PandoraPartyProject

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対冬政策

 天義の東。『偽神』を掲げたる独立都市での戦いが一端の収束を見せた頃――
 鉄帝では極寒の頂点の中にあった。
 雪荒ぶ。冷気が首筋を撫でれば、まるでそれは死神の手が如く、だ。
 例年を遥かに超えるその勢い……

「まるで、フローズヴィニトルじゃな」

 鉄帝の西に存在する都市サングロウブルク――
 その一室で言の葉を紡いだのはバイル・バイオン(p3n000237)である。
 フローズヴィニトル。それは勇者王の時代にこの世界を覆った『極限の冬』とも称される伝説級の大寒波……幻想王国の方では『フェンリルの遠吠え』と呼ばれているのだったか? ともあれソレが鉄帝国へと襲い掛かってきたわけだ。
 鉄帝に住まう民にとって寒波は毎年に訪れ、乗り越えてきたものであるが……
 しかし予想を遥かに超えるコレは話が別だ。
 各派閥が蓄えていた備蓄に大きな影響を齎した程に。
 幸いにしてイレギュラーズの尽力もあってこそ今の所は勢力の状態に亀裂が走る程の被害は受けていないが楽観視は出来ない。故にこそ耐えるだけでなく『能動的』に動く必要があると、かの宰相は思考を巡らせていた。
「よぉ宰相殿。今大丈夫か――? 前に言ってた公衆衛生改善の件なんだが」
「おぉレイチェルか。うむ、報告は貰っておるぞ。
 イレギュラーズ達の協力によって領内は安定傾向に入りつつある。
 厳しい寒波は続くが、人心は荒むという程ではなさそうじゃ」
 と、その時。見えた姿はレイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)であったか。彼女を中心とした提言により、帝政派ではサングロウブルクを中心に公衆衛生の改善を行わんとしていたのである――
 レイチェルだけでなくスティア、愛無、シルキィ、イーハトーヴと言った医療や治癒に優れた面々が名乗り上げてくれたのを契機として実行した公衆衛生改善案は実を結びつつあった。
 感染症などの病を事前に予防するべく動いたこの策は、帝政派が有する求心力の高さもまた起因していたかもしれない。
 人々が実に協力的であってくれたのだ。
 サングロウブルクに避難して来た中には医者の類もいた様で、そんな彼らが自ら名乗り上げてくれたことによって各地の衛生改善も果たせた。いやそもそも全勢力でも群を抜いた求心力――帝政派の名声とも言っていい――がある故に帝政派の領内ではフローズヴィニトルによる混乱も、驚くほど小さかった。
 むしろ帝政派に味方せんとする者が日々集まる程だ。
 ボーデクトンを制圧し周辺を勢力圏内に治める事が出来た今。
 いよいよもって本格的に新皇帝派に抗する為に勢力の力を振るうべきかと思案していた……


「全く。とんでもない事態だ……幻想王国に程近い南部ですら、これほどの寒波とはな」
 同様に南部戦線が拠点バーデンドルフ・ラインにてザーバ・ザンザ(p3n000073)も雪景色に視線を巡らせている。鉄帝国南に位置するこの地は幻想王国に隣接しており、いつも通りであれば北方の土地よりマシなのだが……
 見渡す限りの豪雪状態。雪かきに勤しむ南部の兵の姿も見られる程だ――
「とはいえ、前々から提言されていた冬対策の準備をしていたおかげかな。
 今、南部の者に防寒用の衣服などの配備を行っている――
 これで解決とはいかんが、多少マシにはなるだろう」
「良かった。気は抜けませんが、応急処置にはなりましたかね」
「ううー寒いよ寒いよ。おとっつぁんめ、南はマシって言ってたのに……!」
 と。ザーバが視線を向けた先にいたのは解・憂炎 (p3p010784)アウレオナ・アリーアル(p3n000298)か。暖かそうな衣やマフラーなどに身を包んでいるが、これは以前からイレギュラーズによって提案されていた冬対策の一つである。
 防寒用靴下、インナーなどなど。
 蓄えられた技術力によって準備されたモノが実を結んでいる――
 再びの寒波が訪れようとも多少その被害を緩和させる事は出来るだろう。それに。
「遂に列車砲も此処に届いたしな。こいつは切り札として運用できそうだ」
「――ハッ。これもゲヴィド・ウェスタンで現地兵が死守してくれたが故かと」
「あぁ。無論、諸君らの尽力も大きいがな。魔種の姿も目撃されていたと聞く。
 イレギュラーズ達がいなければどう転んでいたか分からん」
 寒さを吹き飛ばす様な精神的支柱も手に入れた事だ、と。
 ザーバが言うのは、先日のゲヴィド・ウェスタン攻略作戦で手に入れた――列車砲である。作戦に参加したエッダ・フロールリジ(p3p006270)らの奮戦により、見事破壊される事もなく列車砲の確保に成功したのだ。
 巨大な車両兵器が鎮座している。バーデンドルフ・ラインに確保されていれば新皇帝派も易々と手は出せまい……勿論巨大な威力を秘めているが故に使い所は見極める必要があるが。それでも切り札と言える存在があるというのは士気に大きく直結するだろう。
「コレをいつ動かすかはともかくとして……
 別件で対応を打たなければならない事がある」
「――それは昨今の寒波による影響でしょうか?」
「それもある。しかし問題はそれだけではない」
 ザーバは言う。新皇帝派や、鉄帝に蔓延る魔物――天衝種達の動きがある、と。
 要は、問題は一つではないのだ。
 各派閥の勢力圏内が安定・拡大して来た事もあって、遭遇しうるトラブルも増えている。
 それにも個別に対応しなければならない。だから――


「此処まで蓄えた軍事力などを用いて解決していく」
 鉄帝北東部に存在するポラリス・ユニオン(北辰連合)。
 その居城にてヴォルフ・アヒム・ローゼンイスタフ(p3n000288)はイレギュラーズ達に語っていた――今後の方針。そして対応策を、だ。
 不凍港ベデクト攻防戦を経て、ポラリス・ユニオンはノーザンキングスと和解の道を選んだ。それはノーザンキングスを率いていたシグバルドの急逝という事情も絡んでいるが、しかし長年の仇敵との和解は――勢力圏内において一部混乱もあったが――『西進』の道が開かれたのである。
 よってこそ新皇帝派との遭遇もこれから本格化する……それから、シグバルドの後を継いだベルノに従わぬ一部のノーザンキングス勢力もいるかもしれない。
 が。どのような事態が訪れようとも、これまでに強化しえた勢威をもってして対応に当たる必要があるとヴォルフは告げていた。
「新皇帝派や天衝種が訪れれば軍事力をもって解決する、と?」
「或いは、その兵力を動かして食料備蓄の確保に向かわせる――という手もあるだろう。技術力があればソレを軍事転用して軍事力の一端とする事も出来るだろうし、不安がる民に備蓄食料を配り、求心力を高めるという方策も取れる」
「なるほど……確かに。兵力はただ戦わせる為だけのモノとも限りませんか」
 斯様なヴォルフの言に次いで問うたのはベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)であった。
 鉄帝の動乱が始まってから、それぞれの勢力は軍事力なり技術力なりを高め続けていた。
 それらをもってして今後の不測事態に当てよう、という事なのだろう。
 幸いというべきか大寒波が来る寸前にベデクトを制圧出来た事もあり物資には幾らか余裕がある――軍事力や兵站に関してもまだ余力はあるだろう。後はそれらをどう上手くやりくりしていくか……

 そして、そういった対応気運は革命派、独立島アーカーシュ、ラド・バウ独立区においても高まっていた。

「寒いよ~! 寒いよ~~! ビッツさん、これはまずいよ!」
「分かってるわよ。はぁ、お肌にも悪いわこんな寒波は……」
 ラド・バウは変わらず通常営業。今日もスタジアムは熱気で湧いて……
 いる、が。あまりの寒さは帝都にも直撃していた――
 観客席を見れば寒さに耐えながら観戦している者達の姿があちらこちらに。
 今の所ラド・バウはいつも通りとは言えるのだが……流石に今年の冬は『何か』違うとパルス・パッション(p3n000070)ビッツ・ビネガー(p3n000095)は勘付いている。政治不干渉を掲げ、新皇帝派からも他勢力からも距離を置く為に一定の力を蓄えていたが故に耐えられている、が。
 かといってラド・バウ闘士が幾ら強かろうが天候はどうにもならない。
「やっぱ地下をどうにかしないとダメかしら。住居スペースがないとねぇ」
「地下って、この前のブランデン=グラードの事だよね」
「そうよ。物資の搬入とかも邪魔されたくない所だしね。
 他にも何か出来る事がないか――イレギュラーズにも相談してみましょ」


 大寒波の波は不凍港ベデクトにも生じていた――
 まさかの事態だ。凍らぬ港が凍りそうになるなど。
「……手の施しようがない程、という訳ではありませんので復旧の目途はありますが。
 とんでもない大寒波です。もしかすると死者が出ている所もあるかもしれません」
 言うはエフィム・ネストロヴィチ・ベルヴェノフ(p3n000290)である。
 流氷が至っているのだ。排除自体はアーカーシュの保持する高度な技術力でなんとかなりそうだ、が。
「こういった事態はこれからも訪れるでしょう。
 ――より複数の対応策を考えておく必要がありますね」
「考える事は山ほどあるわねぇ……ま、なんとか冬を乗り越えられる様に頑張りましょ」
「空を浮かぶアーカーシュにだけ出来る事はある筈です。
 新皇帝派の動きも気になりますし……次の動きも決めておかねば」
「ああ。それに関しても考えがありますので――後程、皆さんにもお知らせしますね」
 言の葉を紡いだのはアーリア・スピリッツ(p3p004400)マルク・シリング(p3p001309)である。
 ベデクトは制圧出来た。予想外の寒波はあるものの、これは確かなる成果である。
 故に。続けては如何なる行動をするのが最善かと――思案を巡らせていた。


「可能な限りギア・バシリカにも民を受け入れるんだ。
 外よりはまぁマシだろ――アミナはどうしてる? 外か?」
 そして革命派でも冬に対する動きが見えていた。忙しなく指示を出しているのはクラースナヤ・ズヴェズダーの長たるヴァルフォロメイ(p3n000289)か。
 アーカーシュ同様に高い技術力を有する此処では、古代兵器たる歯車兵を用いた活動が続けられている。
 それから準備していた暖房器具や衣類を民に配りて、寒波を何とか乗り切らんと東奔西走だ。
 ……革命派には新皇帝派の将軍、グロースによる妨害もあり不穏な影も見えている。
 が。如何なる思惑が襲い掛かってこようとも、民を見捨てる選択肢だけは――無い。
「……ちったぁ寒さが和らげばいいんだがな」
 ヴァルフォロメイは外へと視線を滑らせる。
 雪だ。途切れる事なく雪が――降り注いでいる。
 ……この雪はどこまで続くのか。乗り切るためには様々な策を巡らせる必要がありそうだ。


 かくして、大寒波『フローズヴィニトル』による影響は想像以上に大きかった訳である。
 それぞれも冬に向けた対策準備……例えば衣類や居住スペースの用意などもあったが故に、段々と寒波に対する防御が講じられているが、やはり根本的な対策に動かんとするのは道理であったか。
 蓄えられた勢威の転用。
 軍事力は生産力に。
 生産力は求心力に。
 求心力は技術力に。
 技術力は軍事力に。
 それぞれ役立てさせることが出来る案が各勢力の内で検討されている。
 そして『これまでの行動や人材』で得られる有利な転用政策もあるようだ。
 ……どの勢力も、新皇帝派やフローズヴィニトルに負けぬとする意志が感じられる。
 鉄帝国の未来がはたしてどのように進むかは未だ知れねども。
 狼の遠吠えが、どこか遠くで――響いていた気がした。


 ※再び寒波が訪れ、各派閥の生産力が-100され――る所でした、が。

 ※【帝政派】は高い求心力による一致団結とボーデクトンの制圧、公衆衛生改善策などにより【生産力-15に抑えられました!】
 ※【ザーバ派、ラド・バウ、革命派】は準備していた冬対策により【生産力-25に抑えられました!】
 ※【北辰連合】は不凍港ベデクトの制圧や冬対策により【生産力-30に抑えられました!】
 ※【独立島アーカーシュ】はベデクトの制圧と高い技術力を用いた事により【技術力-20】した代わりに【生産力-0に抑えられました!】

 ※寒波は再び落ち着きをみせています……
 ※この間に勢力パラメータを不測の事態に転用できる『政策』の準備が進められています……! 続報をお待ちください!
 ※【南部戦線】の本拠地バーデンドルフ・ラインに列車砲が到着しました! 南部戦線は強大な切り札を手に入れた事により【軍事力300】【技術力200】の上昇が発生しています!

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