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シナリオ詳細

<夏祭り2021>無人島のサマーホリディ

完了

参加者 : 35 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●大司教と夏の島
「ふふ、見事に晴れましたね。これも皆さんのお力でしょうか?」
 くすり、と笑いながらそう言うのは、幻想大司教、イレーヌ・アルエである。普段の荘厳な衣装とは打って変わって、その姿は非常に煽情的ともいえる水着姿をしてた。実に聖的である。その水着で聖職者は無理なのでは。
 ちょっとしたジョークはさておき。イレーヌは、降り注ぐ太陽の光に目を細めた。イレーヌたちがいるのは、幻想南部の港町から、船に乗ってしばし言った所にある無人島、『ファランテ島』のビーチである。ビーチには、イレーヌ以外にも、数名の神父や修道女、そして大勢の子供達が居た。子供達は、幻想中央教会が管轄する孤児院から集められた子供達で、この集まりは年に一度行われる、臨海学校の催しだった。
 イレギュラーズ達は、臨海学校への同行を、イレーヌから依頼されていた。教育的な催しごとの引率かと思えば、イレーヌから伝えられたのは、「ラフな格好で大丈夫です。建前ですので」との事であった。で、実際に来てみれば、イレーヌなどは、水着姿で太陽の日差しなどを楽しんでいる。
「臨海学校、とは言いますが。実質的には、子供達や、教会職員たちの休暇も兼ねているのですよ」
 イレーヌはいたずらっぽく笑う。
「かねてから、いつもお世話になっているローレットの皆さんに、何かおもてなしができれば、と考えていました。
 しかし、大々的に皆さんを招いて宴を……などとは出来ぬ身分です。
 そこで、臨海学校の名目の下、皆さんをバカンスにお誘いできれば、と思ったのです。
 皆さんには、是非、心行くまで遊んでいっていただきたいと思います。ほら、私もそういたしますから」
 無邪気に手を広げて見せるイレーヌ。その大胆な水着に、目を奪われるものもいたかもしれない。
「子供達のお世話をお考えでしたら、教会の者がいたしますから、お気になさらないでください。
 もちろん、勇者である皆さんが、何かお話しいただければ、子供達にとってもよい機会になるとは思います」
 そう言って、イレーヌはイレギュラーズ達に、小冊子を差し出した。どうやらこの島のガイドブックのようなものらしい。
「この島は、皆さんは初めてですよね。もしかしたらいらしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、一応ご説明したします。
 この島は無人島となっています。ですが、観光地的な開発はされているので、魔物などの危険性はありませんよ。
 人工的な設備は、ビーチ近辺のキャンプ場しか存在しません。此処で買い物をすることはできませんが、教会の者が色々と持ち込んできていますし、皆さんもなにがしかをご用意していることでしょう。私も、少々秘蔵のお酒などを用意しておりまして。星空を眺めながらいただくつもりです……ああ、これは部下の者には秘密にしておいてくださいね?」
 イレーヌはいたずらっぽく笑うと、口元に人差し指を立てた。
「さて、続いて、この島の名所を説明しましょう。
 まずは、なんといってもこのビーチです。見た目のすばらしさは、皆さんもすでに体感している所でしょう。
 白い砂浜。どこまで広がる、翠ともいえる海。透き通った海面からは、様々な魚や、サンゴなどが見えるでしょう?」
 言われたとおりに、透明な海からは、美しい景色が見えた。透き通った海の中には、カラフルな魚はもちろん、食べることのできる魚や貝、カニやエビの類も見えた。サンゴ礁の類もよく見えて、岩礁にはアメフラシがのんびりと歩いている。
「この辺りは海流も安定していますから、遠泳やダイビングも可能です……キャンプ場の方に、練達製のダイビング道具がありますから、使う事も出来ますよ」
 海の景色に目を奪われがちだが、砂浜も中々に雰囲気がよさそうだ。あちこちに自然素材を生かした休憩用のベンチなどが置かれているし、少し内陸に目を移せば、大きなヤシの身が果汁を湛えて揺れている。ビーチは広く、喧騒を離れて静かに過ごせる場所もあるに違いない。
「ビーチ以外ですと、ここから少し行った場所に、『青の洞窟』と呼ばれる洞窟があります。
 これはビーチのはずれから小舟を使っても入れるのですが、クリスタルを多く産出する洞窟でして、壁のあちこちにクリスタルが顔を出していて、洞窟内に入り込む陽光や、内部のヒカリゴケ等の光を反射して、蒼く光り、洞窟内を照らしています。このクリスタルの青の光が、洞窟名の由来ですね」
 イレーヌに促されてガイドブックを開くと、練達製のカメラで撮られたと写真が掲載されていた。イレーヌの説明通り、洞窟内を美しい蒼の光源が照らしている。壁のあちこちにはクリスタルが見受けられ、静かで、美しい雰囲気が、写真からも感じられる。
「内部は涼しく、涼をとるのにも良いですし……雰囲気のとても良い場所でもあります。仲の良い方と、二人きりで……と言うのもよいのではないでしょうか?」
 イレーヌの言葉通り、静かに、雰囲気よく過ごすのに適しているかもしれない。
「夕食の方ですが、バーベキューを予定しています。
 材料の方は、すべて用意していますので手ぶらで大丈夫ですが、目の前には海があります。
 皆さんが釣ったり獲ったりした魚や貝などを食べるのも、良いのではないでしょうか?
 ……それから、先ほども言いました通り、お酒の方も用意していますので、大人の方はよろしければ」
 キャンプファイヤーを囲んで、バーベキュー、と言うのが今日の夕食の予定のようだ。用意するものは何もなさそうだが、イレーヌの言う通り、何か自前で用意するのも悪くはあるまい。
「夜は、キャンプ場にテントやハンモックなどを用意しています。星空の下で、ごゆるりとお休みください。
 そうそう、キャンプ場の裏手には、温泉がありますから、そこで体を休めるのもいいと思いますよ。
 ああ、ちゃんと男女別に分かれていますから、そこはご心配なく」
 なんでもあるものである。とはいえ、温泉とは有り難い。勧められたとおりに温泉に入るのもいいし、キャンプ場でテントやハンモックに揺られながらのんびりしたり、友と語らうのもいいだろう。
「……と、言った所でしょうか。
 それでは、どうかご随意にお過ごしください。
 どうかこの島で、皆様の日頃の疲れが落とせることを」
 そう言って、イレーヌが微笑んだ。
 あなたはさっそく、今日一日をどのように過ごすか、考え始めた――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 サマフェスイベシナ、こちらでは幻想中央大教会開催の臨海学校の一日を過ごす場面が絵が描かれます。

●目的
 南の島を満喫する。

●できる事
 以下の様なロケーションと行事が存在ます。

【1】プライベートビーチ
 その名の通り、ビーチで遊ぶ、と言うロケーションになります。ちなみに、貸し切りですので、イレギュラーズと教会関係者以外にお客さんはいません。
 イレーヌの説明にもありましたが、透き通った海と、多くの魚たち、そしてサンゴ礁などのある美しい海です。
 波打ち際で遊ぶのはもちろん、遠泳やダイビング、ボートなどに乗ってみたり等、色々と遊んでみましょう。道具の類はすべて用意してありますし、自前の物を使っても構いません。

【2】青の洞窟
 島に存在する洞窟を探検します。探検と言っても、危険な事は一切ありませんのでご安心を。
 洞窟の中は、クリスタルが壁のあちこちに埋め込まれていて、幻想的な青の光が洞窟内を照らす、ロマンティックな場所です。
 洞窟からは、歩きで入る入り口と、小舟で入る入り口があります。クリスタルで照らされた洞窟を歩くのか、クリスタルの照明で照らされた水の上をボートで行くのかは、お好みで。

【3】バーベキューとキャンプファイヤー
 夕食の時間です! キャンプファイヤーを囲んで、新鮮な海鮮をつかったバーベキューとしゃれこみましょう!
 食材の類はすべて用意されていますので、手ぶらで食べに来てくださって大丈夫です。
 もちろん、差し入れなどは歓迎しています。目の前には海があるわけですから、自分で釣ったり獲ったりした魚や貝などを焼いてみるのもいいでしょう。
 お酒も提供されています。大人の方はどうぞ。

【4】穏やかな夜
 食後は、夜の休息の時間です。
 キャンプ場にはテントやハンモックが用意されており、のんびりと休むことができます。
 星空の下、テントやハンモックに寝っ転がって、仲間と語らうのもいいでしょう。
 なお、キャンプ場の裏手には温泉もあります。
 男女別に設置された露天風呂です。此処で疲れをいやすのもよいのではないでしょうか。

【5】その他
 島には、森やハイキングのできる山なども存在します。
 ……ストレートに言えば、無人島でできそうなことは何でもできるのです。
 何かアイデアがあれば、ここで楽しみましょう!

●プレイングの書式
 一行目:【行き先の数字】
 二行目:【一緒に参加するお友達の名前とID】、あるいは【グループタグ】
 三行目:本文

 の形式での記入をお願いいたします。
 書式が崩れていたり、グループタグ等が記入されていなかった場合、希望の個所に参加できなかったり、迷子などが発生する可能性があります。

プレイング記入例
【4】
【イレーヌの休日】
 そうですね、今日は少し息抜きとして。星空の下で、ワインを開けさせていただきましょう。

●同行NPC
 イレーヌ・アルエが同行しています。
 お声がけいただければ、皆さんのところへ参上いたします。

●諸注意
 基本的には、アドリブや、複数人セットでの描写が多めになります。アドリブNGと言う方や、完全に単独での描写を希望の方は、その旨をプレイングにご記入いただけますよう、ご協力お願いいたします。
 過度な暴力行為、性的な行為、未成年の飲酒喫煙、その他公序良俗に反する行為は、描写できかねる可能性がございます。
 可能な限りリプレイ内への登場、描写を行いますが、プレイングの不備(白紙など)などにより、出来かねる場合がございます。予めご了承ください。
 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングをお待ちしております。

  • <夏祭り2021>無人島のサマーホリディ完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2021年08月09日 22時05分
  • 参加人数35/∞人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 35 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(35人)

メープル・ツリー(p3n000199)
秋雫の妖精
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
優しき咆哮
サイズ(p3p000319)
妖精■■として
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
ミア・レイフィールド(p3p001321)
しまっちゃう猫ちゃん
クィニー・ザルファー(p3p001779)
QZ
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
霧小町 まろう(p3p002709)
その声のままに
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
ガーベラ・キルロード(p3p006172)
noblesse oblige
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
道子 幽魅(p3p006660)
成長中
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
エストレーリャ=セルバ(p3p007114)
賦活
ディアナ・クラッセン(p3p007179)
お父様には内緒
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
生イカが好き
シグレ・セージ(p3p007306)
海紅玉 彼方(p3p008804)
扇動者たらん
八重 慧(p3p008813)
歪角ノ夜叉
ノルン・アレスト(p3p008817)
願い護る小さな盾
ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)
ワルツと共に
溝隠 瑠璃(p3p009137)
ラド・バウD級闘士
黒水・奈々美(p3p009198)
パープルハート
エーミール・アーベントロート(p3p009344)
夕焼けに立つヒト
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)
想光を紡ぐ
アリス・アド・アイトエム(p3p009742)
泡沫の胸
ハク(p3p009806)
魔眼王
原田 幸村(p3p009848)
あやかし憑き

リプレイ

●オン・ザ・ビーチ
 照り付ける太陽。透き通った海。まっさらの砂浜。無人島のプレイべートビーチは、今まさに君達だけのものだ!

「本当に綺麗な海だね! ね、サンディ君。今日はいっぱい遊ぼうか」
 水着のシキは、そう言ってサンディに笑いかける。サンディはそれを直視することが出来なかった――顔がだらけてしまいそうだったのだ。
「おう、今日は遊ぶぜ……って、ちょ、シキちゃん! カニ追っかけてそっち行っちゃ危ないって!」
 慌てて追いかけるサンディと、気づいて笑いかけるシキ。二人はそのまま、波打ち際で海の生き物を探すことにした。
「ふふ、サンディ君、アメフラシが歩いているよ。どこに行くんだろうねぇ」
「うーん、誰かと遊ぶ待ち合わせかもな?」
「ふーん、こんな風に?」
 と、シキが突然、足元の水をすくってサンディにかけた。冷たい海水が、サンディを濡らす。
「わっ! ……くそっ、やったな?」
 くすくすと笑うシキへ、サンディはお返しと水をかける。それはすぐに水の掛け合いになって。気づけば二人ともびしゃび者になっていたけれど、二人の顔には笑顔がずっと浮かんでいた。アメフラシは、そんな二人を不思議気に見つめるように揺れてから、きっと大切なものに会いに再び歩き出した。

 でっかい酒樽の中に入り込んで、たるジョッキになみなみと注がれたビールを飲むヴァレーリヤ。
「ひゅー、乾杯でございますわー!
 マグタレーナも沢山飲んで下さいまし! 鉄帝では10杯が最低ラインですのよ!」
「はい!  乾杯と参りましょう。
 なるほど鉄帝流は剛毅なもの。郷に入っては郷に従うのが筋でしょうか……おや、ヴァレーリヤさん?」
 と、マグタレーナが気づいた時には、隣にいたはずのヴァレーリヤが消えていた。と言うのは当然のことで、樽にハマって遊んでいたヴァレーリヤは、そのまま転がって行って、海に浮かんでいるではないか!
「ああ! うまい具合に樽にハマって抜け出せませんわ! ヘルプ! ヘルプ!」
「ヴァ、ヴァレーリヤさん! 今参ります!」
 と、慌ててマグタレーナが救助に向かう。果たしてどうにかこうにか樽ごと引きずって海岸まで助け出すことに成功して、二人はふう、と安堵の吐息。
「有難う、貴女は命の恩人でしてよ! 感謝の気持ちを込めて、もう一度呑みましょう!」
「それは良いのですけど……こう、抱き着かれてしまうと身動きが。それに水際は危ない……あーれー」
 そのままの勢いで再び海の中へと転がっていった二人を助けたのは教会のライフセイバーで、救助された後めっちゃ怒られたようだ。
 とはいえ、楽しくお酒は飲めたので、よし!

 ビーチに建てたパラソル。敷かれたシートの上に座りながら、セージとディアナは海を見ている。
「……これ、返すわね。ありがと」
 と、ゆっくりと脱いだのは、セージのパーカーだ。脱ぎながら、少し震える手。黒いフレアタイプの水着を隠すように身を包んでいたそれを、セージはこともなげに受け取った。
「どういたしまして、珠の肌を護れてこいつも満足だろう……ほぅ……今年はまた一段と良いな……」
 あらわになった水着姿に、素直に称賛の声をあげる。ディアナは安心したように息を吐くと、
「少し待ってて頂戴ね。日差しを浴びるから日焼け止め塗らなきゃ……」
「ああ、なら背中は塗ってやるから、ほら」
 と、セージが言うので、ディアナはあわあわと口をパクパクさせた。だ、しばしの逡巡の後に意を決すると、シートの上にゆっくりと寝そべる。
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
 そう言って、ゆっくりと深呼吸。
「はいよ」
 気にしないように言うセージ。動揺を隠せないディアナは可愛らしく思いながら、しかしセージだって、日々成長していくディアナを意識してしまうのは事実だ。
 そんな思いを楽しみつつ……二人だけの時間は過ぎていく。

 そして白い砂浜では、陽光を感じながら、ノルンとアリスがゆっくりと歩いている。ノルンは少しだけ恥ずかし気に顔を伏せながら、
「えっと……水着、なんですけど……可愛くて、とても似合っていると、思います……」
 アリスの水着、あらわになった肌などを意識しない様に気をつけながら、そう言うノルンに、アリスは微笑んだ。
「アリス……かわいい……? ……嬉しい……!!」
 その笑顔が可愛らしくて、ノルンはまた慌ててしまった。それから何とか絞り出した言葉が、
「えっと、せっかくですし、泳ぎませんか? 透き通っていて、とても気持ちよさそうですよ!」
 水に入れば、きっと身体も隠れるだろう、との提案だったが、アリスはうんうんと頷いた。
「いいよ……! でも、もっと水着……見て欲しい……かも……。
 ……それに、ノルン……水着……かっこいい……。
 初めてあった時より少し……逞しくなった……ね……。
 すごく似合ってる……」
 恥ずかしそうにそう言うアリスへ、ノルンは顔を赤らめて、あわあわと慌ててしまう。アリスは、そんなノルンの手をゆっくりと握って、えへへ、と笑うと、
「海……いこう?」
 と誘う。ノルンは頷くと、一緒にゆっくりと、海へと向かって歩き出した。

●ブルー・ケイブ
 ひんやりとした洞窟。その壁にはあちこちにクリスタルが顔を出していて、僅かにさす陽光や、ヒカリゴケのような光がクリスタに反射して、美しい蒼のイルミネーションを描いていた。
 その神秘的な空間に、君達は足を踏み入れる。非日常的な光景が、君達の心を穏やかな気持ちにさせてくれるだろう。

「まぁ、素敵ね。フィニクス、おいで?」
 フルールは真紅の大精霊にそう声をかける。赤の鳥がゆっくりと羽ばたくのへ微笑みながら、フルールは洞窟を歩いた。
「こつ、こつ、って音が響くのね。反響かしら? 意外と騒々しいのね、洞窟って」
 頷くように、フィニクスが羽ばたいて見せる。その音も洞窟は反響するように感じて、フルールは笑った。
「一緒にここを歩きたかった人は、今頃どこで眠っているのかしら……?
 きっと良い夢を見ているのでしょうね。その夢に私は出てくるのでしょうか……出てきたら嬉しいですね」
 蒼の光に思いを透かすように、フルールはクリスタルを見た。青い光は穏やかに、フルールとフィニクスを照らしていた。
「フィニクス、もっと先へ行きましょうか。最後まで歩いたら、どこに辿り着くのでしょうね」
 そう言って、フルールは歩を進める。その道の先に何があるのか、まだわからない。

 ――水をたたえる洞窟。海から入ることのできるそこは、透き通った海水と、天井のクリスタルが世界を照らす、まさに青の空間だった。
「きれいね、違う世界に来たみたい」
「うん。本当。まるで、水の中みたいだね」
 ソアとエストレーリャはボートの上。背中から、ソアを抱くエストレーリャ。お互いの体温を肌で感じながら、水の中のように静かな青の世界に身をゆだねている。
「少し、寒いかな?」
 ソアがゆっくりと、身をゆだねるのへ、エストレーリャが言った。
「それにひんやりする」
 頬をエストレーリャの肩に寄せる。温かな体温。貴方の生きている証。
「エストは寒くないの?」
「こうしたら、寒くない?」
 エストレーリャは舟をこぐ手を止めると、ソアを優しく抱き留めた。ソアは目を細めて、エストレーリャの頬に自分の頬をくっつける。エストレーリャはソアの耳元に唇を近づけると、
「まだ、さむい?」
「まだ寒いかなー……もう1回聞いて?」
 耳をぴくぴくとさせながら、ソアが言う。エストレーリャは微笑んで、もう一度、耳元にと息を吹きかけた。ソアがびくっと耳を震わせて、尻尾をエストレーリャの足にまきつける。
 このまま一つになりたくなるくらいにくっついて、青の世界に、二人は浮かんでいる。

「なんて綺麗なんでしょう……。
 水晶が水面と反射しあって、星が緩やかに踊るよう」
 まろうが呟くのへ、一生懸命にボートを漕いでいたクィニーが声をあげる。
「まろうさんの水着姿の方が綺麗だよ!」
 セクシーだとか、でもおしとやかさもあるとか……色々考えていた褒め言葉は、青の世界に飛んで行ってしまって、何とか出した言葉は平易なものだったけれど。
「えへ……ありがとうございますっ」
 その言葉が、とても嬉しい。
「QZさまも! とても水着がお似合いで、私、その、どきどきしてしまって……」
 例えば、一緒に温泉に入った時よりも。身体を飾る水着が、クィニーの美しさをさらに際立たせているように感じて。
 抱きしめてくれた時の温かさまで、思い出してしまうようで。
「……ふ、ふふふっ」
 ふいに、クィニーは笑った。
「私達、せっかく青の洞窟に来てるのに、
 お互いのことしか見てないじゃん‪──‬」
「……ふふっ、そうですね」
 それはそうだろう。
 愛しい人が、すぐ隣にいるのならば。
 どんな美しい景色だって、その人のは行けになって、霞んでしまうだろうから。

「ほわぁ……」
 きらきらと光る青。きらきらと光る湖。
 仄かに光る青の世界を、タントとジェックは、同じボートの上で見つめていた。
「綺麗……」
 呟いて、ジェックは水面に手を伸ばす。水と一緒に、このきらきらも掬えそうで。掌の水に光る青の光は、手から水がこぼれるのに合わせてゆっくりと流れていく。それすらも神秘的に思えた。
「……そうですわ! ジェック様、もっと奥へと参りましょう!」
「奥へ? いいけれど……?」
 何かを思いついた、と言うタントの顔に、ジェックは小首かしげつつ、頷いた。奥へ。奥へ。光が届かなくなるくらいに。わずかなヒカリゴケの光の実があたりを照らす、青の闇。その中へ――。
「これくらいで良いですわね。ジェック様、お待たせ致しましたわ。どうぞご覧あれ!」
 と、タントはボートの上に立つと、両手を上に上げた。途端、タントの身体が光り出して、周囲のクリスタルを一気に輝かせる。
 それは、先ほどまでのひんやりとした後とは違う、どこか温かみのある青だった。タントの青の光だ、とジェックは思う。
「凄い……さっきよりもずっと、綺麗……!」
「わたくし達だけの特別な‪──‬文字通りの、“光景”。
 お気に召して頂けましたかしら、ジェック様!」
 タントが笑う。温かな青の中で。
 ジェックも微笑う。タントの光の中で。
 二人占めするのがもったいないくらいの、光の中。でも、これは二人だけのもの。他の誰も触れない、二人だけの光。
 それを決して放さないように、手の中に閉じ込めるみたいに、ジェックは瞳を少しだけ閉じて、その光景を焼き付ける。
「……素敵な光景をありがとう、タント」
 そう言うジェックに、タントは太陽みたいな笑顔で笑うのだった。

「んーっ、外よりもやっぱりこっちのほうが涼しいねっ。なんだかすごい綺麗だし……」
 リトル・リリーがそう言うのへ、カイトはボートを漕ぎつつ笑った。
「いい所だよな。青い光が反射して、水の中みたいで……でも、少し寒くないか?」
 そう尋ねる二人とも、水着を着ている。だから、気温の下がったこの洞窟は、少し肌寒く感じたかもしれない。でも、寒いか、と聞いたのは、それだけが理由ではなかった。それに気づいたリリーは、クスッと笑って、
「……なんだかちょっと寒いかも……ねっ、ぎゅーっと……して?」
 ボートは人目につかない陰にあって、二人を邪魔するような無粋なものは何もなかった。カイトは、リリーをふんわりと、自分の胸に抱いた。それから、羽毛に包み込む。
「あったかい……えへへ、ずーっと、ずーっと一緒に居ようね、カイトさんっ♪」
 屈託なく笑うリリーに、カイトは頷いた。
「へへ、リリーを離すつもりはねぇからな! ずっとだ!」
 そう言って、ゆっくりと、唇を近づける。
 ふわふわと漂うような青いクリスタルの光は、二人を蒼言う水の中に包み込むように淡く光った。その中で抱き合う二人は、お互いの体温を感じながら、この時がいつまでも続くようにと想いあった――。

「うおおおお! どうだい、フラン!? 気持ちいいかぁ!?」
 と、ばしゃばしゃと青の洞窟の湖の中を泳ぐのは、ワモンだ。その背にはフランが乗っていて、時折顔にかかる水しぶきをくすぐったそうにぬぐいながら、楽しそうに笑った。
「あはは、すっごく! でも、振り落とさないでね? あたし泳げないからね!?」
「わかってらい! 今日のオイラは運搬仕様だからな!」
 ゆっくりと湖を旋回する。きらきらと輝く青の光が、星降る様に水に反射して、きらきらと輝いている。
「わぁ……手ですくってみたら消えちゃうのが残念だけど、ここでこその光景なんだよね。
 正直、無人島って迎えの船が来なくて無人島で殺人事件が―! とか思っちゃったけど、いい所なんだねぇ」
「そいつは小説とかの読み過ぎだよ……でも、フランが楽しそうで何よりだ。
 そうだ、一緒に水の中に潜ってみるかい? きっと、水の中から見るきらきらも、すごい綺麗だと思うぜ!」
 ワモンの言葉に、フランは一瞬、驚いて、悩んだような顔を見せつつ、うーん、と唸った。
「み、水の中は溺れそうで怖くない!? でも、見てみたいし……いざとなったらワモンさん掴むね!」
「おう! 大船に乗ったつもりでいてくれよ!」
「うん……じゃあ、ダーイブ!」
 ぎゅっ、とワモンを掴むフラン。ワモンはそれを確認してから、一息に湖の中にもぐりこんだ。
 そこは、まるで宇宙に来たみたいに、あちこちに光の浮かぶ空間だった。水の中の宇宙が二人を包み込んで、祝福を告げるかのようだった――。

●ビーチ・バーベキュー
 さて、夕暮れ時のビーチには、あちこちからおいしそうな香りと、炎が上がる。
 バーベキューとキャンプファイヤーによる夕食の時間だ。

「ゆみ、ゆみバーベキューよ!
 BBQと書いてバーベキュー!
 不思議な気分ね……。
 アストラークゲッシュの世界では良く遠征訓練でやったものだけれども」
 と、レジーナが笑う。目の前の網には、多くのお肉が置かれていて、レジーナは目を輝かせて、それが焼きあがるのを今か今かと待っていた。
「バーベキューなんて……初めて……」
 と、幽魅が言うのへ、レジーナはあら、ときょとんとした顔をした。
「あら、ゆみはバーベキュー初めてなの?
 ならやり方を教えてあげるのだわ!
 いい、網の上は戦場なのよ。食べるか、食べられるか。己の陣地を守り、敵の陣地を刺す! 戦果であるお肉は勝者だけのものなのだわ!」
 と、トングでお肉を取り皿に分けるレジーナに、幽魅はジト目を返した。
「レジーナさん……お肉ばかり……食べちゃ……いけませんよ……?
 しっかり……お野菜も……食べて……ください……」
「うっ……わ、わかっているのだわ。
 ……それより」
 と、どこかとろん、とした瞳でレジーナが言う。よく見れば、近くには果実酒の入ったグラスが合って、どうやら酒に酔っていたらしい。
「ゆみー?
 水着可愛いわねぇ。
 流石我(わたし)のゆみねぇ。
 でも男に見せちゃダメよ?
 すごーく大変な事になるからー」
「れ、レジーナ……さん……!?
 悪酔い……? わ、私より……お酒に……弱いなんて……!
 男性は……私なんか見ませんし……?」
 と、わたわたと慌てる幽魅。すっかり出来上がったレジーナに、しばらく絡まれたようである。

「うう、昼間はひどい目に遭ったわ……!」
 と、ぱっつぱつの白いスク水を着て、魚介を焼いている網の前に座り込んでいるのは奈々美だ。どうやら頼み込まれてサイズの合わない水着を着せられて、あまつさえ写真撮影までされたらしい。お嫁にいけない。
「むー、嫌なことがあったです? せっかくのキャンプファイヤー、楽しまないとダメなのですよ!」
 と、浴衣姿のハクが、綿あめなどを齧りつつ言う。
「あっちに、教会の人が屋台を立ててくれてるのです。それに、ここでも色々魚介を焼くのですから、沢山食べて忘れるのですよ!
 一緒に食べるのです!」
 そう誘うハクに、奈々美は頷いた。
「そ、そうね……こうなったら、やけ食いするんだから……!
 所で、屋台とかあるのね……ラーメンないかしら……?」
 きょろきょろとあたりを見回す間にも、網の上の貝や魚が香ばしく焼けていく。
「お、皆始めてるっすね。差し入れっすよ」
 そう言って慧が持ってきたのは、魚籠に入った沢山の魚たちだ。
「す、すごいわね……釣ったの?」
 奈々美が尋ねるのへ、
「ええ、海釣りは初めてでしたけど……こういうの、ビギナーズラック、って言うんすかね?」
「わぁ、すごいのです! さっそく焼くのですよ!」
 と、ハクが飛び跳ねるのへ、
「いや、まずは下処理してからっすよ」
「おっと、じゃあ下処理は俺も手伝いますよ」
 と言ったのはエーミールだ。
「捌いたりするのなれてますからね。何ならちょっと味付けとかも。料理はそこそこにできます」
「おお、助かるっすよ。じゃあ、手伝いお願いできるっすか?」
 慧が言うのへ、エーミールが微笑した。
「もちろん……ああ、良かったら、終わったらいっぱい付き合いませんか? いいウイスキーがあるんですが」
「お酒か……自分は弱いからなぁ……」
 雑談などしながら、手早く処理していく。果たして釣り上げ打ばかりの魚は綺麗に調理されて、網の上に乗った。
「わぁ、すごい豪華ですね。バーベキューってこんなに楽しいんだ!」
 と彼方が笑う。それからみんな、大いに料理を楽しんだ。皆明日の体重計が不安になるほどだったが、まぁ、今のところはそれを忘れてもいいだろう。
「そう言えば、マシュマロとか、チョコとかクラッカー持ってきたんですよ。キャンプファイヤーって言ったら、こういう感じでしょ?」
 エーミールが言うのへ、頷いたのは、その瞳を紅に変え、アイドルとなった彼方だ。
「うん! あと、バーベキューと言ったら歌も! えへへ、と言うわけで、一曲歌います。
 よかったらみんなも、一緒に歌お!」
 と言って、皆を巻き込んで、
「え、ええっ、あ、あたしも……?」
「あはは、よーし、ハクも歌うのです!」
「う、歌っすか? カムイグラので良ければ……」
「ちょ、ちょっと気恥しいですね……でも、せっかくですからね」
 みんなそれぞれの想いはありつつ、結局はみんなで歌声をあげた。
 キャンプファイヤーの炎に乗って、歌声は天にまで昇っていく。
 仲間達の絆を湛えるように、星と炎は、煌々と輝いていた。

●ナイト・ブレーク
 そして、食事も終えて夜。
 無人島の静かな夜は、遊びにつかれた君たちを、穏やかに包んでくれていた。

「オーッホッホホ! なかなか良い温泉ですわね!」
 と、温泉につかるのはガーベラだ。その服装は、大胆なマイクロビキニだが、自身の身体を見つめて、顔を赤らめてしまう。
「……しかし……我ながらこの水着……大胆すぎに攻めてしまったかしら……?
 この……マイクロビキニという水着……知人からは絶対似合うと言われ着ましたが……その露出度が……」
 それに、お腹を触ってみれば、そこには傷跡が見える。この傷跡を、人目にさらすような服を着る事なんて、今まで考えられただろうか。
 それはきっと、あの人の……愛しい人のおかげなのだ。
「あの人は……この姿を見たらなんて言ってくれるかしら」
 期待に胸を躍らせつつ、しかし今はその身を温泉にゆっくりと鎮めるのであった。

 温泉上がり。ハンモックに揺られて、ミアとリディアは夜風にあたっていた。
「ふにゃあ……夜風が気持ちいい……の♪
 ……にしても……。
 温泉でも思ったけど……リディア……ずいぶん成長した……にゃね」
「……温泉で随分と胸に視線を感じてたけど、胸はミアちゃんも育ってると思うの」
 苦笑するリディアに、ミアはぷー、と頬を膨らませた。
「うにゃー……それでもミアのが負けてる……のっ!
 4年前はクマパン履いてる……お子様だったのに……にゃ!
 ミアにちょっとよこす……のっ!」
「く、くまパンは別にいいでしょ?! くまさん可愛くて好きだし……って、耳にフーッて息吹きかけないで……! っ、やだっ……!」
 くすぐったそうに身をよじるリディアの身体に抱き着きながら、ミアはリディアの耳をくすぐる様に息を吹きかける。
「も、もう! ミアちゃんみたいな我侭さんはこうだよ?」
 と、今度はリディアの反撃の時間だ。頭や耳を優しく撫でると、ミアはふにゃー、と声をあげて、たちまち脱力してしまった。
「ふにゃんっ!?
 ……にゃあ……ミアもお耳弱いの……にゃ……。
 ……気持ちい……の……ごろごろ……にゃー……。
 もっと頭……なでるの……しゃちょーめーれー……」
 と、その言葉の途中で、すやすやとミアは寝息を立て始めた。リディアは優しく笑いながら、同じハンモックの中、ミアを優しく抱き留めた。



「うーん……パンドラが減ってないのに休息をとるのも、なんだかそわそわしちゃうな……」
 ハンモックに寝転がり、サイズは夜空を見上げる。
「妖精武器としてはガンガン働きたくはあるけれど……こういう休息もいいのかな」
 穏やかな風と、心地の良い波音。働きたい気持ちはあれど、こう言った環境に置かれていては、サイズもうとうととするものである。
「……あ、サイズさんだ……おっと」
 と、メープルが口をつぐんだ。眠っているサイズを起こさないように、という配慮だったけれど、うとうととしてはいたものの、サイズも眠ってしまったわけではなかったから、メープルがやってきたことに気づいていた。
「メープル? よかったら、一緒に寝るか? このハンモック……人間用の大きさだから、妖精二人分くらいなら余裕で入るだろう……?」
 と、寝ぼけ眼でそういうのへ、メープルはくすくすと笑った。
「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな?」
 メープルが、ハンモックに降り立って、サイズの隣で横になる。その体温を感じながら。
(あれ? これよく考えたらかなりアレな提案では……?)
 と、急速に意識が覚醒していくサイズなのであった。

 原田 幸村が一人テントの中で「いやぁ、勇気を出して瑠璃ちゃんを誘ってよかったなぁ! 昼間もいっぱい遊べたし……これでもっと瑠璃ちゃんと野中が深まれば……!」とワクワクしてたところ、テントの扉がゆっくりと開かれた。びっくりして覗いてみれば、そこにいたのは、艶やかな水着を着て、妖艶な笑みを浮かべる瑠璃――その姿は、まさに夢魔の類に見えた。
「ど、どうしたの急に!? というか瑠璃ちゃん…そのえっちな水着と悪魔っぽい格好は!?」
「ふふ、分かってるくせに」
 と、上目遣いでうるんだ瞳で、瑠璃は幸村へとしなだれかかった。
「原田君は僕の事好きなんだよね……原田君ならいいよ……僕の事好きにして……?」
 はぁ、とため息をつく瑠璃。幸村は顔を赤らめて、ぐるぐると思考を巡らした!
(ええっ!? 急にどうしたのこれなんなの!? っていうか、いいよ、好きにして、ってえ? いいの? 本当に? これって大丈夫? このゲーム全年齢だよ? いや、何を言ってるんだ俺は!? こ、これは、これは一体――!?)
 と、そこまで考えたところで、幸村は限界を迎えた! 激しく鼻血を拭きだすと、そのまま意識を失ってぶっ倒れたのだ!
「え、ええ……こ奴、事を起す前に鼻血出して倒れおった」
 さすがに困惑する瑠璃……いや、夢魔。とはいえ、これはこれで良い。気を失っているうちに精気を吸い取ってしまおう……。
 ……が、気づけばテントの端に、八尺ほどの女性が立っていることに気づく。それは幸村にとりついている夜妖であり、守護霊のような存在だった。
「……そう言えば、お主がおったか……」
 ばちばち、と両者は視線をぶつけ合う。かくして二人の戦いは朝まで続き、幸村には何事もなかったのさ!

 行人とアントワーヌは水着のままテントに寝転がって、窓から夜空を見つめていた。
「変じゃないかな? 大丈夫……かな?」
 そう尋ねるアントワーヌは、髪をおろした姿を誰かに見せるのも、水着になるのも初めてだったから、恥ずかしさと不安があった。それを行人は、
「うん、アントワーヌ……綺麗だよ。大丈夫、自信を持ってくれ」
 そう言ってほほ笑むので、アントワーヌは少し顔を赤らめて、そのままテントの床に寝転がった。
「……テント、初めて使ったけど。思ってたより狭いんだね」
「そうだな。でも、その方がいいんじゃないかな?」
 優しく手を握ると、アントワーヌもゆっくりと手を握り返した。
 窓から覗く星々が、二人を照らす。水着でテントで寝っ転がっている、なんだか非日常的な感じに、行けないことをしているようでドキドキする。
(恥ずかしそうか……そりゃそうだよな。テントで良かった。彼女に勇気を強いることになる)
 行人はそう内心で思いつつ、少し顔を赤らめて空を見るアントワーヌを見た。
(さて、こうも近いと、流石に意識せざるを得ないが……ま、こんな時でもスマートに、ってね)
「行人君、星が綺麗だよ。今日は朝まで一緒に居ようね、私のお姫様」
 そう言うアントワーヌも、行人のことを意識してしまってしょうがない。お互い、お互いを意識しながら、しかしそれを悟られないようにしている。
「……星も良いけど、今日は勇気を出した君を見ていたい、かな」
 そう言ってほほ笑む行人に、アントワーヌは驚いたような顔を見せてから、顔を赤らめた。

 夜は更けていく。
 やがて辺りは静まり返って、皆が夢の中へと落ちていく。
 無人島のバカンスが、皆の活力と、生きるための糧になる事を。
 星々も、青のクリスタルも、願うように輝いていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 よきひと夏の思い出は出来たでしょうか?
 また来年、こうして皆で楽しめますことを。

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