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シナリオ詳細

<夏祭り2018>エメラルドオーシャンでごゆっくり

完了

参加者 : 61 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●観察好き富豪のプライベートビーチ
 それは青ではない。言うなれば輝緑。
 どこまでも高い透明度の海が、緑に輝いているのだ。
 目を凝らす必要もなく見える熱帯魚達が、波打ち際を優雅に泳いでいる。海水の底にはきめ細かい白浜と、色とりどりの珊瑚が自然に生きている。
 少し足を踏み出せば突如深くなる海は、その場所がネオ・フロンティアから少し離れた小島であることを思い出させる。
 そう、今イレギュラーズは小さな島にいた。
 静かに波打つ音、そよぐ風の音。都会の喧噪は消え去り、自然の協奏曲が耳に優しい。
 まあ、そんな情緒をぶち壊すテンションで騒いでる場違いな少女がいるわけだが。
「うーみーよーーー! 海!! エメラルドオーシャン!!! あ、見てみてラーシアちゃん魚の群れよ、鯨に丸呑みにされそうな小魚の群れよーー!!」
「あら本当です。すごいですね、こんな間近で見られるなんて」
 『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)と『星翡翠』ラーシア・フェリル(p3n000012)の二人のハーモニアは初めて見るエメラルドグリーンの海に大はしゃぎである。
「で、こんな小島に連れてきて今日はなんの集まりなんだ?」
 イレギュラーズの質問に、いつも通りの黒衣に身を包むリリィはビシッと指を突き刺して答えた。
「はい、丁寧な質問ありがとうね。
 ――ネオ・フロンティアでサマーフェスティバルが開催されるのは知ってるわね?」
「ああ、なんでも水着と浴衣のコンテストだとか」
「そう、それに併せて海洋の国王――イザベラ女王様が特異運命座標ちゃん達を招待してくれたわけだけど……、その流れに貴族や富豪も乗っかってね、いろいろな場所に招待してくれていたみたいなの。
 その中の一人、ミルミル・ノーゾクさんって海洋の富豪が、所有地であるこの島、マルグ島に招待してくれたわけ」
 実にイヤらしいことを考えていそうな名前だな――そうイレギュラーズが考えていると、
「あまり失礼なことを考えてはだめよ。人間観察が趣味なだけの人の良いおじさまよ。……まぁラーシアちゃんの胸をよく見ていたけれど……うっ」
 自分の胸を押さえて頭を垂れるリリィ。
「ま、まぁそういうわけでしてしばらくこちらの島で遊ぶことができるようになったんですよ。
 海洋本国からボートで五、六分。食材の運び込みも終わってますし数日は自由に暮らせる環境が整っていますよ」
 苦笑しながら話を続けるラーシア。
 島の周囲は自然のプライベートビーチ。岩場の少ないさらさらの白浜が島を囲んでいる。
 島の中央には豪華な屋敷が建ち、その裏手に小さな森が広がっている。陽射しが苦手な者でもゆったり過ごせるだろう。
 冒険心溢れるイレギュラーズには、島の北、唯一岩場が広がる場所に海と繋がる洞窟があるらしい。ダイビング装備を整えれば潜ることも可能だ。
 島を一周するのも良いだろう。歩いていても一時間はかからない広さだ。
「海でやれそうなことならなんでもして大丈夫だそうよ。いろいろ道具も用意してくれているみたいなの。
 朝から遊んで、夕方には夕日を見て、夜に浜辺でデートなんていうのも良いんじゃないかしら」
 相手がいるかは別として、本当に雑多な観光客などを気にせず遊べる絶好の環境が揃っているというわけだ。
「そういうわけだから、特異運命座標ちゃん、ラーシアちゃん、遊ぶわよー!!」
「ええ、遊びましょう~」
 見た目にそぐわぬ少女の笑顔でリリィが駆けだすと、ラーシアもそれに続いた。
「……水着も着ないで海で遊ぶつもりか」
 真夏の海で真っ黒なロングドレスを着てはしゃぐリリィを見て、イレギュラーズは嘆息するのだった。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 ネオフロンティアサマーフェスティバルに合わせていろいろな招待が行われました。
 喧噪から離れた小島で一夏の思い出を作りましょう!

●出来る事
 小さな小島、マルグ島でできることならばなんでもOKです。
 だいたい何でも揃っているので、妨害行為にならなければ大丈夫です。
 一人で参加される方も、二人以上で参加される方も以下のシチュエーションを選択してください。
 ピンポイントにシチュエーションを絞った方が描写量が上がるはずです。

 【1】海遊び
 プライベートビーチ状態の砂浜で遊びます。
 透き通った海で魚と一緒に泳ぐもよし、ビーチで好きなことをして遊ぶもよし。
 時刻を指定すれば時間にあった描写を致します。

 【2】避暑でのんびり
 島の中央の屋敷でぐうたらしたり、裏手の森を散策することもできます。
 浜辺にいるけどパラソルの下から絶対でないあなたもこちら。

 【3】その他
 島内で出来ることはなんでもできます。
 島の北にあるという洞窟探検や、島のどこかにいるというミルミル・ノーゾク氏を探してみる方もこちらになります。
 そのほか思いつくことであれば大抵なんとかなるはずです。

●NPC
 リリィ=クロハネ、ラーシア・フェリルの他、ステータスシートのあるNPCは『ざんげ』以外、呼べば出てくる可能性があります。

●その他
 ・可能な限り描写はがんばりますが描写量が少ない場合もあります。その点ご了承ください。
 ・同行者がいる場合、【プレイング冒頭】にID+お名前か、グループ名の記載をして頂く事で迷子防止に繋がります。
 ・単独参加の場合、他の方との掛け合いが発生する場合があります。
  完全単独での描写をご希望の方はプレイングに明記をお願い致します。
 ・NPCとの描写が希望の方も、その旨、明記をお願いします。
 ・白紙やオープニングに沿わないプレイング、他の参加者に迷惑をかけたり不快にさせる行動等、問題がある場合は描写致しません。
 ・アドリブNGという方はその旨プレイングに記載して頂けると助かります。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • <夏祭り2018>エメラルドオーシャンでごゆっくり完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年08月03日 21時30分
  • 参加人数61/∞人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 61 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(61人)

サーシャ・O・エンフィールド(p3p000129)
宵の狩人
クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
レオン・カルラ(p3p000250)
名無しの人形師と
エマ(p3p000257)
こそどろ
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
銀城 黒羽(p3p000505)
シェンシー・ディファイス(p3p000556)
反骨の刃
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
コル・メランコリア(p3p000765)
宿主
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
冬葵 D 悠凪(p3p000885)
氷晶の盾
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
ヴィンス=マウ=マークス(p3p001058)
冒険者
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
ミセリア・バラル(p3p001161)
乱れ撃ち
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)
光の槍
エリシアナ=クァスクェム(p3p001406)
執嫉螺旋
諏訪田 大二(p3p001482)
リッチ・オブ・リッチ
佐山・勇司(p3p001514)
赤の憧憬
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
カノープス(p3p001898)
黒鉄の意志
ティミ・リリナール(p3p002042)
フェアリーミード
ルシフェル・V・フェイト(p3p002084)
黒陽の君
スティーブン・スロウ(p3p002157)
こわいひと
シルヴィア・エルフォート(p3p002184)
空を舞う正義の御剣
セティア・レイス(p3p002263)
妖精騎士
アグライア=O=フォーティス(p3p002314)
砂漠の光
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
ノーラ(p3p002582)
方向音痴
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
アニー・K・メルヴィル(p3p002602)
零のお嫁さん
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
ルフト=Y=アルゼンタム(p3p004511)
Morgux(p3p004514)
暴牛
アンジェリーナ・エフォール(p3p004636)
クールミント
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
アマリリス(p3p004731)
倖せ者の花束
星影 霧玄(p3p004883)
二重旋律
ココル・コロ(p3p004963)
希望の花
アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)
煌きのハイドランジア
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
ロク(p3p005176)
クソ犬
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド
イーディス=フィニー(p3p005419)
翡翠の霊性
グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
アニー・ルアン(p3p006196)
鳳凰
華懿戸 竜祢(p3p006197)
応竜
ノエル(p3p006243)
昏き森の
コーデリア・ハーグリーブス(p3p006255)
信仰者
リリアーヌ・リヴェラ(p3p006284)
勝利の足音
二次 元(p3p006297)
特異運命座標

リプレイ

●波打ち寄せる浜辺にて
 マルグ島にたどり着いたイレギュラーズを出迎えるのは、照り返す太陽の陽射しと空高く広がる青空、そして雪のように白い砂浜。
 寄せては返すエメラルドの海波は、何処までも透き通り光を反射する。
 浅瀬にまで寄ってくる熱帯魚の群れは、此処が人の手によって大きく開発されてないことを教えてくれる。
 夏本番。
 観光客の居ない静かな小島で、待ちに待ったバカンスが始まった――。

●海辺の遊び
 波にユラユラ揺らされて、海の冷たさと太陽の暑さを同時に楽しむ二人がいた。
 そのうちどんどんその距離は近づいて……。
「ひゃわ!?」
 ティミが可愛く声をあげる。勢い余って浮き輪から落ちるとがぼがぼ溺れ始めた。
 これは大変と、四音が手をさしのべる。
 顔を見れば友人でホッと一安心。
 海に興味があってきたという四音は、どこか悪戯っぽく笑みを浮かべて、抱いてるティミのおでこにこつんと額を当てて。
「どうします? もう少しこのまま一緒に過ごします?」
「は、はい」
 こくこく頷くティミはドキドキ胸が高鳴る。頬も赤くなってるかもしれない。
 そんなティミを抱きかかえる四音は――くふふと何やら裏のある笑みを浮かべていた。
 波打ち際から少し歩けば、一気に海の深度は高くなる。
 そんな足も届かない海の中、エマとイーリンの二人は手を繋いで潜り込む。
 海の中の音が鼓膜を揺らし、感じる気配は手を握った二人の体温。
 どこまでも深く深く、闇の中へ落ちていくようなそんな感覚の中、不意にエマは目を開く。
 イーリンの宝石のような髪が、静かに発光して、周りを泳ぐ小魚達がなんだなんだと近づいてくる。
(えひひひ、なんて蠱惑的な光景でしょう。それにその顔……子供みたいに笑っちゃって!)
 声の通らぬ海の中。
 けれど二人は楽しげに、そうまるで会話をするように、海の中で楽しげに遊んでいた。
(それにしても、これだけ無警戒に魚が寄ってくると取って食べたくなりますね)
(さすがに熱帯魚は美味しくないと思うわよ。あっあっちの大きい魚なら食べられるかも?)
 天然の水族館は食材調達も出来そうですね。
 浜辺ではルアナと焔がえっさほいさと砂のお城を作っていた。
 ぴっちぴちのルアナは照り返す陽射しも何のその、水で濡らした砂を固めていく。
 泳ぐのが不得意ということもあって、二人は前からしていた約束を履行する所だ。大きなお城を作るのだと意気込んでいる。
 楽しみにしていただけあってテンションも一際高い。
「えっと。やっぱりトンネルは必要?」
「トンネルも作るの? じゃあボクが反対側から掘っていくね!」
 砂遊びといえばやはりトンネルは欠かせない。腕を突っ込みお互いに掘り進めれば、その内穴が繋がって――開通だ。
 二人の思い描く城は、洋風と和風で食い違っていたのだが、そんな和洋折衷も有りかもしれない。
「「出来たー!」」
 何度も崩れては作り直して、完成した二人の城は、間違いなく『わたしたちのお城!』だ。
 海の上から魚影を探し、目当ての魚を見つければ海の中に飛び込んで、銛で突く。
 【金色流れ星】のマルベートは、手際よく魚を獲っていく。
 何事も楽しみながら、大きな魚から、食べれるのかわからない小さな魚まで。
「ぷはっ」
 獲った魚をカゴにしまいながら海から顔を覗かせる。浜辺を見れば共に来た四人がビーチバレーの真っ最中だ。
「そーれ!」
 猫耳付きのビーチボールが空を舞う。水着を着た四人が一斉に動き出す。
 目を引くのはコンテスト用の水着を着込んだルルリアとアンナだろう。
「全力全開、ルルリアスマーッシュ!」
 フリルの付いた可愛いビキニに爽やかな空色のパレオを纏うルルリアが大きくジャンプしボールを打ち付ける。
 それを華麗にレシーブするのはアンナだ。果実のデザインが入った白いビキニが目に眩しい。大きなリボンが風に揺れる。
 上がったボールを目で追って、リディアは陽射しに目を細めた。
 一緒に遊ぶ三人は去年の夏も一緒に遊んでいたらしい。リディアは私ももっと仲良くなりたいな、と思っていた。ちらりと、視線を送って見やると――。
(むっ、マルクさんったらルルさんとアンナさんの方ばかり見て!)
 不満げに口を尖らせながらトスをあげるリディア。そんな彼女も背伸びして新調した黄色の三角ビキニを身につけている。
 そんな不満を読み取って、アンナのスマッシュはマルクを狙って打ち込まれる。
「ごめんなさい、手が滑ったわ」
 と、言いつつ狙いは正確で。
 大げさにフライングレシーブをして海に飛び込むマルク。折角海に来たんだから、と行う彼の行動力はとても良いものです。
 まあその行動力は集中攻撃を受けるマルクにとって、体力を大きく消費するものになるのだが。
 そうしてビーチバレーを楽しんだ後は楽しい食事の時間だ。
 マルベートが獲ってきた魚たちを、マルクが熾した火にくべて。香ばしい匂いがすぐに広がっていく。
「さあ、焼けたよ。シンプルに塩焼きだけど――料理はシンプルイズベストなんだよ」
 マルベートの言葉通り、パリパリの皮に振り掛かった塩がとても良い塩梅で。
「ん~美味しい!」
「パリパリほくほく。獲れたてっていうこともあるけれど、本当に美味しいわね」
「見たことのない魚ですが……海洋の魚って結構美味しいんですね」
 がつがつぱくぱくむしゃついて。
 満足いくまで五人は海洋の海の幸を楽しんだのでした。
「さあ、遊ぶわよ-!」
「元気ですね、リリィさん」
 その場にはリリィとラーシア、そしてアリスにルフト、勇司が揃っていた。
「……にしても、リリィの奴が水着ねぇ」
 勇司のつぶやきは尤もで、毎日黒いドレスのリリィが水着姿とはどうにも想像できなかった訳で。きっとドレスを着たままなのだろうと思って来てみれば、あっけなく二人とも水着を着ていた。
 リリィは黒のセクシーな水着に黒いパレオを巻き、ラーシアはフリルのついたベアトップの可愛い水着だ。見せられないのが残念です。特にラーシア。
「二人とも綺麗だ」
 ハーモニアの二人に対して過保護気味なルフトが微笑みながら零す。
「……まぁ似合ってるんじゃないか?」
 勇司も釣られて褒めてみる。
「お世辞でも嬉しいです」「ふふ、ありがとう」
 ニコニコと笑顔のラーシアと、妖艶に微笑むリリィ。
「それで、それでっ、何して遊ぶ? 泳ぐのもいいし、ビーチボールで遊ぶのも。それから砂のお城作るのもやってみたいし、そう、西瓜割りなんかも良いかもっ!」
 リリィと同じテンションのアリスがやりたいこといっぱい詰め込んでいた。
「ふふ、全部やりたそうね」
「もちろん! 数日は此処で暮らせるって話だし、目一杯遊び尽くさないと!」
 楽しい思い出があるぶん、辛いときに頑張るんだって気持ちになるのだとアリスは言う。
「というわけで、まずは海だーっ! 泳ぐぞー、おー!」
「おー!」
 だーっと子供のように駆けていくアリスとリリィ。
「あはは、行っちゃいましたね」
「やれやれ、そんじゃ俺も行くか。アンタも行くんだろ?」
「ああ、心配だしな」
 勇司の言葉にどこまでも優しく微笑むルフト。ラーシアに手を差し出してエスコートする。
「見てアリスちゃん! イソギンチャクよ! 小魚の群れよ! かーにーよー!」
 楽しげな五人の笑い声が白浜に響いた。
「あつくてえもい」
 容赦ない陽射しの前に、汗を垂らすセティア。
 海で遊ぶのがよくわからなかったセティアは蜻蛉と親戚の子であるココルを誘った。
「そしたら、海に浸かって涼しなろか?」
「涼しくなる? やばい、ぜったい入る」
「海ー!!! わ――!」
 セティアとココルが一斉に駆け出す。時折蜻蛉が来てるか確かめながらなのが可愛い。
「子供は元気やわぁ……はいはい、今行きますよって」
 子供は元気なのが一番ですね。
 波打ち際で、セティアが初めての海との邂逅を果たしていた。
「水! 冷たい!!! わー!!」
「これに入る? およぐ? どうやる?」
 セティアが海にビビってると、ココルが後ろからセティアを巻き込んで海へとダイブ。
「あははは! これが! 海なのですか!!! しょっぱいのです!!!」
「がぼぼっ」
「蜻蛉さんも早くはやくー!」
「ぺっぺ、海、やばい、味マズイ」
「……大丈夫やろか」
 三人揃って海の中へ。
 慣れてないセティアとココルは水上近くで海の中を見て、その光景に圧倒される。
 蜻蛉はそのまま水底へ。水面を見上げれば楽しげな二人が見える。
 その様子は、水中なのに、まるで空を飛んでる妖精のように見えて――。
「ゴボ、ゴボボ?(蜻蛉さんー!)」
 ココルが水底の蜻蛉に元気に手を振れば、ゆるりと振り返して。
 人魚のように揺蕩う蜻蛉は笑みを浮かべながら、二人の元へと向かった。
 浜辺で一人訓練に精を出すのはリリアーヌだ。
 とても真面目な彼女はイレギュラーズとなったばかりの未熟な身と自覚し、バカンス気分が蔓延するこの島で実直にトレーニングに励む。
「ふぅ……十五分休憩にしましょうか」
 身体を壊さぬように休憩もしっかり時間を決めて取る。実に理にかなっている。
 喉を慣らしながら水分補給も欠かさない。
 そうして、休憩を取り終えれば、また一人訓練に勤しむのであった。勤勉!
「いいか、まずは準備体操だ。やらねーと不味いからな」
「はいっ!」
 溺れかけてたアニー・メルヴィルを見つけたイーディスが、泳ぎ方を知らないアニーに泳ぎを教えてあげることになった。
 入念に準備体操をして、いざ海へ。
「泳ぎの基本は浮かんでバタ足だ。ほら、力抜いてバタ足バタ足」
「えっほえっほ、波に揺られて、結構難しいですね」
 手を繋いで、透き通った海の上をジャバジャバ泳ぐ。
 頑張り屋のアニーは飲み込みも早くて、すぐにそれらしく泳げるようになってくる。
 泳ぎの上手いイーディスの教えが上手かったのもあるだろうか。二人はいつしか連れ添うように自由に海の中を泳ぐ。
 いくつもの魚の群れと挨拶しながら、エメラルドの海を往く。
「上出来上出来。うまいもんじゃないか」
「ふふふ、教え方が上手かったものですから。あっ、そういえばお名前伺ってませんでした。
 あの、お名前は――?」
 その夏、一つの絆が生まれた気がした。

●避暑地の過ごし方
「あぁー……なんでオレ海辺にいるんだか」
 陽射しを避けた木陰の下、死神――クロバは一人呟く。
 割と人気のない場所を選んでいたが、それが逆に気になったのだろう。スカイウェザーの女性――シルヴィアが近寄ってきた。
「こんにちは。お一人でどうされたのですか?」
 そう気さくに話しかけるシルヴィアは興味本位な感じだ。
「何をしているかって? まぁ、水の中は御免被るからな。
 こうやってその心配がないところで涼んでいたところだ。
 一人でもよかったが折角だ。退屈しのぎにアンタも涼んでいくか?」
「はあ……水が駄目なのですか?」
 もしかして泳げないのか? そんな疑問を浮かべるシルヴィアだが、詮索は失礼というものだろう。
「そうですか――ええ、では折角ですし、ご一緒致します」
 縁は大事に。こんな出会いもあるものだと、シルヴィアは微笑んだ。
 互いに自己紹介を済ませて、静かにのんびりと。
 海ではしゃぐだけが楽しみではないのだ。こういう過ごし方もきっと良い思い出になるに違いなかった。
「……や……元気……してた……?」
『久しくしているな、クロハネ殿』
「あらメランコリアちゃんにコルちゃん。ふふ、久しぶりね」
 海から戻ってきたリリィに話しかけたメランコリア。その姿は浜辺に見合わない白いドレス姿だ。
「…暑そう……だし……一緒に……パラソルを……立てて……あげ…よう…」
 そういって取り出すパラソルは大きい。
 さて、どうしたものかと考えていると、のそりと歩み寄ってきた全身黒鎧のカノープス。
「大変そうだな。手伝おうか」
「あら、それは助かるわ。お願いしようかしら」
「……でかい……鎧……暑そう……」
 カノープスは手際よくパラソルを立てると、ふぅ、と息をつく。
 その様子があまりにも暑そうなので一緒にパラソルの下で涼むことにした。
 メランコリアがギフトを発揮する。空気の振動エネルギーを減衰して周囲の温度を下げたのだ。
「……うむ……」
『満足そうで何よりだ』
「ああ、これはいいな。真水があればより完璧だったが、贅沢というものか」
 ビーチパラソルの下で白いドレスと黒い鎧がのんびり手足を伸ばす。
「真水ならこちらにご用意しましたが?」
 突如やってきてさらりと用意してのけるのは、メイド少女のアンジェリーナだ。
「お、おう。これは、本当にありがとう」
 カノープスが受け取った真水を鎧にかけていく。
「いえ、私は皆様のお世話が出来ればそれで良いのです。
 結局これが私の性分、というものですわね」
 どこかいつもより楽しげに、メイドをイメージした水着を着るアンジェリーナは笑った。
 【だらり避暑地】の四人は仲良くビーチパラソルの下でドリンクやデザートを楽しんでいた。
「ふぅむ。ざんげがいりゃ夜のビーチにでも誘ったんだが……」
 残念ながらこんな時でも空中庭園からは出てこないのだ。
 やれやれと肩を竦めたスティーブンは同行者――ヴィンスに目を向けた。
 ヴィンスはサマーベッドの上で優雅にトロピカルジュースを口に運ぶ。彼女(彼)は実に油断と慢心しているのがわかる。
 スティーブンがミセリアに合図を送る。ニヤリと笑って二人は氷を手にとって――。
「ひゃぁ――!?」
 突然首筋に当てられた氷の冷たさに変な声がでた。
 飛び上がったヴィンスに対する悪戯は止まらない。背中を流れる氷。ゾクゾクとした感触に背筋が文字通り凍る。
「そんなにあちぃんなら、冷やしてやるよ。おりゃ」
 ミセリアの追い打ちに身体を捩って悶えて、
「ば、ばか、どこ触って――! あ、ダメだって水着とれるっ!」
「いいか? ここがいいのか? へへへ」
「いやぁ、若いねぇ元気だねぇ」
 巫山戯合ってじゃれ合いながらサマーベットの上に氷が溶けていく。
「お、お前らいい加減にしろ――!」
 ヴィンスが抵抗しはじめたところで、ミセリアと組んずほぐれつな状態になり――。
「テメッ! 脱げんだろうが! わかった、待てって!」
 互いに水着が危ういことになっているが、スティーブンは目の保養だとニコニコだ。
「おい、エクスマリア! 助けろ!」
 助けを求めるミセリア。視線の先には髪の毛を器用に動かしブランデーを満たした大人向けなデザートを頬張るエクスマリア。
「……うむ、仲が良いのは良いことだ」
「エクスマリアぁぁ――!」
 突き抜ける快晴の空に、声が響いた。
 クリスティアンはセレブに成りきったつもりでバカンスを楽しむ。
 その周囲を彼――ではない彼女である所のロクが走り回っていた。
「王子! かっこいい! 王子! 優しい! 乳首! 乳首かっこいい!! チクビ!! カッコイイーー!!」
 もう一度言う。彼女――ロクはクリスティアンを褒めちぎるように走り回っていた。
「あ! かわいいカニさんきた! 見て見て王子! 見て王子!……見ろ王子!!」
 カニさんをクリスティアンの胸に落とすロク。
「え? カニさん? どれどれ…っと僕の身体の上に置かないでおくれよ!」
 しょうが無いなと、起こそうとした身体をもう一度寝そべらせて、こそばゆいカニの感覚に身を委ねていると――。
「あっ……カニさんそのハサミはちょっと……あっ! ダメ! 王子の乳首さん挟まないで! 離れて! 王子から離れアッごめん王子ィイ!! ああ、乳首があああ!」
「そんなに慌ててどうしたんだい? チクビ? ……アアッッッッ!!!」
 絶叫が青空に響き渡った。楽しそうでなによりです。
 屋敷の裏手の森を一人歩くのはルチアーノだ。
「うわぁ、あの鳥見たことない色してる!
 こっちの木の実は食べられそうだ! すごい!」
 実に楽しそうに、スケッチブックとザック片手に歩き回る。
「主催してくれた富豪の人に出会えれば良かったけれど……」
 主催者が居ればお礼を伝えたい所だった。しかし残念ながら出会うことは無かった。
 まあしかし、島の自然に触れあえる今日は、ルチアーノにとってまさに最高の一日と言えた。
 散策は続く――。
 森を歩くリリーは、偶然通りかかったルシフェルに挨拶しては、手乗りを二つ返事でOKしていた。
「小人のきみなら、こういった森のなかでは妖精のようだ。
 ここはそんな暑くないからな、そんなリボンも取ってしまうといい」
「ん、たしかにむこうよりはまし、だけど、あついのはあつ、いってわー!?」
 するすると、リリーの身体を包むリボンが解かれていく。
「うおぉおァ!?
 それも含めて水着だったのか!!? す、すまない!!」
「ま、まにあわなかったー! し、したにもちゃんとあるからみえてないけど、でもむすびなおさなきゃ、あわわわわ……」
 てんやわんやとありまして。
 落ち着きを取り戻したルシフェルが何を思ったか思わずリリーを舐めたりしていた。
 字面的に色々問題あるが割とリリーは嬉しそうなので良いのでしょう。
 そんなわけで魔王様と小人はノリノリで水着を直しに人が居るところへ飛んでいくのでした。
 ハンモックを張ろうというルーキスのお願いに、二つ返事を返すルナール。
 仲良く借りてきたハンモックを、手頃な木に設置していく。
「んーこれぐらい……もうちょっと?」
「うむ、そのくらいで大丈夫だろう」
 完成したら、ルナールが先に上がって強度の確認。無事問題なし。すぐさまルーキスがルナールと同じ場所へとやってくる。
「いえーい一緒に昼寝しようぜお兄さーん」
 どうせ誰も来ないだろうと、べったりくっついて。
 程よくやってきた睡魔に抗いながら、吐息を漏らす。
「やっぱりこれが落ち着くなぁ。
 ……うーん、ルナぐらいの体力が欲しい」
「俺と同じくらいの体力は流石に要らないんじゃないかー?」
 ぼそりと呟く言葉に苦笑交じりに返して。
「よしよし、折角だからゆっくり寝ような」
 ゆっくりとした時の中、寝かしつけるようにルナールがルーキスの頭を撫でた。
 甘い感触に、寝息が聞こえてくるのはすぐの事だった――。
 木洩れ日の道を二人の信仰者が歩く。
 アマリリスとコーデリア。二人は同郷だ。生まれに差はあれど、今はイレギュラーズとして肩を並べている。
 思わぬところで出会えたのだというコーデリアは、アマリリスとある村の出来事を回想し、心配した。
「えへへ、村の一件の後はふさぎ込みましたが、ご心配には及びません!
 元気に過ごしておりますよ!」
 この通り、と元気にガッツポーズを取るアマリリスの様子にコーデリアは笑った。
「いきなり海洋でバカンスとは驚きでしょうが、羽を伸ばすのも必要ですし、あとで海にも行きましょっ。
 コーデリアさまの水着楽しみだな~、早く行きましょうっ」
 楽しそうにぐいぐいと引っ張るアマリリスに苦笑しながら、でもコーデリアは微笑んで。
「ふふふ、そうですね
 故国では海で遊ぶ機会もなかなかありませんでしたし、ここは思う存分満喫しましょう」
 と、旧知の仲、その距離を埋めるように連れ添い海へと向かうのだった。

●洞窟探検イェーイ!
 島の北にあるその場所は、ゴツゴツとした岩場にあった。
 【洞窟探検】の一同は暗い洞窟の入り口に足を踏み入れた。
「暗いであるな。――ここは我輩に任せて欲しいのである」
 ボルカノが誰よりも前にでて大きく息を吸うとブレスを吐く。景気よく放たれたドラゴンブレスが洞窟内部を照らし出すが……。
(気づいたのであるが! ブレスしてたら喋れないし息継ぎが危険で――)
「ぷはぁ! やっぱりずっとは続かないのである! ヒューヒュー」
「ったくなにやってんだ。んなでかい明かりはいらねーだろ」
 アランがボルカノに変わって前に出れば、指先に小さな炎を灯す。発火による炎は弱々しいが、足下を照らすには十分だ。
 男らしさを見せつけ胸を張りながら、アランは同行するリリィに不躾な質問を投げかけた。
「ってか、夏場でその黒い服装って、暑くねーの?」
「あら、心配してくれるのかしら。優しいわね。
 でも大丈夫よ。下には水着着てるし、生地も薄手の特注品だもの」
 洞窟の中は涼しいからね、と妖艶に微笑むリリィ。不躾な質問をした罰か、はたまたそんなリリィに目を奪われたのが原因か、よそ見して歩いていたアランは洞窟の天井に頭をぶつけた。
「ってて……クソゥ……ところでリゲルよ。噂によればこの洞窟にミルミル・ノーゾクっていう富豪が居るって聞いたが……」
 木の棒にギフトで明かり代わりにして進むリゲルは、その問いに首を傾げながら、
「どうだろうね。島内を探している人はいたけれど見つかってなかったみたいだし、ここに居る可能性はありそうだけれど」
 と、答えながら周囲を楽しげに観察していく。二人は仲の良い兄弟だ。
「全く……兄弟揃って楽しそうで何よりだ」
 ポテトのつぶやきは響くこと無く消えてゆく。
 奥へ進めば進むほど、洞窟はその『色』を変えていった。ゴツゴツした岩肌はやがて透き通った宝石のようになり、碧光を反射する。
 その光景に感嘆のため息を漏らしていると、ノーラが初顔のエリーナに挨拶した。
 ニコリと微笑んで、エリーナも召喚物(ペット)の妖精と共に自己紹介。
 雑談混じりに話していると突然何かを見つけたようにノーラが走り出す。
「ってノーラ!?
 勝手に走っていかないと約束しただろう。心配したじゃないか」
 慌てて追いかけたポテトがノーラを見つけると、ノーラは謝りつつ葉っぱが茂っていることを教えた。
「ミルミルさんがいたのかと思ったよ。会えたらお礼を言いたかったんだけどな」
 リゲルが少し残念そうに言葉を漏らした。
 溜まった水が静かに揺れる。大きな広場には潜ることができそうな海と繋がる泉があった。
「そろそろ休憩にしましょうか。みんな、お茶会の時間よ!」
 エリーナの提案で、洞窟内でのお茶会が始まった。
 幻想的な碧光の中、【洞窟探検】の一同は、今一時洞窟内を堪能するのだった。
『霧玄! 見てみろよ! すげぇもの見つけたぜ!!』
 二重人格をギフトで分け身にし、二人でエメラルドに染まる洞窟を泳いで楽しんでいた霧玄と零夜。
 突然なにかを見つけた零夜が霧玄を呼んだ。
「零、なにを見つけたんだい?
 わ、これはすごいね――!」
 視線の先、光る鍾乳洞のようなものが見えた。人の手に寄らない天然自然の形。
 興奮をそのまま感情に乗せて、手にした武器――非物質のピアノ鍵盤で二人だけの演奏会が始まった。
 静かな洞窟に、感情乗った興奮のメロディが響く。
 洞窟の奥ではサーシャとアグライアが、二人のギフトを活かしながら協力して進んでいた。
「むむむ! 見えますです! その通路の先、大きな岩がありますが、どかせば通れるのです!」
「それならお任せです! よいしょっ……と!」
 視力聴力のサーシャに、身体能力向上のアグライア。見事にバランスの取れた二人は暗い洞窟の中を進んでいき――。
「お、おぉ……! すごいところにでましたです」
「綺麗ですね……!」
 一面水晶化した岩が、様々な色を反射させながら存在する光景は、まさに幻想か。波一つ立たない湖面の水が、その自然の宝石を反射し映す。
 洞窟は最奥にたどり着いた二人は、大きく口を開けながら、その光景を目に焼けつけた。
 ――危ないから止めた方が良いと思うんだけど。
 ――楽しいから行った方が良いと思うんだけど。
 人形使われなレオン・カルラはそう言ってリリィと共に洞窟を散策する。
 神秘的、幻想的な光景にレオン・カルラは興奮隠せず笑って。
「あっ、綺麗な貝殻! あのねあのね、今日のお礼にあげる。
 黒い服でも洞窟の中なら涼しかった? 楽しんでくれたかな?」
「ふふ、とっても楽しかったわ。ありがとうね、レオンちゃん、カルラちゃん――」
『それは分からないけれど』「楽しい探検だったね」
 ――また皆で何処か行きたいな。
 その想いに共感し、リリィは微笑みながら頷いた。

●ノーゾクさんどこへやら
「うん、ミルミル・ノーゾクさんね。リリィとラーシアから情報は貰っているよ」
 ヨハンと連れだって歩く情報屋『黒猫』のショウがその名を口にする。
「……話を聞く限りじゃそう誠実な人に聞こえるけどね。
 ……探そうにも本当にこの島にいるのかもわからない人だからね」
「……ショウさんでも難しいのでしょうか」
 ヨハンの言葉にショウは肩を竦めて。
「さて……。とりあえず聞き込みでもしてみようか」
 近くを通りがかったグレンに話を聞くことにした。
「ああ、俺も探して見たんだが、これが手がかり一つ見つからなくてね」
「うん、まあそうだよね」
「まあ人間観察って言うくらいだ、そう悪いものでもないだろ。
 案外、自分の島で楽しげにしてるのを純粋に楽しみにしてるのかもしれないしな」
 グレンはそう言って海辺ではしゃぐイレギュラーズを見つめる。
「……ああ、こういう笑顔や笑い声を守りたいもんだ。
 っと、これじゃ俺の方が覗きみたいだな」
 大げさに苦笑するグレンはそう言って立ち去っていった。
「――割と良い線ついている証言だと思うかな。
 まあもう少し聞いてみようか」
「はい! やっぱり聞き込みは数ですよね!」
 続いて二人は森の方へ足を運ぶと、海へと行こうとしていたノエルと出会う。
「……ふむ。
 ミルミル・ノーゾクさん……ですか」
 やはり気になっていたノエルも、スキルを駆使して探し回ったようだ。
「……ですが、ダメですね。
 確かにいるような気配はあったのですが、捕まえようとすると気配が霧散してしまって」
「ふむ……イレギュラーズでも捕まえられないとなると、中々に曲者かもしれないね」
「まあ怪しい気配……という感じではなかったので、そう悪い人ではなさそうですけどね」
 それだけ言うとノエルは海へと向かって走って行った。これからリリィ達と遊ぶらしい。
 聞き込みは続く。
「ノーゾク氏ね。それなら今応竜と探していた所よ」
「ビーチ付近の木陰に輝きの反応が見えるな。位置的には怪しいが……」
 竜祢のその言葉にアニー・ルアンは目をぎらつかせて走り出す。
「ビンゴよ! さぁ大人しくなさい、この覗き魔」
「な、なんじゃぁ! お前らは……!?」
 アニーに首根っこ捕まれた男が大げさに声をあげる。
「覗きはここまでね、ノーゾクさん?」
「誰がノーゾクじゃ! ワシは諏訪田大二じゃ。お主らと同じイレギュラーズじゃ」
 大二はぺぺっと手を払う。
「む、人違い? まったく紛らわしいわね。燃やすわよ? 応竜、次よ」
「似たような反応がもう一つあるが……行ってみるか?」
「当然!」と、アニーが走り出す。
 アニーと竜祢が居なくなったところで、大二が安堵の息を吐き出した。
 そう、本当の覗き魔はここに居たのである。
 そんな大二を放っておいた二人はというと……。
「だーれがノーゾク氏じゃ。人違いじゃっ!」
 また同じ事を繰り返していた。次なるターゲットは二次・元だ。
「いや、うはは! だとか、ええのぅええのぅ! なんて言ってたじゃない。きっとあんな小さな子にも欲情してたんでしょ。燃やすわよ!」
 びしっと通りがかったリトルリリーを指さすアニー。
「……幼女(30cm)? 子供は人類の宝じゃぞ。そんな目で見るわけなかろう。ガチ犯罪者は滅びよ」
 急に真顔のガチトーンで説教が始まった。
 まあこの元も堂々とサングラス越しに覗きしてたんだけどね。
 そんな一連のやりとりを目にしたヨハンとショウは、
「やれやれ……これは骨が折れそうだ」
 と、半ば諦め掛けながら、ノーゾク氏捜索を続けるようだった。
 近くで、その様子を見ていたMorguxが不意に木陰の方を振り返った。
「……気のせいか? いや確かに気配を感じたな」
 噂に聞く富豪に会ったところ話すことなどないが、礼くらいはしようと思った。
 慎重に近づいて木陰へと進入すると……。
「――恥ずかしがり屋なのかね」
 その気配はいつの間にか消えていた。後には丸いサングラスが残されているのだった。

 昼間の喧噪は形を潜め、月夜輝く海辺には、静かな波の音だけが響いていた。
 まだ仄かに熱さの残る砂浜をlumiliaとシェンシーの二人が歩く。
「ふふ、このような時間に十四の女子が二人。プライベートビーチじゃなきゃできない、気の抜けた、迂闊な楽しみ方ですね」
 明かりを揺らしながら、微笑むlumilia。暑さのほうはどうかと尋ねれば、
「昼間は暑さで身が焼けるかと思ったけれど、陽が落ちてしまえば風と水が心地良いな」
 波打ち際で素足を波に晒しながらシェンシーが答える。
 同年代の二人。その性格は似通ってるとは言いがたい。
 けれど、どこか二人は気があって、会話は続いていた。
 不意に、シェンシーが零す。
「――たまにはこういう参加の仕方をするのもいい。礼を言う、ルミリア。
 ……こうやって水に足をつけて歩くのはなかなか涼しいぞ。あんたもどうだ?」
「そうですか。それじゃあ……」
 真似して靴を手に取り波打ち際を歩く。
 そうして二人は、いつか一緒に衣服を買いに行こうと、小さな、普通の約束をし、月明かり零れる浜辺の散策を続けた。

●富豪はシャイなんです
 島に上陸してから数日が過ぎた。明日はもう海洋本島に戻る日だ。
 夕暮れが反射するオレンジ色の浜辺にラーシアが立っていると、不意に後ろから声がかかった。
「あら、いらしてたんですね」
「うむ。とても楽しい日々を過ごさせてもらったよ。
 ……まあ危うく燃やされて仕舞うところだったが、なんとか逃れることができた。
 明日帰るそうだね。またいつでも来てくれたまえ」
「ふふ、こちらこそ、素敵な島への招待ありがとうございました」
 その言葉に答えがないことを不思議そうにラーシアが振り返れば、そこには足跡だけが残されていて――。
「本当に不思議な人ですね……噂されるのもしょうがない気がします」
 苦笑するラーシアに遠くからリリィの声が掛かる。手を振って答えたラーシアはゆっくりとその場を離れていく。
 小さな島で過ごした一夏の思い出は、こうしてピースを埋めていくのでありました。
 

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

澤見夜行です。
皆さんミルミル・ノーゾクさんはとても良い人なんですよ?
名前がちょっとアレなだけなんです。本当です。

ノーゾク氏に対する探索プレイング+ダイスロールでクリティカルがでれば遭遇とするつもりでしたが、クリに1足らないおしい方が二人いました。
二人は気配を感じるところまでは行けたのですがもう少しでしたね。

白紙を除き全員描写しているはずです。抜けがあればご連絡ください。
NPCの水着は各自脳内補完でお願い致します。

なにはともあれ一夏の思い出の一ページになったのであれば幸いです。
依頼お疲れ様でした!

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