シナリオ詳細
<Despair Blue>鮫食べちゃおう!!
オープニング
●巨大怪物鮫、いかにする?
嵐呼ぶ荒ぶる海の神とも崇められた巨大な怪物鮫トリプルヘッドタイフーンサンダーシャークが水揚げされた。
文句なしにでかい、そして頭も三つある。
計量も済んだ、後はどう処理しようかというとことである。
この鮫も、『絶望の青』に向かう海域に出没したために人を襲い、ゆえに死闘の果てに仕留めたわけだが、大自然が育んだ偉大な命には違いない。
鮫とヒト、お互い命がけであったのだ。
だからこそ、畏敬の念をあらたにし、丁重に葬らねばならない。
この場合、命の恵みに感謝して無駄にしないことである。
「つまりは、食うんだ」
イレギュラーズとともにこの怪物鮫を仕留めたロイ・シャダイ船長が言った。
食うとは、残酷な行為かもしれない。
しかし、自然界には弱肉強食の掟があり、ヒトとて食物連鎖から逃れることはまずできない。
このトリプルヘッドタイフーンサンダーシャークとて掟に従って食らったのだ。
すべては、生きるために食う。
そしてまた、神とも崇められた生き物を食らって取り込むのは、神聖な行為である。
すっかり前置きが長くなったが、食って処理するのが一番いい。
“えっ? 鮫って食えるの?”
などと言う声が聞こえてきそうだが、結論から言うと食える。
洋の東西を問わず、結構食用にされてきた。フカヒレとか高級食材である。
しかし、軟骨魚というのは身に尿素を多く含む。
時間が経つと、これが独特の臭いを発するようになるので、いろいろ料理の仕方に工夫がいる。このおかげで保存が効く利点もあるのだが。
●鮫料理だ! 作る側、食う側も募集!
というわけで――。
「鮫をうまく料理できるってやつを募集中だ!」
『絶望の青』を目指す船乗り、冒険者に対してロイ・シャダイ船長は募集をかけた。
我こそは鮫を美味しくできる方法を知り、技術もあるという者を募っている。
「なんせでかいからな。いろんな方法で料理して、なるべく無駄を出したくねえ。あいつとは結構な付き合いだったからな、そうして弔ってやりてえんだ」
ロイ船長は、しみじみと言う。
トリプルヘッドタイフーンサンダーシャークは、船長にとって強敵(とも)であった。
だからこそ、命を粗末にしたくない。
そして恐怖を舌鼓を打つ喜びへと昇華したい。
海の男の心意気である。
「料理したら食う人でもいるから、バケモノ人食い鮫でも構わねえっていう肝の太くて食い意地の張った連中も募集するるぜ。ラム酒も用意してある。ああ、持参するならそれでもいい。盛大にやろうじゃねえか」
鮫を食う側も募集とのことだ。
さあ、鮫をどう料理してどう食うか?
- <Despair Blue>鮫食べちゃおう!!完了
- GM名解谷アキラ
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2020年02月19日 22時05分
- 参加人数31/∞人
- 相談5日
- 参加費50RC
参加者 : 31 人
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参加者一覧(31人)
リプレイ
●まずは料理だ!
「普段は襲われてばかりだけど……まさか、こうやって食べる事になるなんて思いもしなかったわ」
でかい、伝説の荒ぶる海の神とも言われたトリプルヘッドタイフーンサンダーシャークの巨体は、見る者を圧倒する。
『ふわふわな嫉妬心』エンヴィ=グレノール(p3p000051)もその圧倒されたひとりであった。
「……このサメは、スティアさんが召喚したものでは無く、スティアさんが倒したサメ……なのよね……」
「改めて見ると大きいよね……って私が召喚したんじゃないよ」
サメ退治に名乗り出た『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)もまた、ギルド【宿り木】の仲間たちと倒した鮫の前にいた。
どうも仲間内では鮫と言えばスティアのことになるらしい。
「過去何度かスティアさんの召喚したサメに襲われてきましたが、食べるほうに回るのは初めてですね」
『祈る者』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)も感心している。
そしてその鮫を食べようというのだから、すごい。
そもそも、鮫が食べられるのかというところから疑問を持っていた。
「スティアちゃん……魔法を使ってはサメを召喚して、依頼に出てはサメに出会って何なの……? そういうギフト持ってるの……?」
横に並んだ『聖剣解放者』サクラ(p3p005004)は、スティアに問う。
鮫と言えばスティア、スティアと言ったら鮫――。
そんな図式が【宿り木】のメンバーたちにはできあがりつつあるらしい。
「だから、今回のは私が召喚したんじゃないってば……」
すっかり鮫を呼ぶ女の扱いのスティアである。
しかし、彼女の料理人魂に火がついたのも確か。
食いでがあるから、さまざまな料理法が思いつく。
「そもそも鮫を食べるのが初めてだけど、こんなに大きくて頭が3つ……食べて大丈夫なんだろうか」
マルク・シリング(p3p001309)も、鮫を食べるのは初めてである。
鮫料理というのは初めてなので、まずは鮫に合う飲み物とワインの選定に入る。さて、どんなマリアージュが生まれるのだろうか?
「未成年が多いから、葡萄ジュースの赤と白を用意しておけば大丈夫かな?」
というわけで、これに加えてクローブ、シナモンなどのスパイスを用意してグリューワインの準備も揃える。
「私も調理のお手伝いをさせて頂きますね。じゃあ、お湯を沸かしましょうか」
鮫肉を湯通しをするために、クラリーチェが湯を沸かした。
霜降りと言って、さっと湯にくぐらせて臭みを抜くという手法だ。
野菜と調味料も揃えておく。
「ロイ船長、ひさしぶりー。このへんの人集めてきてよ。量が量だし、同じ食べるならパーティーにしちゃおう!」
「おお、大勢呼んだから安心しな! 鮫パーティだ」
ともに鮫を狩った面々も集まってくる。
『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)もそのひとり。
まずは、腹から割く。
食べられる部分を判断し、分割する。
鮫の肝臓は肝油が取れる。ただ、ビタミンAが大量に含有されているから、取りすぎると毒になる。
そして鮫の皮はわさびおろしにも使える。
鮫肌というくらいあってザラザラだ。
細かくいうと、日本刀の柄部分などにも使える素材だ。
やはり、無駄にはしたくない。
「こいつは目玉が美味いらしいんだけど……挑戦する勇者はいる?」
そういうわけで、史之は巨大な目玉を軽く茹で、フライにするつもりだ。
周囲の料理人たちも、その光景にちょっとたじろいている。
その出汁で、サメ肉と軟骨のスープを作る。
身は、じゃがいもとともにフライにして王道のフィッシュアンドポテトに。
内臓は洗って酒盗に仕立てる。短期間でも糀をうまく使えば発酵味になるのだ。
「ロイ船長、先だってはお世話になりました」
「船長、蛍さんとご相伴に預かります」
「はっはっはあっ! 嬢ちゃんたちに仕留めてもらったうえに食ってもらえるんだから、こいつも鮫冥利に尽きるってえもんよ」
『学級委員の方』藤野 蛍(p3p003861) (よみ:ふじの ほたる)と『司令官』桜咲 珠緒(p3p004426)もロイ船長に挨拶をする。
ふたりとも捕らえた鮫を食し、命を粗末にしないという趣旨には大いに賛同するところだ。
戦った間柄であるからこそ、感慨がある。
きっと、美味しいに違いないのだ。
「鮫料理、海って感じがして楽しみだよね……苦労して仕留めた相手だと思うと益々」
「卵丸と一緒に三頭嵐雷鮫を食べに来たわよ。でもまさか、食べるなんて発想は無かったから正直楽しみかな」
海で激闘を繰り広げた、『穿天の魔槍姫』フィーゼ・クロイツ(p3p004320)と『蒼海の漢』湖宝 卵丸(p3p006737)もやってきた。
一緒に船に乗ったメンバーとも、あのときの激闘を思い出しつつ、ふたりは食べる側だ。
「あん時倒した鮫を、今度は料理しろときたか」
「ショウユとやらが万物に合う調味料と聞いたが……ふむ、合うならば多いに越したことはなかろう」
どばどばと醤油が注がれる。海で鮫を仕留めた『濁りの蒼海』十夜 縁(p3p000099)は、『虚言の境界』リュグナー(p3p000614)を連れてやってきた。
縁は海産物を食する事はできないが、ふたりで作ればなんとかなるだろうという腹だ。
醤油と酒で煮れば、大抵のものは食えるようにはなる。
臭み消しにしょうがを入れると、なおよい。
「確か、うちの店主は味付けに――あぁ、こいつかね」
「……この妙な臭いは、貴様の死兆の臭いであろう?……で、あろう?」
「あー……そうだな、こいつは俺に染みついてる死臭だ。だからまぁ味は案外まとも……かもしれん」
「不思議なことに、我は今しがた食欲が無くなったが故……食事は任せたぞ、十夜」
傍から見れば、なんとも微妙な関係を想像させるが、二人のやり取りはこうだ。
ともかく、味を濃いめにつけて煮付ければなんとかなる、と考えている。
「妾、ここまでの大物を調理したことはないのう……頑張ったら捌けるじゃろうか」
我こそはと、鮫料理に名乗り出た『火遊び』アカツキ・アマギ(p3p008034) であったが、その巨体は予想外であった。
いろいろ道具を持ってきているが、やはり炎を使った料理でいきたい。
というわけで、火を起こしてかば焼きの準備である。
串打ち用の串もある。
「かば焼き、やっぱりそれよね!」
スティアがアマギの料理を見て閃いたようだ。
新たなスティアスペシャル誕生の予感である。
「すごいですねこのサメを皆さんで!」
三つ頭の巨大鮫を捌いて食べる、これはもう物語であり、『本は足で探すもの!』リンディス=クァドラータ(p3p007979) が関わらない理由がない。
さっそく、スティアとアマギと一緒に鮫かば焼きのためのソースを作り始める。
「ふふふ、取り出したるはレシピ本! ……えっ、あ、もう捌き終わるんですねちょっと待ってください!?」
レシピ本があっても、手際が良くないといけないのが料理の難しいところだ。
その間にも、着々とスティアスペシャルの完成が誓い付いている。
「さて、ここで重要なことがあってな、俺、菜食主義者やねん。や、卵と乳は食べられるけど。サメやなんて食べませんわァ。なんで、俺、ここにおるんかな……?」
『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)は菜食主義だった。
しかし、それはそれで鮫料理に挑戦する。
「サメちゅうたら、アレやんな。アンモニアくっさいの。
練達の本を読むに、軟骨魚は血液に乗って身体中に尿素ちゅう成分が回ってるらしいわ」
けっこう詳しいブーケである。
「料理するやつの腕が良ければ、臭みなんてほとんど気にならねぇだろう」
「せやね」
「……できれば火を通したものの方がいいけどな。鮫の匂いを取るには柑橘類を使うのがいい」
ブーケと並んで、『二代野心』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)が下処理をしていく。
柑橘系でのマリネである。一品料理での勝負だ。
この間にも、鮫はどんどん解体されていく。
それでも、まだまだ身が残っている。
「トリプルヘッドタイフーンサンダーシャークって私の世界の鮫と同じように美味しいのでしょうか? これはもう調理して食べてみるしかないですね!」
『呪い師』エリス(p3p007830)の食への好奇心が、この依頼に挑戦させた。
世界にある美味しいものは食してみたくなるのが人情……エルフ情というものである。
マリネ、ステーキ、料理はさまざまだ。
「玄天門の料理番の誇りにかけて俺は! 最高に美味い鮫料理を作る!」
ドンッ! 画面ドアップで『七曜の剣士』ゲンセイ(p3p007948)は断言した。
『嘘を吐け。お前はつまみ食いばかりしていただろう』
そのように突っ込むのは、美しい少女の姿で現れた《七星剣》ことシュウレイである。頬杖をついて見守る彼女は、ゲンセイが持つ刀剣である。
ともかく、ゲンセイの手際はよかった。
武林に名を轟かす玄天門の武侠には、料理の心得があるらしい。
トロ肉と呼ばれる鮫の尾身を解体にかかる。
これを酒、醤油、水飴等で煮込んでツヤツヤ甘辛叉焼に仕立てる。
軟骨の部分も余すところなく使い、カリコリ軟骨揚げ。
熱した炒菜鍋に大蒜油、溶き卵、白米を炒め、叉焼と葱を入れて、強火で豪快にさっと炒めて味付けし、桃華風鮫炒飯と、あっという間に三品仕上げた。
「え、このやり方はダメ? そうか……むずかしいな」
包丁を叩きつけるように、ダン! と豪快に鮫の身を切ろうとしているのは、『さめおいしい』剣崎・結依(p3p005061)である。
料理は苦手だが、見様見真似で手伝いに参加している。
「もっと簡単な作業なら、きっと……挽回だ」
「そんなに気にしなくていいぜ。海の男の料理は豪快でいいんだ。はっはっはあっ!」
ロイ船長は結構気に入ったらしい。
ていねいに作るのも美味いし、豪快にざっくりやるのも美味い。
いろんな料理があっていい。無駄にさえしなければ。
「サメ料理ね……。あまり料理は上手じゃないけど、頑張ってみましょうか……」
それでも、鮫料理に挑む『新入り稲荷様』長月・イナリ(p3p008096) であった。
トリプルヘッドタイフーンサンダーシャークという珍魚中の珍魚を無駄にするのはもったいない。
巨大な頭のひとつを持ってきて、皮を剥いで、下処理をして煮込む。鮫の兜煮である。
特大のドラム缶で煮るしかない。
これで煮こごりを作ろうというのだ。
●いただきます!
「ハイハイ! オレシミズコータ! コータでもコーちゃんでも、サメを美味しく食べる係の清水クンでも、好きに呼んでくれー!」
元気よく名乗って鮫料理にやってきたのは『雲水不住』清水 洸汰(p3p000845)である。
「オレの世界だと、サメって言ったらキャビアとかフカヒレってイメージだけど……そーゆー高級食材、なかなかお目にかかれねーもんなー」
「フカヒレは採れるが、こいつからはキャビアは採れねえな、残念だが」
ロイ船長と並んで話す。
キャビアはチョウザメの卵だが、海の鮫とは別種であったりする。
このトリプルヘッドタイフーンサンダーシャークは、さらに分類すると胎生のホオジロザメっぽい。
胎生の鮫の中には、お腹の中にいるうちから未成熟の卵を食べて成長するという食卵性のもいる。鮫にまつわる豆知識である。
ともかく、鮫のスープが振る舞われる。
中には、ふるっふるっのフカヒレが入っている。
フカヒレは非常に手間がかかる食材だが、無垢なる混沌のあれやそれやの都合でそのへんの工程はなんとかなるのだ。なると言ったらなる。
「まあ、とても大きな鮫、を……」
あの巨大鮫が、見事な料理に変わっていったのは、『うつろう恵み』フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)にとっても感動的な光景である。
彼女は、料理の最中にも、メモを用意し、そのレシピを書き留めていた。
美味しかったら、覚えて帰ろうというのである。
問題は、これほど巨大な鮫がふたたび入手できるか、であるが。
まあ、『絶望の青』近辺の海にはまだいるかも知れない。
「たぶん食べた事は、以前にもないはずです、し……この機会に、いただいてみます、ね」
鮫スープ、鮫炒飯、柑橘類で臭みをとったお刺身、それに鮫ステーキに目玉のフライ、頭の兜煮や鮫の煮こごりなんかもある。
ゼラチン質の多い軟骨魚の鮫は、煮こごりで食されることも多いのだ。そして鮫のお刺身は、脂も乗ってどこかの地方ではご馳走とされる。
何はともあれ、ゲテモノ料理っぽいものから本格派までいろいろ揃っている。
これからこの鮫づくしを存分に食すのである。
「それじゃ、皆さん。明日を生きるために命をいただくことに感謝を捧げて――」
「はい、いただきます」
今日の命と、得られた糧に感謝し、蛍と珠緒の合図で、集まった面々は鮫と料理人に「いただきます」を捧げる。
「いただきます」
『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流(p3p000141)も手を合わせて、鮫のお刺身からいただく。
独特の臭みも抜けて、脂の乗りがいいのにあっさりとして美味しい。
一部地域では、鰐料理とも呼ばれるお造りの美しさもあって箸が進む。
今回、レモンなどの柑橘類で臭いを抜く調理法は人気があった。
「畏敬をもって糧とする、いい心意気じゃないか」
『荒熊』リズリー・クレイグ(p3p008130)も、ラム酒を片手に鮫を流し込む。
やはり、うまいものには酒が合う。
刺し身、酒盗、そしてなんと言っても軟骨揚げ。
「臭いの元となるアンモニアがクエン酸と反応して溶出することで、時間経過によるアンモニア臭の発生を抑えられる……らしい。つまり、唐揚げにレモンが最強ということだ」
白熊のエイヴェンが、器用にレモンを絞ってみせる。
揚がったなんこつ揚げや鮫の唐揚げの上に絞るさまは、見ている側の食欲も大いに刺激した。
もちろん、自分の分であって全体の分はそれぞれに任せる。
ここは、好みが分かれるデリケートな部分だ。
「誠吾さん、サメには『ふかひれ』という高級な部分があると聞いたのです」
「なんでそんな贅沢な品物知ってるんだよ」
ナイフとフォークを構えてスタンバイの『地上に虹をかけて』ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)と、その旺盛な好奇心と食欲に困惑気味の『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)である。
フカヒレは高い、高いものは美味い。
そういう発想でフカヒレを心待ちにするソフィリアである。
しかし、フカヒレは手間がかかる。
鉄板の上で加熱して干すという工程が必要だ。
そのうええ、戻して形を崩さないようにするのも料理人の腕が問われる。
このフカヒレも、うまいことゼラチン質が無駄にならずによくスープと絡む。
「ほんとに食べるのこれ……い、いや、料理する人を信じよう」
頭が三つあり、鯨並みの巨体を誇り、嵐を起こして雷を呼ぶ、それを鮫と言っていいのかイト=ストレム(p3p007933)には疑問だった。
そのうえ、食うとなるとやはり不安はある。
「さめめ! ぜったいにゆるさめえ!」
『エンジェルいわし』アンジュ・サルディーネ(p3p006960) からは、絶対に鮫を食そうという強い意志が溢れていた。
いわしミサイル!どどどどーーーん!! と放ち、海辺から召喚したいわしの大群で一斉に食べ始めた。
突っついて骨だけにしようという勢いである。
「あ。アンジュはさめいいや。おにく硬くておいしくなさそうだから」
しかし、本人はちょっと鮫肉は硬そうで美味しくなさそうなので遠慮している。
「そんなことないぜ。鍋とか煮付けとかも美味いって聞いてたし。……ん、美味い!」
剣崎・結依が鮫の煮つけや煮こごりをうまそうに食べている。
実は、鮫肉はそんなに固くならないのだ。
煮つけも、ほろっとお箸で崩れるし、ステーキもふかふかな感じの仕上がりになる。フカだけに。
「そうだね。食わず嫌いってよくないよね~」
「そうそう、まだまだ物足りないし、今日こそ腹いっぱい喰って帰ろうと思う」
「美味しそうな料理だし、たべるかもも。ぱや~」
「うわあ、こっちも!」
エリスがいろいろな料理を食べて回っているのを見て、アンジェも食べる気になった。
美味しそうに食べる人を見ると自分も食べてみようという気になる。
塩コショウを振った鮫ステーキに、フカヒレ、唐揚げ、お刺身……。
実際、うまい。食い尽くしてしまいたくなる。
海の王者と粋がっている鮫も、海の繁栄種いわしの大勢力の前には食物も同じなのだ。
「おー、食えるものならなんでも食うゾッ!」
『天然蝕』リナリナ(p3p006258)も負けてはいない。
出てくる鮫料理を片っ端から食べていく。
獣肉とは違った味わいだが、それぞれの料理方法もあって食べるのが止まらない。
鮫ステーキはまるかじりできる嬉しさである。
「ボクはスライムだが、一応丸呑みよりは調理済みの方が消化しやすくて助かる」
鮫肉は、スライムの『ひとかけらの海』ロロン・ラプス(p3p007992)にとっても挑戦しがいのある食材であった。
なにせ、一片の切り身がでかい。
取り込んで、そのまま消化する。
「それなりに長く生きている自覚はあるけれど、鮫を食べるのはさすがに初めてだよ」
『白夜月』シルヴェストル=ロラン(p3p008123)は、鮫料理の間にお茶を入れて待っていた。
ここで、お茶が振る回れるのは嬉しい。
成人したイレギュラーズは、鮫を肴にラム酒や持ち込んだ酒を楽しんでいるが、未成年のいるのである。
未成年の飲酒はよくないし、お酒が駄目な人にのませるのもよくにことだ。
居酒屋の烏龍茶のように、宴会ではお茶も必要なのである。
そしてまた、珍しげなものから食べていく。
「いろいろな料理があるね、どれも美味しそうで……」
「そういえば卵丸、退治した後にビキニ見つけて顔赤くしてけど、変な事でも想像した?」
いらずらっぽく笑ってからかうフィーゼに、思わず卵丸も“んがぐっぐっ”である。
「べっ、別に変な事なんか思い出してないんだからなっ…それよりフィーゼ、もっといろいろ食べるんだぞ、ほら」
「あーん♪」
顔真っ赤にしながら、公衆の面前でフィーゼにからっと揚がった鮫唐揚げをあ~んする。
「んー、見事に誤魔化されたけど……人目を憚らずに結構大胆な事するのね。私としては友人に食べさせて貰って嬉しいけど」
誤魔化そうとして、余計に恥ずかしいことになってしまったのに気づいた卵丸はさらに赤くなる。
首だけになった頭のひとつが、鮫のように笑っているように見えるのだった。
「さあ、スティアスペシャルだー!」
どんっ! スティアが置いたのは鮫のかば焼きが大量に乗ったかば焼き丼である。
巨大(おお)きい――。
卑小な人類を嘲笑うかのような威厳である。
荒ぶる海神は、かば焼き丼となっても神々しいまでの姿を誇示していた。
真っ先にギルド【宿り木】のメンバーに振る舞われた。しかも、ひとり一杯というノルマだ。
「スティアちゃん、なにこれ…? サメのかば焼き丼スティアスペシャル……?」
「人数も多いし食べ切れるよね、サクラちゃん!」
「食べ物に面白さはいらないよー!」
サクラは悲鳴を上げた。
それが嬉しい悲鳴か苦しい悲鳴かは、ここで問うのはやめておこう。
●戦い終えて
「いやあ、きれいに片付いたもんだな!」
ロイ船長は、宴の後を眺めて言った。
あれだけの巨体が、見事にイレギュラーズの胃袋に収まったのだ。
食べ物を食うという行為には、さまざまな思いがあろう。
命を奪うことでもあり、命をつなぐことでもある。
その是非を問うても、答えはなかなか見つからない。
ただ、言えることは美味しく満腹になればそこに喜びがある、ということだ。
荒ぶる嵐の海神は、こうして命を育む豊穣の神となった。
骨も、食べられる部分は食べる。
実はフカヒレも骨に当たる部分を食べる食材だ。軟骨魚だけあって、ていねいに処理すれば食べられるようになる。
美食に対する追求と、生命を無駄にはしないという畏敬がそこにある――最後に珠緒は祈る。
「ロイ船長、ごちそうさまでした」
「なあに、こっちもたらふく食わせてもらったぜ。皆で食う鮫はうまい!」
蛍に答えるロイ船長の席には、ラム酒とフィッシュアンドチップスが置いてある。
「船長はどんな鮫料理がお好みですか?」
「……そうさなあ。鮫ならなんと言っても“アレ”なんだが、ここで皆に振る舞うにはちょっと特殊すぎてな」
「“アレ”というのは?」
「ハカールってんだが、あればいくらでも酒が飲める。しかし、あれはちと上級者向きでな」
世の中には、まだ見ぬ鮫料理がある――。
さて、ハカールがどんな料理なのかは、また次の機会に説明するとしよう。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
鮫、見事に食されました!
きっとトリプルヘッドタイフーンサンダーシャークも浮かばれることでしょう。
美味しくいただいた方、美味しく料理した方、どちらもお疲れさまです。
書いてて楽しいリプレイでしたが、いかがでしょうか?
また食べ物系の依頼は企画中ですので、よろしくお願います。
それではまた!
GMコメント
■このシナリオについて
皆様こんちは、解谷アキラです。
『絶望の青』で捕れたトリプルヘッドタイフーンサンダーシャークという怪物鮫を食ってしまおうというイベントシナリオです。
食わないともったないわけです。
でかいので、料理のし甲斐も食いでもあります。
鮫を料理する人、食べる人、両方できる人も募集します。
食ってしっかり英気を養っちゃいましょう。
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