シナリオ詳細
<廻刻のツァンラート>廻りゆく街
オープニング
●その街に今、起こりしもの
『時計の街』ツァンラート。街の中央に巨大な時計塔が立つ、鉄帝の街である。時計と共に発展し、技師を多く輩出してきたこの街は今現在、不可思議な現象に襲われていた。
『見えない壁に弾かれる』
皆が口を揃えてそう告げる。まるで、何かの選別するかのように――ただの人間は街に入れなくなってしまっていたのだ。同時に中にいた人間の安否も判らず、予定を過ぎても観光客が戻ってこない事態である。各地でちらほらと上がり始めたこの話題はやがて鉄帝上層部にも伝わり、鉄帝の実力者たちを派遣するに至った。
その実力者――『アイドル闘士』パルス・パッション(p3n000070)は街へ入ることができたものの、この事態の理由は依然として不明である。故に、鉄帝は同じように入れるだろう実力を持つ特異運命座標たちへ調査を依頼したのだった。
――その、数日後。
「これがその新聞」
グリゼルダ=ロッジェロ(p3p009285)は新聞社で情報の対価に得た新聞紙をローレットのテーブルへ広げた。そこに記された日付は【1月4日】。
「ひと月も前じゃない」
唖然とするイレギュラーズたちの中、眉を顰める『Sクラスの番人』ビッツ・ビネガー(p3n000095)。けれど確かに新聞には見間違えようもなくその文字が印字されていた。それも本当の1月4日に印刷されたとは思えないほど紙は新しい。
「一定時間でループしているとは思ってた。でも連絡が取れないのは気づくのが遅れるからじゃなくて……」
都合が良いように記憶が処理されているようだ、と告げるのは『街の住人を外へ連れ出す』という試みをした白夜 希(p3p009099)。詳しい話はより後ほど彼女自身に語ってもらっても良いだろう。
「市場で聞き込みをした時、怪しい人の話を聞いたんだけれど……見られてた気がするの」
「あ……私も、です……」
アリア・テリア(p3p007129)の言葉にフェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)も声を上げる。そうなのか、と夜式・十七号(p3p008363)はフェリシアを見た。時計台から出た後は不審者がいないかと自分も気にしていたから――それより前のことだろうか?
「そのことなんですが……皆さんが調査した後、引き続き調査してくれていたシャルルさんも見たそうなのです」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)曰く、ツァンラートの街が一定期間をループしている確証を掴んだのもかのイレギュラーズだという。しかしその割には今、姿が見えないが。
「シャルルさんがそれを追いかけようとしたら、まるで消えたみたいにいなくなってしまったらしくて。しかも、不意打ちでモンスターに襲われたらしいのです」
幸いにして大した怪我でもないらしい。しかしその怪しい人物とモンスターの出没が偶然でないのなら、ますます怪しいといった具合である。
「シャルルさん曰く、1月4日から1月10日までの1週間を繰り返しているみたいです。皆さんがその……1月4日に調べてくださった時から、街の皆さんも普通に生活をしているみたいですね」
そう、後者はイレギュラーズのほとんどが感じたであろう。誰も現状に疑問を持たず、市では当然のように新しい食材が卸され、観光客は各地を見回っていた。酒場の賑わいも他の街と大して変わりはない。そして壁の事も知らないようだった。
「でも、一から十まで全部一緒なんてありえないと思うのです。だって、そんなことができたら――」
神の御業じゃないですか。ユリーカはそう呟いた。
本当に全てが元通りに、1月10日から1月4日まで戻るのなら。極論、その期間に死んだ人間でさえも巻き戻しで復活することになってしまう。そんなものは混沌中のどこにいたって有り得ないのに。
そうとなれば、以前と『同じではない』箇所を調べる必要がある。それに外壁内部に住み着いた魔獣だって、前回の知識と筋立った作戦があれば本格的な討伐が叶うだろう。そうなれば入口以外の外壁部分も調査することができるのだ。
「前回は調べられなかったところも、調べたいねぇ」
怪しいこと、人物、これらも洗い出されてきたのだからとシルキィ(p3p008115)は告げる。笹木 花丸(p3p008689)も頷いた。その脳裏にはあの展望台から見た、外壁のそこかしこにいる魔獣たちが思い浮かぶ。
分かったことがある一方で、分からないこともあるけれど。
「全部、マルっと解決するために……行こう、ツァンラートへっ!」
- <廻刻のツァンラート>廻りゆく街完了
- GM名愁
- 種別長編
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年04月04日 22時15分
- 参加人数30/30人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 30 人
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参加者一覧(30人)
リプレイ
●
(相変わらず繰り返しているのね)
『1680万色に輝く』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)は時計台へ向かって進みながら、街並みや人々の様子を伺う。記憶と照らし合わせ、特にこれといった違いは見受けられないが――何があるかはわからない。
時計台のふもとまでたどり着いたオデットは蝶の羽を開き空へと飛び立つ。足を使わなくていいのは楽だ。
(このまま時計台の時計って見てもいいのかしら?)
怒られないならあちこち見てまわりたい。他の人では見られない光景もあるかも知れないし。
ふよふよと飛んでいったオデットは、特に怒られるようなこともなく時計台の大きな時計へたどり着く。盤の数字も大きいし、針が落っこちたら大事故になりそうだ。この時計台を整備する職人は責任重大である。
街を見下ろしながら変化がないか確認しつつ、オデットはふわりと地面へ降りる。今度は外側へ歩いて行ってみよう。
(前来た時は精霊がいないっぽかったのよね……?)
人がいたからかもしれない、とオデットは安全そうで人気のない場所に踏み込んでいく。人間と関わることが好きな精霊もいればそうでない精霊もいる。どこにでもいそうな精霊がいない、なんてことは流石にないはずだ。
(なにか知ってるか、感じてるんじゃないかと思ったんだけどねぇ)
相変わらずと気配はない。この街に起こることを察知して逃げたのだろうか。それとも全く別の場所に?
オデットは立ち止まってしまった足を動かし、精霊探しへ勤しんだ。
「繰り返す時間と来たか……」
「今日は、1月5日……なのですよね」
『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)と『うつろう恵み』フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)は何とも言えない表情で再び時計台へと向かっていた。『前回の昨日』も良い天気だが、今日も良いお天気である。日向ぼっこをするように道端でのんびり立つおばあさんへフェリシアが最近の天気を聞くと、ここ最近は雪もあまり降らないらしい。元々幻想に近い場所であるし、必ずしも大雪という訳ではないそうだ。
(確かに……この辺りの本当のお天気、よくは知りませんし)
怪しいとは思う。しかし確実に『違う』とも言い難い。しかし天候に確実な差異がないのならば、この街は全くの別次元にあるわけではないのかもしれない。
「夜式さん、はいちーず、です」
空をバックに、十七号をカメラで撮ってみる。後で現像しよう。
「大丈夫そうかな? それじゃあ、のぼろうか」
目指すは時計台バルコニー。すべきは前回の再現である。
十七号は先日――『前回の昨日』で派手に見つかった。しかも記者も来た。そこまでの大騒ぎで、かつ今日が1日ずれただけなのならば顔を覚えられていてもおかしくないというのが十七号の過程である。
(その記憶があるかどうか、検証にもなるしね)
というわけで十七号はバルコニーへつき次第、さらに天辺を目指すべく壁へ張り付いた。
当然悲鳴があがり、ざわつくバルコニー。飛べなさそうな十七号をバルコニーへ引きずり戻す警備員たち。その反応は前回と酷く告知していながら、『昨日の』というような発言は聞こえてこない。
「昨日に引き続き申し訳ない」
「また……夜式さんが、ごめんなさい」
フェリシアもそろって頭を下げるが、2人へ刺さるのは困惑の視線だ。
(どう思う?)
(覚えて……なさそう、です)
小声でやりとりした2人は頷き合った。この対応、少なくとも夜式が2日も連続でこの事態を引き起こしたとは思っていない様子である。
フェリシアは視線を彷徨わせ、再びフードの人物がいないかと探す。もう十七号が同じことをしでかさなそうと見て人々の注目はまばらだ。その中に見覚えのあるフードを見て、フェリシアは声をかけた。
「一緒に、街を眺めませんか」
その声は届いたのだろう。人物が意識を向けたのを一瞬感じ取るも、すぐさま逃げられてしまう。
(ただの照れ屋さんというわけではなさそうですし……)
一体、何者なのだろう。フェリシアは消え去った方向から十七号へ視線を移した。
十七号は前回見た空のゆらめきをもう一度探していた。位置と方角を確認し、ツァンラートの観光地図に印を付けて行く。あれがどういう意味を持つのかわからないが、調査の手掛かりにはなるかもしれない。
その隣に立ったフェリシアは街を見回し、フードの人物が外を歩いていないかと探してみる。人々は米粒くらいに小さく見えるけれど――この中でフードを被って歩く人物なんて、中々見ないから。
「それじゃあ、ジャンクショップで合流だね」
そこへ行きたいと言う者たちへ場所を教えた『もう少しだけ一緒に』シルキィ(p3p008115)は一旦解散! と告げる。各々やりたいことがあるようだから、まずはそれを済ませてしまうのだ。
『砂原で咲う花』箕島 つつじ(p3p008266)は時計博物館へ。他にも気になる場所はあるものの、ひと先ずは前回も向かった場所だ。
「あ! すいませーん」
そこで見知った姿――前に話をしてくれたスタッフを見つけたつつじは駆けていく。今日も来ました、と言うとスタッフはにこりと笑った。
「時計がお好きなんですね」
「1週間ちょいぶりやね。スタッフさん、ウチと会ったん覚えてる?」
つつじの言葉にスタッフはおやと首を傾げる。他のスタッフではないかと問い返され、つつじは目を瞬かせた。
「あれ、そうやったかな? 慣れない旅行で混乱してたみたいや」
そのまま展示を見せて欲しいと言うとスタッフはパンフレットを持ってきて案内をしてくれた。ざっと見たところ内容に変わりはない。世界の時計も、最近展示された時計もだ。一応変化がないかと一通り歩いてみたものの、それらしいものは見つからなかった。
(ぼちぼちジャンクショップに行かんと)
他2人もそろそろ向かい始めていることだろう、とつつじは博物館を後にした。
――が、実はもう1人も時計博物館にいたりする。
修理できず展示されている時計を探した『漆黒の堕天使』マキシマイザー=田中=シリウス(p3p009550)は無機疎通で対話を試みた。
とはいえ、大した情報は得られない。色々なところを巡ったらしいことは掴めるが、次行く場所となるとだんまりだ。恐らくは知らないか、興味がないか。シリウスは時計の元を離れ、博物館のスタッフにも質問をしに行った。
「あの時計の展示、期限はあるのか?」
「あちらでしたらもう希少な時計ですから、期限を設けずに展示しています」
ということは期限のある展示物もあるのだろう。それらは一時的に借りている者だから持ち主へ返したり、別の博物館へ貸し出したりとするそうだ。
10日まで滞在するので今しか見られない時計を見たい、と告げるとスタッフは少し考えこんで応える。曰く、『今月下旬までの』時計ならあるということだった。
そうしていくつかの質問をスタッフや時計たちへ重ね、シリウスもまたジャンクショップへと向かったのだった。
さて、ジャンクショップの情報を入手したシルキィはと言えば市場でサンドイッチを頬張っていた。シャキシャキの野菜が美味しい。
「ねぇ、この街の人って自分の時計を皆持ってるの?」
「そうでもないさ」
サンドイッチ露店の男は呵々と笑う。持っている人は持っているし、持ってない人は持ってない。何せ、この街自体に時計が沢山あるのだから。
「いざとなったら時計台を見上げればわかるからね」
「確かにねぇ」
街のどこでだって時計台は見つかる。あれで十分ならば必要ないのだろう。
サンドイッチを食べ終えたシルキィは宿屋へ。1週間連泊できないかと問い合わせに行ったのだ。
だが。
「あ、空いてない……?」
「はい。申し訳ございません」
ツァンラートは観光客が多く、先の予約も多いらしい。治安が良くない場所であれば宿も取れるかもしれないが、検証の為にそこで1週間。ちょっと、非常に、悩む。
そうこうしているうちに時間が過ぎ、シルキィもまたジャンクショップへ足を向ける。ここも裏通りで治安がとても良いというわけではないらしいが、職人からすれば宝箱のようなものかもしれない。
「一番古く残ってるものはどれだ?」
シリウスはいわくつきや最古参のジャンクを見せてもらい、無機疎通で話しかける。人の名などはロクに覚えてないようだが、ここに来るのは初めてであるらしい。
「こんな型番のパーツって置いとらん?」
「ん? どれどれ」
メモ書きをつつじから受け取った男は目を細めてそれを読むとああ、と小さくこぼす。彼もまたこういったパーツ、そして時計に精通しているのだろう。
「こいつぁもう出回ってない型番だ。さびれたジャンクショップなんかにこねぇさ」
「そか、それは残念」
つつじは小さく肩を竦める。それはシリウスが博物館で話しかけていた、修理パーツが取り寄せられない時計の部品であった。直せば何かあるかもと踏んだが、さすがに難しいか。
「なぁ、面白いもんあったりしない? めっちゃ気になる!」
「お嬢ちゃん、ここは遊び場じゃねぇんだぞ?」
素行の悪い者も来るのだと忠告してくれるが、つつじとてそこらの破落戸に負ける程ヤワではない。
「ここには、壊れた時計や部品も集まったりするのかなぁ?」
シルキィの問いかけに男は頷く。そういったものを買い取って分解し、パーツを売り出すことも少なくないのだと。
「じゃあ、壊れた時計をそのまま買い取ることは?」
「本当に使えねぇぞ」
いいよ、という酔狂な客を男は胡乱げに一瞥しながらも、まだ解体していない時計を持ってきてシルキィの前へと並べた。
「動くモンは表の店で買ってくれ。ここはパーツ屋だからな」
「はーい」
「なんだい、今日は盛況だな」
返事をしたシルキィの後ろから新たな声がかかる。どうやら常連客らしい。邪魔にならないように避けつつも、3人はパーツや壊れた時計を見て回ったのだった。
(絶対、まともじゃない形で代償払ってるんだろうなぁ)
『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)は何とも言えない表情をしながら市場で肉を購入した。そして住民へ魔獣が多いという場所を聞き、そちらへと向かう。
時間が繰り返され、そして魔獣が増えている。腐った肉と骨で出来たそれは恐らく死霊術の類で動かされているのだろうが、一体何を素材にしているのか。
外壁近くまでやってきたグリムは離れた場所から勢いよく肉を放った。放物線を描いたそれは魔獣たちとつかず離れずの場所にぽとりと落ちる。遠目には一見獣に見えるそれは、肉を見ると一目散に群がった。あらかた食いに走ったところでグリムは行動を開始する。
「臭うな……何の肉と骨だ?」
多少慣れているから臭い自体は耐えうるものだ。けれどもこんな臭いを放つものがあっただろうかとグリムは眉を寄せた。
感応呪術を展開したグリムは魔砲で一気に消し飛ばさんと撃ち放つ。しかし素早い動きの魔獣たちを全て捕らえられるわけもない。
(だが、数が減れば良い)
本格的に外壁を調査したい者もいるだろう。その一助にはなるはずだと引き付け、魔砲を撃ち放つ行動を繰り返す。もう少し落ち着いたら自身も魔獣の正体を探りたいところだが――まずはもっと減らしてからだ。
「普通じゃない人間、イレギュラーズやそれに近い能力を持つ者、それか魔種辺りが入れるかしら」
「やれやれ……魔種だってここまでできるのか?」
入れそうな者を指折り数える『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)に『黒花の希望』天之空・ミーナ(p3p005003)は小さくため息を零す。最も、それを調べるのもイレギュラーズの仕事だろうが。
フルールはこの街に来たことがない。故にゆっくり見て回りたいのは山々だが、魔物の存在は邪魔だ。街の中で蟲毒でも作っているのかと考えたが、出入りができるのならその限りでもないだろう。
中々に目的が掴めないが、まずは魔獣退治である。道端で揺れる草花たちとお喋りをしながら進むフルールは、いつのまにか魔獣がいたのだという話を耳にする。
植物の感覚は人のそれと異なる。けれども魔獣は元々いなかったのと、それがだんだん増えているというな印象は植物たちも受けているようだった。
「さて、と。もう先客もいるようだな」
ミーナは既に戦い始めているイレギュラーズを一瞥し、自身らも戦う準備を整える。遠目からではあるが、どれも非常に強いという訳ではない。一般人からすれば脅威だが、イレギュラーズからすれば数の利があちらにあるというほどか。経戦時間も伸びれば不利に傾いていくだろう。
「あまり離れすぎるなよフルール」
「ええ。ミーナおねーさん、前はお願いしますね」
半精霊化したフルールがちゃんと自身後ろへ居るのを確認し、ミーナは魔獣たちへ視線を向ける。ある程度なら彼女を守りながらも戦えるだろう。
「――行くぞ!」
ピューピルシールを放ち、敵の能力を制限せんとするミーナ。その後方からフルールが紅蓮のひと薙ぎに魔を喰らわせる。素早いものの、当たればあっという間だ。
しかし気づいた魔獣たちが次々とミーナたちへ飛び掛かってくる。それをいなし、受け止めながらミーナは瞳を眇めた。
腐臭。その肉体を構成するものから漂ってきているのだろう。精神干渉程度に惑わされるミーナではないが、これは中々、臭い。
「前に見たんだよな、人の手で改造された魔獣」
それへ攻撃を加え、肉体を崩すミーナ。度重なる魔獣たちの攻撃にその一部を拾い上げることは叶わないが、引いていけばそれも叶うだろう。最も、その前にミーナがフルールを連れて撤退しなければ。
(こいつらが繰り返しの原因ではないと思うが……製作者なら、或いは)
後方からフルールのバックアップを受けながらミーナは次々とピューピルシールを放ち、敵の能力を抑えて混乱させる。
それにしたって――魔獣の数が多いな。
「何とも奇怪な街であるな」
「頭がぐるぐるしそうー……」
一週間を繰り返す。その報告に
『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)は唇をきゅっと引きむすび、『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)は不明点の多さに目を回しそうになる。
「しかし、調べんことには何もわからん」
『猪突!邁進!』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)の言は尤もで、そうねぇと『never miss you』ゼファー(p3p007625)も頷いた。狐につままれたような心地ではあるが、動かなければ変わらない。どう転がるにせよやってみなければ。
「前回は市場に行ってみたけどイマイチだったしねっ!」
「ええ。結果的に当たりをつけることが出来なかったのは確かです」
『奏でる記憶』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)と『天地凍星』小金井・正純(p3p008000)は前回の調査を振り返り、今度は魔獣へ関わることとした。前回は前回で予想とは異なる状態であるということが判明したわけであるが、その続きは他のイレギュラーズが探し出してくれるだろうと。
(街の中の様子は、前回とさほど変わらないようでしたね)
正純は仲間と回った前回と今回の街を眺め、特段おかしな変化もないと確認する。外壁周辺の魔獣たちも、聞いた話と変わりないだろうか。
「ま、調査も魔術も私はてんでダメだし! 殺陣は好きだけど!」
そしてあと持ち合わせるものと言ったら秋奈自身のかわいらしさのみ。こうなったら可愛さで注目集めまくって格好良く倒しちゃおうぜ! なノリである。
「でも、なんらかの目的の上で何者かが引き起こしているのだとしたら……相当な力の持ち主だよ。皆、気を付けてね!」
『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)が皆へ注意を促したところで、ぼちぼち魔獣が見えてくるだろう場所までやってくる。他のイレギュラーズたちも既に戦っているようだが、やはりあちらに数の利はあるようだ。
「なに、此度は潰しつくす事も不可能ではなかろう」
「数は多いようだが……限りはあるだろうさ」
百合子とブレンダは好戦的に戦闘へ構える。リュコスは外壁へと視線を向けた。
(むげんわきではないのかな? 魔獣と、魔獣がじゃまで近づけない壁……何かかんけいがあるのかな?)
街がループしているのならば、魔獣たちの数も――増えていても、減っていても――元通りになるのがふつうである。けれども魔獣たちはそのループ外にいるような印象を受けた。そこに何か、違いがあるはずなのだ。
「単純にひと気が無い場所に溜まってるだけか、他に理由があるのか。そこも確かめてやろうじゃない?」
ゼファーが槍を手に握る。さあ、掃除の始まりだ。
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしない!」
「あちらだけじゃなく、私とも遊んで頂戴な?」
秋奈とゼファーが声で注意を引き、ブレンダが敵を縫い留めんとする一射で自身へ視線を向けさせる。湧くようなイレギュラーズの数に魔獣たちは唸りを上げ、飛び掛かっていった。
「早速歓迎されているようだね! 派手にいこう!」
蒼雷状態になったマリアが大規模な落雷を起こす。そこへ突っ込んでいったリュコスはぽこちゃかカーニバルで所かまわず暴れまわった。『神は許さなくても私が許そう』白夜 希(p3p009099)の唄から遠ざかりすぎないように、でもあまり近すぎて巻き込んでしまわないように。
(きっと、ここも触られたくない場所なんだ)
時間以外に街と人へ影響を起こしているのは壁だ。これを境にしている。そして調べようとすればこの魔獣たちが立ちはだかっているのだ。調べられては困るものがあるのではないか。それが希の見解だった。
むしろ前回接触した自警団の青年。彼は都合よく記憶が変わっていたが、そもそも時間の流れが繰り返されるこの街自体が都合よく変わっている。何か大きな異常があれば飛行スキルで空から見通した者たちが核にしているだろうし、わざわざ再確認に回る必要はないだろう。それよりは尚更怪しいと思われるこの場所を調べてみたい。
奮闘する仲間たちへ静かな唄を歌い上げてそっと傷を癒す。癒した人が誰かなんて、この唄が癒したなんて気づかなくて良い。気付いたら治っていた、そんな心地になるだろう――それで、良い。
百合子は咲花式で一時的に時を引き延ばす。時間が伸びているのか、目にもとまらぬ速さで百合子が動いているのか、かの敵には判別もできぬことだろう。
猛烈な攻勢により次々となぎ倒されていく魔獣たち。その前へ立ちはだかる可憐な美少女は取り囲まんとする魔獣たちを一瞥した。
(ふむ、やはり前回と同じで鋭いが脆い)
精神干渉はかかったとしても仲間がサポートしてくれるから問題ない……が、問題としてあげるならば『何故ここに集まっているか』だろうか。
自然発生したものというよりは作られたもの、という感触がする。前回も確認したその素材からしても、自然発生とは考えにくくもあった。
そして通常であればこのような群れにはリーダーが存在するはずであるが、百合子のモンスター知識と照らし合わせてもそれらしき存在はみつからない。
(それに――一体、どこから?)
ループする時間の中、あの見えない壁を通り抜けてきたのだろうか。それとも内部で発生しているのか。この数の群れになったのも関わりがあることなのか、懸念されるべきことではある。
そこまで考えて、百合子は小さく笑みを浮かべた。やべぇくらい敵をなぎ倒していることに目を瞑れば、思わず微笑んでしまった美少女の絵になる瞬間である。周りを見なければ。
「吾に頭脳労働させるとは、こやつら戦闘力以上に難敵であるな?」
最も、戦闘力で負けるつもりは毛頭ない。何故なら――彼女は、美少女なのだから。
「数が多いね! まさか無限に湧いて来るとか……」
「やっぱり、むげんわき?」
「流石に無いだろう」
呆れ口調のマリアにリュコスがぴえっと声を震わせ、ブレンダが否定する。しかしそう思えても仕方ないくらいに、兎に角数がいる。
囲まれないようにとマリアが放つ落雷とリュコスの暴れっぷりでどうにかなっているが、まだまだ戦いは続きそうか。脆い分数で補った印象が強くなる。
(壁を目視で調べる間も……なさそうだね!)
近づこうとすれば魔獣たちが立ちはだかり、それを無理に抜けようとすれば突出しかねない。単独行動はあまりに危険だ。
「出てくるなら出てきた分、じゃんじゃん倒していこうぜっ! さあこのかっわいい秋奈ちゃんに注目しちゃいな!」
秋奈は自身へ多くの敵を引き付け、確実に1体ずつ蹴散らしていく。光が走るとともに1体、また1体。マリナたちが弱らせたものから確実に倒していけば倒せないことはない。
「んー……イレギュラーな個体が欲しいところですねぇ」
槍の乱撃で敵を掃討していくゼファーは小さく口を尖らせる。こういう時は何かデカかったり、様子が異なったりするモノの観察がしたいものだが、多少見た目が違いこそすれ概ね同じ個体ばかりだ。
(そも、こいつら何を食べて生きてんのかしら)
外壁の端、さほど裕福でない者たちが近くに住まう程度だ。これだけの数が存在していると言うのなら、食糧事情はかなりシビアなはずである。
「増える瞬間などを抑えられれば良いのですが、そう上手くも行かなそうですね」
正純もまた敵を観察しながら敵へ矢の雨を降らせる。決して自らへ近づけてはならない。脆くともあの殺傷能力と速さは十分注意するに値する。
「だが、精神干渉に惑わされなければ多少マシだろう」
精神に異常をきたした状態で攻撃を受ければ死の危険すらあるかもしれない。瞳に宿った黄金色の魔導式を映しながらブレンダの持つ二振りの長剣が翻る。戦場を駆け抜け、焦がすそれらは素早さで翻弄してくる魔獣に後れを取らない。
「さぁ、次はどいつだ? 早く斬られたいものから来るといい」
1体を斬り伏せればそこからもわっと腐臭が広がる。これもまた腐った肉と、それに粗末な――何とも知れない――骨でできているようだ。
(そもそも、この魔獣たちは生き物なのか?)
何者かが作り出した、そんな可能性を目の当たりにしたブレンダは顔を顰める。事の解明をするためにも、早く一層しなくては。
「皆、もう少しだよ」
希が最後の力を振り絞って皆の気力を持たせる。少しずつ自身の気力も回復してはいるが、次に皆を回復するには多少の時間を要するだろう。リュコスはそれを受けて再び敵陣へ突進していく。
(いたいのは怖いけど)
そう言って引っ込んでいては、倒せない。それにこの敵はそこまで固そうでもない。襲われる前に倒してしまえば良いのだ。そう、思いっきりどーんと!
少数になり撤退するならばアジトも判明するか、と思ったものの魔獣たちに逃げの言葉はないらしい。結果的に周囲をうろついていた魔獣を一掃することになったイレギュラーズたちは、終わった瞬間に何人かへたりこんだ。
「うっ……なんて酷い臭いなんだ……臭いって言われたら死んでしまう……」
最愛にそう言われることを想像したマリアは――まだ想像である――絶望的な表情を浮かべる。しかし確かに、臭い。ここに居る皆、変える前にどこかで臭いを流していく必要はありそうだ。
「追いかけることは叶わなかったが、潰し尽くすことはできた。吾らの勝利だ」
「ようやく調べられますしね」
百合子が倒れた多くの魔獣を一瞥する中、ゼファーはその遺骸を再び調べてみる。果たして人の手が加えられたのか。――人であるかどうかは、さておいて。
「壁……自体には何もなさそうですが」
超視力で壁の方を見た正純は首を振る。魔獣が発生しそうな文様とか、そういう類はない。一体この繰り返す街の中、どのように数を増やしたのか。
「そもそも、なぜこいつらは壁の傍にしかいないのだ?」
ブレンダは正純と同じ方向を見やり、それから街の中心部の方を見た。あちらの方が人も、食糧になりそうなものもたんとある。危害を加えられる可能性があれど、この強さならば決して遅れは取らないだろうに。
(やはり、壁を守る為に……?)
視線を遺骸へ向けたブレンダは、暫しして首を振った。とにかく、調べなくて良い遺骸は早々に破棄してしまいたい。どこかへ集めて燃やしてしまおう。
何人かがそれを手伝い始める中、リュコスもまた遺骸を持ち上げる。臭いにうっと息を詰めて涙目になるが、また蘇られたらリュコスたちの頑張りが勿体ない。
(この体……ゾンビ、だっけ? あんな感じがする)
元がどのような形だったのか定かでない……というか、そもそもこの骨。合っているのだろうか?
こうして徐々に魔獣の遺骸が集められていく一方で、秋奈と希は外壁へ近づいていた。今のところ魔獣が他の場所からやってくる様子はないが、いつ来るとも限らない。早々に調べてしまおうと。
「何かを守ってるとかよくある話だよね? でっかい魔法陣になってるとか、魔獣自体の召喚装置があるとか!」
「街を囲う壁全体に細工することで、魔法陣みたいなものを形成してるんじゃないかな、とは思うよ」
秋奈の言葉に頷きながら希は壁の下の方を見て回る。透視で見る限り、この辺りにおかしなものは存在しないが――。
「ん?」
「あった!?」
なにやら土が盛り上がっている。その下に何かがあるのだが灯りのないそれはよくわからない。
2人で掘ること暫し。道具がないため多少時間はかかったが、2人はそこに埋められていた人骨を発見した。
「当たり……みたいだね。壊してみないと埒があかないか」
「よぉっし任せて!」
秋奈が嬉々として武器を握り振り下ろす。その瞬間――秋奈が跳ね返された。2人とも目を丸くしてその光景を凝視する。
「も、もう1回!」
素早く秋奈が立ち上がるが、何度やっても変わらない。どうやらそれなりに強固な結界でも使われているようだ。
ともあれ、これが街へ何らかの作用を及ぼしていることはもはや確信の域である。2人はそれを報告するため、魔獣の遺骸を燃やそうとしていた仲間たちの元へと戻っていったのだった。
「ここが堂々巡りの街、ツァンラートですかっ! ダイバージェンスメーターもぐっちゃぐちゃですよっ!」
なんか目を輝かせている気がする『自称未来人』ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)。時間を指し示さない懐中時計は混沌世界で何かが起こると指示を変えるというが、果たしてそれはツァンラートによるものなのか。
ともあれ、時間に異変が生じているあたり、ヨハナとしてはシンパシーを感じずにいられない。もしかしたらこの街の生まれだったのかも――なんて。
(……本当に。ヨハナの記憶(ギフト)に引っ掛かるようなこと、ないに越したことはないんですが)
一縷の懸念を胸にしまい、ヨハナは街を行く。
昼間も見て回ったが、特に力を入れるのは夜の酒場だ。仕事を終えた壮年の男性たち――言っちゃえばおじさんたちが酒を飲み語らう場である。
前回調査しに行った者の話によると、技師たちは積極的に弟子を受け入れる状況でもないらしい。ならば弟子にしてくれと押しかけるのは愚策だ。
「で、あるならばっ! プライドを刺激して差し上げましょう! すみませーん!!」
ダイバージェンスメーターを下げて酒場へ飛び込み、時計技師と思しきおじさんたちの卓へ駆けていくヨハナ。虚を突かれた男たちはヨハナの出した懐中時計へ目が釘付けになった。
「この時計を修理できたら遺産を全て相続させると、ヨハナのパパ上からお達しがっ! 助けてください!」
混沌一の時計技師ならできるはず――とヨハナが続ける前に時計技師たちはその懐中時計をマジマジと観察し始める。どうやら彼らのお眼鏡に叶う面白い時計であったらしい。
「これはいったいどこで?」
「ヨハナのお家で代々継がれているんですよ! 昔の高名な技師が製作したとか!」
「何だこの文字盤」
できるかできないかの前に『これは一体何なのか』。それを根掘り葉掘り聞いた職人たちは唸る。
「本当にこれ、時計として機能してたのか?」
「解体してみないとわからんな」
「嬢ちゃん、遺産がかかっているにしろ何にしろ、修理なら予約が必要だ。暫く先になるが」
ここは時計の街。数々の時計が作られ、修理される場所。金に目がくらんで予約をすっ飛ばす者は一人前でないと言う。そして仮にこれを直せるような奴がいても年単位で待つぞと言われ、しかしヨハナは目を輝かせた。
「その人の名前を教えてください!!」
(やれやれ、全部殴って解決すれば楽なのだが……)
そう簡単にはいかないか、と『ヴァンガード』グリゼルダ=ロッジェロ(p3p009285)は夕暮れの中、酒場へ向かう。情報収集となればここだろう。
(それにしても)
手にしたのは『1月5日』の新聞。以前来た時は『1月4日』だったから、ループを挟んだとはいえ、1日ずれたと言うことになる。そこへ乗っている自らの確かな痕跡にグリゼルダは目を細めた。
そうこうしているうちに酒場へ辿り着き、グリゼルダが扉を開くとベルの音が小さく響く。カウンター席へ座って飲み物を注文し、グリゼルダは視線を横へと滑らせた。
「少々訪ねたい事があるんだが、構わないだろうか?」
「お? なんだい嬢ちゃん」
ほんのり酔っぱらっているらしい青年は突然声をかけてきたグリゼルダににっかり笑ってみせる。彼へマントを付けた怪しい人物の話をすると目を瞬かせた。
「マントを……? あー、あの噂かな」
彼も噂でしか聞いたことがないらしい。それでもグリゼルダよりは余程聞いているだろうが、それでも頻繁に出没する箇所と言われると首を傾げてしまった。
「色んな所で聞くよ。正に神出鬼没さ」
「ふむ。それでは、別の件について聞いても?」
ジュースに口を付けながらグリゼルダが問うたのはループ初日の雰囲気についてだったが、青年は面白おかしそうに笑いだす。
「嬢ちゃん、間違って酒でも出されたか?」
惜しくも公的に飲めるようになるまではあと1年。グリゼルダが手にしているのはノンアルコールのジュースである。
ループなどと言っても到底信じられないのだろう。それにこの様子からすれば、彼が知る限りループしているなどとは思わせないくらいに『普通』なのだ。
「では、次に――時計台の噂、などあれば」
グリゼルダがそう告げると彼は目を丸くして、それからさっと周囲へ視線を走らせた。
「……嬢ちゃん、それは時計台の立ち入り禁止エリアの話かい? それなら無暗に聞いちゃいけないよ」
だって、あそこは――。
(やっぱり見られてた、気のせいじゃなかった)
『希望の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)は再びツァンラートの見えない壁をくぐる。視線の先にあるのはそびえたつ時計台『グラヴィアン』だ。
フードを被った存在を追いたい気持ちはある。しかしモンスターも出る可能性があるのなら、策なしに追うのは危険かもしれない。故にアリアは引き続き情報収集へと向かっていた。
(人工的に空間を作ろうとすると球体になるんだっけ?)
どこで聞いたかもうろ覚えな知識を掘り返しながらアリアは歩を進める。この街もドーム状に覆われているというから、中心にある時計台は調べるに値するのではないだろうかと思ったのだ。
グラヴィアンの展望台へ登ったアリアは聞き込みを開始する。本日のアリアは探偵見習だ。
「失礼します。私、探偵社で見習いをしているものなのですが」
飼い犬探しの依頼で調査をしていたところ、不審なフードの人物が浮かび上がったのだと言えば相手は記憶を掘り返すように考え込む。
「ああ、近頃聞く怪しい人物か。そうだな、そこまで前からってわけじゃないと思うよ」
人々の話にのぼりはじめた時期は定まらないが、凡そ年始ほどの頃か。随分と最近の話である。
他にも何人かに話を聞いてみたが、出現時期については似たり寄ったりであった。
(視線……でも、振り向かない!)
時たまに、視線を感じるような気がする。気のせいかも知れないし、振り返ったらいるかもしれない。けれど単独で捕縛することも、モンスターを撃退することも難しいと考えるならば『関わらない』ということが一番だ。
一通り聞いて回ったアリアは、時計台にいるスタッフから聞いた情報を元に客が立ち入ることを許された中でも一等人気がない場所へ向かう。
気づかれて、消されてしまっては困るのだ。
「これで……よし、と」
壁の限りなく下に小さなバツ印。遡っても消えない、というのがアリアの予想だが、結果は時が経ってのお楽しみだ。
●
「ちょっといいかしら?」
『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)はいかにもガラ悪い男たちへ声をかけた。男たちはレジーナを見るとニヤリと笑みを浮かべるが、その手にあるものを握らせればまた別の意味で笑みを浮かべる。
「聞こうじゃねえか」
「最近怪しい……フードを被ってうろつくような人物は見かけたかしら?」
レジーナの言葉に男たちは揃って考える。こうしてブツを握らされた以上、見合った情報は渡すべきという思いはあるらしい。
「アンタがいってるのは近頃聞くアレだろう?」
「だがアレは神出鬼没だ。規則性なんてないんだよ」
「適当にぶらつくしかねえな」
規則性がない。情報と言えば情報であるが、これでは進展しない――男たちと別れたレジーナが唸りながら歩いていると、向こうの方で大きく手を振る人物が居た。『雷刃白狐』微睡 雷華(p3p009303)だ。
「同じことを調べるなら……協力した方が、良いと思って」
そう告げる彼女の傍らにはツァンラートに溶け込む服装の『Meteora Barista』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)がいる。彼女は一足早くこの格好で街を練り歩き、フードの人物がいないかと探していたそうだ。
しかしこの街は決して狭くない。1人で探していては中々見つけることができず、そこで雷華に出会った……ということらしい。
かく言う雷華も、前回視線を感じたと言う仲間がいた市場で聞き込みをしてみたものの、レジーナ同様に出没頻度も場所も定まらないという話を聞いたばかりである。そして一度、視線を感じたのだが――消えるように見えなくなってしまったのだと。
雑踏に紛れていたとはいえ、あそこまで綺麗に痕跡を消せるものなのか。それも、ただの人が?
「おや、皆様お揃いなのですね」
同じように『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)も雷華に呼ばれて近づいてくる。これから人が多いだろう時計台を張ってみるところだということで、一同は揃って時計台『グラヴィアン』へ行くことにした。今のところ有力な手掛かりはないし、皆で行った方が見落としの確立も下がる。
(きっと、これは……人為的な事件。でも、一体どうしてこんなことを……)
雷華は段々近づく時計台へ視線を向けながらつと目を細める。
先の時間へ移り行くことで困ることがあるのか。
繰り返す時間で何か為したい事があるのか。
目的を知ることで解決の糸口も見つかるかもしれない。そのためにもそのフードの人物を炙りださねば。
「それにしても、まるで奇術のようで御座いますね」
果たしてタネはあるのか。この街全体にかけられた絡繰りや如何に。幻はその真相へ近づけば謎の人物にも会えると信じている。故に時計台へ行くのだ。
(仲間の多くもまた、時計台へ向かうようでしたからね)
この街に元々存在しない――言ってみれば異物である。それが集まってくるのだとしたら、フードの人物もそこへ現れる可能性は高い。そしてそれが出入り口を通らず時計台を上り下りするというのも考えづらかった。
瞬間記憶で覚えていた街の地図を頼りに、幻は時計台へ迷いなく皆を案内する。多くの客に混じって仲間たちの姿も見えるようだ。さあ、あとはひっそりと待つだけ。そうして、暫し。
「……いたわ」
レジーナが密やかに告げる。どうやらフードの人物は時計台で調査をしていたアリアを見ているらしい。
安易に接近しない方が良いと言うレジーナ。
悟られぬよう尾行・接近しようと言うモカと雷華。
なるべく素早く捕まえてしまおうと言う幻。
捕縛方法についてはそれぞれ異なった意見を見せたが、それは問答をするまでもなく終わった。
フードを被った人物がこちらへ気づき、動き出したのである。
レジーナがファミリアーやメカ子ロリババアたちを動かして包囲網を作る中、飛びぬけた機動力で幻が追い上げる。雷華もハイセンスと物質透過を駆使しながらなるべく直線距離で追い上げた。
一方のモカは裏道に入って見えなくなってしまったあたりで追跡を中断しようとしたが、飛び出してきたモンスターに鉢合わせる。偶然か、それともあの不審者が呼び寄せたか。いずれにしても逃げる余地などないだろうと速力任せにモンスターへ殴り掛かる。
一方の不審者はといえば、幻の追跡をつかず離れずのスピードで逃げ回っていた。しかし左右、そして前方を雷華やレジーナのファミリアーたちに塞がれ徐々に逃げ道がなくなっていく。
「この先は行き止まりで御座いますね」
幻とは別ルートで追いついたレジーナがそう、と視線を不審者の方へ。リーディングを発動させる――が、読み取れるものは何もない。
行き止まりへ曲がった。これでチェックメイトだと雷華を合わせた3人が迫る。
「動きが止まった……匂いがそこで、止まってる」
動いていないと雷華が鼻を利かせる。さあ、捕縛の時間だ。
だが、しかし。
「え……?」
「……一体、どのような奇術なのでしょう」
雷華が戸惑いの声を上げ、幻も立ち尽くす。
行き止まりには、不審者が纏っていたフード付きマント1枚きり。その他には何も存在しない。しかしそれを見たレジーナは困惑することなく目を細めた。
彼女には見えるのだ――落ちたマントの上に浮遊する、霊魂が。
「霊魂が……わたしたちを、見張ってたってこと?」
「謎の人物は人ではなかった、ということですか。しかしこの件に関係しているというならば、この街が時に囚われている理由もご存じではありませんか?」
雷華と幻の言葉にレジーナが視線を一瞬そちらへ向け、それから霊魂へと戻す――が、空へ向かって急上昇したそれに目を見開く。
このままでは逃げられる。そう思った瞬間、後ろから吹いた風に混じった声を聞いてレジーナは足を止めた。
「え……?」
「どうかされましたか?」
霊魂が見えぬ幻はレジーナの挙動に反応する。レジーナは既に霊魂の見えなくなってしまった空を見上げて、それから2人へ口を開いた。
「どこからか、声が聞こえたの」
ほんの少し、時を遡る。
(時が繰り返されるなど、正直に言ってしまえば半信半疑だ)
街へ踏み込んだ『曇銀月を継ぐ者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は顔を上げる。街の何処にいても見上げることができる時計台には本日も、多くの客がのぼっているのだろう。時が繰り返していることなど、気づきもせずに。
「どうにも初めて此処……に入った当初考えてたよりも、なんかこう、きな臭い感じっスね?」
嫌だねぇとぼやく『EAMD職員』キャナル・リルガール(p3p008601)。時が繰り返す事象は彼女らが調査へ踏み込んだ際に発覚したため、今回は純粋に楽しむというのとはちょっと違うことになりそうだが。
(まぁ、嫌な予感はこの際頭の片隅に置いておくとして)
わからないことに唸っていても仕方がない。キャナルは「さあ、行くっスよ!」と時計台へ早足に向かい始めた。
「……単純に巻き戻される時間を繰り返している、という訳では無さそうですよね」
「ああ。街に居る者が変われば変化は起こり得る」
『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)に頷くベネディクト。内部から持ちだせた新聞は未だローレットにあり、消失してはいない。他に変化があるかどうかは仲間たちの調査によって判明するだろうが、時を繰り返すのならばその間の痕跡を完全に消さなければならないだろう。
(内部……ここの空間は切り離され、核となる何かに取り込まれているということでしょうか。『再現虚像』の類でない限りは、異界化しているか、或いは……)
アリシスは先頭を行くキャナルについていきながらも頭を振る。既に起こったことだ。考えるべきは事態を進めるための、思い切った一手。
その一手を打つべく、一同は時計台へと向かっていた。気になるのは『はなまるぱんち』笹木 花丸(p3p008689)が前回調査して得たという黒いシミの話である。
(封鎖エリアの中の黒いシミ……あの時はそれ以上のことができなかったけれど、今回は何か掴みたいな)
花丸はファミリアーを使役することで封鎖エリアの中を見ることが叶った。人が入り込めぬ隙間から見たそれは、大きな黒いシミ。あれが何であったのか、今回で判明すれば良いのだが。
「封鎖されている理由もわからないのだったか」
『破戒僧』インベルゲイン・浄院・義実(p3p009353)は時計塔の、封鎖されているであろう箇所を見上げる。前回は準備不足で入ることができなかったが、故にのっぴきならない理由で封鎖していることは理解できた。花丸からの話を受ければその黒いシミとやらが関係している可能性は大いにある。
一同が進んでいく中、街は至って正常に見えるとアリシスは視線を巡らせていた。街並みも、人々も、過ごす空気も。時が繰り返しているなどとは思わせない、普通の状態だ。
(見えない壁……恐らくは結界、境界の類。その中にあるものが、全て、本当に正常通り……?)
一見、どれも正常に見える。しかし疑うことを続けながらアリシスたちは時計台へとのぼった。
やはり本日も人は多く、当然スタッフや警備員も常駐している。さてどうするか――と一同が顔を見合わせたところで義実が動いた。
「――地域観光コンサルタントとはその地域の観光資源を掘り出し、より魅力的に引き立て観光資源として一層魅力的にすること。その地域を一大観光地域に仕立てあげるスーパーエージェントである!」
展望台へ向かいながら大きな声でそう告げる義実へ一気に注目が集まる。しかし彼はそれを意に介した風もなく展望台から街並みを眺めて歓声を上げた。
「この街は素晴らしい! 時計だけではない、この町並みもまた観光資源足りうる! エクセレントだ!」
突然おかしくなったとか、そういうことではない。彼は意図的にそれを演じている。
封鎖エリアに入るには正攻法だと難しい。ならば誰かが注意を引き付け、その間に忍び込んでもらう他あるまい。
「おっと、あそこに見えるマーベラスな建物はなんだね?」
客だけでなくスタッフたちの視線も義実へと向いている。扉の前にはまだ残っている者がいたが、キャナルは彼らへ声をかけた。
「ちょっといいっスか? 向こうで怪しい動きをしてるヤツがいて……」
案内する、と誘導し始めるキャナル。誰もいないところに連れて行って、もう逃げてしまったようだとでも言えば納得するであろう。
だが、それだけでは足りないとアリシスはその後を追う。最も確実なのは――邪魔されないよう気絶させること。
(そもそも、ここの警備員は本当に人間ですか?)
封鎖エリアを守る者たち。何があってもおかしくはない。アリシスは行き止まりまで辿り着いた彼らへ神気閃光で攻撃を仕掛ける。
「まぶし……っ」
「不審者か!」
その光に警備員たちはアリシスの存在へ気づいたものの、その意識を手放し床へ転がった。起き上がる様子は……ない。
「人間……?」
「みたいっスね。まぁこれで入れるようになっただろうし――うまく入れよ?」
後半の言葉は残っている仲間たちへ向けて。すぐさまアリシスがそちらへ向かうのを見ながら、キャナルも追いかけたのだった。
「大丈夫、今なら危険は無さそう」
一方、残っていた花丸はファミリアーに封鎖エリアを偵察させていた。仲間たちが視線を逸らしてくれているおかげで入り込むのは前回より容易。中に何者かの姿も見当たらない。
「行こう」
ベネディクトが扉をそっと押すと、ゆっくりと開き始める。人1人分の隙間からイレギュラーズたちは身を滑り込ませ、そっと元通りに閉めた。
「気づかれて……なさそうだね」
花丸は扉の外の様子を伺って息をつき、サイバーゴーグルを取り出す。外からの光が差し込んではいるものの、外に面していないところは薄暗い。
「生物自体はいなさそうだ」
ベネディクトは何かの感情を持っている者がいないかと思いつく限りを照らし合わせていくが、引っかかったとしても扉の外側にいる人間のものだ。
「特に物音とかもしないね……」
「これが問題の黒いシミ、ですか」
花丸がハイセンスで辺りを調べる中、アリシスが注意深く黒いシミへ近づいていく。かなり外側に近い場所についたそれは、一体。
「特殊な構造のものはなさそうっス」
キャナルはギフトで無機物の構造を調べてみるが、これといって――秘密と言えそうな――構造は見つからない。これはこれで収穫である。
「それにしても……」
「ええ」
花丸とアリシスは困惑を浮かべながら顔を見合わせる。
此処に来たならば敵性生物が飛び出して来るかと思ったのに、一向に来ないのである。戦わずに済むのは良いのだが、ここは見られて困る場所でもないのだろうか。
「この街の現象とは関係ない……?」
胡乱げなアリシスの呟きが零れる。いいや、そんなはずは。けれど。
「ふむ……これは」
黒いシミをアナザーアナライズで調べていたベネディクトは小さく唸り、表情を険しくした。どうやら何かに気付いたらしい。
仲間たちの視線が集まる中、ベネディクトは花丸へ視線を向ける。
「以前と黒いシミに変わりはないか?」
「そんなにじっくり見られたわけじゃないけれど……変わってないと思う」
黒いシミの全体を見下ろしながら花丸は告げる。自身でここまでまじまじ見たわけでもないから、確実とは言えないが。
花丸の返答にベネディクトは頷き、再び視線をシミへ落とした。これが街の状態に関係しているかはさておき、確かに『のっぴきならない理由』ではあるのだろう。
「これは――血だ」
血は時間がたつと黒く変わってゆく。しかしこの黒いシミが全て血なのだとしたら、血が流れたばかりのころはあまりに夥しい光景だったことだろう。
シミの正体を聞いて一同は黙り込む。されどいつまでもここに居る訳にはいかない。義実が視線を集めている間に今度は脱出しなくては。
扉の外の様子を窺いながら一同は封鎖エリアから脱出し、客に紛れる。ベネディクトは空へ視線を向けた。ここからは見えにくいが、ドーム状に見えない壁が存在しているのだったか。
(繰り返される時間……偶発的に起きた事故なのか、それとも明確な目的をもって引き起こされた事なのか)
先ほどのアレが空白を埋めるパズルの1ピースとなるかはまだ、わからない。
『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)はツァンラートの新聞社へと立ち寄っていた。それは勿論、まずは『本日の』新聞を得る為に。
新しい1月4日の新聞。前回他のイレギュラーズが持ち帰ったそれとは確かにいくつかの相違点があるようだ。
(やっぱり……物理的に、完全に干渉するのは無理なんだ)
どれだけ繰り返し、街の者を精神操作しているとしても必ず綻びが存在する。それを確認したЯ・E・Dは記者へ交渉を持ちかけた。
「ここに載った魔獣退治の続きのネタだよ」
今回貰った新聞の記事を指し示しながら告げると、記者は身を乗り出さん勢いで食いついた。代わりに他の情報が欲しいのだとЯ・E・Dが告げると内容を聞き返される。
「いくつかあるんだけど、そこまで難しいものじゃないから答えて欲しいな」
挙げられたのはこの街で有名な技師の名前。記者は唸りながらも何人かの名前を提示する。この街には優秀・有名な技師が片手で足りないほどに存在する故に、全てを挙げるのは難しいということだった。
では次にと問うた内容に、記者はそれならと頷く。そこで挙げられた技師は単身この街へやって来て独り立ちし、恋人がいたそうだ。
「恋人」
「ああ。この街の外れにある墓場を守ってる男さ。随分と落ち込んでいてね」
墓守。その存在にЯ・E・Dはぴくりと睫毛を揺らした。
予想。机上の空論。まだ確定ではない。けれどもあまりにも『黒』に近く。
次に目指す場所は、決まった。
(だいぶ遅いけれど、まだ営業している場所もあるのね)
或いは夜更かしな家か。オデットは真夜中も近づこうという時刻に街を空から見下ろしていた。昼に比べれば静かだが、それでも無音とはならない。
灯りのひとつへ飛んでいったオデットはそう、と中の様子を伺う。賑やかな酒場は明るく、他の場所で見るような風景と何ら変わらない。
繰り返していることに気づかず、今日という1日もまた、終わるのだ。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
次回、起承転結の『転』となります。
それでは、またのご縁をお待ちしております。
GMコメント
●ご挨拶
愁です。
この<廻刻のツァンラート>は鉄帝の街『ツァンラート』を舞台とした全4回予定の長編シリーズです。
今回は第2回となります。途中からでもご参加頂けます。
第1回では数名に個別コメントをお送りしています。有益な情報もあるかもしれませんが、それを提示するか否かは各々に一任されています。
今回もとある1日に、皆さんでツァンラートを訪れます。街の中は『1月5日』であるようです。
時系列としては第1回リプレイ(1月下旬)より1週間と少し。2月初旬程度とご判断ください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
未だ不確かな点も多いでしょう。
●プレイングについて
この長編シリーズではパートが分かれています。
プレイングの1行目にパートの数字を、
プレイングの2行目に同行者の名前or同行タグを、
プレイングの3行目から本文を書いてください。
例:
1
【ひよこ隊】
時計台に登ってみよう!
●パート1:情報収集
人々は当然のように生活を続けています。
調査時に繰り返していると判明しているため、イレギュラーズが調査後1回は繰り返していることになります。
何か変化はあるでしょうか? その疑問を解消するため、再び街の調査をする必要があるようです。
●パート2:フードの人影を追う
報告によると人影は神出鬼没、中々に逃げ足が速いようです。危害を加えてくる例は報告がありませんが、イレギュラーズが近づこうとすればふらりと消えてしまうでしょう。
そして追いかけようとすると街中でモンスターに襲われたという証言もあります。とても怪しいです。
シャルル曰く、モンスターは外壁内部にうろつく魔獣と同じか、よく似た種であったそうです。
このパートを選択する場合、住民の安全が前提としてください。繰り返す時間の中であっても、傷を負ったり命を落とした者がどうなるかまで実験するわけにいかないのですから。
被害を出さず、捕まえることはできるでしょうか?
●パート3:魔獣討伐作戦
街は中央に向かうほど盛んであり、逆に外へ向かうほど廃れていきます。外壁周辺は人気のない、あってもスラムのような場所です。ただでさえ人が近づかない場所故に住みやすかったのだろうかもしれません。
彼らは短期間で大量に増え、外壁近くを彷徨いています。本格的な壁の調査をするならば避けて通れない障害です。
魔獣は小型ですが、如何せん数が多くいます。外壁付近の調査にあたって安全を確保するならば、しっかり討伐作戦を立てなければいけないでしょう。
魔獣は脆くも素早く、攻撃力も高いようです。その体が腐肉と粗末な骨でできていること、また攻撃を受ける際に不可思議な力――精神系統の攻撃を受けたことが前回の調査で判明しています。
壁の調査をしたい場合もこのパートになりますが、魔獣討伐が成功しなければ調査できません。
●パート4:その他
自由行動できますが、行動に対しての成功は保証されません。
●過去作
自分が行きたい場所についてだけでも、過去リプレイの一読をすることを推奨いたします。
第1回:<廻刻のツァンラート>隔絶された街
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/5085
●スポット紹介
・時計台『グラヴィアン』
街の中央にある広場へそびえたつ大きな時計台。上へ登ることができますが、今は封鎖されているエリアもあるようです。
高い建物がない限りは地上から良く見えますし、時計台からも街を一望することができます。
・酒場『トワイライト』(夕方~夜のみ)
街にある比較的治安の良い酒場。観光客も来るような場所であり、宿も併設されています。
客は主に機械技師や周辺にある市場の関係者、観光客が多いらしいです。たまに酒癖の悪い者もいるので気をつけて下さい。
・市場『フリッシュ』
野菜、魚、肉、調味料などを扱う普通の市と、主に技師が訪れるような機械部品を卸している市が併設されています。ジャンクパーツなども売っているそうですよ。
朝方であれば食材を買いに来た者がいます。時間を問わず技師たちも訪れているようです。
・新聞社『パピーア』
街に拠点を構える新聞社。印刷所も併設されており、記事を書く者、印刷する者、仕分けから配達をする者と忙しい者が多い様子です。
新聞に取り上げられるようなネタがあればしっかりと話を聞いてくれるかもしれませんが、適当なことと思われてしまったら体よく追い出されてしまうでしょう。
・時計博物館『シュテーウング』
この街で作られてきた時計とその歴史が集められています。様々な年代の、種類豊富な時計が展示されており、中のパーツひとつひとつに至るまで説明がされているのだとか。
また、混沌中でも珍しい時計が展示されているとも言われています。
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