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シナリオ詳細

レッツゲテモノ食覧会~サメ肉編

完了

参加者 : 50 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とある港町の事情
 さわやかな風が緑の草原を走る心地よい季節。
 ここ、幻想のとある海辺の村が、村おこしと称してお祭りをすることになった。
 場所は村の中心にある広場。通りを一本はさんでカモメの鳴き声と潮騒が聞こえてくる。
 村おこしといえばてっとりばやいのが地元でとれる食材を使った料理だ、地産地消でおかねもたまる。漁師も農家もみんな潤うにっこにこ。
 というわけで彼らがお祭りの目玉にしたのが『サメ肉料理』。
 じつは大規模召喚以降、魚の生育状況が変わったのかサメが網にかかることが増え、というかもうとれてとれて仕方がない網を投げればサメが次々あとは雑魚なんてざら、市場に出しても買いたたかれる、なら、もう食っちまえ、ついでに村おこしだ、珍しいのは本当のことだし!
と半ばやけっぱちで始めたこのお祭り。
 計画をぶち上げたはいいものの、当然サメ肉のくわしい調理方法などわかっておらず、素揚げくらいしか思いつかない。
 そこでレシピの知恵を頼んで、あるいは客として、新進気鋭のギルド・ローレットの諸君を『サメ肉食覧会』へ招待することになったのである。

●ギルド・ローレット側の事情
 そもそもの始まりは何気ないつぶやきだった。
「最近サメと戦うことが多いような気がする」
 いわれてみれば確かにそのとおりな気もする。
 これから夏を迎えるにあたって、海洋とかからの依頼も増えるだろう。サメ退治の依頼はますます数を増すだろう。知らんけど。
 ひととおりやっちゃってるから、もう出なさげな気もするが、それは杞憂というものだよ。たぶん。
 ようするに、普段はサメなんか食べないよってひとたちも、サメ? やったあサメ大好きーというひとも、わーっと集まって、がーっと食い散らかして、きゅーって酒でも飲もうぜ。未成年はソフトドリンクでよろしく。それがこのお祭りの趣旨だ。
 ……で、そのー、サメっておいしいの?

 ある地球系ウォーカーの証言そのいち
「サメならスーパーで売ってるよ。めちゃくちゃ安いうえにうまいから給料日前にはよく世話になったな。鮮度が高いとサメ独特の臭みがほとんどないんだよ、いやマジでマジで。味? 味はこくがあってうまい、そのうえ歯ごたえがいいのよ。俺は絶対刺身がおすすめ。あー、なんかまた食べたくなってきたなあ」

 ある地球系ウォーカーの証言そのに
「サメ……ね、サメ肉は煮ても焼いてもうまいが、なんといっても干物にするのがいちばんだな。たまりにたまったアンモニア臭が腹の奥からせりあがってくるのを焼酎で一気に流し込む。そうすると舌の上に酒のうまみだけが残るすばらしき愉悦が味わえるぞ。酒飲みを称するなら一度は試してみるといい。どれだけ臭いかって? ふむ、ブルーチーズが食えるなら余裕じゃないかね」

 ある地球系ウォーカーの証言そのさん
「アイヤー、サメといえばフカヒレあるよ。珍味中の珍味ね。コラーゲンたっぷりで食べればお肌とぅるとぅるね! フカヒレの姿煮の味でその店の格がわかるってぐらい重要な食材よ。お高すぎて私は食べたことないけどね……」

 と、このように意見がバラバラなのでまったく参考にならない。
 サメは珍味か美味か、はたまたゲテモノか。
 それを判断するのはあなたの舌だ。

GMコメント

ようこそこんばんは、みどりです。
スーパーはなんでも売っています。
昔、豚の頭を丸ごと売っているのを見たことがあります。
五千円でした。

さて、皆さんはとある漁村のサメ肉食覧会へ招待されました。
新鮮なとれたてサメから暗所で二週間寝かせた発酵サメ、からっからの干しサメまでそろっています。
種類はばらばらで、大きさは1~2mほどですが、漁師さんがさばいてくれるので必要なだけ使うことができます(自分でさばいてもいいです)。
また、料理に必要な食材や道具はすべてそろっています。ジモティの好意です、バンバン使いましょう。


プレイングの冒頭に行動タグをつけて書いてください。
同行者が居る場合は、待ち合わせ用の専用タグを使うか、相手のフルネームとIDを記入してください。

>タグ
【店】
サメを使った料理などを一品だけ提案し、食覧会で売ります。
タイトルにサメ肉とありますが、サメのどの部位を使ってもOKです。
骨を粉にして薬にしたり、サメの皮を使った小物を作ったりアイデアしだいでなんでもあり。
よろしければ、お【客】さんのために相談掲示板でネタばれ(宣伝)してあげてください。

【客】
食覧会をぶらぶらしたりぐだぐだくだをまいたりあれこれ見て回って楽しみます。
【店】タグのアイテムをからめたプレイングを書くと描写率が上がります。

>名声値
幻想での名声値がプラス50を超えているあなた。あなたは知名度のあるイレギュラーズです。お【店】を出すと売上が増えるかもしれません。

  • レッツゲテモノ食覧会~サメ肉編完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年07月10日 21時30分
  • 参加人数 50/50人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 50 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(50人)

アルプス・ローダー(p3p000034)
二輪
クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)
真実穿つ銀弾
ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
レオン・カルラ(p3p000250)
名無しの人形師と
セララ(p3p000273)
魔法騎士
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
蒼の楔
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
銀城 黒羽(p3p000505)
死を許さぬ
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
シエラ・バレスティ(p3p000604)
引退狼
世界樹(p3p000634)
 
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
冬葵 D 悠凪(p3p000885)
氷晶の盾
カタリナ・チェインハート(p3p001073)
美麗ディストピア
雨宮 利香(p3p001254)
雨宿りの
刀根・白盾・灰(p3p001260)
煙草二十本男
イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)
世界の広さを識る者
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
佐山・勇司(p3p001514)
赤の憧憬
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
ムスティおじーちゃん
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ジョセフ・ハイマン(p3p002258)
異端審問官
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
玲瓏の壁
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グルナディエ(p3p002562)
紅獣
秋嶋 渓(p3p002692)
体育会系魔法少女
九重 竜胆(p3p002735)
一刀繚乱
マリス・テラ(p3p002737)
Schwert-elf
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
五行絶影
シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)
オトモダチ
アベル(p3p003719)
未来偏差
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
メイメイ・ルー(p3p004460)
さまようこひつじ
Morgux(p3p004514)
暴牛
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹
風巻・威降(p3p004719)
悲劇を断つ冴え
星影 霧玄(p3p004883)
二重旋律
アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)
煌きのハイドランジア
小鳥遊・鈴音(p3p005114)
ふわふわにゃんこ
ロク(p3p005176)
クソ犬
レイルディア=F=エクシヴ(p3p005183)
特異運命座標
イーディス=フィニー(p3p005419)
翡翠の霊性
成亥 狛(p3p005436)
自称探偵
飛騨・沙愛那(p3p005488)
小さき首狩り白兎
飛騨・玲(p3p005496)
悪食女(グラトニー)
飛騨・直斗(p3p005770)
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘いかおり

リプレイ

●現場からは以上です
「うわあ~想像以上に盛況だ。たくさんで店が並んでるなあー。これ全部鮫料理なの? 信じられない!」
 両手をパンと叩いて歓声を上げたのは秋嶋 渓。心ウキウキする光景に、さあどこから試そうかと舌なめずり。
「いろいろ食べてみたいですね! かまぼこにチャーハンによりどりみどりです! あ、でもお酒はダメですね! 未成年! 大事!」
 悔しそうに叫ぶと拳を握りしめる。そう、渓は未成年。酒のあては食べれても酒は飲めないのだ。
「くぅ~なんてこと! この祭りが3年後だったらワインでもスピリッツでも大吟醸でも頼めたのに!」
 でも未成年だからダメなんです。ルールは大事。
 全身に悔しさをにじませている彼女の周りにすっと影が忍び寄った。
「なっ、あなたたちは……」
レイルディア=F=エクシヴ。銀城 黒羽。飛騨・沙愛那。飛騨・玲&飛騨・直斗。
「我々の分まで食事を楽しんできてくれ」
 言うなり5人は歩調を揃えて人並みへ消えていった。
「……なんだったんでしょうか。何かを託されてしまった気もします。おいといて。さあ食い倒れの始まりです! 端から攻めますよー!」

●コヨーテは野生と戦う
 目の前にででんと置かれた、鮫の干物。2mはある。ロクは獲物を前によだれをたらたら流した。
「鮫さん鮫さん! あの海にいるつよつよな鮫さん! 食べる! 食べるよ! 鮫さん食べるよ! 強い鮫さんを食べれば、こう…なんていうか…獣種としての霊格? ってやつ? を上げられる気が、する!」
 そう、ロクはただ鮫を食べにきたのではない。鮫に勝利するために来たのだ。食うか食われるかの弱肉強食バトル。さてどこからかぶりつこう。ロクはしっぽをぶんぶん振りながら干物の周りを走り回った。
「うーん、やっぱり頭からいこう! えいやっ!」
 バリバリ、もぐもぐ。たまにお酒をきゅーっとな。
「乾き物ってほんと、お酒によく合うよね! ……ハッ!?」
 視線を感じてロクは振り返った。天日干しの網の一角にいるそいつは。
「あそこに置いてある干物から…視線が!?!? 待って、ちょっと待ってよ!! あのエイリアンの顔みたいな干物、鮫じゃないよ!? エイだよ!? やめて! 裏返して! 視線が怖い! 夢に出る!! …なんだ食べちゃえばいいかあ、もぐもぐ」

●お菓子ズハウス
 左右に立ち並ぶのぼりと出店を見ながらMorguxは記憶の糸をたどる。
「鮫…鮫か。そういや、混沌最初の仕事も鮫だったっけな。何か記憶が曖昧だがエイプリルの時にも関わった気が……、いや気のせいだな、うん」
 隣を歩くアレクシア・アトリー・アバークロンビーも楽しげに声を上げた。
「そーいえば、ローレットのお仕事で鮫ってちょくちょく出てくるよねえ。私は実際に一回も戦ったことはないんだけどね。もちろん食べたことなんてないから、どんなのか楽しみだな!」
「つーか、鮫肉って食用だったか? ヒレは確かに高級食材だった筈だが、それ以外は……」
「食べれるからこれだけ出店があるんじゃない? うーん、それにしても色んなお店があるんだなあ、すごい! あ、いい匂い。甘くてふんわりしてる」
「まぁ、混沌産のは違うのかも知れねぇがな。……たしかにいい匂いだな。なんなんだいったい」
 二人が歩いていくと、匂いの先には小さな屋台があった。袋詰にされたクッキーが並べられているその横で、男の子と女の子の人形が踊っている。
 店主らしき小さな少女が伸ばした生地をクッキーを動物の形をした型で抜いていた。そんな彼女を手伝うように人形たちは唱和する。
「御本で読んだんだ」『空を飛んだり、頭がたくさんあったり、とってもすごい』
「そんな鮫をどう調理する?」『やっぱりお菓子!』
 人形たちが飛び跳ねる。
 少女はうんうんと首を縦に振る。
「乾燥した肉を粉末にして混ぜたり」『フカヒレなんて美容に良いかも!?」
「メニューなら」『やっぱりクッキー』「だってクッキーは」「『とっても美味しいから!』」
 無口な少女の代わりに元気いっぱいにしゃべる人形たち。
「あ、鮫を使ったお菓子とかもあるんだ? それにしても、鮫って到底お菓子にはできなさそうな雰囲気あるけど……食べてみればわかるか!」
「俺は飲み物がほしいな、隣の屋台でコーラ売っているからちょいと買ってくる」
「いってらっしゃい。とりあえず、クッキーお一つくださいな! ふむふむ……意外と……いけるような……」
 帰ってきたMorguxも一袋買い求めた。じっとラベルを見つめる。かわいらしい手作りスタンプで「レオン・カルラのクッキー」と記されている。
「鮫のクッキー? 材料が材料だし、些か無謀だと思うが…まぁ、試しに一口食ってみるか」
 ひょいぱく。ぽりぽり。しょりしょり。あまいあまい生地にフカヒレとオレンジピールが練り込まれているのがわかる。
「……うめーじゃねーか。不思議とコーラに合うのが何とも。案外食えるのかねぇ? うーむ、期待してなかったからこいつは僥倖だ。良し、他も回ってみるか」
 コーラ片手にまた歩きだすMorgux。ついていくアレクシア。
「なんでついてくるんだ、おまえ」
「だってひとりでいてもつまんないじゃーん」

●蒼翼てんやわんや
「……ふにゃ?」
 マリス・テラと小鳥遊・鈴音は突然手渡されたすくううる水着に困惑していた。たしかに売り子をやるなら動きやすい格好の方がいいだろう。だけどなんでスク水なんだろう。
「ああ、白い方が鈴音で、紺色がテラな」
 さも当然のように言うルーキス・グリムゲルデ。恋人のルナール・グルナディエも首肯している。
「水場はないはず……港町だからおっけー?」
「着ちゃうのテラちゃん?」
「どうせ動き回ることになるので、機能に問題がなければそれで」
 『受けとんのかよ』と胸の『マリス』が突っ込んだが、テラは華麗にスルーした。
「あのぅ、えっと、これを着て販売のお手伝いを……」
 しだいに赤くなっていく鈴音の頬。ぶるぶるっと首を振り、猫耳をぴーんと尖らせた。気合を入れて大声を出す。
「うぅ、猫は度胸! ですぅ!」
 店の裏手でふたりが着替えているあいだに、ルーキスとルナールは下ごしらえ。
「鮫、鮫なぁ……。昔喰ったのがすごい匂いだったが……ルーキスが作るのなら大丈夫だろう」
「うれしいことを言ってくれるね。まあここは穏当にフィッシュアンドチップスにしようか。強めの香辛料で臭み消しをしたら、ポテトと一緒にフライにしてしまおう。少なくとも酒のつまみには丁度良くなるでしょう」
 ウインクをひとつ投げて、ルーキスは腕まくりをするとコンロの前に立った。ルナールも合わせて腕をまくり、じゃがいもの芽取りと皮むきを始めた。剥き終えたそれを適度な大きさに切って、衣をつける。
 なんてやっている間に売り子の二人が到着。カウンターに陣取って列をなし始めたお客の相手をしていく。
「臭み無し、柔らかい上に香辛料が絶品」と、テラ。
「えーと、鮫さんはとっても美味しいですよね! 新鮮だとお刺し身さんでもおいしいですの♪ もちろん揚げたては最高ですの!」
 売り子たちの魅力的な笑顔(と格好)にどんどん客が集まってくる。
「ルナー、衣着けたやつどんどんこっち回して」
 量産されていくフィッシュアンドチップス。ところが抜群の知名度を誇るルーキス手作りとあって、あれよあれよという間になくなっていく。
「売り子も二人いるしさすがに忙しくなりそう?」
「確実に忙しくなる予感しかしないんだよな――。というか売り子が水着って斬新な気がする……?」
「テラ、鈴音、キッチンの応援頼む。揚げたやつそこに山積みにしてるから。紙で巻いて販売よろしく。火加減が忙しくて手が離せないんだよ」
 返事をしたお手伝い二人。ところがルナールがひょいと二人に目をやれば、なんとつまみ食いの真っ最中。
「こーら、テラも鈴音もそれは商品だぞー」
「鮫……。軟骨魚綱、板鰓亜綱。身体構造上アンモニアが多く長期保存には不得手。ゆえに鮮度の高いものを選んでいるか確認を?」
「はぅぅ! 美味しいのですぅ! つい魔が差したのですぅ!」
「そうです、美味しいのがいけないと思うのです」
『しゃーない、食いたくなるよな』
「はぅ、あまりの美味しさについ……」
「と、言いつつ食べ続けない」
 笑いを噛み殺したルナールはしゅんとなった二人に、フィッシュアンドチップスを一盛り握らせる。
「これは奢ってやる、食べ終えたらちゃんと仕事しろな?」
「やったー!」
「うれしいですぅ♪」
「うむ、育ち盛りはいいことだー」
 とか言いながら、ルナールは揚げた鮫肉とポテトを紙で包んでバットへ並べていく。
 セララが人混みをかき分けて店へたどりついた。
「揚げた鮫ください!」
 手に入れたフィッシュアンドチップスをもぐもぐ。ごっくん。
「こ、これは……美味しい! 普通のお魚より美味しいかも? この美味しさを表現するには……これだー!」
 飛び散るインク。舞い踊る紙片。したためられたは一遍のグルメ漫画。
「この漫画『異世界グルメ』にどんどん描き込んで、鮫の美味しさを広めちゃうのだ。よーし次は鮫ジャーキーだ!」
 そこへふらりと現れた成亥 狛。
「はぁ~四方八方からおいしそうな香り。たまらんです。でもわたしの意思は固いのです。フィッシュアンドチーップス! お祭りは皆さんがはしゃぐので事件も起きやすいはず! ですが……腹が減っては推理もできぬ」
 本来なら鶏肉の唐揚げなどが食べたいところだが、ここは鮫肉食覧会。祖父も言っていた。「好物を食べ過ぎると飽きもくる。たまには別のフライもいいもんだ」と。そんな彼女の前に現れたルーキスたちの出店はまさに福音。さっそく列に並んで財布を取り出す。ルナールが人好きのする笑顔を浮かべて狛へ手を差し伸べた。
「ご注文は?」
「フィッシュアンドチップス3つ」
「はーい、フィッシュアンドチップス、え……3つ?」
「はい! 3つでお願いします!」
「お、おう。ありがとうございます」
 やがて狛のところへ運ばれてくるお目当ての品。彼女は大喜びでさっそく口へ運ぶ。
「こ……これは、美味い! 淡白な白身にハーブの香りと胡椒の辛さが絡みあって、ジューシー&スパイシー! 鮫肉の問題である臭みもまったく気にならない。むしろついつい手が伸びてしまうジャンクな味わいこそ真骨頂!」
 またたくまに3つをたいらげ、狛は振り返って「おかわり!」と叫んだ。が。
「すまない、売り切れだよ」
「そんなあ……」
 悪いねとルーキスは、どこか満足気に笑ったのだった。

●雨宿りの一時
 フカヒレクッキーをポリポリかじりながら、冬葵 D 悠凪は目的地を目指して歩いていた。
「鮫チャーハン鮫チャーハン鮫チャーハン……あった、ここです」
 立ち止まった先は、リボンで飾り付けされた出店。雨宮 利香の店だ。
「よろしくおねがいします、鮫チャーハンください」
「はい、喜んでー!」
 悠凪の注文に快くこたえるサキュバス。青い肌にエプロンのギャップが周りを惑わしているとは気づかない。
(魔種騒動ですっかり体が戦闘一色に染まってしまいました! そんなわけでリハビリがてら出店です! 雨宿りは宿屋ですけど気にしない! 料理だって出してますしね!)
 やる気満々で鮫チャーハンへ取り掛かる。まずは一口大に切った鮫肉を中華鍋で軽く焼き色をつけ、しみだしてきた油を使ってチャーハン作り。最後に鮫肉を入れて完成。その過程を悠凪は興味深そうに見ていた。
「見てるだけでもおいしそうやんなぁ。あ、俺もチャーハンひとつよろしゅうなー」
 隣から声をかけられ、悠凪はそうですねと答えた。からからと笑い、ブーケ ガルニは懐へ手を突っ込んだ。
「チャーハンええよね。ここの女将の腕は確かやから美味しいもん食わせてもらえると思うで。誰か、いっぱい食べる俺がすきー、って言ってくれはる人がいたりして。なんてなあ」
 その時、ザッと足音を立てて人影が現れた。カタリナ・チェインハートだ。
「ん~、食覧会。実に素晴らしい。素敵な香りと食材がシャークだね!! というわけで遊びに来たよ利香くん、私にもチャーハンをひとつ!」
「はいはい、ただいま。テーブルの胡椒をたっぷりかけてお召し上がりくださいね! いひひ♪」
「ふむ、それではいただこう」
 パパっと胡椒を振り、カタリナは利き手に持ったスプーンを天高く掲げた。
「見えぬものは音に聞け、近くば寄って目にも見よ! カタリナ・チェインハートの本気食いを!」
 そのままジャンプし、中空で四回転。だがふしぎなことにご飯粒は一つも落ちてこない。そして着地したカタリナの皿は空になっていた。ほっぺはリスのように膨れちゃいたが。
「ほむ、なかなか美味だな?」
 口いっぱいに頬張ったチャーハンをもっしゃもっしゃ食べるカタリナ。
 その様子を見ていたシマエナガのじゅりーが抗議するように羽音を立てる。ごくんと飲み込んだカタリナはすまなさそうに眉根を寄せる。
「じゅりー、君にあげる分まで食べてしまったよ。痛恨の極みだ。もう一皿頼むから許しておくれ」
「じゅりり」
 ジュリーと呼ばれたシマエナガはそれなら許すとばかりに胸を張ってカタリナの肩へ止まった。
 一口で食べきったカタリナに対してブーケは及び腰だった。チャーハンを受け取り、慎重にスプーンを入れる。そして取り上げた鮫肉をじっと見つめた。
「白身やし、見た目はあっさりやんね。そしてアンモニア臭がそこはかとない……」
 鼻先をくすぐる異臭。覚悟を決めて口に入れた。
「うわ、すごぉ。噛む毎に鼻に抜ける……なんこれ……味は良いから反応に困る……。ハッ、利香ちゃんの視線を感じる。反応せんと」
 次々と客をさばいている利香に、ブーケは言った。
「えーと、忘れられん味やね?」
「ふふ、そうでしょう。鮫さんのお肉ってブーメランみたいな形で面白いんです、味だって保証付き! うちのは2~3日置いたのをつかってあるから鮫さん特有のうまみを味わうことができるんですよ!」
「あーそれでかー……」
「ところでカタリナさんにブーケさん。お店のお手伝いしてください! お客さんが多くて下ごしらえする時間がないんです!」
 ふたりは利香のぱつぱつの胸元を見て思った。さもありなん。
「せやな。任せとき」
「私のエレクトリカルパレードの出番のようだね」
「いや、頼んでへんから」
 そんな店先を眺めていたのはイーディス=フィニー。特に気になるものもなく会場内をぶらぶらしていた。
(ふーん、鮫ねぇ。フカヒレってのは知ってるけど、それ以外の部分に関しては全く耳にしてねーな。実際、どんなもん……美味そうな匂いはしてるな、うん)
 臓腑へ訴える香りに腹が減ってきたところだ。
「どれどれ。へぇ、鮫肉チャーハンねぇ。腹にガツンと来そうな、いいメニューじゃねーか。精が付きそうだな。よし、まずはソレを頂こうか。あ、チャーハンは大盛りで頼むわ」
「はぁい、少々お待ちを」
 にっこり笑う利香にあごをしゃくり、イーディスはそのへんの箱にどっかりと座り込んだ。やがて注文した品がやってくる。イーディスはゆっくりと咀嚼すると吐息をこぼした。
「――うめぇ。このコッテリとした味付けと鮫肉の相性が実によくマッチしていて。こんな料理もあるんだなぁ。いや、来てよかったわ」
 これは他の出店も見て回らねばなるまい。がぜんやる気が湧いてきた。

●鮫ジャーキー!
 屋台には不釣り合いなくらいのどでかい看板がかけてある。シエラ バレスティの店だ。
「いらっしゃいいらっしゃーい! 新鮮なカフカの背びれの肉を愛情たっぷりで加工いたしました! 低カロリー・高タンパクの鮫肉を、独自の調味液に漬け込み、スパイシーに味付け! クセがないのにクセになる! おやつにも携帯食料にもお酒のお友にも最高の一品です!」
 彼女の屋台からは食欲を誘う香りがあたり一面へ漂っている。
「ジャーキーひとつ、ちょうだいな」
 さっそくやってきたのはティア・マヤ・ラグレン。
「はいな! ご注文ありがとうございまーす!」
「はむ。ふむふむ。これはなかなか不思議な味だね、美味しい」
『食べ過ぎには気をつけろよ』と、彼女の神様が言う。神様へ生返事を返してティアはつぶやいた。
「これでお酒があったらなおいいんだけど」
「呼んだ?」
 振り返った先にいたのはクロジンデ・エーベルヴァイン、「鮫殺し」と書かれた一升瓶をどんと置く。
「よければいっしょにどう?」
「わあい、いただきまーす」
 二人でジャーキーをつまみにプチ宴会。
「鮫料理かー。ボクはだいたい砂しかないラサの出だから食べたことないなー。なのでせっかくだから、どんな料理があるかなるたけ全部のお店を回るようにしてたんだよー。ぱっとみたかんじ一次加工食品が多いみたいだから、お酒を持参しておつまみ代わりに回ってたところー」
「それはナイスタイミンッ。むぐむぐ。ほんとに美味しい、店主さん、この鮫どこで仕入れたの?」
「……えっと、牧場」
「「ぼくじょう」」
 聞かなかったふりをして、二人は宴会へ勤しむ。
「いい匂い……これは、お酒?」
 はらぺこセンサーにつられてやってきたのは風巻・威降。威降は看板を眺めて感慨深くひとりごちた。
「鮫……それは獰猛な海の生き物。低カロリー、低脂質、高タンパク質。骨は全て軟骨性! 子供からお年寄りまで誰にでもおススメな夢の食材だよ! ただし下処理を間違えると凄いことになります」
 やったことあるのかな。なんてシエラは思いながら威降を手招きする。
「大丈夫、うちのは桜チップでしっかり水気と臭みを飛ばしてあるから!」
 笑顔のシエラに近寄り、威降もジャーキーを注文する。
「でも懐かしいね。蒲鉾とか美味しかったなぁ……。新しい美味にも会えたし、シメはこの鮫ジャーキーにしようかな」
 10分後。
 かみかみかみかみ。
「やばい、とまらない。この噛み心地これ本当クセになりそう」
 威降は財布の残りをすべてジャーキーに変えていた。ジャーキージャンキー一丁上がり。

●かまぼこ大盛況
「ファック!魚をおろそうとして手を切っちまったぜ!」
 店先でそう叫んでいるのはアベル。いったいなんだと人垣ができる。その人垣へ向け、アベルは妙に滑舌のいい説明口調でしゃべりだした。
「HEY! 俺の名前はアベル、至って普通のイレギュラーズさ! 今日は海に遊びに来たんだが小腹がすいたんで魚をおろして食べてやろうと思ったんだ、まったく、俺の持ってるナイフじゃ全然うまく下ろせないぜ」
 そこへ登場した刀根・白盾・灰。
「Oh心の友よ! だけど握手しようにも手は魚の脂と血でギトギト! 最悪だぜ!」
『手が汚れている?ふむ、握手したくても難しそうですね……ここだけの話ですが、魚を切るならもっと良いのがあるんです!』
「ホワッツ!? なんだって、さっそく教えてくれよ!」
『こちらです!』
 そういうと灰は目隠しの布を取り払った。そこに鎮座しているのは鉄帝製のフードプロセッサー!
『このボトル部分にぶつ切りにした鮫を入れて…1! 2! 3! ビタミン豊富なつみれがあっという間! たったこれだけで、ほ~ら、すり身の出来上がりです! 魚だけでなく、フルーツをいれてジュースに! 野菜を入れてスムージーに!』
「最高じゃねえか! だったら、これはあるべき場所にしまわないとな!」
 手に持ったナイフをゴミ箱へと放り捨てるアベル。立て板に水のごとき売り文句に聴衆から場違いな拍手が漏れる。
「てゆかサクラってこういうので大丈夫なのか? フードプロセッサー売れてる? 俺の取り分は利益の一割だからな?」
『ご安心ください。いまので予約が10件を超えました。好調な滑り出しです』
「そうですか、僕も負けてはいられませんね。お任せください、僕も元は悪の組織製。キャッチにマルチに訪問販売の経験があります」
 そう宣言したのはアルプス・ローダーだ。あるのかよ、とアベルが心の中で突っ込んだ。
 あげにあげた反応でイニシアチブをとり、客の背後にぴったりとひっつく。そこからマーキングを駆使して客が泣いて許しを請うまで言葉責め(営業)。
「お客さんもう何を買われるか決まりましたか? それならかまぼこなんてどうでしょう! フードプロセッサーもありますよ! 買わないと三日以内に小指の角をタンスにぶつけてしまうかも知れませんよ」
「おーい、ローダー、それ恐喝恐喝」
 しかしローダーが5人目に捕まえた客は毛色が違った。仙狸厄狩 汰磨羈。彼女はローダーのゴリ押しを風のごとく受け流しフードプロセッサーの隣へ顔を向ける。そこからは湯気といっしょに蒸したてのかまぼこの香りがあふれている。
「――ほう、かまぼこ? そういえば、こちらに召喚されて以来、食していなかったな。他の店のも美味そうだが、まずは何よりもかまぼこだ。かまぼこでいこう。吸い物に入れるか、山葵醤油でいただくか、それとも……いかん、涎が」
「お客様、こちらのフードプロセッサーもおすすめですよ」
「うん、フードプロセッサー? ああ、なるほど。確かに便利だな。だが、残念だ。私の興味は、先ほどからかまぼこに向きまくっている。その機械を買うくらいなら、その金でかまぼこを大人買いするくらいにな! という事で、そのかまぼこをくれ。1ダースで。今日は、猫友達を呼んでのかまぼこパーティだな……!」
 キラリと目を光らせる汰磨羈に、謎の敗北感を抱いたローダーだった。
 大量注文を受けて奥から顔を出す店主ことゴリョウ・クートン。
「おぅ、らっしゃい! ここでは鮫のすり身をふんだんに使った蒲鉾を作ってるぜ。擂り粉木ですり身と塩を混ぜて、形成し、軽く寝かせて、あとは蒸したり焼いたり揚げたりして完成っつーシンプルさ! 板かまぼこ、竹輪につみれに、にぎり天……調理法一つで味も触感も変わるのが蒲鉾の面白さだ! って、勇司じゃねえか、来てたんなら言えよ」
「ああ、ちょうどいまついたところなんだ。この前の依頼では世話になったな。感謝するぜ」
「ぶははっ、気にすんなよ! それよりかまぼこ食ってけかまぼこ。ここでこそ手に入る新鮮なすり身だからもっちもちの弾力で美味ぇぞ。そのまま食って良し、酒のアテとしてもイケるぜ。どうだ一つ!」
「じゃあおすすめを」
「それなら定番の板かまぼこだな。ジョセフが言っていたが、醤油にわさびを溶かして食うと美味いらしいぜ」
「ジョセフ?」
「ほら隣の店の主人だ」
 言われて見てみると、そこにはフルフェイスの鉄仮面をかぶったジョセフ・ハイマンの姿があった。
「皮は、皮はどうするんだ皮は。この剥いだザラザラの皮は。どう見ても食えないなこれは。……しかし、ふむ。このヤスリのような表面は利用出来そうだな。そう、ヤスリ……ヤスリ……ふふ、仕事で使ったこともあったな。なかなか骨が折れたが、楽しい作業だったよふふふふ」
 触れてはならないものに触れた気がして勇司とゴリョウは顔を背けた。隣からはこりこりとヤスリを作る音が聞こえてくる。たぶん売れ残ったら彼の楽しいおもちゃ箱に加えられるのだろう。
「鮫の依頼はアレコレローレットで見掛けちゃいたが、食べるって話は確かに今まで無かったわな。ってか鮫か……。せっかくの機会だからありがたくいただくぜ、ゴリョウ」
「おうたっぷり食ってけよ勇司! 気に入ったってんなら隣でフードプロセッサー売ってるから、そいつもどうだ? 丁度いいや、刀根ぇー! すり身また持ってくぞぉ!」
 かまぼこの匂いにつられてまた新たな客がやってきた。
「鮫って美味しいのかな? 初めて食べるからどんな味か楽しみ!」
「鮫ねぇ……まぁ珍味であればあるほどお酒が進むし、レッツ鮫ハシゴ酒よぉ。新たなツマミちゃん、待っててねぇ~!」
「っとと、アーリアちゃんボクに寄りかからないでよぉ!」
 ミルキィ・クレム・シフォンとアーリア・スピリッツだ。さっそくかまぼこに目をつけ、いただきますをする二人。
「ふむふむ……なるほどなるほど。いたって美味です。ごちそうさまでした♪」
「……おいしい! こんなものが作れるなんてゴリョウくんすごいわぁ。お酒のアテに最高よ~」
「ぶははっ! まだまだあるぜ、そのエールが空になるまで居座ってもいいんだぜ」
 青空の舌でしばしエールとかまぼこのマリアージュを楽しむアーリア。付き合っていたミルキィがフードプロセッサーを指さした。
「あれなんだろう。気になるね」
「あー……そうねえ。熱の入ったセールスをやっているけど、ああいうのって近づいたら最後なのよねぇ……。こわいこわい……。近づかないようにしないとだわぁ……」
「すいませーん、これってなんですかー!?」
「って、自分から行ってるし」
 獰猛な光を目に浮かべる店員たちに対してあまりに無防備なミルキィ。アーリアはあわてて間へ割って入った。
「あっというまに細かくできる機能なんだって。ジャムとか作るのにも便利そうだよね! ボクも一個欲しいなー」
『いまなら5年間保証がついてこのお値段、さらに2台セットでプライスダウン! さらにさらにご友人に紹介して購入してもらうごとに4%キャッシュバック!』
「よくわかんないけどすっごくオトクな感じがする!」
「だめよミルキィちゃん、目を覚まして! あ、私は買わないからね、絶対買わないからあー!」

●お刺身ひとりじめ
「こういう味なのですか。混沌の鮫が拙の知る鮫と同様のものかは、分かりませぬが、味はとても。美味しゅうございますね」
 鬼桜 雪之丞はのんびり歩いていく。そして刺し身と書かれたのれんを分けて飲食スペースへ入っていった。
「鮫盛り合わせ一つ」
 運ばれてきた皿へ律儀に手など合わせて「いただきます」。
 美味か珍味かなどと食せば自ずとわかるもの。新鮮でなくては口にできないと聞いては素通りする訳にはいかない。
「……ふむ。歯ごたえのある白身魚といったところでしょうか。噛みきりにくさはふぐのそれに似ている気もします」
 皿をカラにしたら茶をすする、至福のひととき。
「ごちそうさまでした」

●シャーユーチィタン
「なんだ、おまえもフカヒレスープに挑戦するのか」
「なんだって何よ。協力すればもっとおいしいものが作れると思っただけよ。シルキーだけに任せるのはちょっと不安だから」
 ねーシルキー、とシャルロット・D・アヴァローナは言う。声をかけられたクロバ=ザ=ホロウメアは、顎を撫でた。シルキーという妖精は家事の達人だという。ならその力を借りてみるのも一興か。
「フカヒレ、だったかしら? 鮫ってアレに似てるとか? となるとヒレとかから出汁とった鮫のヒレ出汁スープ春雨ってイケると思うの」
「似てるっていうかそのものだよ、安心しな。あんまり扱ったことがない食材だが、春雨スープにするってのはいい案だな」
 ストトンストトンとリズミカルに具材を切り分けながら、クロバは言った。じっくりたっぷり時間をかけてお鍋でフカヒレを煮ていく。
「ねえ、宣伝はしないの? 私、退屈よ」
「お試しで作ってるからな、客に出せるレベルのものかわからねえ。知る人ぞ知るって感じでひっそりやらせてくれ……」
 と、その時土煙を上げてこちらに走りくる影があった。影は直前でUターンし、勢い余って一回転し、ひっくりかえって飛び起きた。
「はい! 我輩新鮮なフカヒレ? というのを食べてみたいのである! だって挑む機会なんてそんなになさそうであるし! 食べるチャンスがあるならそれは今でしょ! であるな! フカヒレくーださーいなー!」
 ボルカノ=マルゴットだ。体重をかけた出店のカウンターがみしりと言った。
「やれやれ騒がしいお客様だ。まあでも食べてもらえるのはうれしいな。よかったら感想を聞かせてくれよ」
「もちろんである! あ、それ、その大きいの!」
 皿の上にフカヒレを載せ、たっぷりと春雨スープをかけてボルカノへ供する。
「それでは早速、いただきまーすである! ……不思議な食感! なんであろうこれ、表現が難しいのであるがー! でも好きかも!」
「そいつはどうも」
「スープが染みてて美味しいであるなー。そうでないとあまり味がしないであるか?」
 目をキラキラさせながら一生懸命に食レポしてくれるボルカノへ、「ご明答」とクロバは拍手を送ったのだった。

●じゅ~って焼くのさ
「な、何ぃ……前方の白いやつは化物か?」
 思わず口調が崩れてしまった『パンツの人』ムスティスラーフ・バイルシュタイン。
「……フカヒレスープ美味しかったです…あとすこしで…完全制覇。ああ美味しい匂い、が、あちら、こちらから……き、気になります……」
 静かなる食いしん坊メイメイ・ルーだ。その手に持った食べ歩きマップをのぞけば彼女が屋台を総なめにしているとわかるだろう。見事な食べっぷりにムスティスラーフは嘆息した。メイメイが店の前で足を止める。
「次は、ここの……炭火焼き」
(まだ食べるのか。でもおいしそう!)
 ありそうでなかったストレートな料理だ。カウンターの奥では世界樹が炭火を起こしている。一口サイズの鮫肉をガーリックのタレを塗り、金網で両面をこんがり焼いてできあがり。香りだけで「ディスイズ美味い!」と宣伝してまわっている。世界樹自身も誘惑に負けそうだ。
「音といい香りといいこれは実にヤバイのう」
「あの…ひとつください…」
「うーん、しかし売り物じゃしのー」
「あの…炭火焼き…ひとつ」
「はしっこならいいか? いいような気もする。いやいいに決まっておる」
「すみびやきひとつくださいっ」
「お、おお。これはとんだ失礼を」
 バツが悪そうに笑うと、世界樹はお詫び代わりに炭火焼きを大盛りにしてくれた。ムスティスラーフも近寄って注文する。
「おお~これは美味い。パンドラの使用も辞さない覚悟だったけど世界が180度変わって見えるよ」
「新鮮な鮫肉にはまだ臭みは無いんじゃよー。なんじゃ、知らんのかや?」
「そんなことないさ、鮫のことなら少しはわかってるよ。たとえば武器になるとか」
「寡聞にして存ぜぬ」
「えっ、この間、凍らせた鮫ぶんぶん振り回してる人がいたけどああいうのは少数派だったんだね」

●二重人格とお茶漬け
『みなさーん!』
 と、星影 霧玄が声を上げれば。
『聞いていけ寄っていけよー!』と零夜も応じる。
『暑い中お疲れ様です!! 鮫のお刺身を使った冷たいお茶漬け如何ですか!』
『どんなのかわからないって人は試食もやってるぜ!! 試しに食べてくれよな!!』
 カリスマたっぷりのふたりの笑顔に場は和やかな雰囲気に包まれている。カリスマと言うよりアイドルかも知れない。
「ふーん、鮫料理ってお茶漬けもあるんだあ。また新しい発見しちゃった」
 アリス・フィン・アーデルハイドが店へ立ち寄る。
『いらしゃいませ! 店内には座れるところもありますよ』
『それとも試食していくかい?』
「えへへ、こんにちはっ。それからお仕事お疲れ様だよっ! お茶漬けを一つくださいなっ!」
 にぱっと明るく笑顔を振りまくと、アリスはお茶漬けを手に店内へ入った。元の世界でフカヒレについては聞いたことはあるが、こうして実際にしかも他の部位を食べるのは初めてだ。今日を心待ちにしていたアリスは期待を込めてお茶漬けを口に入れた。
「はむっ。はむはむ、おいし~い! お出汁がさっぱりしてるし、そこに梅干しの酸味がアクセントになってちっともえぐみを感じない。夏バテしたときでもさらさら食べられそう!」
『お褒めいただき』
『恐縮ですってやつだな!』

●取扱危険物?
「さあ作ろうぜ、鮫料理を。俺にも手伝わせてくれるよな」
「お前さんと一緒に料理を行うのは初めてだな?」
 やる気に溢れたレイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタインの隣で、シグ・ローデッドは頭を抱えていた。
「そう難しく考えるなよ。いつも頼りっぱなしは……な」
 などと殊勝なことを言うレイチェル。普段はシグが作る側だが、共に作りたいと望まれれば――それは仕方のない話ではある。
「よし、わかった。俺も男だ。覚悟を決めようじゃないか」
「俺が料理とか不安か? シグが料理得意だし、プラマイゼロで何とかなるだろ。包丁だってメスの仲間だと思えば使いこなせる!」
「……また不安になってきた」
 再び頭を抱えるシグ。
「まあ悩んでも仕方がない。今日の目標は鮫肉の煮こごりにしよう。途中でヤバイと判断したら即路線変更するからな、頼んだぞ」
 主にレイチェルの身の安全の問題で。
 ところがレイチェルは思った以上の働きをみせてくれた。シグが事前に用意したレシピが大いに役立ったのだ。困ったらひとまずそれを見ればよいという安心感がレイチェルの包丁さばきを安定させていた。
「……味付けはシグのレシピ通りにしよう。大丈夫、レシピ通りに作れば失敗しない筈。料理も科学実験と同じ――分量さえ間違えなければ問題無い」
 そんな独り言を利きながら、たまには二人で台所に立つのもいいかもなとシグは思ったのだった。

●鮫心あれば水心
 ヘイゼル・ゴルトブーツは驚きに口元を手で覆った。
「そんな料理もあるのですね。鳥でしたらハツなど食べますが魚は……。そもそも出身世界の出身国では鮫を食べる文化自体無かったのです」
 マルベート・トゥールーズが自信たっぷりに笑う。
「混沌の民にして鮫の真価を知らないとは、なんという悲劇だ! この悪魔的に美味な一皿を口にすれば鮫のとりこになるのは間違いない!」
 びしっと試作品を指さしてマルベートが高笑いをした。まっしろな皿に盛り付けられているのは「鮫の心臓のカルパッチョ」。新鮮な心臓を血抜きしてから手早く薄切りにし、皿に放射線状に並べた様はまるで赤い花のよう。それがフルーツをフレーバーに加えた赤ワインの重厚なソースで、てらりと蠱惑的に光っている。
「さあ宴を始めようか! 売り子はまかせたぞヘイゼル!」
「わかりました。料理は得意では無いのですよね。手先も器用とは言えませんし……」
 ヘイゼルはなんでも美味しいと感じてしまえる料理下手さんに優しい舌の持ち主だった。ここは売り子としてがんばるぞと気合を新たにする。なにせマルベートの一品は調理したそばから風味が失われていくスピード勝負の料理なのだ。会計と配膳と列整理を一手にこなし、目の回るような忙しさ。だが今は逆にそれが楽しい。その客の一人がヘイゼルを手招きしていた。
 それは店の片隅でひとり静かにカルパッチョを味わっていたイシュトカ=オリフィチエだった。
 ふむ、と豊かなあごひげを撫でると、彼はたずねた。
「店主さんは、もう少したくさん作れるかね?」
「おかわりですか? ご注文承りますよ」
「いや、もちろん二皿目を貰いたくはあるが、今声をかけたのはそういうことではなくてね。少しの工夫でもっと客を呼ぶことができるということさ」
 苦笑した彼はヘイゼルへ話しかけた。聞き終えたヘイゼルがマルベートのところへ走っていく。
「どうしたんだ、私は忙しいんだ」
「それが、そこのお客さんがね、表で作るところを見せながら売ったほうが人目を引くからやりなさいですって。それから、ロープを張っておけば自然と列の整理ができるから私も配膳に集中できるって言っていたの」
「ほう、悪くないアイデアだ。さっそく取り入れるとしようか!」
 調理場ごと移動し、ロープを張り巡らせれば、たしかにアドバイスどおりうまく行った。その様子を見たイシュトカも満足げに目を閉じた。

●お土産はこちらから
 九重 竜胆はせっせと鮫皮に針を通していた。作っているのは小銭入れほどの財布だ。試作品から数えて5つ目の挑戦。なかなかうまくできたと悦にいる。カウンターへ作品を並べ、休憩がてらにかまぼこを食す。
「面白いお祭りね。そういえば鮫料理自体も食べるのが久しぶりだったかしら? そもそもこっちの世界じゃ食べる事自体が稀みたいだったし…。この機会に一般にも出回るようになってくれたら良いんだけれど」
 もちもちした感触を楽しんでいると、頭上から影がさし、竜胆は目を丸くした。30センチほどの鮫がぷかぷか浮かんでいる。
「これポチや、いたずらをしてはいかんぞ」
「ああ驚いた。アンタの連れだったのね」
 視線の先にいたのは図体のでかい直立ザメ、もとい海音寺 潮。
「おお、ここでは小物を扱っておるのか。こんな店を探していたんじゃ」
「だって鮫と言えば食べるだけじゃないわよね? 皮に内蔵、骨に歯。使おうと思えばいくらでも使うことができるわ」
「全面的に賛成じゃ。命は余す所なく有り難く頂かんとな」
「というわけで鮫皮のお財布はいかが? 留め具は鮫の歯よ。歯先は削って丸くしてあるし、皮もよくなめしてあるからざらついたりしないわ。薄いのに耐久性抜群。そのうえ水にも強いから突然の雨にも困らないわよ」
「何やらわしもよいしょされておるようでこそばゆいのう。それではこの財布をひとついただくかな」
「まいどあり。時間があるならポチくんが持ち運びできるようベルト付に改造してあげるわ」
「願ってもない。では終わるまで見学させてもらおうか」
 二人は鮫談義でおおいに盛り上がった。祭りの喧騒はさらに高まり、夕暮れの潮騒と共に空へ吸い込まれていった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでした。
皆さんサメ肉食覧会はお楽しみいただけましたでしょうか。
私は良質なプレイングの多さにうれしい悲鳴をあげておりました。
またのご利用をお待ちしております。

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