PandoraPartyProject

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蒼穹の視る先

『雲一つない蒼穹の姿は今は無く』。
　噎せ返りそうな程の茜色、覇竜の領域に彼は居た。
「……フン、結局収穫も得ずに終わったか。
　竜種たる者共が魔種風情の使いもこなせぬとは――受けた事も、その結末も業腹極まりないな」
　天を衝く二対の角は宝冠のようであり、豪奢なるくすんだ青の髪の毛は腰の先まで伸びている。
　何処の王宮の騎士かと見紛うばかり、重鎧姿の押し出しは――成る程、『この人物ならば覇竜を進む事が出来る』と錯覚出来そうな程の風格に満ちている。
　唯一、左目付近に刻まれた目立ちすぎる傷を除いては、その男は余りにも完璧な姿を保っていた。
『激戦』を抜けてきたばかりだというのに、疲労の様子も傷付いた無様な様も無い。
　但し、誰もがそれを理解する通りそれは錯覚に過ぎない。
　覇竜の最深部まで単騎無傷で進み得る人間は恐らく混沌に存在しない――厳密に言えばシュペル・Ｍ・ウィリーを除けばだが――し、当然の事ながら彼は人間では無かった。
「まぁ、考え方を変えれば――それも良い結末か。
　何せこの俺が認めたくなる連中なのだ。同胞とは言え、未熟な子等に蹴散らされるのも。
　ましてや薄汚い魔種共に敗れ去るのなぞ、確かに見たくない光景であろうからなあ！」
　そう一人ごちた彼は覇竜から迷宮森林内部にいたるまでの長大な距離をまさに『観測』しているのだ。
　それは表現するならば千里眼等という生易しい能力ではない。『事実観測』を確定させる異能はこの男が戦いのみならず総ゆる術において圧倒的な別格である事を証明していると言えるだろう。
（この俺を――蒼穹を滾らせたのだ。貴様等にはその責任を負う義務があるのだ、特異運命座標！）
　傲慢にして尊大な笑みを浮かべた男は『この先』を考えた。
　あの甘いベルゼーのこと。『玲瓏公』が『ああなった』以上は再び手を貸すとは思えなかったが。
　血気盛んな連中が復讐戦に乗り出さないとも限らない。
　自分を除く連中はそれなりに『やられた』とも聞いたから――まぁ、想像の範囲である。
「ふぅむ」
　……彼は深緑の、幻想種の運命なぞ心からどうでも良かったが。
　折角残したとっておきのディナーを味わうのに怠惰なる魔種共はいよいよノイズに思われた。
「止めるか。少なくとも、竜の関わる話ではない。
　彼奴等が猫畜生如きに敗れるならそれまで、しかし願わくば――覇竜を舞台にやり合いたいものだがな！」
　程無く深緑を舞台にした戦いは最終局面を迎えるだろう。
　権能を振りかざす大魔種が簡単な相手にならない事は知っている。
　その悪意が、悪夢が己をしても著しい脅威であり、早々勝ちを見込めぬものである事を理解している。
　なればこそ、特異運命座標の勝利等想像出来る話ではない。
　道理で考えれば彼等の敗退は想定の内とするべきなのだろうが――
（七罪の二を退け、俺とやりあった。『奇跡』は幾度も重ねればそれは『必然』と呼ぶべきであろう？）
　彼は――『蒼穹』の名を持つ竜将はハッキリと特異運命座標の『次』を期待している――

　※夢の中に囚われた者達は『夢檻の世界』にいるようです……
 　※【夢檻】から抜け出す特殊ラリーシナリオと、冠位魔種の権能効果を減少させる特殊ラリーシナリオが公開されました。

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