シナリオ詳細
そうだ、鍋を食べよう!
オープニング
●最近、無性に寒くなってきたので鍋が食べたい
とある用事があって、君はローレットへと足を運んでいた。
それは、新しい依頼を探しに行くためなのかもしれない。
あるいは、いまようやっと依頼から帰ってきたのかもしれない。
はたまた、特に用事はないけどやってきたのかもしれない。
「こんばんは、イレギュラーズの方、ですよね?」
そう話しかけてきたのは、青色の髪をした女性だった。
「ここ最近、いよいよ冬、といった感じになってまいりました。
料理を作る時間も惜しければ、一人で食べたりするのも寂しい。
そんな時期だと思います」
ぺらぺらと語る女性――『蒼の貴族令嬢』テレーゼ・フォン・ブラウベルク(p3n000028)は、君へと視線を合わせる。
少女と、女性の中間どちらかというと少女よりの幼さを残して微笑んだテレーゼは、そこで一枚の文書を差し出した。
「なので、私、鍋パーティすることにしたんです。もしよかったら、貴女も来てみませんか?
一人で食べるのも、寒さに凍えながら作るのが面倒なら、鍋にすればいいじゃない、というわけです」
テレーゼはそこまで言うと、一度、微笑みを少しばかり収めた。
「ある程度の食材ならばこちらで用意いたします。
ですが、貴方が欲しい食材があれば、持ち込んでいただければと思います。
何鍋かも作りたい物があるのであれば、提示していただければ調味料とかも用意いたしましょう。
それでは、もしも参加いただけるのでしたら、そちらの場所まで。もちろん、おひとりでなくともかまいません」
そこまで言うと、テレーゼぺこりと礼をして、その場を後にして別のイレギュラーズへと話しかけに歩いて行った。
手渡された物に記されたのは、会場と3つの注意事項。
1つ。食べれるものを用意しましょう。
1つ。トラブルは控えましょう。
1つ。作った鍋は責任をもって食べましょう。
ごくごく常識的なその文言だけを残し、最後に一行。
美味しく、楽しいパーティを。
- そうだ、鍋を食べよう!完了
- GM名春野紅葉
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2020年02月06日 22時20分
- 参加人数30/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 30 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(30人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●
少し肌寒さの目立つその日。
開放された大広間にたくさんのテーブルと鍋が用意されていた。
すでに思い思いにくつろぐイレギュラーズ達の近くには、お鍋が用意されていた。
多数の調味料や、新鮮な食材が並んでいるほか、メリーのように自ら調理の用意をしているイレギュラーズもいて、様々なものが並んでいる。
「テレーゼ様、実は私、夏にやりたかった事があるんですよ」
寛治は眼鏡をきらりとさせながら告げる。
きょとんとしながら首をかしげたテレーゼに、寛治は更に続ける。
「丁度、”例の事件”があった頃でした。
テレーゼ様はお心を痛めた時期だったかと思いますが、
それはそれとして私も忸怩たる思いを抱いて居たのです。半年ほど」
「何かありましたっけ……?」
「そう! 我々は! テレーゼ様の!
二十歳の! お誕生日を! 祝っていないのです!」
くわっと迫力を見せて寛治は告げた。
「ただの誕生日ならいざしらず、二十歳という人生の節目をお祝い出来なかった!
せっかく一緒にお酒を飲めるようになったというのに!
というわけでテレーゼ様の誕生日パーティは別途、後日開きましょう」
圧に押されるテレーゼに対して言い切った寛治はこほんと一息ついて。
「なあに、私がプロデュースしますから。
テレーゼ様は大船に乗った気持ちで祝われていただければ。
それはそれとして今日も祝いましょう! 乾杯!」
そう言った寛治の音頭を皮切りに、パーティが始まった。
(混沌とした情勢の割に本当に変わった依頼が多い世界だな。
鍋……鍋か……。ふむ。何の鍋にしようか。野菜と肉をバランスよく摂りたいところだ。
よし。豚肉と白菜のミルフィーユ鍋にしよう)
さっそく作り始めたマリアは手際よく完成させる。
「……うん。美味いな」
「おいしそうな匂いですね。少し頂いてもいいですか?」
声かかけて振り返るとそこには依頼人の姿があった。
「ああ、口にあえばいいのだが」
「こんなに美味しそうな匂いですし、大丈夫だと思いますよ?」
取り分けた小皿を手渡せば、そういって受け取られて、口に運んでいく。
「せっかくですし、一緒に食べませんか?」
うなずいて二人で舌鼓を打っていく。
「テレーゼさん久しぶりだー元気にしていたか?
俺はいつも通りだ、今回は鍋パーティーに招いてくれてありがとう」
サイズはテレーゼの元へと訪れると、そういって声をかける。
持参したネギを入れたさっぱりとした鍋からちょっとだけネギを多めに小皿に分けて。
会話の種はそこそこある。とりあえずは何から聞こうかと考えて。
「そういえば、あそこらへんは平和なのかー?」
「落ち着いては来てますよ。完全にとは行きませんけど」
少しだけほんのりと慈しむような笑みを見せる。
「うんなかなか行けるな……」
「美味しいですね」
のんびりとサイズは話を続けていく。
会場の一角、このパーティを開いた依頼人がいる一帯に遼人は足を運んでいた。
(……ここに来るのも久しぶりだな。相変わらず、こういうパーティとか好きだよね)
思い返しながら、視線を巡らせれば、その依頼人は何やらお椀で食べている。
いつもどおりに挨拶をして、見ればちょうどお椀に入っていた具材も無くなったところのようだ。
「お久しぶりです。……年末っていやですよね」
若干死んだ目になった後ですぐに微笑みに治したテレーゼに、遼人はうなずいて。
「…っていうかお嬢様こそこういうの慣れてなさそうだけど意外と食べたりするの、鍋?
町の人に貰ったりとかしてた訳? それとも傭兵団の所かな」
「どちらも、でしょうか。やっぱり材料とか作り方とか違うんですよね」
「なるほどね……そうだ、良ければお好きな物をお取りしましょうか、お嬢様?」
「お言葉に甘えて……えっと、そこのお肉とか……」
言われた通りの食材を見つけながら手に取っていく。
「色んなお鍋があるなぁ、この時期はどんなお鍋も美味しいから迷っちゃうよ」
会場を見渡しながら歩いていた焔は不意に足を止める。
「テレーゼちゃん! なんだか久しぶりだね、今日はお誘いありがとう!
やっぱりお鍋は皆で食べる方が美味しいもんね!」
視線の先、テレーゼを見つけて話しかけると、依頼人でもある少女は口にあるものを飲み込んでから返事を返す。
「ところで、ボク辛いものが結構好きなんだけど、辛いお鍋ってどこにあるのかな?」
「そうですね、多分、あの辺とかは辛いと思いますよ?
たしか、辛い香辛料がたくさん入ってるお鍋だったと……」
「テレーゼちゃんも辛いものが平気だったら一緒に食べない?」
「良いですよ!」
小皿をおいてぺこりと礼をしたテレーゼを伴って、焔は目的の鍋へと歩き出した。
マルクはポトフをコトコトと鍋にかけながら、故郷を思っていた。
「僕の生まれた村は貧しかったから、知ってる鍋料理はすごく素朴というか、地味でね……
少しの塩で味付けしたスープに、芋と、干した肉と、そのくらいで」
思い出しながら、懐かしそうに感傷を抱く。
「そういえば、テレーゼさんはどんな鍋を作るんですか?」
「最近はあまりやってなかったですけど……。
基本的にはお味噌のお鍋が多いですね。
内陸部なので、お塩よりもお味噌の方がとかなんとか……」
語ればそう返されて、マルクはお鍋を交換して舌鼓を打つ。
「お鍋!! 美味しいもの!!!」
はっと顔を上げたシズカは少しばかり周囲を見渡して、恥ずかしそうにしつつ。
「…はっ、いえすいません、少々興奮してしまいました……。
ええと、私アレが食べたいです、この間『旅人』さんから聞いた……ええと、オーデン? でしたっけ…
あ、具材も持ってきてますよ。オーデン? に入れると美味しいらしいです!」
そう言って魚肉ソーセージを取り出したシズカは、彼女曰くのオーデン鍋に一緒に入っていた具材を入れて、ほう、と一息。
「いいですよね、お鍋……ほっこりします……
皆で囲むと、もっと美味しくほっこりしたような気がします♪」
幸せそうに頬を綻ばせて、シズカは念願のオーデンを食べ進めていく。
「ところで鍋ってどう作るんだー?
野菜入れて煮込めばいいのかー……?
チーズも好きだから入れよう。牛乳も……」
野菜やナッツなどをぽいぽいと鍋に放り込み、ふと気づく。
「……あれー?色々入れていたら鍋というよりシチューっぽくなってしまったか?
鍋で作るものだからこれも鍋、なのかー?
まあいいかー、腹に入れば皆同じー……というわけでもないが、変なものは入れてない……だいじょぶ」
完成した鍋? シチュー? から漂ういい匂いを蒸しこんだ後、もぐもぐと食べていく。
「とにかく肉です。肉を食べるし食べさせます」
チュウ太郎と対照的にそう言いながらすき焼き鍋の前にいるフィオナは、お肉とお米をたっぷり次いでもぐもぐと食べている。
「材料は持ち込み?
私は何でも好きだから、どれでも食べられるわ?
でも、辛すぎるものとか、たくさんは食べられないから勘弁してね?」
そう言っていたフルールも選び取ったお鍋を食べて楽しんでいる。
皆にお酒をはじめとするドリンク類を注ぎ、配膳まで手伝った後、鬼灯はのんびりと嫁殿とのひと時を楽しんでいた。
『鬼灯くん! 美味しい?』
そう言って、かわいらしいロリータ風の衣装に身を包んだ嫁殿が大きくくりりとした綺麗な瞳で鬼灯を見上げている。
『美味いよ』
そう言って、鬼灯が頷けば、嫁殿が野菜らしきものを鬼灯に向ける。
鬼灯が口元の布をめくると、人形の手でいい感じに隠れてくれた。
お鍋に一息をついた後、そのまま小さな陶器にお酒を注ぐ。
とある異世界のとある国で作られるお酒だ。
くいっと煽れば、独特の香りと舌ざわり、その後でかすかな喉を焼く熱が伝わってきた。
●
「寒い時期の鍋は良いよな…芯から温まるし、ほんとありがてぇよ……!」
そう言う零の手にはいつものようにパンがあった。
自分がぱっと用意できるものといえば、やはりこれだろう。
「おぉ、ポテトは色々もってきてるな……!」
テーブルに置かれた複数の種類の野菜を見て、完成品のことを思いながら笑って。
「白菜、人参、シイタケ、えのき、水菜、白ネギ……とりあえず具材色々な寄せ鍋でいいか?」
鍋に具材を入れ煮込みながら、ポテトはそのまま零の方へ視線を向ける。
「そういえば、あれからアニーとはどうなんだ?」
「アニーと……か……え、えー、そうだな……誕生日会の方も上手く行ったぜ、うん」
微笑ましげに見るポテトに、零は頬を赤らめながらそう答える。
「前より仲良くはなれたと思うしな……もっと仲良くなれたらとも思うが……」
「前より仲が良くなったなら良かった。
もっと距離を縮めたいなら一緒に出掛けたらどうだ?
デートに行くならお勧めの場所教えるぞ?」
コトコトと音を立てつつある鍋の様子も気にかけつつ見れば、零は頼もしいものでも見るようにポテトを見て。
「デー……出かける場所におすすめ有るなら、是非教えてくれ!」
「そうだな……例えば……」
ポテトのおすすめを聴きながら、零は熱心にメモを取る。
さて、そんな零が熱心にポテトから情報を聞き出すのに夢中な中、アニーもまた、参加していた。
(寒~い季節こそお鍋ですよね!
皆さんとおしゃべりしながらアツアツのお鍋をつつく。
初対面の方ともすぐ仲良くなれそうな雰囲気がいいですよね)
会場にひょっこりと姿を現したアニーは楽しそうにうなずいてから、笑みをこぼす。
「ふふふ、実は私、ひとつ食材を持ってきたのです!」
なんて言葉と共に取り出したるは自然豊かな深緑にて育ったというとあるハーブ。
それを香料にあるお鍋に投入。
「お鍋おいしーにゃんっ」
美味しくいただいて、ちょっとした副作用に見舞われて――そんなアニーに2人が気づくまであと少し――。
「そういえば以前、一緒にすき焼きを食べに行ったことがあったっけ。
あれはあれで美味しかったけど、今日はさっぱり食べられるしゃぶしゃぶはどうかなって」
「以前のすき焼きは、お肉を甘くいただく感じでしたが、しゃぶしゃぶ……聞き慣れない響きなのです」
珠緒はお鍋の中の様子を見て不思議そうに蛍の方を見る。
「食べ方は、ボクのを見てくれれば大体わかるから」
蛍は珠緒に頷いて、適当に掴んだお肉をぐつぐつと煮だつ鍋の中に入れてふらふらと回し。
「でね、こうタレをつけて……
んー出汁が効いてて美味し」
昆布だしとポン酢の味が絡み合って独特な旨味が口の中いっぱいに広がっていく。
「……なるほど、お出汁で食べる分だけ加熱する、と
良い具合の程度はありそうですが、焦げたりはしなさそうなのはよいですね」
珠緒は頷いてそっと自らもお肉をだし汁の中に投入する。
ゆっくりと色の変わる肉を見ながら、良い感じのところでふわりと上げ。
まずはと蛍と同じポン酢ダレにそっとつけて頂いた。
「油の重さもなくお野菜とも合わせやすく……食べ過ぎ注意な品ですね」
頷いた後、珠緒はさらっと付け柔らかな野菜を食べて。
「……ね、珠緒さん。最後にもう一度、乾杯付き合ってくれないかな。
いつぞやのように一緒にお祝いしたいのよ。
今日のお鍋は、ボクの恋が実った祝勝会だから……」
珠緒がほんの少しだけ一息を入れる時、蛍は静かにその言葉をかけた。
「乾杯、ですか? 良いですよ、何度でもお付き合いいたします。
蛍さんの勝利は珠緒の勝利でもありますし、昨日も今日も、命ある日を共に勝ち取っているのです。
お祝いの理由も、沢山あると言えるでしょう」
ある意味では達観した言葉を、柔らかな微笑みを浮かべて珠緒が返す。
少しの間と、微笑みをこぼして、ガラスのぶつかりあう小さな音がした。
(さあ、どんな鍋が良いかなと思ったら……もう直ぐに支度を始めてる)
「寒い季節にはやっぱり温かいもの食べるのがほっとできていいよねえ!」
シラスが視線をやれば、そんな言葉と共に楽しそうに鼻歌交じりに準備を進めるアレクシアの姿がある。
「ふふ、料理はそれなりに得意なのは知ってるでしょう? 任せてよ!
いい感じにできてきたらよそってあげるから、シラス君は待っててくれたらいいからさ!」
せっかくなら美味しく食べてもらいたいからと、準備を進めていくアレクシアも、ふと思う。
(そういえば、家族以外で誰かと一緒にお鍋食べるのって初めてかもしれない!)
席に座ろうとしていたシラスは思い立って立ち上がり、アレクシアのところへと近づいていく。
アレクシアは隣に立ったシラスを少し見上げて、すぐに視線を彼が持ってきた皿の中身にうつす。
ネギ、ホウレンソウ、カボチャ、キノコなどなど。
「どれも平気だよ?」
言葉少なに呟いたシラスが少しばかり見つめてくる。
「シラス君、昔に比べるとホント色々食べられるようになったよねえ。
きっと、会ったばかりの頃だったら、持ち込んだ具材もお肉ばっかりだったんじゃない?
苦手を克服できるってすごいなあって思うよ!」
なんだか嬉しくなって、そういって返せば、シラスはぽりぽりと頬を掻いていた。
野菜だけだとそれはそれでバランスが悪いと、お出汁に合いそうなお肉も入れて。
心なしか鼻歌のリズムも嬉しそうに変わったアレクシアを見ながら、シラスもまた鍋の出来上がりが待ち遠しくなっていた。
「食材を持ち寄って鍋なんて初めてで楽しみです!」
わくわくしているティルは、ひとまずLumiliaとあいさつを交わした後に目を輝かせていた。
ティルは、マルベートと、彼女に誘われたLumiliaと一緒だ。
ティルが持ってきた野菜、マルベートの持ってきた鴨肉と羊肉、Lumiliaが持ってきたキノコ類とハーブやスパイスを加えたお鍋から漂う匂いはその美味しさを証明するようだ。
「そうそう、美味しい食事となればワインも欠かせないよね。二人が飲みやすいように軽口の赤ワインも持ってきたよ」
マルベートはそっとワイングラスに注いで二人に分けていく。
Lumiliaがそれとなく美味しくなるように味付けや香りづけを誘導したのもあって、やがてぐつぐつと美味しそうな香りがし始める。
「意外にいい感じの仕上がりになりましたね、いただきます!」
「では、小皿に分けて……いただきます」
癖の強い羊と鴨の肉で作ったお鍋ではあるが、お出汁が絡んで極上と呼んで差し支えないものになっている。
「ワインともよくあうね」
「んー、美味しいですね! それに体も温まりますし、なるほど……寒い日の鍋というのはいい物ですね!
これは天界に帰ったら是非とも普及していきたいです」
そう言って目を輝かせるティルは、ワインと一緒にお出汁に絡んだお肉ばかりを食べているマルベートを見つけて。
「あ、マルベート様、肉ばかりではなく野菜も食べてくださいね!」
ひょいひょいとお野菜を入れてかいがいしくお世話をするティルと、それを眺めているマルベート、更にそんな二人を柔らかな笑みで見つめるLumilia。
「ねねね美咲さん、ちゃんと自分の好きなおでんの具、用意してきてくれた?」
ヒィロが無意識的に尻尾を振り振りして楽しそうに笑う。
「ボクはこれ! じゃーん! 油揚げー!
油抜きしてお餅詰めて餅巾着にして、たっぷり煮込むの」
「……私は、はんぺん!
じっくり出汁が染みてふわっふわに膨らんだのがいいのよ」
ぐつぐつと煮え立つ代表的な具材たちにそれらを加え、美咲はとくとくとお酒を注いでいく。
その間にヒィロはさっそくと大根から初めて具材を小皿に分けていた。
「んんん、体がポカポカして美味し~い!
一緒にお酒も呑んだら、もっと暖まるのかな?」
「あたたまるかというと、実際は違うらしいんだけど
一緒ならではのおいしさがあるって方が強いよ」
「美咲さん羨ましいー! ボクも早く大人になりたいな」
「……ふふ、一緒に飲めるまで、合う料理も探しまくろうね」
楽しそうに笑うヒィロにつられるように、美咲も微笑んでそう返しつつ、二人はおでんを楽しんでいた。
「あっ、そろそろ餅巾着が食べ頃かも! 美咲さんの具も一緒に、分け合いっこして食べよ!」
お出汁を吸って柔らかく、少しばかり重くなった持ち巾着と、お出汁を吸って何倍にも大きくなったはんぺんをいくつか小皿に分けて交換し、手を合わせる。
「いただきまーす!」
「はい、いただきます」
ほとんど同時にぱくりと餅巾着を口に運ぶ。
油揚げのじゅわっとした甘みと共に、お出汁を吸って温かくなった餅が舌の上で踊る。
「はぁぁ~染みた餅、これはいけない、いけませんよ……
これが鍋、冬のしあわせ……」
そう言って美咲はお酒をあおり。
「にゅふっ、美咲さんと一緒に大好物食べて心も体もあったかくなれてボク今とっても幸せだよ……」
それを見つつ、ヒィロも自らの大好物の味に小さく笑って。
二人は楽しくゆっくりとした一時を過ごすのだった。
「お鍋はある程度出来てるものを用意してもらったし、あとは具材を……」
そう言って持ってきた野菜(みずみずしい真っ黒野菜)を取り出すカナメ。そんな彼女を制止する声がかかった。
「カナのお野菜は……美味しそうッスけど、色味が足りない気がするッス!
というわけで僕が持ってきたのも入れるッスね!」
カナメが具材を入れようとしたところを制するように言ったのは鹿ノ子である。
「え? お姉ちゃんナニソレ、凄い食べ物じゃない感あるけどいいの?」
「え? この水色のどろどろしたものは何かって? チーズッスよ! 溶かしたチーズ!
しかもこのチーズ、なんと暗闇で光るッス! ……あ、でも味は普通のチーズッスよ?
こうすれば見た目も華やかになるし、流行りの”映え”ってやつになるッス!」
そう言って水色のどろどろしたチーズをぶちこむ鹿ノ子さんだった。
真っ黒な野菜と水色のどろどろしたチーズ、あとはほんの少しのお出汁やらが混じった鍋の中の色調は一見するととてもえげつないもの。
少なくとも外見からこれを美味しそうといえるのはそうそういないだろう。
「ねぇ、お姉ちゃんどうしよう? 凄い事になっちゃったね? カナのせいでもあるけど☆」
カナメは鍋の中身を見ながらてへっと言わんばかりに姉を見た。
「あ、そーだ♪ はいお姉ちゃん、あーん☆」
「もっきゅもっきゅ、うん、美味しいッス!」
姉に毒見をさせようもくろむカナメに対して、鹿ノ子はノータイムでそれに食らいつき、割とおいしそうに食べた。
「美味しいの? ホントに?」
「お鍋は寒い時期には染み入るッスねぇ~!」
お鍋の味に満足してそういった鹿ノ子に、カナメは嬉しそうに笑って。
「やっぱり、お姉ちゃん幸せそうな顔、カナは大好きだよ♪」
「カナもどうぞお食べッスよ! はい、あーん!」
そのままお姉ちゃんは嬉しそうにカナメに向かって具材を差し出していく。
「え、カナにも?ちょ、ちょちょちょっと待って……! すー、はー……」
「……カナ? 顔が赤いッスよ? 大丈夫ッスか?」
深呼吸を繰り返して推しからのサービスにテンパる妹と、不思議そうにカナメを見る鹿ノ子。
推しに勝てるわけがないオタク。しかしそれもまた、幸せな風景の一つというものなのだろう。
「混沌にもお鍋ってあるんだね、しーちゃん。
馴染みのある料理だからうれしいや。しーちゃん作って」
「なんでここまで来て俺の料理食いたがるのカンちゃんは、仕方ないなあ」
何のかんの言いつつ、史之はてきぱきと小ぶりな鍋と具材を用意して、具材はいくつかのボールに分ける。
「だってしーちゃんが作ったほうがおいしいんだもん。
僕、しーちゃんのごはんが食べたい」
そういうカンちゃんこと睦月はのんびりと笑っていた。
幼馴染という事もあって慣れた感じで調理を進めていく。
「最初は昆布だしのしゃぶしゃぶ。
具はクレソンとワカメとかまぼこ、酢醤油でどうぞ」
盛り付けた具材とお鍋を睦月に差し出せばほんのりと嬉しそうに笑う。
楽しむ睦月に対して、史之は一つ目のボールが空になったところで鍋を変える。
「お次は牡蠣の土手鍋風」
「……え、牡蠣? 僕これ嫌いって知ってるじゃん」
「牡蠣きらい?ダメ、ちゃんと食べる、栄養満点だよ。
それにこれ、大して苦くないよ」
「苦くないの本当? 本当に本当?」
疑っている睦月の前に史之は煮込み終えた具材を渡していく。
「ちゃんと素材は吟味してるから、大丈夫」
「あ、ほんとだ。これなら食べれるや」
試しに一つ食べてみて、目を見開いた睦月は、嬉しそうに食べ進める。
「…しーちゃん最近海洋に行ってばかりだね。
もっとこうして僕のことかまってよ。命令だからね!」
そう言ったのはちょうど最後のメニューの水炊きを作り始めて中ごろのこと。
イザベラ女王へと個人的に忠義を誓う史之としては、さもありなんという話だが、睦月はちょっと拗ねていたのだった。
●
硬めに炊き上げた混沌米『夜さり恋』を入れた釜を脇に抱え、ゴリョウはテレーゼにシメの雑炊をふるまっていた。
「どうだ、テレーゼの嬢ちゃん! 米も良いもんだぜ!」
「ええ、本当に。こんなに美味しいお米は初めてです。どこのお米なんでしょうか?」
目を輝かせるテレーゼに、自らの育てたお米のことを説明し始めて、少し。
ゴリョウはそのまま次のお鍋の下へと向かっていく。
「ぶははっ。シメに雑炊はどうだ?」
次に訪れたのは史之と睦月のペアがいる場所だ。
「やあゴリョウさん。雑炊作ってくれるの? それはありがたい」
一瞬驚いた史之は聞き覚えのある声に振り返り、ゴリョウの姿を認める。
「〆はいらな……えっ! 怪物? しゃべった!?」
一方、ゴリョウの姿を初めて見た睦月が驚きを見せる。
「怖がらなくていいよ。頼れる仲間さ」
「へえ、ゴリョウさんっていうの。
……あ、雑炊おいしい。おかわり」
「ぶはははっ、気にすんな。俺と知り合いが地道に品種改良したお米なんだが、
満足してもらえたようで何よりだ!」
そう言ってゴリョウは次の鍋の下へと走っていく。
一方で世界は少しばかり悩んでいた。
折角なら変わった鍋がしたいなと考え、チョコレートを使おうとしていたら、気づけばチョコレートフォンデュになっていた。
「チョコレートですか?」
「鍋バーティへ招待してくれたお礼ってことで」
「ふふっ、ありがとうございます! せっかくですし、まだお腹に入りそうな方はほかにも読んで食べましょうか」
嬉しそうに微笑むテレーゼと一緒に、世界はいちごやらマシュマロやらで食後のデザートを楽しむのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
尊い……鍋ってこんな尊いことができるテーマだったんですね……あぁ、家庭料理だから……尊い……
GMコメント
さて、お久しぶりでしょうか。春野紅葉です。
暖冬らしいですが、もうそろそろ寒さが強くなってきた今日この頃なのかもしれません。
鍋が食べたいので鍋パをしましょうという依頼になります。
●プレイングについて
迷子を避けるため、出来る限り、例文の様にお願いいたします。
【例文】
一行目:同行者名、グループ名など。
二行目以降:肉!!肉!!肉!!あと野菜入れて!!(本文)
●オーダー
鍋を食べる。
●会場
ブラウベルク家本邸大広間。
パーティ会場仕様。椅子と机が並んで鍋が設置されています。
●NPC
・テレーゼ・フォン・ブラウベルク(p3n000028)
幻想の南に位置する小さな領地を治める貴族。
なんやかんやで皆様にかなりの好印象を持ってお仕事を頼んだりしてきています。
●そのほか
食材や鍋の出汁などは基本的にそろってはいますが、
皆様が提示した食材を持ち寄って構いません。
その他、ドリンク類などもアルコール含めて色々用意されています。
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