PandoraPartyProject

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嵐のさきで

 同時多発的に発生した、覇竜の小集落へのアダマンアントによる襲撃事件。
 被害がゼロ……というわけではないが、イレギュラーズが関わって以降の全ての企みは潰す事に成功している。
 上位種たる戦闘種を含む「イレギュラーズに対応」した動きや進化を見せたアダマンアントたちだが、その全てを撃退できたのだ。
 これはイルナークを襲ったアダマンアントの勢力を更に大きく削ることに成功したと考えていいだろう。
「つまり、これだけ打撃を与えればアダマンアントも派手な動きを見せる事は出来ない……長たちは、そう考えている」
「確かに、結構な数のアリを倒したもんね。花丸ちゃんも『またアリだー!』っていう感じだったよ!」
「アレが出るとお昼寝の邪魔なの」
 『可能性を連れたなら』笹木 花丸(p3p008689)棕梠が本当に迷惑そうな顔でアダマンアントへの怒りを表明すれば、花丸も「あはは」と笑う。
「もう出ないのが一番っていうのは花丸ちゃんも同意だよ」
 そして実際、イレギュラーズが撃破したアダマンアントの数は相当数になる。
 どれだけアダマンアントが凶悪であろうと、所詮は「1つの群れ」の話だ。
 覇竜全域には他にも多数のアダマンアントの群れがあり、それとかち合えば争いになる。
 これだけ打撃を受けた「今回の」アダマンアントが、これ以上急速な動きを見せる事は有り得ない。
 どれだけアダマンアントクイーンが急進派であろうと、そういった限界はどうしても存在する。
「えーと……もう大丈夫ってことでいいのかな?」
「奏音……あなたは本当に単純だな。頭の修行もしろバカ」
「奏音の頭はこれ以上成長しないの」
「静李も棕梠もひどいよ!?」
 ショックを受けた様子の『鉄心竜』黒鉄・奏音 (p3n000248)をそのままに、静李は天を仰ぐ。
「大丈夫、ではないんだ。脅威は変わらずそこにある」
「確かにな。アダマンアントクイーンも健在だ……かなり厄介な相手だと、俺も思うよ」
「その通りだ」
 『竜撃の』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)の言葉に、静李も頷く。
 それは変わらない。
 亜竜集落イルナークを襲ったアダマンアントの巣も、その奥にいるアダマンアントクイーンも……未だ健在だ。
 それは変わらず、油断すれば再び牙をむくであろうことは間違いない。
 だがアダマンアントクイーンに戦略眼があるならば、すぐに動くのが愚策であることも分かるはずだ。
「もう大きな動きはしばらくないだろう……だからこそ、連中がどう動くか注視する必要はある」
「普通に考えるなら、また散発的な動きになるわ」
「長達もそう考えているらしい。然程強力ではない……こちらの救援が間に合わないような程度の実力のモンスターを狙うかもしれない」
 そう、以前アダマンアント達はエクスマンティスやファイアードレイクといった強力なモンスターを狙い、そしてイレギュラーズの介入によって失敗した。
 ならば、今度はイレギュラーズの介入が間に合わない程度に弱いモンスターを狙う可能性があるだろう。
 だが、こちらとて無能ではない。
 今回の各小集落の襲撃も受けて、連絡網は更に強固になった。
「もう簡単に襲撃はさせない。こっちだって、やられっぱなしじゃないんだ」
「だよね! 来たって蹴散らしてやる!」
「そういう話じゃないの」
「そうなの!?」
「ああ、残念ながらな」
「だねー」
 ベネディクトと花丸が頷いて。
 驚く奏音の肩を棕梠が叩き、ふるふると首を横に振る。
「奏音は頭を動かすのは向いてないの。無理しなくていいの」
「静李ー! 棕梠が難しい言い回しでボクをいじめる!」
「ちっとも難しくない。あと離れて、体温高くてイラッとする」
「やだー!」
 抱き着く奏音を引き剥がそうとする静李だが、奏音の方が力が強いので剥がれない。
 しばらくやって諦めると、静李は奏音をそのままに今後のことを考える。
(……気になることはある。でも、何を考えていたとしても計画を挫くことが出来たと考えるべきだ)
 この大襲撃を勝利という形で乗り切ったのだ。
 様子を見ながらではあるが、反攻作戦に繋げることだって可能になるかもしれない。
 つまり、これ以上の大規模襲撃はない。
 それが結論となるだろう。
 覇竜の危機は、終わったのだ。
「……まずはひと段落、か」
 静李はそう呟いて。
「あなた達の……そしてイレギュラーズのおかげだ。私から言われても大した価値はないかもしれないが……ありがとう。感謝する」
 静李の本心からの言葉にベネディクトは薄く笑い、花丸は嬉しそうに笑う。
 大した価値がないなど、とんでもない。
 そうした言葉の為にこそベネディクトも花丸も……イレギュラーズも、戦っているのだから。
「その言葉こそが、俺達が欲するものだ」
「だねー」
 だからこそ、2人はそう答えて。静李も「そうか」と微笑む。
 ……そして。
「で、そろそろ離れないか?」
「やだ」
「棕梠も何を……?」
「なんか仲間外れみたいだったの」
 前から奏音に、後ろから棕梠に抱き着かれた静李は……どうしようも出来ずに空を仰いでいた。

――アダマンアントによる同時多発的集落襲撃事件が解決しました。



「……………………」

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