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シナリオ詳細

そうだ温泉へ行こう2020

完了

参加者 : 32 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その日、【情報屋見習い】シズク(p3n000101)は働いていた。
 勤め先は幻想の山内にある、古い旅館だ。
 乱立する宿屋経営の荒波に対抗するため、改築真っ最中だった。
 とんてんかんてんと新しい部屋を作ったりする作業員として従事し、まさに今、竣工式間近という所で。
「え、試泊?」
「そうなのよぉ」
 女将から掛けられた声に、シズクは首を傾げて復唱する。
 話としては単純なもので、完成し、オープン前に最後のチェックとして泊まってみて、問題点が無いかを再確認するというものだ。
「泊まるだけならうちの従業員でいいんだけどねぇ? ほらぁ、うち、広いでしょう?」
 広い、というのは、宿の目玉である人工温泉の事だ。
「ほらぁ、うち、何百人でもかかってこいやぁ! みたいな感じでしょう?」
 それは知らないけれど、とシズクは答えながら、ふぅむ、と喉を鳴らす。
 まあ、依頼ってことにして、ローレットで募集すれば簡単だろうか、と。
 そんな事を考えながら、彼女は曖昧に頷いて見せた。


「まあ、そんなわけで」
 それから数日後、シズクはローレットで声を作っていた。
 適当にその場にいたイレギュラーズ達を集め、経緯をかくかくしかじかと説明して、「なに言ってるのお前?」という突っ込みを経て。
「日帰りで温泉、行ってきてくれないかな」
 最終的にそう言うことになった。
「いいかな?」
 というのは確認の前置きではない。
 行くのが確定したものとしての、説明の前置きである。
「場所は後で地図を渡すとして。皆に頼みたいのは、入浴と、その受付周りの利便性だ」
 経営者の方針で、温泉の種類は多く、受付周りには食事処やお土産コーナーなんかがあるらしい。
 ただ、経営者の方針が必ずしも利用者にとって良いものとは限らない。
 故に、外から「これでいいよ!」というお墨付きがほしいわけだ。
「とはいえ、まあ、普通に楽しんだらいいと思うけれどね。最近は、忙しかったから」
 そんなわけで、新装開店旅館試運転付合の運びとなった。
「施設案内は、後で渡すからさ。よろしくね?」

GMコメント

 ユズキです。
 温泉行ったので温泉です。
 さておき以下補足。

●現場
 とても広い温泉宿。
 完成直後の為、温泉周り以外のフロアには入れません。

●選択肢
 複数の組み合わせがあります。
 
 まず場所として、【男湯】・【女湯】・【混浴】・【食事処】・【お土産】五種類。
 湯の性質は以下の、【露天】【電気】【美肌】【サウナ】【なんかめちゃくちゃ熱い湯】五種類。

 場所と性質を選んでプレイングを書いて下さい。
 複数選ばれると「じゃあここ!」って一つ選んでこちらで決めます。
 
 お約束として全員、温泉の中では水着orタオル着用が必須です。
 過度なお色気だとかトラブルはとっても健全になります。

●NPCについて
 お一人で参加しにくいという方は、必要であればシズクを指定していただけます。
 特に必要無ければ登場しませんし居ませんので、よろしくお願い致します。

●その他大事なこと

1. お仲間さんと参加の場合は、迷子防止のお名前とIDを添えてください。

2. 共通のグループ名でも構いません。

3. 一人だけど、同じように一人で来ている誰かと絡みたいという時は明記をお願いします。

4. 完全に一人で満喫したい人もそういう記載をお願いします。無いと絡む可能性が高いと思います。

5. 白紙の時は描写されません。

6. キャラクターさんの、やりたいこと・考え・特徴など、記載してくださると書きやすいです。

7. アドリブ可・不可の明記もお願いします。

 以上です。
 それでは、よろしくお願いしますね。

  • そうだ温泉へ行こう2020完了
  • GM名ユズキ
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2020年07月05日 22時10分
  • 参加人数32/∞人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 32 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (32人)

朝倉 まいち(p3p000030)
フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)
放浪の騎士
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
木漏れ日妖精
亘理 義弘(p3p000398)
義に篤く
ラズワルド(p3p000622)
流転の綿雲
アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)
黒焔纏いし朱煌剣
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
リトル・リリー(p3p000955)
緋色の翼と共に
雨宮 利香(p3p001254)
永遠のキス
ダナンディール=アーディ=シェーシャ(p3p001765)
はらぺこフレンズ
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
かくて我、此処に在り
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
スティーブン・スロウ(p3p002157)
こわいひと
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日の魔法少女
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
シラス(p3p004421)
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
宮里・聖奈(p3p006739)
パンツハンターの血を継ぐ者
ルチア・アフラニア(p3p006865)
「Concordia」船長
彼岸会 無量(p3p007169)
帰心人心
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
ミエル・プラリネ(p3p007431)
新たなるレシピを求めて
茅野・華綾(p3p007676)
折れぬ華
刃金・文人(p3p007922)
鋼の如く
ロロン・ラプス(p3p007992)
ひとかけらの海
トゥリトス(p3p008152)
特異運命座標
月待 真那(p3p008312)
ティア大好き
エミリア・カーライル(p3p008375)
新たな景色
霧ノ杜 涼香(p3p008455)
流体人間
ルナ・フォルトゥーナ(p3p008525)
「わるいこ」
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
うそつき
糸杉・秋葉(p3p008533)
黄泉醜女

リプレイ


 賑わいの静かな雰囲気だと、フェルディンは内心思う。今、自分は男女が共に入浴を出来る施設にいて、
「温泉、か」
 故郷でも名前だけは聞いたことがある。とはいえ、体験するのは初めてだ。
「広い……傷を癒すのにぴったりね」
 対して、共に来たまいちは、興味深そうにしてはいるが慣れた様子だと、彼は思う。
 上下一体の水着を来た彼女は知っているのだろう。そう確信して、フェルディンは問いを投げた。
「まいち、すまないけど、作法を教えてくれないかな……?」
「ええ、そうね、まず──」
 と、フェルディンを見るまいちの目が開かれる。
 しっとりと濡れた金髪が顔に張り付き、それを払う所作をする彼の姿に、王子様という単語を思い浮かべたからだ。
「まず、掛け湯をしないとね! 温泉の温度に身体を慣らすのと、浸かる前に綺麗にする意味があるの」
 頭を振って思考を戻し、そんな説明を経てふと思う。
「王族の時は洗ってもらってたの?」
「いや、自分で洗っていたとも……!」
 幾らなんでもそれは、と、フェルディンは否定の言葉を作って目を逸らす。水着とは言え女性の肌、刺激が強かった様だ。
 静かな水音と共に湯へ入り、肩まで沈んだ辺りで、彼の頭に濡れたタオルが鎮座した。
「ふふ……いつもありがとう、まいち」
「私こそ……これからもよろしく、ね」
 身を寄せあった二人は、開け放たれた景色を眺めながら、静かな時間に浸っていた。

「あ、あの、文人さん? 宜しかったら、お背中をお流し致しましょうか?」
 混浴に入るなり言い出した華綾の言葉に、文人は首を傾げていた。だがそんな仕草も、背中を押されてあれよあれよと洗い場に導かれてしまってはどうしようもない。
 まあ断る理由も無いだろうと思ったし、それに。
「ええ、えぇ、この華綾にお任せ下されば、日々の疲れもたちどころに解けていくでしょう! 決して文人さんのお顔を見るのもわたくしを見られるのも恥ずかしいからでは御座いませぬ!」
 必死である。お言葉に甘えよう等と返事をしつつも、取り乱しで口にしない方がいいことまで出ているように感じていた。
「それじゃあ、よろしく頼む」
「スパーンとお任せ下さいませ!」
 擬音が派手だった。
 とはいえ、前の様に危うい雰囲気にはなっていない。だから平気だろう。
「大きく、逞しく、実に……少し…………う、うおおおっ」
「華綾、些か擦り過、華綾? あの、華綾?」
 ヒリヒリする背中は、もしかしたら平気ではないかもしれないと、文人はそう思った。

 働くシズクを捕まえたアーリアは、「おう?」と疑問符を上げている間に水着を着せ変えて露天風呂へと押し込んでいた。
「最近色々あって、のんびり温泉でも行きたいと思っていた所なのよぉ」
 加えてその手には酒の瓶。
「お酒の気配を察知したよぉ?」
「ほぅ、これはあれだ、飲み会ってやつだな!」
「いやっほーい! どうだいやってるかい!」
 も一つ加えて酒に寄ってきたラズワルドや秋葉、スティーブンも現れ、アリシアとマカライトもその輪に加わっていた。
 そして。
「それでは皆さん、海洋決戦などお疲れ様でしたということで──」
 音頭を取った寛治の声など待たずに酒盛りが始まっていた。
「うんまあノリと勢いは必要ですから」
「酒の席だものねぇ~」
 と、寛治の持つ徳利にアーリアは日本酒を注ぐ。
「決戦の労い、よ?」
「これはどうも──今日は控えた水着ですね?」
「当然、乙女の肌は安くないんだから」
 景色に酒を掲げて乾杯し、口へ放り込む。喉を焼くような感触に、二人は息を吐き出して。
「あらあらシズクちゃん、お酒はイケる口ね?」
「まあまあシズクさん、今日は何もしませんからまあまあ」
「……君達テンション高いね?」
 なし崩しで間に置かれたシズクは、左右からのお酌に対応していた。それなりに強いらしく、表情も変えずに飲んでいた。ただ、その肌はアルコールか温度の為か、艶めいた紅潮を見せている。
「なんか楽しそうだねぇ」
「いやぁ、裸の付き合いってやつだぁねぇ」
 ふわふわしていますねと、見守るアリシアは思っていた。賑やかだし、交わされている会話も楽しげな物だ。
 日本酒はちょっとキツくて、飲んでる三人は大丈夫だろうかだとか、ラズワルドが土産店から買ってきたツマミが独創的だったとか。
「おぅぇなんだこれ!?」
 独創的過ぎてスティーブンが形容しがたい表情をしていたりして。
「えぇー美味しいじゃない? まだまだあるよぉ?」
「いやちょい俺は女の子の方──まってこれ既に匂いがダメだろこれ!」
「幻想の山内で来やすいし、たまに来ようかしら」
 絡み酒される光景に、アリシアはひっそり合掌し、
「男女入り乱れて何も起きない筈もなく……あれあれ男の子同士だよ?」
 秋葉は思ってたのと違くない? と首を傾げている。
「まあ……最近は死線の中ばかりだったんだ。こういう羽目の外し方もいいだろう」
 酒も入ってマカライトの気分はアゲアゲだ。楽しそうなやりとりは見ていて飽きない。
「くうぅ、私が望んだ感じの奴じゃない……ってそれ焼酎?」
「ああ。飲むか?」
「じゃあおつまみと交換!」
 それに、こういう違った趣味嗜好の交換も良いものだろうと思い、差し出されたピーナッツを歯で噛み砕き、
「…………独特だな」
「あぁ~幸せ~この一杯の為に今日を生きてるぅ~」
 不思議な後味を酒で流し込んだ。

 ちゃぷちゃぷ、ふわわと、漂う水面に、溶けて混ざって沈みそうな自我の中。
「はっ」
 ロロンはにゅき、と丸まった。
 危ない危ないと意識をしっかり持ち直したロロンは、美肌の湯と看板の立てられた浴槽から出る。
「美肌効果、とても親近感の沸くお湯だ……キミとは仲良くなれるかもしれない」
 そしてタイルの床を進むロロンの視界に、隅の方で区切られた一画が目に入る。
 なぜだか解らないが湯の前で踏み留まるエミリアの姿があったからだ。
「押すな押すなーうわぁーだめっす湯気が既に、既に蒸気~……」
 ちら、ちらと後方を確認しているようだが、そこに誰もいませんよと伝えるべきだろうかと悩みながら近付いていく。
「おかしいっす、こうすれば押されると聞いたんすけど……なにか間違えたっすかねぇ……」
「あ、押して欲しいんだ」
 そうと解ればお手伝いしてあげよう。
 ロロンは優しい(?)気遣いから、エミリアの背をぷにょんと押して上げた。
「あっ急に来るやつなんっすねっでもいけるっす自分過酷耐性持ちなんあっつぅい!」
 絶叫が木霊し、彼女はのたうちまわる事になった。

「Uhrr……」
 羽織る水着で湯船に浸かるリュコスは、横合いからくっついてくるルナの行動に視線を泳がせていた。
 地味ーに静かーに、悟られないようにズレて離れようとしても同じ速度で追ってくる彼女から逃げられる筈もない。
「りっちゃんはおんせんはじめて? とってもきもちいいよねぇ」
「おふろも入ったおぼえない、なぁ……あ、ルナ、ち、近い、よ……!」
 加えてルナの動きは激しい。言葉も動きも、リュコスに対して感情をそのまま伝える様に発せられていた。
 だから。
「あれ、なんか……ぼーってする……」
「え、ルナ……ルナ?」
 当然の様に目を回して逆上せてしまっていた。あわあわとリュコスは脱力したルナを外へ連れ出し、パタパタと扇いで熱を冷まさせる。
 幸い、大きな問題も無く彼女は復活して、
「りっちゃんありがとーっ」
「ひゃあ!?」
 ほっとするのも束の間、外に出ても密着は納まらない。どころか、美肌の湯に浸かって肌艶の良くなったリュコスはルナの思うがままに着せ替えされて。
「……楽しそうなだから、いい、けど……」
 恥ずかしいのはどうにもならなかった。


「うおおっ」
 わしゃわしゃわしゃわしゃと泡立てた石鹸で念入りに体を磨き上げたシラスは、広い湯船へと体を投げ出しに行く。
「ふおー」
 伸ばした手足がじんわり解れる。そんな感触に抜けた声をあげ、
「ぶははぁあーぁ……」
 その隣には同じように浸かるゴリョウの姿があった。
 強面な顔面が今や、ふにゃふにゃとした緩い表情になっている。
 温泉の効果とはかくも恐ろしいものだ。
「いい顔してやがるな」
 そこに、義弘がやってきた。図らずも顔見知りの三人である。
「これなら気ぃ使う事も無いな」
 背中に咲いた桜は、場所によっては入店拒否モノ。そんな経験から気にしていた義弘だが、今はそんな懸念も無い。
 持ち込んだ酒を浮かせた盆に乗せ、同じ様なゴリョウの盆と並べる。
「酒飲みかよ!」
「おう、まあお前さんには速いがなぁ!」
「言ってろ、俺にはとびきりがあるんだからな!」
「ところでそれ、混沌米の酒か?」
「お、解るか? なら丁度いい、感想聞かせてくれよ」
 酒を煽る強面二人を差し置いて、シラスは注文してあったクリームソーダのアイスをスプーンで削り出し、口の中でじっくり溶かしている。
「あ、そうだ」
 それから、味談義をする二人へと思い出したように声をかけて、
「俺、臭くないよな……?」
「…………男を嗅ぐ趣味はねーぞ」
「そうじゃねぇ!?」
 かつての激戦を今は忘れた男三人、騒ぎながら寛ぎの時間を過ごしていた。

「パンツもらったぁー! ……ほんとに取れたぁー!?」
 と、外で騒いだのは少し前の話。シズクのパンツを珍しくゲットした聖奈は、どこか気の抜けた彼女を伴って女湯に浸かっていた。
「いやぁ、何も考えずにボケられるから安心してたけど……シズクちゃんお酒臭いよ!」
「んぅ……?」
 ふわふわしていると、聖奈は思う。酩酊状態の今なら触りたい放題じゃん! と。
「この美肌にこのおっぱい……シズクちゃんは本当に綺麗だね!」
 肌を撫でる。おとがめ無し。行ける!
「聖奈が男なら絶対ほっとかないしお付き合いを申し来んじゃいひゃあ!」
 と思ったのも束の間、撫で返されて聖奈はすっとんきょうな悲鳴をあげた。
「君こそ可愛いよ、うん。まあ変態だけど」
「あわあわわありがとう!?」
 行くのは良いけど来られるのは苦手な聖奈の声が暫く続いていた。

「あのね、オデット」
 ちゃぷんと浸かる湯船の中、オデットはルチアの言葉を聞き流していた。
「いい? 文明的な生活に温泉は無くてはならないものなのよ?」
「んー……その、ローマとテルマエ、ってよくわからないけど、あったかい水は嫌いじゃないよ?」
「わからないなんて……」
 文化の違いはよくある話だ。特に、オデットとルチアでは入浴に置いた比重が全然違うのだろう。
「露天は熱気が逃げてしまうのよね……それにデザインが随分シンプルだわ……」
 だからルチアがぶつぶつ言う評価はよくわからない。だがそんな彼女はとっても隙だらけで、あんまりにものんびりとした空間だったから。
「えい」
「うわっぷ」
 オデットは両手で作った器にお湯を蓄え、没頭するルチアの顔面へと浴びせたのだった。

「あぁあー」
「ふぃいー」
 二人の女性が、横たわる様にして沈んでいた。イーリンとウィズィだ。見上げる空は立ち上る湯気を通した黒色で、細やかに星が瞬いている。
「生き返る……って、洒落にならないわよね、私達」
「いやホント、死ぬかと思ったよねぇ実際」
 激闘と死線はまだまだ最近の話しだ。無事に海から帰還し、今はこうやってのんびりとした時間を過ごせているのは、幸福だろう。
「そういえばあの海では、空なんて見上げる余裕無かったわね」
「それはもう、大嵐の記憶しか無いよ……あの時は空なんて、見たくもなかった……けど」
 けど今は、静寂の海になっている。皆で勝ち取った平和な航海が出来るだろう。
「今度行くときは、一緒に甲板で寝転がって、空をみましょう?」
「そうだね、そうしよ」
 と、空を見上げる横顔をみていたウィズィは不意に気付く。そんな気配を察知したイーリンは顔を向け、見られていた視線の先にははぁと納得。
「タオル、気になる?」
「うん、いつも以上にがっちり巻いてるなって」
「なんでか知りたい?」
 タオルと肌の間に指を差し込み、イーリンはウィズィにだけ見えるように緩める。
 そこにあるのは、ただ彼女にだけ見せるための──。

「ふむふむ」
 露天の女湯は、大きな四角形の敷地をしている。入口から正面には大きな湯船があって、左右に分かれるとそれぞれ違った効能の湯船が仕分けられているという感じだ。
 景色を見るため、三方はかなり低い柵が設けられている程度。余程乗り越えようとしない限り、出ることも入ることも出来ないだろう。
「開けた視界ですから、覗きなんて出来なさそうですね……男湯や混浴とも隣接していないようです」
 施設の試運転、その確認の仕事を済ませたリディアは、安心して温泉へと身を沈めた。本当ならタオルや水着は着けたくない所だが、トラブルは望むところではない。
「ふぅ……」
 大の字に浮かびながら、ゆったりとした時間に微睡んでいく。うっかり寝落ちしてしまいそうになって、これはいけないと彼女は立ち上がり。
「……ふぁ」
 弛んだタオルが、意図せず落ちかけるハプニングに、控えめな悲鳴を上げていた。

 風が流れていた。
 それは周囲の山々を自由に駆け巡り、擦れあった葉の音や、揺れて軋む枝の音を奏でさせる。
「贅沢、ですね」
 無量は、自然を感じていた。
 ネックだった最近の情勢が落ち着いた今、この場所に訪れる機会は喜ばしいものだ。
 折角ならば一献、もしくは湯上がりにぴったりな御膳なんかがあれば文句もない。
「それは正式に開湯されたお楽しみ、ということにしましょう」
 彼女なりの拘りがあるようで、今回、日帰りである以上は湯を頂くだけと決めてある。
 深く沈む中、涌き出る湯が注がれる水音に耳を傾け。
「今は、其れだけで」


 ふよふよとリリーは漂っていた。露天風呂で景色を楽しみ、満喫した気分を持ち帰って話をしよう。
 そう思い、折角だからとお土産コーナーに立ち寄ったはいいものの、この宿、無駄に種類を多くしていて決めるのが難しい。
「カイトさんなら何がいいかな……?」
 何を持っていっても喜ぶ気がする。
 けれど、でも、しかし、どうしよう。
 悩める小さき乙女の思考は、ぐるぐると周り続け、結果、店員に進められるままに買い込んだお土産がシャチの背中に乗せられる事になる。

「あ、シズクさん!」
「はいシズクさんです」
 ホカホカとした姿のトゥリトスは、座り込んでいたシズクを見つけた。お風呂上がりなのだろうと推察して、その手を取ってお土産コーナーへと誘っていく。
「お土産買うの?」
「うん、浴衣を! ……おっと、レンタルしてるのに買うの? って顔!」
「私はどんな顔してるのか気になるけどそういうことだね」
 行く先々で出会う文化が好きというトゥリトスだ。借りるより買う、持って帰るのが目的の一つでもある。
 ので。
「シズクさんも着よう!」
「え、いや、私は別に」
「あ、そうそうおまんじゅうもあったし半分こしようねー! それに知ってた? ここの手拭いのデザインがすごい可愛いの!」
「うーんこの話を聞かないテンション、よく見るなぁ」
 楽しそうなトゥリトスの姿に頭を掻きながら、シズクは連れていかれる。
 それから暫く、浴衣姿でうろつく二人の姿が散見された。

 ぐぎゅるるる。
 重なる二つの音が、お食事処に響いていた。
 一人は、大机の前に座ってメニューを眺めていた真那だ。
 そしてもう一人は、今まさに上がってきた風体のダナンディールである。
 図らずも鳴った二人はお互いを見て、ああ、同じ目的なんだなと理解すると、どちらともなく会釈して。
「ここ、いいかな?」
「あ、ええよええよ、私も一人で食べるんは味気ないと思うてたから!」
「そっか、よかったぁ……あ、温泉はもう入った? 僕はサウナの方に居たんだけど」
「私は温泉の方に! いやぁ、温泉入ってご飯も食べられるやなんて最高やなぁ~」
 話に華を咲かせ、しかし料理の注文も忘れない。
 真那はお刺身御膳を。ダナンディールは温泉卵と山菜御膳をそれぞれ頼んでいる。
「んまっ、山の上やのにこのお刺身新鮮……!」
「この火の通し具合……僕の好み……! 山菜も美味しいし、ご飯だけでも繁盛しそうだね!」
「ええ、気になるなぁ、おかず交換せぇへん?」
「勿論!」
 宿の料理人が振るう品々に舌鼓を打ちながら、二人は食事を満喫していた。

「ここ最近の温泉はデザートにも力を入れているみたいですよ」
 と、涼香の放った一言に、ミエルはじぃっと甘味とタグの付いたページを眺めていた。
 悩んでいる。
 そんな様子を微笑ましく眺めた利香は、パタンとメニューを閉じた。
「そういえば、混浴の方、お酒で賑わってましたねー」
「そのようですね、廊下まで聞こえてましたから」
 あれは相当出来上がっていそうだと、そう思いながら涼香もメニューを下ろす。
「あ、決まった感じですか? うーん……デザートの容量も考えて……」
 と、悩んだ結果を注文して、三人は改めて一息をつく。
「お二人は何にしたんですか?」
「わたしは、ほうじ茶のパフェ……と! 季節の和膳ですね、はい。ご飯もちゃんと食べます!」
「私はハンバーグです、肉食なものですからね! いひひ! まあでも、ちゃあんとデザートも戴く、欲しいものは食べちゃうのがリカちゃん流なのです!」
 三人依れば好みも違うんだなぁ、なんて感想に頷いていたら、切りよく食事が運ばれてくる。
 まずは主食だ。
 3つ並んだプレートはそれぞれが魅力的な盛り付けをされてある。
「……もし、よろしければなのですが、食べさせあいっこなんてどうでしょう!」
「え、食べてもいいんですか! 遠慮無く戴いちゃいますよ!?」
「交換っこはいいですね、しましょうしましょう」
 仲睦まじく、差し出される料理が三人を巡って食されていった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

温泉のお話でした。
ご参加ありがとうございました、またよろしくお願い致します?

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