでした。
……幸いって言っていいのか? 飲み会だぞ?
GMコメント
(クリスマスを勘定に入れないと)半年くらいは引っ張りましたかね、このテのイベシナ。
昨年は乱発しすぎたので今年は今回とあと1回ぐらいしか多分こういうのはやらないと思います(通常のイベシナは多分やりますけど)。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●プレイング書式
1行目:パートタグ
2行目:同行者名(IDがあればなおよし)orグループタグor空白
3行目:プレイング本文
●パートタグ
・A
飲んで食って騒いで、でどちらかと言うと呑む方重視です。
お酒はそこそこ年代物だったり各国の特徴的なお酒とかがあります。
なお、酒以外にもちゃんと岩清水的なものやジュースとかソフトドリンクもあります。
割材とかも結構あります。
プレイングにあるって書けば大抵のものはあります。
・B
食べる方メインです。
主に海洋の遠洋で採れた(というか多分養殖した)キメラシャークの亜種とか「ひなま」、他普通に獲れたものも含まれます。いろいろあるよ。
そうでなくても肉も加工食もある。料理は奥の方で(追加がなければ)料理人数名が作っています。
・C
AとBにお酒や料理を出す役回りです。
調理、サーブ、合いの手入れたり盛り上げたり。アルハラに加担しすぎたり、とても人が飲んじゃいけないものを騙して飲ませるとマスタリングされますから勘弁して下さい。
ソレ以外は色々できるぞ。あと衣装は統一されてるといいなー男女共通でなー(チラッチラッ)。
※あくまでも大雑把な方針なので、プレイング内で多少跨ってるような内容はアリです。
●NPC
ふみのが所持するNPC(三弦、ドロッセル、パパス)は確定でいる扱いになります。
ソレ以外の国のNPCがいきなり出てくる可能性もありますし前例がありますが、多分そこまで激しくならないと思いますので期待しないで下さい。
●注意事項
・イベントシナリオなので、描写は全体的に軽めで、アドリブが通常より多めになります。
・書式を守らなかったり、同行者同士でのタグや表記ゆれが起きると迷子扱いになり全体の空気に混じってしまう可能性があります。根回しは慎重に。
・お酒であっぱらぱーになるのは全然OKですが、辛味オイルは事前許可をとってやりましょう。アラブ歓迎だと軽率に絡まされたりします。
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