PandoraPartyProject

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アルマスク攻勢

アルマスク攻勢

 断崖絶壁の先端から濁流のように流れるのは、雪雲の切れ端だ。
 鉄帝国軽騎兵隊隊長リーヌシュカ(p3n000124)は、崖に座って足をぶらぶらと投げだし、そんな雲に向かって「あー」とか「わー」とか叫んでいる。木霊が返るでもなし、深い意味は特になさそうだが――
「うん、ありがとう。大丈夫よ、このぐらいならみんな寒くはないから」
 オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が、懸命に出力を上げ続けている火の精と風の精にお礼を述べた。それにアーカーシュが誇る古代技術の一つ『セレンディの盾』も、この島を大寒波から守ってくれている。力を司る精霊や大精霊達には感謝してもしたりないぐらいだ。

「まったく、落ちても知りませんよ」
「そしたら助けてくれるんでしょ?」
「無理ですが」
「何それ」
 即答したヨハン=レーム(p3p001117)に、リーヌシュカが頬を膨らませる。
「それでヨハン、お兄さんなんて居た?」
「居ませんが」
「じゃああれは誰? 親戚?」
「バルドだ。久しいなエヴァンジェリーナ嬢にリュドミーラ嬢。息子が世話になっている」
 軍服姿の青年(に見える男)は、ヨハンの父だと名乗った。
 記憶の限りこういう、もっとこう。いかにも不動産でも取り扱ってそうな見た目だと思っていたが。
「はぁ!? え、お姉ちゃん何その反応。え、何、知ってたの?」
「まあ……」
「皆さん、そろそろ到着しますよ。って、シュカさん危ないです」
「すずな! はーい」
 すずな(p3p005307)が呼びに来るや否や、スロープの手すりを滑って司令室へ向かうリーヌシュカに、リュドミーラと苦笑し合い――
「私達も行きましょうか」

 彼等が居るここ浮遊島アーカーシュは、鉄帝国中部の都市アルマスクへと舵を切っていた。
 連絡が途絶している街であり、新皇帝派や天衝種が跋扈していると予測される地域だ。無論、情報の信頼性は極めて大きい。この冬を乗り切る政策『アイアン・ドクトリン』における独立島アーカーシュの優位性、その一つは故パトリック・アネルが遺した高度な諜報機関ゲハイムニスの人員――パトリックス・ウィルだ。
 それはさておき。アルマスクは、かつて帝国の東部と南部を繋ぐ要所として栄えた街である。
 大鉄道網の完成により、近頃は沿線沿いの宿場町へと姿を変えているが、特筆すべきは南部への街道を今も有するという点だった。
 冬期には、ある程度の食料や燃料をため込んでいる村落部と違い、こういった鉄道沿線の都市は物資流通も鉄道に頼りがちだ。国土全体が未曾有の雪害に覆われた状態となれば、むしろ田舎よりも危険が大きい。
 だがアルマスクを解放し、南部のノイスハウゼンとつながるアルマノイス旧街道を回復させることが出来れば、ベデクトからローゼンイスタフにルベン、そしてアルマスクにノイスハウゼン、最終的にはバーデンドルフ方面までを視野に入れた流通回復を目指すことが出来る。危険な帝都を経由する必要なしに。
 そうすればポラリス・ユニオンの西進作戦『エウロスの進撃』と合わせれば、南部と東部全域のフォローが可能となるだろう。
「スノーモービルの整備は万端っス」
 アーカーシュの技術班『EAMD』のキャナル・リルガール(p3p008601)が応える。
 攻略の準備は万全だ。
 それになにより――
「アルマスクには、国内有数のラジオ電波塔があるんだね」
「てえことは放送局の設立なんてのも、夢じゃなくなってくるわけか」
 マルク・シリング(p3p001309)に頷いたヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)が、後ろで腕を組んでいるリチャードを振り返る。
「金の話かい? 僕も儲かるんだろうね? ……なあんてさ。新皇帝派の連中が気でも触れて倍も刷れば、あんなもんは紙屑になっちゃうんだから、現ナマで良けりゃ、バンバン吐き出しちゃうぜ」
 なんとも豪快な話にヤツェクが口笛を吹き、佐藤 美咲(p3p009818)が首を横に振った。
「リチャード氏って、実はかなりヤバい御方なのではないスかね」
 アーカーシュは自身の立場を表明するためにコマーシャル戦略を立てているが、アルマスクの解放に成功すれば、選択肢は更に広がることになる。
 そしてアーカーシュは最後の切り札『ラトラナジュの火』を有している。
「こういうものはいざという時がこなければ、だろうがな」
 天之空・ミーナ(p3p005003)はそうは言うし、それは問題ない。けれど美咲は別種の不安を感じていた。
 たとえばラトラナジュの火の威力は各国の諜報機関にも伝わっているに違いない。ジェック・アーロン(p3p004755)、あるいはミーナのように、そのトリガーを握ることになるであろう人物達の身の安全は優先したいと思えるが。

「いい雰囲気だ、今日からよろしく頼む」
 そんな所に現れたのはバルドだった。
 アーカーシュ・ポータルでの審査を済ませた彼は、帝政派から独立島アーカーシュへの転属(?)を希望していた。本人が言うには、帝都からサングロウブルグへの撤退戦に付き合ったのだが、持久戦よりこちらのほうが性に合うらしいのと――
「地上の寒さは古傷に響く」
 ――ということだった。妻(ヨハンの母)のスズも搭乗することになるが、あるいは彼女の安全性を優先したのかもしれない。ヨハンはといえば、ちょっと困っていた。父を追って帝政派の門戸を叩いたのだが、移籍と来たものだ。それに母まで乗り込んでくるとは。アーカーシュに移籍するにも、気恥ずかしいやら何やらである。両親は放っておいてこのまま帝政派に戻ってもいいが、見てない所で「あらあらここが魔王城でヨハン君のお部屋なの?」「ベッドの下に薄い本はあるの?(ないよ)」なんて始められた日には目もあてられない。
「こっちに来ればいいのに」
 本当にこう。このリーヌシュカは、簡単に言ってくれるじゃないか。人の気も知らずに。
 親子の団欒――そんな可能性が自身にも生じてきたことについて、ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は想像半分実感半分といった所ではあるが。それはともかくアーカーシュへの搭乗について、気がかりな人物もある。小金井・正純(p3p008000)についても同様。たとえばヴィトルト・コメダ。たとえばクロム・スタークス。彼等は新参ではあるが『審査』の前に搭乗してきており、ヘザーのようなことがなければ良いが。
「あなたの水天宮妙見子ちゃんは安心安全ですっ」
 水天宮 妙見子(p3p010644)のように、本当にそう(本当に?)だったら良いのだけれど――

「まずは少尉から、お願いします」
「それでは作戦を説明します、すずなさん手を貸していただけますか?」
「わかりました、これですね」
 歯車卿に頷いたリュドミーラ少尉とすずなが、机上に地図を広げた。
 眼下のアルマスクは、スクリーン上でしか確認出来ない状態だが、一面が雪に覆われている。向こう側からアーカーシュは、分厚い雲にしか見えまい。完全な奇襲になるだろう。ワイヴァーンや軍用スノーモービルを投下しての行動だ。イレギュラーズによる少数精鋭の『斬首作戦』だ。
 街を牛耳る新皇帝派の中枢を即座に破壊し、一挙に制圧するということ。
 このような戦い方が出来るのは――あの夫人は元気だろうかと正純が遠くを眺める――ある種の遺産とも言えるものがあるからだ。
「情報は力ですね」
 仮に真正面から攻め込むのであれば、作戦が全く違ってくるのは間違いない。
「マルクさん達は、すずなさんやエヴァと電波塔に向かって下さい。バルドさんもご同行願えますか?」
「いいだろう。降下作戦か。ワイヴァーンに乗ったことはないが」
「そのあたりは息子さんに、どうにかよろしくお願いします」
「……あの」
 ヨハンは抗議したが、リュドミーラはスルーした。
「つまり僕達はラジオ電波塔を制圧し、アルマスクの街へいち早く勝利の報を伝えると」
 マルクが地図上のコマを一つ、電波塔へ移動させる。
「話が早くて助かります。それからアーリアさん、ジェックさん、正純さんはこちらを確認下さい」
「これは、地下鉄の地図だね」
 ジェックに、アーリア・スピリッツ(p3p004400)が頷いた。
「これってこの街の上よね、これが線路? 地下の?」
「そうですね、ということは――」
 正純が続ける。地底に繋がる道が存在する可能性があるのだ。銀の森の精霊女王が口にした『地底に封ぜられた古の魔物』にも関連するかもしれないということ。
 点と点が、徐々に繋がりつつあるが。
 まずは分厚い雲の下に広がる街を、無事に解放せねばならない。

 ※派閥勢力パラメータを使用できる『アイアン・ドクトリン』が制定されました!
 ※独立島アーカーシュの派閥スキル『パトリックス・ウィル』により、帝国中部の街アルマスクに関する情報精度が向上しています。
 ※独立島アーカーシュの『アルマスク攻勢』作戦の開始が、数時間後に迫っています。

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