シナリオ詳細
<グラオ・クローネ2019>魔導図書館のグラオ・クローネII
オープニング
●魔導図書館のグラオ・クローネ
『グラオ・クローネ』は混沌に伝わる御伽噺の一つ。
今の幻想種さえ知らない――もっと、もっと古い言い伝え。
幻想はバルツァーレク領のはずれに古い図書館がある。名をディオーネ図書館。
一説には、混沌に存在する数多の曰く付き魔導書を集めた図書館と言われ、貴族ですらそう簡単には入館できないという。
しかし、そんな魔導図書館は一年に一度、誰にでもその門戸を開く日があるという。それがグラオ・クローネ、その日である。
「ふふ、今年もついにこの日がやってきましたね」
長い黒髪が悦やかに靡く。ディオーネ図書館の司書達を纏める責任者クレアが柔らかく微笑んだ。
「クレアー! 魔導図書の準備は整ったよ!」
金髪ツインテールのエリィは、言いながら抱えた本をテーブルの上へと置いた。
「ありがとうエリィ。リィラの方は準備は整ったかしら?」
裏庭へと視線を向けると、同時に茶髪ボブカットの寡黙な少女――リィラが丁度やってきた。
「公開図書の準備も出来ました。図書の魔力も安定しています」
「ありがとうリィラ。
これで今年の開館準備は整ったわね」
例年グラオ・クローネの時にだけ開館するディオーネ図書館。だが、しっかりと清掃された図書館内は清潔で、差し込む穏やかな陽光が清らかな反射を見せた。
「今年はどんな方が、どんな本と出会うのでしょうね。
その出会いを導ければ……こんなに嬉しい事はないでしょうね」
「うん、そうだね!」「ええ」
三人は穏やかに微笑む。
さあ、開館の時間だ。
今年も、封印されし魔導書達がその力の一端を魅せる――
●
「今年もグラオ・クローネの日が来たわね」
『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)は一通の招待状を見せながらそう言葉にした。
招待状はディオーネ図書館の司書三人娘からのものだ。
去年はグラオ・クローネのみならず、魔導書の封印をローレットが手伝うことがいくつかあった。その事もあり、イレギュラーズは司書の三人とは懇意にしていた。
「私はまだ言った事ないのよねぇ。去年の今ぐらいはまだ駆け出しでローレットには顔をだしていなかったし」
去年のこの時期はまだ情報屋として活躍してなかったリリィはそう言って招待状を楽しそうに眺めた。
魔導書が見せるという幻影。手に取った魔導書によって移り変わるその幻影を共に見れば、より一層の絆が深まるという。
「私は行くつもりだぞ。なんていったって”ちよこれーと”が喰えるらしいからな!」
無い胸を張る『はらぺこ王女さま』ルーニャ・エルテーシア(p3n000050)が食い意地を張るのを見てリリィは「ふふっ」と微笑んだ。
「深緑――ファルカウのはずれにあるミシュマ村からもお誘いを受けているし、今年は大忙しだわ」
リリィはそう言って、右手の人差し指を顎先へ当てて振り返った。
「ねぇ、貴方達はこの日をどう楽しむのかしら?」
妖しく微笑む少女(リリィ)はそう言葉にして、可能性を集める者(イレギュラーズ)の答えを待つのだった。
- <グラオ・クローネ2019>魔導図書館のグラオ・クローネII完了
- GM名澤見夜行
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2019年03月05日 21時30分
- 参加人数31/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 31 人
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参加者一覧(31人)
リプレイ
●灰色王冠が甘く溶けていく
「ようこそ、ディオーネ図書館へ」
和やかな笑みを浮かべた司書三人娘が、固く閉ざされたディオーネ図書館の入口を開いた。
今年もこの日がやってきた。
グラオ・クローネその一日だけ開かれる魔導図書館。
今年はどんな幻影が広がって、来館した人々はどんな魔導書と出会うのだろう。
配られる灰色王冠(チョコ)を握りしめ、特異運命座標達はディオーネ図書館へと足を踏み入れた。
「こんにちは、クレアさん!
えへへ、今年も来ちゃった!」
シャルレィスが、クレアにオススメを尋ねる。
「そうですね、それならこれはどうでしょう?」
ある異世界に勇者として召喚された老人の物語。
力を持たない老人は勇者にのけ者にされてしまうが、或る魔導書との出会いをきっかけに、本物の英雄となっていくと言うあらすじだ。
「召喚されて、なんて私達みたい。面白そうだね!」
二人は揃って頁を開く。長い長い物語の始まりだ――
吹き抜け三階建ての建物に所狭しと並ぶ魔導書の数々にイーリンが笑い転げそうになっていた。
「っとそれより図書館なんだから、あまりはしゃぎすぎんなよ?」
と、ミーナが突っ込みを入れるとはしゃぎ回っていたイーリンは顔を紅潮させて反省した。
そうして二人は魔導書の中身を書き写す作業に没頭した。
地味な作業だが、なんだかんだで二人揃えば楽しい物だ。黙々と作業は進む。
不意にミーナがイーリンの横顔を見て言った。或る顔が頭を過ぎったからだ。
「……似て……いないな。うん、けど、まあ」
「なぁに」
リラックスした表情で尋ね返すも、ミーナは首を横に振る。
「んーん、なんでもない。ほら、続きやろうぜ」
微笑むように言葉を紡ぐ。
「終わったら一緒にコーヒーを飲みましょう。チョコケーキも欲しいわね」
軽くウィンクするイーリンに目を細めて、ミーナ今一度理解不能な文字が羅列された魔導書に目を向けるのだった。
「今は滅びた国家の歴史が書いてある本とかないっすか?」
歴史のお話は不思議と聞いていられるという浩美が尋ねた。
歴史愛するリィラは一つ思案すると、一冊の本を手に取った。
「……こちらはどうでしょうか。
今の幻想を勇者が作り上げる以前の、小国達のお話です。
眉唾な話も含まれますが、歴史物として面白い本だと思います」
やや饒舌なリィラの語り口調に面白そうだと、浩美は本を受け取った。
思い出の中の”誰か”を想いつつ、チョコを口に頬張った浩美は幻影の中へと没入(ダイブ)していく。
【花鳶】の二人は互いに本が好きということもあり、今日という日は、この図書館を訪れようと思っていた。
「すっげ……!」
広がる幻影の現実感に思わずシラスが声を上げた。
山の頂きから見下ろす朝焼けの雲海。幻影なのに、肌寒さや、空気の薄さすら感じるようで――
「わぁー! すごい、転移魔法で転移してきたみたいだ!」
アレクシアも思わず声を上げずにはいられなかった。
はしゃぐアレクシアは傍と気づいて赤面し、そんな彼女に「へへっ」と笑ってシラスが手を差し出した。
戦う為の魔法とは違う。そんな力に感動した想いは、二人の距離を大胆に近づけさせた。
広がる天上の光景を眺めながらシラスが想いを口にした。同時、アレクシアも宝石のような光景を前に、あふれ出した気持ちが言葉になった。
「いつかきっと本当にこんな場所に行こうぜ」
「いつか本物を絶対見に行こう!」
本を閉じる手は重なって気持ちは一つに通じ合った。
「ありがとう、大好きだよ」
感謝と感情を交わした二人は、ほんのり甘い灰色王冠(チョコ)を頬張るのだった。
「魔導図書館、凄い蔵書数だね」
文は図書館内の古びたインクと紙の匂いを胸一杯吸い込んだ。
クレアを見つけると、早速本を見繕ってもらう。
「これは……すごいね。面白そうだ」
未知の皮で作られた装丁。背表紙に刻み込まれたタイトルは《混沌神法》。神話時代の法律について纏めた物らしい。
「インクも滲んでいないし印刷物のようなシャープな手書き。
一体どんな手法で書かれ製本されたのだろう」
文具屋としてその興味は尽きない。文は目くるめく魔導書の世界へと没頭していった。
サンティールとポシェティケトは大きく目を見開きながら立ち並ぶ蔵書へと、視線を侍らせた。
「今日は『さんにん』でご本を読もう」
聞けばポシェティケトが闇市で砂の妖精を拾ったという。
そんなポシェティケトに、魔法の先輩であるところのサンティールが提案したのだ。
「どんな物に彼らが宿るのか、彼らと心を交わすためのまじないの本だよ」
「ぴかぴかで、きらきらも! これも、これも、素敵そう」
幻影の中で、”三人”は妖精の好みと魔法について学んでいく。
ポシェティケトがなぞるように指を振る。魔法を学ぶ生徒なのだ。
わからないところはサンティールが読み解いて、満足いくまで知識を蒐集した。
そうして二人は今日という日を記念して、用意した王冠(チョコ)を交換する。
「あなたへのお祝いよ。どうか受け取って」
「うふふ! もちろん僕も用意してあるよ。
ポシェのための灰色の王冠!」
宝石みたいな緑の飴の飾られたティアラのチョコと、鹿と小鳥のココア味の型抜きクッキーを互いに手渡し頬張った。
口に広がる甘美な味は、今日という一日を印象づけるのだった。
まさにトラウマを発症している心を癒やすように、サンディはお目当てのリィラに声を掛けた。
「よう。また来たぜ、リィラちゃん。
年に一回決まった日に会うっていうと織姫と彦星みたいだよな?」
「お久しぶりです。
それは……異世界の天体のお話、だったでしょうか?」
真顔で返答するリィラの反応にガッカリするも、気を取り直して一緒に本を読もうと誘った。
去年は幻想の歴史だった。果たして今年はなんだろう?
「……そうですね。ではグラオ・コローネ発祥の地。深緑の歴史へとご案内致しましょう」
二人はそうして、肩を並べて深緑の歴史を遡っていった。
奇跡とは何であろうか。
蛍と珠緒。奇跡について調べる二人は、或る奇跡の物語を追体験し、心の脈動ままに本を閉じた。
「……色々と考えさせられる幻影だった、かな」
蛍が呟く。
今まで自身が体験した奇跡のような出来事、景色を思い出す。この物語の登場人物の一人のように受動的では奇跡は起こりえないのだろう。
「ふむ。
引き寄せるだけのことをした方のもとに起こるべくして起こるのか。
起こるはずのないものを強引に手繰り寄せたからこそなのか」
ことの全ては壮大にして漠然。捉えようのない事象に他ならない。
「――でも、
捨て身の努力の先に奇跡があるなら、ボクは全力でそれを掴みに行きたい」
「捨て身はおすすめしませんが――
努力は、ええ よいですね」
特異運命座標の中には事実、パンドラを手繰り奇跡を成した者も存在している。
蛍がそれを成すのであれば……珠緒は近くでそれを見たいと、そう言葉にするのだった。
果ての迷宮関係の本を所望したレジーナだったが、どうも果ての迷宮に関する資料は少ないようだった。
「長い歴史はあれど未知のエリアが多いようね。
ここの資料でも表層しか知る事ができないのだわ。
いまだ未踏破の迷宮――俄然、興味は尽きないところね」
迷宮概要の魔導書を閉じて周囲へと視線を向ければ、幽魅がいくつかの本を持って近づいて来た。
「ゆみは、何の本を持ってきたのかしら?」
「せっかく……ですから……回復術や……治療術に特化した……本を……」
「――人の役に立てる知識を身につけるのはとても素晴らしい事だと思うのだわ」
自分本位で動いている我(わたし)には出来ない事だと尊敬を口にした。
幽魅は持ってきた魔導書達を読み込み、多くの知識を頭に入れたいと奮起した。
「レジーナ……さんも……何か……調べ物がある……ようです……けど……飽きて……悪戯しに……来ません……よね……?」
「我(わたし)を何だと思っているの。
図書館で悪ふざけはしないのだわ」
図書館ではね、と付け加えるレジーナは、さてどんなことをして幽魅をビックリさせようかと内心ほくそ笑むのだった。
空の”向こう側”を目指すシンジュゥは、セレネを連れ立ってその魔導書を開いた。
シンジュゥと同じように空の果て――其の先を目指した一人の科学者の物語。
挫折と苦難の果てに、彼は自らの命を代償にその”映像”を記録した。
高高度の空を映し出した映像。
その光景を息を呑んで見つめるシンジュゥ。その瞳が輝くのを、セレネは見逃さなかった。
「――きっと、自分の目で見るそれは、こうして映像で見る以上の……言い表せない何かがあると思うんです。“俺”が見たいのは──」
感極まって、熱く言葉を零したシンジュゥは不意に我に返る。
「って。ご、ごめんなさいっ、一人で盛り上がっちゃって……。
セレネさん、た、楽しめてますかっ?」
「……はい?! ……だいじょぶ、楽しいですよ! とても神秘的で……。
普段、空の向こうに何があるかなんて、考えてもみなかったので……それに、シンジュゥさんが楽しそうで、私も嬉しいです」
その言葉は真実本当の気持ちだ。
「ほら、続きを見ましょう」
微笑みながら促して、二人は今一度その記録映像の幻影へと没入していった。
今、司書三人娘は緊張の直中にいた。
原因はそこに居るエロ魔導書であるグリモー・アールだ。
「――本が好きとは大変結構、さあ吾輩とこの『大人向けの本』でお医者さんごっこと洒落込もうではないかであ~る」
「自我を持っているなんて、本当に危険な魔導書だわ!
どこか卑猥な印象もありますっ」
「クレア、《焚書術式(シュレッダー)》を使いましょう……! このままではどんな被害がもたらされるかわかりません……!」
「ねぇ、お医者さんごっこってなあに?」
魔導書の墓場とも言うべきこの図書館によくぞ魔導書が来たものだと、半ば感心すると同時に呆れるものである。
グリモーは邪な”恩返し”を期待しているようだが、そんな未来は……まあないでしょう。
「ヒヒ、この辺にいるコは大人しい本(コ)たちが揃っているね」
蔵書を眺めて薄く笑った武器商人は、目当ての本を見つけ手に取った。
”妖精の魔法”を収めた一冊の研究書。ある老魔法使いの記録である。
妖精とともに生涯を過ごした魔法使いが残した神秘と生体は、幻影となって広がった。
そんな幻影を眺めながら、魔導書を読み進めていく。
「おや、人懐っこい妖精(コ)だこと」
気づけば武器商人の周囲に妖精達がくつろいで、そんな光景に肩を揺らしながら、武器商人は今しばらくこの時間を楽しむ事にするのだった。
【フリホー】なんて集まりがあるかと思えば、それはタルトの思いついた余り者の集まりであった。
「と、いうことで、二人で本を開きましょ!」
「まあ、構わないけどな。
二つの魔導書を同時に開くか。なるほど楽しめそうだ」
二人が選んだ番号は596と053。
開くと同時、それは目くるめくお菓子の幻影を生み出した。
「わお、すごい美味しそう!」
「幻想にあるお菓子とは少し違うな……別の国の物か?」
アオイの推察は正しい物で、それは古の天義で生まれたお菓子とその系譜を集めたもので、まさに天義で有名なお菓子のパレードだ。
「ふふ、恋人と見る甘い幻想。
まさに、恋するボク達にぴったりね♡」
「いや恋人ではないが?」
「もう、そんな事言って! 美味しいパイを召し上がれ!」
「チョコじゃないのか……ってパイを投げつけるんじゃねー!」
気分はアゲアゲ、幻影ハイテンション。
その後撒き散らされたパイの惨状に、司書のクレアがぷんすこ怒ったのは言うまでもない。
「……魔法少女」
ぼそりと呟く衣に連れられてやってきました魔導図書館。
不穏な単語にハイデマリーはうぅむと思案するが、魔法少女をしているのは事実なので仕方が無い。
華麗に変身をしてみたいという衣に付き合って、二人は実演魔法少女をする事にした。
「恐ろしい事に魔法少女になれる魔導書なんてものが存在してるであります……」
いざ変身。
ピカピカ光ってフリフリドレスを身につける。衣の希望も叶って、ハイデマリーと同い年くらいの少女へ大変身だ。
年齢のことはさておいて、二人は木人相手に魔法を放つこととなった。派手な爆発にカラフルスターが飛び散って、まさにマジカルな感じに衣も大満足だ。
二丁拳銃を構えるハイデマリーは些か殺伐としているが……軍属魔法少女というのもどこかの世界にはあるでしょう。
「マリー……はいこれ」
「ではこちらも。あーんでありますよ」
最後は魔法でチョコを作り上げ、交換し合うと頬張った。二人の魔法少女はポップな甘さに微笑み合った。
「あの時小耳に挟んだ”光の柱”の奴は――」
「……ああ、《ファルトル》ですか。流石にアレは……」
バッテンを作るクレアに「そうですよね」とドラマは苦笑した。
そんなわけで、希望の本を尋ねてみれば、一つ候補が浮かび上がった。
「魔導書《フォルギナ》……?」
「”改変”を司る異界の神の名が書名となった魔導書群です。
事象の改変を可能とする魔導書でしたが……今は脆弱な空間支配を行うだけですね」
危険性がなくなったことで閲覧出来るようになったという。
全八巻からなる辞書よりも分厚い大型本群だが、きっと参考になる術式が刻まれていることだろう。
ドラマはワクワクを溢れさせながら、いざ”力”の源へと没入するのだった。
男は愛を知らずに育ち生きてきた。血生臭い泥の世界が全てだった。
女は恋を理解せずに生きてきた。子孫を残す為だけの不合理なシステムだと思っていた。
巡り巡った二人の縁は、この混沌たる世界で結ばれた。
芽生えた愛と理解を始めた恋という名の律動が互いを幸福へと導いていた。
「――で、あればお二人にはこの本が良いでしょう」
クレアの選んだ魔導書が、二人に甘美な恋の幻影を映し出す。
幻想的な星の世界で芽生えた幸福だけを集めた物語。
それはまるで、二人の出会いと行く末を暗示すかのよう。そうであれば――きっと、二人の未来は明るいものだろう。
閉じる魔導書に手を重ね、そっと幻がジェイクの耳元で囁いた。
「僕はこの方以上に幸せです」
「それは俺のセリフさ」
今日という日は、きっと二人に取って思い出深いものとなるはずだ。
見つめ合う二人の側に、そっと灰色王冠が置かれた。
リュカシスとイーハトーヴ。二人の開いた魔導書が神話幻想的な魔物達を映し出す。
小さく丸い温和な魔物から、名称不明、事実存在したかどうかも疑わしい神秘に満ちた魔物まで、大迫力の幻影に興奮が冷めやらなかった。
「すごい……」
瞳を輝かせたイーハトーヴが思わず声を漏らす。リュカシスへと振り向くと興奮ままに声を上げた。
「リュカシス、リュカシス! すごかったな!
この世界にはあんなにも神々しい生き物や可愛いモンスターがいるのか!」
「ハイ! 本の幻想とは、なんて絢爛なのででしょう。
いつか本物にも会ってみたいね」
うんうんと頷き合う二人は「いつか一緒に見よう」と声を揃えた。
そうして本を閉じたら、約束事のチョコ交換。小さな星と苺チョコの兎達。
「食べてしまうのが惜しいな」
笑み崩れるイーハトーヴに微笑んで、
「甘い香りとご一緒に、魔法の一日、堪能しましょう」
二人は次なる本を探しに向かうのだった。
幻影が描き出す夜空の下で、グレイとクラリーチェは空を指さしながら星座を探していた。
「あの日探した星座は……と」
「えーと、たしか大きくて綺麗なやつ――それだ」
星座盤を覗き込み、クラリーチェが指さした先の星座と一致するのを確認するとグレイが嬉しそうに声を上げた。
「占星術ってのもこうして星を見るのかなぁ。ね、いつか占ってあげようか」
やや軽薄な笑みを浮かべたグレイは、「きちんと修めるほどの才はなかろうが」なんて自嘲気味に付け足した。
「占いもできるのですか? ではいつかお願いしましょうか」
グレイが謙遜しているものだと見るクラリーチェは、グレイの多彩さに思わず感心して微笑んだ。
足下で気儘に生きる猫たちも、いつからか寄り添い空を眺め見る。不意に伸ばされる前足は星を指したものだろうか。
「すっかり仲良しさんですね」
穏やかな一時に気を許しながら、クラリーチェは鞄に忍ばせた包みをいつ渡そうかと思案する。
今しばらく、二人の天体観測は続きそうだった。
千歳と冬佳。連れ添う二人が選んだ記号は483と911。
混ざり合った二つの幻影は、あるクラゲの悲哀を歌う詩歌となった。
幻灯機、映写機のようなものかと思えば、脳内に誰かの歌が響く。魔術魔導の叡智は視覚のみならず様々な情報を魅せていた。
不思議な光景と感覚を堪能した千歳と冬佳。徐に千歳が言葉を紡いだ。
「俺が意識不明から復帰して、冬佳さんとまた出会ったのも図書館だったな」
「そういえば、あの時は学校の図書館でしたね。本当に偶然のようなものだったけれど」
美音部絵里との出会いから、元の世界のことを良く思い出すようになったと思う千歳。
冬佳もまた、元の世界へと少なからず思いを馳せるようでもあった。
「……久しぶりにコーヒーの一杯でも淹れたくなったな、もう下手になってそうだけど」
笑いながら喫茶店を営んでいた時のことを思い出した千歳がそう呟き、思いつきを冬佳へと口にした。
「今度、淹れてみようかな。一緒に飲んでくれるかい?」
クスりと笑って冬佳が色の良い返事を返す。
「是非。ふふ、この世界のお豆ならではの珈琲というのもあるかもしれないですよ」
噂に聞けば”エレリマ”なんてコーヒーノキの魔物が極上の豆を育んでいるとか。
新たな珈琲の扉が開かれそうだと、二人は笑い合った。
●そしてディオーネ図書館は閉館するII
「お気をつけてお帰り下さい」
去年と変わらず言葉を贈り、クレア達が最後の利用者を見送った。
これでまた一年、扉は固く閉ざされる事となる。
「ふふ、今年も素敵な一日になったね!」
エリィの言葉にリィラも頷いて、
「……利用者様にも喜んで頂けたと思います」
優しく言葉を紡いだ。
「それじゃ今年もやりましょうか――」
クレアの合図で、三人は今年楽しむ本を目の前に翳した。
時計の針が一番上で重なるまで、司書三人娘のお楽しみタイムが続くのだ。
ハッピー・グラオ・クローネ。
絆を結んだ全ての人に、素敵な幻影を。そして素敵な現実を――
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
澤見夜行です。
去年に引き続いての魔導図書館となりました。
素敵な幻影は見れたでしょうか?
来年も同名の依頼を出すかは未定ですが、司書娘達はちょくちょく出して行こうと思いますので、宜しくしてやってください。
本当はもっと書きたかった(書いてた)のですが、あまりにも書きすぎなのでごりごり削りました。それでもまだ描写過多な現状です。サービスと思って下さい。
依頼お疲れ様でした。素敵なグラオコローネになっていれば幸いです!
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
今年もグラコロの季節がやってきました!
美味しいチョコレートを口にしつつ、魔導書との出会いを楽しみましょう。
●ディオーネ図書館について
バルツァーレク領のはずれに位置する古いがとても大きな図書館です。
魔導書を収集、保管する図書館で、通常入館することはできません。
ですがグラオ・クローネの一日のみ門戸が開かれます。
中は少々古びた木製の書棚が並びますが、吹き抜け三階建ての内部は圧巻の一言です。この日のために溜め込まれた蔵書が所狭しと並んでいます。
その特性から開架書庫となりますが、本の貸し出しはしてませんのでご注意を。持ち出しは必ず司書三人娘に見つかります。ぷんすこ怒られます。
本は書棚の前で見るか、一階の閲覧室をご利用下さい。席は十二分に用意されております。
また今年は公開図書が準備されています。
攻撃性を持つ魔導書を試用することができます。こちらは裏庭で召喚された奇怪生物(無害)相手に使う事ができます。
●司書三人娘
『クレア』
今年の司書責任者。長い黒髪がトレードマーク。落ち着いた物腰で柔らかな微笑みを湛えています。
誰とでも気さくに話すことができるものの、少し型にはまったしゃべりで距離感を感じます。
好きな分類記号は913。文学をこよなく愛する文学少女。
『エリィ』
元気いっぱい、まだまだ子供のようなあどけなさの抜けない金髪ツインテール少女。
大人びたクレア達と比べれば子供だが、子供らしい素直さや天真爛漫な性格は好意的に見られる事が多い。
だれとでもすぐに打ち解けられる元気娘。
好きな分類記号は777。人形劇を愛する元気少女。
『リィラ』
寡黙な茶色いボブカットの少女。表情の変化が少なく喜怒哀楽の表現が薄い。
本人は感情豊かだと思っているようだが、表にでてこない。
三人の中で一番背が高く、平均より少し高いので気にしている。
人と接するのは苦手だが、与えられた役割は黙々とこなすタイプ。
好きな分類記号は210。歴史を愛する無口な少女。
司書三人娘は皆様が円滑に本を選ぶことができるようにサポート致します。
また、一人で参加された方達に接点をもたせたり、希望があれば一緒に幻影を見てくれたりしてくれます。
必要あればお声掛けください。
●出来る事
図書館内で本の幻影を見るか、裏庭で魔導書を扱ってみたりできます。
一人で参加される方も、二人以上で参加される方も以下のシチュエーションを選択してください。
【1】本を指定して参加
どのようなイメージの本かを指定頂ければ司書がそれに見合った本を用意してくれます。
本から広がる幻影が固まっている方(プレイングに記載できる方)はこちらをお選び下さい。
【2】分類記号を指定して参加
本のイメージがない方は000~999までの数値を選択することで司書がその分類記号にあった本を選んでくれます。
どのような場面になるかは開いてみてからのお楽しみですが、悪い事にはならないはずです。
とりあえず適当な本を選んでみる、目に付いた本を選ぶ等もこちらになりますのでご注意下さい。
【3】裏庭で魔導書を使ってみる
一部の公開魔導書を実際に使ってみる事ができます。
使ってみたい効果や見てみたい演出などあれば司書三人娘に尋ねてください。きっと近しい性能の魔導書を使ってみる事が出来るはずです。
特に希望がなければ適当に手に取ってみましょう。だいたい使い方がわかるはずです。
但し、公開図書は魔力が著しく低いものが選ばれています。混沌を無に帰すとか、敵を全部やっつけるみたいな効果は絶対にないので程ほどな効果を楽しんでください。
●書式
書式運用しています。
出来るだけ沿うようにプレイングを記載ください。
一行目:上記出来ることから【番号】または内容
二行目:同行PCやグループタグを記載ください。NPCにご用命ならばこちらに。完全単独もこちらに記載ください。
三行目以降:自由記載
●NPC
リリィ=クロハネ、ラーシア・フェリル、ルーニャ・エルテーシアの他、ステータスシートのあるNPCは『ざんげ』以外、呼べば出てくる可能性があります。
リリィとラーシアは一緒に魔導書の幻影を楽しむようです。ルーニャはチョコレイトをぱくぱく食べます。。
幻想アイドルすぴかちゃんは呼べば変装して出てくるかもしれません。
●その他
・可能な限り描写はがんばりますが描写量が少ない場合もあります。その点ご了承ください。
・同行者がいる場合、書式に従ってグループ名の記載をして頂く事で迷子防止に繋がります。
・単独参加の場合、他の方との掛け合いが発生する場合があります。
・白紙やオープニングに沿わないプレイング、他の参加者に迷惑をかけたり不快にさせる行動等、問題がある場合は描写致しません。
・アドリブNGという方はその旨プレイングに記載して頂けると助かります。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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