PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<大願成就>喧騒離れて……

完了

参加者 : 25 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●沸き立つは喜びの声
「大号令成功!!」
 国民達はその報せを受けて喜びの声を上げた。
 それから、あちこちで宴の準備が始められた。最早お祭り騒ぎだ。
 だが、この大号令による戦没者は極めて多い。だが、それでも彼らは涙を見せる事をしなかった。
 海洋の民は知っている。
 『この成功に沸き立ち、騒ぎ、歓喜する事』だけが彼らへの鎮魂となる事を。
 海に沈んだ数多の英霊に向けて敬礼と笑顔を持って、その手にジョッキを掲げた。
「乾杯!!」
 隣に、英霊達が居ると信じて。

●喧騒の影で、思いを馳せる
 宴がそこかしこで催され、歓声と乾杯が繰り返される。
 出来上がっている彼らとは別に、ひっそりと物思いに沈む者達も居た。
 喧騒が苦手な者、親しい者と少しだけ喧騒から抜け出した者、一人で考えたい者など、理由は様々だ。
 彼らは店から少し離れた場所から海を臨み、飲み物あるいは食べ物を喉に流し込む。
 船のある場所まで来て海を見たり、喧騒から少し離れたテラスに設置されているテーブル席で一息ついたり。過ごす場所もそれぞれ異なる。
 先の戦いに思いを馳せる者も居るだろう。
 あるいは、この勝利やこれからの未来に思いを馳せているのかもしれない。
 彼らの視線の先では、闇の中で月と星明かりで煌めく海が、波の音を静かに奏でていた。
 離れた所から聞こえる喧騒をBGMにしながら、彼らが思うのは――――

GMコメント

 大号令成功、おめでとうございます。
 祝勝会ですが、こちらは喧騒から離れてしっとりしたい方向けです。
 デートの場として活用するも良し。一人で過ごすも良し。友人と静かに酒を飲むのも良し。
 喧騒の中よりはこちらで静かに過ごしたい、という方は是非こちらをご利用ください。

●プレイングについて
 使用できる場所ですが、推奨される場所としては次のようになります。
【ア】店から離れた、人の少ないテラス:テーブル席が少ないながらもある。落ち着けるのに最適。
【イ】船が停められている場所:飲食物や明かりなどは持ち込む必要があります。
【ウ】人の少ない広場:人気が少ないだけで、明かりはあり、まばらに人が居ます。飲食物は持ち込む必要があります。

 プレイングの際には、一行目に場所を【ア】などにて記していただけると描写しやすくなります。
 また、二行目に追加するタグとして、次の選択肢から選んでいただけると助かります。

【A】ソロ・誰かと絡み希望:一人だけどできれば誰かと絡みたいなという方向け。
【B】ソロ・絡み希望なし:最初から最後まで一人で過ごしたい方向け。
【C】二人行動:友人と、恋人と、家族と、など、二人きりで過ごしたい方向け。名前の記載忘れにご注意ください。
【D】グループ行動:三人以上の行動をされる方向け。騒ぐ事は非推奨の為、お気をつけください。名前の記載忘れにご注意ください。

 【C】【D】の場合は一緒に行動する方の名前の記載をお願いいたします。

●プレイング例
【ア】
【C】〇〇と。
 以下、行動内容~

 このように記入していただけると描写しやすくなりますので、よろしくお願いいたします。
 カップルさんの場合、できるだけ甘くなるように努めます……!

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。

  • <大願成就>喧騒離れて……完了
  • GM名古里兎 握
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2020年07月03日 22時05分
  • 参加人数25/30人
  • 相談6日
  • 参加費50RC

参加者 : 25 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(25人)

R.R.(p3p000021)
破滅を滅ぼす者
エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
泳げベーク君
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
コレット・ロンバルド(p3p001192)
破竜巨神
楔 アカツキ(p3p001209)
踏み出す一歩
アト・サイン(p3p001394)
観光客
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
蒼剣の秘書
カーネリアン・S・レイニー(p3p004873)
ワンダラー
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
沁入 礼拝(p3p005251)
足女
一条 佐里(p3p007118)
砂上に座す
ペルレ=ガリュー(p3p007180)
旋律を集めて
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
リズリー・クレイグ(p3p008130)
暴風暴威
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
メーコ・メープル(p3p008206)
ふわふわめぇめぇ
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
策士

リプレイ

●海の色は暗く、されど思いを浮かせて
 『戦気昂揚』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)が手土産になりそうな酒と食べ物を持って向かったのは、船着き場の周辺を見張る者達だ。
 先の戦いが終わっても油断せずに詰めている彼らを気遣うのは、彼自身も海洋王国軍大佐という身分だからだろう。
 「お疲れさまだ」と声をかけて渡した後、邪魔にならないようにすぐ退散した彼。戻る途中で目にしたのは、『精霊の旅人』伏見 行人(p3p000858)の姿。ジェットパック相当の大きさの風の精霊と、水面に浮かぶ小型船程の大きさの水の精霊が傍に居る。
 前者に花束、後者に酒を贈る姿を見て、良い関係と感じ取れた。
 視線に気付いた行人が振り返り、軽く挨拶をする。
「やあ」
「ああ」
「あっちの宴には行かないのか?」
「ああいったのは息が詰まるんだよ」
 貴族や将官の相手をするのは面倒なんだ、と続けた彼に、なるほどと得心がいった顔をする行人。
「それに賞賛されるようなことは俺はやってないしな」
「そうかな?」
 少なくとも、戦いには参加していたのだ。それだけで称賛に値するのではないかと考えるが、それ以上は言わないでおいた。
 話を切り替えようとエイヴァンから質問が飛ぶ。
「ところで、酒でもどうだ?」
「歓迎だよ」
「それでは、適当にくすねてきた酒と料理を……」
 そう言って並べたエイヴァンの横に座り込み、行人は料理を頬張るのだった。



 明かりと明かりの間にて、『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は腰掛けて船を見る。
 持参したカクテルを飲んだ時、あの戦いを思い出すと口の中に苦味が走った。
 あの戦いでリーデルと会い、この手にかけた事。
 廃滅病に命を削られながら、冠位魔種アルバニアと対峙した事。
 全てが長い夢のように思えたけれど、それらは全て現実だと、水面に映った自分の顔が言う。
『――それでも、生きていくって決めたんだろ?』
 水面の自分が問いかける。
 傷も痛みも請け負って、彼はグラスに残ったカクテルを一気に飲み干した。



 誰も来ないような建物の上へ、『後遺症の嫉妬』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は飛んでそこへ腰掛けた。
 遠くに見える喧騒が、あの戦いの事を思い起こさせる。
 思い返せば返すほど、彼女の中で嫉妬が渦巻く。
 奇跡を起こした者達とは対称的に、器用貧乏で何も出来ない自分。
「このままじゃ……ダメだわよね……どう……しようかな」
 唐突に浮かんだ、一人の男。
「レオンさんは……今の私を見たら、何て言うのかしら……」
 会いたいような、会いたくないような。
 複雑な乙女心を抱えて、彼女は今夜、嫉妬に身を焼かれる。



 港にて、明かりを持たぬまま、『胡散臭い密売商人』バルガル・ミフィスト(p3p007978)は一人、煙草をふかしながら海を見ていた。
 いつもの胡散臭さを感じる表情は見られず、ただジッ……と海を見つめる姿にはどこか哀愁が漂っている。
 そんな彼の背に声をかけたのは、『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)だ。
「一杯どう?」
 彼女の手には、ダークラムの瓶とチョコレート。
「いただきましょう」
 快諾にアーリアは頷く。
 グラスに酒を注ぎ、アーリアが先に言葉を紡いだ。
「海洋の酒場で飲んでいた時に船乗りや海軍の人達とも飲んだことがあって、きっとそんな人達も絶望の青で戦っていて、帰って来なかった人もいて」
 思いを馳せる彼女の言葉をバルガルはただ傾聴する。
「命を懸けて戦った人がいた、奇跡を起こした人がいた。……私はいつか、誰かを護る為に命を懸けることができるのかしら」
 あの戦いで起きた奇跡を振り返る。あんな風に命を懸ける姿を見た自分の思いは迷いとなり、闇の中で光を求める。
 静寂の中、男の方が沈黙を破った。
「此処に帰ってきた船のどれだけが、なんて事はもう聞いております」
 アーリアの顔は彼を向かず、耳だけを向ける。
「それでも皆、こうして歓喜し、騒ぎ、沸き立っている。それの何と難しい事か。此処の方たちは大変、強いのでしょう」
 苦笑いをするのが横目に見えた。
「自分は何時までこのようにしているのでしょうね? 自己嫌悪している暇もそうないでしょうに」
「……そうね」
 似たような迷いを持っている者同士、その後はただ静かに酒を飲みかわす。
 グラスの酒を飲み干したのと、煙草の先が短くなったのはほぼ同時期で、バルガルはそれを携帯灰皿にしまい込むと、アーリアに礼を言って踵を返した。
 海を眺め、残された彼女はチョコレートを齧る。
 酒の味を調和してくれる甘味は、自分の迷いのようだった。



 『踏み出す一歩』楔 アカツキ(p3p001209)は、グラスを二つ並べた。相手は居ない。
 酒を注ぐ。静かに「乾杯」と口にした彼は、自分の分だけ口をつけた
 この世界に来てから一度も口をつけた事の無い酒。
 記憶はないのに、飲んだという事実だけは覚えているという矛盾を抱えつつ、今夜だけはと解禁した一杯を喉に流し込む。
 相手の分の酒は、海へと流した。
 いつの間にか、この世界は自分の居場所になっていたが、あの者にとってもそうだったのかもしれないと、ふと思ったけれど。
「今となっては確認する術は無い、がな」
 夜風に身を震わせると、彼はゆっくりと立ち上がった。
 帰る先は宿。
 明日からもまた、戦いが始まる日々。その為にも、ゆっくり身を休めよう。



 桟橋の所まで歩く姿があった。人型の姿をとっているが、その正体は『鉄壁鯛焼伝説』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)である。
 屋台で購入した飲食物を手にして歩く彼。この姿になったのは、食べ物と間違えられないようにする為だ。
 目的地に到着した時には先客が居た。
 『すやすやひつじの夢歩き』メーコ・メープル(p3p008206)は、海を眺めて静かに佇んでいる。
 折角だからと声をかける事にした。
「お嬢さん、ご一緒にどうですか」
 振り返ったメーコは、ベークの姿を見つけると少し迷った様子だったが、やがて頷いた。
 隣に立ち、適当に買った食べ物の一つを差し出す。彼女が礼を述べて受け取ったのを見て、ベークはおもむろに話しだした。
「いやぁしかし、大変な戦いでしたねー。とても疲れましたし、しばらくは適当に傷を癒すことに専念した方がよさそうです。なのでしっかり食べないといけません」
「そうですめぇ……。大きな海で、船に乗って、伝説の竜と戦う。そんな物語でしか体感できないような事を現実に、この身体で実感して」
「僕もです。しかしまぁ、色々ありました。食べられそうになったり。食べられそうになったり。アレ、そんなのばっかり……?」
 首をかしげる彼の言葉と様子に、メーコは思わず小さく笑う。
 少し笑顔が見られて、ベークも笑う。
「まぁ、辛い戦いもひと段落ですし、とりあえずはヒレを伸ばしましょうかね……」
「戦いも終わって、こうしてゆったりとした時間を過ごすというのも、本当に物語の主人公のような気がして……少し、心地よいですめぇ……」
 彼女が嗅覚から得た海の香りも、あの戦いの時とは違うような気さえする。
「元の世界ではずっと故郷の山にいて、海は初めてだったけど……また、この大きな海で大冒険してみたいですめぇ……」
「また機会もあるかもしれませんね」
 笑うベーク。
 そうして二人、なんとはない事を話しながら時間を過ごしたのだった。



「む」
「む」
 異口同音で発したのは、『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)と 『貴族騎士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)だった。
 船が停まっている場所にて出会った二人。ほぼ同時に顔を突き合わせる事になった。
 R.R.が踵を返そうとするのを、シューヴェルトが止める。
「良ければ、あの時の戦いを教えてもらえないか?」
 自分の知らない戦いを知りたい欲求をぶつける彼に、R.R.は困惑の色を見せた。
 口を開いた彼が紡いだのは、予想と違うもの。
「俺はただがむしゃらに引き金を引く事しか出来なかった。
 永い眠りから覚めて、右も左も分からず、足りない力で抗った」
 悔恨。
 それが今の彼の気持ちに生じているもの。
 破滅の化身たる竜を封じる為に、激しく戦い、いくつもの奇跡は命を懸けて起こされた。その果てに掴んだ勝利だった。
 あの中で、自分が出来た事は何だったのかと、自己嫌悪と悔恨が自身を蝕む。
「力が欲しい。破滅に抗う力が。武力だけならず、理性すらも足りなかった。
 俺にはあらゆるものが足りていない。それを得る為の努力は、きっと途方もないだろう」
 シューヴェルトはただ傾聴する。口を挟む事なく、その思いを受け止めた。
「俺が語れるのはそれだけだ」
 そう言って踵を返した彼を、今度は引き止める事はしなかった。
 去っていく背中を、騎士は静かに見送る。



 海がよく見える波止場に腰掛けて、『筋肉最強説』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は赤ワインを口につける。
 この世界に来て初めての大きな戦いは、彼女にとっての初めての戦いであった。
 それを経験した事で、彼女は一つ、決めた。
「この世界に迷い込んだのも何かの縁。世界の為に戦う、というのも悪くはない」
 武者修行のつもりだった。
 けれど、あの戦いで起きた奇跡と勝利を見たら、この世界に関わる事を選ぼうと思った。
 彼女は赤ワインをもう一口つけると、残りを海へと流した。
 彼女なりの手向けだ。
 散った者達へ捧げる赤ワインは、海へ溶けていく。



 『荒熊』リズリー・クレイグ(p3p008130)は、波止場の先に着くと、酒瓶を地面に置いた。
 未だに傷の言えぬ体を押してここに来た彼女は、独り言を口から零す。
「……にしても、魔種も龍も、好き勝手殺してくれたもんだね……流石のあたしもちょっと恨むよ」
 軍人、イレギュラーズ……と、散っていった者達を想う。
 その中でも肩を並べて戦った事のあるカンベエには、ひときわ思い入れがあった。気持ちのいい男だった、という意味で。
「はん、生き急ぎやがって……酒の味も知らない内に死んじまうなんて、勿体ないにも程がある。
 ……ゆっくり眠りよ。この酒は、その内そっちへ持って行ってやるさ」
 それはいつかの約束。
 出来れば、遠い道の先に果たされる約束であれと、願った。



 『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)は、『足女』沁入 礼拝(p3p005251)と共に居た。
 取り出した煙草を見せながら、キドーは礼拝に言う。
「煙草一本分の時間を『買った』。分かってるよな。カンデラが尽きるまでは何言っても忘れろ、足女」
「煙草一本分、でございますね? ええ、ええ、もちろん。足女の名に誓って口外は致しませんとも。元より、それが私の正しい使い方なのですから……」
 誓った女に背を向けて、彼は一つ息を吐くと、言葉を口から零し始めた。
「知ってる奴も知らない奴も死んだ。沈む船に、乗ったままの奴らの顔がよく見えた。
 ダチが死んだ。女房子供ほったらかして、よりによってこそ泥の俺に船を任せたまま。船長のくせに。
 その上新天地発見の報告なんて聞いたら、見たかっただろうなって、俺、おれは……」
 少しずつせり上がる嗚咽。
 礼拝はただ静かにその場に佇む。
 時間が経ち、カンデラが小さくなった頃、キドーの嗚咽もようやく静かになっていく。
 振り返った彼の目の周りは赤い。けれどそれを礼拝は忘れる事にした。
「あー……スッキリした。
 おい礼拝、も少し付き合えよ。今は足腰立たなくなるまで飲みてえ気分だ。全部俺の奢りでいいからさぁ! ねぇ!」
 男の言葉に、女は静かに微笑み、頷く。
「まぁ、キドー様から誘っていただけるなんて光栄です。ふふふ、私も朝まで予定がございませんの。何処までもお付き合い致しますわ」
 あの海で何があったのか、居なかった彼女には言葉がかけられない。
 ならばせめて、傍に居る事の方がまだマシだと、喧騒の中へ、二人消えていった。



 船着き場の一番沖に近い場所までやってきて、『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)はそこでようやく一息入れた。
 先程まで喧騒の中に居たのだが、なんとなく海が呼んでいるような気がしてここに来たのだ。
 先の戦いに思いを馳せる。
(海竜さま。リヴァイアサンと眠りについた竜の姫様。助けてくれた、大事な神様)
 寂しくないか、今年の祭りは、などと、船乗りの彼は色々考える。
(静寂の海で釣れた魚をお供えしないとな。約束したもんな。祠もきれいに掃除しないと)
 やるべき事を再認識し、彼は青銀に輝く鱗を握り、海へと祈る。
 今年も豊漁でありますように、と。
(だからまたいつか。声が聞きたいな。海の底で会えたらな)
 船乗りとしての魂で、いつか、海の底にて再会しよう。

●馳せる者達の空は今宵も煌めく
 テラスにて、『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)は一人、想う。
 街角ですれ違い、短い挨拶をするだけのような関係だった者達の事を。
「それでももう会う事はないんだなと思ったら、寂しいし、悲しいよね……」
 イレギュラーズだけではなく、兵士達や船員達も命を落とした。
 思う事は傲慢だと分かっている。けれど、思わずにはいられない。
 あの時、自分にもっと力があったら……と。
「強く、なりたいなぁ……」
 そんな事を、思わず口に零し、空を見上げた。



 『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)は、『ドゥネーヴ領主代行』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)と共にテラスでグラスを交わしていた。
 喧騒が聞こえてくるのをBGMに、ベネディクトが口元を緩めて話しかける。
「絶望の青の踏破か……流石に何処もかしこもお祭り騒ぎだな」
「元気が余っておれば騒ぎに参加したのじゃが……まあ、友達とゆっくり酒を飲むのも良いものじゃな」
 ニッと笑うアカツキを見て、思い出したように一つ問う。
「そういえば、何時かアカツキに託したマントは役に立っているか?」
「うむ、此度の戦いもよく妾のことを護ってくれたのじゃ。改めて礼を言わねばな」
 マントで思い出した、と前置きをして今度はアカツキから質問が飛ぶ。
「このマントの出自はあるのか?」
 一度空を仰ぎ、視線を戻して答える。
「それは俺の元の世界の親友の物でな……本来であれば俺の手元に残る筈では無かった代物だ。何時までも死蔵していては奴に叱られてしまう気がしてな……役に立っているなら良かった。アイツも喜ぶだろう」
「なるほど、ベー君の親友の……うむ、ではこれからも共に戦場を駆けるとしよう。彼の者に恥じぬ戦いを約束するのじゃ」
 力強い返答に、ベネディクトは満足したように酒をあおった。



 コレット・ロンバルド(p3p001192)は、テラスの一角に座り、りんごジュースを頼んだ。
 待つ間、目を閉じる。今は何も考えずにいたくて。
 すぐに運ばれてきたりんごジュース。それを喉に流し込みながら考えるのは、あの戦いでは自分はどう動けただろうかという事。
 逡巡しても、答えは導き出せぬまま。もう切り上げようと気持ちを切り替え、席を立つ。
 彼女の姿はテラスから消え、夜風が凪いだ。



 人気の少ないテラスだからこそ、管をまけるというのはあるのだろう。
 『観光客』アト・サイン(p3p001394)は、同行者である『ワンダラー』カーネリアン・S・レイニー(p3p004873)相手に、早くも酔いを回したように絡んでいた。ノンアルコールなのに。
 それに対して、カーネリアンは適当に相槌を打つのみ。酒代は彼が奢る事になっているので、酒も遠慮なく飲んでいる。
「だからさあ、わかる? カーネリアンおねーちゃん。僕は正面切って戦えるように体ができた観光客じゃないんだよ。なのに今回は勢いに乗りすぎた」
「よしよし」
「あーもう疲れた! 聞いてる、おね―ちゃーん!!」
「聞いているよ。ま、しばらくはのんびりするんだね」
「うん……」
 大人しくなった彼の頭を、カーネリアンは微笑みながらわしゃわしゃと撫でるのだった。



 『お姉チャン』ジェック・アーロン(p3p004755)は、隅の席にひっそりと座ると、飲み物を注文した。
 すぐに運ばれてきたジュースにはストローが差し込んであり、落ち着かなくてつい癖で頬に差す。
 今の自分を見て、笑うだろう人達の事を思い出す。
 気性が荒くて気が短くて、それでも気の良い海の荒くれ者達の事。
 連鎖する記憶の中では、目の前で沈む船に、波に呑み込まれていく人の姿がある。
 それらに対して、何もできない、自分の無力感。
 思い出せば出すほど、飲み始めたジュースはひどく苦く感じた。

●広場から見る海、あなたの祈りは遙か先へと
 『銀の腕』一条 佐里(p3p007118)は、広場を歩きながらため息を零す。
 先の戦いでたくさんの血と命が散っていった。
 慣れないものは慣れず、それ故か喧騒の中に混ざる気にはなれず、ここまで歩いてきた。
 その中で目に留めたのは、『英雄のたまご』ペルレ=ガリュー(p3p007180)の姿だった。
 彼女は何かをする様子で、佐里は声をかけるのも憚られて、遠巻きに彼女を見つめる。
 視線に気づかぬ程に没頭している彼女は、悔恨と詫びの気持ちを抱えたまま、宝石を持つ。
 唇から紡ぐは、送る歌。

「さぁ、旅支度を始めましょう。

 右目は過去を。
 左目は未来を。

 右手には平穏と安らぎ。
 左手には勇敢な貴方を称える宝物。

 胸の中、希望の星は紺青の上に輝き」

 順番にシーアストーン、ラブラドライト、アイオライト、アクアマリン、ラピスラズリを死者の体に見立てて置いていく。

「旅装束に着替えたら
 新しき旅路、新しき風が、貴方を次の道へ誘うでしょう」

 薄布をかけ、香料を撒く仕草をした後、祈りを捧げる少女。
 自分が弱かった事を嘆く彼女が、今、出来る事。
 その姿を見ながら、佐里は思う。
(涙や辛さを背負って、笑って前に進む人たちがいる。
 ……でも、みんなが素直に喜べるわけじゃなくて。友人や家族を失った人たちは、やっぱり悲しくて)
 自分も、涙と痛みに寄り添いたい気持ちが強いのだろうか。
 かつて子供の頃に、家族や友人を失ってしまったから。
 気持ちの整理がつかぬまま、彼女は空を見上げる。
 零れそうになる何かを落としたくなかった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

皆さまそれぞれの思いに添えられたなら幸いです。
お疲れ様でした。

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