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シナリオ詳細

<グレート・カタストロフ>冬風に寄り添うもの

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ねえ、焔ちゃん」
 ふわふわと宙に浮き上がりながらパルス・パッション(p3n000070)は何処か困った様子で首を捻った。
 ここは『コロッセウム=ドムス・アウレア』。鉄帝国邸と近辺に現れた『塔』の内部攻略を火急速やかに行なうべし、というのは問題解決の基盤である。
 世界中に現れたバグ・ホール。それらの対応に追われる中でもパルスはこの塔の攻略に乗り出したのだ。
 ダンジョンアタックにはうってつけだが、それだけではない。出来る限り『全剣王』の情報を得て闘士達と共有し、準備を万全にするが為の必須である。
「どうしたの? パルスちゃん」
 彼女のファンであり、そして、彼女の友人――パルスは「もう親友でよくないかなあ?」と言うが当人が「ギャアアアアア」と叫ぶためその辺りは保留である――の炎堂 焔(p3p004727)は不思議そうにパルスを見た。
「どうして浮いてるんだろう」
「前に水着を着ることになった時からあんまり不思議に思わなくなっちゃった。
 あっ、パルスちゃん気をつけてね、スカートがピンチだよ!」
「大丈夫だよ。スカートの中には、じゃじゃーん、きちんとスパッツをはいてるからね。焔ちゃんも注意してね!」
 ふよふよと重力など感じずに浮き上がっていた二人は扉を見た。
 固く閉ざされた扉の前ではレイリー=シュタイン(p3p007270)が「これ、開かないわねえ」とつぶやき確認を行って居る。
 その傍では「実は引き戸じゃなくて押戸だったりしませんか? 試します? 試しましょうか、あっ、ちょ、地面が遠い、助けて」と藻掻くしにゃこ(p3p008456)の姿があった。
「まるで宇宙空間みたいじゃないですか―――!」
 そう、これはしにゃこが『次回・宇宙空間で無重力バトル!』と宣言したが故の戦いなのだ。
 そもそも、このコロッセウム=ドムス・アウレアというものが鉄帝国人にとってはいただけない存在だ。
 終焉獣だ、『不毀の軍勢』だ、そして『最強を名乗る謎の男』だと、それらを野放しにして居て何ら嬉しい話はない。
 其れどころか最強を名乗る某かに好き勝手はできないのだ。
「ビッツさんはこないの?」
「ビッツは、寒いからってマイケルを抱っこしてたよ。ウォロクがコンバルグを抱っこしろって怒ってた。
 あとね、コンバルグは『うほうほうほうほ』って怒っていたかも……」

 ウホウホウホウホ―――――!

 何処からか聞こえたドラミングに「え?」とレイリーが呟き眉を寄せた。
 魔術仕掛け、めちゃくちゃな構造になっている塔の『謎の宇宙空間』に突如として現れたのは二体のゴーレムと――
「わたくしの素晴らしいドラミングは戦いを起こすゴング!
 着せ替え人形になる準備はできまして? ごきげんよう。『不毀の軍勢』と呼ばれております、ロザリエイルの登場です!」
 長い髪を揺らしウェディングドレスを来て突如として登場した白い仮面の女であった。
 翌々見れば可哀想な事とに白い仮面を着けられたゴーレムたちはフリルとレースで可愛らしく装っている。
「えっ、ゴレムが来ているのってウエディング水着じゃないですか?」
「ウエディング水着ね」
「どうしてですか」
 しにゃこはレイリーと共にゴーレムを見た。可哀想なことにウェディングドレスをモチーフにした水着を着用させられたゴーレムが些か困った顔をして居るのだ。
「わたくしは前回思いましたの。そう、皆様ったら、わたくしと『次回の戦い』を誘って下さいましたわね」
 パルスは「ああ……」と呟いた。このハイテンションな『不毀の軍勢』と出会うのは二度目だ。
 どうやら全剣王を至上であると認識したおかしな勢いな彼女は初冬に水着回を用意してきたのだ。
「水着でなくてもよろしいですわ! ですけれど、今回のテーマは『幸せな結婚』。理由はお分かりですね?」
「分からないでおこうかなあ」
 パルスはスルースキルを身に付けていた。だが、ロザリエイルはお構いなしだ。
「わたくしと全剣王がハッピーエンドになった場合、ああ、どういたしましょう。国が興るのでは?」
「その国を興してるのって鉄帝国だよね」
「そんな未来もあろうかと、ソラムには赤ん坊になっていただきました」
 ソラムと呼ばれたゴーレムは翌々見ればウエディングドレスではなくおしゃぶりをしていた。
「赤ちゃんになって下さってもよろしいですよ」
「……あの人って本当に大変恐ろしい敵なのかな? 焔ちゃん」
「そ、そのはずだよ。パルスちゃん。ボクもパルスちゃんにはオギャらないよ、大丈夫だよ!」
 慌てる焔をまじまじと見詰めてからしにゃこは叫んだ。
「要素の渋滞ごった煮やめてくださいよーーーー!!!!! オギャアアア――――!」

GMコメント

●成功条件
 ロザリエイルの撤退。

●フィールド情報
 突然鉄帝国に生えてきた『コロッセウム=ドムス・アウレア』の内部。そのワンフロアですが魔術的作用で『無重力空間』です。
 飛行スキルや方向感覚などなどなんだかこじつけられそうな非戦闘スキルや戦闘スキルがあればある程度無重力を乗りこなせます。そうしたスキル場合は何だか攻撃がし辛いです。ふわふわと浮かび上がります。
 空間自体は非常に動きづらい程度です。ふわふわと浮かぶのが少し難点ですね。
 『不毀の軍勢』の一人であるロザリエイルは「着替えるならばあちらに着替え用の仮設テントがありますわ」と指差しました。パルスは「どうしようかな?」と悩んでいるようです。
 この空間では特殊ルールがあるようです。後述。特殊ルールを利用しなくても質実剛健に戦えますが敵が勝手に愛を叫んでオギャります。

●特殊ルール1
 ウエディングドレスを着用して愛しい人をロザリエイルに負けない勢いで叫んだ場合は対・ロザリエイルのプレイングの攻撃力に補正が掛かります。(ゴーレムたちには効果はありません)
 愛は強いので仕方ないですね。戦闘よりも愛に割いていただいても構いません。愛する人への気持ちこそが最も素晴らしいバトルですからね。
 愛の強さで負けたならばロザリエイルは悔しそうに撤退していくでしょう。

●特殊ルール2
 おしゃぶりを付けてよだれかけを着用しガラガラをならしながらオギャってくださればゴーレムに攻撃が届きやすくなります。
 オギャっている方にバブみを溢れさせることが出来た貴方にも攻撃力の補正はあります。対ロザリエイルにはなんら影響はありません。
 ゴレムはソラムにバブみを溢れさせ、ソラムはオギャっています。パルスちゃんはもう意地になればバブみを溢れさせようとも、オギャることでもできます。

●『不毀の軍勢』ロザリエイル
 ロザリエイルと名乗った黒髪ロングヘアーの女性。年齢不詳。白い仮面で顔面を隠し真白のドレスを着用しています。
 本日のドレスコードはドレスだと堂々たる宣言です。どうやら全剣王に並々ならぬ思いを抱いています。
 些かテンションが高すぎるのが『面倒くさい』タイプのようですが……。
 ゴーレム二体が撃破された時点で撤退していきます。彼女についての詳細は不明です。

●『不毀の軍勢』ゴレム・ソラム(ゴーレム)
 二体のゴーレムです。ロザリエイルの配下のようです。何故かビキニを着せられて困った様子です。
 基礎ステータスでは非常に堅牢、防御力に優れていました。が、今はその辺りが水着効果で下がっているようです。
 攻撃は質実剛健な打撃が中心のようですが、ソラム側は魔術にも優れます。ゴレムはブレイクなどを行えるようです。
 何方もロザリエイルを守ります。ロザリエイルは後ろで楽しそうであるため、ゴーレムが何故か不憫に見えてくるような……。

●終焉獣 4体
 よちよちあるきの人参を思わせる終焉獣です。非常にのんびりと動きますが防御力が高いです。。
 パルスが三体纏めて相手にしています。

●『同行NPC』パルス・パッション
 ラド・バウ闘士。皆さんとご一緒にここまでやってきました。終焉獣三体を相手にしています。
 スピードファイターと謳われますが実力はお墨付ですので余り心配なさらないで下さい。
 何をするかも皆さんにお任せ致します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <グレート・カタストロフ>冬風に寄り添うもの完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年01月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
三國・誠司(p3p008563)
一般人
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃
夢野 幸潮(p3p010573)
敗れた幻想の担い手

サポートNPC一覧(1人)

パルス・パッション(p3n000070)
アイドル闘士

リプレイ


「これは……! 混沌でたまに現れる、ちょっとアレな感じの敵ですね分かります」
 しげしげと眼前の『不毀の軍勢』を一瞥した『0歳248ヶ月』ルーキス・ファウン(p3p008870)。やる気十分なのは称号からも理解できよう。
 ちょっとアレな感じの敵として判別されているロザリエイルは「何を仰います。全く以てスタンダードタイプな敵でしょうとも!」とウエディングドレスを纏って仁王立ちをして居た。
 そう。眼前の女は何故か衣装(フォルム)チェンジしている。前回が水着回とくれば、今回は何でもかんでも詰め合わせた欲張りセットなのだ。
「久しぶりだな、ロザリエイル! その前回と全く同じハイテンションぶり、何よりだという他はない。ぶっちゃけ嬉しいぞ」
 ある意味の癒やしを彼女に見出してしまっている『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)。白い仮面で顔を隠したドレスの女を前にしての発言ではあるまい。
 今回のテーマは幸せな結婚だという。成程、良く分かった。
「さて。今回は『幸せな結婚』ときたか。
 ならば、ぶちまけさせて貰う。普段は言えないあんなコトやそんなコト! ――変! 身ッ!!」
 レッツ 白無垢☆ 乙女ならば矢張り一度は纏いたい純白にその身を包んだ汰磨羈は『敵の所為だから仕方が無い』と洗いざらいをぶちまけて行くつもりだった。
「はぁん? 私と愛の強さで競おうってのかい?
 毎日ヴァリューシャの虹を掃除することにすら幸せを感じるこの私を相手に! 格の違いって奴を見せつけてやろうじゃあないか!」
 ドレス姿で片思いをして居るだけの相手に負けた気がしないのが『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)。その背後には白き獣の姿がある。
 そう、それは二足歩行で黒い縞模様があって、( ╹⋏╹)な顔をして居て。それから――
「とらぁ」
「ねえ、焔ちゃん。もしかして、あの虎って危ないのかな?」
「ううん、そんなことはないよ。パルスちゃん。でもちょっぴり危険かも知れないからこっちに来て欲しいな」
 そろそろと手を握り締めて『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は真っ直ぐにパルスを見た。ロザリエイルは最初からドレス姿で待っている。
 ならば彼女と相対するならば、やっぱりドレスが良い。うっかりパルスの前でオギャってバブってしまうのは危険だ。
 新しい世界にこんにちはしてしまいそうになる。
「ボクもドレスで良いの?」
「勿論。えっ、パルスちゃんもオギャる!? ボクに!?」
「え……ど、どうしよう」
 お願い、パルスちゃん。新しい魅力を開拓しないで。ほら、だって、オギャリストは他にも居るのだから。
 ドレス姿で見つめ合う焔とパルスに「パルスちゃああんと焔ちゃああん! とっても綺麗よー! 大好き―!」と声援が響く。
 何故だか手にしたペンライト。何時ものように桃色の光を揺らして純白のドレスでやってきたのは『ヴァイス☆ドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)。
 余すことなく完璧なドレス姿のレイリーの傍には揃いのデザインの『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)が立っていた。
「どう、似合っているかしら?」
「勿論」
「幸潮も似合ってて綺麗よ。愛の言葉楽しみにしてるわ♪」
 軽いキスを一つ落としてからそそくさと進むレイリーの背中を見詰めてから幸潮は頷いた。ふわふわと天にも昇る気持ちだ、いや、浮いているのだけれど。
「結構無茶言ったつもりなんですけどこんな要望まで通っちゃうんですね!
 いいでしょう空飛ぶしにゃこちゃんモード! たまにどうやって飛んでるんですか? って聞かれるんですけど頑張って傘で羽ばたいてます、たぶん」
 宇宙空間リクエストは『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)によるものだった。
 傘を振り回してばっさばっさと飛んでいる。決して傘を開いてふわふわとなんて飛ばして貰えないのがギャグキャラ補正のしにゃこちゃん。
 傘を開いたら魔法の力でふんわり空を飛ぶ美少女仕草は此処には必要は無く――
「オギャりはスペシャリストに任せてウェディングドレスに着替えていきますよ!
 え、前掛け、おしゃぶり!? 嫌です! しにゃも綺麗な衣装着たい着たいオギャアアア!」
 おしゃぶりを勢い良く投げ捨てたしにゃこ。おしゃぶりはと言えば――スポンッ。
 物の見事に『一般人』三國・誠司(p3p008563)がバブって手に入れていた。
 余談だけれど、おしゃぶりのこと、チュッチュって呼ぶよね。ちゅっちゅしてね。


 去年20歳になりました。
 彼女も(一応)出来ました。新年も迎え、新たな希望の一年がやってきました、この一月――ボクは、赤ちゃんになります。
 チュッ、チュッとおしゃぶりが上下する。
「パルスちゃん、今から起こることはもうね、仕方なく……已むに已まれず……解ってくれるよね。もしバレるようなことがあればそいつをしとめて僕も死にます」
「大丈夫だよ! 赤ちゃんになりきれる人だったらきっと将来も素敵だから!」
「パルスちゃん……」
 優しいアイドル闘士の声を聞きながらがらんがらんと音が聞こえて誠司は顔を上げた。
 おしゃぶりを咥えてフリルのスタイを首付けおむつを回して全力でハイハイをしながら落としたガラガラを追いかけるルーキスがやってくる。
 こう言うのは形から入るのが重要だと師匠も屹度言う筈だとルーキス・ファウン、0歳248ヶ月は隙も無いほどのオギャりっぷりを見せた。
 いいのか、師匠が泣いてるぞ。
「れいりぃ、がんばあ」
 戦いに赴くレイリーにガラガラを振ったルーキス。そばでガラガラをじいと見詰めていたプロオギャリストの誠司ははっと首を振る。
 初手で武器を捨て去って、スタイを付けおしゃぶりを吸いながらゆっくりとおすわりをした。関西弁ではおっちんである。おっちんできて偉いね。
「誠司くん、ルーキスくん。私はあのお姉さんと用事があるから、ゴーレムさんに遊んでもらいなさいね」
 優しい声音でゴーレム達にバブちゃん(成人男性)を差し出したレイリーはドレス姿で掛けていく。
 こんなバージンロードがあったなら、新婦も裸足で逃げ出すレベルなのだ。
「オギャッ――あああ、違います! しにゃは完璧美少女。軌道修正しなくては! 今回はバブらないほうですからね!」
 スタイをも捨て去ったしにゃこ。勢い良く投げたそれがゴーレムにぶち当ってから見ない振りをした。
「愛を叫びます! しにゃの愛する人、それは全てが可愛くて賢くて皆に愛され系美少女!
 その名もしにゃこ! L・O・V・E・し・にゃ・こ! ラブリーしにゃこ! 自分自身です!」
「――なんですか、あれは! ねえ! わたくしよりもおヤバい方いらっしゃいませんこと!?」
 ロザリエイルがしにゃこを指差した。しにゃこは「えっなんですかその顔! 自分と結婚できるのかって?」と唇を尖らせる。
「できますよぉ! もう一人くらい自分欲しいって思いますもん! 毎日楽しく過ごしますよ!
 一人どころか保存用布教用飾る用くらい居た方がいいって思いますよ! こんなに可愛いのにグローバル化してないとか世界の損失です!
 ロザリエイルさんもそう思いますよね! そう思わないなら自身の愛を叫んでみてください!
 何を叫んでも無駄ですがね! しにゃの可愛さは確定的明らかなので! 無敵!」
「キィッ!!! なんて強いの!!!!! けれど、負けませんわ! わたくしの全剣王への愛!!!!!!
 もう愛で『コロッセウム=ドムス・アウレア』が立ちますもの! 愛の違法建築で検挙ですわ! 検挙ッ!」
 ザッ、と地を踏み締めたとらぁ君が負けては居ないぞと言いたげに「とらぁ」と声を漏した。
「ああ、そうだね! 負けていない! とらぁ君! カモぉぁン! 合体だぁぁぁぁぁ!!」
 二足歩行のとらぁ君の肩――いや、撫で肩すぎやろ――に乗り無重力化で圧倒的二頭の虎と化したマリア・レイシス。
「飛行ペナルティを無効化したリニアドライブの力を見せてやろう……! 行くぞぉぉぉ!
 ヴァリューシャぁぁぁぁぁぁ!! 愛してるよぉぉぉ!!!
 君の生み出す虹は世界で! いや! 宇宙で一番美しい!! 片付けるのが憚られるくらいさ!」
 ――いえ、それは片付けてください。足元のとらぁ君の眸が怪しく光っていた気がした。


 一方で、真面目に終焉獣と戦っていた焔ちゃん。今日もパルスちゃんが可愛すぎて心から全力で愛なのだ。
「ねえ、ロザリエイルちゃん! ロザリエイルちゃんが全剣王さんを好きなのはよくわかったけど、ボクのパルスちゃんへの愛だって負けてないよ!」
「えへへ、焔ちゃんの事はボクも大好きだよ」
「ああああああ!?!?!?」
 ファンサが過ぎる。困惑して頭を抱えた焔の傍でパルスが「もう踏ん張りだよ!」と声を掛けた。
「パルスちゃんはすっごいんだよ! ボクがパルスちゃんのファンになったのはこっちの世界に来て最初のシトリンクォーツの時なんだけどね
 その頃はボクもまだこっちに来てそんなにたってない頃だったから、実は不安で寂しくて、元の世界のこととかを夢で見てちょっとだけ泣いちゃうこともあったんだけど……パルスちゃんのライブを見たらね、すっごく楽しくて! 元気もいっぱいもらえて!
 それからはあんまり寂しくなったりしなくなったんだ!
 あの時パルスちゃんと会えなかったら、ボクはこうやって今みたいに元気でいられなかったかもしれない。
 だから、パルスちゃんにはすっごく感謝してるんだ!」
「焔ちゃん……」
 きゅん、としたパルス・パッション。アイドル冥利に尽きるというもの。
 焔は続けた。それから何度も試合やライブも見に行って、こうして戦って、遊んで――更に魅力を体感して。
「今では大切なお友達……ううん、親友なんだ!
 ……うぅ、よく考えてみると本人の前で好きなところを言うのって結構恥ずかしいね」
「嬉しいよ、焔ちゃん」
 プロポーズみたいだねと笑うパルスに焔の心が爆発しそうだった。そんな純粋な愛には負けては居られない。
 マリアはとらぁ君の肩の上で尚も愛しい人の名を叫ぶ。
「いつだって君は可愛らしいし、とても綺麗だ!!
 赤毛はどんな夕日より輝いて、君の翠の瞳の美しさにはどんなエメラルドだって敵うもんか!」
 詩的な愛を紡いだマリアの脚をとらぁ君が掴んだ。ずり落ちそうになった肉体を支えてくれたと感じただろうか。
「君は……私の光さ! 戦争しか知らない私に素敵なことをたくさん教えてくれたね。
 私は、戦うことしか知らなかった。私のいた世界では当たり前だったし後悔はない。民を守る軍人としての誇りもまだ心に燃え盛っている。
 ヴァリューシャと出会って本当に良い意味で自由に生きていいんだと思えたんだ!
 素敵な女性だ! だから好きになった! ヴァリューシャは私の全てさ! 彼女の為ならなんだって出来る!
 ――たとえこの宇宙の全てがヴァリューシャを否定したとしても私だけは必ずヴァリューシャの味方になる!」
 堂々と続けたマリアの脚をずるん、と引き摺り落としたのはとらぁ君。それまで素晴らしい愛の叫びにロザリエイルが苦戦していたというのに――
「ちょっ、待って、とらぁ君。とらっ――ちょっ、今、良い事言っていたじゃないか!
 ああああああまって、とらぁ君!!! 何が気に入らなかったんだい!? 何が!? 出番かい!? 出番が欲しかったのか!?」
 勢い良くマリアを振り回しながらロザリエイルに攻撃を加えていくとらぁ君。
 白い仮面の淑女(きっと美人だ)は「何ですのあれ! 何ですの!」と混乱したように叫んでいる。勢い良くロザリエイルを掴み上げ、マリア諸共大地へとめり込ませる。
「ぶへ」
 淑女とあるまじき声を漏したが、負けては居ないロザリエイルが穴から直ぐに飛び起きる。
「加勢しなさい! ゴレム! ソラム!」


 がらがら。ばぶばぶ。ゴーレムの前には横たわって膝を曲げ、やや脚を掘り出すように寝転んだ誠司の姿。
 両手は開かれて掌はきゅっと握り込められてゆっくりと親指だけが立てられる。
「おら、あやせよ」
 親指はまだ口には遠い。おしゃぶりが溢れ落ちてから誠司はゴーレムの前で脚を動かした。
 いいのか。赤ちゃんだぞ。見捨てたらオギャるぞ。渾身のバブリズムを見せてやる。
「だー、うー、あー……ホギャアァァ!」
 その傍らをハイハイで高速移動していくのはルーキスだった。ハイハイレースにでもでれそうなルーキスくんの渾身のハイハイの儘にゴレムに突進していく。
「だっこ」
 ゴーレムは混乱していた。
「だあああっ!」
 叫びながら掌をぱーにして叩く。おしゃぶりが弾みで落ちて衝撃が受けたように「びえ」と声を漏した。
 慌てるゴーレムが身を屈めれば隣の誠司が「良いのか。おぎゃるぞ」と脅しをかける。
 新人ママゴーレムは混乱していた。一方を抱っこすればもう一方を下ろすことになる。下ろせば背中スイッチでおぎゃってバブって大騒ぎ。
 その声を聞いてついでにもう片方も泣き出して、並だな身だの連続が起こるのだ。ガラガラを手にしたルーキスはもう元の世界に戻れないほどにオギャっていたかもしれない。
「ばぶ」
 誠司の目が据わっていた。分かって居るなと言いたげにゴーレムにしがみ付く。ギャン泣きして良心を攻め立てろ。
 だっこされれば笑う癖に下ろせば直ぐに泣くのだ。赤ちゃんの要望なんて直ぐに分る訳がない。おむつかな、ミルクかな、げっぷかな、眠たいのかな、それとも、さっさと依頼をクリアして元通りになりたいのかな。
 解るわけがないだろう。赤ちゃんというものは解明されない謎なのだ。そう膝に乗せればキーボードを連打して大変な事にするのが赤ちゃんなのだ!
「オギャアアアアアアアアア」
 誠司を抱っこしてあやしていたゴーレムにルーキスが泣き叫んだ。慌てて下ろしてからルーキスを抱っこすれば誠司が次に「オギャアアアアアア」と渾身の鳴き声を響かせる。
 困惑するゴーレム。最早戦闘不能の域である。
「やれやれ……ならば、さっさと此方も決めねば」
 幸潮はそっとレイリーを見た。愛を伝える相手は共にある。相手に伝える愛の言葉はこのために用意してきた。
「我が、愛を受け取れるように。我が、愛を謳い語れるように。そうありたいと、願ったから。そうあってと、願われたから。
 虚無の重しなる『自己否定』。無限の愛へとひっくり返した。
 故にこの身体は『極限嗜好』。無償の愛を渇望する心は今も。今も待ち望んで憚らないから」
 ゆっくりと前へ、前へと進み行く。レイリーがいる。彼女が美しく微笑んで居る。
 そう、レイリーこそが幸潮が此処に居る理由で、ここに立つ理由だ。紅き恋慕が膨らめば彼女を究極で最高なヒロインに仕立て上げるのだ。
「ねぇ、私の美しく愛しきヒト。あなたと一緒じゃなきゃイヤ。
 二人の物語を永遠に連ねたい。だから私も、あなたも、一緒。逃げられないし、逃がさない。
 あなたの輝きは尽きる事無い。『舞台定義』は、そのように。『描写編纂』に『描写強調』。
『英雄再興』に仕立て上げて。『幻想讃歌』は鳴り止まない。
 あなたが陰る事もあり得ない。私『敗れた幻想の担い手』が。――愛の為に万年筆を振るう限り!」
「ええ、ええ」
 レイリーはきらりと瞳を輝かせた。ああ、可愛い可愛い。なんて可愛いのかそんなに愛を語られたならば喜びで笑みは抑えられないではないか。
「幸潮、愛しているわー! 貴方が姿も、物語も、心もとても素敵よ!
 貴方の心で変わる今の姿がどれも愛しくて麗しくて、貴方の万年筆が描く物語が世界がとても輝いていて楽しくて。
 貴方が普段は飄々としているのに愛されると照れたりして愛らしいわ! ――幸潮、私を見て! そして、支えて!」
 彼女ものの語りの主役にレイリーはなる為にやってきた。
「ねぇ、私の愛の叫びはどうだった? 貴女も舞台の上よ、だから、貴女の愛の言葉も聞きたいな」
「わたくしの愛は、すべて! 此処で戦う理由ですもの。変わらぬ事も愛でしょう!?
 あの赤子下さいません事!? あれを全剣王とわたくしの子という事にして育てますもの。双子で良いですわ!」
 ルーキスと誠司が首を振った。子供の話ばかりをするその声ににいと唇を吊り上げたのは汰磨羈であった。
 レイリー曰く汰磨羈は性癖だ。正直白無垢を着ている姿もテンションが上がる。
「まずはこれを見てくれ。私の大切な存在、その名も『あざみ』だ」
 金色の眸に紫色の髪の猫の娘の写真を持ってきた。ちゃっかり二人で撮ったのだ。お気に入りである。
「只今、艱難辛苦を経て培った絆を更に深めている真っ最中でな。ああ、もう。人の姿も猫の姿も堪らなく愛しい!
 最初はこう、愛は愛でもLikeな方面かもしれぬなーと思っていたのだが。今はもう断言できる。これはLOVE。Likeではない。ぞっこんLOVE❤」
 頬に手を当てうっとりと笑った汰磨羈。あざみは笑って「へー、たまきち。好きなんだ」なんて言うだろうか。
「ふふ。御主になら分かる筈だ。この心身全てを以って、彼女の全てと愛し合いたいこの想い!
 もしも、彼女と結婚する事が出来たのなら……ああ、どちゃくそにイチャつきたい。
 家に帰ったら、おかえりただいまの濃厚なキスをしたい。
 そして、楽しく歓談しながら一緒にご飯にしたりお風呂にしたり、人の姿とねこの姿の双方で思う存分にモフすりしたい。Wニャンモナイトも、イイ!」
 うっとり笑った汰磨羈は。
「そして、しまいには。こう、アレだ――めちゃくちゃに」

 ₍₍(ง˙꒳˙)ว⁾⁾ ずいずい

「したり」

 ₍₍(ง ˙ ꒳ ˙ )ว⁾⁾ ずずい

「されたり」

 ₍₍(ง  ˙  ꒳  ˙  )ว⁾⁾ ずずいの

「したい」

 ₍₍(ง   ˙   ꒳   ˙   )ว⁾⁾ ずいっ☆

 勢い良く迫った汰磨羈は「ちなみに! 子供は! 兄と妹の二人が良いなって! 思って居るッ!」と叫びながら一撃を投じた。
「なッ――! 子供ができるんですの!?」
「ああ。化け猫の妖怪だぞ。そのへんはどうとでもなる!」
「くっ、本人には話すことが出来ないでしょうに。ここでフルオープンにするだなんて! なんてひと!
 わたくしだって叫びたいですわーーー! 全剣王、あなたの妃になりたいのに!」
 汰磨羈から遁れようとするロザリエイルの手をそっと握り締めてからレイリーが輝く笑みを浮かべた。
「そんな、愛の乙女のロザリイエル殿が私は好き。一途で、純情で、全力な貴女はとても好き。
 でも今は、私を見てほしいな。目の前にいる私を――ロザリエイル、とても嫌いだよ」
 そして、二人は幸せなキスを――
「しませんわよ!?!? あああっ、駄目ですわ! 赤ちゃんの前で破廉恥ですわ!」
「ばぶ……」
「おぎゃ……」
 もはや成人男性扱いされていない誠司とルーキスは死んだ眼でがらがらを降り続ける。
「キッ、キスをしたら、産まれてしまいますわよ! なんてこと! は、破廉恥!
 ッ、こ、ここはわたくしの負けですわ! ああっ、ゴーレムが育児疲れでノイローゼになっている!
 皆々様、なんて強い力をお持ちなのか! けれど、負けません。負けませんから! お、一昨日来やがれですわ~~~!!!!」
 勢い良くゴーレムを魔法で動かして彼女は走って行く。
 去って行くロザリエイルに「ばいばい」と焔は手を振って見送ったのであった。

成否

成功

MVP

ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃

状態異常

なし

あとがき

 ばぶ! あばあば、だあああ!!!!!!!!

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