PandoraPartyProject
春風は、いつだって悪戯だった
子供っぽい言葉を使えば一目惚れだったのだ。だって、そうでしょう?
恋なんて雷にでも打たれたように転がり落ちるものなのだ。理性的であれば恋をしない――なんて事は無い。
あの人はきっと、わたくしになんて興味は無かった。
その辺の雑草を見た時にやたら大きなテントウムシが居たようなものだろう。
ええ、きっと。そう。きっと私がテントウムシなのかクロホシテントウダマシなのかヨツボシテントウダマシなのか気になったようなもの。
ちょっとテントウムシっぽさがあったから目に付いたようなだけの、そんな存在だったに違いない。
だからこそ「ぱっぱらぱー」なんて興味も無いからわたくしの名前を覚えない貴方であったも良かったの。
何せ、あなたがわたくしのようなぱっぱらぱーな小さき生き物に興味を持つわけなんてなかったのだから!
……本当に、それだけで、よかったの。
「うん。例えば分からないけれど、凄く良い話ししてると思うわ。
それがスモックを着用して黄色い帽子を被った状況じゃなかったら心から同情して、アンタをどうにかしてやれた気がする」
リア・クォーツ(p3p004937)は静かにそう言った。眼前には『不毀の軍勢』ロザリエイルが俯いて涙を流している。
最終決戦であるというのに幼稚園児のコスチュームでの先頭を強いられたイレギュラーズはこの目の前の不憫な乙女に同情的だった。
彼女は『不毀の軍勢』ではあるが、その力を貸し与えられただけの人間に過ぎないのだという。
初対面では水着バトルを、そして引き続いては愛を叫ぶウェディングドレスバトルとおしゃぶり赤ちゃんオギャり大戦を開いた胡乱な娘だ。
バニースーツ電流マッチまで熟してきたかと思えば、ついには幼稚園スモック最終決戦を開くに至った。
「ロザリエイルちゃん……」
炎堂 焔(p3p004727)はその名前を呼んだ。正直、凄い相手だった。どんなタイミングでも我を曲げない彼女。
だからこそその純愛を貫いてきたのだろう。
「ロザリエイルさんは、その、凄いと思うのですよ。だから、行く当てがなくなったらメイの教会に来ませんか?」
「家を与えて下さいますの!?」
「そ、そうかもしれないのです。悲しむことがあれば悲しんで、それから泣くだけ泣いて……」
慌てるメイ・カヴァッツァ(p3p010703)に「ですが、わたくし……」とロザリエイルはしょんぼりと呟いた。
これ以上彼女と刃を交す必要は無いだろうともルーキス・ファウン(p3p008870)は認識している。ロザリエイルとの時間は短かったが愉快なものだった。
「ロザリエイル……」
「オギャリ大魔神様」
「……俺の呼び名……?」
最終決戦という大一番で凄まじい呼びかけを受けたルーキスは兎も角と首を振った。
「選択を聞きたいんだ、ロザリエイル」
ぬばたまの髪にスモック、仮面を外せば可憐な娘であった。それでも、眼(まなこ)の曇った男から見れば所詮は雑草の一つに過ぎない。
彼女の体には電流が走ったように恋に落ちた。うらぶれた毎日を送っていたとしたならば、救いのように彼が目の前にやってきたのだ。
悪い男に唆された訳ではない。勝手に好きになって、勝手に愛して、勝手に『彼が他の技を模倣するなんて』と理想をぶつけた。
ロザリエイルの恋心全てを否定してはならないと隠岐奈 朝顔(p3p008750)は知っている。彼女は、彼が死ねと言えば死ねる程のはっきりとした存在だろうから。
「私達は、貴女を支えたいです。ロザリエイルさん。貴女は貴女として選択して下さい」
「そうですよ。で、如何します? もうハッキリフラれに行きます? てか、マジで思うんですけど……。
しにゃたちぱっぱらぱーなので、この恋なんてサッと忘れて仕舞えば良くないですか? だって、しにゃたち――ほら、なんですっけ――」
――大ッッッ親友――
何故か敵に唐突にそう認定されたしにゃこ(p3p008456)は「大ッッッ親友ですし!?」とロザリエイルに手を差し伸べる。
「と、言うわけだ。ロザリエイルが『来る』ならば全剣王ドゥマの所へと連れて行ってやろう」
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は肩を竦めた。以前としてフリフリとした可愛らしいスモック姿である。似合ってしまうから仕方が無い。
本気でコスプレをして居た汰磨羈は「その選択肢はロザリエイルに託す」とそう言った。
「……どうする?」
穏やかに微笑んだレイリー=シュタイン(p3p007270)はそっと手を差し伸べた。
「私は一途な貴女が大好きよ。
だから、選んで良い。貴女が選ぶなら、私が連れて行ってあげる。貴女が恐いなら、支えてあげるわ。
私はその為の準備だってしているのだもの」
にっこりと微笑んだレイリーにロザリエイルはすくっと立ち上がってから「わたくし、参りますわ」とそう言った。
あの人は、きっと最後まで名前なんざ覚えちゃくれていないのだ。
たった一度でも良いからロザリエイルと呼ばれたら吹っ切れてしまいそうな――細い糸を捩り合わせて頼りにしてきた恋だった。
「告白いたします。それで、潔く振られたら、わたくし! 『不毀の軍勢』を止めて『再現性コスプレ同好会』に参入いたしますわよ―――!」
「えっ、リアちゃん」
「おい!! 焔にバレねぇように加入に署名させた意味がねぇだろうが、このぱっぱらぱー女!」
リアが『ロザリエイルの居場所作り』(と、コイツに全てを押し付けるぞと言う魂胆)で行なった裏工作が露見したが、それはそれ。
イレギュラーズの選択を受け、一人の娘は進むことにした。
あの人が息絶える前に伝えよう。
――あなたが居て、しあわせでした。わたくしの生きる光でした。
けれど、最後まで、わたくしを見てはいなかったのでしょう。
戦うことばかりにのめり込んでいくあなたの心の支えになれなかったことが、わたくしは悔しかった。
「行きますわよ!! 恋と決別! 後ついでに世界を救うわたくしになりますわ! ね、しにゃこ!」
「イキナリ呼び捨てですか!? いいですけど! 行きますよ! オギャリ大魔神!」
「オ、オギャアアアアアアア――――!」
ルーキスは本気で叫んだ。
きっと、大した影響はない。
ただの一人の娘の自己満足になるかも知れない。
それでも「良かったね」とひとつひとつの幸せを集めて、一つの大きな可能性に変えてきたあなたたちだったから。
向き合う為の勇気を教えてくれたのだ。
せめて、全てが終わってしまう前に――
※最終決戦が進行中です!
※各国首脳が集結し、一時的に因縁と思惑を捨て、ローレットと共に決戦に臨む事で一致しました!
※Bad end 8首魁と見られるマリアベルとの戦いの報告が上がっています……!
※世界各国にて発生した戦いの、結果報告があがっています……!
※幻想各地にダンジョンが発見されたようです。
これまでの天義編|プーレルジール(境界編)|Bad End 8(終焉編)
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