PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ラケシスの紡ぎ糸>秋風よりも素敵なことを

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ねえ、焔ちゃん」
 ――『コロッセウム=ドムス・アウレア』
 それは突如として鉄帝国帝都近辺に現れた『塔』である。
 天衝く高さを有するそれは魔術的に内部が『めちゃくちゃ』になっている。上も下も関係なく、階層を越えて踏破出来るとも限らない。
 ダンジョンアタックにうってつけではあるが、成果の度合いが定かではないそんな場所だ。
「最近って寒いよねえ」
「そうだね、パルスちゃん」
 ラド・バウ闘士にしてアイドルで知られるパルス・パッション(p3n000070)が連れていたのはイレギュラーズの炎堂 焔(p3p004727)である。
 現地集合で、と堂々と言い放った彼女はコロッセウム=ドムス・アウレアの調査に赴いたのだ。
 曰く、「ビッツが暇なら行ってこいって言うんだよね。ボクも暇じゃないのに」との事である。膨れっ面のパルスちゃんも可愛いと笑みを浮かべる焔だがこれはある意味で『一大事』なのだ。
 漸くを以て冠位魔種との戦いから立ち直ってきた鉄帝国帝都近辺に突如として塔が『生えた』のだ。
 それだけでも誰もが警戒心を露わにしたことだろう。軍部など、至急対処を行わねばならないと声高に叫び、ラド・バウでもあの塔は強いのかという話にもなった。アーカーシュからも天衝く高さの塔に対しての情報提供が依頼される有様だ。
 挙げ句の果て、と言うべきか。『全剣王』と名乗る者より宣戦布告が成されたのだ。

 ――我こそが真なる鉄帝の王である。我はこの塔より惰弱なる現鉄帝を支配し、その部を布くものである。
   命惜しからん者は挑むがいい。この塔には最強が在る!

 と、まあ、そう言われてしまえば鉄帝国が黙って等居られない。
 宣戦布告と共に『終焉獣』や『不毀の軍勢』の侵攻が始まったのだから攻め入る必要さえある。
 だからこそ、パルスは此処までやってきた。ラド・バウ闘士として『ある程度の知名度のある闘士が挑んだ』というアリバイ作りでもある。
「ビッツさんは行かないの?」
「んー。別口じゃないかな。寒いからマイケルを抱っこして暖を取ってたよ。ウォロクが厭な顔してた」
 想像に易い状況だ。コンバルグはでかすぎてNGだったのだろうか。ビッツ・ビネガーはウォンバットを抱き上げながら一先ずの現状把握を急いでいるのだろう。
「で、此処が現場の。ドムス・アウレアだよ。入ってみようか」

 ――内部は魔術仕掛けだ。めちゃくちゃな構造である。
 一歩踏み入れただけで、パルスは察する。内部の情報を全てこの時点出るのは不可能だ。
「うーん、何とも言えないね。内部はめちゃくちゃだし。何だか……暑いし……」
 パルスは悩ましげに首を捻ってから前を見た。海だ。ざあざあと押しては返す、白波の気配がする。
「海?」
「海……?」
 パルスと焔は顔を見合わせた。
 絶妙なロケーションだ。丁度寒々しくもなってきた鉄帝国の季節の変化を忘れさせる鮮やかな海がそこにはある。

「お待ちしていました」
 白い仮面を着けた何者かが姿を見せた。女だろうか。長い髪を垂らしている。
 その背後には同様の仮面を着けたゴーレムが二体鎮座していた。
「誰かな?」
「『不毀の軍勢』と呼ばれております。全剣王――ああ、いえ、鉄帝国で最も! 強く! そう! 最強(さいつよ)の! 伝説の! そうです! 皇帝と呼ばれた素晴らしきお方! ――を支えておりますロザリエイルと申します」
 柔らかそうな黒髪を有する女は神の居ろとは対照的な白い仮面と白いドレスを揺らしていた。
「わたくしは寒いのが苦手です。ですので、夏を用意させて頂きました。ゴレム、ソラム。水着におなりなさい」
 手をぱちぱちと叩いたロザリエイルに二体のゴーレムが頭を掻いて分からないと言った仕草をした。
「……」
 女はそそくさとビキニらしきものをゴーレムに着せてから堂々と腕を組む。
「夏らしく、鮮やかに! 開放感を武器にして! 倒して差し上げましょう!」
 手を叩いたロザリエイルにパルスは「うーん、良く分からないけど、キミは話せる人だね? ついでに、倒せば良いんだね?」と首を傾げた。
「じゃあ、ちょっと全剣王について語って欲しいし! 鉄帝国から退去して貰う相談をしてもいいかな?」
「あら、言って居られる場合!?」
「勿論! ボクも焔ちゃんも、イレギュラーズの皆も、『最強(さいつよ)』だからね!」

GMコメント

●成功条件
 ロザリエイルの撤退

●フィールド情報
 突然鉄帝国に生えてきた『コロッセウム=ドムス・アウレア』の内部。そのワンフロアですが魔術的作用で白い砂浜と海が広がっています。
 太陽がじりじりと肌を焼く、まさしく夏!そのものです。塔の外に出れば肌寒いので温度差に風邪を引きそう。
 『不毀の軍勢』の一人であるロザリエイルは「着替えるならばあちらに着替え用の仮設テントがありますわ」と指差しました。パルスは「どうしようかな?」と悩んでいるようです。
 暑いので水着で戦っても良いかも知れませんね。開放的な気分+ロザリエイルが気を良くするためか水着の場合は速度や回避がちょっとだけあがります。ただし防御系列は軒並み下がります。(※ゴーレムも同じ状況です)

●『不毀の軍勢』ロザリエイル
 ロザリエイルと名乗った黒髪ロングヘアーの女性。年齢不詳。白い仮面で顔面を隠し真白のドレスを着用しています。
 本日のドレスコードは水着だと堂々たる宣言です。どうやら全剣王に並々ならぬ思いを抱いています。
 些かテンションが高すぎるのが『面倒くさい』タイプのようですが……。
 ゴーレム二体が撃破された時点で撤退していきます。彼女についての詳細は不明です。

●『不毀の軍勢』ゴレム・ソラム(ゴーレム)
 二体のゴーレムです。ロザリエイルの配下のようです。何故かビキニを着せられて困った様子です。
 基礎ステータスでは非常に堅牢、防御力に優れていました。が、今はその辺りが水着効果で下がっているようです。
 攻撃は質実剛健な打撃が中心のようですが、ソラム側は魔術にも優れます。ゴレムはブレイクなどを行えるようです。
 何方もロザリエイルを守ります。ロザリエイルは後ろで楽しそうであるため、ゴーレムが何故か不憫に見えてくるような……。

●終焉獣 3体
 シャチを思わせる空飛ぶ終焉獣です。非常にすばしっこいタイプです。
 パルスが三体纏めて相手にしています。

●『同行NPC』パルス・パッション
 ラド・バウ闘士。皆さんとご一緒にここまでやってきました。終焉獣三体を相手にしています。
 スピードファイターと謳われますが実力はお墨付ですので余り心配なさらないで下さい。
 水着を着るかどうかは皆さんにお任せします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <ラケシスの紡ぎ糸>秋風よりも素敵なことを完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年11月11日 22時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
メイ・カヴァッツァ(p3p010703)
ひだまりのまもりびと
紅花 牡丹(p3p010983)
ガイアネモネ

サポートNPC一覧(1人)

パルス・パッション(p3n000070)
アイドル闘士

リプレイ


 コロッセウム=ドムス・アウレアを前にして『アイドル闘士』パルス・パッション(p3n000070)は『不毀の軍勢』と戦う筈であった。
 ――そう、闘士としての実力を遺憾なく発揮し、この場を制圧するつもりだったのだ。
「わお」
 大袈裟な反応を見せた『無尽虎爪』ソア(p3p007025)はあからさまにビックリしたと言いたげに両手を挙げた。
「おかしな勢いの人」
「おかしくありませんことよ?」
 あらまあ。こてんと首を傾げて見せたのは黒髪の女であった。ぱちくりと大きな双眸を瞬かせる彼女に『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)は大きな金色の眸をぱちくりと瞬き返す。
「……メイたち、かなりシリアスな場面に遭遇していたと思うですが」
 そうだ。各国で終焉の気配が蠢いた。不気味な騒動が起きており、其れ等によって多大なる影響が及ぼされている。『ねーさま』の墓のある付近でさえその脅威に晒された――なのに。
「何で初冬にもなって水着回なんです?????
 どうして海なんてあるんです? ここどこ? 塔の中じゃなかったです???」
「どうして?」
 眼前の女――ロザリエイルは地を踏み締めた。否、砂浜を踏み締めてその爪先を埋もれさせた。
「わたくしが寒いのが苦手だからと! 申し上げたでしょう!」
 木霊する語尾。ハウリングする声音。呆然と立ち竦むメイ。
「成程ね……(?)」
 一度頷いて見せたのは『ヴァイス☆ドラッヘ!』レイリー=シュタイン(p3p007270)だった。眩しい陽射しに白い砂浜、広がる海。誰が何と云おうとも『夏』だ。そう、外は初冬かもしれないが、此処は夏だ。
「成程。うん、成程ね。これなら正装は水着ってのは頷けるわ。だから、パルスちゃんの水着も見たいなぁ。
 私も水着になるからパルスちゃんも着替えておいて。大丈夫、その間は任せて!」
「レイリーちゃんもなるんだね?」
 この状況を受け入れたのかと言いたげなパルスにレイリーは輝く笑顔で頷いた。
「受け入れるよ! うんうん! あの人、いい人かも知れない! なんたって、着替える為にテントを用意して、着替えを待ってるもん!」
 ロザリエイルと同じテンションで『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は微笑んだ。パルスの手を握り締め「しかも!」と眸を煌めかせる。
「パルスちゃんの言う通り! 最強(さいつよ)だよね! しかもパルスちゃんは最ツヨなうえに最カワなんだから!
 パルスちゃんの水着姿を見たら、きっとロザリエイルちゃんや全剣王さんだってファンになっちゃうよ! というわけで、水着になっちゃおうよパルスちゃん!」
「焔ちゃんも受け入れられるんだね!?」
「あとね……そのう……今年はせっかくお揃いの水着を用意したんだし、こんな時だけど一緒に着れたら嬉しいなって思うし」
 パルスは可愛い友人の願い事を前にぱちりと瞬いてから、頭の中で大凡想像が付かない速度で思考を回転させていた。
 ここでイキナリ水着になってビッツに怒られないかな? いや、いいか。それより暑いし、確かにレイリーちゃんの言う通り水着が正装だし、なんなら焔ちゃんが喜ぶし――
「見事に集まったのは美少女ばかり! ならサービス回ですよね!
 皆さんしにゃの超ウルトラダイナマイトボディみたいですよね!
 勿論着替えていきますよ! パルスさんも着替えていきましょうね! スタイルだけならしにゃも負けてないんですけど!」
『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)はにこにことしながら勢い良くロザリエイルを見た。
「勿論、ロザリエイルさんも脱ぎますよね!? まさか自分だけ水着着ないとか無いですよね!?
 ついでに仮面も脱ぎましょう! 可愛いかもしれないお顔が見れないのは残念なんですけど!」
 パルスは思考した。素顔を見ることが出来れば何かヒントになるだろうか。しにゃこの『誘い方』は上手い。
「わたくしも!? 仕方有りませんわねえ、乙女の生着替えをお求めですね?」
 ――敵も乗り気だ。ここでノらないのは何となくバラエティ耐性のあるアイドル闘士が廃る気がする。
「うーむ……見事に美女美少女ばかり揃ったな。さらに水着。
 まさに『綺麗な宝石が詰まった箱』だな。眼福だ。しかしスタイル込みの美しさなら、私も負けてはいないぞ」
「わたくしもですわ」
 何故かロザリエイルに対抗される『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)。
「美女でアルあなたが水着を着ないなんて有り得ないよね。うんうん。
 ほう、着替え用テントまで用意してくれるとは……暗に『水着を着ろ』と言われているようなものだな。良かろう、乗ってやる。だから――」
「ええ、着ます! 勿論! そこまで言われたら全剣王を虜に『したかった』ボディをお見せ致しましょう」
 出来てないのかと思わずモカは叫びかけた――が、ノリノリのロザリエルは聞いていない。
「うん! 水着になろう」
 パルスは取りあえず納得した。
「お着替えだっけ? 敵を前にテントでお着換えって不思議な感じだねー!」
 上手いこと会話すれば色々と話してくれそうなロザリエイルにソアは合わせて金ビキニに着替えることにしたのであった。


 ――と、言うわけで。
「ほぉう、水着バトルとな? いいぞ、大の得意分野だ! 行くぞ皆の者――ヒアウィゴッ!!」
 際どい黒い紐ビキニ姿で踊り出したのは『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)であった。
 堂々とその身を躍らせる汰磨羈は露出を惜しまない。堂々たる姿を曝け出した汰磨羈にゴーレム達が慄いた。
「防御の低下? それがどうした。命(防御)を惜しむな、刃(色気)が曇るぞ」
 これが戦いだとは言われたが『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)は可愛らしい夏色の水着に着替えてから思わず叫んだ。
「いや、なんでだよ。なんでオレたち敵前で水着に着替えてんだよ!?
 いやまあ着るけどさ。着ねえのはなんか負けた感じするし! しかもお前も言う前に着替えているのかよロザリエイル!」
「ええ」
「仮面は着けたままか! いいよ! なんか理由あるかもだしな! けど、なんで水着なんだよ!」
「夏ですもの」
 主張が一貫している。ひょっとすれば目の前の女は乗せられやすく、ちょっと『おばか』なだけでまともな思考回路を有しているのかも知れない。
「え、えと。気を取り直して。郷に入ればなんとやら、ってこういう時に使う言葉であってますかね」
 白く可愛らしい水着を着用しておずおずと姿を見せたメイ。その背をグイグイと押して顔を出したのはウルトラダイナマイトボディのしにゃこだ。
「ロザリエイルさん仮面着けっぱなしですか!? どうして!?」
「美しすぎて目が焼け焦げますよ」
「そんなことあります!? あ、あります。あります、しにゃで皆さんよくそうなります。ね!」
「……え!?」
 どうして同意を求めたのだと言いたげなメイにしにゃこは輝く笑顔を浮かべたまま圧をかけていた。
「さて……主役は揃ったわね」
 未だ一人だけ鎧姿であったレイリーはすうと息を吸い込んだ。そして――
「私の名はヴァイス☆ドラッヘ! 皆の夢を護るため只今参上!」
 収納された装備で早き替えを行なったレイリーは「私と貴女、綺麗な水着の美女二人で戦う姿も絵になるでしょう!」とロザリエイルを指差した。
「確かに。私が黒髪ロングヘアーの美女、黒をまとうミステリアス系不毀の軍勢であり、貴方が純白の水着を纏う金髪美女。
 其方の方が画も映えますわ。ええ。純白のドレスを纏っていて居たのは何時でも全剣王と祝言をあげる為でしたから」
「なんて?」
 レイリーは余りの個性を前にして問い返した。絶対に祝言を挙げる予定なんて彼女にはない筈だからだ。
 堂々と仮面姿でやってきたロザリエイルが手をぱんぱんと叩く。
「気を取り直しましょう。ゴレム、ソラム。分かって居ますね? それから――わたくしのペットも紹介致しますわ!」
 海から勢い良く姿を現したシャチを前にしてパルスは「ここはボクに任せて!」と走り出した。可愛らしい水着姿のアイドル闘士はおそろいの水着を着用して居た焔に合図を送る。
「じゃあ、ボク達はゴーレムをやっつけちゃおう! 遊……じゃなくて、戦わなきゃ!」
 ちょっぴり遊び半分である事は確かだが眼前のゴーレムは土人形らしい屈強な肉体にマイクロビキニを着用している。
 何とも言えない光景に汰磨羈は眉を寄せた。美女揃いの水着会。眼福の光景にどうしたことか存在するマイクロビキニ土人形。
「しかしまぁ、本当に不憫だな。待ってろ、すぐに倒して楽にしてやるからな……!」
 汰磨羈がソラムへと肉薄する。ソラムは『がこんがこん』と顎を動かして何とも言えぬ哀愁漂う響きで意思を表示した。
 ――いや、ご主人、いっつも自我を修復するんで苦労するんすわ。
 同情の眼差しで見遣った汰磨羈は「マイクロビキニは終らせてやる……」と頷く。
「なんか、えーと、うん! おっけー! ふっふっふ、お話の邪魔だし、かわいそうだし! あなた達はバイバイ」
 勢い良く跳ね上がったソアは水着であろうともお構いなしだった。豊かな胸元がふんわりと跳ね上がる。
 理由なんて単純明快。彼女の水着にワイヤーなんてない。バストを支え美しく支えるワイヤーが無いと言う事は、そう、暴れん坊状態だ。
 ソラムは俎の胸を覆ったビキニ姿に何となく恥を覚えた。ゴーレムだけれど。
「あ、あなたの方がボクと遊びたいのかな?」
 ソアは怪しく笑って大地を蹴った。勢い良くゴレムへと接近して行く。ゴレムを引き寄せていたのは牡丹だ。
(いや、良く分からないけどよ……かーさん直伝の日傘さばきを見せるときがきたってことだな!)
 何となく状況を把握した様子で牡丹はその片翼と日傘でトリッキーな動きを見せた。ゴレムの意表を突く。
 鮮やかな陽色と緋色を合わせた水着姿の乙女に気をとられるゴレムへとソアの爪先が『つん』と突いた。
(普通に戦っているのですが! ええと、ええと……)
 メイは困惑していた。ねーさまならこういう時どうするのだろう。いや、ねーさまは何となく流されていくタイプだ。
「パルスさん! とてもお強いと聞いているですがご無理なさらずです!」
 色々気をつけようねと笑ったパルスに「そういうことじゃないのです」とメイは首を振った。回復スキルで露出は回復できないなんて、そんなことを考えた自我を持って長くない精霊の心は複雑であった。


「さて――水着似合ってるわ。それでは、私と踊りませんか?」
「ええ、構いませんことよ」
 恭しく誘うレイリーに尊大な態度で頷いたロザリエイル。此方はどうやら通常営業だ。
「ロザリエイルさんでしたか? メイたちと遊びませんかっ。
 ほら、せっかくの夏空に海に水着ですよ! メイ、ビーチボール持ってきたですよ! ゴーレムさんも水着来てるんだしご一緒にっ!」
 ほらほらとボールを持ち上げて『戦うのはやめよう』と促すメイへとロザリエイルは「ええ、ですから戦うのです!」と楽しげな声音を弾ませた。
「え? 頭鉄帝のひとってみんなそうです? そんなぁ……」
「仕方が無い。頭鉄帝は闘争こそ全てだからな」
 汰磨羈は言い笑顔だった。ロザリエイルが水着だった。それだけでテンションがマッハだった。
 先程、「御主は脱ぐのか? 脱がないのか?」と声をかけ続けた甲斐があった。
「見ればわかる。御主の体、セクシーだな? その美貌、練り上げられている。極上の領域に近い」などと言い続けた甲斐があって水着姿でレイリーの前に立っているロザリエイル。
「ぶっちゃけ! すごく! 嬉しい! 夏らしく、鮮やかに、セクシーを解放してくれて有り難う!」
 正直キャット、前のめりの段。誰よりも水着会を楽しんで居る汰磨羈。ダイナマイトボディを弾ませるソア、そして何も揺れない焔!

 ――水着回 皆違って皆良い by たまきち本日の報告書全文――

「ロザリエイル! その美貌、仮面を外して拝めぬのが悔しいが!」
「顔を見られないグラビアって興奮しませんこと!? 想像上のわたくしを当て嵌めることです」
 汰磨羈は「こいつ、中々……」と呟いた。困惑し続ける牡丹とゴレムの応酬は続く。
「ロザリエイルさんのお話面白いからもっと全剣王のこと聞かせて欲しいな。
 どうして全剣王は籠ってるのかしら。この前に最強を名乗ってた人は直ぐにヴェルスさんに挑んで勝ったのに」
「イケメン過ぎるからではなくって!?」
「そういうことじゃないとおもうけどなあ!」
 ソアは『この人ってもしかして本当におばかなのかも』と認識した。ちょっと話が通じそうだと思ったが、全剣王が絡むと馬鹿になる。
 先程語っていた白いドレスが祝言を何時でも挙げるための初期装備だというならば筋金入りだ。
「今の私に触ると怪我するぞ」
 ゴレム達が困惑した様子でがこがこしているがモカは気にする事は無かった。パルスが相手にしている終焉獣諸共倒してこのフィールドを制圧するのが狙いでもある。
「最ツヨで最カワなパルスちゃんに援護なんて必要ないかもしれないけど、それはそれ! これはこれ!」
 手をブンブンと振って焔は「パルスちゃん頑張ってね!」と微笑んだ。ソラムの完全な自壊を止めておくが戦闘不能にはしておきたい。
 それにしたって水着を着せられたゴーレムの不憫さは何たるか。しにゃこが「あれって、めちゃくちゃ悲しそうですよね」と呟いた。
「いいですか! ロザリエイルさん、ゴーレムさん達悲しそうですし責任とって仮面外しましょうよ! まあ、無理でもいずれ引っ剥がしに来ますね!」
「乙女の秘密に触れるんですか!! 仕方が無い人!! わたくしが魅力的すぎたばかりに!」
「しかしロザリエイルさん声でかいですね! え、しにゃも声でかい!?
 そんな事は無いですよ! うるさいって言われた事はありますけど!」
 しにゃことロザリエイルの会話を聞きながらメイは「似たもの同士かもです」とぽつりと呟いた。
 依然として続く戦い。程なくしてゴレムがごろんと土塊へと戻る。
「はい、ポロリ!」
 ばいんと揺らぐソアの胸元を何故か凝視したロザリエイルは「わたくしもあれくらい攻めれば全剣王と祝言をあげれるのかしら?」とレイリーに聞いた。
「さ、さあ、どうかしら」
 困惑しながらも相手取るレイリーは何故此処でお悩み相談が為されているのだろうとぱちくりと瞬いた。
 残るソラムは困惑していた。倒されてしまうとヘルプの視線を送るがロザリエイルは今だレイリーと会話を楽しんで居る――いや、何だか自分の言いたいことを言い続けているだけである。
「うーん」
 モカは肩を竦めた。
「ま、終ろうか。互いに周りのノリに苦労してるみてえだな。同情はしてやるが容赦はしねえからな!」
 牡丹は勢い良く接近し、一撃を叩き付けた。潮騒を聞きながらゴーレムは跡形も無く土へと戻る。
 がらがらと崩れていくゴーレムを見詰めてからロザリエルがすい、と手を下ろした。
「さっ! わたくし、深追いしませんことよ!」
 割り切りの良い相手だ。警戒心を見せるモカと、その隙を伺うソアを前にロザリエイルは「着替えを忘れずに持ち帰りなさい」と何故か母親のようなことを言い出す。
「では、わたくしは帰りますので……」
「また会う時を楽しみにしてるわよ」
 そそくさと帰宅を宣言するロザリエイルを睨め付けたレイリーに水着姿の彼女は「今回はわたくしの負けです」と素直に認めて見せた。
「仮面は次回のお預けですわよ、ええ、次回の!」
「次回……中々楽しい戦闘でしたよ! 次会う時は更に面白いフィールドを用意してくださいね!」
 ロザリエイルはフィールドと呟いてからしにゃこを見た。そうだ、水着で暴れたのだから次は――彼女はにいと笑ってから背を向ける。
 逃走風景さえ何となく間の抜けた淑女だ。深追いはしない方が良いとパルスはイレギュラーズに言ってみたは良いが、なんだか馬鹿らしくなる光景ではあった。
「ばいばーい! 今度は普通に遊びに来てね!」
「次回のステージ案を考えておくことです。おさらば!」
 ぶんぶんと手を振った焔の傍でしにゃこは「え? 丸投げです!?」とぱちくりと瞬く。
「皆、中ボスを退場させたからと油断してはいけない……今は何が起こるか分からない状況だ」
 神妙な表情を浮かべたモカは白いビキニパンツの食い込みを後ろ手につい、と直した。
「ふぅ、なんだか憎めない人だったよね。大好きな人の為に頑張ってるのが伝わってきたからかな。
 ボクがパルスちゃんのためなら凄く頑張れちゃうのと同じような感じがした!」
「うーん、でもなんだか凄いタイプだったね……? また来るっぽいし……」
 良いのかなあと焔を見詰めて首を傾げたソア。終ったから遊んで良いかと問うメイに「周辺の確認だけしようか」とモカは辺りを見回して見せた。
「うん、でも此処は勝利!」
「そうね! いえーい!」
「やったー!」
 パルスとハイタッチをするレイリーと焔。楽しげな彼女達の声を聞きながらしにゃこは「いえーい!」とハイタッチをしながらぴょんぴょんと跳ねていた。
「さぁ、外出ましょうね! ――うおっさっっむ! 忘れてた! さむ死しちゃいます! ぶあッッくしょい!!」
 ――しにゃこはその後、風邪を引いたらしい。

成否

成功

MVP

仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式

状態異常

なし

あとがき

次回、何回が待ち受ける――!
ロザリエイルさんをお楽しみ下さい。

PAGETOPPAGEBOTTOM