シナリオ詳細
<Kirschbaum Cocktail>Your color.
オープニング
●さくらのいろ
「皆さん、『桜のリキュール』のお話を聞いたことありますか?」
その言葉にあぁ、と頷く者もいればはてなんのことかと首を傾げる者もいる。ブラウはその反応を一通り眺め見て、サッと横へ移動した。その体で隠されていた瓶がイレギュラーズの眼前へ晒される。
ブラウの言う桜のリキュールとは、どうやらこの瓶の中身のことのようだ。
「実はですね、最近いきなり『珍しい桜のリキュールが流行るぞ!』って噂が流れ出したんです。で、実際に品物も流れ始めて。
唐突だし、ちょっと気になりはしますよね? いえ、違いますね、僕たちが気になったんです」
もしも、それこそ魔種たちの仕業などで何かが動き出しているのかもしれないとしたら。対処が遅れることは可能な限り無くしたい。
後手に回って被害を被るのはイレギュラーズであるが故に。
しかし結果は白。些か不透明な部分もあるが、味も匂いも普通の──強いて言うなら美味しい──桜のリキュールだ。飲んだ結果おかしくなったという情報も上がってこない。ひとまず危険性はない、と言うのが情報屋たちの判断だった。
「まああまりカリカリし過ぎるとほら、人間不信になっちゃいそうですし。
……で、僕ちょっと気になる情報聞いちゃったので皆さんにお伝えしたくてですね!」
というわけでここからが本題。
彼の情報先は深緑。なんでもたいそう見事な桜があるのだと言う。驚くべくは『桜リキュールに花弁を浮かべると、花弁の色が変わる』という内容だ。
「全員が同じ色というわけではないらしくてですね、これには練達の方でも興味を持っている方がいるのだとか。
パーソナルカラーだとか、その時の気持ちだとかで変わる? ようなことを言っていました」
見られる期間は桜のリキュールが出回り、深緑の桜が咲く今の時期のみ。
折角だ──不思議な花見と洒落込もうではないか。
●あなたのいろはなんですか
「ああ、来た。こっちだよ」
迷宮森林の前で手を振った『Blue Rose』シャルル(p3n000032)はイレギュラーズが集まったことを確認し、森の奥へと誘った。
冬を越えたからか空気は柔らかく、足を動かすイレギュラーズの頭上で木漏れ日がチラチラと揺れる。
ふわぁ、と小さく欠伸をしたのは先頭を行くシャルルだ。
「ねむ……あったかいね、今日。これなら桜も咲いてそう……あふ、」
シャルルが欠伸を繰り返す。どうにも眠気が収まらない。全てはそう、この暖かい陽気が悪いのだ。
「うー、ダメだ。色の変わるところを見る前に寝そう」
首を振るシャルルに合わせてふわふわとした髪が揺れる。あとを追うイレギュラーズは苦笑を漏らした。
確かにこの陽気なら眠くなるのも仕方ない──が、この後に待つ珍しい桜を見られないのは確かに勿体無いだろう。
シャルルがブラウから預かってきた桜リキュールの他にも、飲み物や食べ物は携えているようで。イレギュラーズが分担して持ちながら桜の下まで歩く。
さあ、花弁は何色に染まるだろう?
- <Kirschbaum Cocktail>Your color.完了
- GM名愁
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2020年04月02日 22時05分
- 参加人数30/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 30 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(30人)
リプレイ
●
「ああ、いい天気だね……」
ウィリアムがごろんと寝転がれば満開の桜が視界に広がる。ポカポカ暖かくて良き昼寝日和。
花弁をリキュールに落として色彩を楽しみたいとも思っていたが、これは寝ないわけにいかないだろう。
サンドイッチとリキュールを楽しみ、やがて来る睡魔に身を任せて。
すぅすぅと寝息を立て始めるウィリアムへ、その手元のリキュールへ。舞い散る花弁がふわりと着地した。
「姿が見えないな、と思っていたらまさか既にダウンしていたとは」
「悪いね。少し飲(や)り過ぎた……うむ、甘露、甘露」
赤らんだ顔を隠すことなく、ベネディクトからグラスを受け取った行人はそれを口に含む。さぁ、と清涼な風が抜けていった。
(こうして、穏やかに花を楽しむという事が出来るとはな……)
ベネディクトは舞い散る花弁に目を細める。あの世界では喪われた物も、人も多かったことだろう。
そんな彼を、行人は自らの歩幅で歩けている者だと言った。同時に、自分は色々と見落としてきたのだ、とも。
「だから俺は旅に出た……自分勝手から始まった旅路だが、順調に生きていたら会えなかった人や物がある」
今とて然りだ。勿論、喜怒哀楽の含まれた過去は変えようがないけれど。
「今はこの花と、これからに」
「ああ、この美しい花と俺達の今に」
──乾杯。
杯に注いだリキュールを小さく揺らしていると、鬼灯の腕の中で嫁が見上げる。
『鬼灯くんはお酒が好きなのよね!』
「ああ。意外と言われるが……、嫁殿、変わってきたぞ」
言葉が途切れたのは花弁の端がちりりと色を変え始めたから。嫁が『すごいわ!』と目をキラキラさせながら見つめている。
「嫁殿とよく似た可憐な色だな」
そう告げて手を伸ばした先は嫁の頭。彼女が気づかぬうちにそっと花弁を取って。
『お花見って素敵ね! 鬼灯くん! 今度皆も一緒に来ましょうね!』
鬼灯の部下たちも共に、賑やかに。自分と嫁がその中にいる光景を想って鬼灯は目を細めた。
「うーむ普通の花なんだけどなぁ」
「うん、懐かしい」
珍しいリキュールと花弁にそわそわするルーキス。対してルナールは珍しいより懐かしさを感じていて。2人は花弁をキャッチすると、揃ってグラスへ落とした。
珍しい赤色にルーキスは目を丸くする。
「お兄さんの色が移ったかな、恋人同士は影響されるって言うし」
ルナールを見れば、そこには淡い青の花弁。2人は笑い合い、交換する? と聞いてみて。
「俺はこっち、ルーキス色のままがいい」
「味は変わらないしね」
それでいいよ、と頷くルーキスへ彼はそれに、と続けた。
「俺色の桜の花弁なら、尚の事ルーキスが飲んでほしいし」
微笑を浮かべながらルナールは自分のグラスに口をつけ。それをみた彼女もまた彼に倣う。
穏やかな2人の時間を、緩やかに舞い落ちる花弁が彩っていた。
あふ、と欠伸を漏らす。そんなクロバにシフォリィは何か言いたげな視線を向けた。
酒に弱いクロバであるが、本日はノンアルコール。けれど前日があまり眠れなかっただけに、このポカポカとした陽気が殊更強い眠気を誘うのだ。
「膝枕してもらってもいいかな? ……冗談。起きれる自身がないや」
苦笑を漏らすクロバにシフォリィは出鼻をくじかれる。膝を貸そうか聞こうと思ったのに。
眠気に耐えるクロバと弁当をつつき、桜のカクテルを楽しみ。2人で見上げる桜のなんて綺麗なことか。
こんな日が──恋人と共に花見をする日が来るなんて、思いもしなかった。
「また来年も、花見にこれたらいいよな……」
「クロバさん?」
声をかけても瞼は閉ざされたまま。他の人だっているんですよ、なんて言葉も聞こえている様子はない。
シフォリィはくすくすと笑いながら彼の頭を膝に乗せる。その頬にひらり、と舞い散る桜の花弁が乗った。
顔を上げれば、澄んだ空と満開の桜がそこに在る。
(……来年もその後も、ずっと一緒に花見に行きましょう)
クロバの寝顔へ視線を落として、また小さく笑って。シフォリィはそっと言葉を落とした。
「……でも、来年は起きてて下さいね?」
●
エイヴァンはやっぱりな、という顔でリキュールに浮かぶ花弁を見下ろしていた。
どす黒く変色されるよりは良いが、予想通りの白も些か面白みに欠ける。
(ああ、だが少し青っぽいか)
傾けてみると、何だか小さな海があるみたい。そう思えば腹に入るのが惜しい気もするが、だからといって飲まない選択肢はなかった。
これが空腹故の青色ではないかと考えるのは、もう少し先のこと。
「何色になるか、当ててみるかい?」
唐突な十夜の言葉に蜻蛉は目を瞬かせた。当たったら、なんて言葉を紡ぐ十夜の口調は明るくて、蜻蛉は薄く笑みを滲ませ諾を告げる。
互いに刻限が迫っているなど、思えないようなひととき。
「……そしたら、旦那のは薄い水色。うちのは何色やと思う?」
彼が和菓子屋へ連れて行ってくれるというのなら、自分は腕を組んで帰ろうか。そう呟いた蜻蛉は、十夜から零れた「青」の言葉に首を傾げた。
「ああいや、赤、かね。濃い目の」
言い直した色は蜻蛉が思う自らの色。2人は花弁を手のひらからグラスの中へと移す。
「……正解だ」
薄い水色に染まった花弁から十夜は視線を滑らせて──それを凝視した。
「……青やった、残念でした」
海のような色。いつの間にか染められてしまった、蜻蛉の色。十夜が最も好きな色。
──嗚呼、この気持ちは。この想いは。
嬉しくて、切なくて、絶対に言い出せない心境の変化。
「……ほな、行こか。外れたけど腕組んであげる」
「残念賞にしちゃ豪華だな」
それらは心にしまい込み。2人は身を寄せながら口元へ笑みを浮かべた。
「ブラウもやってみようぜ!」
「ぴよ!」
ブラウ&ワモンは一緒に花弁をはらり。ドキドキする中、それぞれの花弁が予想通りの変化を遂げる。
「おお! すっげー! 色が青く変わった!」
「海! って感じですね!」
「だろ? ブラウはやっぱり黄色だな!」
花弁の色に2人──2匹か?──はご満悦だ。
フェリシアの手元では桜の中に空が浮かぶ。花弁の色はじっと見つめるフェリシアの瞳より薄く、淡い水色だ。
(きれいな桜色のお酒に、空色の花びら……空が、桜に取り囲まれているみたい)
お洒落な桜のリキュールにお供は甘いチョコレート。リキュールを暫く眺め、そろそろ飲もうかと口をつける。桜の香りと甘さが口の中いっぱいに広がって。
(ふふ。これは、飲まないと損、です、ね……!)
ふと空を見上げると──器の中と同じように、桜花弁に囲まれた空が見えた。
読みかけの本を開いた文の頭上では桜が影を作る。それを揺らすのは穏やかな風だ。
(こんなに素晴らしい空間なら、待つのも苦じゃないな)
文字を追いながら、時折文は視線をグラスへ移す。少しずつ色の変わっていく様は、まるで本の頁をめくる瞬間のようだ。
(綺麗な色だといいな)
そう思いながら文は本をめくる。彼の傍ら、リキュールに浮かんだ花弁はゆっくりと紺色へ染まった。
ヴィクトールと未散、2人のリキュールに浮かんだ花弁は対照的であった。
「そちらのは綺麗ですね」
ヴィクトールが示したそれは雪のような白。濁らず淀まず、くすみもせず。
「ヴィクトールさまは……嗚呼、お陽さまの光をうんと深く吸い込みそうな、真っ黒だ」
対して未散の視界に移ったのは、光を反射することなく飲み込むような黒。ペンタブラック、とでも言うのだろうか。
乾杯、とグラスを合わせてから口につける。未散の方を見ていたヴィクトールは、ふと小首を傾げた。
「あれ? チル様、ってお酒飲める年齢なのですか!?」
「ぼく、そんなに幼子の様に見えておりましたか?」
目を瞬かせてそちらを見れば、ヴィクトールこそ少し眠たげで。気を抜けば桜に攫われてしまいそうだ。
「お酒は案外強いと知ったのですが……どちらかというと春の陽気の方が……眠気を誘いまして……」
言っているそばから段々と眠気が強くなり始める。消えてしまわないよう見張らないと、と思う未散も──釣られてだろうか?
(ぼくも、睡い……)
暖かさについつい、微睡んでしまう。
「美味! 桜!! 美咲さん!!!」
「ヒィロ、それは?」
「幸せの三段論法だよっ」
言葉の通り幸せそうなヒィロに美咲はくすりと笑い、リキュールのグラスを渡す。風流に花弁を浮かべると色の変化はすぐ見えた。
「あっ、赤くなってきた! やったー! ボク赤色大好き!」
「燃えるという表現がぴったりな、力強い情熱の色ね」
元気に幸せに、希望に燃える色。リキュールを少しばかり飲んで、ヒィロは美咲に声をかける。
「美咲さんの瞳の色だと、赤ってどんな色?」
「わたし? 大体一緒かな」
昂ぶっている時や炎の力を扱う時。怒りにも反応するだろうか。
大体同じということは、どこか似通っているということで。心が通じ合っているということなら──とても嬉しい。
ヒィロはニコニコしながら美咲のグラスを覗き込む。その明るい青は驚きなどを表すのだとか。
「綺麗な青色……嬉しい驚きとか楽しい驚きならいいな」
花弁を見つめるヒィロに、美咲は他の意味を伏せる。最もそれは暗い青の意味だから、今ここでは関係ないだろう。
「早速乾杯していただきましょ」
「うん! それじゃ、2人の色を1つに合わせるように──」
赤と青を並べて。小さく澄んだ音が響いた。
ポテトとリゲルは夫婦仲良く、ノンアルドリンクへ花弁を零す。
「綺麗な深緑色だ。瑞々しくて美しいな」
力強い生命を感じさせる色。ポテトを想った色は、ドレスなどにしたらきっと彼女にお似合いだ。
「こんな風に髪を結って、桜のアクセサリーなんてどうだ?」
楽しそうに妻の髪へ触れるリゲル。お返しはリゲルの頭にも、桜の一輪。
「お揃いだ。でも美味しい桜の方が良さそうだな」
そう笑ってポテトが出してきたのは桜餅。パッと喜びを顔に馴染ませた彼は、桜餅を摘みながらポテトのグラスを覗いた。
「大切で大好きな、私のお星さまの色だ」
ポテトの手元では白銀色に染まった花弁が揺れる。彼女は飲酒ができるのだが、それはあと半年ほどお預けだ。
「俺が20歳になったら、一緒にお酒を楽しもうな」
「ああ。その時は盛大にお祝いするぞ!」
今年の夏を楽しみに──2人は微笑み合い、軽くグラスを合わせたのだった。
焔とフレイムタンもまたリキュールへ花弁を落とす。ドキドキワクワクしながら見つめる焔の傍ら、彼が「赤だな」と呟いた。
「本当? ボクも赤色だったよ! お揃いみたいだね!」
2つのグラスを横に並べればそっくりで。笑みを浮かべた2人は、見事なほどに大きな桜の下でグラスを傾ける。
「そういえば、ボクはノンアルにしたけれど……フレイムタンくんは飲めるの?」
「ああ、問題はない」
じゃあさ、と焔が口にしたのは来年の約束。フレイムタンはそれに口元を綻ばせた。
「調べる方は調べたそうですし、不思議な何か、というだけなのですね」
蛍からグラスを受け取った珠緒は、早速と花弁をグラスの中へ。蛍もドキドキしながら花弁を見つめる。
「このままの桜色も綺麗で好きよ。その……珠緒さんの色みたいで」
特別な色だ──なんて言ってしまったら、照れくさいけれど。頬を染めた蛍は変わり始めた色に小さく声を上げた。
「幸運のチトリーノの色……」
蛍にとって幸せの象徴。それが桜色と共にあるなんて、と蛍は頬を上気させる。
「好きな色が並ぶのは、とても素敵ですよね」
花芯に見える黄に笑みを浮かべ、珠緒は視線を自らのそれへ戻す。彼女の花弁は変化なく……いや、心なしか濃くなっただろうか?
「だとすると、桜色に変わったという……?」
「変わりようがないくらい、珠緒さんそのものってことよね、きっと」
綺麗な花弁だと蛍は覗き込む。実際のところは不明だが──彼女がそう言ってくれるなら、それで良い。
「それじゃ、目と口から幸せをいただきましょっか!」
乾杯、と小さく声をあげ。2人は桜の香りにも顔を綻ばせた。
ペルレの手元でリキュールが揺れる。そこに浮かんだ花弁も、ゆらゆらと。
花弁はゆっくりと薄紫へ。まるで花弁の色にリキュールの色を足したようだ。
「どうして、さくら味って春しか楽しめないんでしょ~?」
美味しいのに〜、と呟きながらグラスを傾けるペルレ。その手が不意に止まる。
「あれ?」
その視線は花弁へ。さらに色を変え始めたそれは彼女の翼色に染まる。そこへ、空から舞い降りてきた花弁が寄り添った。
──それはまるで、誰かとの再会を思わせるかのように。
ふぅわりと風が花弁を運び、ゼファーのグラスに花弁を残す。澄んだ蒼はどこまでも続く空のようだ。
何ごとをも、何者をも拒まず。全てを受け入れ、見守るあの空の様に大きくあれ。
(──成程、私はそう為れたのかしら?)
束の間空を見上げたゼファーは、隣の少女へ視線を落とす。アリスの手元では無色透明になった花弁があった。
「未だ何色にも染まら器、人形とヒトの境界に居るって事なのでしょうね」
残念なような、けれど安心したような。
けれどそれは何色にでも染まれるということ。何者にも為れるということ。
ゼファーの言葉にアリスはじゃあ、と小さなお強請りを。
「わたしも、あなたと同じ透き通ったブルゥの空が良い」
あなた色に染め上げて。そんな遠回しの告白は、無色透明に落ちた空色花弁によってあっさり叶えられることとなった。
アリスの心は容易に、ゼファーで彩られる。
「……ゼファーの、ばか」
林檎のように頬を赤らめたアリスへゼファーはくすりと笑って、またいつか此処を訪れようと告げた。
「時を、想いを重ね続けたなら……其の時には屹度、貴女だけの色が見える筈だから」
何年後、何十年後。もしも此処に来られたら──今一度。
「2人とも、た、大変だよ! これ、ものすごーく美味しい……!!」
ほんのちょっぴり味見したイーハトーヴが口元を押さえる。つい飲みきってしまいそうだ。
「ノンアルリキュールとミルク! 美味しそうすぎて大変デス」
「じゃあ、早く試してみようか」
じっと飲み物を見るリュカシスと苦笑を浮かべるシャルル。3人の花弁は──。
「……白?」
「光っているみたいだ!」
端から色が滲み、淡く光るイーハトーヴの花弁。少しずつ変われている、ということだろうか。
「きっとその通りだよ。薄明のように幸先のよい素敵な色です」
頷くリュカシスの言葉にイーハトーヴはぽかぽかと暖かくなるようで。そこでシャルルが視線を移し「あ」と声をあげた。
「リュカシスは黒か」
「わ! 綺麗な黒!」
いつもの色だ、と笑うリュカシス。彼らしいとイーハトーヴは微笑む。
「揺らぎない、強い色でしょう? とっても素敵!」
そんな言葉にリュカシスは目を瞬かせ、照れ臭そうに笑って。そう見えているなら、そう思われているなら、嬉しくないわけがない。
「シャルル嬢は?」
「何色でしょうか?」
「……ふふ。予想通り、かな」
2人に問われて視線を落としたシャルル。そこには柔らかな薄青の花弁が浮かんでいた。
(偶には。そう、偶には)
飲んで楽しむ派だって、偶には見て楽しめるよう我慢する時がある。
ミディーセラはリキュールに使った花弁を凝視し続ける。彼の何かに引かれたか、花弁は徐々に灰色へと変化していった。
(まだ、燃えてから灰になった方がちょっとは楽しめたかもしれません。せっかくのさくらでしたのに)
綺麗な桜色がなくなってしまった、と口を尖らせるミディーセラ。けれど、最近はそこまで灰色が嫌いじゃなかったりする。特に綺麗な色の隣にある時は。
(ふふ……誰のおかげかしら。欲を言えば、ラベンダー色がよかったのですけれど)
桜色に浮かぶ灰色をミディーセラは見下ろす。その、幹を挟んで反対側で──。
(今日も誘えば良かったかしら?)
アーリアは愛しい彼を思いながら、同じように淡いグレーへ染まった花弁を見下ろしていた。
不思議なリキュールが手の中にあるなんて不思議な心地。幸い、誰も彼もがリキュールの色に染まってしまうなんてことはない。
桜も空も、雲も草も綺麗な色だけれど、最も愛しくて仕方ないのはこの灰色だ。それを飲み干すと、アーリアの髪は毛先に灰色が滲んで。
それをちょいと摘んで、アーリアは幸せそうに小さく笑った。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ご参加、ありがとうございました!
またのご縁をお待ちしております。
GMコメント
●すること
桜の下でひと時を過ごす
●詳細
皆さまはとても大きな桜の下へやってきました。時間帯は昼。暖かくて眠くなってしまいそうです。
周囲に危険などはありませんが、桜は1本きり。糖度高いプレイングでも構いませんが、他の参加者からどうやっても見える距離ですので。そこだけ気をつけて。ハイ。
桜のリキュールに花弁を浮かべて色の変化を楽しんだり、普通の花見として過ごすことができます。
【花弁】
桜リキュールで作ったドリンクに桜の花弁を浮かべ、色の変化を楽しむことができます。普通の花見描写は限りなく薄くなります。
こちらをご希望の方はプレイング1行目(行き先タグを書くなら2行目)にどんな色へ変わるか明記してください。
【花見】
普通にお花見できます。シャルルが用意してきたものを飲み食いしても構いませんし、各自持ち寄っても良いです。
花弁の色を楽しむ描写は限りなく薄くなります。
●用意済み飲食物
・サンドイッチ(たくさん。デザート系もあり)
・一口チョコレート
・クッキー
・桜のリキュール
・桜のリキュール(ノンアルコール)
・サイダー
・ジンジャーエール
・オレンジジュース
・牛乳
・氷
●NPC
私の担当するNPC(シャルル、フレイムタン、ブラウ)は、プレイングで明記されていれば登場する可能性があります。
●注意事項
本シナリオはイベントシナリオです。軽めの描写となりますこと、全員の描写をお約束できない事をご了承ください。
アドリブの可否に関して、プレイングにアドリブ不可と明記がなければアドリブが入るものと思ってください。
同行者、あるいはグループタグは忘れずにお願い致します。
●ご挨拶
愁と申します。花粉が辛いのでお花見はしたことがないです。1回でいいからやってみたい節はある。
イベントシナリオですので、やりたいことはぎゅぎゅっと絞って下さいね。
ちなみに未成年者はノンアルです。不明な方は自己申告で。
ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
Tweet