PandoraPartyProject

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ウェスタ絶対防衛戦線

 メキッと。岩壁にヒビが入る音がした。
 そのヒビは広がって、崩れて……そして、大きな穴が開いた。
 その場に居た者は皆、驚愕に目を見開いた。
 それを知らない者は、もはや覇竜には居ない。
 巨大なアリの如き姿を持つ、地下生物の1つ。
 専守防衛を旨とする比較的穏やかな気性を持つはずの、しかし女王の意志により幾らでもその思考を切り替える者達。
 尋常ではない程に硬い外骨格を持つ者。
 多彩な進化を遂げる者。
 すなわち……アダマンアントが、其処に居たのだ。

 それは、唐突だった。
 それは、必然だった。
 アダマンアント達は、ずっとずっと近づいてきていたのだ。
 亜竜集落ウェスタ。そして、その「先」へ。
 派手な作戦の裏側で、静かに……静かに掘り進めていた。
 三大集落の1つと言われ、地下に存在する水竜を始祖とする集落。
 その集落とフリアノン、そしてペイトを繋ぐ地下通路。
 完全に安全であったはずのその道は、今日……この日。
 アダマンアントにより、その安全神話を崩されたのだ。
 1、2、3、4、5……数えるのも嫌になる程のアダマンアント達が穴から湧き出てくる。
 それ自体が、アダマンアントによる一連の騒動を知っている者からすれば絶望に近い……そんな光景だ。
 アダマンアントによる侵攻が始まった。
 しかもよりによって、この三大集落を繋ぐ地下通路にだ。
 相当な危機であるはずのこの事態は……しかし、それだけでは終わってくれない。
 だが、それよりも何よりも異彩を放つ「何か」が出てくる。
 1体は、何処となく亜竜……その中でもドレイク種のような雰囲気を持つアダマンアント。
 1体は、巨大な……5mはありそうな、巨大なアダマンアント。その装甲も通常のアダマンアントよりも禍々しそうだ。
 2体とも、明らかに通常のアダマンアントではない。
 しかし、上位種にして戦闘種として知られるアダマンアントナイトとも違う。
 ならば、何なのか……答えは決まっている。
 アダマンアントによる小集落への同時多発襲撃の際に、アダマンアント戦闘種の「新種」が幾つか確認されていた。
 この2体も「そう」だということなのだろう。
 仮にドレイクの特徴を持つ方をアダマンアントドラグーン。
 巨大な方をアダマンアントティターンと名付けようか。
 ドラグーンとティターンが顎を動かすと、アダマンアントたちは2つの方向に分かれ始める。
 片方はウェスタ側に。
 片方はペイト側に。
 そして……更に奥から、また違う1体が現れる。
 アダマンアントでありながら、確かに持つ威厳。
 アダマンアントティターンをも超える、8mにもなろうかという巨体。
 ああ、そうだ。これこそが女王……アダマンアントクイーンなのだ。
 これこそがアダマンアントクイーンだという証拠に、居並ぶアダマンアント達はクイーンに敬意を示すかのようにその頭を下げる。
 その光景を見れば、これこそがアダマンアントクイーンであるという事実を疑う者は居ないだろう。
「我が子等よ。『ウェスタ』と『ラサ』へ向かいなさい。ドラグーンは地上より、ティターンは此処から攻めるのです」
 その言葉に、2体の戦闘種が頭を下げる。
 戦術。アダマンアントが持っていると言われていたそれが今まさに、この場所で披露されていた。
「先へ、その先へ。我等は他の巣の者共とは違う……今こそ、世界への浸食を始めましょう。全てを塗り替えましょう」
 ギチギチギチ、とアダマンアント達の顎が打ち鳴らされる。
 万雷の拍手にも似たそれは、アダマンアント達の絶対の忠誠の証だ。
 だからこそ……此処で抵抗できなければ、文字通りにアダマンアントによる世界への浸食が始まるだろう。
 無数の人が、国が喰い尽くされ増え続けるアダマンアントが世界を覆うかもしれない。
 これはそんな……大いなる危機の、始まりなのだ。

 ――覇竜領域にて、ウェスタ近郊が危機に陥っています! ローレットに緊急の依頼が舞い込んでいます!

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