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シキアの樹

Oct.夜

陽の沈み切った秋の夜。
お空にはまぁるいお月様。
ちらほらと千切れた雲の間から差し込む光は明るく。
灯り要らずの今宵は、異界の行事に曰く「お月見日和」


シキアの下では、小さな合唱団がちろりろと鳴いていて。
涼やかな秋の夜を彩っていた。

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(いつになく夜に集うヒトたちの影。やっぱり、月がきれいだからだろうか?
 お月見の風習は習ったばかりだけれど、皆は慣れ親しんでいるのかもしれない。
 無心で動かしていた手元を一度止めて、面々を見渡した。
 ――死角の空に佇んでいた彼には、未だ気づいていなかったけれど。)

……みんなも、お月見。しに来たの、かな。
せっかくだから、ゆっくりしていったら良い。
お団子、と言うのも作ってみたし。
(お団子は月見のお供なんだろう、と。
 いつの間にかたくさん積み上げられた団子を指しながら続ける。
 ――至って、自然に、善意に)
(ふと、少しシキアから離れた場所。もう一つ、薄闇に白くきらめく影が見えた気がして、)

……あれ。
(小さく声がこぼれる。視線の先、月の光を受けて淡く輝く貝の髪飾り。
 あまり見掛けないヒトの姿。少し戸惑っているようにも見えて、首をかしげる)
 (ひらり。挨拶代わりに小さく手を振ってみた)

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