PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ひと時の休息を

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――ささやかな祝いの会を設けたい。

 そう告げたのはマルク・シリング(p3p001309)だった。
 先日行われたラサでの全体作戦では、概ね勝利を得たと言って良いだろう。盗賊たちは退け、囚われていたレーヴェン・ルメスの救出も叶った。彼は特に後者である『レーヴェン・ルメスの救出』に関して祝いたいのだと『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)に相談したのである。
「祝勝会、みたいなものですか?」
「そんな感じ、かな。本当に大規模でなくていいんだ。軽く話したり、ご飯を食べたりできたらって思うんだけれど」
 ささやかなことに拘るのは祝う相手を思ってのことだろうか。レーヴェンであれば気にしないようにも思えるが、逆に自分のことだからこそ気にしてしまうと言うこともある。
「うーん、そうですねえ。本当に小さなものなら準備もそこまで時間がかかりませんし、大丈夫だと思うのです!」
 場所と食事の手配さえできれば良いとユリーカは言う。レーヴェンがイレギュラーズでない以上、ラサで場所を探さなければならないだろう。首都ネフェルストに近い酒場を予約できればイレギュラーズたちも集まりやすいに違いない。
「僕が言い出したことだから、僕がその辺りは動こうと思ってるよ」
「助かるのです! ファルベライズの新しい情報もどんどん舞い込んできていて、なかなか忙しいので」
 ユリーカが示しているのはファルベライズのこれまでより深部にて発見された迷宮、そしてホルスの子供達と呼ばれる存在だろう。
「集まった皆さんにも依頼のご協力をお願いしたいのですが、祝うための会ですものね」
 野暮な事は言わないのです、と笑うユリーカにマルクもまた笑みを返す。ローレットからの依頼もこなさなければならないが――今、ほんの少しばかりは休息のひとときを楽しませてもらおう。



「と、言うわけなんだ」
「私を? 祝う会?」
 目を丸くしたレーヴェンはそんなことしなくてもいいのにと照れたように笑う。その頬にはガーゼが貼られているし、服の下にもまだ手当ての跡はあるのだろう。それでも本人が思うよりずっと軽いものだと救出直後は言っていた。
『骨も折れてないし、死んでもいないし』
 ひどいアザができこそすれ、動けないほどの重症でも命を落とすわけでもなかったのだから、と。だから今も『そんなこと』と思うのだろう。
「僕がやりたいと思ったんだ。体が辛くないのなら、君の帰りを祝わせて欲しい」
「ふふ、私は別に構わないけれど。そうだなあ、私だけじゃなくて皆の帰りを祝う会! これならどう?」
 大規模な作戦に参加してきたのだ、生きて帰ってこられると言う事は幸せなのだとレーヴェンは笑う。
 かくして、ささやかながらもラサにて宴会が催されることとなったのであった。

GMコメント

●宴会
 ラサの酒場を借り、宴会をします。
 時刻は夕方〜夜。特に時間の指定は設けられないため、その辺りの時間に来て好きに飲み、気が済んだら帰るような場です。
 相談の場で同じ卓について飲む人を募集したりしても良いでしょう。
 食事は肉肉しいものが多く、野菜は比較的少なめです。漫画肉やステーキ、揚げ物などが皿の上を占めている事でしょう。
 飲み物はアルコールからジュースまでなんでもござれ。中には他国の飲料も混じっているようです。

 給仕の必要はありませんが、希望があれば手伝えます。

●NPC
 シャルル、フレイムタンに関してはプレイングで記載があった場合、登場する可能性があります。

●イベントシナリオ注意事項
 本シナリオはイベントシナリオです。軽めの描写となりますこと、全員の描写をお約束できない事をご了承ください。
 アドリブの可否に関してはNGの場合のみ記載ください。基本アドリブが入ります。

●ご挨拶
 愁と申します。マルクさんのアフターアクションです。
 レーヴェンはそのあたりにいます。ご機嫌に酒を飲んでいると思います。
 それでは、よろしくお願い致します。

  • ひと時の休息を完了
  • GM名
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2021年01月18日 22時02分
  • 参加人数30/30人
  • 相談6日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
ウォリア(p3p001789)
生命に焦がれて
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
エマ・ウィートラント(p3p005065)
Enigma
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
ギンコ・キュービ(p3p007811)
天使の選別
リサ・ディーラング(p3p008016)
特異運命座標
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
エステット=ロン=リリエンナ(p3p008270)
高邁のツバサ
カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
アイシャ(p3p008698)
スノウ・ホワイト
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
チヨ・ケンコーランド(p3p009158)
元気なBBA
久遠・N・鶫(p3p009382)
夜に這う
耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う

リプレイ


(飲まないとやってられませんね)
 カイロがそうして立ち寄ったのはイレギュラーズで集うとされていた酒場。まだちらほらとしか姿がない中で彼はレーヴェンの姿を認める。丁度向こうも気づいたか。
「生きて帰って来られた様で何よりですよ。お疲れさまです」
 奢りましょうか? なんてカイロにしては珍しい言葉が出て来る。そう、金に目がない彼が『奢る』だなんて珍しいにもほどがある。そんなこと露知らずな彼女はそれじゃあと嬉しそうに笑ってみせるけれど。
 滞在時間は短く、自らも高い酒を飲んで肉を詰め込んだなら――修行の再開だ。
「あっという間だったっすねぇ」
 その背を見送ったリサもまた肉にかぶりつく。脂と酒が良い具合でいつまでも食べていられそうだ。
(私、此処に混ざっててもいいんすかね?)
 レーヴェンの事もあまりよく知らないのにと思いはするが、そこはそれ。彼女自身も『皆の帰りを祝う会』と言っていたし、それが楽しくなるよう盛り上げればきっと問題ない。メイビー。
「あ、こっちでやってるっすよー!」
 故に。閑散とした雰囲気にならないよう、リサは新たにやってきたイレギュラーズへ大手を振った。それに気付かないわけもなく、寄って行ったキドーはレーヴェンが成人していることに驚く。
「ごめん、ごめんて!」
「あはは、気にしてないよ!」
 からりと笑ったレーヴェンへ――水を差すようではあったが、キドーはコルボについて問うた。
「愉快な話題じゃねえが……俺は知りてえんだ。些細な事でもいい」
「ん? んん……そうだなあ」
 からん、とグラスの氷が鳴る。レーヴェンは暫し目を伏せて、それから小さく呟いた。

「――御伽噺を、本当に信じているみたいだった」

 あんなにも強い盗賊が、子供騙しな御伽噺を信じる――その理由は。
「お隣いーい?」
 その雰囲気を一転させたのはソアだ。どうぞと言えば彼女はにこにことレーヴェンの隣へ。ソアがちらりと視線を向ければ、手当ても必要ないくらいに小さな傷が見えた。
「もう平気? 痛くはない?」
「そっちこそ」
「ボクは大丈夫! 強いし怪我だって直ぐに治るもの」
 元気いっぱいとアピールしてみせれば彼女が笑う。どうやら手当てされた箇所もそこまで酷くはないらしい。
「これ美味しかったよ」
「お肉! いっぱい食べて良くなって、それに強くならないと!」
 勧められた漫画肉にソアは目をキラリ。次はあのパカダクラをステーキにしてやるのだと決意を燃やす中ラダも訪れる。
「ああ、レーヴェンは成人してるのか」
「ラダ、キドーと同じこと言ってる」
 そんなに若く見える? と楽しそうに笑うレーヴェン。彼女はお酒で、ラダはソフトドリンクで乾杯だ。
(良かった。本当に元気そうだ)
 彼女自身は気にしていないかもしれないが、ソアといいラダといい気にしている者はそれなりにいるのだ。
「そう、いつも思ってたんだけどレーヴェンの服装ってすごくカラフルだよな」
 好きなのかい? と聞くと――レーヴェンの目が見て分かるくらい輝いた。好きらしい。
 これから彼女の長い長い話が始まることを、ラダはまだ知らなかった。

「ぶはははっ、こりゃ腕が鳴るな!」
 ゴリョウは目の前の料理に腕まくり。彼が担当するのは手がつかずに冷めたそれらのアレンジだ。
 漫画肉の骨から肉を落とし、薄く切って野菜と挟む。こちらは蒸し物だ。一方サイコロ上に切ったステーキは他の具材を合わせてビーフシチューに。
 ラサは他国より比較的暖かくあるものの、それでも冬は冷える。酒だけでなくしっかり温まってもらおうではないか。
「こっちも頼むぜ!」
 ゴリョウが出した料理と、他料理人が出した料理を配膳していくのはチヨだ。その見た目のそぐわぬ働きっぷりで、これからピークを迎えるだろうフロアへ肉やら酒やらを運んでいく。
「ほい、ビーフシチューお待ちどう! こっちはラサ名物・砂蜥蜴の串焼きじゃよ~!」
 チヨは新たな料理を出しては空になった皿を下げる。団体客(イレギュラーズ)が来るとあればお節介の血が騒がないわけがない。彼女の大先輩にあたる彼らは食欲も旺盛である。
「ええのええの~~~。どんどん食べんしゃい!!」
 ほっほっほと笑うチヨに寄る影がひとつ。イナリは今しがた持ってこられた串焼きに興味を示したようだった。
「蜥蜴の肉? ってどんな感じなのかしら」
 焼き鳥のような触感だと聞くと尚更興味が湧いて、1本ぱくりと食べてみる。さっぱりとした塩味が口腔に広がった。
「ん、美味しい! 調理方法とか聞けるかしら……?」
 物は試し。イナリは調理場へ声をかけに向かったのだった。

「ねえねえマリィ、これ頼んで2人でシェアしませんこと?」
 酒好きの彼女なれど、ラサでというのは機会が少ない。目をキラキラさせるヴァレーリヤにマリアから否やの声があるはずもなく。
「でもあんまり飲み過ぎちゃ駄目だからね?」
 なんて釘を差してはみるけれど、彼女の言う通り自分がいるのだから何があったって問題はない。
「ラサの料理は豪快だね!」
 運ばれて来た骨付き肉を頬張るマリアにヴァレーリヤが私も! と口を開ける。食べさせてもらったならお返しだ。
「君にもらう料理は最高だね♪」
「ふふ、私も!」
 ……なんてラブラブイチャイチャしたのも束の間。あっという間に酔いが回ってきたヴァレーリヤはこてん、とマリアの肩へ頭を預けた。
「ヴァリューシャ? 疲れもあるのかな」
 忙しかったものね、と撫でてくれる手が心地よい。ヴァレーリアは安心感に包まれて、夢と現の狭間を揺蕩い始めた。
「エルスさんおつかれさまッスよ! どうぞどうぞ一杯!」
「ふふ、ありがとう」
 鹿ノ子に酌をしてもらったエルスは彼女と軽くグラスを合わせる。こういう宴会は士気が上がるから良い――と言いたいところだが、先の戦いについては反省すべき点もある。
(やはり恐怖が勝ってしまったのは情けなかったわ……)
 宝石竜との戦い。『あの方』と共闘できたのは嬉しかったけれど、と表情が忙しないエルスに鹿ノ子は「有難いっスねえ」と微笑む。
「自分はラサ出身ですけれど、すっかり豊穣の方で手一杯で」
 血の繋がりがなくとも『家族』と呼べる者たちが住まう地だ。気がかりである反面、中々あちこちと顔を出せないという現状である。
「そういえば鹿ノ子さんにとっては故郷になるのね。どうして豊穣に……?」
 不思議そうなエルスの問いに鹿ノ子は目を瞬かせ、へらりと笑う。この想いに名を付けるには早い、けれど――。
「それは……エルスさんと同じようなものッスよ!」
 エルスにとってディルクがそうであるように、鹿ノ子にも頑張りたいと思える人がいる。
(このままではいけません……明日のローレットが死屍累々たるありさまに!)
 そんな女子トークの傍ら、給仕として奔走する姿がまたひとつ。茶を飲みつつ食事を、とやってきていた澄恋である。ラサらしいと言えばラサらしいのかもしれないが、もう少し工夫があるだろうと澄恋は立ち上がったのである。
 そう、今こそ花嫁修業の成果を発揮する機会!
「さあさあ皆様、どうぞお召し上がりください!」
 こうした影ながらの努力によりイレギュラーズたちの胃腸肝臓は守られるのだった。
「レーヴェンさん!」
「はじめましてとおかえりなさーい!」
 レーヴェンのいる卓を訪れたのは花丸と、誘われたフランである。
「こっちはお友達のフランさんっ!」
「フランだよー! 頑丈だし回復もできるし、護衛とかは任せてね!」
「頼もしいね。花丸と一緒なら百万力ってとこ?」
「そう!」
 レーヴェンの言葉にフランはにっこり。視線を向けると花丸が小さくウィンクを寄越す。どうやらレーヴェンの為を思って人脈を広げるため連れてきたようだ。
「さあ、食べて飲んでお話して! 今日は楽しく過ごしちゃおうっ!」
「怪我も早く治さないとね」
「そうそう! それに美味しいご飯だー!」
 じゅるりと涎を垂らしそうになりながらフランがジョッキ(中身はジュース)を持つ。
 改めて彼女が無事であったことに。そして皆が無事に帰って来られたことに。まだ全てが終わったわけではなく、傷も言えてはいないけれど――ひとまずは、乾杯!
「おっ、俺も混ぜてくれよ!」
 そこへ声を上げたのはぽっこりと食べて丸くなったカイト。肉に酒にとしっかり食べ、知らぬ者同士でも楽しく語り合って笑い合う。海洋出身の彼は宴会の楽しみ方をよく心得ているのだ。
「勿論っ!」
「まるまるしてる……じゅる」
「ぴぃ!?」
 フランの反応に少しばかり怯えるものの、冗談だということもわかるとも。冗談だよな?
「ここで英気を養ってリベンジだ! カンパーイ!」

「こうしてサシで飲むのも久々だな」
 テーブルに広がる肉料理。それに合わせた発泡酒を飲んで、行人とベネディクトはぽつぽつと近況を交わす。
「俺はまあ……特に代わり映えしていないな」
「俺も変わらない、と言いたいが……もっと心置きなく旅をしたいよ」
 行人はそう告げて苦々しく笑みを浮かべる。帰り道(もしも)の事を考えて行く道は一方通行でなく――まるで往路と復路、旅行のようじゃないか。
「次の大きな戦いも、きっとそう遠くない内に起きるのだろうな」
「ああ、やだやだ。ここ数年で戦ばかりだ……」
 例え変わらず在ろうとしても、変わっていないと思っていても、世界情勢は常に動き続ける。不変などありはしないのだから、何も起こらない期間などそう長くはないだろう。
 けれど――背を預けられる友と戦うことができるなら、そう思ったならば悪いものでもないかもしれない。
「――偶然とは言え貴女の救出に一役買わせて頂いた身、ちょっとしたご褒美があっても良いのではないかと思うのですよ」
 ごほうび。とレーヴェンが目を瞬かせる。そうですと寛治は頷いた。
 とはいっても無体な事をする気はない。簡単な事で、彼を知る者からすればすぐ思い至っただろう。
「絵のモデルになって頂きたいのですよ」
 きらりと光るメガネ。そう、彼はファンドマネージャーである。
「今後、ラサのモデルの開拓にも力を入れていこうと思いましてね」
「モデル。なんだか恥ずかしいけど、私でいいなら機会のある時に!」
 頷くレーヴェン。皆、そのうちレーヴェンのファンドが見られるぞ!
 少し様子でも見に行くかと立ち寄ったウォリアは、戸口でうろうろするフラーゴラに視線を向ける。一体どうしたと言うのか、と思っていれば彼女もウォリアに気付いたらしい。
「お酌したいなって……」
 しかし先の依頼には縁がなく、踏み込んで良いものかと二の足を踏んでいたらしい。
「……気の回る事だ」
 そう呟いたウォリアは共に店内へ入る。元々少しは見て帰る予定だったのだ、そこに同伴者がいようといまいと変わりない。2人はより大きなグループへと混ぜてもらい、乾杯をすることになった。この宴自体を取り仕切ったマルクのいるグループである。
「それじゃ、レーヴェンさんを助けられた事と、皆の無事の期間を祝して。お疲れ様」
 乾杯、の声には既に何度か乾杯を済ませている者たちの声も被る。こういうのは白けなければ何回やったっていいのだ。
「いえーい、かんぱーい!」
 しにゃこのような未成年はジュースで。成人していればお好みで。その後は近くの者と思い思いにジョッキを合わせ、語り合う。
「こんなおじさんだけど今後ともよろしくね」
「おう、これを機によろしく頼むぜ!」
 ガチンとジョッキをぶつけ合う鶫とルカ。アーリアも酒を手にその輪へやってくる。
「うふふ、乾杯すれば初めましてでも今から友人よぉ」
「お、アーリアじゃねえか。一緒に飲んでみてえと思ってたんだ」
 ルカの誘いに笑いかけたアーリアの元へ、ウィーラントがラサの酒を持ってくる。折角飲めるものが多いのだ、飲まなければ勿体ない。
「肉もうめーですよ! あ、フレイムタンさん!」
「おや、こんなところにいるとは意外だな」
 しにゃこがもっしゃもっしゃと肉を食べていると、フレイムタンと目が合う。確かに未成年が酒場にいる事は早々ないが、騒げる場である。我慢できようものか!
「ルカ先輩も今日はたくさん癒されていってくださいね! なんならお酌ぐらいしてもいいですよ!」
 ふふんとドヤ顔のしにゃこだが、これでも彼を心配しているのである。頻繁に無茶をして、怪我をして帰ってくるのだから。
「レーヴェンさん、初めまして。ご一緒してもよろしいですか……?」
 アイシャが名乗ってそう問えば、返ってくるのは笑顔。嬉しそうに隣の席へ座れば、早速レーヴェンがあれやこれやと料理を進めてくれる。ここは彼女のお勧めを選んでもらおうか。
「そういやフラーゴラ、好きなやつの話が聞きたいんだってな?」
 ルカは彼女へ視線を向ける。明らかの彼女の瞳が輝いた。その『好きなやつの話』と言えば――あの宝石竜の依頼である。
「あの依頼はワタシのお師匠先生もいたし……好きな人もいたから、聞きたい」
「ほう、宝石竜にはわっちも興味がありんすな」
「あっ私も私も!」
 人ではないが竜にウィートラントとアーリアが視線を向ける。敗戦ではあったものの、やはり強い相手との戦いと――結果的にはそれを退けた活躍には人が集まるものだ。
「もし突破されていたら、もっと甚大な被害が出ていただろうしね」
「そうよぉ! 夢の都は悪夢の都になっていたもんだから」
「こっちではそんなことになってたんだね」
 レーヴェンが目を瞬かせ、エステットもふんふんと相槌を打つ。時には感想も述べているのだが、敢えて空気のような――誰も絡んで来なさそうな――事を言っているので誰も絡んで来ない。予定通りである。美味しく食べて美味しく飲んで、話は聞いて楽しむ。これもまたひとつの楽しみ方である。
「無事にネフェルストを守れてよかったよ。レーヴェンさんも連れて変えて来れたし、ね」
 マルクは皆へ微笑みかける。まだ遺跡の謎も解き明かされてはいないが、今日この時くらいは気を抜いても許されるはずだ。
 給仕ばかりだったフラーゴラが食べなさいと勧められれば、一緒に居たウォリアもまた勧められる。敵の魂や炭、骨を喰らっていた身からすれば味も栄養もあったものではないのだが――。
「ご飯食べるのは美味しいよ……知見や世界も広がるし……」
 食べてくれたらいいな、みたいな視線を感じてしまえば無下にすることもできない。幸いにしてこれが初めてではなく、ファントムナイトの折に少しだけ食べたことがある。支障はない。味もないが。
「……よかったら、ワタシ料理得意だから……今度何か作ってみていい……?」
「オレに?」
 随分と物好きなとフラーゴラを見る。だがこれもまた無下にするのは騎士の沽券に関わるだろう。作ってみろと言われたフラーゴラは嬉しそうに、小さく微笑んだ。
「みんなすごい経験をしているんだね。俺も初めての依頼のお話をしていいかい?」
「勿論よぉ、聞かせて聞かせて!」
 鶫の言葉にアーリアがにっこりと頷く。色々な話が聞けるとそれだけ酒が進むのだ。勿論話をしながらも食事だって忘れない。だって折角の宴会だもの!
「! とてもジューシーですね」
「脂がのってて美味しいよね」
 大きな肉に齧りついたアイシャが感動する横でレーヴェンも躊躇いなく齧りつく。きっと彼女は混沌中の色々な料理を食べてきているのだろう。
「アーリア様、わっちと飲み比べの勝負といたしんしょう」
「いいわねぇ、飲む量なら負けてられないわぁ~!」
「お、なら俺も参加するぜ」
 ウィーラントの宣戦布告にアーリアが乗り、さらにルカも乗ってくる。相手は悪いが酒に弱いわけではない。途中までならついていけるだろう。
「楽しそうだね」
「ね、私はあそこまで飲めないけれど」
 マルクの言葉に苦笑を浮かべるレーヴェン。その背に映えた翼にアイシャは目を細める。
 鴉の翼は黒く艶やかで――まるで、優しい夜の闇みたい。
「? どうしたの?」
「……いいえ。折角の宴、一曲お聞きいただいても?」
 彼女と、皆の期間を祝うラサの歌。アイシャが紡ぐそれは優しく温かく、鶫はそれを肴に目を細める。
「やっぱり、こういう席は良いモノだね……」

 賑やかな夜は、やがて朝を迎える。そうしたらまた――気持ちを新たに頑張ろうではないか。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 さあ、これからも頑張っていきましょう!

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