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シナリオ詳細

再現性東京2010:希望ヶ浜学園『日常』体験記

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――再現性東京(アデプト・トーキョー)。

 それは、練達に存在する『理不尽な召喚に適応できなかった者』たちが造りし、偽りの故郷。
 その街のひとつ、2010街『希望ヶ浜』に『希望ヶ浜学園』は設立された。
 表向きは、このほかの学校と同じく、子どもたちの教育が目的だが。
 真の目的は、練達国内の様々な怪奇現象に対応するための、人材育成機関として機能すること。
 ならばと、子どもたちの手本や規範となるべく招かれたのが、ギルドローレットのイレギュラーズだった。


 ある日の、2010街『希望ヶ浜』にて。
 『希望ヶ浜学園』のすぐそばにある『カフェ・ローレット』に、イレギュラーズが集まっていた。
 頃合いをみて、受付嬢兼アルバイターの黒髪少女が声をあげる。
「特異運命座標(イレギュラーズ)のみなさん、『希望ヶ浜』へようこそ。
 私は、希望ヶ浜学園高等部所属の音呂木(おとろぎ)・ひよのです」
 黒髪少女はそう名乗り、場に集まったイレギュラーズの顔を見渡した。
 ≪東京≫での、一般的な女子学生を思わせる姿。
 しかし謎めいた表情からは、その本心をうかがい知ることは難しい。
「――さて。本来であれば、ここで夜妖<ヨル>の討伐をお願いするところですが……。
 入学・編入したばかりのみなさんは、『ここ』がどんな世界か、理解しきれていない方も居るのではないかと思います。
 学園のパンフレットには目を通しましたか? あちらにも色々と詳細が記載されていますが、『習うより慣れろ』とも言いますしね。
 ここで実際に『日常』を体験していただく方が理解が進むのではと、今回の催しを企画しました」
 簡単に言うと。
 ――『希望ヶ浜学園』で、一日を過ごしてくるように。
 ということらしい。

「特に気をつけたいただきたい注意点が、ひとつだけあります。それは、この街の『日常』を壊さないこと、です」
 ここは、混沌世界を受け入れることのできなかった者たちが築いた『彼らの故郷』。
 彼らにとって、『怪異』は認めざる存在で。
 比較的理解のある学園内であっても、常人離れした行動や、魔術。極端に高い運動性能――そして、人型ではない『人外の姿』は、この街では酷く恐れられるものなのだ。
「まあ、その辺りも、ひとまずは実際に体験してみるのが良いと思います。何かあった時は、私たちもできる限りのフォローをしますから。
 それから。みなさんは、『入学/編入』あるいは『教員を含む職員』として在籍する手はずが済んでいます。
 学校施設や寮などは自由に利用できますので、遠慮なく活用してください」
 ひよのはそう告げると、柔らかな笑顔を浮かべて、言った。
「明日は一日、晴れの天気が続くようです。朝の通学から、希望ヶ浜学園の『日常』を体験してくださいね」

GMコメント

こんにちは、西方稔(にしかた・みのる)です。

本シナリオは、ラリーシナリオ形式にてご案内いたします。
ラリーシナリオの仕様説明は、こちらをご確認ください。
https://rev1.reversion.jp/page/scenariorule#menu13

無理なく書ける範囲での、まったり執筆を予定しております。
全採用のお約束はできませんが、お好きなタイミングで、気軽にご参加いただければ嬉しいです。


●シナリオの目的
 『練達(探求都市国家アデプト)』にて。
 【再現性東京】にある『希望ヶ浜学園』で一日を過ごすシナリオです。
 『希望ヶ浜学園』についての詳細説明は、こちらをご確認ください。
 https://rev1.reversion.jp/page/kibougahama

 第1章は、「学園へ通学する朝」のシーンから始まります。
 当日は「晴れ」。
 リプレイ全体の描写時刻は、朝~夜まで。
 「通学、午前の授業、昼休み、午後の授業、放課後、帰宅」等を、時系列順に描写していく予定です。
 ※どこで章を区切るかは、参加人数やプレイングを見て検討します。

●各章プレイングに記載してほしいこと
 (1)学園での肩書き:「生徒(学年)」「教師・職員」「その他」
 (2)各章で指定された時間帯に、「どこ」で「何を」しているのか
 (3)心情・セリフなど
  ※通常シナリオに比べ描写量が限られます。行動内容は1つに絞るのをお勧めします。

●注意事項
 ・「学園内で一日を過ごす」シナリオのため、通学路以外の「学外」の出来事は描写しません。
 ・敵や戦闘は発生しません。よって、戦闘系スキルは使用不可。
 ・非戦闘スキル、ギフトは、『日常』を壊さないと判断したものに限り使用可。


■単独行動が良い方は、その旨お書き添えください。
 (なにも記載がない場合は、ほかの参加者と会話等を行う場合があります)

■グループ参加を希望する方へ
 2~4人程度まで。5人以上は採用率が低くなります。
 プレイング冒頭に「グループ名」「人数」を記載してください。
 会話相手が居る場合は、必ず「相手のフルネーム(ID)」と「呼び名」も記載をお願いします。
 プレイングから同行者と判断し難い場合は、グループ全員を不採用とします。


それでは、どうぞ穏やかな『日常』を。

  • 再現性東京2010:希望ヶ浜学園『日常』体験記完了
  • GM名西方稔
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年10月09日 21時01分
  • 章数2章
  • 総採用数21人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
ライ・ガネット(p3p008854)
カーバンクル(元人間)


 今日もまた。
 希望ヶ浜に、清々しい朝がやってくる。

 その、早朝の街角にて。
 電柱の合間を小走りに駆け、身を隠しながら移動するモフモフとした生き物の姿があった。
 知る者が見れば、『カーバンクル』と呼ばれる生き物であるとわかったろうが。
「ここだと、この姿は恐れられるんだろうな……。俺だって、したくてこんな格好してる訳じゃ無いんだが……」
 カーバンクル――もとい、ライ・ガネット(p3p008854)はきょろきょろと辺りに視線を走らせ、どこにもひとの眼がないことを確認し、次の電柱まで一気に駆け抜ける。
 ライは、元の世界では冒険者だったが、ダンジョンで見つけた宝石の呪いでカーバンクルの姿になってしまったのだ。
 今は人間の姿に戻る方法を探している最中だが、『希望ヶ浜学園』へはこの姿で、保健室の教師として赴任が決まっている。
 『特異運命座標』として生徒の手本となるならば、姿形はさほど重視しないのだろう。
 かくしてライは、一般人に見られぬよう毎日通勤するという、重大ミッションをこなさなければならなくなった。
「……いや、塞ぎこんでても何にもならないな。俺は俺にできることをしよう」
 ヒトならぬ者が人語を解したところで、驚くひとの眼も今はない。
 街を駆け抜けながら、ライは道に連なる店に目線を走らせる。
「怖がられると悪いから、ここの店で買い物はしないと思うけど。何があるかは知っておかないと、落ち着かないんだよな――」

 遠くその姿を見せ始めた校舎を仰ぎ見て、黒影 鬼灯(p3p007949)は「ふむ、学び舎か」と、感慨深げに呟いた。
「俺たちの元いた世界にも存在していたが。……この再現性東京というのは眩いな。様々な文化を見てきた俺たちでも、これが『日本』を再現した物とは俄に信じ難い」
 目に見える町並すべてが、練達の一角に内包されているというのだ。
 その技術力たるや、鬼灯の想像をはるかに超えている。
「ええ! そうね! とっても楽しみなのだわ鬼灯くん!」
「そうだね、今日は舞台はお休みして。始業の鐘を鳴らそうか」
 腕に抱えた最愛なる嫁殿――人形『章姫』との語らいを楽しみながら道行けば、やがて大きな通りへと出た。
「そうだな……。あれに乗ってみたい」
 鬼灯が示した先に走っていたのは、バスだ。
 一般人にならい見よう見真似で乗車し、空いていた窓際の席に着席する。
 すぐに、車はすべるように動きだし、
「まぁ! お外が凄い速さで流れていくわ!」
 窓に額を押しつけながら、外の景色に興味津々な嫁殿の様子が愛らしい。
 口元を隠す布の下で、唇に笑みを形作りながら。
「俺だって、忍だ。脚の速さなら、この乗り物といい勝負すると思うんだがなあ――」
 鬼灯の呟きは、章姫の楽し気な声にかき消された。
「見て、鬼灯くん! パンをくわえた子が、凄い速さで通りすぎていったわ!」


「オレの名は新道風牙! 希望ヶ浜学園に通うごく普通の15歳! ちょっと人と違うところは、魔物退治が得意ってことかなー」
 新道 風牙(p3p005012)は、部屋にある姿見に映る自分の姿を見やりながら、自己紹介の挨拶内容について検討を重ねていた。
 ――今日は転校1日目。
 小学校までしか通った経験のない風牙にとっては、学生服に袖を通すことから一大イベントの連続だ。
 「へへっ、かっけーだろ?」と、鏡の中の己に語りかけて。
「はじめて通う学校への登校、もう昨日からドキドキだぜ!」
 何度も何度も、鏡をのぞきこむように、制服の着こなしを確かめる。
 だが、そうこうしているうちにも、時計の針は進んでいく。
「――おっと、いけねえ! そろそろ家を出ないと遅刻しちまう!」
 牛乳を一気に飲み干し、いちごジャムを塗った食パンをくわえて出発!
「いくぜ、我が愛車デュランダル!」
 掛け声とともに愛車――ママチャリを踏みこみ、街へと繰りだしていく。
 陽光が肌をあたためる心地よさに、宵のつめたい空気が残る日陰。
 清浄な空気の残る朝の街を自転車で疾走すれば、
「あ、パン屋のおじさんおはよう! パン、おいしいぜ!」
「となりのシンジくんおはよう! 昨日はシチューありがとな!」
 この街へ来て知りあった人々へと、元気に挨拶を交わしていく。
 心躍る朝の時間に、ペダルをこぐ風牙の足にも、力が入る。
 風をきりながら、風牙は青い空を仰いだ。
「さあ、今日から学園生活のはじまりだー!」


 いくらかの学生が学園にたどり着き始めた、その頃。
 アーリア・スピリッツ(p3p004400)は二日酔いの頭を抱えたまま、ようやくたどり着いた職員室の自席の椅子に、全身を預けていた。
「おはようございます、先生」
 隣の席の教師が、自分の分のついでですからと、給湯室で注いだというお茶をさし出してくれる。
「うぅ、おはようございまぁす……。ありがとうございますぅ」
 両手で拝むようにして受け取り、お茶を飲み干す。
 やや苦みのあるそのお茶は、飲み過ぎの身には丁度良かった。
 しかし、いつまでも屍状態ではいられない。
 今日の授業の準備を進めることにする。
 授業中に実施する予定の小テストの文字が揺れて見えたり、いくつも重なって見えたり、世界が揺れたりするのもいつものことだ。
 そこへ、職員室の中でも勤務年数が特に長いという釣り目の女教師が現れ、アーリアを見てぴしゃりと言った。
「スピリッツ先生! な、な、な、なんですの、その服装は!!」
 豊かな胸が綺麗におさまる服が見つからず、胸元のボタンは開き気味で着用していた。
 それが、男子生徒にとっては目の毒だと言うのだ。
 アーリアは、「えぇ~」と唸って。
「だってぇ、ここ、きついんですものぉ!」
 胸元を指して強引なセーフを誘うも、女教師は収まらない。
 そんなことよりも。
 一大事はこの酔いだ。
(授業開始までもうすぐ! それまでに、この酔いをどうにかしないと……!)

成否

成功


第1章 第2節

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
メイ=ルゥ(p3p007582)
シティガール
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
久泉 清鷹(p3p008726)
新たな可能性


 学園までの道を歩くのは、学生ばかりではない。
 希望ヶ浜学園に新任の現国教師として赴任する久泉 清鷹(p3p008726)は、通勤がてらにコンビニに立ちより、弁当を選んでいた。
 どれを選ぼうか――と悩んでいるうちに横から手が伸び、次々と弁当が売れていく。
 見れば、学園に通う学生たちらしい。
 颯爽と店から去っていく制服の後ろ姿を見やり、呟く。
「……やはり、この時間帯は学生が多いな」
 そう言っている合間にも、弁当やおにぎりが飛ぶように売れていく。
 こうなっては仕方がない。
 サンドウィッチとコーヒーを手にレジ待ちの列に並んでいると、何やら違和を感じて。
(……先ほどから、チラチラと視線を感じる。やはり、角と鬼紋がある事が不味いのだろうか……)
 とはいえ、それらは消そうとしても消せぬ物。
 誤魔化すしか無いわけだが――。
 よくよく観察して見れば、特に、希望ヶ浜学園の学生たちはほとんど気にしていないようだ。
 一般人はというと、『見て見ぬふりをしている』と言った方が正しいか。
 目には見えていても、それを正面から指摘する者はいなさそうだ。
(これ以上、此処で悩んでいても詮無い事だな)
 買い物をするくらいなら、問題はなさそうだ。
 清鷹は手早く会計を済ませ、店を出た。
 強い日差しに眼を細める。
 見渡す限りの、清々しい青空だ。
 暮らしに慣れるには、まだ時間が必要かもしれないが。
「天気も良いし、徒歩で向かう内に気分も晴れるだろう」

 制服姿の学生たちが道行くなか、ラダ・ジグリ(p3p000271)は人の流れに添いながら、ゆっくりと歩いていた。
 本来は馬の獣種でケンタウロス型の姿であるが、ここではしっかりと人間種型を成している。
 大学1年生としての編入とあって、希望ヶ浜で手に入る女性服を用意してきたのは良いものの――。
(うーん。コレ、肌や瞳や髪色はこのままでも平気か……?)
 しかし、心配は杞憂だった。
 人間種のカタチを成してさえいれば、さほど気にするものではないらしい。
 見渡せば、髪も肌も個性豊かな者が多く、ラダの姿を見咎める者はいない。
 学園までは、まだ少し距離がある。
 進むにつれ、同じ年代の者たちがぞろぞろと同じ学舎へ向かうのは不思議な光景だった。
 地元では私塾がせいぜいだったから、学校に通うのは初めてだ。
 あたりを見渡せば、同じ制服で並び歩く者。
 親しげに話交わす者。
 だれもが、今日という一日の始まりが穏やかに過ぎると信じて疑っていないように見える。
(いつだったか、地球のニホンという国については聞いていたが。……本当だったんだな)
 だれも武装していないし、している者ともすれ違わない。
 話に聞いていた通りの平和。
 脅威のなさ。
 平穏。
 ラダはふと足を止め。
 己に構わずに、行き過ぎていく学生たちを見送った。
 ただただ、学び舎に向かい、歩き続ける。
 その様を。
(――命が脅かされる事がない代わりに。命の実感を、忘れてしまいそうな場所だ)

 学校に通うのが初めてというイレギュラーズは、他にもいた。
 山脈地域の遊牧民として羊飼いをしていたメイ=ルゥ(p3p007582)にとって、通学準備という体験ですら、何もかもが新鮮に映る。
 小等部に編入する予定だが、同年代のクラスメイトと仲良くできるか等、昨晩からワクワクドキドキが止まらない状態だ。
「フフフー! 学校への登校も完璧にこなすために、メイは色々と調べてきたのですよ! ――登校するときは、食パンを咥えて走って行けばいいのです!!」
 誰に語っていたわけでもないのだが、キリッと表情を引き締めて。
 あらかじめ用意していた焼いた食パン(食べ比べた中で最も美味)に、とろけるようなバターを塗り込める。
 学校鞄を背負い、はむっと食パンをくわえて、いざ通学路へ!
 勢いよく飛びだしてはみたものの。
 いざやってみると、走りながら食べるという行為は、なかなかに難易度が高いことがわかった。
 駆けるごとに背中の上で跳ねる鞄を気にしながら、モゴモゴと懸命に口を動かす。
「ちゃんと、学校に着くまでに食べきらなければ……! むむむ?」
 メイの正面には交差点があり、曲がり角の道の両側から、それぞれ学生たちが駆け来るのがわかった。
 そのうちの一人は、口に食パンをくわえていて。
(こ、これは――!)

 見ず知らずの少女(p3p007582)に道端で見守られる、数分前。
 笹木 花丸(p3p008689)はカーテン越しの朝陽を浴びながら、ありふれた日常世界に暮らす感動を噛みしめていた。
 ここに在るのは、『繰り返される偽りの日々』。
 それがどこか懐かしくて。
 少しだけ、泣きそうになる。
「――って、あ、あわわわ朝から寝過ごすとこだった!」
 ばさりと布団を跳ねのけ、最速で高校生の制服に着替える。
「此処じゃ本気で走れないし、でもご飯は食べないとで……あ、そうだっ!」
 朝食にと用意していた食パンをもふっと口にくわえ、
「いってきまーふ!」
 荒々しく扉から飛びだすと、つま先をトントンと地に打ちつけ、かかとを靴に押し込めながら学園へ続く道を駆ける。
 交差点へ向かい曲がろうとした、その時だった。
 人影が視界に入ったものの、全速力で駆けていた花丸は、止まれない。
 どん!と、衝撃がはしった次の瞬間には、地面に尻をついていた。
「って、いったーいっ!」
「痛いって、花丸さん!?」
 出会い頭にぶつかったのは、顔見知りのリンディス=クァドラータ(p3p007979)だった。
 同じく身にまとっていた高校生の制服が、良く似合っている。
「……あれ? リンディスさんじゃん、おっはよー!」
 尻をついたままぶんぶんと手を振ると、
「確かにパンをくわえて交差点は、どこかで読んだことがありますが……! 危ないですよ!」
「いやー、これには海より深い事情があってさー?」
 伸べられた手を素直に握り返し、よっこいしょと立ちあがる。
 スカートのホコリをぱんと打ちはらい、気を取り直して歩きだした。
 ――灰色に塗り固めた道を、ただただ歩く。
 リンディスにとっては、『自身の日常を望み続けた者たちの世界』。
 その日常がどんなものなのかを記録するための、体験の日だった。
 どれほど平凡な時間になるかと思いきや、親しい友人が一緒にいるだけで、次々と会話が弾んで。
「学校、ですか。花丸さんは何をされますか? 私は図書室、というところに籠ろうかと」
「そだねー。授業受けてご飯食べて、放課後はカフェに繰りだしたり! 学生らしいことがしたいの!」
「確かに。せっかくです。そういうのも、良いかもしれません!」
「リンディスさんもどうかな?」
「……ぜひ! 楽しみです!」

 心躍らせ歩いてゆく少女2人を、メイは感動の面持ちで見送っていた。
(メイは、完璧な『食パンダッシュ』を見てしまったのですよ……!)
 とはいえ、その技術の完成度はかなりのもの。
 自分が披露して見せるには、まだまだ訓練が必要そうだ。
「学生さんは、あれを毎朝やっているのですか……。やっぱり、都会はすごいのですよ」
 感慨深げに頷き。
 メイはふたたび食パンをくわえなおすと、『食パンダッシュ』の高みを目指して、ふたたびせっせと走りはじめた。

成否

成功


第1章 第3節

Suvia=Westbury(p3p000114)
子連れ紅茶マイスター
古木・文(p3p001262)
文具屋
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
ロト(p3p008480)
精霊教師


 学園の校門では、朝早くから教師たちが学生を出迎えていた。
「おはよう。――おはよう、まだ時間はあるから、そんなに慌てなくて大丈夫だよ」
 古木・文(p3p001262)は箒を手に、校門前を掃き清めながら学生たちに声を掛けていた。
 ――元気な子もいれば、眠そうな子もいる。
 眼鏡の奥で子どもたちの顔色を観察――もとい、確認するのに、この場所はちょうど良い。
(今のところ、気分が優れなかったり、様子のおかしい生徒さんはいないようで良かった)
 この街には、『夜妖<ヨル>』と呼ばれる悪性怪異が潜んでいるという。
 学生たちの顔色を見ていれば、何らかの異変に気づくこともできるかもしれない。
(ヨル。……嫌な存在もいたものだよ)
 『住民が平穏に暮らせるように』という気持ちは、ここ、再現性東京でも変わらない。
 念願の古典教師として学園に赴任することができたが、文の知識にある国や学校とは少しばかり勝手が違うのだ。
 一日も早く学校に慣れ、怪異への対応にも応じることができるよう、よくよく情報を集めなければ――。
「校門で挨拶するってのは、ここでいいのかな?」
 背後からの声に振り返れば、鮮やかな金髪をなびかせ、悠然と歩き来る女性――黎明院・ゼフィラ(p3p002101)の姿があった。
「私は新任の世界史教師。黎明院・ゼフィラ」
 よろしく、と告げれば、文も「古典の古木だよ」と、猫背気味に頭をさげる。
 ゼフィラは、まだこの世界の勝手がわかっていないのだと微笑んで。
「授業内容についても、疑問があってね。この学園の世界史は、やはり、『地球』の世界史で良いのかな……? 元々私は、現代日本の出身だし、大学も出ているので教員資格は持っているんだ」
 とはいえ、実際には博士号を取るおまけに取得しただけで、人にものを教えた経験は皆無なのだけれど――。
「……元の世界でできなかった『教師』という仕事。仮の身分とは言え、精一杯やってみようかな、ってね」
 そう決意を語るゼフィラに、文は賛辞を送った。
「身につけたスキルを活かし働くことほど、素晴らしいことはないものだよ。僕も頑張らないとね」
 素直に賞賛され、ゼフィラは照れたように笑って。
「知識を人に語るのは大好きなんだ。専門は文化学だから、思わず授業が脱線するかもしれないな……。ああ、欲を言えばこちらの世界の冒険で収集した各地の伝承の話中もしたいな、是非とも! ……ま、流石にそれはルール違反かな?」
 よほど知識について語るのが好きなのだろうと聞き入っていれば、問いかけに頷いて。
「この学園は、再現性東京の中でも『こちら側』の教育をしているそうだね。だから、渾沌世界のことを語るのは問題ないとのことだよ」
 一般人の暮らす街では『非日常』は許されぬことだが、『学園』の中であれば、理解は得られる。
 ゆえに、渾沌世界のことも語って構わないのだそうだ。
「そうか! それなら、面白おかしい授業ができそうだ。――おはよう!」
 二人は学生に声をかけながら、続けて授業談議に花を咲かせた。

 一方、Suvia=Westbury(p3p000114)は、学園内の花壇で草花をじっくり鑑賞している最中だった。
 校門の方は賑やかだが、中庭の方となるとまだひと気はほとんどない。
 身をかがめ、しゃがんで草花と顔の高さを合わせて。
 傍から見れば、まるで話しかけているかのように見えただろうが。
 ――実際、その通りだった。
 『自然会話』のスキルを使用していたのだ。
 もっとも、この世界での『ルール』は承知している。
 だから、できる限り悟られぬようにコッソリと、誰にも内緒で、こうしてひとり中庭に来ていたのだ。
(こちらの世界には、わたしの知らない木々や草花がたくさんあるみたいですの)
 見たこともない草花は、Suviaの眼にはかけがえのない宝物のように映る。
 色とりどりで目移りしてしまうそれらを調べ尽くすには、時間はいくらあっても足りはしない。
「素敵なブレンドティーを作るためには、こちらの世界の植物についていっぱい勉強しないとですよね。うふふ」
 思わず声が漏れてしまったが。
 その声を聞いている者は、ひとりも居なかった。


 早々に学園に到着していたロト(p3p008480)は、朝礼前の職員室で授業の準備を行っていた。
 朝イチの授業は無いため、今日は2限目からの担当だ。
「……小テストに、プリントのコピーを作成しないと……」
 ふいに風が吹き抜け、舞い飛んでいきそうになった小テストの原稿をあわてて手で押さえる。
 窓際の席からは校門が良く見え、門前に立った教師たちが、登校する生徒たちに丁寧に声をかけていた。
 『平和』。
 あるいは、『平穏』。
 そう呼ぶにふさわしい光景が、眼前には広がっていて。
 ぽかぽかと降りそそぐ陽光を受け、ロトは黒い瞳を細めた。
 鳥たちのさえずりさえも心地よくて。
「しかし、いやぁ。今日は暖か――」
 ふいに襲った睡魔に、身体が傾いだかと思うと。
 机上についていた手が、するりと、すべった。
 ――どさささ。
 思ったよりささやかな音をたてて、机上の書類は雪崩れていった。
「先生、大丈夫ぅ?」
 通り過ぎ際にロトの顔を覗きこんだのは、白衣をまとった女教師シルキィ(p3p008115)だった。
 机から雪崩落ちた書類を、一緒になって拾い集めてくれる。
「あっ、はい! 大丈夫です! すみません、すみません!!」
 ロトはぺこぺこと頭を下げ、大急ぎでシルキィから受け取った書類を積み直した。
 小テストに、配布プリント。
 クラス別に分けていた書類も、この雪崩でぐちゃぐちゃだ。
(……あはは。やっぱり、僕ってダメダメだなぁ)
 去っていくシルキィにもう一度頭を下げ、嘆息する。
「んー……。鰯コーヒーでも呑んで、落ち着こうかな」

 職員室でロキを助けた後、所用を済ませたシルキィは、その足で保健室へ向かっていた。
 彼女は養護教諭として、この学園に赴任しているのだ。
 手始めに、保健室じゅうの窓を開けはなち、空気を入れ替える。
「さて。生徒の来ない今のうちに、掃除と資料のまとめを済ませちゃおうねぇ?」
 白衣の袖をまくり上げ、気合を入れ直す。
 てきぱきと仕事を片づけていけば、保健室の前を通りすぎる学生や教師が、「おはようございます」と手を振り、笑顔を向けてくれる。
「……それにしても、わたしが保健室の先生かぁ」
 どのように学園に関わるかは、自分で選んだ。
 とはいえ、実際にこうして勤めてみると、何だか不思議な気持ちだ。
「混沌に来てからは色んな事を経験してきたけど……。こういう仕事は初めて。大変だけど、だからこそやり甲斐があって楽しいよねぇ」
 体調を崩して休みにくる学生も居れば、教室に居づらいからと、話をしにくる学生もいる。
 繋がりは学生だけではない。
 教師たちとだって、そうだ。
 子どもたちの未来を想い、懸命に働く大人たちが多く居る。
「ここでの本職は、あくまで夜妖<ヨル>退治なわけだけど……。今のところは、出現の報せも無いし。今日は一日、しっかり先生業ができるといいねぇ」
 シルキィはそうつぶやき、大きく開けはなった窓から、青々と澄んだ空を見やった。

成否

成功


第1章 第4節

サイズ(p3p000319)
妖精■■として
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
リック・ウィッド(p3p007033)
ウォーシャーク
十七女 藍(p3p008893)
希望ヶ浜学園の七不思議


 レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)――幼体の森アザラシは、女子生徒用制服を改造してとりつけたカンガルーポケットにすっぽりと収まりながら、通学体験を満喫していた。
「レーさんは森アザラシだから怖がられるけど、グリュックは人型で、身体も尻尾ももふもふで、人間と同じく髪の毛もあるからきっとセーフっきゅ!」
 本当にセーフであったかどうかは、さておき。
 レーゲンの言葉通り、世話役の犬獣人『グリュック』は人型であったことが幸いした。
 案外、普通に街を歩けてしまったのである。
 気を良くしたレーゲンが、道中、「おはようっきゅ!」と学生たちに声をかけても、さほど恐れられることはなかった。
 むしろ、興味をもって迎えられていた。
 学園の生徒はまだ理解があったので、グリュックの姿については、特段触れなかったのである。
 それよりも。
「わ~、かわいい~!」
「これ、あざらしのぬいぐるみでしょ!」
 実際のところ目を引いていたのは、ポケットに収まったレーゲン自身と。
「こっちは結構大きいなー! 鮫のぬいぐるみかい?」
 グリュックが手にしていた、鮫型の腹話術人形――ぬいぐるみのふりをした、リック・ウィッド(p3p007033)の方だった。
 今にして思えば、よほどぬいぐるみの好きな女子学生だと思われていたのだろう。
 リックはできるだけ身体を動かさぬよう、グリュックに身を任せ、学生たちに挨拶を返した。
 取り巻いていた学生たちが離れていったところで、ひと息。
 レーゲンへ向け、声を掛ける。
「ここが、無辜なる混沌じゃない世界を再現した街なのかー」
 念のため、リックやレーゲンが口をひらく時は、ふたりに合わせてグリュックの身体を動かし、はた目には腹話術をしているように見せておく。
 先ほど話しかけてきた学生たちもそうだが、揃いの制服に身を包んだ若者たちが大勢歩く様は、リックの眼には随分と不思議に思えて。
「旅人とか、人間種みたいな外見の人らだけで構成されてるなんて、不思議だなあ」
 こっそり周囲を見回し、初めて見る光景を眺めた。
「あっ。あそこに、見るからにウォーカーなひとたちがいるっきゅ!」
 言われて、視線をやってみれば。

 渾沌からやってきた編入生・サイズ(p3p000319)は、ひとりマイペースに通学路を歩いていた。
 朝食として用意したパンに噛みつき、モグモグと口を動かしながら、歩く。
 片手には教科書を手にしており、器用に片手でめくり、読み進めていく。
(学園生活か……。前世界では、そんなの経験したことないからな……。生まれながら、この世界の魔種的ポジションにいたからな……)
 その姿は、ともすれば日本の各地で見かけられる『薪を背負いながら本を読んで歩く彫像』に似ていたのだが、そんなことは、当のサイズが知るよしもない。
(こんな俺が、学園の勉強とかについていけるのかな……)
 本体が『鎌』であるだけに、金属関連の知識であれば、一通りわかるのだが。
 特殊な計算式となると、太刀打ちできる自信はない。
「……まあ、いまは学園にいかないとな」
 教室に行けば、教科書を眺める時間もあるだろう。
 せっかくの機会だ。
 それぞれじっくり読みつくそうと決意して、ふと、顔をあげると。
 眼の前の電柱の影に、『バラバラ死体』が身を隠していた。
 何度瞬きをして見ても、それはまごうことなく『ウォーキング・バラバラ・デッド』であった。
 その様は、明らかに異質で。
 サイズは、教科書に眼を落としたまま通り過ぎようとした。
 しかし、ちょうど別の電柱へ移動しようと身を乗り出したバラバラ死体と、眼があった。
 ――顔が、ない。
 「眼があったと思った」のは、あくまでもサイズの錯覚で。
 本来あるべき場所のどこにも、顔が存在していなかった。
「キミ、何やってるの……」
 間の抜けた質問だと思ったが、他に問いようがない。
 バラバラ死体は、自分は十七女 藍(p3p008893)であると名乗り、――存在しない顔に、おそらく照れ笑いを浮かべながら――言った。
「いやー、また学校に通えるのは凄く嬉しいのですけどね。見た目がちょっとホラーになっちゃっているので、私。服で誤魔化そうにも服までバラけるし……。そういうわけで、人目を忍んで隠れながらの通学です!」
「ちょっと……?」
 藍はサイズの呟きを華麗にスルーしながら、続ける。
「こういうかくれんぼ、嫌いじゃあないのですが。人に見られたらよくて通報。悪ければ気絶とかされて、見た人に怪我をさせてしまうかもしれません。でも、せっかくの機会ですのに! そんな未来は御免です!!」
 熱の入った演説だったが、サイズの頭には入ってこなかった。
 顔がないのに、どこからか声が聞こえくることが、不思議で仕方なかったのだ。
「移動時はなるべく隠れて、人前では髪の毛で顔を隠してます! ちょっと怪しいですが、顔無しそのものを見られるよりはマシですよね?」
「ちょっと……?」
 二度目の問いかけも、有無を言わさずスルーされ。
「たとえ自分が『都市伝説』になったとしても、平穏無事に学園へたどり着くぞー!」
 拳を振りあげ己を鼓舞するバラバラ死体の様子に、一抹の不安を覚えながらも。
 サイズはふたたび、手にした教科書に目線を落とし。
 先行く藍を追うように、黙々と歩きはじめた。


 ふかふかの布団にくるまり、ふわぁと大あくびをして。
 目覚めたばかりのユーリエ・シュトラール(p3p001160)は、両腕を広げて大きく伸びをする。
「んー……良く寝たぁ」
 ともすれば再び夢の世界へ戻ろうとする意識を引き戻し、寝具近くに設置していた目覚まし時計に手を伸ばす。
 文字盤を見て。
 もう一度、よく見た。
「ええっ!? も、もうこんな時間!! な、なんで……! 目覚ましもセットして……セット、できてない!?」
 大慌てでパジャマから制服へ着替えると、長い髪を手櫛でとき、急ぎ髪を結わえる。
「あああ、このままだと遅刻だ……!」
 通学鞄に貴重品を放りこみ、ユーリエは鏡台の前に立った。
 焦る気持ちもあるけれど、口角をあげて、にっこりスマイル。
「うん、今日もいい笑顔!」
 台所へ向かい、ぱくりとパンをくわえれば、ペットの蝙蝠がパタパタと周囲を飛び回る。
 どうやら、ユーリエを急かしているらしい。
「わかってる、お留守番お願い! ……じゃ、いってくるね!」
 後ろを振り返らずに、通学路を一目散。
 頑張って走ってはみるものの、途中には信号や踏切があり、どうしても時間をロスしてしまう。
 その合間に、くわえていたパンを食べきることはできたのだが。
「大変……、このペースだと遅れちゃうよ!」
 腕時計を見やれば、始業の時刻が近い。
 慌てて周囲を見渡せば、同じように遅刻しそうな学生の姿がちらほらと見えて。
「よぉし……!」
 おそらく、裏道を行くのだろう。
 細い道へ消えていく学生たちを見失わぬよう、ユーリエは懸命に追いかけた。

成否

成功


第1章 第5節

リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
相川 操(p3p008880)
助っ人部員


「ここが、希望ヶ浜学園かぁ」
 校門を通り抜けた相川 操(p3p008880)は、眼前に在る校舎を前に、感慨深げにつぶやいた。
「さて! わざわざ早起きして早めに学校に来たからには……やることは、やっとかないとね。――いざ、朝練巡りだ!」
 操は、幼い頃から様々なスポーツを嗜んできたスポーツ少女だ。
 しかし、何をするにも上達が早すぎるが故に飽きっぽく、中学・高校時代ともに、特定の部活に打ちこみ続けたことがない。
 ――ことスポーツに関して、天才肌であったがゆえの、苦悩。
 しかし、渾沌に召喚されて以降は、『レベル1』の効果により周囲と対等になっている。
 この状態であれば、スポーツをもっと、楽しんで打ちこめるはずだ。
 時刻を確認する。
 今が、始業時間の約1時間前。
(ってことは、1部活あたり5~10分くらいかな? 長居は厳禁!)
 己に言い聞かせるように腕時計を見やり、ひとまず校庭へと向かう。
 サッカー部に、野球部、陸上部。
 音楽にあわせて軽快に踊る、ダンス部の姿もある。
 弓道部に、ゴルフ部。
 水泳部の選手の、涼し気な姿も目に入った。
「いいねいいねー! これぞ青春って感じ?」
 探せば、この他にも部活動が存在するのかもしれない。
 放課後もまた見学に回ろうと、決意した時だ。
 腕時計を見て、衝撃を受ける。
「転入して早々に遅刻とか、流石にシャレにならないでしょ……!」
 操は急ぎ、教室へ向かって駆けだした。


 始業のチャイムが鳴ると同時に、リア・クォーツ(p3p004937)はある教室へと踏み込んでいた。
 整然と席に着く学生たちと向かい合い、
「九尾(つづらお)・リアです。担当教科は音楽です。どうぞ、よろしく」
 ぱらぱらと拍手が鳴り、リアが深々と頭を下げる。
(……わざわざ偽名まで名乗って、教師として侵入か……)
 それも、副担任という面倒そうな立場だ。
 己を見やる、好奇の旋律がぐさぐさと届く。
(ま、いつもウチでガキ共の相手してるし、同じ感じでやりゃいいでしょ)
 見れば、男子学生がまっすぐに手をあげている。
「ん? あぁ、質問ですか? 答えられる範囲なら……」
 言い終わる前に、次々と手があがる。
「先生、彼氏居ますか?」
「はい? 知るかボケ、次」
「好みのタイプは?」
「少なくともお前じゃねーよ、はい次」
「スリーサイズ教えてくださいっ!!」
「ころすぞ」
 いかにも思春期の少年少女たちが興味を持ちそうな話題だ。
 とはいえ、ロクな質問はないのかと辟易し、最後に、おずおずと手をあげた女子生徒を指名する。
「あの、九尾先生の好きな音楽について教えてください!」
 問われ、リアはひと呼吸おいて。
「……最近気になっているのは、ある劇団の奏でる『神曲』です。興味があるなら、暇な時に聴かせてあげますよ」
 そう告げれば、学生たちから素直に歓声があがった。
(……まぁ、ここの日常を守る為。我慢して、頑張りますか)

成否

成功

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