PandoraPartyProject

シナリオ詳細

明けの光に何想ふ

完了

参加者 : 38 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「あ!」
 振り返った『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がブラウ(p3n000090)の姿にパッと表情を輝かせる。
「ブラウさん、おかえりなさい!」
「戻りました。すっかり年末ですねー」
 はぁ、と指に息を吹きかける彼は人間姿。人混みではボールのように蹴っ飛ばされるから、といつものひよこ姿ではないらしい。
「カムイグラも楽しかったけれど、やっぱりここが落ち着きます」
「ブラウさんも情報屋になって暫くですからね。でもボクに比べたらまだまだなのです。なんたってボクは敏腕美少女情報屋! 年末のイベントだってバッチリリサーチ済なのですよ!」
 ババーンと羊皮紙を突き出すユリーカ。それをブラウが受け取ると『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)がその姿に気づいた。
「あら、おかえりなさい。ルビー・レッドを見に行くの?」
「ルビー・レッド?」
「その手に持っているものだ」
 頭上からの声にブラウがびっくりして顔を上げると、カムイグラでも何度か会った人物――『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)が笑みを浮かべる。嗚呼、けれど大呪の事件が終わったあとは特に来ていなかったか。
 フレイムタンに促され、ブラウは羊皮紙に目を通す。端的に言えば、カムイグラの地で初日の出を見ようということであるらしい。
「初日の出を見るのに良い場所があるそうだ。行くなら寒い場所だから暖かくすると良い」
「僕あそこから帰ってきたばかりですが??」
「ダッシュで行けば間に合うのです!」
 グッとサムズアップするユリーカ。イレギュラーズではないブラウは船に乗り、静寂の青を抜ける必要があるのだが――間に合うのだろうか?
「ブラウもイレギュラーズだったらあっという間なのにな」
 それを聞いていた『月天』月原・亮(p3n000006)は苦笑い。でも、と亮は続ける。
「そこで願うと叶うらしいぜ」
 ありきたりな話だけれど、人とは願わずにいられない生き物だ。そしてやっぱり願うのなら叶ってほしいと思うのも道理なのである。
「もしかしたらリリファの胸も……ないか!」
「胸が何ですって???」
 ケラケラ笑った亮の背後からリリファルゴン、もとい『永遠の0・ナイチチンゲール』リリファ・ローレンツ(p3n000042)がぬっと現れる。なんというか称号がもう、なんか、ねえ。
「ねえ。胸が、何ですって?」
「お、落ち着けリリファ――」
 ムキャァアアア、ぐわああああという鳴き声と悲鳴を他所にブラウは再び羊皮紙へ視線を落とす。未だ静寂の青は安全と言い難いが、それでも気になることは事実。
「……行くの?」
「行ってみますかねえ……、……ん?」
 答えてから振り返るブラウ。そこにいたのは水色の――。
「あ、ええと……レライムさん?」
 ん、と頷く『ぷるぷるぼでぃ』レライム・ミライム・スライマル(p3n000069)。どうやら彼女も行くらしい。
「いつか、火を吹けるように」
 そう告げる彼女――あるいは彼――は本気だ。スライムが火を吹けるのかどうかはさておいて、こういった願い事をする者も一定数いるようである。
「フレイムタンさんは?」
「我は差し当たって、個人的な願いというものは思いつかないが……初日の出を見に行くだけでも良いだろう?」
 新年という記念あるタイミングなのだからと告げる彼にブラウは頷いた。
「そういうことであれば僕も行きましょう! いざ、カムイグラ!」
 こうして帰ってきたばかりの彼は、再びカムイグラの地を踏むために飛び出したのだった。

GMコメント

●すること
 カムイグラの山で初日の出を見る

●ロケーション
 カムイグラの東方にある山です。登りやすい山で早くから朝日を拝めるということもあり、イレギュラーズだけでなく一般人も訪れています。
 特に屋台などは出ていません。温かい飲み物などは各自でご用意ください。

 この山に登って朝日を拝み、願い事をすると叶うと言われています。真偽の程は定かでありませんが、中には願い事をせずとも『ここからとても綺麗に見えるから』という理由で朝日を拝む人もいるようです。

●イベントシナリオ注意事項
 本シナリオはイベントシナリオです。軽めの描写となりますこと、全員の描写をお約束できない事をご了承ください。
 アドリブの可否に関してはNGの場合のみ記載ください。基本アドリブが入ります。

●NPC
 当方のNPCはについて、プレイングでお声がけ頂ければ登場する可能性があります。

●ご挨拶
 愁と申します。
 今年もお世話になりました。まだOPやリプレイを出すとは思いますが、節目のシナリオなのでご挨拶しておきます。
 あなたは初日の出に何を願いますか?
 それではどうぞ、よろしくお願い致します!

  • 明けの光に何想ふ完了
  • GM名
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2021年01月09日 22時05分
  • 参加人数38/∞人
  • 相談6日
  • 参加費50RC

参加者 : 38 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (38人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
桐野 浩美(p3p001062)
月光
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
紅獣
メイメイ・ルー(p3p004460)
meimeiめいカー
風巻・威降(p3p004719)
気は心、優しさは風
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
マリア・レイシス(p3p006685)
雷はただ前へ
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
秋の約束
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀の約束
月羽 紡(p3p007862)
二天一流
アルム・カンフローレル(p3p007874)
両手にふわもこ
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
黒影 鬼灯(p3p007949)
零れぬ希望
ソロア・ズヌシェカ(p3p008060)
豊穣の空
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
曇銀月を継ぐ者
浜地・庸介(p3p008438)
凡骨にして凡庸
カルウェット コーラス(p3p008549)
新たな可能性
シガー・アッシュグレイ(p3p008560)
スモーキングエルフ
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
希紗良(p3p008628)
鬼菱ノ姫
ブラッド・バートレット(p3p008661)
0℃の博愛
笹木 花丸(p3p008689)
はなまるぱんち
瑞鬼(p3p008720)
幽世歩き
ラウル・ベル(p3p008841)
砂の聲知る
ユージェニー・エンデ(p3p008892)
ぽんこつ魔法使い
金枝 繁茂(p3p008917)
背負い歩む者
雑賀 才蔵(p3p009175)
アサルトサラリーマン
グリジオ・V・ヴェール(p3p009240)
灰色の残火
藪蛇 華魂(p3p009350)
殺した数>生かした数
アセナ・グリ(p3p009351)
灰色狼
メルティメルト(p3p009376)
大きいことは良いこと
久遠・N・鶫(p3p009382)
夜に這う
獅子神 伊織(p3p009393)
獅子心王女<ライオンハート>
澄恋(p3p009412)
花嫁キャノン

リプレイ


「流石に朝方は冷え込むっすね……」
 浩美は毛皮を着こんで山道を歩く。少しは耐性があるとはいえ、冬の朝と言えば最も冷え込む時間帯だ。
(でも、今日まで生きていられたからこそって気もするっす)
 去年は絶望の青を超えてこの地へ辿り着き、また妖精の国へも訪れていた。危ないことはただ生きていくより多かっただろう。
(来年もまた、生きて年越しを迎えられますように)
 そう願いながらぐいっと一杯いくとしようじゃないか。
「あ!」
 ラウルは人だかりを――山頂を視界に入れて声を上げる。わくわくする山登りもおしまい、綺麗な空気を沢山吸い込んでラウルはきょろきょろとあたりを見回した。家族で来ている者もいるらしい。自分もそうして来たことはあるが、あの時はさしたる特別感もなく見ていたと思う。
(そういえば、願い事をすれば叶うって話だっけ)
 少しずつ明るくなってきたし、願い事を用意しておかなければ。手を組むラウルはふとその時の――以前の初日の出を思い出した。それを眺める家族の顔も。
(……やっぱり家族に会えますように、かな)
 この旅の最中で、どうか巡り合いますように。
「そういえば夫婦になってから初めての年明けかぁ」
 ルーキスとルナールは互いで暖を取りながら澄んだ空を見上げる。これから毎年見られる初日の出、その始まりの日。
「うちの奥さんは何を願うのかな?
「んー、いつも通りだよ?」
 かくりと首を傾げたルナールと同じようにルーキスも首を傾げる。感慨深くはあるけれど、だから特別なことを願うつもりはない。家内安全に無病息災である。
「改めてまた1年、一緒に歩いていこう」
 ルーキスが顔を上げれば、彼は何とも言えない苦笑を浮かべていて。
「……まさか2人して同じことを願うとは思わなんだ」
「あれ、一緒だったの」
 くすくすと笑ったルーキスは彼へもたれかかる。これから1年、またその先も。例え2人に何が起こったとしたって離れることはないだろう。
 もう新年か、と瑞鬼は集まってくる人々、そして神使へ視線をやる。まさか彼らがやってきて大戦が起こるとは思わなかったが、退屈を持て余していた瑞鬼にとっては良い刺激ともなった。独り立ちした子らに居場所がバレてしまったのもまあ、致し方ない事。
(これからも火種は燃え盛るじゃろうて)
 休む暇はないことだろう。それはそれで暇がなくて良いというもの。だから――これくらいは願っても良いだろう。
(神使たちが健やかになれるようにと、な)
 煙管から煙をくゆらせて、瑞鬼は目を細める。小さなご褒美くらい神ならくれることだろう。
「ぶはははっ、ここまでお疲れ様だな! 温かいもん食って元気出してくれ!」
 出張ゴリョウ亭――ゴリョウの出した屋台は大賑わいだ。すまし汁と焼きおにぎりと簡素だが温かい料理は人々の体を暖まらせる。鶫はそれを見て思わず焼きおにぎりを注文した。
(願い事は特にないけど)
 それでも綺麗な景色を見る良い機会だから、と。持参の飲み物と焼きおにぎりは温かく、澄んだ空気は冷たいが美味しい。
「ありがとうな! お、オメェさんもどうだい?」
「あら、頂こうかしら!」
 登ってきた伊織にゴリョウが声をかければ、温かな気配に彼女が顔を綻ばせる。寒くてはアイドルとあっても声が出ない。
「貴方も初日の出を見に? 願い事をしますの?」
「そいつぁすでに叶ってるんだよなぁ」
 問われたゴリョウは視線を客へ向ける。温かな料理にほっとして笑顔を見せる彼らこそが願いの具現。この屋台で料理を振る舞った時点で叶っているのである。
「まあ、素敵な願いですわね! 私も負けられませんわ!」
 伊織はにっこり微笑んで太陽が良く見えそうな位置に。この日、この時から彼女のローレット人生が始まるのである。
「願掛けついでに歌いますわよ! 未来のアイドル、獅子神伊織をよろしくお願いですわ!」
 美しき光景には相応の歌を。伊織の歌は――曲のジャンルは置いておくにしろ――どこまでも響いていく。
 ゴリョウは次にやってきた者へも声をかけ、しかしその手に持つものを見てほうと小さく呟いた。
「甘酒か」
「元いた場所にも似たような風習があってね」
 才蔵はカップに注いだ甘酒を周囲に配りながら微笑む。異世界に来てしまったものの、どこか親近感の湧く場所だ。寒い中ではあるが暖かいコートに身を包み、温かな甘酒を飲めば日の出までの時間も潰せるだろう。
「ああ、お金は取らないよ。しっかり温まってくれ」
 金銭を出そうとした者に首を振った才蔵は明るくなる空に目を細める。日が出たらこの世界でも良い仕事ができるよう願ってみようか。
「あ、ブラウさんいたっ」
 再びカムイグラの地を踏んだブラウへ手を振ったのは花丸――と、メイメイ。ブラウと一緒に初日の出を見たい面々である。メイメイは蹴飛ばされてしまわないように、とブラウを抱きかかえ新年の初モフモフ。
(ふかふかで、まるくて。太陽のようですね)
 その感触を楽しんでいると、ぐるぐると山頂を回っていたカイトとばったり。彼もまたブラウを探していた1人である……というのも。
「やっぱ多いな。ブラウ、肩車するか?」
「確かに……初日の出が、見えないかも……しれませんね」
 カイトを見上げるメイメイ。人混みの中では昇りきった初日の出を拝むことになりそうだ。
「色んな意味でカムイグラは特別な場所だし、嘘じゃないから人も多いのかも? 綺麗に見えるだけでも良いことだしねっ!」
 花丸も視線を巡らせる。これまで初日の出を見る場所について気にしたことはなかったが、仲間たちとくるのも悪くない。
 そうこうしているうちに初日の出が人々の前へと顔を見せる。おお、と声が上がった中で3人と1匹は願い事をした。
(よく見かけていた、絵は……これのことなのです、ね)
 カムイグラで目にした絵の光景をまじまじと見つめるメイメイは故郷にいる家族の健康を。それにブラウの無事と健康も祈らなくちゃ、と手を合わせる。
「……どうしてここまで変わっちまったかねェ。なぁ、戒斗(オリジナル)」
「ぴ? 何か言いました?」
「いや」
 カイトの呟きは人々の歓声に消されるほど小さく。誰に向けるものでもないそれに小さく肩をすくめた。今のカイトに――願い事はまだ、わからない。
(皆で無事に、楽しく毎日を過ごせますようにっ!)
 花丸はありきたりで、けれど大事なお願い事。もちろん努力もするけれど、願って叶うのなら願っておきたいものだから。彼女の隣では同じくらい、いやそれ以上に熱心に澄恋とレライムが祈りを捧げていた。
 目を閉じ、手を強く――レライムの場合はぷるぷるぼでぃなので、かなり強くというのは難しいだろうが――組んで朝日を拝む、彼女らの唇からこぼれた願いは。
「素敵なお嫁さんになれますように……!」
「火を吹けるスライムになれますように……」
 2人とも、それはもう真剣(ガチ)だった。本気と書いてガチの方かもしれない。カムイグラの御天道様もこの念には押し負けてしまうのではないだろうか。
 負けじと繁茂も新年初日の出に挨拶して、同じように手を合わせる。願い事は沢山あるけれど、その中でもこれ、というものといえば。
「今年はハンモの大切な忘れてしまっているあの人に会いたーい!」
 脳裏に浮かぶのは影。誰なのかもわからない、けれども大切な存在だと言うことはわかっている人。願いを叶えてくれると言うのなら、どうか。
「あ、あとめっちゃ可愛くなってめっちゃモテモテになって――」
 そこから続き始めた長いの多いこと多いこと。最初の願いも霞んでしまう量なのではないだろうか? けれど神様ならきっと大丈夫。だってこれだけ多くの人の願いを受け取るんだもの!


 ――そこで願うと叶うらしいぜ。
 ローレットで耳にした言葉がよみがえる。ブラッドは昇ってくるだろう朝日を待つ人々をゆっくりと見回した。
 これだけの人が確信のないものを受け入れ、待っているということを時々不思議に思ってしまう。各々がどう捉えているのかいちいち聞きだすわけにもいかないが、この人数を少ないとは言わない。
 太陽信仰の宗教者も、そうでなくとも習慣として根付く場所も、逆に相いれない場所も見てきた彼だからこそ思うのだろう。しかしブラッドはこうも思うのだ。
(これから見える朝日が昨日と変わらなくても)
 今日集まった人々が見たいものを、一緒に見たい、と。
(なんだか、山を登るって気持ちだけで疲れちゃう気がするわ……)
 メルティメルトはふわふわと浮きながら山を登っていく。シャイネンナハトといい初日の出といい、願い足りない人が多いのだろうか。
 その点メルティメルトの願いはひとつ。叶えてくれる王子様はいつ現れるだろう?
「この辺なら朝日見えるかしら?」
 浮いていても疲れてしまったメルティメルトは途中で止まる。山頂ではないが恐らく見えるだろう。
 ああ、日が昇って起こしてくれる人が王子様だったらいいのに。
「流石に寒いな……」
「着込んできてよかったであります」
 シガーと希紗良は偶然にも山頂で鉢合わせ、共に日の出を待つ。シガーの用意した茶は西からのもので、希紗良にとっては珍しい。温かなそれを口にしながら夜明けという厳かなひと時をゆっくり待つ。
「アッシュ殿もお祈りを?」
 希紗良に問われてシガーは瞬きをひとつ。日の出が綺麗だと聞いて来たが、そういえば祈りを捧げる習慣もあったのだったか。
「……そうだねぇ、共にお祈りを」
 彼女は豊穣の復興を願掛けに来たのかもしれない。本当は『命を賭して刀を振るえる相手との出会い』を願うのだが――口にしなければわからないものだ。
 寒い中、ようやくと言うように初日の出が顔を出す。歓声が山頂を満たし、2人もまた小さく声を上げた。
「綺麗だ……」
「ええ。さあ、ご来光に祈るでありますよ」
 周りが早速黙祷し始め、希紗良たちもと同じように願いを込める。シガーもそれにならい、軽く目を瞑った。
(さて……僕も、豊穣の復興と安寧について祈るとしようか)
 覚えのある匂いは背中から。少しの重みと温もりにアルペストゥスが首を巡らせると、ほんのちょっぴり悪い笑みを浮かべたソロアと目が合う。その期待に応えるように翼を広げたアルペストゥスは空高く舞い上がった。
「すごいぞアル君! すぐに山頂だ!」
 ソロアの楽しそうな声がもふもふなたてがみから聞こえてくる。空は寒いけれど、その中にいれば凍えずに済むだろうとアルペストゥスは目を細めた。
 山頂でも人が少ない場所へ降り、ソロアは地面へ足をつける。吹いた風にぶるりと震えると羽毛の翼がソロアを包んだ。温もりの中、ソロアは黄金の光を瞳に映す。
「あっ出てくる、朝日が出てくるぞアル君!」
 興奮しながら初日の出を見たソロア。昇りきったところで黄色の毛玉ことブラウと合流して。
「アル君、ブラウ君、今年もよろしくな!」
「はいっ!」
 にっこりしあう2人を包み込みながら、アルペストゥスは返事をするように遠吠えを響かせた。
「今年は誰にも追っかけられない平和な年になるといいですねぇ」
 華魂は手を合わせて呟きながら無理だろうな、と思う。元の世界じゃ常に追われる身だったのだから、こちらでも遠くないうちにそうなりそうだ。
 本人曰く『ちょ~っと"生贄"を使って死者を生き返らせた程度』しかしていないと言うが……さて、華魂の今年の運命やいかに。
「お日様を見るのね?」
「そうだよ」
 鬼灯は腕の中のおひめさまに目を細める。寒い場所だから暖かい素材の服に身を包んだ彼女は可愛らしい。山頂までいったら彼女の好きな紅茶を出そうか。
 朝の光に願い事をして、鬼灯は視線を章姫へ。願う姿はやはり愛らしい。
「皆とこれからもずっと一緒に居られますようにって願ったのよ! 鬼灯くんは?」
「俺か?」
 無邪気な声に鬼灯は一瞬、朝日へ視線を向けて小さく微笑む。
 ――彼女が、皆と共に無事に過ごせるように。
「あっ、見て見てマリィ!」
「わぁ!」
 ヴァレーリヤとマリアは上がってきた初日の出に歓声を上げる。綺麗な日の光は本当になんでも願いを叶えてしまいそうだ。
(でも……)
 すぐそこに、ヴァレーリヤの手があるのに。マリアはシャイネンナハト以来彼女と手を繋ぐ勇気が出てこない。
 などと迷っている間に、ぴゅうと冷たい風が吹き。
「ささささ寒いっ! やっぱりいつもの祭服とコートで来れば良かったかも……」
 着物は風が通りやすい。ぶるぶると体を震わせるヴァレーリヤに苦笑いして、マリアは風除けとなるように彼女の傍らへ寄り添った。そうして2人で願いを込めて、ちらりと互いを見る。
「マリィは何をお願いしましたの?」
「君は?」
「私は……ふふーっ」
 秘密でございますわ、と言いながらヴァレーリヤはたたっと駆けていく。今日の朝食はお雑煮だそうだから、早く帰らなくちゃ、と。
「朝ご飯美味しそうだね! 待っておくれー!」
 くすくすと笑ったマリアは彼女を追いかける。彼女が秘密なら自分も言わないけれど、でも、
(同じ願いだったら嬉しい)
 そんな2人の、心に秘めた願い事は――いつまでもずっと、一緒に居られますように。
「おおーい」
「あれ、カルウェット君?」
 奇遇にもアルムとカルウェットは山の麓で鉢合わせる。どうやら目的地は一緒のようだ。
(情けない姿は見せられないなぁ)
 頑張るぞと内心気合を入れて、いざいかん。カルウェットは彼と会えたことが嬉しいのかその足取りは軽やかだ。
「2人でお出かけ、初めて」
「そうだね。あ、温かいお茶どうぞ」
 寒いから――秘宝種に寒さが感じられるのかは不明だが――茶を渡すと、カルウェットはにっこり。ほかほかな茶を飲みつつ話に花を咲かせれば、偶然にも誕生日が一緒であるなどと発覚したり。
「アルム! 初日の出、綺麗、見える!」
 ふと前方から刺した光にカルウェットが目を輝かせた。2人でそこから願いを込めて太陽の光に目を細める。
「ね、アルム。もっと仲良く、なる、したい。また、遊んで?」
「こちらこそ」
 沢山遊んで美味しいものを食べて、思い出を作って――どうか、それを失ってしまわないように。
 中には珍しがるイレギュラーズもいたが、庸介にとっては恒例行事であり、なんら感慨深いものでもなかった。
 鍛錬と称して重い荷物を背負い、山道を息切らして登ったことは数知れず。日々のルーチンで景色が変わることは無く、それは寒空の下でも変わることは無く。故に――。
(皆さまは、何故初日の出を見るのですか)
 願いではなく問いを。周りは合掌していたから庸介もまた真似をして、太陽の光を浴びたのだった。
「えー、願い事、願い事……」
 鹿ノ子は初日の出を見ながら願いを思い浮かべる。豊穣の文化は相変わらず不思議であるが、願うだけならタダ。叶ったなら尚良し。
(……ひとの心っていうものは、残酷ッスね)
 これまでなら真っ先に願っていたものより、今は優先したい願いがある。
 『彼』のことで心は満たされて、溢れて。自分ではどうしようもないほどに膨らんでしまった想いがある。
(遮那さん)
 どうか、どうか。まだ恋も愛も分からないけれ、自分本位な願いだけれど――他の女の子を想うより1秒でも多く、誰よりも僕のことを想ってほしい。



「ああ、焔。こっちだ」
「良く見えそうなところ! お茶飲んで温まってようね!」
 フレイムタンが身長を生かして見えやすそうな場所を探し、場所取りを終えたら焔はいそいそと茶を用意する。日の出まではもう少しだろうか?
「何かお願い事、するの?」
「そうだな……まだ決まってはいないが」
 今度は質問を返された焔がちょっぴり考えてから願い事を口にする。でも。
(何でだろう)
 本当は帰りたいって願うつもりだったのに、彼へそれを告げるのが嫌で。代わりに唇からは『皆と仲良く過ごす』という言葉が零れ落ちた。
(御役目だって残してきているのに)
 ああ、ボクは、一体どうしちゃったんだろう?
「よし、到着」
「久しぶりに登山しました」
 威降と紡は大した疲労も表情に浮かべず山頂へ到着する。登りやすい山だったというのもあるし、それなりに鍛えられているが故でもあるのだろう。
 持ってきた茶を飲みながら、薄ら明るくなっていく空を見るのは少し楽しい。そうして時間を潰していた紡は威降の言葉に視線を向けた。
「風巻は何を願うのですか?」
「俺? ……そうですね、来年も2人で初日の出を見られたら、と」
 威降は視線を日の出を待つ人々へ向ける。この中にも戦いで被害に遭った者はいるはずだ。今でこそ落ち着いたが、また遠くない内に戦が起こるに違いない。だからこそ、健やかでいられるように。
「……私は、来年こそはあなたと戦ってみたいです」
 紡はもうすぐ昇りそうな朝日の方向を見ながら呟く。元の世界では最強であったものの、強い者と添い遂げるのは幼い頃からの夢だったから。
 こちらに召喚されて力を削られたのは果たして幸か不幸か。それは今年か、もっと先にわかることだろう。
(――あぁ、もう日の出の時間ですね)
 地平線が、明るんでいく。
 一方のユージェニーは息を切らせての山頂到着。まもなく出てくる光を期待する人々を見て彼女は目を輝かせた。
(沢山いらっしゃいますね! やはり初日の出を見にきたのでしょうか)
 登りやすいと言う山道もユージェニーにとっては大変なものだったが、こうして沢山の『人』を見られること自体が彼女にとっては感慨深い。ユージェニーは彼らの待つ初日の出を自分も待つべく、視線を地平線へと向けた。
「シャルル嬢! チャイ持ってきたよ」
「ボクはストールを」
 イーハトーヴとシャルルは互いに防寒グッズを持ち寄って山頂集合。もうすぐ初日の出だ。
(1年、あっという間だったなあ)
 自身にとっての転機が約1年前だなんて。けれど思い返せばトレーニングしたり実践経験を積んだり、沢山のキラキラにも巡り合った。
 そして今日もまた――キラキラの、綺麗な光を君と見るんだ。
「すごいね」
「うん」
 短く返す2人。隣に存在を感じているから、言葉なんて必要ないとでも言うように。けれど、言葉がなければ伝わらないこともあるから。
「新しい年も、君と沢山のキラキラに出会えたらいいな」
「もちろん。去年より多く、ね」
 輝く朝日の中、2人は顔を見合わせて微笑んだ。
「寒くは無いか」
「ええ、きっちり準備しておりますので」
 吐く息が白い、とベネディクトは傍らの従者を案じる。リュティスもまた息を白く染めながら頷いた。このような場所でも主君へ迷惑をかけてしまう訳にはいかない。それはベネディクトも予想していたことなのか、そうかと小さく笑みを浮かべて再び山頂へと向かっていく。
 綺麗な景色を、と誘ったのはベネディクトの方だった。けれどもリュティスは従者らしく、山頂へ辿り着くとすかさず紅茶や軽食を用意する。全ては彼が日の出の景色を心置きなく眺め、願いを込められるように。
(御主人様が無病息災で過ごせますように……黒狼隊の皆様もですね)
 光の差した空へリュティスが祈っていると、不意にベネディクトが言葉を零す。まだ彼が召喚され、過ぎた時間は1年にも満たない。だというのにあまりにも激動の日々であった、と。
「それでも、乗り越えられたのは皆のおかげだな」
 新年の光にふっと笑みを零したベネディクトの視線がリュティスへ向く。
「新たな年も頼りにさせて貰うぞ、リュティス」
 従者として『頼りにさせて貰う』だなんて、これ以上嬉しいことは無い。リュティスは笑みを浮かべ、返事と共に一礼した。
「これだけ人が多ければ見失いませんね」
 防寒対策を万端に山を登った黒子は山頂まで辿り着いて小さく息をつく。遭難するほどの山ではないと思っていたが、念には念を。そうして持ってきた干物と少量の火酒は身体を温めるのに役立つことだろう。
(過ぎた年よりは荒れるのでしょうか)
 見えるは穏やかな顔ばかりだが、それもカムイグラの動乱が収まってこそ。同じような、それ以上の騒ぎは続くことだろう。この世界で出来た縁も少なくない――故に精進を重ね、乗り越えていかねばならない。
「師匠、もうすぐですよ」
 見た目よりもずっと年上なアセナは足場の悪い所でグリジオの手を借りつつ登っていく。その彼はと言えば、人だかりを認めて声を上げた。さすがに目指す場所が見えていれば"また"彼女がふらふらと道を外れて行ってしまうことは無いと思いたいが――方向音痴、油断ならずである。
 初日の出は既に昇り始めているようで、人々の間から差す光に目を細めながら2人は歩く。
「まだまだ世界には私が知らない場所があるのね」
 誰かが絶望の青を越えたから、アセナは今ここに立てている。そう考えたらまるで他人事のように「イレギュラーズって凄いのね」なんて出てしまって。
 けれどそんな凄いイレギュラーズとて1人のヒト。2人もまた周囲の人々と変わりなく、顔を見せた初日の出に願いを込める。
(君も、私も……絶えず健やかなれ)
 安全を願うアセナをそっと盗み見るグリジオ。
 ――どうか、彼女が来年も隣にいますように。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 あけましておめでとうございます!

PAGETOPPAGEBOTTOM