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シナリオ詳細

<大願成就>わたの原の軌跡を辿り

完了

参加者 : 32 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――いのちが、海へと消えた。

 流るる雲はその足を早める。人工灯りを反射して揺らぐ海面は天蓋より満ち毀れた星屑の輝きさえも反射した。撫でる様に凪いだ風の脚を追いかけたは誰であったか。人々は皆、青き地平の向こうへと歩を進めた旅人たちの帰還を心から喜んだ。
 戦いが終わったのだそうだ。遥か彼方に存在し得るかもわからぬ泡沫の夢を追うその最中に不運が如く刻まれた死の呪いより逃れるが為、冠との戦いを越えた。それは狂濤を乗り越えるかのように。
 その帰還を喜んだ者たちがいる。
 海原の女王たるイザベラ・パニ・アイスは彼らを湛え、傍らで涙を浮かべるコンテュールの令嬢の肩を当主なる兄が撫でる。
「よくぞご無事で」と涙乍らに告げたカヌレ・ジェラート・コンテュールは『想像し得ない苦難』を乗り越えたイレギュラーズ達に早速の祝宴と、少しの『お願い』を以て帰還を喜ぶと告げたのだった。


「おかえりなさいませ」
「おかえり」
『聖女の殻』エルピス(p3n000080)と『サブカルチャー』山田・雪風(p3n000024)はネオ・フロンティア海洋王国の美しい漣を聞きながらイレギュラーズへとそう言った。
 主賓たる彼らを招き入れるは海洋王国の王宮である。立ち並んだ歓楽街の商店たちは眠りを忘れたように歓喜の声を上げ、皆が皆、饗宴を演出し続ける。
 王宮へと続く道を辿る最中、イレギュラーズに手を振ったのはクラーク家の『双子』であっただろうか。その手にはしっかりと商店前に並ぶ出店の食事が握られている。市井の料理を知るのも名門なるクラーク家の者として必要な事であろうか。
「実は、女王様とコンテュール卿より、みなさまにおねがいがあるそうなのです。
 ……おねがい、は、どちらかと言えばカヌレさまから、なのですが」
 エルピスはそっと、カヌレのお願いを口にする。まるで大切な宝物のように告げれば、カヌレがどれ程この時を楽しみにしているのかが感じられた。

 ――おかえりなさいませ。皆さま。
 私、待っておりましたの。皆様の事を、ずっと、ずっと。ご無事で……いえ、『また会えて』嬉しく思っております。
 さて、みなさまの疲れを癒すために祝宴を用意いたしました。
 お疲れの方は私共が宿泊所も用意しましたので、お気を遣われませぬよう。

 ……それから、海の話を教えてください。
 私は陸(ここ)で待って居ただけ。貴方達の言葉で、物語を語って聞かせて欲しいのです。
 どうして、だなんて無粋な事はお聞きにならないで。
 待ってましたの、ずっと、ずっと。焦がれる様に――

「……好かれてるなあ」
 小さく笑った雪風はカヌレがそわそわとカクテルグラスを持って歩き回っていることを思い出した。
 祝宴の会場にはアクエリア島発見の切欠ともなったエルネスト・アトラクトスを始めとする要人が招待されている。此度の戦いでもその手腕を発揮したファルケ・ファラン・ポルードイ、ファクル・シャルラハ。そして、『竜との戦い』にその命を懸けて尽力したというコン=モスカの代表、サンブカス=コン=モスカ。勿論、先ほど屋台で見かけたクラーク家も招待客だ。探してみれば他にも見かけることが出来るかもしれないと雪風は思い返す様にそう言った。
「さ、行こう。カヌレ様も待ってるよ。
 ああ、でも、言っていたけれど、疲れたんなら無理はしなくて良いってさ……。
 宿泊所なんて、言われてるけど海の見える立派なホテル――まあ、コンテュールプロデュースってだけでズルいよなあ――の部屋もとってくれてるからそっちでのんびりしても良いらしいよ」
 傷を癒すのも大事だもんな、と雪風は気遣うようにイレギュラーズへとそう言った。
「雪風さま、ホテルのお部屋でも、食事はとれるそうですよ」
「ああ、そういえば。ルームサービスもあるし、さ。
 身内だけのパーティーとかもありだと思うよ。俺も、人前ってのはケッコー疲れるし」
 エルピスが首を傾げたが、雪風は「そんな感じ」と小さく笑う。

 何処までも美しいわたの原、漕ぎ出て見たその話を聞かせて欲しい。
 君たちが帰ってきたことを――皆、心から喜んでいるのだから。

GMコメント

日下部あやめです。どうぞ、よろしくお願いいたします。
パブリックな方をお借りさせていただいての祝勝会です。
長らくの戦い、お疲れ様でした。

●行動選択
 フェデリア海域での戦いお疲れ様でした。そして、冠位魔種の打倒、おめでとうございます。

【1】王宮のパーティーへ参加
 海洋王国の王宮では盛大なパーティーが開催されています。
 ダンスパーティーと立食パーティーのどちらもが行われており、美しいオーケストラの音色が響いています。
 食事は『美食家』達のプレゼンツ。海洋王国の食事以外に幻想王国や鉄帝国などの名物も取り揃えています。勿論、酒類も取り揃えられています。
 バーカウンターではオリジナルカクテル等を楽しむこともできるそうです。

【2】カヌレ達に英雄譚を聞かせる
 パーティー会場の一角にてカヌレ・ジェラート・コンテュールを始めとした王国要人が皆さんのお話を聞こうと待っております。
 こちらでも軽食や食事を楽しみながら冒険について語らうことが出来ます。
 ソルベ・ジェラート・コンテュール卿、イザベラ・パニ・アイス女王もこちらに居ますがダンスに誘うことも可能です。

【3】ホテルのお部屋でゆっくりと
 戦いお疲れ様でした。どうぞ、傷をゆっくりと癒してくださいませ。
 コンテュール家が準備した一流ホテルのスウィートルームや一室です。ルームサービスはご自由に。
 こちら、ご友人とのパーティーや恋人同士の語らい、傷を癒す、パーティーの喧騒から離れるなどなど、ご自由に……。

【4】その他
 その他、何かございましたらご指定下さい。

●同行者や描写に関して・注意事項
・プレイング冒頭に【1】or【2】or【3】or【4】の選択を記載してください。(【1】や【2】と書いて頂くだけでOKです)
※【4】に関しましては内容を添えてください。
・ご一緒に参加される方が居る場合は【同行者のIDと名前】か【グループ名】をプレイング冒頭にお願いします
・たくさんの方にお越しいただいた場合は一人当たりの描写量がワンシーンのみの場合がありますので、プレイングを掛けられる際は行動を絞って下さるとよいかと思います。

・NPC
 エルピスと山田の二名も何気なく参加しています。
 海洋王国のイザベラ女王、コンテュール兄妹につきましてはパーティーに参加です。
 その他、関係者の皆様はお名前をお呼びいただければ登場させていただきます。

 また、NPC(日下部担当以外)につきましても【ざんげ】以外でしたら搭乗できる可能性がございます。
 ※ご要望に沿えない事もございます。その際は無難にパーティーへの参加とさせていただきます。

 それでは、楽しい祝勝会を。

  • <大願成就>わたの原の軌跡を辿り完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2020年06月25日 22時10分
  • 参加人数32/∞人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 32 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (32人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
泳げベーク君
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
医術士
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
嶺渡・蘇芳(p3p000520)
お料理しましょ
カイト・シャルラハ(p3p000684)
先導者
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
シルフォイデア・エリスタリス(p3p000886)
花に集う
リトル・リリー(p3p000955)
リトルの皆は友達!
アリス(p3p002021)
オーラムレジーナ
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
蜻蛉(p3p002599)
蒼き夜の隣
ライセル(p3p002845)
Dáinsleif
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日の魔法少女
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
ラクリマ・イース(p3p004247)
協調の白薔薇
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
シラス(p3p004421)
鳶指
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
青と翠の謡い手
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
ゼファー(p3p007625)
never miss you
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
曇銀月を継ぐ者
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
三國・誠司(p3p008563)
一般人

リプレイ


 絢爛なるはシャンデリアが煌めく旭日を思わせるが故。銀食器の並んだテーブルに純白のクロスがかけられる。其処は海洋王国の王宮、麗しい天女を思わす女王陛下は戦士の羽休めを行い給へと玲瓏なる声音を響かせる。――そう、つまりは『無礼講』なる祝勝会の開始である。
「うむ、今日は楽しむが良いぞ。クラーク家の総力を挙げ豪華お食事フルコースにご招待なのじゃー」
 デイジーが胸張ればフランは「わあ」と瞳を煌めかせる。美食で名高いクラーク家。フランは『特製からあげ』で頑張れたのだとその瞳をきらりと輝かせる。
「――と言うわけでエドワード、パール、レナード、レジーナ主らの出番じゃ。
 クラーク家プレゼンツ古今東西あらゆる食材を使った豪華な唐揚げのフルコースをお見舞いしてやろう」
「えっ、今日もっとすごい特製からあげあるの!? やったー!」
 ぴょん、と跳ねたフランにデイジーが大きく頷く。その様子を見守りながら疲れたと言うように溜息をついたベークにフランは寸、と鼻先を鳴らした。
「……それにしても、二人共変な匂いしなくなってよかったなー。
 口には出してなかったけど、あたし二人の事心配してたんだよ! 元気になったことだし、いっぱい食べまくろうねー!」
「いやはやしかし、大変な戦いでしたね。迷子になったり、変なにおいしたり。
 でもまぁ、生き残ったからには万々歳でしょう。
 あ、今も美味しそうな匂いしてるなって顔でこっちみるのはやめてもらえると嬉しいです」
 悍ましき死の呪いの匂いが消え去った。それだけでもうれしいと言うのに――フランは『唐揚げ』を食べ続けたら、お口は甘い気分なのだと言うようにベークを真っ直ぐに見つめる。
「ねえねえデイジー先輩、たいやきはどっちから食べる派?
 あたしは頭からだね、うん。それじゃあ……いただきまーす!」
「うむ、因みに妾は尻尾から食べる派じゃ」
 ベークと同じサイズのタイ焼きを用意したというデイジー。そしてじゅるりと涎を垂らしたフランががばりと『タイ焼き』へと飛びついた。
「うーん、しかしこのからあげ美味しいですね、え? お腹いっぱい? デザート?
 なんでこっちみるんですか?? ぼくはたいやきじゃないでsあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」
 ――その後、彼の姿を見たものは……「いてくださいいいいいいい!?」
 その様子を眺めて蘇芳は「素敵」と瞳を煌めかせた。『美食家』のお墨付きなる宮廷料理。絢爛なる食事を目にすれば心はるんと踊り出す。
「お料理は、その国の特色や名産、生活が色濃く出るのよねー。
 それに、それを調理する料理人さんによっても変わるのよねー。うふふ、盗まなくちゃー♪」
 酒と料理の相性だって大切だ。肉汁溢るるステーキに、魚のソテー。ひとつひとつに、合う酒が違うのだからソムリエの能力だって、捨てたもんじゃないのだ。
 イレギュラーズになりたての頃、情報収集の為には茶会やパーティーの場には慣れておくように、と言われたことがあるとリディアは茫と思い出す。緑色のパーティードレスは可愛らしく、木漏れ日を思わせた。
 海洋名物の料理を口にしながら周囲をきょろりと見回せば、海洋王国の著名人や社交界の華も多数いる。これも何かの縁なのだ。
「お疲れ様です。……もしも、足がお疲れになれば、椅子へとご案内しましょうか」
 穏やかにそう声を掛ける海洋貴族にリディアは礼を言う。こうして、少しずつ縁を繋いで行けば『訓練』になるはずだから。
 リリーとダンスは出来ないけれど、とカイトは食事をしようと皿に料理を少しずつ盛り付け、リリーサイズに小さくカット。銀のナイフで切り分ければ馨しいかおりがリリーの鼻先を擽った。
「美味しいもの一杯なんだよね! よーし、いっぱい食べよー! ……ってリリーはそんなに食べれないんだけど……」
 くすくすと、小さく笑ったリリーは口移しして、と甘える声で囁いた。まるで雛鳥に餌を上げるように、少しずつを分け合えばそれだけで心は踊り出す。
「って、あれはカイトさんのお父さん? ……前にもらぶらぶな所見せちゃったし……また見せつけちゃおっか?」
 ――そう言ってから、ふる、とリリーは首を振った。何処か疲労の滲んだ父君はその友人らも海へと眠ったのだろう。そう思えばこそ、その心に再度の灯を灯らせるのも息子の役目だ。
「親父! 羽休めも大事だが、緋色の鷹は目の前の大空を征けって言ったのは親父だぜ?」
「……ああ、そうだな」
 大きく頷く彼はリリーとカイトに「楽しんでくれ」と憑き物の落ちたような顔をして微笑んだ。
「えーと……お元気そうで何よりです」
 イリスは折角だから、とシルフォイデアと共に父の元へと向かった。未だ、ぎこちない父との逢瀬に孕んだ緊張を緩和するかのようにシルフォイデアは微笑を浮かべて見せる。
「父様にお会いするのは久方ぶりな気がするのです。
 結局、大事業の最中もタイミングが合いませんでしたし……後、言わないと姉様はスルーしそうでしたし」
 ちら、と意地悪くそう言ったシルフォイデアは姉よりも父の事については分かる気がするのだ。ただ、その胸中を曝け出すのは控えて居たい。
 シルフォイデアにとっては救ってくれた人、生きる意味を教えてくれた人。最初は確かに、姉の希望にできる限り沿っていた。けれど今は――自分自身の為に動くことが出来るのだから。
「……滅海竜の所まで船を出したのはびっくりしました。
 大丈夫? 大事業で稼いだ分が水泡に帰したりしてないですか?
 あー、言いたかったのはそういう事じゃなくて、ずっと、勝手に出たまま帰らなかったのは申し訳なく思っていて、ただ、私は私として、外で生きていく方法を見つけたかったし、あの先を見ても、戻ろうとは思っていないのです」
 少し揶揄うシルフォイデアをチラ、と見た後にイリスはそのかんばせに戸惑いを乗せる。
 だから、そう、私がずっと言いそびれていたのはきっと――
「……いってきます」
 その言葉だけで父は「行ってらっしゃい」と娘を送り出す事が出来るのだから。
 どうしてもこういうイベントには苦手意識があると、ユゥリアリアは周囲を見回した。それでもメリルナート家の淑女として、社交界でしっかりと交流に励むのが貴族社会である。
 くるりくるりと優雅に踊るダンスは慣れ親しんだもの。然して、嘗ての醜聞で下手をすればダンスの相手を断られる事さえあったのだ。それも時間が経過し、イレギュラーズとしての活躍で薄れたという事だろうか。
(とはいえ潔癖な深窓の令嬢だとか噂好きな方ですと、まだ揶揄されることもあるかもしれませんが――ここで気にして俯いていては意味がありませんもの)
 胸を張り、堂々と。ユゥリアリアは微笑を浮かべて見せた。
「こういった場所は殆ど訪れた経験はないが……王宮か、やはり凄いな」
 麗しのオーケストラに聞き惚れて。ベネディクトは空になったワイングラスをテーブルへと置いた。傍らには黒いシルクのリボンを揺らす従者が立っている。彼の所作に合わせ、先回りしたようにグラスに水を注ぎ入れる様は正しく彼の傍仕えだ。
「はい。流石は王宮のパーティー、全てが一級品ですね」
「付き合わせて済まない、こう言った場に一人で来るのも慣れて居なくてな」
 いいえ、とリュティスは首を振った。主の為ならば、とテーブルの上の幻想や鉄帝の料理の一つ一つを確認する。鈍色の白髪を揺らした彼女にベネディクトは幾許考えた後、そっと膝を着く。
「私と踊って下さいませんか、ベルンシュタイン嬢」
 恭しく、そっとその手を重ねたリュティスは主人に恥をかかせるわけには行かないと擽ったそうに淑女の礼を見せる。笑みを浮かべた彼の掌に、そっと重ねた指先は僅かな困惑が浮かんでいた。
「はい、喜んでお受け致します。マナガルム卿」
 軽やかに踊り出る。そのステップは慣れを感じさせ――そして心地よい。リュティスの赤い瞳を勝ちあって、ベネディクトは逡巡した後、そっと問いかけた。
「リュティス。君は……――俺が仮に元の世界では王族の血を引いていた、と言ったら信じるか?」


 折角の機会なのだからとイグナートは女王イザベラの前で膝を折る。美しい海の乙女はその仕草を揶揄うように「何じゃ?」と問うて見せた。
 イグナートにはダンスの経験はない――けれど、相手の呼吸と足捌きを先読みする武術の心得を生かすことは出来ると気配を読み取る。詰まるは舞は武に通ずる――のだ。
「ワタクシと踊って頂けますか陛下?」
「愉快じゃ。エスコート願うぞ」
 その瞳が笑っている。緩やかなダンスに、その身を任せることも淑女の嗜みか。イグナートは良ければ語らおうと口を開く。
「カレらはクールだったし、オトコギがあったし、ひたむきだったよ」
 共に戦場馳せ翔けた者達。彼らの事を口にすれば――女王はああ、と息を吐いた。
「嬢ちゃんは、ああいうヒレみてぇな服を着たりしねぇのかい?」
 ロック・グラスに注いだのはドランブイとザ・ブルー。美しき蒼き海を思わせるエメラルドにクラッシュ・ド・おアイスでできた霧が美しい。
 くい、とグラスを持った腕を動かし指し示す縁に蜻蛉はころころと笑って見せた。その手にはシャンパンベースの黄色花(ミモザ)を咲かせ、白魚の指先は悪戯めいて彼の指し示す方向を辿る。
「うち? 着慣れた和服のが、落ち着くけど」
 洋物の華やかさは花びら開くが如くである。然し、傍らの男は『魚』と形容するのだから――彼らしい。ひらりひらりと重なるフリルを幾重にも揺らすさまを魚だと表現した縁へと蜻蛉は猫の瞳を細めて瞬いた。
「一緒に踊ってくれるんやったら、着てみてもええよ?」
 揶揄うその声音。煌びやかなドレスより、踊る貴方が見てみたいとお道化る声音は軽やかに。
「生憎と、俺は陸じゃまともに動けねぇんでなぁ。お前さんが引き摺ってくれるんなら話は別だが」
「ほら、手ぇだして……そっちの手も。今までやって引き摺って来たのに」
 無理だろう、と揶揄う声音に蜻蛉は唇を三日月に変えて手を伸ばす。そっと、その手が重なれば――嗚呼、貴方は出会った頃は指先一つ触れようともしなかったのに!
「陸でもちゃんとお魚よ? ……可愛らし人ね」
 かあ、と『酔った』ように頬に熱上げて逆上せたように視線が逃げる。蜻蛉は見上げた儘、小さく笑みを含んだ。


 天を仰げば小宇宙。きらりきらりと輝く星を指先辿ってアリスは「あれは夏の星かしら」と囁いた。居心地の悪さを感じる広い天井にゼファーはそわりと体を揺らす。
「普段が安宿ばっかりですから、ねえ?
 タダだからありがたいけど……首が据わらない気分だわ」
 わたしも同じ、と囁くアリスの指先にゼファーの長い指が絡む。ほう、と息を吐けば愛するアクアマリンが夜の光を受けて一層に美しく煌めいた。その輝きは『わたしだけ』。
 薄氷の色を覗き込めば、その瞳の中に自分が揺らぐ。ゼファーはいつも通りの平穏に口付ける様に指先に力を込めた。
 酷く傷ましいあなたの傷痕。赤い糸で繕ったわたしの軀。何もかもが、今迄通りなんかじゃなくても――「あいしてる、って云って」と乞うてその唇が紡ぐのならば、なんだって赦せてしまう。
「ルームサービスは――いいえ、其れよりも、ぎゅっとして」
「ええ、ええ。何度だって抱きしめてあげますわ?」
 怖かった。ええ、けれどそれだってあなたの腕の中ならば、愛しい瑕をなぞりながら心を繋げば、忘れて居られるから。

 ルームサービスで料理と酒を満喫したら、大きなベッドにごろりと転がって二人だけで話を使用。
「――嗚呼、美味しかった。流石はコンテュール家よねぇ」なんて、他愛もない会話がぷつりと途切れれば、その頬は彼の胸へ。
 とくん、と音立てる心の臓に息を吐いたミディーセラはアーリアの囁く声が耳朶に流れる感覚に目を細める。
「あのね、私すっごい大きな竜と、冠位魔種なんてものとも戦ったの。
 仲間も居たし大丈夫って思ってても……やっぱりちょっと、怖かったわぁ。
 でも、みでぃーくんが待っててくれるって思ったらいつだって頑張れたの――だって、一人になんてさせないもの!」
 待つも待たすも、どちらも辛く悲しいけれど。だから――貴方の許にこうして擦り寄れたのだから。
 うんと甘やかして。おかえりと囁いて。それから――抱きしめていて、愛しい人。
「わたしは、待つことしかできませんでしたけれど……それでも何か――ええ。ええ。
 もちろん、アーリアさんが真っ赤になっても、嫌がっても甘やかしますとも。
 膝枕だって、なんだって。貴女が帰ってきてくれたのだから。おかえりなさい。わたしの可愛いひと」

 喧騒を聞き乍ら、アレクシアはもそりとソファにその体を沈めこませる。傍らのシラスはそうしてのんびりと過ごす事で生きた心地がすると目を細める。傍らの彼女は自身の纏う死のかおりを身近で感じていただろうか。
「最後まで諦めなかったよ、大したもんだろ」
 褒めて欲しい、なんて。そんな思いを溢れさせたその眼差しにアレクシアの空色の瞳が瞬かれる。蒼穹を映すその瞳は丸くなってから、可笑しそうに細められた。頑張ったね、と。そう褒めて。
「……あのね、手、握ってもいいかな?」
 そのぬくもりが生きていることを実感させてくれるから。話したいことはたくさんあった。抱きしめたい切なさに駆られる――けど、落ち着くまで二人で手を繋いでいよう。
 そのぬくもりが、命のあかしを呉れるから。
「俺には……やっぱりアレクシアがいてくれないと駄目だよ」
 ヒーローは休業だけれど、きっと、彼にとっては『ヒーロー』の儘なのだ。優しくて、そして気高いただのひとりのひととして。

「漸く――終わったね」
 ふ、と息を吐いらライセルはラクリマの無事を確かめる様に彼の頬に触れる。穏やかな笑みを浮かべたラクリマはこくり、と頷いた。
「はい、これでやっと平和な日常に戻ったのです」
 死地に赴き、命を賭す覚悟をした。けれど、死ねない理由があったとライセルは息を吐く。
 こうして、穏やかな時間が心地よいと目を細めたラクリマの頬をそっと撫でつけてライセルは「大丈夫」と囁いた。
「もう……痛くはない?」
 触れた個所から、心が溢れてしまいそう。鼓動は、脈々と血液を送り出しては悲鳴を上げる。
 過保護、と揶揄うラクリマはそっとライセルを覗き込んで息を飲んだ。熱い、その指先と、その視線が。
「――あの……?」
「ラクリマ……その! ――……ううん、何でもない」
 落ち着け、と自身に言い聞かせる。ああ、そんな。中途半端じゃ、何も言えない。
 ラクリマが息を飲めば、そっとその方に重みが掛かる。逡巡する後、顔を上げれば穏やかな寝息が聞こえ、ラクリマは「寝るんかい」と思わず声を上げた。

「わっかんねぇ」と誠司はぼやいた。この世界に召喚されて幾許か。猫の手も借りたいと駆り出された戦場は死地そのもの。命を落とした者がいるという事も聞き及ぶ。
「普通じゃない。魔種ってやつもあの人たちもさ……あんなのがゴロゴロいて、ドンパチしてて、僕いらんやろ」
 そうぼやいた誠司は頬を掻いた。召喚は止まらない。留まることなく、破滅を防ぐ為に呼び続ける。其れも――帰り道を失うもの達を無尽蔵に生み出しては助けを乞うのだから。
 誠司はため息を吐いた。嗚呼、何もかもが分からない。神様とは、魔種とは。そんな風に堂々巡りの悩みを抱えていても、帰路は開かれず、自身のその身は混沌に放り出されるだけなのだから。
「……まあ、帰れるその時までは……僕もやってみますか。イレギュラーズってやつを、ね」


 女王はじめ、皆にもとココロが語るは『騎兵隊』の大活躍。聞き給え、この活躍、活劇を。
 講談師(はなしや)の如く、ココロの声音は軽やかに、そして勢い付けてぱちりとテーブル叩く。
「乾坤一擲、成るか為さざるかの大勝負!」
 海賊ドレイクと共に冠位魔種アルバニアを前にしても一歩も引かず、打ち破るは英雄譚。
 治癒の魔法を全力で唱えながら耐え続け、皆の背中に「生き残って!」の願いと共に駆け抜けた大海原。
 その海の戦いで斃れたイレギュラーズの活躍も堂々語る。讃える如く、そして、『伝える様に』。
「海に生きる人たちならこういう伝説を聞いたことあるでしょう。
 ――海に消えた人には、海でまた会えると。わたしはまた逢う日までの長いお別れだと思っているのです」
「あの決戦の場に立たせてもらってた一オークとして」とゴリョウは微笑んだ。だが、吟遊詩人や噺家の如き語り口は期待しないでくれと彼は言う。あくまで見た儘を、そして、自身が伝えたいことをと彼は堂々と云ふのだ。
「ま、俺がこんなガラでもねぇ語り役してるのは理由がねぇわけでもねぇ。
 ラルフ・ザン・ネセサリーという男が居たということを、一人でも多くのヤツに覚えておいて欲しいのさ」
 それは、あの滅海竜との戦いで『僅か数秒』のチャンスを――そして、それが多くの命を『伸ばした』――掴んだ男の名だ。
「奴さんに言わせりゃ『人の為にやったわけじゃない』って言うだろうけどな!
 だが、それでもあの愛すべき自己中の極みにして酒飲み仲間が、今、この場を作り上げた功労者の一人であるという事実だけは変わらねぇ。……なら俺も俺の我が儘でアイツのことを伝えたいのさ」 彼は寄せとでも言うであろうか。だが、それでもいいとゴリョウは笑う。
 その男は奇天烈であった。まさに、我を貫く勇士。その姿を、面白おかしくでもいい。憶えて居て欲しい。
「予め、お断りしておきますが」と幻は言った。これは英雄譚ではなく、自身の身に降りかかった実話であると。英雄譚を語らう者は他にもいるだろうと幻は緩やかに言葉を紡ぐ。
「私事になるのですが、恋人が廃滅病にかかってしまったのです――暫くして、恋人は僕に別れを告げたのです。
 後になって知ったのですが、彼は廃滅病や冠位魔種という危険から僕を遠ざけたかったそう。
 ですが僕の頭の中はそれでも恋しい彼を思って冠位魔種を倒すことで、目一杯でした」
 いとしいとしと泣けども、彼は愛を紡いだ唇で他の女へと恋を語る。きゅう、と締め付けられた心は苦しいと只、泣いていたのだ。
「漸く念願叶い冠位魔種に対峙したとき、彼に再会したの御座います。
 内心嬉しくとも、僕にも意地が御座います。
 冠位魔種に大見栄切って、彼の言うこと等聞かずに戦ったのです――その結果は皆様がご存知の通り。
 その後、彼からお詫びとプロポーズがあり、今結婚の準備を進めている最中です」
 遠ざけられるほどに柔な女ではございませんと幻は小さく、小さく悪戯を成功した子供の様に笑みを零した。
 折角ならばカヌレと『戯れる』かと、コンテュール家の御令嬢カヌレの元へと足を運んだエイヴァンはちら、と後方の『兄上』の姿を見遣る。年齢を重ねようともソルベ・ジェラート・コンテュール卿にとって愛妹は幼き頃と変わらぬ愛らしさなのだろう。
「……そういえば、大号令でドタバタして鉄帝視察どころじゃなかったな。
 今は新天地の方が気になるかもしれんがな……ただ箱入りお嬢様にとっては、まずは簡単な方からのほうがいいだろう? かなり間が空いたんだ。下調べもできてるはずだよなぁ?」
 揶揄う声音は、『真面目』な仕事から逃れたいという気持ちも一杯。カヌレはエイヴァンに「お兄様に教わりましたのよ」と胸を張る。嗚呼、麗しのコンテュール嬢は会話をするだけで兄の視線が棘の様に襲うのか。エイヴァンは面白おかしく喉を鳴らした。
 祝いの席であると言うのに、その場は晨と夜の帳を落としたように静かであった。
 サンブスカ=コン=モスカを前に、可憐なる海の花は頭を下げる。騎兵隊と、その英雄譚を語らうた、その裏側。
「この度は御息女を無事お返しすることができず。騎兵隊隊長としてお詫び申し上げます。御息女は、最後まで立派でした」
 月並みの言葉しか出ない、とイーリンはそう感じていた。本質は遠く波の中へと消え失せた。その傍らに立つクレマァダは『常』とは違う位置に立つ自身のその立場を『父』に伝えるべく、ゆっくりと息を吐いた。
「御父様――我は特異運命座標となりました。そして、巫女としての力を失い、祭司長の職務の一部が行えなくなったのです」
 片割は荒濤を受け止めた。その時、ひとつの命はその力を、共に波濤魔術を以て竜を受け止めたのかもしれない。緊張していた、父の顔をチラ、と見た時に彼は『分かっていた』用に薄く笑うのだ。
「そうか、ご苦労だったね」
 ――ああ、泣いて、くれないのだ。
 謁見を終え、少し離れたテーブルについてイーリンはカクテルグラスをクレマァダへと差し出した。
「悪いわね、クレマァダ。祝いの席で付き合わせちゃって」
 首を振る。父が狼狽える事も、涙を流すことも無く、『貴族』であったことが、胸の中に重石のように圧し掛かった。彼は――そして、間違いなく自分だって――コン=モスカの名を背負っている。それを理解せれど、イーリンの言葉に感じ入ってしまうのだ。
「……立場があるとね、辛いわよね」
「ありがとう、イーリン」――いーちゃん。
 その笑顔は大人びて寂し気で、似ていないのに、嗚呼、どうしても面影が。チラついた。

「イザベラ・パニ・アイス女王、ソルベ・ジェラート・コンテュール卿、そしてお歴々の皆様。
 このような場で恐縮ですが、私からご報告したき事がございます――キャプテン・ドレイクの顛末について」
 そう告げる寛治は背後より、ゆっくりと歩み寄るおんなの姿に頷いた。
 フォーマルなドレスに胸元には海洋王国特別勲章を。ドレイクの帽子を脱ぎ、ウィズィはイザベラの前で恭しく礼を取る。
「騎兵隊、ウィズィニャラァム。拝顔の栄を賜りましたこと、無上の喜びでございます、女王陛下」
 うむ、と頷く美麗なる女王陛下は彼女の手にした帽子に「伝説の海賊かぇ」と問いかけた。
 ウィズィが語るはドレイクとの冒険譚。邂逅、逃走、突撃、再開、取引、共闘――そして、自身を庇った。その彼との出逢い。
 深い畏敬を胸に、ウィズィは涙を拭わぬ儘に、言った。唇を震わせる。
「‪‪──‬彼は、愛に生きる冒険者でした」
 それは、自身と同じ。愛の為に。愛が故に。だからこそ、ウィズィニャラァムは言う。
「陛下。私は、今後とも海洋国の為に尽力致します――冒険者として。この勲章と、この帽子に誓って」
 大粒の涙と共に、堂々と胸を張り、そして、笑みを浮かべる。
 その決意こそ――ドレイクの帽子を手にしたウィズィニャラァムの『航海』なのだから。
 決戦から如何にブラッドオーシャンが青海を越えたか。一部始終を、そして、その顛末を。
「ドレイクは……『泥のように眠ったまま』でしたがね。
『第十三回』の大号令は、その船出を以て彼らが最初に達成した。我々を証人として」
 なればこそ――女王エリザベスに忠勇捧げた海賊の生き様の物語は見事に成功の襷を掛け幕引きだ。
「どうか、献杯ではなく乾杯を。大号令の成功に。彼と、彼が愛した女王と、その女王が愛した海洋王国に」
 ――イザベラ・パニ・アイスは堂々と。乾杯と口にした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 大きな戦い、お疲れ様でした。
 どうぞ、傷を癒してくださいませ。

 この度はご参加誠にありがとうございました。
 また、皆様とご縁がございましたらば。

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