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シナリオ詳細

ローレット・トレーニングVII<鉄帝>

完了

参加者 : 105 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鋼鉄の帝国より
 荒野に居並ぶ者達の多くはその身のどこかが鋼鉄で出来ている――『鉄騎種』と呼ばれる者達だ。
 ヒョウと吹いた北国の風は季節的なこともあって心地いい。
「さて、初めましての者が多いだろうか。ユリアーナという。よろしく頼む」
 銀色の長髪を靡かせ、『銀閃の乙女』ユリアーナ(p3n000082)は涼しげに君達を見る。
「今日はどうして呼んだんだ? しかも、後ろにいるのは兵士だろ?」
 イレギュラーズの一人の問いに、彼女はその表情を柔らかい笑みに変えた。
「たしか今日は君たち特異運命座標による大量召喚が行われてからちょうど三年目の記念日なのだろう?
 だから、ちょっとしたお祝いを兼ねて招待させてもらったのだ。
 バイオン宰相閣下のご指示でもある」
 空中神殿に特異運命座標が『大量召喚』され、この世界に『大いなる可能性』が芽生えた記念の日。
 その日からちょうど三年――もちろん中には最近になってなった者もいるが――その記念すべき日の招待としてはかなり物騒な状況だった。
 何より、そのお祝いと後ろの状況とは一度聞いただけでは必ずしも一致しない。
「君たちの活躍は聞いている。なんでも強大な魔種を2人も倒したのだとか。
 私は出向けなかったが、我ら鉄帝国でも歯車大聖堂への対応でお世話になった。
 私も鉄帝国人の一人として感謝している」
 そういうとユリアーナは手に持つ鎗を持ち直してくるりと構えなおす。
「つまりだ。武力と黒鉄の帝国、我らゼシュテル鉄帝国らしく――『合同訓練』でもって、君たちの事を祝賀する、ということだ」
「それで、ボクも呼ばれたんだ! 前にキミ達と一緒に合同訓練やったでしょ?」
 お馴染み『アイドル闘士』パルス・パッション(p3n000070)は君達にウインクして見せる。
 そこまで言われれば、後ろに居並ぶ威容の兵士達も納得だろう。
 大陸における純粋な軍事力をもってすれば最強の大国。
 極寒の北国にあって、『武力を愛』し、『国家元首すら戦闘力で決める』国であり、イレギュラーズにとってもなじみ深い『ラド・バウ』を帝都『スチールグラード』に置く。
 そんな国においていえば、あの名高きイレギュラーズを相手に戦いたいと思う者だって多い、というわけだ。
「私の後ろにいる兵をけちょんけちょんにしてくれたって構わないし、彼らを使って集団指揮の訓練だってできるはずだ。
 何なら遥か東方――『ノーザンキングス』にちょっとぐらいなら手を出しても構わない」
 ノーザンキングスーー連合王国ノーザンキングスとは、鉄帝国の北東部、『ヴィーザル地方』にて凍てつく峡湾を統べる獰猛な戦闘民族『ノルダイン』、
 雷神の末裔を称する誇り高き高地部族『ハイエスタ』、永久氷樹と共に生きる英知の獣人族『シルヴァンス』の三部族が手を取りあい名乗りだした新興勢力である。
 手を取り合った割には仲があまりよろしくない上、鉄帝国の行なう軍事行動が『経済的に栄え、国と国民の困窮を救うため』にある以上、大自然広がると言えど貧しい大森林地帯への対応はなおざりな部分が否めない。
 そんな彼の土地への――あるいは『からの』依頼も、時折舞い込んでくることがある。
「君達の中には純粋な武力、物理的な戦闘をしないものもいるだろうから、何をしたっていいよ!
 普通にお茶会とかしてみてもいいかも?」
 アイドルとして文字通り『歌って踊れる』パルスも、一線級の闘士、しかも君達を気に入ってくれている彼女なら。
 一緒にトレーニングしてほしいといったら受け入れてくれるだろう。
「それに、クラースナヤ・ズヴェズダーの『大司教』ヴァルフォロメイ様から、歯車大聖堂にて超古代文明の遺物を研究したり、クラースナヤの施設で祈ったり孤児と遊んだりして構わないとお話を受けている」
「そうだね、帝都に向かえば兵法書や少ないかもしれないけど、魔導書の類も手に入ると思うよ!
 ビッツさんとかは今日は試合なかったし、ウィンドウショッピングとかしてるかもね」
 なんなら、パルスと一緒にライブしたり――あえて彼女のライブを見せてもらうだけでもいいかもしれない。
 それに、たまたま非番――あるいはラド・バウの試合のない著名人と鉢合わせれば一緒にウィンドウショッピングなんかも出来るだろう。
 こうして、もはや懐かしく思う者もいるであろう『盗賊王事変』の最中に勃発し、幻想、鉄帝両国より依頼の齎された『北部戦線』
 海洋大号令の最中、海洋王国に対する外交で行なわれた『第三次グレイス・ヌレ海戦』
 鉄帝国本土において古代兵器を巡り行なわれた『モリブデン事件』と『Gear Basilica』
 そして、最も記憶に新しきは『海洋大号令』が最終盤、援軍として『フェデリア海域』での死闘。
 多くの場所で相まみえた鉄帝国との、意外にも『本土』においては初めての合同訓練の始まりである。

GMコメント

Re:versionです。三周年ありがとうございます!
今回は特別企画で各国に分かれてのイベントシナリオとなります。

●重要:『ローレット・トレーニングVIIは1本しか参加できません』
『ローレット・トレーニングVII<国家名>』は1本しか参加することが出来ません。
 参加後の移動も行うことが出来ませんので、参加シナリオ間違いなどにご注意下さい。

●成功度について
 難易度Easyの経験値・ゴールド獲得は保証されます。
 一定のルールの中で参加人数に応じて獲得経験値が増加します。
 それとは別に『ローレット・トレーニングVII』全シナリオ合計で700人を超えた場合、大成功します。(余録です)
 まかり間違って『ローレット・トレーニングVII』全シナリオ合計で1000人を超えた場合、更に何か起きます。(想定外です)
 万が一もっとすごかったらまた色々考えます。
 尚、プレイング素敵だった場合『全体に』別枠加算される場合があります。
 又、称号が付与される場合があります。

●プレイングについて
 下記ルールを守り、内容は基本的にお好きにどうぞ。
 
【ペア・グループ参加】
 どなたかとペアで参加する場合は相手の名前とIDを記載してください。できればフルネーム+IDがあるとマッチングがスムーズになります。
 『レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)』くらいまでなら読み取れますが、それ以上略されてしまうと最悪迷子になるのでご注意ください。
 三人以上のお楽しみの場合は(できればお名前もあって欲しいですが)【アランズブートキャンプ】みたいなグループ名でもOKとします。これも表記ゆれがあったりすると迷子になりかねないのでくれぐれもご注意くださいませ。

●注意
 このシナリオで行われるのはスポット的なリプレイ描写となります。
 通常のイベントシナリオのような描写密度は基本的にありません。
 また全員描写も原則行いません(本当に)
 代わりにリソース獲得効率を通常のイベントシナリオの三倍以上としています。

●任務達成条件
・真面目(?)に面白く(?)トレーニングしましょう。
・三周年を楽しみましょう!

  • ローレット・トレーニングVII<鉄帝>完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別イベント
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年08月17日 23時18分
  • 参加人数105/∞人
  • 相談8日
  • 参加費50RC

参加者 : 105 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(105人)

花房・てふ(p3p000003)
BBBA
シルヴィア・テスタメント(p3p000058)
Jaeger Maid
ヘルモルト・ミーヌス(p3p000167)
強襲型メイド
黒須 桜花(p3p000248)
黒傘の君
セララ(p3p000273)
魔法騎士
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
杠・修也(p3p000378)
壁を超えよ
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
キミと、手を繋ぐ
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
ルル・ドロップ(p3p000961)
出張修理工房
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
オリヴィア・ローゼンタール(p3p001467)
鋼の拳
諏訪田 大二(p3p001482)
リッチ・オブ・リッチ
ガーグムド(p3p001606)
爆走爆炎爆砕流
七鳥・天十里(p3p001668)
キコ・デトロイト・ベルナールド(p3p001825)
同じ釜の飯を食う
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
スフィエル・モフ・ケルベリーゼ(p3p002316)
ケルベリーゼ
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
あい・うえ男(p3p002551)
ほよもちクッション魔王様
リリィ=B=ストライプ(p3p002591)
リトルナイト
ユーディット・ランデル(p3p002695)
虚白の焔
アレックス=E=フォルカス(p3p002810)
天罰
ライセル(p3p002845)
Dáinsleif
アーサー・G・オーウェン(p3p004213)
暁の鎧
アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)
シティー・メイド
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
札切 九郎(p3p004384)
純粋なクロ
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ライハ・ネーゼス(p3p004933)
トルバドール
カティア・ルーデ・サスティン(p3p005196)
グレイガーデン
すずな(p3p005307)
信ず刄
ニコ・マリオネッタ・ベルナールド(p3p005355)
パペットマスター
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
クロノ ノワール(p3p006183)
元ヴィランの魔導少年
クライム(p3p006190)
アニー・ルアン(p3p006196)
鳳凰
華懿戸 竜祢(p3p006197)
応竜
アーバレスタ・グラナイト(p3p006228)
爆裂猛牛
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
ブリュンヒルデ・アイゼンローズ(p3p006283)
特異運命座標
ローゼス・ビスマルクス(p3p006313)
鉄の薔薇
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
オズ・ヨハネス・マリオット(p3p006699)
魔科学ドール
墨江・花仙(p3p006778)
分かり合うための一戦
クリストファー・J・バートランド(p3p006801)
荒野の珍味体験者
ヨシト・エイツ(p3p006813)
救い手
神崎・紅(p3p006815)
アリル・スウェイス(p3p006929)
Road=Roller(p3p006957)
クレイジー・キャット
フェルヴィナク・オイントメントゥ(p3p006962)
ネリ(p3p007055)
妖怪・白うねり
王 虎(p3p007117)
雷武
タツミ・ロック・ストレージ(p3p007185)
空気読め太郎
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ラド・バウA級闘士
シュラ・シルバー(p3p007302)
魔眼破り
ジークムント(p3p007318)
鈴ヶ原・橙子(p3p007393)
特異運命座標
アンゼル・アウグスト(p3p007412)
ゴディバ・フラムマガラ(p3p007424)
無詠唱魔法使い
ウィルフリード・ハンネス・フリードル(p3p007451)
燃え誇る決意
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
中野 麻衣(p3p007753)
秒速の女騎士
ルナヴァーニ(p3p007799)
無垢なる玉兎
Meer=See=Februar(p3p007819)
おはようの祝福
ウサーシャ(p3p007848)
裁断者
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)
雷神
フェルシア・ヴァーミリオン(p3p007908)
賢者の石
春宮・日向(p3p007910)
春雷の
刃金・文人(p3p007922)
鋼の如く
ベアトリーチェ・シュラム(p3p007924)
ルリ・メイフィールド(p3p007928)
特異運命座標
イト=ストレム(p3p007933)
目覚めたファン心
カリヨン(p3p007956)
歌謡い
カナメ(p3p007960)
毒亜竜脅し
ハルア・フィーン(p3p007983)
おもひで
クリスティーナ・フォン・ヴァイセンブルク(p3p007997)
成果を伝う者
ピエース=ピエース(p3p008007)
追い続ける者
ルシオ・エクセリオン(p3p008104)
目ざとき勇者
リズリー・クレイグ(p3p008130)
暴風暴威
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
小さな願い
エリオット・ストレイン(p3p008313)
長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢
リーシェ=フィル=シトロニア(p3p008332)
銀翼の拳
夜式・十七号(p3p008363)
蒼き燕
エミリア・カーライル(p3p008375)
新たな景色
ココア・テッジ(p3p008442)
鋼鉄の冒険者
楠・大地(p3p008466)
新たな可能性
ヤナ・クリシナ(p3p008492)
クリシナシスターズ・蒼
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
彼女(ほし)を掴めば
ヴァローナ(p3p008520)
バーバヤーガ
ミズキ・フリージア(p3p008540)
いつか貴方に届く弾丸
ヤース ミール(p3p008544)
特異運命座標
カジミェシュ・ボレスワフ・タルノフスキ(p3p008553)
シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)
魂の護り手
アヤメ・フリージア(p3p008574)
死神小鬼
グラヴェイル(p3p008594)
未熟なり
アルフィンレーヌ(p3p008672)
みんなの?お母ちゃん
ベイク・ド・クロワッサン(p3p008685)
食パンは君を裏切らない
二(p3p008693)
もうまけない
真道 陽往(p3p008778)
双銃の狼
ヴァルフラーン(p3p008827)
イニス・イス・アンサズ(p3p008935)

リプレイ

●鉄帝式トレーニングという名の荒野戦場にて
 広がる荒野の熱気は極寒の北国であることを忘れさせるほどであった。
「お相手に合わせたご奉仕をするのがメイドの務め。
 精一杯ご奉仕させていただきます」
 恭しくカーテシーを決めるヘルモルトが目の前に立つ剣士らしき鉄帝兵に至近する。
 兵士が剣を振り上げるのと合わせるようにヘルモルトは掌底でその構えを崩し、そのまま軸足を跳ね上げ後ろ回し蹴りを叩き込む。
 ふわりと美しい所作の一撃が兵士を大地に沈めるのだ。
「相変わらずここのノリは変わらねえな」
 桜花はそんなことをつぶやくや、騎士剣で自らに軽く傷を付けて血を流し、それで生成した血の刃を目の前にいた兵士に叩きつけた。
「HAHAHA、燃えろ! 湧け! 荒れ狂え!」
 どいつもこいつも巻き込んでパーティーと洒落込もうじゃないか!」
 貴道の拳が鉄帝軍の兵士に突き刺さる。
 周囲に溢れる数多の兵士達、ボクシング特有のファイティングポーズをそのままに、兵士の一撃を受けながら祭り(パーティー)に笑う。
 貴道の快活な答えに応じるように、兵士達が沸き上がる。
『かかってくるワン!』
『ボコボコにしてやるワン!』
「よ~しがんばろ~!」
 やる気満々のプニとムニに応じるようにモフは決断し、兵士たち目掛けて飛び掛かる。
 スフィエルとしての放つショットガンブロウが兵士の鳩尾を撃ち抜き、兵士の動きが痺れた。
「だれでもいいからリリィといっしょにくんれんするのー!」
 兵士達の中心に躍り込んだ身の丈を超える長大剣を振るいながら、リリィが突撃する。
 周囲にいた兵士達の多くが巻き込まれ、地面に倒れていく。
「ユリアーナ殿。獣の荒い戦い方で悪いが……一戦、指南していただけるとありがたい」
 魔槍片手に異形へ変じたアレックスの言葉に、兵士達を見ていたユリアーナが一度目を開いて、微かに笑み、槍を構えた。
「気合い入れてトレーニングしますよ!」
 ぴょんぴょんと軽くジャンプしてストレッチを終わらせた九郎も走り出し、ヒドゥンブレイドで近くにいた一人の兵士を斬りつける。
 それに対応するように動いた鉄帝兵を相手に、そのまま切り結んでいく。
「一応はC級闘士ってところを見せてあげる! 一対多でもなんでも来いやあ!」
 先生と共に雷雀の流銀剣・彗星と天使の懐剣を構えたティスルが鉄帝軍めがけて突貫する。
 それを受けての盾と槍を構える最前衛の一人が盾を押し出す。
 しかしそれは幻影でしかない。背後に転移したティスルが剣を振りぬいた。
「それじゃあ、一気に舞い上がって! 光の翼!」
 輝く光刃が戦場を焼き払う。
 クライムは鉄帝兵を相手に構えていた。
 間合いは一瞬、踏み込みと同時に刃を抜いた。黒曜の輝きがあらぬ方向から鉄帝兵へと駆け抜ける。
 斬撃の傷は鎧に阻まれいささか浅い。
 応じるように動きた剣を躱しながら、間合いを整える。
「フム……この世界、この時代では先の戦士……ならば」
 呟きと同時に、クライムは再び剣を走らせた。
「くくっ、あぁ……来て良かった」
 そう言って歓喜に笑うのは竜祢だった。
 目の前に広がる者達が輝きのなんと眩い事か。
(かつてこんな光景を目にしたのは……たしか前回は百何十年か前程度だったか?)
「来い! 勝負に油断も手加減もないぞ! さぁ、お前の輝きを見せてくれ!」
 蒼翠剣・八十禍津――青と緑の二色に輝く刃をかまえる竜祢に向かって、雄叫びを上げる兵士達が殺到していく。
 オズは手を使わないで鉄帝兵を相手取っていた。
 ただの蹴りによる強烈かつ変幻自在な攻撃はまるで魔法のよう。
「皆はついてこれるかなぁ?
 さぁさぁ、これより始まるはオズの魔法(物理)
 摩訶不思議な奇術をお見せするね!」
 ――なんて開始前に言ってのけた言葉に偽りはない。
 涼しい顔で愛らしく笑いながら、次を探して魔法使いは戦場を行く。
 ルシオは間合いを取り合う槍使いの鉄帝兵の隙を伺い、神速の刺突を放つ。
 音を置き去りにするかのような強烈な一撃は槍兵の鎧に大きなひびを入れる。
 相手の反撃を払えば、その美しき顔に汗が滲んでいた。
 その視線では絶えず周囲の様子を見て退路経路の確保には余念がなく、鉄帝――大陸最強とも伝わる軍を構成する兵士の力を前に油断はない。
 てふはそんな仲間たちの活躍を見ながら、目標とすべき道を見定める。

 一方、荒野では演習なのか喧嘩なのか戦争なのか分からない熱気から少しばかり離れた者達もいた。
 ガーグムドは荒野の一か所に簡易のサウナを作ると、その中に兵士達と共に引き籠っていた。
 だらだらと汗を流し始めた兵士達――いざ、誰が最後までその場に残るのか。
(ここは武に優れし地。幾人もの英雄が生まれやすい……となれば多くの物語をまたこの目に見る事が出来よう。
 無論此度は訓練のソレであろうが。さて、楽しみな事だ)
 そう思っていたネーゼスはイレギュラーズと鉄帝兵との間に繰り広げられる物語を見据えている。
 如何な訓練を行なうのだ? そう思っていたこの訓練はまさに血反吐を吐くが如きそれである。
 エリオットも同じように見学をしていた。
 一つ一つの反復練習をしている場所、イレギュラーズと実戦さながらの戦いを繰り広げる場所、様々な訓練を繰り広げる人々。
 そのまま視線を別の方向へ向ければ、そこには傷を負って休息に入る者達が見える。
 エリオットは彼らの下へと飲み物でもと歩き出す。
「知ってた……! 知ってたよ! 鉄帝(じもと)の奴らは脳筋だし、そこに嬉々として突っ込むイレギュラーズもそういうのだって!
 でもお前ら手合わせや訓練は良いけど流石に怪我を怪我のまんまで済ませんじゃねぇよチクショウ!?
 ネーゼスが思案する横で絶叫するのはヨシトだ。
 訓練の影響でボロボロに怪我を負うイレギュラーズや鉄帝兵士達。
 かれらへと自らの覚える回復術を行使し続けるヨシトの心労もすさまじいものがある。
 ある種、鉄帝らしくない思考をすると自覚するヨシトにとってはこの訓練の在り方に少しばかりの苛立ちを見せながら治療を開始する。
「ちょっとダンベル持ち上げ勝負してくださいませんか?」
 シュラは荒野で小休止をしていた兵士に声をかける。
 以前にダンベル持ち上げ勝負をして中途半端な引き分けとなったことが不完全燃焼だったというシュラは、きちんとした勝負をする機会が欲しかったのだという。
(ちなみに私、ギフトの効果で運べる大きさの物なら何キロあっても持てるんですけど……これってドーピングとかになるんですかねぇ?)
 ダンベルを持ってきた兵士を見ながら、内心にそんな事を思いながら――
 美しき白い毛並みに青い瞳をした犬と共に走り込みをしているのはライセルだ。
「最近、体力が落ちてきているような気がしてね……ジョニーもそう思うだろう?」
『ワンワン』
 そう思っているのか、或いはライセルと一緒に走れることが嬉しいのか――はたまたその両方か、ジョニーの吠え声も心なしか明るい。
 一人と一匹、走り込みをしながら、ライセルは視線を荒野で戦う仲間たちに向けた。
 そんなライセルの後ろを追いかけるようにベアトリーチェも走り込みをしている。
 ヤース ミールは荒野を駆け抜ける。
 馬は寒冷地の動物である。疾走する毛並みの美しさは生き生きとしていた。
「私だァァァァ!!!!! ロードローラーだァッ!!!
 今回のロレトレはァァァ! 鉄ッッッッ帝であるゥゥゥゥゥ↑↑↑!!!
 鉄帝のことは良くわからんがァ!筋肉やパワー、鍛錬、そして――」
 カッ輝くライト!
「腹筋1000回! 腕立て1000回! スクワット1000回! そして”マラソン”!!! 1000kmッッ!!!!!
 何ッ!? 不可能だとッ? 出来るか否かでは無いッ!
 ”成し遂げる”のだァァァ!!!!!
 うぉぉぉぉぉ!!!!!」
 ハチャメチャメニューをRoad=Rollerが走り続ける。
 そんなRoad=Rollerに続くようにアンゼル、麻衣、も筋肉トレーニングを試みていく。
「いやー、、久々に戻ってきたっすけど、
 前は視界が狭かったんすね、全然周りも見てなかったし、久々の故郷を堪能するとするっすよ」
 ひと勝負繰り広げたカーライルは伸びをしながらぶらぶらと散策を始めていた。
「さて、ここに来れてなんとなく過去は過去と割り切れた気がするっす。
 これからは明日に向けて、頑張るっすかね」
 ぽつりと誰に聞かせるでもない言葉がびょうと吹いた風にさらわれて荒野に消えていく。
 アルフィンレーヌは戦場の後方でどこから持ってきたのか大量の饅頭を生産していた。
「あなた、みてわからないの? わたしはおまんじゅうの用意で忙しいの。邪魔しないでもらえる?
 大体、好き勝手の暴れるだけじゃあ、仲間に迷惑でしょう?
 獣でももう少し、頭を使うわよ? 今までどういう教育受けてきたの?
 それで正規兵なわけ? だめでしょう、そんなことでは」
 向上によって近寄ってきた兵士達を打ち据え、彼女はお母ちゃんのように愛のあるお説教を熟す。
 ベイクは戦いの小休止をしている人々の方へと近寄ると、その顎をクイってやってその口に熱々かりかりのトーストをぶち込んでいく。
 驚きつつも、美味しそうに表情を浮かべる人々に、うんうんと頷く。
(私はここに食パンとしての職務を全うする為に来たんだ
 君も、君も、君も。分かる、分かるよ。食パンを欲してるんだね)
 そう言って、美味しいトーストを口に放り込んでいく。
「ヨハン殿、かな?」
 手負いの者を回復させていたヨハンは声を聞いて振り返る。
 さて、そこにいるのはユリアーナだ。
「すまないな。宰相閣下は来られなかったが、私のでよければと思ってな」
 手渡されたのは、幾つかの兵法書。中には手書きの物もある。
「兵法書ですか……?」
「あぁ。せっかくなら、共に学ぼうじゃないか」
 二人は互いに兵法書を開いてあれやこれやと語り合っていく。
 カリヨンは一人、子守唄を謳う。
 赤と青に輝く双瞳をやや細め、優しく歌うその声は多くの者の高ぶる心を鎮め、静かにねむりへといざなっていく。
(色んなお偉い様方が浮き足立っていますわ
 無理もありませんものね、そう、例え皇帝陛下までもが浮かれていても)
 そう思って視線を上げる。
「ヴェルス様……」
 ぽつりと、今はここにいない麗しき皇帝を思いながら、奏で続ける。


(それにしても……なんつーか……腹、減ったな
本業はコックだし?何かしら飯作るのもまあ、ありだな)
「いや、やめだ。俺も戦う決意をしねえといけねえ。
戦いたい。身近な人が傷ついて帰ってきた時に、何でもねえフリして飯作って待ってるだけなのは、もう耐えらんねえよ」
 ――だから
「俺は俺なりに出来ることを探していかねぇと」
 まずは、あそこで戦ってる仲間たちの方へ、行くとしよう。
 キコは走り出す。熱気荒ぶる主戦場へと。
「よーし……! 誰でも構わん、俺を鍛えてくれる人はいないかー!!!
 俺はすべての助けを求める人を救いたい!
 そのために必要なのは強靭な肉体! そして精神! 技はその後で勝手に着いてくるはずだー!」
 全身前でいてサンドバックにして殴ってくれ、そう言い放つ大地へと少し動揺した様子を見せた兵士達が殺到していく。
「私達の第二の故郷でもある、鉄帝……
 此処で戦い方の練習をするのはいい考えだと思いますっ」
 少しばかり力不足じゃ……と少々不安そうにするアヤメに対して、ミズキは力強くうなずく。
「えぇ、此処にゲブラーさんが居なくても!
 この国にゲブラーさんがいるのは間違いないんです!
 だったら、此処で修行するのはファンとして当然ですよね!」
「ミズキ義理姉さんの考え方は理解できませんっ……!
 それがファンっていうものなんですかっ……?!」
「そうですよ! それじゃあ、アヤメ、お願いしますね! ……全力疾走です!」
 言うが速いか疾走するミズキに遅れないようにアヤメは驚きながらも饗宴を披露した。
 突っ込んでいったミズキが一人の鉄帝兵を蹴り倒し、次々にそれを繰り返していく。
「へへっ、模擬戦とはいえ手加減なんてしないでくれよなっ!?」
 陽往は一人の兵士に対して銃弾を浴びせかける。
 二丁拳銃から放たれる弾丸の雨が兵士の鎧にひびを入れていく。
 返すように放たれた弾丸を、陽往は後ろに跳び躱していく。
 レイリーと朋子は二人で一組となって鉄帝兵を相手に戦っていた。
 今回、鉄帝に来たイレギュラーズの中でも多くが参加するこの大規模な対人組手――という名の乱戦は、朋子が発案者といっていいだろう。
 白き守護竜を思わせる装甲を見に纏い、多数の兵士から朋子を守るレイリーと、強烈な火力を持つ朋子。
 守りと攻め、それぞれに特化したふたりの連携に、既に何人かの兵士が倒れている。
「私の守りの神髄をお見せしよう!」
 向上を上げるレイリー。
「叶うなら!! 噂の皇帝陛下とも戦ってみたいなって!!!
 世界最強クラスの皇帝陛下! 世界最強に挑んでみたい!!」
 また一人吹き飛ばした朋子が誰がしかに同意を求める。
「私も少しばかり身体のほてりが収まらぬ。陛下でなくて済まないが、お相手しよう!」
 ユリアーナが飛び込んでくる。
 文人は空気の薄い高地にて、基礎訓練を始めていた。
 遭難防止用の地図とコンパスはばっちり――さて、始めようか。

●ラド・バウにて
 ――鉄帝。
 遥かあの絶望の青の下、貴方達の誇りを知った。
 貴方達の思いを知った。
 リーシェは目を開いて、拳を握りなおす。
( ローレットとしては未だ経験の浅い新参者だけれど、経験の場とさせてほしい。
 この拳の先で何かが掴みとれる、その自信を貰う為に。
 商いしか知らなかった僕に拳の大きさを知らしめてくれた、貴方達の力を)
 秘薬を用いて自らを強化したリーシェの拳は、闘士に向けて叩き込まれていく。
(つい先日、初めての任務に参加し、仲間の頼もしさと自身の未熟を思い知りました
 それなりに鍛えてきたつもりでしたが、所詮は命のやり取りをしない、部活動のようなものだったと……)
 力不足を実感したオリヴィアは静かに拳を握る。
(こんな体たらくでは竜に拳を届かせるなど、夢のまた夢)
 ――だから、まずは、貴方達からだ。
 ラド・バウの闘士へと向けられた拳は、死線を乗り越え、更に鋭く。
「私ね、魔力が漏れ出す病気だったみたいで? なんか?
 ちょーやばいみたいで? 魔力使うと若返る的な? そんな感じのなんびょーしてーしゃだったの!」
 ギフトでその難病が軽度?になったヴァーミリオンはちょっと全力で魔力使ってみたかったという。
 とはいえ、全力を出せと言われて出さぬラドバウ闘士でもない。お見事、ヴァーミリオンは魔力を使い切ったらしい。
「一戦所望!」
 構えを取った迅は猛ると共に、目の前にいるラド・バウの闘士とぶつかり合う。
 勝ち負けを気にせず、とにかく戦えればいいという迅の表情は明るい。
 瞬天三段で敵を落とし、鉄拳鳳墜で加護ごと叩き潰す一閃が大きく削り落としていく。
 クロノはぺこりと礼をしてラドバウの闘士に向かって立ち向かっていく。
「筋肉万歳な国とは聞いてましたが……攻撃力や防御力のみならず速さも筋力、魔力も筋力ってスゲー国ですね。
 まあ、お陰で魔法なんて才能もなければ習ったこともないボクでも人並みに使えてるから感謝しかねーわけですが」
 ルリは抑え込んでいた腕力を開放すると共に、そのままトレーニング器具に力を叩き込む。
 徐々に、確実に、効率を上げていく。
(鉄帝と言えば、ラド・バウ!
 ラド・バウと言えば、戦闘!
 戦闘と言えば、いっぱい痛め付けてもらえる!)
 うぇへへと笑うカナメ。戦う訓練も出来て痛めつけられて気持ちよくもなれるなんて一石二鳥! とテンション高め。
 ラドバウ闘士の猛攻に対し、痛撃を避けつつ攻撃を受け続けていく。
 その表情はとてつもなく楽しそうだった。
 リズリーはラド・バウの闘士の猛攻をベアヴォロスでそれを受け流す。
 魅せる動きのない分、武骨で純粋な攻撃がいつも以上の手ごたえを感じ取る。
 猛獣を思わせるその堂々たる攻撃に闘士の方も応えるように本気らしい攻撃を繰り広げていく。
「人生、日々是精進。鍛錬をつまんとするときでも常にご奉仕する心を忘れないことこそメイド道の真髄の一つです」
 なんて言ってアーデルトラウトは周囲の人々に水分補給用のドリンクを手渡したり、崩れたフィールドの整備に奔走する。
 ラドバウの闘士たちがぶつかり合い、戦いを終わらせたその後を、ネリはモップとギフトの髪を用いて掃除していく。
 しかも、それが終わった後はまるで掃除しなかったかのようにその場所を汚していく。
「お掃除の訓練も、汚す訓練もできて、タダ働きもしないで済む。我ながら合理的だわ」
 名案とばかりに言うネリであった。
 サンディは闘いに沸くラド・バウの観客席を回っていた。
 仲間達や闘士たちが激しい闘争を繰り広げるのを横目に、観客達を相手に繰り広げるは、売り子のバイトであった。
(こういう時に元手を増やしときゃ、いざという時の武器や道具のストックも増やせるってもんだぜ)
 ちゃりんと支払われた代金をまいどありーとばかりに笑顔で受け取りながら、そんなことを思っていたりするのだった。

●名だたる闘士たち
「えっ、待って、ちょっと待って、本当に? えっ、本当にパルスちゃんと特訓?」
 限界化する焔は折角特訓できるのに死んでる場合じゃねえ! とばかりに復帰すると、パルスの下へと走り寄る。
「えっと、出来れば普段パルスちゃんがどんなトレーニングしてるのか教えて欲しいな!」
「教えるだけでいいのかな?」
「えっ!?」
 剣を構えて誘うパルスに、焔は慌てふためきながらカグツチ天火を構え――

「パルスちゃん! 一手お願いします!」
 ふんす、と気合十分に告げたヤナに応じてパルスが人の好い笑みを浮かべる。
「もちろん! じゃあ、始めようか!」
 拳を構えるヤナに応じてパルスが剣を抜いた。
「ダンス? ん?」
 パルスに特訓の相手をお願いしに来たハイデマリーはセララの言葉に思わずそう返す。
「戦いにはリズム感とか大事なんだよ。パルスちゃんに楽しくダンス形式で教えて貰おう!」
「いいよ、始めようか!」
 パルスとハイデマリー、セララの3人は手を取り合い、繋ぎあってくるくると回りだす。
「ラララ人生はドーナツ。輪になって踊る~♪」
 テンションの高まりに応じて歌い始めたセララに驚きつつも、ハイデマリーもそれに合わせて。
(この歌のノリ、セララの漫画のエンディングみたいだなぁ……)
 ノリのいいその曲を歌いながら、ハイデマリーはぼんやりとそんな事を思うのだった。
 セララとハイデマリーとのダンスがひと段落着いた頃、パルスはそのまま温まってきた身体をそのままにライブを開始した。
「アイドルノ一番ハ、コノマッチョ☆プリンダッ!」
 ライブに乗り込むマッチョ☆プリン!
 決闘とばかりにプリンを投げつけ、自らのマッチョをアピールする。
 発光して注目を浴び、観客をたきつける。
「刮目シロ! コレガプリン! コノオレガマッチョ☆プリンダ!」
 ダイナミックキックを繰り広げ、ボルテージはうなぎ上り!
 ステージが始まる――
「それじゃあ、みんな、いっくよー!」
「パッルスちゃーん!!」
 イトはパルスのコールに合わせるように、声を上げる。
 歌って踊るパルスの一曲一曲にイトは魅了されていく。
 うちわとタオルとTシャツと、後は光る棒――気分は完全にオタクだった。
「闘士に興味を持つのはいいことだ、うん、これも修行」
 なんていう建前は言い訳に過ぎないだろう。めいいっぱい楽しんだ。
 ローゼスもパルスちゃんの歌声に耳を澄ませている。
(この戦いに溢れる鉄帝にてこれほどまでに人の心を一つにする者もそうはおるまい。
 これがカリスマと言うものか)
「眠ってる場合じゃないね?!」
 コールを聞いた紅が跳び起きた。

「ラド・バウD級闘士の『セイバーマギエル』と見受ける。一戦、手合わせを願いたい」
「あ、リーヌシュカさん! 一寸お手合わせを――おや、先客ですか」
 リーヌシュカを見止めたすずなは駆け寄ってぴたりと止まる。
 心地よい剣気に期待を膨らませるすずなは二人が特訓を始めるのだと知ると――
「その一戦、私も混ぜて貰いたいですね! 勿論お二方がよろしければ、ですけど!」
「もちろんよ!」
「あぁ、私も構わない」
 3人共が愛剣を構え――ぶつかり合う。
 心地よい剣撃の音が闘技場に響く。

 修也はある種の壁にぶつかっていることを自覚していた。漠然とした行く先、目の前を駆け巡る仲間達や闘士たち。
 そのスタイルを聞きまわれば、ナニカが掴める――そんな気がして。
 闘士からすればある種の商品といえる闘い方という物は、たしかに全て教えてもらえるものも難しくはあるが、英雄から教えてくれと言われて気が良くなった闘士から教えてもらえることは多かった。
 イニスもラド・バウを舞台に繰り広げられるイレギュラーズや闘士たちの特訓を見物していた。
 元の世界ではそれなりに名の知れた魔女だったという彼女は、いつか戦場に出るその時のために知識の収集に余念がない。
 楽しみにするイニスの期待を裏切ることなく、多種多様な魔術が繰り広げられていく。

●歯車大聖堂
「手伝わせてしまってごめんなさいね。ここのところ色々あったから、人手が足りていなくて……」
「いえ……それより、自分が手伝って、果たして神は怒らないのでありますかね?」
 彼女の神を奉ずることはない。あの日、あの時、この地で繰り広げたことを思い出して、エッダは呟いた。
「ええ、勿論。あの時、私達のために怒って戦ってくれたでしょう?
 主はとても慈悲深く、人の心を知るお方。たとえ貴女の心に信仰が芽生えていないとしても、きっと貴女を慈しんで下さるでしょう。
 私も、貴女のその心をとても嬉しく想いますわ」
「…………この際です。ヴィーシャ。
 ――いえ、司祭様。祈り方を教えてください。
作法というのは、心根を誤解なく伝える為のものですから」
 エッダの言葉に、ヴァレーリヤは自然と笑みを浮かべた。
 ひっそりと、今だ礼拝の始まるその前に、二人はそっと祈りをささげた。
 ご機嫌なマリアは大司祭の下へと訪れていた。
 大好きなヴァレーリヤの、自分が知らない幼少期の事を聞ける――それだけじゃなく、彼女の信じる教派の話を聞こうと思っていた。
 かつては神と鎬を削る世界で過ごしたマリアは、彼女の信じる神を知りたかった。
 大好きな彼女のことは、なんだって知りたい。
(どんな気持ちで子供時代を過ごしたのかな……)
 視線の先、今は元気な子供たちを見て、ふとそんな事を思った。

●孤児院へ
 メートヒェンは孤児院へと訪れていた。
 更地となってしまったスラムに住んでいた子供達がいるかどうか、それを見に来たのだ。
 実際、何人かは見覚えのある子がちらほらと見える。
 お茶の用意を整えていたところ、ひょっこりと顔を見せた少女にメイドとして、彼女に技術を教えてみる。
 目を輝かせて学ぶ少女に、メートヒェンは優しい笑みを浮かべた。
「一緒におやつを作ってみるかい?」
 様子をうかがう孤児にクッキーやパウンドケーキの作り方を教えていく。
 ふと、そんなときだった。
 なにか、嫌な物が見えた気がした。
 不思議そうな子供達に材料を取ってくると言ってその場を離れ――ダッシュ!
「オヤ! カティア・ルーデ・サスティン! おいかけっこでゴザイマスか!
 ソチラがソノ気ならワタクシ全力でお応えイタシます!
 踊りましょうヨ、愛しいマリオネット!」
「ちょ、なんで追いかけてくるのさ!
 追いかけっこじゃないってば!」
 ――二人が遠くへと消えていく。
 うえ男、ヴァローナ、ニコはそんなメートヒェンやカティアの用意したお茶会兼孤児たちとの遊戯会に参加している。
 だらりとしたうえ男はいただきますだけして適当にお菓子をついばみ、そのままその辺へだらりと溶けた。
 ちょうど疲れたらしい子供にクッションのように扱われたりもしつつ、抵抗も面倒だと魔王様はそのままだった。
「混ざらないの?」
 一人離れている孤児を見つけ、ヴァローナは声をかけ、遊んであげる。
 ニコはパペットのハチさんとナッツで人形劇を始めていた。
 元気な女の子のナッツ、ひとりぼっちのオオサンショウウオのハチ。
 2人が徐々に仲良くなって、お友達が増えていく。
 そんな人形劇は子供たちに人気だった。

●大聖堂の奥地へ
 リュカシスはヴァルフォロメイに挨拶を交わした後、大聖堂の探検にいそしんでいた。
 いくら探索してもしきれない場所に目を輝かせる。
 エクスダークGのような古代兵器の産物を見つけ出す――そんな密かな夢を抱くリュカシスの目はまっすぐな光があった。
「やったー! 歯車大聖堂を研究していいなんて、イレギュラーズで良かったなぁ」
「ギアバジリカ、他のイレギュラーズによって攻略された場所でもあるですが……
 一体その前は誰にこの文明が攻略されてしまったのですかね?」
 ルルとココア、工業技術を以て歯車大聖堂自体の研究にいそしむ2人は数々の歯車を見ながらうんうんと悩みながら、進めていく。
(今までの遺失物からすると完全な機械文明なのです。
 もしかしたら鉄騎種だけでなくココアたち秘宝種のルーツにも関わってる……かもしれないです?)
(うーん、使ってるものは似てるはずなのにどうしてこうなってるのかが分からない。
 悔しいけど、もっと勉強したら分かるようになるかな?)
 好奇心と探求心に満ちた2人の研究はまだ終わらなさそうだ。

●黒鉄の都の日常
 特訓ばかりではない。本を読みたいと帝都の書店へ訪れたシャノのように、町を探索する者もいる。
「鉄帝には初めて来ましたが…やはり、幻想とは色々と異なるものですね」
 帝都の様子を眺めてほう、とユーディットは溜息を吐いた。
 一つ一つ、洋服を見ながら自分に似合うものはないかと探し求める。
(……あのお方も、この装い、お気に召してくださると良いのですけれど)
 脳裏に思い浮かべながら、鏡を前に合わせてみる。
 橙子は銃の類が売られているショップへと訪れていた。
 手に馴染むかどうか、片手で使えるかどうか。
「試し打ちできるかしら?」
 店員への問いかけに頷かれ、試射場に向かう。
 ひいひいひい…とにかくずっと昔のお祖父ちゃんが鉄帝の人だったらしいMeerは鉄帝の空気を知りたいと町の観光を行なっていた。
 気になるお土産を亥勢海老にガンガン詰め込み、一息入れ。
 そんなところで、パルスちゃんが今闘技場でライブをしているらしいことを思い出す。
「ちょっと行ってみようかな……」
 いざ、ラド・バウへ。
「あなたに、とって。いれぎゅらぁず、とは。なんたるや。
 なに。おもう。なに。ねがう。ぜんぶ、ぜんぶ。ききたい」
 町中にいる人々に問いかける。
 知らないものが多すぎると判断した二は町ゆく人々にそう問いかけるのだった。
 様々な人々の様々な答えを聞き、その代わりにお手伝いのようなものをしながら、町を歩く。

「強さは美しさ『魅せる戦い』ってのはよくわかるヨ
 でも美しさって何アルヨ!」
 ウィンドウショッピングを楽しむビッツを探し出し王 虎は問い詰める。
「人それぞれよ。アンタも経験を積んだら分かると思うわ」
「時と経験で熟成されるものなのアル?
 熟成って言ったらビッツがh……」
「とりあえず、アンタも一緒に行けば分かるんじゃないかしら?」
 あれよあれよという間にビッツのペースに乗せられ、王 虎はビッツに続く。
 さて、2人が一緒にショッピングを始めて少し。
「リベンジしに来たよ! 負けたのがモンダイじゃない!
 守りに入って自分らしさを忘れた戦いをしたのがモンダイだったんだ!
 アレがオレだとS級に思われたままじゃいられないんだ!」
 飛び掛かるイグナートはしかし、するりと躱される。
「仕事じゃないのにやるわけないじゃない。
 休養がないと肌が荒れちゃうでしょ。
 そんなことより、あんたも買い物しましょ。
 綺麗な顔が台無しよ?」

「カルネの坊主はいつもよくやってるよなァ
 オールドワンとは言え色々やってるって聞いてるぜ?
 俺もそこんとこ見習わねぇと」
「そうかな? 君達のほうが色々としてくれてると思うけど」
 カルネはウィルフリードの言葉に微笑を返す。
 もっと強くなりたい。皇帝を始めとする今の上の者達のために命を焼き尽くすその機会のために。
 ウィルフリードはそう決意を述べる。

 帝都をぶらりとしていたハルアが出逢ったのはコンバルグだ。
 ハルアにとってコンバルグはヒーローだった。
 一緒にお茶しよーってな感じで入ったカフェに入れば、バナナが入っているホットサンドが目玉のようで。
「ねっ、コンバルグ、一緒にこれ食べようっ!
 バナナ入ってるのぜったいおいしい!」
 にこにこでテンション高いハルアにコンバルグがグッとサムズアップ。
 ハルアは自慢のヒーローとのひと時を楽しむのだった。

●遥かなる東方、新生の王国へ――
 ノーザンキングス――新興国家の軍勢を前に、アーサーは早速とばかりに攻めかかる。
 新興の息吹きあふるる連合軍へと突っ込んでいく。
「軍の方々との訓練も良かったのですが、鉄帝の民を脅かす者共を減らす事が優先ですね」
 上質な長剣を握り締め、オリーブは突貫する。
 群がるシルヴァンスの者達を巻き込むようにして、長剣を振り回せば、多くの血しぶきが舞い上がる。
 長引くにつれ、徐々に追い詰められる前にオリーブは撤退していく。
「あんた達かい? 例のお国の兵士って?」
 変わって戦陣に躍り出たのはアーバレスタだ。
 泡沫戦線とはいえ、『ちょっかい出していい』もどうなんだと思いつつも、出していいと言われて気にはしない。
 闘志を露わに飛び込めば肉薄し、大斧を思いっきり振り下ろす。
 強烈な一撃に獣人が傷口をじっとりと血にぬらしていく。

「グフフ……『ノーザンキングス』とは、また面白い国が出来ておるの」
 折角の機会だとノーザンキングスのヤングマンたちに話を聞きに来た大二の目は今後のことを考えてコネクションを得ようとしていた。
 これもある種のベンチャーへの投資。
 コネクションとダチコーを駆使してアポを取った大二は、樽入りの酒を土産にネタを集めていく。
 彼が様子をうかがうはノルダイン。凍てつく峡湾を統べる彼らには酒の趣味もあるかもしれなかった。
「食べ物や物資はどうだ? 滞りないか?」
 ハイエスタの民族が住まう集落でベルフラウは住民たちに問いかけて回っていた。
「ただでさえ痩せた土地だ。夏とは言え満足行く食糧が無ければ諍いにも発展しよう。
 そうなる前にローレットへ依頼してほしい」
 父親もこの付近で任に着いているはず。
 ――ならば、自分も民衆のために出来ることはせねばなるまい。
 確かな誇りを胸に、一人一人へ。
 花仙は物見遊山とノーザンキングスの一部族の下へと入り込むと、お茶会を開いていた。
 そうしてある程度のお茶会を楽しんでいた花仙はやがてお茶を終わらせて、数人のハイエスタを連れて離れる。
(お茶会で意見交流してみたけれど……拳を交えないと解らないことだってあると思うし……あるよね?)
 そんな事を思う花仙に従うように、ハイエスタの者達も武器を構える。
 エルは永久氷樹からやや離れた場所に居住地を遷したシルヴァンスの者達に話を聞きに来ていた。
「こんにちわ。エルです。
 エルは幻想以外の寒い森を知りません。
 だから、皆さんが住んでいる場所の事を教えて貰えますか?」
 九頭龍社製パンの缶詰を土産に訪れたエルに機嫌をよくした獣人たちが嬉しそうに笑いながら様々なことを教えてくれる。

●報告書
 クリスティーナは次々と上がってくるものを集め、各地の情報を纏めて報告書に記していく。
 一人一人の顔と名前を覚え、書き記す報告書は正確に。
「これぐらいでいいかな?」
 それぞれを纏めなおし、置いていく。
 精査して、整えなおした物を、上層部とローレットへと送り届けた。

成否

大成功

MVP

長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢

状態異常

なし

あとがき

三周年記念ローレットトレーニング、鉄帝編。
なんでも総参加者人数が1260人であったとか、すごいですね。
PPPの本気を見たきがします。

さて、あくまで私のロレトレに限ってはですが、
恐らくは白紙の方以外、全員の描写をさせていただいたはずです。
……多分。いなかったら「私いないじゃん!」ってファンレター頂ければと思います。

それでは、改めまして、三周年おめでとうございます!
これからもよろしくお願いします!

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