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シナリオ詳細

<シトリンクォーツ>星空と謳う鉄乙女

完了

参加者 : 72 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――シトリンクォーツを知っていますか?

 そう口にしたのはギルド『ローレット』に所属する『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。
 偉大なる情報屋であった故エウレカ・ユリカの愛娘である彼女の情報はまだまだ不完全なものも多いが、今回の情報確度はSS級だ。
「シトリンクォーツって宝石の名前なのですけどこの時期に混沌世界に咲く黄色い花に由来しているのですよ。
 その花が咲く頃に豊穣とこの一年の幸福を祈って勤労に感謝する一週間があるのです。
 ローレットに来て皆さんはたっくさんお仕事をして下さってますから、その働きに感謝して旅行に行ってみてはいかがでしょうか?」
 旅人の誰かは『ゴールデンウィーク』と『勤労感謝の日』が混ざったような期間だと口にした。
 ユリーカは「そういうものがあるのですね?」とこてりと首を傾げて、楽しんできてくださいねと小さく笑った。


 混沌世界の北方に位置する鉄帝は春先といえどほんのりと雪化粧が残っている。夏が近づけば完全になくなってしまうのだろうが、まだまだ、肌寒さが残って居る頃なのだろう。
 大闘技場ラド・バウはシトリンクォーツでも盛況だ。闘技場観戦も鉄帝の観光には打って付けだが夜になれば、シンと静まり返るその場所への誘いをローレットへと齎したのはラド・バウのアイドルとして名高い女戦士『パルス・パッション』その人だ。
「チャオ! ボクから皆へのお誘いは何時以来かな? シャイネン・ナハトの時か!」
 大きな瞳に期待を込めて、蝶のように華麗に舞う女戦士は思い返したように両手を打ち合わす。
 結い上げた桃色の髪を大袈裟な程に揺らし「流星群が来るの」と彼女は楽し気に告げた。
「鉄帝は寒いけれどね、空がとっても澄んでいるのよ。
 シトリンクォーツの夜にボクはファンのみんなにコンサートを開くんだけど、偶然にもね、流星群の日と重なったのよ」
 蒸気機関と歯車に囲まれ、鉄騎種の街としてのイメージにも合致するその硬質的な街並みに振る星は美しいだろう。
 シトリンクォーツの祭りの気配に闘技場の外にもバーやレストランが遅くまで営業しているのだという。
「ふふ、折角だからボクのコンサートチケットをどうかしら?
 鉄帝の街を旅行してみるのだっていいと思うわ。ローレットのユリーカから聞いてるわよ? シトリンクォーツを全力で楽しむのでしょ?」

 それならば『鉄帝』の夜で過ごしてみるのはどうだろうか。
 パルスのコンサートの観客として参加するのもありだ。彼女はラド・バウでも人気の高い戦士であり幻想でもその名を聞く事もある。
 コンサート会場となるラド・バウの出店を回る事や中々入ることのできない内部の探検も今回はパルスが手筈を整えている。
 流星群をラド・バウから見る事も出来るが、鉄帝の街並みと共に楽しむ事も出来るだろう。
 シトリンクォーツに合わせてレストランやバーも営業し、星降る夜を待ち望んでいるのだという。
「折角よ。皆で鉄帝を楽しみましょ? 戦士にも休暇が必要なの。
 それって、ボクもそうだけど、勿論、キミ達にも――ね?」

GMコメント

季節は廻れど、夏あかねです。よろしくお願いいたします。

※重要※
<シトリンクォーツ>の冠を有するイベントシナリオには1本しか参加することができません。
当シナリオに参加した場合、他<シトリンクォーツ>シナリオには参加することができませんのでご注意ください。
※ご同行者がいらっしゃる場合はお名前とIDではぐれないようにご指定ください。グループの場合は【タグ】でOKです。

●鉄帝(ゼシュテル鉄帝国)
 無辜なる混沌の『大陸』の北部に位置する軍事帝国です。国土の大半が厳しい気候に晒されています。
 大闘技場ラド・バウを有する武力を愛好する国民性が特徴的な国家となります。
 本シナリオは楽しい旅行シナリオとなりますので有力者(皇帝等)と出会う事は出来ません。

●大闘技場ラド・バウ
 闘技大会の終了したラド・バウにてパルス・パッション(鉄帝にて人気の女戦士)のコンサートライブが開催されます。
 闘技大会が終了したのち出店とステージが準備され、普段は戦士のみ入る事が赦される闘技場内部に観客が入ることできます。
 パルス自身はライブ中はステージに居ますがライブ開始前、ライブ終了後はファンサービスとして周囲を歩き回っています。
 (ライブに突如として乱入OKです。パルスは楽しいことが大好きです)

●闘技場周辺市街地
 歯車と蒸気機関と雪化粧が特徴的な街並みです。スチームパンク風の街と称するのが分かりやすいかもしれません。
 文明レベルは機械的には発達していますが練達等とは違いデジタルには疎いようです。
 春先ではありますが少しの肌寒さを感じますので注意が必要です。
 レストランやバー等が軒を連ねる市街地では鉄帝での料理を味わう事が出来ます。酒は度数が強いものばかり。ウォッカ等々。
 うっかり酔いつぶれてしまうかもしれませんね?
 (お料理に関しましてはお気軽に『こういうの食べたい!』とお申し付けください)

●流星群
 その星々を何と呼ぶのかをパルスは知りませんが流星群が訪れます。
 美しい星を見ながらラド・バウでコンサートに参加するもよし、出店を回るもよし、市街地を散歩することは料理を食べることも善しです。

●NPC
 当シナリオにおいてはNPCはお名前を呼んでいただけましたら登場する可能性がございます。
 ステータスシートのあるNPCに関しては『ざんげ以外』でしたら登場が可能となります。
 鉄帝有力者は今回は登場致しません。
 ステータスシートが無く、声をかけることのできるNPCは以下二名+1匹

 ・パルス・パッション
  本イベントの主催者。獣種のフェンサーとして戦う女戦士兼ラド・バウのアイドルです。ファンが多数います。

 ・ビッツ
  鉄帝の街でお散歩しているラド・バウの戦士。鉄機種のオネェさんです。性格は気安い感じがしますがその戦闘は狡猾だと噂されています。

 ・パカダクラ
  主にラサや鉄帝に生息するパカダクラというアルパカとラクダが混じったような奇妙な生物が荷運び係りでいます。乗れます。
  鳴き声は「ダカァ~~」というニュアンスですがあまりいい声ではありません。ダカァ~~。

●重要な備考
 本シナリオは返却締切を『15日』で運営します。
 予めご了承の程をお願いいたします。

 それでは、楽しい休日をお過ごしください。
 皆様の冒険をお待ちしております。

  • <シトリンクォーツ>星空と謳う鉄乙女完了
  • GM名夏あかね
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年05月18日 21時25分
  • 参加人数72/∞人
  • 相談10日
  • 参加費50RC

参加者 : 72 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(72人)

スウェン・アルバート(p3p000005)
最速願望
夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
ラノール・メルカノワ(p3p000045)
夜のとなり
グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
勇者と生きる魔王
エーリカ・メルカノワ(p3p000117)
夜のいろ
ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
奥州 一悟(p3p000194)
彷徨う駿馬
如月 ユウ(p3p000205)
浄謐たるセルリアン・ブルー
レオン・カルラ(p3p000250)
名無しの人形師と
ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
巡離 リンネ(p3p000412)
魂の牧童
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
キミと、手を繋ぐ
銀城 黒羽(p3p000505)
那木口・葵(p3p000514)
布合わせ
エリック=マグナム(p3p000516)
(自称)海の男
シェンシー・ディファイス(p3p000556)
反骨の刃
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
シエラ・バレスティ(p3p000604)
バレスティ流剣士
ケント(p3p000618)
希望の結晶
世界樹(p3p000634)
 
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
リノ・ガルシア(p3p000675)
宵歩
モモカ・モカ(p3p000727)
ブーストナックル
恋歌 鼎(p3p000741)
尋常一様
シャロン=セルシウス(p3p000876)
白い嘘
グレイ=アッシュ(p3p000901)
灰燼
カタリナ・チェインハート(p3p001073)
美麗ディストピア
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
刀根・白盾・灰(p3p001260)
煙草二十本男
サングィス・スペルヴィア(p3p001291)
宿主
レーグラ・ルクセリア(p3p001357)
宿主
ブラキウム・アワリティア(p3p001442)
宿主
ストマクス・グラ(p3p001455)
宿主
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
獅子吼 かるら(p3p001918)
多重次元渡航忍者
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
ルシフェル・V・フェイト(p3p002084)
黒陽の君
セシリア・アーデット(p3p002242)
治癒士
セレネ(p3p002267)
Blue Moon
タルト・ティラミー(p3p002298)
あま~いおもてなし
アリソン・アーデント・ミッドフォード(p3p002351)
不死鳥の娘
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
ニル=エルサリス(p3p002400)
瀬川 商業㈱(p3p002666)
オール・オブ・マイ・ビジネス
レグルス・ワンフォーオール(p3p002733)
獅子座の残光
マリス・テラ(p3p002737)
Schwert-elf
ライセル(p3p002845)
Dáinsleif
レウルィア・メディクス(p3p002910)
ルゥネマリィ
フルオライト・F・フォイアルディア(p3p002911)
白い魔女
アベル(p3p003719)
失楽園
ヴィエラ・オルスタンツ(p3p004222)
特異運命座標
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
Morgux(p3p004514)
暴牛
ニゲラ・グリンメイデ(p3p004700)
特異運命座標
黒紅 あまね(p3p004706)
浅蘇芳の烏
オーガスト・ステラ・シャーリー(p3p004716)
石柱の魔女
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ジェーリー・マリーシュ(p3p004737)
くらげの魔女
ウィルフレド・ダークブリンガー(p3p004882)
深淵を識るもの
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
銀(p3p005055)
ツェペシュ
鏡月 神威(p3p005104)
輝夜
小鳥遊・鈴音(p3p005114)
ふわふわにゃんこ
ティリー=L=サザーランド(p3p005135)
大砲乙女
レイルディア=F=エクシヴ(p3p005183)
特異運命座標

サポートNPC一覧(2人)

パルス・パッション(p3n000070)
アイドル闘士
ビッツ・ビネガー(p3n000095)
Sクラスの番人

リプレイ


 流れる星に願いを込めて。
「うおー! パルスちゃんかわいいよパルスちゃん! 」
 熱狂の中をスウェンは往く。少しずつ故郷に帰ることができて嬉しい傍ら、戦士としてこのゼシュテルで闘技大会に出ていたことを思い出してはどこか切なささえ過る。
 手にしたワッフルとコーラ。彼女は元は同僚だった――その頃からこうして行われていたライブが今は普通の観客として楽しむというのは不思議な感覚だ。
 パルスのライブを見上げながらオリーブは鎧と剣を携えた儘、喧噪の中に居た。鉄帝の地方で育ったオリーブにとってパルスは間近で見ることのできない『スーパースター』だ。
 興奮の中「パッションさん!」と呼びかければパルスは舞台の上からぱちりと一つウインクを飛ばす。
 今日はアイドルパルス・パッションのライブだと楽しみにしていたジェーリーもライブのMC中のパルスの指名を受けて柔らかに微笑む。
「お会い出来て嬉しいわ! おばあちゃんだけど……あなたの事応援したいと思っていたの!
 歌の力はとても素敵よ、皆に力を与えてくれるわ。私はちょっと歌えなくなってしまって。
 だからあなたがとても羨ましくて……これからも頑張ってちょうだいね!」
「勿論、じゃああなたの分までボクが歌ってあげるわ!」
 謳うパルスを見上げてハイデマリーは軍人としての業務を全うするとステージ警備を行っている。
 しかし胸中には渦巻く思いがある――パルス・パッションという戦士に何れ勝つという事だ。弱くなり果てた自分を彼女が記憶しているか……それさえ怪しいかもしれない。
 ぱちり、と視線が克ち合う。何時もの通りのスマイルを浮かべたパルスが手をひらりと振っている。
「警備ありがとー! ボク、ライブ、頑張るからね」
「――……ええ」
 パルスのコンサートが楽しみだとモモカはそわそわと体を揺らしている。戦うパルスを見たことが有っても歌うパルスを見るのはモモカにとっては初めてだ。
「戦うだけじゃなくて、こんなふうにステージで魅せることもできるなんてほんとすごいぞ!」
「そうね! だからこそ私はこうするわ!
 白銀の聖夜以来ね、盟友!随分楽しそうだし、私も混ぜなさいな! 」
 舞台の上へと飛び込んでアリソンはぱちりと一つウインクを見せる。アイドルとして――ローレットに声をかけてくれる依頼人としてしかまだ彼女を知らないアリソンは何時の日か普通に遊んだり、闘技場で彼女の闘いを見れればと願っている。
 火柱を立てて情熱的なアイドル衣装で登場したアリソンの声かけにパルスはぱちりと瞬き笑みを溢す。
「いいわ、 シトリンクォーツの花を咲かせましょう!」
 ライブに乱入可能? と一悟はそわそわとライトを振り続ける。バラードオンリーだったらどうしようかな、なんて考えていたがパルスの持ち歌は種類が多い。
 その中でも一悟がノリノリで踊れたのはパルスご自慢のダンスソングだろう。バックダンサーの中でもひときわ目立つパフォーマンスを見せる一悟に「キミ、いいね!」とパルスのウインクが飛んでくる。
「ライブ……すげぇなこりゃ、迫力というかなんというか……!
 盛り上がり方もなんかサーカスとは違う気がすんな。人前で歌うのは度胸が要りそうだものな……俺はできる気がしねぇや」
 臆病な零にとっては驚きの様子なのだろう。ラド・バウでのライブはどこか不思議なものに思える。
「さっむいですねぇ。これ何割かレーグラのせいですよねぇ?」
『………』
「冤罪じゃなくて事実ですよぉ。すごく冷えてますしぃ」
 冗談を言いながらもルクセリアは小さく笑う。零の傍らで見上げたライブはやはり不思議なものに思える。
 ライブは好評だからか第一部、第二部と分けるのだとパルスは楽し気にアナウンスをしていた。
 所謂、『ファンとのふれあいタイム』だ。
「パルスさーん! 今日のライブとっても素敵でした! サインを良ければこのお守りにお願いしますー!」
 駆け寄るシエラの手にしたお守り。「お守りにいいの?」と首を傾げたパルスはどこか嬉しそうに笑みを溢した。
「お名前は――シエラちゃん? シエラちゃん江って書いとくわね」
 ファンサービスを怠らない『アイドル』の鑑だとシエラの瞳がきらりと輝いた。
「あっ! パルスちゃん発見っ!! えっと、えっと、今日のライブ凄かったよ!
パルスちゃんのライブ観るのは今日が初めてだったけど、あっライブ自体が今日でまだ2回目なんだけど、ってそうじゃなくて、えっとその、すっごく素敵でファンになっちゃった! だからね、またライブやる時は見に来るよ!!」
 走り寄った焔は気持ちが昂りパルスに思いを伝えるのに少し早口だ。嬉しそうに頷くパルスは握り振り回される手を握り返して、「うれしい~! ボクのファンになってくれてありがとネッ」と微笑んだ。
「パルス殿!ライブお見事でございました! これどうぞ! 拙者、イレギュラーズの夢見ルル家と申します!」
「ルルイエちゃんね! ありがと~~? えっと、トカゲさんかな? キュート★」
 トカゲ付き花束にも負けないのがラド・バウの戦士か。ルル家は幻想で営むコスプレ兼地下カジノにぜひともとパルスに懇願した。
「常駐が無理でも遊びに来た時だけでも! 拙者、パルス殿のファンになりました!
 その時は拙者の店にいるアイドル殿とか宇宙警察忍者界のアイドルである拙者もお供しますし!」
「アハッ、そしたらアイドルいっぱいになっちゃうわね」
 くすくすと笑ったパルスに考えておいてくださいと手を振って、ルル家はピューとその場を後にした。
「ゼシュテル鉄帝国……私達レガド・イルシオンの民にとって因縁深い国――」
 口にしてリースリットはラド・バウ周辺を散策できるのは歴史的に始めてではないのかと考察する。
 ローレットの存在がこの北の大地に踏み入れさせたのだとしたら! ああ、なんて快挙だ――快挙だが。
「こ、これが……パカダクラ!」
 もふもふしていて、何所か可愛らしい。だがラクダっぽさも感じられる。ラサでは毛が刈られているらしい。
「か、かわいい……もふもふした……い、というか、一頭連れて帰ったらダメ……ですか?」
 ダカァ~~
「前に来た時にあった子は居るかな」
『どうかしら?居たら一緒に遊びたいな』
 レオン・カルラの会話はパカダクラ一択だ。ダカァと鳴いた生物の傍に歩み寄った子供は首を傾げるパカダクラの許へとレオンとカルラを差し出した。
「ダカァ~~」『ダカァ~~』
 ダカァ~~
 餌を貰って上機嫌のパカダクラ。降り注ぐ星を感じて見上げれば、釣られてパカダクラも頭を上げる。
「乗り心地を味わいながら出店を回るのもいいかもしれませんね。いいですか?
 ところでパカダクラさんはもふもふさせてくれますかね……?」
 ダカァ~~
 葵はぬいぐるみアイデアを考えながら何となくもふもふさせてくれるというパカダクラをもふもふ。
 旅行で羽を伸ばしながらもこの気候で幻想とは違った文化に触れるのもまた仕事の一環だ。
「パカダクラさんは寒くないですか?」
 ダカァ~~
 年甲斐もなくパカダクラに興味がわいてしまったというオーガスト。餌を上げてみてもいいだろうかとそろそろと近づけばパカダクラは口をぱかっと上げる。
「おお……」
 パカダクラを騎乗する事はとても難しい。慣れないオーガストは明日は筋肉痛かもしれない。
「ふふーふ。こういう日も悪くはありません」


 瀬川商業㈱曰く――鉄帝の経済構造は脆弱だ。パルスのコンサートは物流・人流のテストケースとして打って付けだと瀬川は考えていた。社会的地位や年齢性別などの顧客リサーチを怠らない瀬川はラド・バウの闘士たちの中に内在的にパルスのファンが多い事に行き着いた。
 つまりは――ラド・バウでは経済の循環が見られるという事だ。
 市内の散策を行うレイルディアは迷子ではないですよと何度も繰り返す。勤労に感謝するというのもどこかズレて感じたのはレイルディアがこの世界についてまだ詳しくないからだろう。
「鉄帝、でしたか。蒸気機関なんて時代お……遺物を見る事ができるなんて思いませんでしたし、闘技場含め興味深い国柄でした。ただ、わたしには余り向いていないようです。……とても、寒い」
  冬が終わり幻想には春が――いや、もう夏を感じるかもしれない――訪れていても鉄帝には少しの雪が残っている。
 ラダは味が濃い目なのはたまたまなのだろうかと悩みながら散策する。暖かいものが多いのはお国柄なのだろうが、料理も西洋的な幻想とはまた違っている。
「美味しいけれど……あ、辛っ。水水」
 美味しいけれど土産には向いて居なさそうな鉄帝の食事。何か、それ以外の土産物や歯車の細工品などをが挿そうかと商店の中をぶらりと歩き出す。
「戦えない闘技場ってのもなぁ……」
 貴道はどこか複雑そうにつぶやく。市街地のバーの椅子に深く腰掛けて、ラム酒を飲み続ける彼は「次はファイターとして来たいもんだぜ」と小さくぼやく。
 Morguxは街並みを眺めながらカフェか何かで暖かいものをと適当に店に入ったがどうやらバーのようだ。静けさの中にクラシックが流れている。今日は流星群に合わせて幻想の音楽を取り寄せたのだと店主は言っていた。
「なんで子供が此処に? ――って顔でこっちを見るのは止めろ」
 複雑そうにつぶやいてMorguxは果実系のジュースを一つ注文する。そろそろ窓を見遣れば星が降る頃だろうか。
「ねぇ、ここでしか飲めないお酒がほしいの。あ、少しくらい強くても平気よ」
 店主の許へと身を乗り出してリノは蠱惑的に笑う。折角なら美味しいお酒を、と口にしたリノに店主は鉄帝の酒類はワインも多いが、アルコールが高いものが中心なのだと告げた。
「あら、そうなのね。何なら飲み比べでもしてみる? 私、強いわよ」
 冗句めかしたリノはシトリンクォーツを朝まで楽しみたいわ、と一つウィンク。お酒が美味しいのはいいことだ、唯一の弱点があるならば寒いことかもしれないが。
「蒸気。歯車。ふーむ、なるほど? 全然見慣れない景色だなぁ!
 それでも酒場というのはどの世界も共通のようだ。賑わっていて良いものだね」
 グレイは楽し気なリノの声を聞きながら店主のおすすめをセレクト。チェリーが浮いた特別なカクテルは流星を思わせる深い蒼をしている。
 浮足立った心にぴったりなそれを見て、グレイは「グラスの中でも流星群じゃないか!」と手を打ち合わせた。
「クシュンッ」
 思わずソフトクリームが吹っ飛ぶ。カタリナは傍らで寒さも平気そうな利香の姿を確認し負けられないと心に決めた。
「闘技場からの活気を感じながら近くのレストランで私は一番度の強い酒を頂こう、美女と共に呑む酒は格別だからね。それに私はギフトのおかげで酔わないのだ」
「酔ってますよ? ……ふふ、チーズフォンデュは最高ですねえ♪」
 むしゃむしゃと食べ続ける利香にカタリナはユリーカを手招いた。折角だから共にチーズフォンデュをどうだろうという提案に情報屋はきらりと瞳を輝かせる。
「いいのです?」
「ユリーカちゃんはチーズフォンデュ好き?」
「好きなのです!」
「良い事だ。ユリーカ君。山盛りのソフトクリームとパフェはどうだい?」
 それはちょっと寒いかもです、とユリーカは少し肩を竦めた。
「幻想の件じゃちょっと参ってそうだったし、息抜きは必要だろ? 別に告白とかそういうのじゃなくてな」
 プルーを手招いたサンディは頬を掻く。良いムードにいい雰囲気というのは美人が映える。
 その言葉に嬉しそうに微笑んだプルーは「エイプリル・ミストの星空にシャモアな想いが追加されたわね」と笑って見せる。
(意味を聞かずとも察せれる男になりたい)
 ――そう、思ったサンディだった。
 少し洒落たレストラン。たまの贅沢はいいだろうとシャロンは鼎へと向き合の琉。
「寒かったから、何か……温かいスープと、そうだね……僕はこのハンバーグを――鼎、君は?」
 初めての呼び捨てに、戸惑うシャロンの名を『あえて呼び捨てに』した鼎に彼は僅かに噎せる。
 食べたいなら少し分けるからと笑うシャロンは鼎の様子を見てから柔らかに微笑んだ。
「帰りは買い物をして帰ろうか、鼎」
 レストランでチキンを前に灰は「親父もおふくろも元気そうで何よりだ」と微笑んだ。
 何か月ぶりかの両親は変わりない。
「俺はローレットではなんとか上手くやれてる……依頼は大変だけど、なんとかな!
 頑張ってるよ俺は! 暗殺者の集団を討伐したりスライムの化け物ぶっ倒したり……この前なんて片目と喉を貫かれても任務を達成したんだ! 大したもんだろ?」
 灰の言葉に母が心配そうに大丈夫かと息子を気遣った。その言葉に胸が熱くなる。
「……会えるうちに会っておかなきゃなと思ったんだ。
 こんな仕事だ、明日死んでもおかしくないしな。今日は会えて良かったよ」
 震える声音で告げれば、母はどこか切なげに眉を寄せた。嗚呼、そんな顔をさせたいわけじゃないけれど――父の送り出す言葉が何よりも、心強い。
「一応聞くけど寒さで凍るとかはないわよね?」
『流石にそんな愉快な弱点はないな』
 サングィスとスペルヴィア。会話を交わす二人の食事の様子を眺めながらアワリティアは「材料と調味料は判るんだけど」とぱちりと瞬いた。
 西洋料理が中心の幻想と比べれば料理の質はあまりうれしいものではない。食べれないものではないけれど――と食事を続けている傍らでグラは「味が濃いものが多いですね」と頷いた。
「スペルヴィアさんとアワリティアさんもいかがですか? 体が温まりますよ?」
『そもそも、支払いをしているのはアワリティアなのだが?』
「ええと、細かいことはおいておいて楽しみましょう!」
 ショウを誘ってのバーはゲオルグにとっても楽しい時間だ。幻想蜂起も落ち着いたと告げればショウは「君たちのおかげだ」と柔らかに微笑む。
「いや、情報がある無しでは大きく違う。情報屋の尽力があってこそだ」
 ギフトで呼び出したわふわ羊と共に感謝の気持ちを込めて過ごそうというゲオルグにショウは嬉しそうに目を細める。
「まだ騒動そのものが完全に解決したわけではないからやるべきことは沢山ある。
 それを成し遂げる為には休息だって必要なのだ。故に今夜は飲んだりして英気を養うのだ」
 乾杯、と情報屋は嬉しそうに杯を掲げて見せた。
「ヤー! いい気分になるケンソウだね。こういったときのヤタイの食べ物ってどうにも旨いからフシギだ」
 楽し気に歩き回るイグナートは亮の姿を見つけ「タスク!」と手を振った。
「楽しんでるかいタスク?こないだも思ってたけれど、ジャパニーズって皆はもっと肉を付けた方がいいと思うんだ。タスクもどんどん食べてキンニクを付けていこうよ!」
「おっしゃ、じゃあイグナートも俺と一緒に食べ歩きだ!」
 にっ、と笑った亮にイグナートは大きく頷く。折角だ。先ずは何から行こうか、肉汁たっぷりなウィンナーもありかもしれない。
「肉じゃな。肉料理が喰いたいのじゃ。それと肉料理。それから肉料理じゃな。あとは……肉料理が食べたい」
 お腹をぎゅるるると鳴らした世界樹。最早何を言っているのかさえ分からない――
「おお、あそこじゃ。ナゾノ牧場直営店「ドミ肉」。
 高級食材ナゾノ牛を格安で提供する隠れた名店。ふははははっ、当然目当ては看板メニュー「ナゾノステーキ」じゃ――――」
 その後、彼女の前に会ったのは『本日休業』の張り紙であった。


 旅行なんだお、とニルはにぱっと笑みを浮かべた。
 とりあえずは鉄帝の名物料理を堪能するところだ。ガイドブックがあるのだとラド・バウで戦士たちに聞いたニルは早速とガイドブックを手にいざ凱旋。
「あ、少し肌寒いらしいし少しピリ辛で体が温まる料理とかあれば最初はそれを食べたいかぬ?
 よ〜し、はじめての鉄帝料理を色々楽しんじゃうんだお!!」
 鈴音とこうして遊びに行くのは三回目だとマリスは色々な場所に行けるものだなと感心していた。
「にゃぁん♪ テラちゃん、鈴は一緒に食べ歩きがしたいですにゃ♪」
 しっぽをふりふりとした鈴音にマリスは「150cm抱き着かれる140cm。とても視界不良」とぼやいた。
 こういう時はローレット様様だ。金銭で困らないのはとても楽だ。
「むぐむぐ、テラちゃんはこういう街は好きですにゃ? 鈴は好きですぅ、知らないことが沢山で楽しいですの♪」
「私の世界にはない街です」
 知らない事を知るのは良い事だというマリスに鈴音は幸せそうに「テラちゃんと一緒だと楽しいですにゃ~♪」と尻尾を揺らした。
「この地に来たからには食べておけという料理や地酒はあるかね? ……ニンニクは結構だ」
 身を乗り出した銀に鉄帝の戦士たちがあれやこれやと料理を提供する。飲めよ騒げよと騒ぐ国民性の中、彼は己が強いと言うように手をひらりと振った。
「俺は強いぞ。飲み比べ勝負を挑むのは止めておいたほうがいい……」
 ウォッカは燃料かと言うように度数が高い。鉄騎種の面々も楽しい事を探しているのだろう。
 きら、と降り注ぐ星にふと、彼は顔を上げる。
(――懐かしい……よく二人で星を見たよな……? 丁度こんな街で、雪の残る屋根に腰掛けて……)
 お前はどんな星だ、と左手の指輪を見遣り、囁くように小さく呟いて。
 幻想にも慣れていないけれど――あまねは防寒をばっちりに神威と共に歩んでいた。
「星に手がつくか試してみようか? それは寒いから、少しだけだがなあ」
 そう告げる神威にあまねはぱちりと瞬いた。
 上も下も灯りばかり。綺麗と呼べるのだろうか――遠ざかる光は視界いっぱいの流星群だとあまねはころころと笑う。
「アンタめっちゃロマンチストやな。帰ろう。星に心を奪われるのは、困る」
「ふふ、神威は、面白い事を言うね?」
 ――混沌に来てよかったと、少し思えたから、それがとても嬉しい事に感じられた。
「ふふ、今日も綺麗だねヴィエラちゃん」
 エスコートしちゃうぞ、とかるらは笑う。その言葉にヴィエラはありがとうと微笑んだ。
「生傷の絶えない仕事をしてるからお母様には叱られる事もあるけれどね」
 店の料理を参考に二人で巡るレストランの店先には様々な展示がされている。
「あたしの居た世界だと、春先は山に芽吹く植物だとかが好まれてたけど幻想ではこれだー! みたいな食材ってあるの?」
「うーん、主食はパンと肉料理だとは思うけど。でも最近は他の国の影響も受けて色々ね」
 悩まし気なヴィエラにかるらははっと気づいた様に向き直った。
「あ、ヴィエラちゃんの事、あだ名で呼んでいい?」
「あら、良いわよ。私は家族にはヴィーって呼ばれてるけど。かるらさんはるーちゃん?」
 あたしのことも呼んでくれるの? やったー、と両手を叩き合わせてかるらは微笑んだ。
「星が、綺麗……です」
 ぱちりと瞬くレウルィア。こんな夜空に悪い事をしたくなるとルシフェルは口元に笑みを湛える。
「というわけで俺に攫われてくれないか、レウルィア!」
 わあ、と抱えられたレウルィアはルシフェルに運ばれる。
 そんなこんなで少女を一人持ってきてしまったわけだが――
「星空の下に独りは中々に淋しい物なんで、さてどこにいこうか」
「はい、少し散策をして、それからルシフェルさんの特等席へ、ご招待をお願いします……です」
 その言葉にルシフェルは勿論だと頷いた。
「月明りのライトのしたで、俺の時間をキミに捧げよう。甘い感情を絞り出してくれれば、俺の胃袋も満たされるのさ」
「えと、ではわたしも、今この時間を、ルシフェルさんに捧げます……です。
 甘い感情……です? 出せるか、分かりませんが、頑張ってみます……です」
 まだ雪が残る鉄帝は寒いから、寒くないようにと相棒を寄り添わせてライセルはセレネへ向き直る。
「セレネちゃん、寒くないかい?」
「ふふ、大丈夫です。ジョニーさんのおかげで、とても暖かいです」
 真ん中にジョニーが座る。鉄帝生まれであるライセルにとっては慣れたものでもセレネにはまだ慣れないものだから。
「今夜の事は、忘れません」
「……また、何処かへ攫ってもいいかい?」
 ――あなたとならばどこだって楽しい場所になります。そう言って差し出された手を取った。
「ん~! やっぱり出店にコンサート! こういう雰囲気はいいよね~こう皆が楽しんでるって感じがするかな!」
 楽し気なセシリアはユウを追い掛ける。流星群を見に行くという彼女を追い掛けて、「私は流星群をユウと見たいの」と微笑んだ。
「……あ~どうせ、まだ時間もあるし出店を回るならそれぐらいなら付き合うわよ、貴方もその方がいいでしょ?」
「いいの? ふふ、ありがとうね、そうだね。穴場スポットとか聞いてみよう!  ふふん! 交渉事ならこのセシリアに任せておきなさい! ねぇねぇ! ここらで流星がよく見える所とかないかな?」
 早まったかしら、と肩を竦めるユウ。楽し気なセシリアは「あっちだって!」とユウを手招いた。
「願い事か…沢山流れはするが、1つ1つは短い時間で消えてしまうからな」
 ルアナのお願い事敵わないかな、と笑った彼女にグレイシアはどうだろうと悩む様に聞いた。
「食べているだけでは喉が渇くだろう。何か飲み物でも用意しよう」
「次の流れ星にお祈りしようかな?…っとルアナオレンジジュース飲みたい!」
 そう告げたルアナにグレイシアは小さく笑う。「此方がルアナの分だ……先の発言、一瞬、流れ星への願い事かと思ってしまった」だなんて、小さな彼女のお願いがオレンジジュースだったならば何と可愛らしい事か。「ちがああああう!! でもルアナのお願い事、叶ったよ。
 ――ルアナのお願い事はね『おじさまに笑ってほしい』だから」
 その願いは盲点だった、と小さく笑う。ほら、おじさま。もっと笑って、ルアナちゃんとお願いするから。
 人込みは苦手だというエーリカを引き寄せて。楽しいなと溢したラノールに彼女はコクリと頷いた。
『夜鷹』ではなく『エーリカ』を連れ出してくれないかと願うのは少し怖かった――故郷とも幻想とも違う街並みに、白い蒸気は霧のように視界を覆う。
 風は肌を指すようで、顔を晒して歩くことに一抹の不安を感じたエーリカの手を引き寄せてラノールは囁いた。
「……エーリカ。もっと星を近くで見たくないかい?」
 悪戯めかして笑って。一目がない所まで連れていけば、そのまま彼女の体を抱き上げた。
「わ、わあ!」
 間抜けな声が出てしまったと、唸ったエーリカにラノールは小さく笑う。
「近いほうが願いを叶えてくれるかも知れないぞ? ――私は君ともっといろんな所に行けますよう、とつまらなくも贅沢な願いしか浮かばないけどね」
 そう笑った彼にエーリカは気恥ずかしさに顔を逸らす。
 じゃあ、ラノールの願いが、叶いますように。なんて。


「できるだけ見晴らしがいい場所がいいな。2階建て? 崖の上? そんな感じの所を探して」
 羽毛を膨らませて防寒するアクセルはきょろりと周囲を見回した。
 見晴らしのいい席を探してエリックは暖かい料理を楽しもうと笑みを溢す。
「パイシチューやポトフでも食べるか! ガハハハ! ウェールは酒はどうだ? レーゲンとアクセルももっと食うんだぜ!」
 トロトロに煮込まれたビーフシチューを注文していたウェールはちびちびと酒を飲みながらレーゲンが食べやすいようにと子供用の食器を用意していた。
「レーさんは猫舌だから、食べるときはグリュックがフーフーするっキュ!」
 ヒレを上手に使って食べるのを見ながら、アクセルはぱちりと瞬く。
「ごはん、ごはん! なにはなくともあったかいもの! シチュー系! 
 遠くから聞こえるライブの喧騒に耳を傾けながら雪と流星群を楽しむ……うん、趣があるー!」
 分け合えばお腹が空いているという気持ちもなくなるレーゲン。勿論、グリュックもだ。
 星に何か願いを込めようと皆、それぞれ口にする願い事。レーゲンは楽し気にキュッと鳴いた。
「お願い事は……またみんなで今日みたいにお出かけする事っキュ!」
 マフラーを巻いたポチと共に天体観測。潮は肉まんを分け合いながら空を見上げる。
 口ずさむのはこの日にちょうどいい歌だ。
 ――星空に歌おう
 この果てしない星の海に向かって
 ささやかな賛美を表そう
 この煌びやかな瞬間に
 果てしない感動を示そう――
 歌声がどこかから聞こえる。耳にしてケントはきょろりと見回した。女性とも男性ともとれる中性的な戦士はビッツという名だそうだ。
「ビッツ。君はこの国が好きか?」
 その言葉にビッツは瞬く。彼はある意味では姑息な手段で勝ち上がる戦士だとも言われている。
 戦いで全てが決まるこの国が好きか――その言葉に「勿論よ」と彼は囁いた。
「好きよ」
「そうか。……さて、そろそろ酒をもう一杯飲みに行こうか」
 ゆっくりと歩みながらシェンシーはほっと息をつく。鉄帝、強さが物を言う国――前々から気になっていたが、シェンシーにとっては悪くない場所だ。
「程良く涼しいこの気候も、綺麗すぎないこの景観も、過ごしやすくて好みだ」
 甘さ重視のスイーツは寒いこの国では珍しいのかもしれない。しかし砂糖をまぶした小麦菓子の販売があるのだという事も聞いていた。
 何か甘味を買って、屋根に上って星を見ようか。そうしてひと段落するのだって悪くはない。
(鉄帝……初めて来たがクッソ寒いな。厚着をしてきて正解だったぜ。
 ラド・バウであるライブも市街地も面白そうだが俺は流星群を見ようか。流星群って俺見たことねぇんだよな)
 記憶を失う前がどうだったのかを黒羽は知らない。喧騒から離れ、流星群を眺めれば、遠くライブの光が星々に混ざる。
「綺麗だな」
 呟く声音は響く楽器の音に掻き消された。
 記憶があった頃はこの星を見たのだろうか――? それは今は、知らない事だけれど。
「んー、どこの星空も同じような違うような。
 占星術師ならば空を見て何かを知る人もいるだろうけれど、私にはなんの関係もないよねー」
 死神が星を見て思うのは死んだ人のことぐらいだとリンネはきょろりと周囲を見回した。
 生死を司る彼女にとって『死んだ人はみぃんなお星さまになる』なんて地域がある事は知識の内だ。
「うちの世界だと死んだらエネルギーに戻り循環する仕組みだったけれど、ここはどうなんだろうね?
 この鉄帝は武力を貴ぶ地域だけど、その分流れた血も多いんだろうね?」
 ここは力こそすべての鉄帝だ。ならば,己の出番も多いのかも、しれない。 
「ならば輪廻に還る魂もさぞ多かったことだろうけれど――もし死者が星になるのならば、この見事な星空はそのまま鉄帝に流れた血の結果かもしれないね? …なーんて、益体もないよねえ」
 寒い所は星が良く見える。それは自然の理だと義弘は頷いた。
 美しい星に、寒い所で熱い酒、熱い物。それはどれ程までに幸福化。
 アルコールで喉を焼き、熱い料理に舌鼓、だ。
「依頼でもなきゃ、こっちに来ることは少ないからな、本当は闘技場も見てみたかったんだが、今日は休みらしい」
 戦士にも休息が必要なのもよく分かる。特異運命座標にだって休息は必要だ。
 偶の休みを精一杯謳歌するのも大事だろう。
 タルトは衝撃を覚えていた。
「わかるかしら。
 クリスマス……あの美味しそうな身体をウロコに阻まれて食べられなかった悲しみを――
 わかるかしら。
 目の前にある最高のスイーツが食べられなかった悔しさを――」
 タルトはそして思いついた。この街の一番高い所で流星になればいいと。
 突拍子もないが、流星のパワーが宿れば何とかなる気がタルトはしていた。
「さぁ! 待ってなさいベーク、ボクはここで生まれ変わる!」
 人々の喧騒、賑わう声。楽し気な音色はヨタカの耳を擽る反面、息が詰まりそうになる。
 賑わいより少し離れて、ヨタカは美しい星を眺めていた。星が舞い踊るように一斉に夜空を流れるのは圧巻だろう。
「あの星々は遠くの空で新しく生まれ煌めいてるのか……それとも」
 ――その生を全うし滅びる為に煌めいているのか。
 その生命が意味あるものであればと願うようにゆっくりと彼は手を伸ばした。
「イレギュラーズって思ったよりたくさんいるのだなあ」
 散策するレグルスはふう、と小さく息をつく。
 ――余はあんなにエネルギッシュで、カッコよくて、強い者たちと肩を並べられるだろうか?
 不安を払しょくするように星空を見上げれば、心には何かが過る。
(……流れる刹那、ひときわ煌めく流星たちのようにとまではいかなくとも。
 小さくとも、かすかな光でも、誰かを導けるような。そんな星のようにありたい)
 シトリンクォーツが終われば忙しくなるだろう。だから、夜明けまでのんびりとしていようではないか。
 遠く、パルスの歌声が聞こえる。
 それを聞きながらミルヴィはゆっくりと目を伏せた。星に願いを込めて、一つ謳おう。
 ――私は風 見守る存在(モノ)
 撫でるように声を届け 囁くように抱き締めよう
 貴方の声も 願いも 悲しみも見届け 伝えていくよ
 誇りしか無くなってもそれに込められた想いは私が知っている
 貴方との約束も 覚えているよ 忘れた貴方に届けにいこう
 戦った想いも 立ち向かった姿も 見ていたよ
 忘れないよ 沢山の星が輝いて消えても 貴方が輝いていたことを
 私は風 寄り添う存在(モノ) 渡るように貴方の傍に――

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様です、イレギュラーズ!

 鉄帝でのシトリンクォーツ。お楽しみいただけましたでしょうか?
 皆様の冒険の思い出の一つに数えられますことをお祈りしております。

 パルスからちょっとしたお土産を出させていただいております。

present for シエラ様 アイテム:『お守り(パルスサイン入り)』

 ※白紙の方以外は描写させていただいております。
  抜けがございましたらご報告ください。宜しくお願いします。

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