PandoraPartyProject

ギルドスレッド

シキアの樹

Oct.夜

陽の沈み切った秋の夜。
お空にはまぁるいお月様。
ちらほらと千切れた雲の間から差し込む光は明るく。
灯り要らずの今宵は、異界の行事に曰く「お月見日和」


シキアの下では、小さな合唱団がちろりろと鳴いていて。
涼やかな秋の夜を彩っていた。

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(明るい月夜。昼の様にとはいかずとも、少し先までなら見通せる薄闇の中。
 いつもの大樹の下に、静かにうごめく影一つ。
 大樹に背を預け、寄りかかるようにして両の足を伸ばし。
 すっかりくつろいだ様子で、何やら手元を動かしている)

(こねこね、こねこね。――だぶん、お団子というものだ。
 材料は、シキアの根元の土それそのものであるけれど)

(こねこね、こねこね。手のひら大のお団子がひとつ、ふたつ。作られては重なっていく。
 土肌の青年は、どうにも作業に熱心なご様子だ)
(月夜のみに取れる薬草を摘んだ帰りに丘上にある大きな樹が目に留まる。
 真上にある月を見上げては丘にある根元にて月見をして帰っても好い気分になり
 自然と向くままに歩みを進め見つけたのは、樹に背を預け泥団子を作る男)

―――レム兄さんやないですか。
そんな泥団子を熱心に作って何してますの。お月見の団子の代わりで?
(こんな夜更けに一人熱心に泥団子を生産していたのは知人の男だった。
 奇行に疑問を抱くも近寄りしゃがみ込んでは泥団子を一つ手にし見つめる)
(こねこね、こねこね。集中していたせいか丘へ訪れたヒトの姿には気付かずに。
 灯り替わりの月光が大きな背に隠され、手元に影が落とされてようやく、その顔を上げた)

……あ、布静だ。
うん。今日みたいに明るい月の日は、オツキミをするって。
オツキミにはお団子、食べるって……聞いたから。
(作っていたのだ、と。今しがた仕上がった団子を一つ、積み重ねる。
 至って自然に返す姿は、それがごく普通の事だと思っている様に見て取れた)
(今宵は殊更に大きく存在を主張する満月、その明るさで星は見えず、その代わりに地上は広く照らされる。羽ばたかせた両翼が風を受けながら時折遮る樹に影を作っていく。しばらく飛んで行けば樹々は控え姿を現した丘。その上に大きく静かに佇む大樹、――シキア。
その下にはやはり、彼がいた)

…今日も其処か。座り込んで一体何を……げっ。

(思わず漏れた声。大樹の下に座り込んで何やら手元を動かしている青年と、もう一人の影。その影の正体を認めて有翼の男はその場で停止した。二人からはまだ見えぬであろうシキアの死角から見たのはよく己を扱き使う薬師の男だった。出来る事ならば余り出くわしたくない男でもある)

(少し、離れた所で様子を見ておくことにした)
(月が綺麗な夜だった)
(宵に溶け込むような闇色が、さくさくと青く茂る草をなるべく潰さぬように軽い足取りで丘を登っていた)
(宿無しの日は、やさしい大樹のもとへ)
(野宿には慣れていた。何より、シキアとことのはを交わす事はとても心地良いものだったから――)

……?

(人影が、ひとつ、ふたつ――みっつ。)
(ふたつは隣り合って。もうひとつは其のふたりを伺うような立ち位置で)
(夜目に慣れてくれば彼等の輪郭を伺う事が出来た)

こんばん、……えっと、

(声を上げてから気付く。どちらに挨拶をしても、何だか不自然な距離だった)
(導線を引くならば、そう。大地の御子と見知らぬ男。狗鷲のきみ、其れから、影。丁度、三角形を描き出せるような、奇妙な立ち位置だった)

(どうしよう)

(何方に歩み寄ればいいのだろうか。影はその場で固まっていた)
(今宵は月が綺麗な夜だと空を見上げながら、緩く笑みを零す。
そして上機嫌で夜風に髪を揺らしつつ、軽やかに丘を駆け空に羽ばたいた)

(比較的高い木に停まれば羽根を畳み一休み。
月明かりに照らされ鮮やかな翼は何時もと違う色を魅せる、気がする)

(見渡す先の丘には見慣れた大樹が見えた。――シキアだ。
あぁ、月明かりを浴びて一段と神秘的じゃないか。そんなことを頭の片隅で思いながら。
のんびり眺めていればふと木の下にいる人影が視界に入った)
…!
(楽しそうな匂いがする、多分。
口角を上げ好奇心に身を任せ立ち上がって。
強く足を踏み込み翼を広げ飛び立つ)

(そして桃色の翼を広げた男は、
大樹の近くで立ち往生している影の後ろにふわりと着地したのだった)

(――酷く楽しげに笑みを浮かべ、好奇心に瞳を輝かせながら。
さぁ声を掛けようか…?そわそわ様子を伺うように後ろで様子を伺っている)
(雲と共にふわふわり。シキアの側までやって来て、不思議な状態に気が付いた。
 しゃがみ込む影ふたつ。立つ影ふたつ。
 そして、空にももうひとつ。
 さて、どうしよう? どうするのが一番面白い?
 少し考えてから、取り敢えず、普通に目的地に行くことにした。シキアの側で野宿をするつもりだったのだから、寝床の確保が急務だ)

レームー、何してんの!

(雲を進めて、いつも通りに賑やかに掛ける声。
 ぴょいと最高高度2mの高さの雲から飛び降りた長身は、土色の子が避けなければしゃがんだその首に腕を回すように後ろから抱き着くだろう。
 重い重くない以前に、不思議と体重は全くないし、衝撃もない。ただふわりと。
 特別な意図はない、スキンシップが好きなだけだ)

(あっちのこともこっちのことも気付いて居る癖に、何も言わない。結果的にそれが一番楽しい気がした)
(丸い月が光を帯びて、燦然とした宵の日。月明りを頼りに森を抜けては丘を目指し、悠然と歩く宵に浮いた真白が一つ。只々、物思いに耽りたくて。静かな場所を自然と目指している所だった)
(けれど目に飛び込むは大樹の下に3人、その後ろには派手な男。最後にその上に1人だろうか。気付けたのはこの5人。その内の二人は見知ったばかりの土肌の彼と、見知り過ぎたあまり会いたくない薬屋の店主だと気付く。歩く速度を速め、宵色の娘の隣、人2人分を空けて歩み寄り、声を掛けてみる)

……こんばんは。随分と賑やかで楽しそうね。
皆でお月見でもしてるの?

(何やら色々と気になる事が多すぎるが、まずは視線を土肌の手元に。瞬きを幾度かして考える)
(……これは、何だろう。新手の遊びか何かかと凝視する)
(心地の良い夜。丸い、まあるい月の光が、ほんの少しだけ眩しく感じる位で。
 慣れない足取りで、ゆっくりと其方へ近付く)
(近頃、明るい間に見付けた大樹。何だか近寄り難い雰囲気を纏っている気さえしたのだから、夜にこっそり行ってみよう、という思いで行ってみれば)

あ、あら……。

(近くは無いけれど、顔を上げれば居るという事は分かる位の距離。
 視線の先の、大樹の真正面。思わず足を止めてしまった。
 誰も居ない様な、静かな世界を想像していた物だから)

先客の方が、居らしたのですね……。
……如何しましょう……。

(少しばかり、足を止めたまま。視線の先を見詰めたまま。おろおろとしたまま。
 ……声を掛けて良いものだろうかと、逡巡していた)
(話している間も製造されていく泥団子に、一つの疑問が浮かぶ。観賞用でこの量を生産するか?、と…そして、導かれた意図に生唾を飲み込む。その思いを振り払うように手にした泥団子を持ち上げ製造機と化した彼に問う)

確かにこうゆう日には月を見て団子を食うって風習がありやす。
けど、まさか…―――兄さん此れ食う用じゃないですよね?

(不安を拭いきれぬままでいると彼の背から藤色が現れた。
 其処でやっと周りに人が集まっているのに気付くが、今はそれに突っ込む余裕がない。
 笑顔を絶やさずにいるので精一杯であるからだ)
(月光を遮り視界に影が落ちる)
(気配に振り向けば、其処には鮮やかな翼を持った飛行種と思しき男が和かに此方の様子を伺っており――目が、合った)



(悲鳴こそ上げなかったが急に間合いに入られた事に驚き猫の如く飛び退り)
(周囲を気にせずの事だったものだから、飛び退った方角は真白い翼を持つ娘の程近く)
(打つかってしまいそうになって咄嗟に避けようとしたまではいいのだが、)

わ、わっ、

(縺れた足。悪戯な草むらに足を掬われ、じゃれあう青年らを前に見事に転んだ)
(影は完全に慌てていた。せっせと泥団子を捏ねている大地の御子とはまだ距離があったから、彼の力作を潰すことが無かったのは不幸中の幸いだろう)
 
(きょとり。完成した団子をつまみながら問う彼の意を図りかねて。
 ごくごく不思議そうに瞬いた)

? 食べる、けど……わぁ。
(ふいに頭上から降り下りる声。
 意識を向けようとした刹那、ふわりと軽やかな衝撃が首元へ。
 聞き覚えのあるソプラノと藤の香に、知り合いだと中りをつけて、)

――八千夜?
ええと、お月見用のお団子、作ってたんだ。
八千夜は、お散歩?
(今は夜。いつも遊ぶ子ども達は寝に入る時間らしいけれど。
 夜に休むと言う習慣があまり根付いていなくて、そんな問い掛けを口にした)
 
(背後にいる藤のヒトへ顔を向けようと、首を捻ろうとして――途中で、はたとその動きを止める。
 またしても、聞き覚えのある声。
 抱き着かれた状態のまま、視線だけ滑らしてヒトの影を捉える
 ……今しがた声を掛けたであろう真白。そして黒と、極彩の影が見えた)

プティだ。夜に逢うのはめずらしい、ね。
オレはお月見しようかなって、思ってたところ、だけれど。
夜鷹とギルも、こんばんは。 ……ええと。大丈夫?
(こんばんは、と声を掛けた拍子。
 目の前ですてんと転んでしまった影に、ぱちくりと目を瞬かせる。
 驚きによる空白、二拍ほど間をおいて、怪我はないだろうかと声を掛けた)
(いつになく夜に集うヒトたちの影。やっぱり、月がきれいだからだろうか?
 お月見の風習は習ったばかりだけれど、皆は慣れ親しんでいるのかもしれない。
 無心で動かしていた手元を一度止めて、面々を見渡した。
 ――死角の空に佇んでいた彼には、未だ気づいていなかったけれど。)

……みんなも、お月見。しに来たの、かな。
せっかくだから、ゆっくりしていったら良い。
お団子、と言うのも作ってみたし。
(お団子は月見のお供なんだろう、と。
 いつの間にかたくさん積み上げられた団子を指しながら続ける。
 ――至って、自然に、善意に)
(ふと、少しシキアから離れた場所。もう一つ、薄闇に白くきらめく影が見えた気がして、)

……あれ。
(小さく声がこぼれる。視線の先、月の光を受けて淡く輝く貝の髪飾り。
 あまり見掛けないヒトの姿。少し戸惑っているようにも見えて、首をかしげる)
 (ひらり。挨拶代わりに小さく手を振ってみた)
あちゃーっ。思いの外びっくりさせってしまったんらよ。
(影の子が飛んで行った先に視線を向け、ごめんねーとひらひら手を降ってみせながら)
やぁやぁレム、こんばんわなんっ!
お月見のお団子量産してたんらねぇ?
(でも全部レムしか食べれないなぁん、とケラケラ笑い)
お月見するには絶景スポットらねっ!
こんなにいっぱい人がいるなら、お月見もワイワイ出来そうなんらよ。
(お初の人はよろしくねぇ、と緩い笑みを浮かべながら辺りの面子を見渡し、楽しげに鮮やかな翼を揺らした)
(ひっくり返って居たのはほんの僅か。顔が露わになってしまった事に気付けば、慌てて身を起こしフードを目深に被り直し)

だ、だいじょうぶ。

(怪我はない。柔らかい草葉が受け止めてくれたから)

おどろいた、だけ。
空から、あなたが降ってきたから。

(舌足らずの謝罪に、あっけらかんとした翼ある者の様子に毒気を抜かれ)
(戸惑いを浮かべ乍らふるふると首を横に振って、気にしていないと添えつつに)
……えと、

(徐ろに立ち上がればぱたぱたと身体に付いた草を払い)
(見慣れぬ面々を仰いで、深く頭を下げてお辞儀をして見せた)
(自分は敵意のない生き物であると云う、影なりの自己主張)

月を、見ていたの?

(離れていた距離を恐る恐る詰めて、大地の御子の、シキアの麓へ歩み寄り)
(積み上がった泥団子を不思議そうに見詰め乍ら、座っても良いかとお伺い)
夜鷹もプティも、あとそっちのふたりもお月見?

(気が付けば、自分も入れて総勢八名。
 多いなー、なんて月夜の邂逅を面白がるように笑いつつ、見知った顔にひらひらと手を振った。
 布静の言葉に瞳を瞬く。狙いすました通りに抱き着いたレムの後ろからその手元を覗き込んで)

土団子食うの? レム。
俺も食えなくはないけど、団子になってるとちょっと食いにくいかも。

(長身を屈めるように抱き着いたまま、ふわふわと浮かんだ足先。戯れ付くように、しゅるりと伸びた藤蔦が、土色の肌にも絡もうとする。スキンシップ大好き。
 土は自分にとっても食べ物と言えなくはないが、こうなって大地から切り離されていると逆に食べづらい。
 まず普通の人間にとって土は食べ物ではないという認識は、この精霊にも薄かった。
 おいでおいでと座るように夜鷹に促しつつ)

うーさぎうさぎ、何見て跳ねる、って奴だ。
この世界の十五夜がいつか知らねぇけど。
(小さく振られた手。自分に向けられたものだと、少ししてから気付いた。慌てて頭を下げる。
 そうして何時の間にか、沢山の人に認識されていた事にも気が付いた。
 そのままで居るのはあまりにも失礼だろう。意を決して、歩くのに慣れずに震える足で、少しずつ近付く。
 そうして、彼の人達の輪から、一歩だけ間を空けた場所で足を止めた)

あ……ええと、その……。

(初対面という緊張と、何を喋って良いのやらという戸惑いが入り混じった様子で、恐る恐る口を開き。そして――)

今日は、月も出て、とても良い夜、ですね……。

(漸く出た言葉は挨拶ではなく、そんな言葉だった)

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