PandoraPartyProject

シナリオ詳細

温もりに爪先を

完了

参加者 : 31 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「やあ、シャルル嬢」
 声をかけられた『Blue Rose』シャルル(p3n000032)は友人の姿に目を細めた。兎のぬいぐるみ――オフィーリアを連れたイーハトーヴ(p3p006934)は嬉しそうににっこりと笑う。
「イーハトーヴは依頼探し?」
「うん。俺でも行けそうな依頼があったらと思って……シャルル嬢は?」
 視線を依頼書の掲示されているところへ向けて、それからシャルルへ戻す。彼女もまたそちらへ視線を向けると、イーハトーヴへ1枚のチラシを出した。
「ここに行こうかと思って……ほら、この前ブラウに教えてもらったとこだよ」
「ブラウに……あ、足湯カフェ!」
 頷くシャルル。どうやらこのチラシをもらうためにローレットへ立ち寄ったようで、少し離れた向こうの方ではブラウ(p3n000090)がチラシを配っている様子が見える。今年に入って開店したようで、モニターを色々な場所から募集しているらしい。
 シャルルとイーハトーヴで足湯カフェのやりとりをしたのは少し前――手紙上でのこと。足湯に浸かりながら軽食を取ったり、簡単なボードゲームができるのだと書いてあったはずだ。
「ねえ、折角だからイーハトーヴも行かない? ……誘いたいなって思ってたんだ」
 ボクからなんて珍しいでしょ、と小さく照れ笑いするシャルル。目を瞬かせるイーハトーヴに『いいじゃない』と語る声が聞こえた。
『濡れずに着いていけるし、あなたも風邪なんて引かなくなるわ』
 抱きかかえたオフィーリアは『心配なのよ』とは言わないけれど、そう思っていることは伝わるからふわりと心が温かくなる。思わず笑みを浮かべてしまったイーハトーヴに、シャルルは「オフィーリア?」と首を傾げた。
 オフィーリアの声が聞こえるのは、イーハトーヴがそう言った贈り物を世界より賜ったから。他の誰にも聞こえはしない。だから彼女の言葉をシャルルには伝えてやらねばならない。
「オフィーリアは優しいもんね」
「うん」
 2人の言葉に、オフィーリアは拗ねてしまったのか照れてしまったのか、何も返さないけれど。イーハトーヴはその理由が後者である気がしてならなかった。



 店内へ入ると明るい女性店員の声が響く。木の使われた優しい色合いの内装で、先はカウンターとテーブルが半々と言ったところか。
「初めてのお客様ですか?
 対面が良ければテーブル席、足を広々伸ばしたい時はカウンター席がおすすめですよ」
 店員はそう告げると『初めてのお客様』たるあなたへ別のコーナーを紹介する。ブックラックには雑誌や新聞などが置かれている他、双六のようなボードゲームからトランプなどのカードゲームまで揃っている。どうぞご自由にということだろう。
 店内へ視線を向けると既にちらほらいる客が見える。若年層が多く見えるが、それ以外の年代の者も思い思いに楽しんでいるらしい。
 利用の際はワンドリンク必須ということだ。さて、席を決めて座ったなら――何を頼もうか?

GMコメント

●オーダー
 足湯カフェを楽しみましょう。

●足湯カフェ
 鉄帝で今年オープンしたお店です。ワンドリンク制です。
 テーブルの下に足湯があります。足湯に浸かりながら軽食をとり、また簡単なゲームなどをして過ごすことができます。多少は雑誌などもあるようです。
 足を拭くためのおしぼりは借りられます。足湯は足首より上くらいまで浸かる水位です。
 モニターという立場は気にせず、寛いでいきましょう。

 席は足を広々伸ばせるカウンター席、同行者と対面にもなれるテーブル席があります。
 テーブル席は最大4人、テーブル同士を繋げることはできませんのでご了承下さい。

【メニュー】
ドリンク
・チャイ
・紅茶(アールグレイ)
・紅茶(ダージリン)
・珈琲
・カフェオレ
・ジュース各種

フード
・サンドイッチ
・ポトフ
・ほうれん草のキッシュ
・ミートパイ

デザート
・ショートケーキ
・ミニパフェ
・パンケーキ
・アイス各種

●イベントシナリオ注意事項
 本シナリオはイベントシナリオです。軽めの描写となりますこと、全員の描写をお約束できない事をご了承ください。
 アドリブの可否に関してはNGの場合のみ記載ください。基本アドリブが入ります。

●NPC
 当方の所持するNPCは、プレイングでお呼び頂ければ登場する可能性があります。

●ご挨拶
 文通からのご縁にて。愁です。
 足湯カフェで静かに楽しく、まったり過ごしましょう。
 それではご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • 温もりに爪先を完了
  • GM名
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2021年02月15日 22時15分
  • 参加人数31/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 31 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(31人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りと誓いと
アオイ=アークライト(p3p005658)
機工技師
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
シルフィナ(p3p007508)
メイド・オブ・オールワークス
紅楼夢・紫月(p3p007611)
呪刀持ちの唄歌い
ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)
懐中時計は動き出す
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
エミール・エオス・极光(p3p008843)
脱ニートは蕎麦から
ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)
ワルツと共に
ラグリ=アイビー(p3p009319)
泡沫の夢
耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う
アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)
不死呪
糸色 月夜(p3p009451)
アローズ・タルボット(p3p009480)
期待の新人
郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼

リプレイ


 いらっしゃいませ。当店のご利用は初めてですか?
 対面が良ければテーブル席、足を広々のばしたい時はカウンター席がおすすめですよ。
 お席が決まりましたら、こちらのおしぼりで足を拭いてお入りくださいね。

 それでは――ご注文をお伺いいたします。



「じゃあ最初は――」
 と言ってドリンクとフード、デザートを1種類ずつ頼んだЯ・E・Dはうーんと足をのばす。成程これは快適だ。周りの邪魔にならないようにお湯で遊びながら、Я・E・Dは運ばれて来た料理を少しずつ、綺麗に完食していく。食レポだってバッチリできるくらいに。
 ――そう、正しきフードファイターは食べ散らかさない。行儀よく綺麗に気持ちよく食べるのだ。
(足湯とカフェが合体した施設か)
 アローズは足元からめぐる暖かさにほぅと小さく息を吐きだし、チャイを口にする。初めてのものは何だって少しばかり緊張してしまうもの。
 けれどぽかぽかと温まるそれと、キッシュを口にしたならアローズもすっかりくつろぎモードである。
(今はこうやって英気を養って、また頑張ろう)
 本当は初依頼を探していたのだけれど、こうした休息も悪くない。召喚されなければ来なかったかもしれない場所だから――尚更、このひと時を大事にしたくなるのだ。
「うぅ、もう少し何か厚着してくればよかったよー……」
「いざとなったら足湯に飛び込めよ。風邪ひいてテント暮らし続行でも助けてやンねェからな」
 体を震わせるエミールを見てそう告げた月夜に彼女はえぇっと視線を向ける。
「助けてくれないのー」
 そうだ、と言ってやればそれまでなのに。その視線にどうしてか根負けした月夜は舌打ちしながらブレザーを強引にかける。
「わー、凄く温かいね」
「黙って着てろ」
 温かいどころか熱い気もするけれど、寒くないことは良い事だ。束の間ニコニコ黙ったエミールだが、不意にある事へ気が付いてあっと声を上げる。
「糸色は寒さ大丈夫? ほら、あたしの体温、お裾分け!」
 とった手はひんやりとしていて、それを急速に暖まり始めた手で握る。嫌だろうか、と伺った先で呟かれたのはただ一言「ちっせェな」とだけ。
「手が温まったら離せよ。こンなところで手ェ繋いで、恋人みてェじゃねーか」
(そう思われるの、嫌じゃないかも)
 なんて言ったら流石に振り払われてしまうかもしれないから。エミールは我慢してね、としっかり手を握ったのだった。
 足湯に浸かったシャルルとイーハトーヴは揃って溜息を洩らす。
「気持ちいいねぇ!」
「ね。体もポカポカしてくるよ」
 ドリンクを頼んでのんびりと待っていれば、イーハトーヴが不意に小首を傾げた。
「オフィーリア?」
「うん。聞いてよ、はしゃぎすぎてお湯を跳ねさせないでね、だって!」
 子供じゃないよと口を尖らせる彼にシャルルはくすりと笑う。オフィーリアだってちょっとはしゃいでる、なんてここで言ったらすぐ『彼女』にバレてしまうから。シャルルにはあとでこっそり教えてあげよう。
「そうだ、デザートとか頼む?」
「折角だもんね。でもどうしよう、迷うなぁ」
 メニューを覗き込む2人。身も心も温めて――そうしたらきっと、今宵は優しい素敵な夢が見られるだろうから。

「ハッ」

 不意にそんな声が聞こえてきて、2人は目を瞬かせた。首を巡らせると、そこにいたのはぶんぶんと首を振って眠気を覚ますリュカシス。手元には雑誌、その前にはミートパイやジュースなどが並んでおり、しっかりくつろいでいる様子である。
「イーさん、シャルル様! こんにちは」
 2人の視線を感じた彼はにっこり。思わず背筋が伸びかけたけれど、本日は『魅惑の怠惰記念日』であると思い出し――彼がそう決めた――姿勢を戻して小さく手を振った。
 本日はとにかく、ぐうたらする日なのだ。
「紅茶を頂きながら湯に足を浸すか。初めての経験だな」
「御主人様もですか」
 ベネディクトとリュティスは顔を見合わせ小さく笑い合う。新しい体験、温まる体。これは悪くない。
「そうだ。此処ではボードゲームでも遊べるらしいんだが――」
 ベネディクトの提案にリュティスは目を瞬かせる。曰く、出来る範囲の願い事をできる権利で賭けようと。
「勿論、イカサマはしない。普通に遊んでも良いが」
「いいえ、断る理由はありません。御主人様が賭けを望まれるのであれば受けましょう」
 リュティスは譲歩しようとしてくれる主に首を振った。ただ、ほんのちょっぴり。
(願い事はいつでも聞いて差し上げるのに)
 なんて疑問があったけれど。リスクというスパイスを望んでいる可能性もあるし、とやかく言うことでもない。
「では、やるとするか――」
「ええ、全力でお相手致します」
 ――こうして、いち従者であるリュティスは勝利と権利を手にしたのである。


「もうちょっと待ってクダサイネ」
 アオゾラはメニューを手にむむんと唸っていた。足湯もカフェも初めてで、ここに書いてあるものが何なのかわからないことだってある。周りとメニューを見てじっくり吟味が必要だ。
(そう言えば、入るのは初めてか)
 足を拭いた回言もメニューを開く。足湯も楽しみにしていたが、それより気になっていたのはデザートメニューである。
 冬だから温かなパンケーキも悪くない。しかし足湯に浸かっているからこその温度差を楽しむのも手である。
 うーん、と唸った回言であるが――そうだ、全部頼んでしまえば良いのでは?
(なんて優雅なひと時でしょう)
 リディアはふふ、と笑みをこぼす。アールグレイの香りは彼女の心を休め、ふわふわパンケーキは幸せで満たしてくれる。それに足を伸ばせて暖まれるのも良い。
(これで私の足がまた一段と綺麗に輝きますね!)
 もちろんアピール目的で来ていないからそんなことはしないけれど。美しいこの足を『思わず見てしまう』ならそれは仕方のない事だもの!
「気持ちいいねー、いい湯だねー」
 呵々と笑いながらまったりする京はオレンジジュースを飲み、さてと目の前に『積まれた』サンドイッチへ手を伸ばす。空手は身体が資本、しっかり食べてしっかり寝る事が大事である。
 しかしながら京は空手ガールなので――甘いものだって見逃せない。サンドイッチを食べ切った暁にはパフェを頂くのだ。
 胃の容量? だって、女の子にとって『甘いものは別腹』だから。
「のびのびー!」
 カウンター席でうーん! と足を延ばしたアウローラは早速アールグレイを注文する。デザートはどうしようか?
「パンケーキにアイスとか乗せちゃダメかな?」
 店員に聞くとOKが貰えた。やったね!
 領地経営を行うアウローラは非常に、とっても糖分を欲していた。故にこれは渡りに船。今後も贔屓にさせてもらおうか、とシロップの甘さを感じながらアウローラは微笑んだ。
(でも鉄帝でこういうの、意外やったわぁ)
 紫月はチョコアイスを食べながら片足をそっと上げる。火照った肌が外気にさらされて気持ちよい。
 足湯で温まるという発想は寒い鉄帝ならではだが、そこにカフェを併設させるのは中々斬新でお洒落だ。けれどこういうひと時は悪くない。
 紅茶は甘く香りたち、うっかり気を抜きすぎ層になってしまう。
(うっかり寝ないようにせんとねぇ)
 なんて小さく笑って。紫月は溶け始めたアイスをまたひと口すくった。
「わ、あ……」
 ちゃぽん、と足を湯につけたメイメイは目をまん丸にする。冷えた足がじんわりと温かい。血の巡りを感じる。
 運ばれて来たサンドイッチとアイストッピングのパンケーキをもぐもぐしながら、その視線は持ってきた雑誌へ。のんびりまったりしながらも、ジュースで水分補給は忘れない。
(いいです、ね。新たな癒しスポット、です)
 しっかりとくつろいで、良かった旨を後日店へ送付しようか。
「中々新鮮だね」
「この辺はクソ寒いし、相応に需要もあるんだろうな」
 リウィルディアとアオイは隣り合って足湯に入る。じんわりとした温かさは温泉とまた違って良いものだ。カフェも兼ねているからのんびりできるというもの好ましい。
「あ、そっちはどんな感じかな。僕のキッシュもあげるから、少しちょうだい?」
「それじゃあ貰おうっと。こっちのも……、はい」
 あーんを所望するリウィルディアに小さく苦笑して、アオイはその口にパンケーキを入れてやる。そして彼女のキッシュを頂いていると不意に肩へ軽い重み。
「リウィル?」
 先ほどまで嬉しそうにパンケーキを咀嚼していたのに、既に舞ったりとしてしまっている。
「ん、気が抜けちゃったか」
「みたいだね。寝たりはしないよ」
 このままこうやって、頭をもたれている程度だ。彼は起こしてあげると言ってくれるけれど、流石にそこまでしてもらうのはと自制がかかる。
 だから、その代わりに――暫し、このひと時を。
「ブーツより他の靴の方が良かったかな?」
「俺達はよく歩くからね。こればかりはまあ、しょうがない所があるだろう」
 アントワーヌと行人はブーツを脱ぎ、おしぼりで足を拭くと湯の中へ入れる。行人なんかは旅の途中でむくみを取るため同じような事をするそうだが、同じような効果があるのだろうか。
「注文はどうする?」
 アントワーヌから渡されたメニューへ目を通し、ぽつぽつと注文する行人。それを待っている間に借りたトランプで遊んで時間を潰す。向かい合って遊ぶ2人のもとへドリンクとデザートが運ばれ、アントワーヌはパフェをひと口すくうと向かいへ差しだした。
「ほら、可愛い口を開けてくれたまえよお姫様」
「へぇ。それじゃあひと口頂こうかな?」
 お姫様扱いにも動揺せず、行人はアントワーヌのひと口をぱくり。その様子を彼はにこにこと見守る。
「そうだ行人君。今度は一緒に温泉に行かないかい?」
「俺でいいのかい?」
 構わないけれども、と告げる行人にアントワーヌはきょとんと目を瞬かせて。それからふふっと楽しげに笑った。
「君がいいんだよ、行人君」



「あしゆ!」
 チラシを見た途端鳴いた――叫んだじゃなくて鳴いた――澄恋は足湯に浸かって蕩けていた。
(疲れが溶けていくようです……)
 いつだって旦那様と式を挙げられるように白無垢を着ているけれど、結構寒いし重たくて疲れる。故に温まりつつ休憩できるスポット、とてもアリである。
(しかも温まることで新陳代謝が良くなるのでいくら食べても実質かろりーぜろ!)
「すみません追加でぱんけーきくださーい!」
 嬉々として注文を重ねる澄恋。甘いもので乙女パワーもチャージだ!
「ふわぁぁぁ〜♪」
 暖かな足湯に入ったミルキィはウキウキとメニューを開き、ジュースとミニパフェを注文する。何という贅沢、そして良い斬新さ。彼女からすればデザートがあるのも非常に高評価である。
(雑誌とかゲームもあるなら、誰かと遊びに来ても良さそう!)
 カウンター席は壁際にも雑誌が用意されている。その1冊を手に取り、ぱらぱらとめくりながらミルキィはのんびりくつろぎ始めた。
「このメンバーって中々なかったと思ってっ!」
 そう言って花丸が集めたのはブラウ、フレイムタン、そしてシャルルという確かに珍しい組み合わせである。
「ちょっとだけ! ボードゲームしない?」
 皆でご飯を頼みながら一戦したいということで、シャルルの後ろではイーハトーヴとリュカシスが「頑張れー!」と応援している。花丸は隣にいたブラウへとメニューを回した。
「それにしても、とっても気持ちいいねー」
「中々不思議なものだな」
 フレイムタンは初めてらしく、脹脛まで浸かった足元を不思議そうに眺めている。そんな彼らを見ているうちに、花丸の瞼はほんの少し重たくなってきて――。
「ハッ!」
 一瞬。一瞬だ。けれども3人にはバッチリ見られていたらしい。花丸は頬を赤くしながら小さく咳払いした。
「クロバさん! ボードゲームと洒落込みませんか?」
「ふむ」
 目を輝かせるシフォリィにクロバは頤へ手を当て考える。ここで遊ぶこと自体は全く構わないのだが。
(チェスとかだとどう考えても負ける……)
 せめて勝ち負けの競えるゲームが良い、とその視線を止めたのは双六的なゲームであった。マス目には人生で起こるような事柄が書いてあるらしい。
「基本は双六と一緒だ、楽しいぞこれ」
 そう告げて惨敗を避けたクロバ。シフォリィは運要素があるなんて、と一時思ったものの。
「あ、この車4人までしか乗れないじゃないですか!」
「家族沢山じゃん。まだ足りない?」
 思わずお湯を跳ねさせるほどに盛り上がった。もっと乗れないと自身の家族を再現できない、と口を尖らせるシフォリィはでもと思いなおす。
「貰われたら別の家になっちゃいますからね……家族になるなら4人がいいです」
「貰われたら、か」
 その先に続けようとした言葉を呑み込んで、クロバは微笑んだ。
 ――他人事のようになんて、言わないさ。
 シルフィナはアールグレイに口を付け、ほっと息を零す。
(初めてですけれど……足からも心も暖まりますね)
 ほっこりとした気持ちになっている彼女はメニューのフード欄へ視線を向ける。暖かくしたいからポトフなど良いだろう。キッシュの素朴な味も好きだから、一緒に頼んでみようか?
「ヴァリューシャ、カウンター席にしない?」
「あら、私はテーブル席でも良いのだけれど?」
 悪戯っぽくヴァレーリヤが告げれば、マリアが眉を八の字にするものだから。冗談ですわよ、と手を繋いでそちらへ移動する。
「も、もぅ! いじわるしないでおくれよ」
 頬を膨らませるも、彼女の楽しそうな表情には弱いから――ううん、彼女には弱いから。一緒にメニューを見るだけで幸せになってしまう。
「デザートも食べたいな!」
「そうですわね……違う種類のを頼んでシェアしませんこと?」
 マリアが彼女の手を握ると、それを持ちあげられてキスされる。ヴァレーリヤの小悪魔な表情が憎たらしくも愛らしい。
「ヴァリューシャっ」
「あら、お嫌?」
「嫌じゃないよ!」
 けど、翻弄されるのはちょっと悔しい。
 そんな中でも足湯は気持ちよいし、ご飯は美味しい。そして幸せにデザートも半分こだ。
「マリィでもイチゴはあげませんわよ!」
「流石に奪ったりしないよー!」
 その後、2人仲良くショートケーキとパフェを食べる姿があったそうな。
「お酒は……ない?」
 呟きと共に耳がしょもん、と垂れる。いやしかし。それでも暖まりながら休憩できるなら悪くない。外に出たら冷えるけど。お酒ないけど。それでも偶には悪くない。
 暗示のようにも思えるそれを考えながら、ミディーセラは珈琲を手に本を開く。人間観察とも迷ったけれど、ゆっくりするならこっちだから。
 ぱらり、と頁をめくる。足湯は温かく、珈琲の香りが鼻を掠める。初めての、組み合わせだった。
「お加減は如何ですか」
「これは、なかなか。チル様、お湯の温度は大丈夫ですか?」
 ヴィクトールの足は腰まで機械故に、熱伝導で冷めてしまわないかと一抹の不安がよぎる。けれども未散はいいえと首を振り、脚をぐっと伸ばした。気持ちよい。……だけれども。
「ヴィクトールさま。……今更ではありますが、若しかして、連れ回してしまっているでしょうか」
 それだけが未散にとって気がかりだった。未散が行きたいという言葉のままに彼は着いてきてくれるけれども、それは不本意ながらではなかろうかと。
「お気になさらずともへいきですよ。ここは実に心地よい場所ですね」
 自分も楽しんでいるのだと微笑むヴィクトール。それにほっとした未散は許しを得てほんの少し、距離を詰める。その肩にとん、と頭を寄せて未散は瞑目した。
「ヴィクトールさま。ぼくの頭、枕にしても構いませんよ」
「それでは、少しだけ」
 頭を寄せ合う2人。今、王(未散)の頭上に戴かれて許されるのは、王冠と彼だけ。
 だから、もう暫し。温もりと共に微睡もう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 お店は皆さんの感想などを集め、今後もよりサービスの向上に努めていくそうですよ。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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