PandoraPartyProject

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氷月の剣

「己を、そう猛々しい意志だとは思っておらん。
 一菱に学び、桜鶴様より薫陶を受け、若に憧れた――
 されど、俺はかの方達のようにはなれなかった。
 剣を修め、剣に生きる――道に偽りはなくとも『逸脱』出来ぬ俺に百鬼夜行は背負えまい」
 バダンデール邸の正門付近。
 蠢く多数の影――冷たい殺意と悪意を携える『敵』を前に刃桐 雪之丞(p3n000233)はそう云った。
 本来ならば内心だけで吐き捨てられた言葉やも知れぬが、この夜は寡黙な彼にそれを口にさせる天与の材料を遣わしていた。
「或いは、君も同じではないのか。久住舞花」
『予定では』一人で門を守り切る筈だった彼と背を合わせるように久住・舞花(p3p005056)がそこに居た。
 暗鬱陰惨の夜を照らす月のような――流麗にして楚々たる美貌は僅かも曇らず。
「厭な事を言いますね」と微苦笑を浮かべたその面立ちとて、溜息を吐く程に美しい。
「実際の所、似たような事を考えた事はあります。
『我々の逸脱は憧れには到りますまい』。
 いえ? 何も至極真っ当な位置に踏みとどまっているとまでは驕りませんが」
 雪之丞にせよ、舞花にせよ。
『道を踏み外しているのは同じである』。
 されど二人は間近で観測する規格外の迷惑者共に比べれば苦労人の有様が否めまい。
 砂被りの席で冥府魔道を共に愉しむ位の事は出来ようが――先駆けが得手にならぬのは否めまい。
「お互いに損な役回りよな」
「……ええ」
「『だが、この役割は譲りはせぬ』」
 雪之丞の全身から彼の魔性を保証するような悍ましき『冷気』が立ち昇った。
 音も無く間合いを詰め、多角的に仕掛けてきた暗殺者の影を氷の如く冷たく鋭い剣が切り裂く。
 同時に雪之丞が捌き切れなかった二つの影を玲瓏たる月の剣が美しく縫い止めている。
「お互いに、損な御役目です。しかし――」
「――武芸者に似合いの夜に、美しい剣士と轡を並べられた幸運には感謝しよう」
「――――」
 言わんとした事を先んじて奪われた舞花は思わず目を丸くして息を呑む。
「……何処で覚えましたか、そういうの」
「若を見ていれば分かるだろう」
「はぁ、成る程」
 薄い唇を『三日月』にした舞花は華やかに言った。
「『たてはさんの苦労が偲ばれるというものですね』」

サリューを舞台にした『暗闘』は静かに進行しています……!

※リミテッドクエスト『<太陽と月の祝福>Recurring Nightmare』が公開されています!

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