シナリオ詳細
再現性東京:集まれラーメン通! 再現性ラーメン食べある記
オープニング
●ラーメンを食べ歩こう!
再現性東京、ここでは“東京”という世界にあるさまざまなものが再現されているという。
この『再らぁ軒』も、「東京で食べられる横浜家系醤油とんこつラーメンを再現した」という触れ込みの店であった。
「やっぱり、ステップアップが必要なんじゃねえかと思う!」
『再らぁ軒』の店主は、一杯のラーメンを仕上げるとしみじみと言った。
ラーメンというのは、蕎麦やうどんと違い、いまだ完成形を見ず、進化する食べ物だという。蕎麦やうどんは、地方によっていろいろあれど、完成する形は種物の変化などが中心である。その定義から大きく外れるものは多くない。後はどう極めていくかであるとされるが、ラーメンはどれもラーメンたりうる。未だ完全に定義されたこれぞという形は存在しない、などといわれる。
これがラーメンと言って出されれば、これは違うとは言い切れない。これもラーメンになってしまう。そこが魅力であろう。
この『再らぁ軒』で出されるラーメンもそのひとつだ。
横浜家系の醤油とんこつの縮れ太麺でありつつも、マー油を使い、純粋なものからは外れた形になっている。
しかし、これを東京ラーメンだと言ってしまえる乱雑さ、混沌とした懐の広さと奥の深さがあるのだ。
「ほう、まだまだ未完成であることに気づいたのか」
「あ、あんたは……!?」
特等に眼鏡、白衣の姿の男である。
ラーメンメガネハゲ、巷ではそう呼ばれる人物だ。
今のところ、プロフィールは公開されていないが、相当なラーメン通と思われている。
実はその実力については、未知数なのだが。
「この再現性東京には、続々と出店が続いている。その中で生き残っていかなくちゃならないんだから、まったく大変だねえ」
皮肉に口元を歪めたかと思うと、ラーメンメガネハゲは、つるりとした頭を撫でたのち、軽く叩いてパチンといい音を立てる。
「うっ、悔しいがそのとおりだ……」
「で、どうするんだい? 本物の東京ラーメンを食べたことのない再現マニアくん」
「ぐぐぐ……」
「まあ店主、気にすることはないさ。君はきちんとマニアにも受けるラーメンを作っているよ」
そう言って、ラーメンメガネハゲは一杯注文し、ずるりと啜って平らげると店を後にする。
悔しさに肩を震わせた『再らぁ軒』店主は、その背中を睨みつけて見送っていた。
●再現ラーメンを食べ歩け!
いまや、再現性東京はラーメン戦国時代まで再現された!
環七沿い、新宿、池袋、中野ラーメンストリート、隠れた名店ぞろいといわれる経堂にも、続々と再現ラーメン店が現界しているという。
「俺は、負けちゃいられねえんだ!」
『再らぁ軒』の大将は吠えていた。
しかし、その意気込みはあっても、彼は再現性東京のラーメンのトレンドを押さえているわけではない。
一世を風靡した横浜家系が現われたかと思うと、魚介動物ダブルスープ系が席巻する。そして、またニューウェイブが現れるというのが再現性東京のラーメン界である。
「だが、俺には圧倒的に足りないものがある。それが、味の経験値だ」
味の経験値――。
つまりは、そのトレンドを把握して食べ歩くということ。
他店を参考にせず、自分だけのこだわりを貫くのもいいかもしれない。
しかし、再現性東京のラーメン戦国時代を生き残り、トップに立つためには、さまざまな味を経験しなくてはならない。
その味の経験値を蓄積するのに必要なのが――。
「そのために必要なのが、ラーメン食べ歩きなんだよ!」
そう、出店された店の味をさまざまに経験する食べ歩き。
今、それが必要とされている。
「なるほど、それは食べ歩かねばなりませんね」
メガネをくいっと直し、もうひとりラーメンにこだわりを持つ男が言った。
- 再現性東京:集まれラーメン通! 再現性ラーメン食べある記完了
- GM名解谷アキラ
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2020年09月02日 22時20分
- 参加人数41/∞人
- 相談5日
- 参加費50RC
参加者 : 41 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(41人)
リプレイ
●再現性ラーメン食べある記、始まる
「元の東京でタクドラしてた時に通っていた店も再現されてるのでしょうか。楽しみです」
羽田羅 勘蔵は元タクシードライバー。青山公園調整待機所、その近く西麻布の名店のことを思い浮かべる。
うまい店はタクシードライバーは知っている、などとも言う。お客を乗せて、数々の店を巡って食べ比べているからだと。
そんなわけで、推しの塩ラーメンの店に到着。
「俺も塩を」
サイズも塩ラーメン派だった。
スープには、人それぞれのこだわりがある。
あっさりした味わいが好きな者も多い。
「ここらで美味しいと有名な店はここ『牛若丸』ですね」
蔓崎 紅葉が探し求めた店は、東京に進出した京都ラーメンの店である。
王道の醤油ベースで、濃い黒のスープに多めの九条葱が特徴だ。コクの強さに背脂もある、ガツンした感じの味わいである。焼き飯も、色味が黒いが美味いのだ。
「まず食べ歩く前に大将さんのお店を」
一方で、普久原 ・ほむらは、『再らぁ軒』のカウンターに着いた。
横浜家系東京風味のラーメンである。1000で買えるだけのセットを注文する。
「へいお待ち、これを作らせて頂いた後は、俺も食い歩きますんで」
「ラーメンだー!」
隣に座ったセララもほむらと同じセットだ。
ほむらのラーメンへのこだわりにただならぬものを感じているので、一緒に食べればきっと美味いに違いない。
ほむらは薄味にしつつ、にんにくたっぷり三倍分。
これを濃い目にして油を増すと、俗に“家系早死に三段活用”などと言われるジャンクなものに仕上がる。
しかし、ほむらのこだわりはあくまでも薄味で素材を楽しむのである。
「ぶはは、いらっしゃい! さあ食いねぇ!」
その外の高架下では、ゴリョウ・クートンが屋台を引いている。
透き通った豚清湯スープは、豚の旨味が前面に来つつクリアな芳香を楽しめる。
琥珀のスープにはラードが溶け、豚トロチャーシューと白髪葱という一杯だ。
席には、さっそくエクスマリアと夜乃 幻がついて上品に麺を啜っていた。
「こっちも頑張らなくっちゃね」
その隣には、鶏ガラと煮干し半々のアルフィンレーヌのラーメン屋がある。町中華の定番も出つつ、かぼちゃの煮つけやさば味噌などもある。
「ラーメン、卵ふたつ追加。切らないで。あとソーセージもね」
キンタ・マーニ・ギニーギが頼んだのは、切ってない卵とソーセージのトッピングであった。アルフィンレーヌの店は、そういう庶民的なオプションにも答えてくれる。
このトッピングが象徴するものに、危魔道士を自称する彼もかなり満足であった。
「……もしかすると、あの系統のラーメンにまた会えるかもしれぬ」
そんなカード下を、仙狸厄狩 汰磨羈がある店を探し求めてさまよっている。目指すのは、シンジュクにあるという煮干しラーメンの店である。
昔懐かしの煮干し醤油ではなく、がんがんに煮干しを焚いて魚粉もこれでもかとちりばめ、太麺のニューウェイブ系煮干しラーメン。すごい煮干しラーメンだ。
濃厚な味覚でガツンと殴ってくる、旨味の暴力。
これを是非とも味合わせたい。
「ああ、いかん。涎が止まらぬ。早く行こうではないか、早く」
めっちゃ早足で渋谷方面を散策する。
「煮干しラーメン……?」
汰磨羈があまりにワクテカしながら美味しそうに呟くので、気になったメイメイ・ルーも一緒に店を探す。
思い切った煮干しの味を味わってみたい。
「む、む……濃厚な煮干しの香り。粗目の刻み葱に二種類のチャーシューが乗っていて。い、いただきます……!」
強烈な魚介のイメージがメイメイの味覚を征服していく。
魚臭いといって嫌う人もいるかも知れないが、個性だと思うと愛しくて離れられない味であった。
●昔ながらもあるよ!
「ごめんくださーい」
藤野 蛍と桜咲 珠緒がくぐった店は、中野新井薬師の人通りの少ない店だった。
ラーメンの原型(アーキタイプ)にして、系譜の始祖(アダム)、元祖東京ラーメンを求めて町中華のようなお店だ。
知る人ぞ知る、といった感じの店構えである。
「珠緒さんに、是非味わってほしくて」
「では、いただきます」
この道五〇年近く、今では週に3日しか立てないという老齢の大将が出すラーメンは済んだ琥珀のスープに輝く脂が散り、紅いチャーシューが乗るという返って今では珍しくなった逸品だ。
「ん……よい香りですね」
素材もそうだが、シンプルなだけにストレートに腕を感じるほどのシャーブな味わいと絶妙なバランスである。
餃子もお持ち帰りできるという。
「お、ここよさげじゃないの。醤油ラーメンの店か。俺もその嬢ちゃんたちと同じの」
ガラッと開いてその店にやってきたのは、伊達 千尋である。
ラーメンメガネハゲが気に入らなかった千尋であるが、やって来るなりスープの香り高さにつられ、同じものを頼んだ。
「はい、おまたせ」
かなり高齢だが、手際はいい。
「おお、どれどれ。……ンマーーーーーイ!!!」
カップラーメンは大抵食べ尽くした千尋の味覚を、まさに糺すようなきっちりしたような味だ。
「はいこんにちは! 皆のフリータイムのお供、アリスの配信『ワンダーランド』へようこそにゃ!」
さっそく独自の情報網で評判を聞きつけ、キャロ・ル・ヴィリケンズがやってきた。
彼女は、動画を配信する“Pan-Tuber”として活躍している。広告ティッシュも配って宣伝も万全だ。また動画もバズるかもしれない。
「らあめんを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか……会長らあめん食べたことないや」
そんなことを呟きながら、楊枝 茄子子はラーメンをいただく。
「……っ! 麺がつるつるしてる! スープもコクがある! コクってなんだ! ってか味濃いね! 蕎麦とは全然違う! すげぇ!」
ラーメン初体験であったようだが、テンション爆上がりだ。
●他にもいろいろあるよ!
東京には、種々さまざまなラーメンがあったという。
再現性東京もまた、ざまざま再現されている。
「ラーメンの流行調査ですか! ここはトレンドに敏感なシティガール! シティガールのメイの出番なのですよ!」
大切なことを繰り替えし、メイ=ルゥは東京でもメジャーな激辛ラーメンを求めて池袋のお店にやってきた。
店内も、唐辛子を意識したのか赤い内装である。
「やはり、希望ヶ浜学園の学食だけでは物足りないので、専門店でこそ、とっても辛い食べ物に出会えるのですよ」
ここの激辛ラーメンは、再現性東京でも指折りの辛さ、極北ラーメンである。どんぶりの麺をすくい上げるだけで、目に染みる威力だ。これを平らげた後は、新橋の本店にも向かう予定だ。
「そういえば稲荷神様から異世界の東京の有名なラーメン屋の御話を聞いた事があるわ。そのお店、この場所にもあるかしらね」
一方、長月・イナリが目指すお店は、黄色いカラーが特徴的な店舗の店である。店名は『豚増軒』とある。
ごわごわの太い麺に、もやしやキャベツの野菜と茹でた豚とにんにくに背脂を散らす。
「ご注文は?」
「ヤサイニンニクマシマシアブラカラメ!」
食券を渡し、麺が茹で上がって盛り付けられる時に追加オプションをコールする。このタイミングが重要で、殺伐とした独特の雰囲気が漂う。
そしてでかい、野菜が山のように盛られている。
崩すのも大変だが、これを完食せねばならないのだ。
「あ、僕はデカいの頼んだ上でさらにアブラとニンニクをマシマシにするっス!」
キャナル・リルガールは部活帰り、もりもり食べられるこの系統がやはりたまらない。
このお店、同じロッドについて席についたら、暗黙のうちにバトルが始まるとも言われている。
こうなるとイナリとのバトルだ。ド乳化スープもクリーミーな仕上がりで、脂の強さを感じずに入っていく。
「ド分厚いボリュームとがぶりついた時のほぐれる食感がたまんねぇチャーシューっ!」
「へへ、お客さん。うちのはチャーシューなんて上等なもんじゃなく“豚”ですよ」
はにかんだように店長が言う。
「召喚されるまえのわたしは、マリンスノーを、食べていましたの」
ノリア・ソーリアは、回顧しながらその店に入った。
海に降る雪、マリンスノー。
しかし、地上の料理を知ってからはもう食べられない。
そんな彼女が求めたのは、背脂という、雪――。
背脂チャッチャ系で、これでもかと白い豚の背脂が乗る。
スープも冷めないほどの層になるのだ。
同じカウンターでは、白鷺 奏が出された背脂ラーメンと対面し、編み込んだ髪を髪留めでまとめ、黙々と平らげていく。
一気に啜ると、奏はうっとりとした表情で息を吐き、さらに食べ進めていく。その食べっぷりにつられてか、他の客も連なって食べていく。
彼女が、このカウンターの先導者、ペースメーカーとなったようだ。
さらに、麺を食べ終わったらメシと卵。
隣のノリアが「ごちそうさま」をしたノリアとともに至福の笑みを浮かべてさっそうと去っていく。
さて、今度は再現された高田馬場にある札幌味噌ラーメンの店にも、イレギュラーズが訪れている。
「らぁめん!それは数多の人を老若男女問わず魅了しつづける魅惑の料理!と吾輩は聞いた事がありますぞ」
「ジョーイは初めてか? それなら俺がエスコートさせてもらうよ!」
ジョーイ・ガ・ジョイがレオ・カートライトに連れられて入店した。
「ほう、レオ殿のおすすめは味噌ラーメンでありますか、この茶褐色なスープから漂う香り……期待がたかまるたかまるであります!」
「醤油、トンコツ、塩、いろんな味があるけど俺の中での一押しは味噌。味噌ラーメンが一番美味しい」
そういうわけで、出された味噌ラーメンをこれはもう止まらないという勢いで啜っていく。
行儀は悪いかもしれない。
しかし、ラーメンとは庶民の食い物であり、ずるずるっと伸びないうちに平らげて席を立つのもまた粋で美しいのだ。
「知ってるかい? ラーメンは日本料理なんだぜ。つまり和食ってこった」
今度は御茶ノ水、うんちくを語りながら晋 飛が入ったのは、蘭州ラーメンの店だ。
中国で牛骨スープと牛肉トッピングは、回族たちが好んで食べからだという。ここにラー油とパクチーを散らし、あっさりしつつも旨味がある。
再現性東京でも、広まりつつある味だ。
「ラーメンっていろいろあって面白いよね!」
ミルキィ・クレム・シフォンが見つけた店は、牛乳を使ったというミルクラーメンである。
「うわぁ☆ 思った以上に白いスープ! 豚骨系と思わせておいて匂いもミルクの主張がばっちり! まずはスープを一口……」
レンゲでミルクスープをすくって口に運ぶ。
強いミルクの主張が、出汁の味わいをまろやかに包みつつ、濃厚なコクを与えている。
「うん! ミルクの味が思った以上にラーメンスープにマッチしてるね!」
さらに、バターやチーズ、生クリームのトッピングもある。
この店は、乳製品をとことん推していくようだ。
●勝負! ラーメンメガネハゲ
「彼の店に行きたいイレギュラーズは多いんです。責任を持って、店を見つけないと」
新田 寛治は『再らぁ軒』の大将と大勢の仲間とともに出発した。
例のラーメンメガネハゲに挑戦する意気込みであり、地元のダチコーたちの情報網を駆使してその店を探す。
「何だか面白くなりそうな予感がいたしますので、わたしも同行させていただきます」
「ラーメンメガネハゲ……ねえ。確かにあんだけ大口を叩くってことはよほどすごいもんを出してくるんだろうか」
「東京というか、日本ってラーメンの競争が凄かったんだって? 集まってラーメン食べに行こうってことになったから」
「思いきり食べたいな。このためにお腹を空かせてきた」
「皆で店を探し出して、タカるもといお客さんとして食べに行こうかと」
「いつ出発する? 花丸ちゃんも同行しようっ!」
「自分の舌を信じて! お店探しにれっつごーですっ!」
新田の号令によって集まった面々を見てみよう。
まずは、Suvia=Westbury。アオイ=アークライト、棗 茜、リゲル=アークライト、志屍 瑠璃、笹木 花丸ミエル・プラリネ、がいる。
皆、あれだけ豪語した者のラーメンがどれほどのものか、興味津々であり、結果として食べ歩きの一団は大所帯となった。
「今日はお掃除屋さんは休業、何かあったらコッチの掃除屋に任せるわ」
その一団に並ぶネリも、掃除を休業してまでそのラーメンを頂くつもりだ。
いやがうえでも期待は高まるというものである。
「たしか、あの店ですね」
新田が指差したその店は、新宿の裏手にあった。
カウンター18席、テーブル4つの16席と比較的広めの店内である。
「約束通り、貴方のラーメンを味あわせていただきますよ。お客様」
「ふっ、いらっしゃい」
ふてぶてしく待ち受けるラーメンメガネハゲが席につくよう促していく。
「ラーメンのこと、とても詳しそうだったから……お店に皆で食べに来た、よ」
糀・彪呑がカウンター席につく。店内は広いが、さすがに彼女が座ると手狭になる。
そうそう、いまどきこの店は食券制ではないらしい。
「話には聞いていたけど、こうしてちゃんと食べるのは初めてかもしれない」
ポテト=アークライトは、基本と言われる醤油ラーメンをオーダーする。
ふーふーしながらちょうどよい温度になるよう調整し、つるつるとした麺ののどごしを味わう。
「旨い飯にゃ興味はあるが、それであーだのこうだのと他人を貶める奴の気が知れねえ。旨い飯を食う、幸せな気分になる、それでいいじゃねえかと思うんだがな」
持論を語る亘理 義弘をラーメンメガネハゲは待ち受けるようにして調理場にいる。
「もっともだ。だが、それでも探求したくなるのが人の性なんだよ。ラーメンは芸術だ、芸術というのは唯一無二の普遍性を目指すものだ」
鋭い眼光が交差し合う。
ラーメンとは芸術であり、哲学なのである。
両者はときに切磋琢磨を求めてぶつかり合う、これは歴史の必然であった。
「『三大欲求の一つ、食欲。本来は生きる為に食すだけの動物の本能が、味という黄金の果実に手を出した結果――人は、ラーメンを求める』っとこの本には書いてあるな」
リュグナーはパタリと本を閉じて注文する。
「では、その問いに私のラーメンが答えよう」
湯気でメガネを曇らせながら、彼は注文を受けて調理に取りかかる。
「あなたのらあめん、期待しているわね。これ、経費で落ちるのでしょう? トッピングはすべて載せてちょうだい」
「ご注文、いただきました」
「……これでもし美味しくないなら、わかってるわね?」
少しドスの利いたネリの声にもラーメンメガネハゲは動じない。
揺るぎない自信のほどがうかがえる。
「ここが再現性東京か。どこか懐かしい雰囲気だ。だが今日は感傷に浸る気分じゃあない」
ふらりと、goodmanが入店する。
いかにも孤独にグルメをしそうな雰囲気がある。
「約束通り、貴方のラーメンを味あわせていただきますよ。お客様」
「ここでは、そちらがお客様だよ」
新田とラーメンメガネハゲが火花を散らす。
その隣には、『再らぁ軒』の大将も座っている。
「では、定番のものと期間限定のものをそれぞれい炊きましょうか」
「吟醸醤油ラーメンと清流岩魚ラーメンとなります」
「イワナですか……」
なんと、川魚を使うという。
渓流の王様と言われ、貴重なものだ。
一口啜る、美味い。
吟醸醤油の方は熟成した醤油香がストレートに味わえる。
清流岩魚はと言うと、やはり岩魚の骨酒のような香ばしさと深い味わいがある。
「う、美味い……。だが、これでは採算が取れないはず!」
「この店は私のアンテナショップでね。売上よりも宣伝効果とリピーターを増やす目的のものだよ。コンスタントな売上は、別店舗で帳尻を合わせている」
「なんと……」
「時には高級食材をドブに捨てるようなこともあるが……自由なことはやれる。その結果として、君達のような味にうるさく好奇心に満ちた客もやって来るわけだ」
「まさか、採算度外視の店を経営するとは」
「コンサルティング料と多店舗展開で純益はあるがね。しかし、流行が去ってしまうとそのまま負債になる。だからそ、流行を作り出す側にいなければならない。遊び心と探究心なくして流行は作り出せん」
流行を作り出し、発信するためのアンテナショップを儲けと関係なく経営する。
味わいとともに、その発想のスケールに打ちのめされた新田と大将であった。
「ああ、なるほど……本物のラーメン屋だ」
しかし、その二杯は確実に新田の心と胃袋を掴んだのであった。
「大将、プレゼントっす」
目深に帽子を被り、サングラスで変装したジル・チタニイットが大将に食べ歩いた記録のメモを渡した。
きっと、トレンドを押さえた一杯ができあがるだろう。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした!
これにてラーメン食べ歩きシナリオは終了です。
ラーメンへの熱い思いとうんちくを語ってもらおう、そしてあわよくば語ろうという試みです。
最近ラーメン食べてないなぁなんて思いながら書きました。
そんなわけで、また食べ物系はやろうと思っていますのでよろしくお願いします。
GMコメント
■シナリオについて
みなさんこんちわ、解谷アキラです。
再現性東京、とてもいい舞台です。
いろんな東京を再現して遊べますから。
そんなわけで、再現性東京に再現された数々のラーメン店を食べ歩き、味わって味の経験値を蓄積するシナリオです。
この蓄積によって、『再らぁ軒』の大将は味のトレンドを押さえてランクアップ、できるかもしれません。
・再現性ラーメン店
基本的に、いろんな店がいろんな場所にたくさんあります。
それらを指定して入店し、いろいろ食べ歩いてもよし、屋台を引いたり店を出店して、食べ歩きする相手を迎撃してもよし、その辺のプレイングはお任せします。
なお、ラーメンは食べ物ですので、美味しく召し上がるプレイングを採用します。また、再現性東京にある再現性ラーメン店は完全にそのままではなく、実在する店の店名などはぼやかされます。その辺、留意くださいませ。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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