PandoraPartyProject

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マルテュリアの憂慮

 ――こちら、レミーア。鉄帝国内では駅拠点奪取、及び『凍らずの港』の奪還作戦が敢行されております。
   イレギュラーズと……『冠位魔種』の接敵も確認。場所は帝都中央ブランデン=グラード――

 偵察に向かっていたのはレミーア・スティレットロ。元はアドラステイアの聖銃士であった少女だ。
 コラバポス 夏子(p3p000808)を始めとするイレギュラーズによる『中層潜入作戦』にて救出された聖銃士であり、天義の聖騎士団にて密偵を担う新米騎士でもある。
 少女の報告を受けていたセナ・アリアライトは渋い顔をして項垂れた。
 隣国である鉄帝国の動乱も波乱の動きを見せている。それに合わせてか国境沿いでは「天義が鉄帝を攻めた」と非難されかねない動きまでもが起っているのだ。
 国境沿いでは奇妙なことに死人やそうあった者達が影を纏った悪しき獣を連れて進軍しているという。
(……国境沿いのことも心配ばかりだが、問題は山積みだ)
 頭を掻き毟ってからセナは深く椅子に腰掛ける。騎士達も出突っ張りの状況、腰を落ち着けて書類仕事も儘ならない現状だ。

「よお、アリアライトの坊ちゃん――今は当主様だったか?」
 ふと、顔を上げればその先に草臥れたコートの男が立っていた。咥え煙草に火は灯らず、癖で咥えた事が良く分かる。
「サントノーレ」
 サントノーレ・パンデピス(p3n000100)はひらひらと手を振ってその声に応じた。
「殉教者の森は一筋縄じゃ行かないだろう。俺の『勘』じゃありゃ一度落ち着いたら次の波が来るヤツ。
 徐々に波が大きくなって――気付いた頃には国を呑み込む程のモンになってるかもしれない……なんてな」
「不吉なことを言うな。だからお前は迷惑探偵なんて噂されるんだろう」
「元々は『不正義騎士』なもんでね」
 肩を竦めたサントノーレはこの巫山戯た態度で聖騎士の任を解かれた過去を持っている。探偵に生業を変えても尚、騎士舎に出入りできているのは彼の密偵能力の高さに起因するものだった。
 天義は表だって動けない仕事を彼やレミーアのような元騎士や騎士見習いに振り分けている。あくまでも『聖教国は表だって動いていない』というスタンスで、だ。
 イレギュラーズが仕事を受ける事になるのもサントノーレ達からの依頼が大部分を占めているのは此れが理由である。
 と、言えども国境沿い――殉教者の森での一件は流石に見過ごすことが出来ず天義としての依頼をイレギュラーズに出したのだが。
「アリアライトの坊ちゃんに『ちょっとだけ良いニュース』を持ってきた。胃薬代わりに聞いてくれ」
「……本当に良いなら胃薬なんて飲まないが」
「殉教者の森でアドラステイアの干渉が確認されている」
 セナの表情が酷く歪んだ。目眩がすると言いたげに額を抑える。
「つまり、だ。『アドラステイアはそれだけ焦ってる』って訳だ。イレギュラーズにはオンネリネン拠点調査と図書館の資料入手を頼んでるだろ。
 その結果次第で攻め込める。ま、『得た情報で更に胃が痛くなる可能性』はあるがな!」
 からからと笑ったサントノーレにセナは「嫌な情報じゃなければいいが」と呟いた。
 騎士団は手を拱いている。その状況化で欲しているのは天義国内でのアドラステイアの協力者の情報だ。
 つまり『聖騎士団が攻め入るだけの大義名分』を欲しているに過ぎない。政府内にアストリア枢機卿を始め不正義の存在を認めていたというのに、外部には行き過ぎともされる断罪を繰り返した過去は大きな蟠りとなって民に疑心暗鬼を抱かせ続けて居た。
『表向きには孤児達の楽園』であるアドラステイアを攻め『作戦失敗』した場合、待ち受けるのは――……
 そうまで考えてからセナは副官が容易してくれていた茶を勢い良く呷った。今日の茶葉は豊穣産の渋いものである。
 ……何時か豊穣に行ってみたい。そこに妙な縁がある気がするなどと、現実逃避を行ないながら。
「イコル工場のあったフォルトゥーナ地区が滅びてイコルの供給量が減少している……と見込んでいたが、それが真実かどうかも分かるんだな」
「おーおー、その通り。寧ろ、『その状況でアドラステイアはどんなクソみてぇな手』を打ったかも分かるわけだ。
 国境沿いにアイツらが出て来てるのも天義に不信感を抱く奴らに『アドラステイアは許されざる悪・魔種を見過ごさない』とかいうアプローチだろうしなあ」
 セナはゆっくりと立ち上がってから「騎士団長殿に謁見してくる」と告げる。
 もう暫くすれば後輩であるイルや上官にあたるヴァークライト卿も帰還するはずだ。
 イレギュラーズ達の調査も終わり、その結果を持ち帰ってくれるはずでもある。
「一先ずサントノーレの『提案』を伝えてこよう。アドラステイアへの作戦決行も直ぐに決断せねばならないだろう。
 事前準備は得意だ。……戦地に、迎えないことは歯痒いが」
 己はアリアライト家の当主である。本来のアリアライトの血筋であった『義妹』は養子であったセナの邪魔になりたくないと嫁ぎ、家門を護るのは己しか居ない。
 その状況下では戦場にはおいそれと出る事も出来ないと青年は苦悩を抱えながら歩き出す。
 ふと、思い出したのはレミーアが天義に訪れたときにアドラステイアについて告げた『報告』であった。

 ――噂ではありますが……魔女裁判で魔女を落とす疑雲の渓底には何かが居るそうです。
   それは、全てを食らって『真なる神』の御許へと誘って下さるとか……。
   それにプリンシパルは――『大人になる』子達は帰ってこないのです。
   行ってきますと笑って上層へ向かった『ティーチャー候補』。彼等は皆何処に行ったのか――

※天義国内でも何らかの動きが見られるようです――
※<大乱のヴィルベルヴィント>二つの期間限定クエストが開始されています。


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