シナリオ詳細
めふ☆コン!~幻想酒庫SOS~
オープニング

●「幻想以外の国での仕事が増えて特異運命座標がこなくなったんで彼らを見込んで買っていた酒が全然はけないんです!」「……自業自得では?」
ぶっちゃけ、『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)がローレットに訪れた商人達の話を聞いたときの感想はこの一言に尽きる。
なんなら海洋大号令は昨年からの案件だったのだし、見通しくらい立てられただろうに。アレか、失敗を見越していたのだろうか。失礼な。
「そんな失礼なことを考えていたわけじゃ……でも、このまま秋を迎えて新しいワインを入荷できなくなったらこちらとしても大打撃でして……そこで、この際ですから皆さんに改めて幻想のお酒というやつを味わってもらいたいと」
「なるほど。ですが彼らの中には未成年も多いですが」
商人の言葉に、三弦は眼鏡のブリッジを持ち上げつつ問いかける。商人の代表は、「任せてください」と胸を叩く。してやったり。三弦はほくそ笑んだ。
「ノンアルコールのワインに似たぶどう酒、ビール風味のソフトドリンクも某貴族領で研究が進んでおりまして……蒸留酒も、試作品がいくつか。つまみ各種も」
「なるほど。いい話ですね。……では、それらをタダで頂くだけとはいきませんから、ここは一つこちらに提案があります」
三弦が商人に向けた提案、その内容とは……?
●「いっそ幻想首都でタパスイベントやればいいんですよ的な試験運用です」「大規模過ぎて情報屋一人の決裁範囲としてどうなの」
三弦の話を聞いたイレギュラーズの感想は上記の通り。当たり前である、やることがエグすぎる。
「あ、タパスというのは『酒一杯とツマミ数点』を一般的に指す『タパ』の複数形です。私の世界だと、チケット複数綴りを買って数店舗巡る楽しみ方が見られましたね」
「それを、メフ・メフィートの繁華街で? ……店舗間の統制取れんの?」
「もちろん、今回だけじゃ無理でしょう。ですから、今回は複数の飲食店を食べ歩きできる、程度の認識で構いません。
一箇所で腰を据えて楽しむことも出来ますし、ローレット内での宴会も限定的ですが許可しましょう。ルールを守って楽しく飲み歩き。そして宴会。今後の試金石となるなら、酒庫をいい感じに空けてくれるなら助かるというのが商人組合から引き出した譲歩ですね」
「おとなしい顔してほんっとエグい取引持ちかけてんのな……」
イレギュラーズの反応に、三弦はにやりと笑うのみ。
――イベントの開始は(この会話の)翌日昼より一昼夜。イレギュラーズよ、首都に詰め込まれた酒を少しでも減らすのだ(大義名分)。

- めふ☆コン!~幻想酒庫SOS~完了
- GM名ふみの
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2020年07月24日 22時25分
- 参加人数51/∞人
- 相談10日
- 参加費50RC
参加者 : 51 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(51人)
リプレイ
●繁華街~大体最初にオチがつくまでがワンセット~
「ひゃっはー呑み放題ですわ! でもわたくし、ただのお酒には興味ございませんことよ……折角タダ酒飲むのでしたら、超高級酒に限りますわ!」
テレジアは今回、ひとまず酒を盗んだり奪ったりしないだけ成長している気がする。手を出せるところにないだけ、とも言うが……ともあれ、チケット束を握りしめた彼女が向かったのはホストクラブ。そういう酒を求めてのことだ。初っ端タパスの意義が行方不明だ。
「イケメン軍団にちやほやされながら飲む高級酒は最オブ高ですわ…………ところで、このお店もちゃんとチケット対象でしたかしら……?」
立てたフラグを回収するためだろうか? その後数週間ほど、幻想首都でテレジアの姿を見た者はいない。
「まあ、まあ……商人さんも大変なのねえ。新しくいお酒が買えなくなるなんて、わたしにとっても大打撃になってしまいます。もちろん協力させていただきますわ」
「俺は聖職者なので過剰には摂取できませんが、少しだけでも貢献できれば……」
ミディーセラとブラッドは、イレギュラーズとして商人を助けることにやぶさかではない様子。チケット片手にちょこちょこと飲んで回るイベントを尊ぶ2人は、しかし脱線するのもあっという間だった。こと、ブラッドは所謂「0次会」を経ている上で、『ちまちま(ブラッド基準)』楽しんでいるのだ。
「……何も考えず全て飲んでしまえばいいのです。なんて素敵なイベントなのかしら……」
「お酒は程々にと言いますが……俺はザルらしいのです。いくつが『程々』なのでしょうか」
ミディーセラは酒場に突撃してはチケットをちらつかせてあるだけ全部を干そうとし、ブラッドは適当に飲んでいるはずなのに築いたるは瓶の山。2人揃えば酒棚もソーシャルディスタンス待ったなし。
「これも依頼なので……ほら、早くお酒を出してください」
帰り際まで容赦のないミディーセラを見て、『これが優勝かあ』と間違った知性を植え付けられたらどうしよう。
……ほんとうにどうしよっか。
「この世界に来たばっかで何もわかんねーなあ。ビールあんの?」
「いらっしゃいイレギュラーズの旦那。エール一杯とミックスナッツでチケット1枚だよ!」
九内は店主からグラスと皿を受け取ると、エールを呷りながら周囲に視線を巡らせた。
「日本とは全然違うよなぁ……アレ鬼っ子? すげえな。そこのアンタ、ひとり?」
「はら、妾(わたし)のこと? お兄さん気分良さそうやねぇ」
彼が声をかけた相手は秘巫。どこか陰を感じさせる笑みは、なるほど、人目を引く魅力に満ちている。
「ああ、知らないモンばっかだけどアンタみたいな人や獣っ子やらもいて飽きないぜ。飲もうぜ、チケットもってんだろ?」
「はらはら、妾(わたし)も黄泉津の外つ国は初めてなんよ。お兄さん、神人さんやろ? 余所者なんはおそろいやわぁ♪」
九内の言葉に、秘巫はますます気を良くする。余所者同士、気分よく酒が飲めるならそれに越したことはない。
飲んで飲まれて、店を変えてまた飲んで……チケットが尽きるまで両者の話は尽きないだろうが、九内の体験談は殊更に興味を持たれたことだろう。
「あらあら、すごいわね……これが黄泉津の外の世界……下手したら高天京よりも栄えてる都があるなんて思ってもみなかったわねェ……」
「本当だね、観光だけでも十分に楽しめるや……おっと、アタイは美咲だよ。鬼人種同士酒を楽しもう!」
「ふふ、ミキティママをよろしくね♪」
美鬼帝と美咲は鬼人種同士、かなりあっさりと意気投合した。2人とも、タダ酒に目を輝かせるのは同じだったらしく、目を光らせている。美咲は美鬼帝の威容は立派だと思いこそすれ、違和感を覚えることはなかった……らしい。
「私はその葡萄酒が気になるわ! 『ママ道』の精進にぴったりな感じがするのよ!」
「アタイはその蒸留酒が欲しいな!」
「フフフ、皆様楽しんでらっしゃいますねえ。ワタクシが楽しめそうなものにも期待できそうです」
2人の活発な空気を嗅ぎつけてか、同郷の者ゆえの共感か。比丘尼はふらりと現れると、にっこりと笑みを浮かべる。既に口から酒の匂いがするのは、それだけ楽しんでいるということだろう。
「旅は道連れ世は情け。出会い共に酒を飲みかわす事に何の不満がありましょうや」
「そうね、その通りよ! ヤオヨロズのお姉さんも神使なら同じ仲間ですもの!」
比丘尼の姿に一瞬だけたじろいだものの、美鬼帝も美咲も神使(イレギュラーズ)だから仲間なのだ。尼僧の格好をした比丘尼の破戒ぶりが気になるところだが。
「仏は心が広いのでこれしきの俗世の破戒、見過ごしてくださいますわ」
「そうか、なら大丈夫だな! 誰が一番飲めるか、勝負だ!」
美咲は2人に向かってチケットを掲げ宣言する。2人も満更でもない様子。
……まあ、チケットの範囲内で決着が付きそうにないのだが。
「成人おめでとう、リゲル。こうして2人でお祝いできて嬉しいよ」
「ありがとう、ポテト。初めての酒だ、2人で落ち着いて楽しもう」
リゲルとポテトは、繁華街のなかにあって落ち着いた雰囲気の店を選び、酒を酌み交わしていた。
ローレットで経験を積み、年月を重ね、成人を迎えた彼にとって、この日がどれだけ待ち遠しかったかは想像に難くない。
エメラルド・ミストとミスティア・ロワイヤル。自身の目の色に合わせたリゲルのチョイスに、ポテトは頬を赤らめる。
「明日からの俺達に、乾杯!」
掲げたグラスに口をつけ、リゲルは目を白黒させる。ベースとなった酒が強いだけに、カクテルにしても相当なものだ。初めてのアルコールには、結構刺激が強いか。
「ちょっとずつ飲むにはおいしい……リゲルのは、次から少し軽いのにしたほうがいいな」
ポテトはちびちびと飲みつつ、姉のような面倒見のよさを発揮する。
初めてだから少しずつ、とつまみを口にしつつ飲んでいた2人は、いつしか雰囲気も相まって酔いが回っていく。
「リゲル、だいすき……これからもずっと一緒だ」
「俺も大好きだよ、ポテト」
しなだれかかったポテトを抱き留めると、リゲルは店主にチケットを差し出して席を立つ。初めてにしては飲んだ方だろうに、男の矜持か、妻を支える彼の足取りはだいぶしっかりしたものだった。
「近頃では清酒でも果実酒の様に軽く甘い物も御座います。和食だけでなく、甘味や肉料理、乳製品等にも合いますよ」
「清酒ってあまり飲まないのだけど、たまにはいいものだね……ん、乾杯」
幻想首都繁華街でもやや大人びた、瀟洒な酒場で無量とウィズィの2人は杯を交わしていた。手にしているのは猪口、手元に並んだ料理は所謂和食に寄せた幻想料理だ。
「私、本当にただの一般人ですからね。話せること無いですよ?」
「いいんですよ、今までの貴女の、ありのままを伺いたいんです」
無量が興味深げに覗き込んでくるのを、ウィズィはどこか面映ゆく感じつつ、何を話そうかと考える。
……幻想のそれなりの町で生まれ、友人を作り、恋をして、人生経験を積んできた。家族は健在、関係は良好、子供を叱りつける程度には余裕ある関係にある。
無量もまた、彼女の言葉を聞きながら問いを繰り返す。家族のこと、彼女自身のこと、ありふれたことの一つ一つを掘り下げて。
「へへ……また一緒に飲もうね無量さん。今度は無量さん家に行っていい?」
「私の家にですか? ……大した御持て成しも出来ませんが、それでもよければ」
こんな約束ひとつでも、無量の人生を想えば輝く星のひとつとなる。……そう想えるだけ、今の彼女は幸せといえた。
「なんだか色々あったのねぇ。新参者だから、その辺さっぱりよ!」
「そりゃあよかった、こいつら全員ローレットに世話になったことのある連中だからな! 勿論俺もそうだ!」
アナスタージオは酒場の人々と酒を酌み交わしつつ、酒というものを学ぼうとしていた。何分、酒を全く知らぬ身で無理に飲むのはよろしくない。
そして、世情に疎い彼は人々が語るローレットの逸話に一喜一憂。
どの店を回っても、悪し様に言う者は殆どいない。
その者達の魂のカタチを見て回るほどに、酒の回りは加速する。
甘くて、香りがあって、泡が弾けて……そこまで考えたところで、彼の思考は喧噪に融けた。
●飲食店街と裏通り~明るく怪しく楽しく~
「ただ飯にありつけるのはありがたいな……この機会に食べておかないと」
幻想の飲食店街から少し離れたベンチに座り、サイズは一息つくとテイクアウトの料理を取り出す。
基本的にサンドイッチや大ぶりのフランクなど、『切り分ける』ことができる料理。鎌が本体だけに、切って味わい、人体の方で食すことで違和感なく食べきれるものを選んだようだ。
必然、比較的味のさっぱりしたものが中心になる。
「……妖精郷の為にも、食べておかないと」
戦いの日は近い。少しでも英気を養う必要があった。
「こんにちは! こちらはお肉屋さんですね!」
「……そのチケット、あなたもローレットの催しで食事に?」
「そうです! 折角ですので!」
正純の突撃に驚いたような表情を見せたバルガルは、これ見よがしに掲げた彼女のチケットであっさりと理解。
そして正純は賢い。実はこのチケット、『酒を頼まなければ多く食べられる』という抜け道があるのだ。マジで。
「こちらの常連さんならお勧めのお肉とかありますか? 変わり種などならより興味があります!」
「……ご主人、こちらのお嬢さんにアレを……ええ、食べられると思います」
正純は、バルガルがちょっと深刻げな表情を見せつつ店主に耳打ちしたことに首をかしげた。
数分後、そこに並んだのは牛や豚の変わった部位のオンパレード。普段店頭に並ばぬ類いのそれは、一頭買いでもなければ出ぬものだ。
「…………?! ……??」
「ナリはアレですが美味しいですよ。……ご主人、煙草を吸っても?」
目を白黒させる彼女を横目に、書類に目を落としつつバルガルは煙草の煙を胸いっぱいに吸い込んだ。
「プリン、食べ放題! オレ、プリン食ウ!」
マッチョ――これどっちが名前かわかんねえな――は、強いもの(プリン)を求めた結果大量のプリンを食べられる(欺瞞!)というタパチケットを握りしめて屋台街にやってきた。
手作り和菓子の屋台を引いていたおばちゃんに掴みかかるとプリンを要求! プリンどら焼きをゲット!
何故か行き先をミスって某イレギュラーズの関係者のジェラート屋に突撃! プリンジェラートを無理矢理作らせる!
それでも足りない彼は屋台街にプリンを布教しようと駆け回る! 迷惑!
「今日は食べながら街を歩くなんて……すごい開放感だ!」
「いやぁ、唐揚げに牛串に、肉こんなに食えるなんてすげーよな幻想。京とは何から何まで違う」
ソロアと千之は、屋台街を歩いている時に意気投合して屋台巡りに興じていた。手当たり次第に買って歩いていたソロアに興味を持った千之が同行を申し出た、ともいう。
「それにしても……そのビール、美味しい? 私にはビールっぽい飲み物もちょっとだめだったけど……」
「ああ、サイコーだぜ! 飲めるヤツが偉いとか、大人ってワケじゃないけどな! 酒は好き好き、飯と同じようなもんだな」
苦いなりに何とか飲み干したソロアの表情に、千之はそう応じてビールを口にする。息を吐く様子を見れば、心から楽しんでることがわかるだろう。
「なーおっちゃん、焼きそばと唐揚げ持ち帰り出来る? 普段村じゃ食えないし、美味かったから土産に持って帰りてーんだ」
「なんだ、外の人かい、ローレットは人材豊富で羨ましいねえ……もってきな!」
堂々たる交渉で持ち帰りをゲットしたその姿に、ソロアは大人になるということの意味をひとつ、学んだ気がした。
「今回は飲み会というより食べ歩きなのね……こういう機会も珍しいから楽しめそうね」
イナリは今回、食べ歩きの側に足を向けていた。それも屋台街。それというのも、このような場であれば米を使った料理にありつけるのでは、と思ったのだ。
それと酒気のない酒の類似品。この二つがあれば最高だ、と。……既にいくつかゲットしているのは、彼女のめざといところだ。
「こんにちはー、どこもかしこも美味しそうで目移りしちゃうわねー♪」
「本当にね……ね、それどこで売ってたの? お米?!」
あちこちをキョロキョロとみていたイナリは、気さくに声をかけてきた蘇芳が手にしていたものに目をみはる。それはまさしく肉巻きにぎり串。串に巻いたご飯にたれを塗って軽く焼き、これまたタレに浸した肉を巻いた、濃くて元気が出る料理の代表格だ。
「あら、お米に興味があるの? もう1本あるから一緒に食べましょう?」
「そうだ、代わりにこの酒風味の炭酸などどうだろう? 多分、美味しいと思う」
食べ歩き前提なこと、思いがけぬ出会いを楽しむのは蘇芳も初体験である。目の前の少女から差し出された趣の違う飲み物や料理も、新しい経験に他ならず。
イナリにとっても、お米の料理として興味深いものなのは変わりないのだった。
「……げ」
「何だ、いきなりご挨拶だな」
1人屋台で、焼き鳥とビールで優勝(食べ物で大いに満足すること)していたマカライトは、唐突に酒とツマミを手に現れたライの不満げな表情に眉を寄せた。
戸惑うような表情、手にしたもの、服装。決して人物鑑定に長けた方ではないが、『同類』を多く知っている彼は首をかしげた。
「もしかしてその格好で酒飲んでるからか? ウチの連中は大体破戒者だから気にしなかったな」
「…………そうなのですね」
塩のぽんじり、豚串に塩鮭、ほっけの半身にスモークチーズ。
店を広げて思うさま食事と酒の往復を楽しむ彼を見て、そのあっけらかんとした反応を見て、ライは周囲を気にしていた自分がどこか馬鹿馬鹿しく感じられた。
清楚な態度はかえず、しかしマカライトの向かいに座った彼女はぐいっと酒を飲み干し、近くの屋台におかわりを買いに行く。その様子は、まあ、先ほどまでと比べると大分「自然体」なのだろう。
「えへへ、裏路地だけど、屋台が一杯だねっ! お酒は飲めないけど……このチャンス、逃すわけにはいかないよね、カイトさんっ!」
「ああ、祭りときたらデートだよな!」
カイトとリリーは、屋台街を右に左に楽しんでいた。鶏肉料理がやや多いが、鳥といっても彼は猛禽だ。食材適正があるけど気にしちゃいけない。
「カイトさん、あのとうもろこし美味しそう!」
「おう、野菜も食べないとな! リリーもいっぱい食べろよ!」
カイトに抱えられ、手ずから焼きとうもろこしを一粒ずつ頬張るリリーの姿は、カイトならずとも可愛いらしく感じるだろう。
そして、リリーがどこか求めるように小首をかしげれば、快活で少し鈍いところのあるカイトでも何を求められているか、くらいは分かる。
甘えたいのだ、彼女は。
カイトはくちばしの先で何粒か掴み取ると、そのままリリーの口元へと運び……まあ、口移しというやつである。
気恥ずかしさもすっかり抜けた2人は堂々といちゃこらしている為、周囲も微笑ましいような雰囲気を醸し出すのだった。
「ゴリョウさん、こんにちは! ……どうしたんですか、こんなところで?」
「気にするな、ステーション・バーってやつさ」
「ステ……新しい楽しみ方なんですね! 普段の姿も男前ですけど、その格好も素敵ですよ!」
ノースポールは、偶然にも屋台と屋台の間で酒を布で隠しつつつまみと酒とを交互に食べるゴリョウを見つけ、思わず声をかけたのだ。
彼女はといえば、甘いものメインで食べ歩いていたため、ゴリョウの手持ちとは対照的だ。
「そういえば甘いものはまだチャレンジしてなかったな。それ、どこに売ってたんだ?」
「ゴリョウさんが食べて美味しかったところも教えてくださいっ! これはあっちなので!」
「ああ、お2人とも。屋台の情報交換ですか?」
そこに現れたのは、瑠璃だ。紙袋を提げ、手にはケバブ、袋の中からは香ばしい匂いと揚げ油の熱が漂ってくる。
「瑠璃さんも! ケバブ美味しそうですね! 食べ歩きにはぴったりです!」
「おお、あそこのやつか。旨いよな、それ」
瑠璃のケバブを見た2人の反応は対照的だった。ゴリョウはどうやら、既に口にしていたらしい。詳しいわけだ。
「肉を食べ歩いているお仲間も居たんで、聞いて回ってたんです。ローレットで飲んで……ん?」
と、3人の足下に一枚の黒羽が舞い落ちる。唐揚げ棒を持ち、ローレットの酒クズの一件で支給された3L樽にフライドチキンを山と詰め込み、髪エプロンをかけて現れた少女……その名がナハトラーベであるとすぐに出てきたのはノースポールぐらいか。
「――――」
「もしかして、ほかのところで買ってきたものですか? ここでも食べる……んですか?」
「――――」
口をせわしなく動かす姿に、瑠璃が戸惑い気味に問う。ナハトラーベは頭を縦に振った。
(こいつぁとんでもないヤツと同じタイミングで出会っちまったもんだぜ……しかし、今頃ローレットはどうなってんのかねぇ。やべぇ予感しかしねぇんだよなぁ)
ゴリョウの思考が盛大なフラグであるということに誰が気づいたろう。
まあ、みんな気づいてるよね。
●そしてローレットへ~化学反応ってそういうことじゃねえから~
「私達が海洋でラムを飲み、鉄帝で消毒できそうなアルコールを流し込み、深緑で果実酒を飲んでいた間に幻想の商人さんがこんなに大変なことに……!」
アーリアの深刻な表情に、一同はごくりと息をのむ。おっとシリアスの皮を被ったトンチキ発言だぞ?
「ということで、私アーリア・スピリッツはぁ、今ここローレットを再びの地獄にすることを誓いまぁーす! 凍った瓶ごと持ってきてぇー!」
「首都の酒を飲み干せって? そういうの待ってたんだよ! さぁミンナ! 頭悪くなって行こう! 呑んで吐いて飲んで吐いてしよう!」
「サイコーなの! まずはちんかちんかに凍らせた〇ンバーテンをショットでいくの! ……タータリクス! しねなの!!」
いきおい、イグナートとストレリチアは酒クズとしての本領を発揮。ナンバーテンってうっわ高っ。
「私食事不要なんですよね、これってつまりいくらでも飲めるってことじゃないでしょうか。まずはビールをくださいビールを」
「ビールなんてヌルいこといわないの! ドッグスノーズなの! あの店のビールとそこのジンでほしいの! ステアはいらないの!」
食事不要を水中適正(酒)並みに拡大解釈したアティに酒クズ妖精のアルハラがそうそうに襲いかかる!
「あぁ~~~~鯖の脂と匂いをいつもより強い酒で流し込む感じ最高です~」
「酒はヒャクヤクの長って言うからね。カラダがぶっ壊れるくらい飲んでもプラマイゼロ! そうだろストレリチア!」
「お酒は口が丸い器に注がれるから丸はつまりゼロ! カロリーも影響もゼロなの! すばらしーの!」
「屋台エリアの美味しそうなもの貰ってきたよ!」
「でかした! こっちで私の武勇伝を聞く権利をやろう!」
『ヤツは所詮他人と関わりたくないぼっちじゃけぇ』とでも煽られたのか、モニカは屋台街から山ほどの食事を買い込んできた。チケットはゼロになったが仲間のアルハラで飲み分プラマイゼロ! すごい! モカも勢いのある仲間のノリに気分が高揚している!
「ほんとうにあの時は大変だった……成し遂げたんだ……」
「お酒って結局主食なんです主食。エネルギーになりますし。ねえ?」
「シャラーッ! サカズキの空いたヤツには早く酒注いで行こうね!」
「私はアンドロイドですしいくら飲んでもエネルギーですよエネルギー」
アティ(食事不要)の持論! 杯を空けた者に飛びかかるイグナート! ひょうひょうとした顔でえれぇことを言い出すモカ!
モニカは果たして大丈夫なのか?
「ははは、ろぉれっとは気前が良いな! 好きなだけ呑んで騒いで良いとは、有難き事よ!」
「でゅふふ♪今日は飲み放題に食べ放題でありますから遠慮は無縁でござる☆ それにもしかしたら酔っぱらったおねー様方のあんな姿やこんな姿も目撃できるかも? 期待が高まる産業ですぞー!」
「お酒、お酒~♪ 蜂蜜酒とナッツがあれば大優勝間違いなしですねぇ♪」
蓮華、ジョーイ、ミエルの3名は往路で比較的新しい面子同士、意気投合した様子でローレットの扉を潜った。
彼らは期待が高まっていた。酒飲み歩きイベントに現れた特異点・ローレットの状況に。そしてその果てにある、何か……そう、何か桃源郷めいた予感に。
「ようこそルーキー、ここが地獄だ。ホラ、駆けつけ3倍」
「「「…………???」」」
☆地獄、到来――!
「倍か、杯ではなく?」
「違うよ通常の3倍飲んで真っ赤になれって言ってんだよ。酔ってないよ。みれば分かるでしょ」
蓮華の問いに、地獄の門番ことフニクラはへにゃりと笑みを浮かべると、ケタケタと下品な笑い声を上げる。
「関所の番人が酒に酔うわけないじゃないかウィー、ヒック」
「この状況……吾輩聞いたことがありますぞ! これはかの伝説の『0次会』でさんざ飲まされた飲兵衛の成れ果てというやつでござる! なんでも飲まされ過ぎると素面に戻る為の不可で人のカタチを」
「それ以上言う前に飲みましょう! ほら! あそこに蜂蜜酒ありますし3倍!」
「待ってまだ何も話してなゴボボ」
よくやったミエル、そのままジョーイ(の口を借りたGMのクソ発言)を押さえておけ。
「まだお酒が足りないみたいだけど大丈夫ですか? 給仕は得意ですよ♪」
(メイドさんにお酌なんてサイコーの体験のはず……吾輩、どうしてこんなことに……?)
顔の表示がゲーミング吐瀉鳥になったのでそろそろストップだ。これ以上やったらローレット名物Re:version(企業名)になってしまう。
「手本をみせてやる! こうだ!」
蓮華はそんな2人をよそにフニクラから渡されたワインをわんこそばめいた勢いで飲む、飲む、まだ飲む! 駆けつけ3倍を達成する勢いだ!
「もっともっと寄越すが良い、まだまだ呑める故にな!」
ここまでくると怖いなこの鬼(ひと)。
「えへへ……お酒の、チケット……いただき、ました……!これでたくさん、『ふわふわ』した気分になれます、ね」
『水中適正ではザルにはならない』フェリシアは、戻ってくるなりワインを血糊の如くぶちまけた寛治の姿を見て頭に上っていた血がストンと足まで落ちて脳貧血で倒れかけた。
「ヴァレーリヤさんのブーツ酒……あれが効きましたね。1次会始まったばかり、ヨシ!」
「よ、ヨシ、なのです、か……?!」
「大丈夫ですよ飲み会なんてこんなものです。フェリシアさんもどうぞ駆けつけ一杯」
間髪入れずとんでもねぇ発言をした寛治だったが、フェリシアはドン引きしつつも酒を渡されれば即オチよろしくすいっと飲み干す。水中適正だけにってか関係ねえわ。
「宴会芸、歌でよければできます、し……!」
「よーーーーし皆さん傾注! フェリシアさんが歌うぞー!」
(ギフトを使っても、少しくらいなら笑い話になる、でしょう?)
フェリシアはギフトを用い、楽しげに歌う。寛治が煽る! そのときである!
「新田! パンドラ寄越すの! タータリクスをしなすためにもっともっと飲んで優勝するの!」
ストレリチアのパンドラ使用(寛治)だ! 寛治はうごかなくなった! きっと不幸の肩代わりだ!
「うぇーいセンベロばんざいであります。かんぱーい」
「ふっふー、いつもは手が出ないお酒とおつまみ、いい機会なので買ってしまいましたわー! 色々あったけれど、何とか絶望の青を突破できたことを祝して! かんぱいかんぱーい!」
「おっ高そうな酒じゃねーですか。くれ」
エッダとヴァレーリヤは既に盛大に出来上がっていた。高そうな酒をチケット複数枚で確保したヴァレーリヤにたかるエッダ。割といつもの光景だ。
「そこで私はリヴァイアサンに飛び乗って、その鱗をちぎっては投げちぎっては投げと! 聞いていますのエッダ!!」
「そうでありますねープロテインでありますねー。ヴィーシャは今日も頭がヴィーシャでありますな。ところでウミヘビも酒に漬けたら……あれだぞ、酒だから……飲めるのでは?」
「天才ですの!?」
……とまあ、酔っ払い特有の会話のドッジボールを楽しげに聞いている姿がひとつ。
「……エッダ、知り合いですの? たしかこの方……」
「いや全然。でも0次会で挨拶は聞いているであります」
2人が顔を見合わせるなか、その女性……奏は両者にすっとお水を手渡した。おもわぬ心遣いに、酒クズだった2人が一瞬だけ人の心を取り戻す。
「か、奏様も何か食べてくださいまし! チケットはエッダが全部出しますので!」
「あ? じゃあヴィーシャはその高い酒を分けてやるであります。……飲み比べで? 酒の所有者を決める? は? 本気でありますか酔ったぞおまえ」
両者が両者におごる権利を押しつけあうなか、奏は身振り手振りとからの酒瓶でとんでもない提案を始めた。その酒瓶で2人を殴り倒せばもっとよかった。
斯くして、3名は唐突に飲み比べ対決を開始することとなるが……顛末がどうなったかは、察して頂きたい。
「うんうん!今日も賑やかで活気があるなぁ……!」
「え、この酒クズの地獄絵図かトラ牧場か分からない光景が活気でいいの?」
「え、トラって呼んだ?」
「その幸せ回路どこから来るの? ちょっと理解できないんですけど。え、僕? とっくに50超えてるけどお酒飲めないんだよね」
「じゃあ飲もうか? よしんばRe:version(企業名)しても私の速度で掃除すればなかったことにできるよ!」
「飲みたいって言ったわけじゃないんだけどなんで突き抜けて吐くかどうかみたいな話にまで発展してるの? 飲まないからね?」
「ヴァレーリヤ君も元気そうだし、ルフナ君も元気だし嬉しいなあ! あ、酒ペースト混じりの糖衣がまぶされたナッツ食べる?」
「おいマリア・ハナシキカナイ・レイシス。ちょっ……むぐ。これは美味しいね。評価する」
「でしょ、もっと食べて!」
……ルフナとマリアの会話のドッジボールもなかなかであった。
「いやぁ、外の飲み歩きに比べるとこっちは飲める量が段違いだぜ。本当、よく集めたよなぁ」
「あの迷宮に比べると見劣りするけど、それでもすごいよねえ、義弘さん?」
タパチケットをつかっての飲み歩きが今回の趣向だが、義弘やリウィルディアの言葉も一理ある。無論これにはカラクリがあり、複数名でタパチケットを纏めることにより注文を一元化、大量発注による単価低下というどこかの激安のなんちゃらみたいなことをしてのけたのだ。ほんとうに冒険者ギルドか?
「でも、ワインもラムもこんなに種類があるなら……幻想は特にワインが美味しそうだし、楽しめるかな?」
「言うねえ、じゃあこれとこれも飲もうぜ、景気づけだ」
リウィルディアは甘く見ていた。自分の流されやすさに。そして義弘のザルっぷり(リウィルディア基準)に。
「いややっぱりダメそうだうぅっ。ちょっ、ダメ、絶対に……お水はうっぷ」
「大丈夫か、つまみ食うか? 楽しくやろうぜ、適度にな」
「ありがうっ、はぁ……おちつ」
うっ。
リウィルディアは最悪の事態は避けたが、数日後にえづいて一歩残してを繰り返し後遺症で食道が焼けて大変だったとかそういうあれであった。
「はいはぁい、度数が高くて酔えるオススメのやつくーださいっ」
「よく言った! これなんて最高に酔えるから飲んじゃいな!」
ラズワルドはあまりの状況に一瞬だけたじろいだが、すぐに忘れてしまったかのように酒をぱっかぱっかと開け始めた。ザルらしい。
その空き杯に酒を注いだヨランダは既に出来上がっているらしく、ノリがもう酔っ払いのそれだ。
「そっちの蒸留酒も美味いが、こっちの清酒ってーのも中々美味いねぇ」
「へぇ、じゃあそれもくださいっ」
ふわふわした調子でヨランダにしなだれかかるラズワルド。ヨランダはちょっとやそっとで態度を崩さない(はずだ)が、それにしてもこの青年はスキンシップが相当多い。……酔っているのだろうか? 酒をねだるだけではなくお酌もしてのけるあたりが、嫌みのない立ち回りではあるのだが。
ヨランダが煙で描いた龍が宙を舞う。それはそれは、見事な龍の姿であった。
『鬼灯くん! 龍よ龍!』
「嫁殿は楽しそうだなあ……龍? 俺は大トラだよ!!」
ヨランダの一発芸に喜ぶ嫁殿をよそに、鬼灯はめっちゃテンション高く酒を飲んでいた。素面なら少しは顔が立ついい男なんだが、酒がまじるとこうなるのだ。
お金の都合など捨ててきたッッッ! 飲みたいからここにいるのだ! 頭領であることを忘れたい!
『鬼灯くん飲み過ぎよ! めっ!』
「嫁殿は今日も愛らしいなあ……天使かな? 知ってた」
鬼灯はこんな調子なので、二日酔いになったら彼の分の甘味は『彼』に奪われるのだろう。知ってた。
イレギュラーズ達は(寛治を除き)皆、無事に帰路に就く。新たな日々に向かって。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
「これは違うんじゃ……これは厳正な判定なんじゃ……」
「ふみの嘘をつけっ」
GMコメント
海洋決戦ラリー、豊穣、海洋宴会、アグノシア! そして水着! もうイベシナに割くRCなんてないよな! (素振り
●達成条件(多分自動達成)
・「メフ・メフィートタパスラリー(実験版)」の成功
●メフ・メフィートタパスラリー(実験版)
詳しい経緯はOPに譲るとして、ざっくりいうと「食べ歩きイベント」です。
・A)首都繁華街エリア(酒メイン)
・B)首都飲食店街エリア(食メイン)
・C)首都裏通りエリア(屋台系メイン)
・D)ローレット(酒クズ宴会場)
の何れかのエリアで支給されたチケットで食べ飲み歩きが可能です。なおマナーとか眠たい要素は多分ヴィーザル地方の海に沈んでます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●プレイング書式
1行目:パートタグ(A~D)
2行目:同行者名(IDがあればなおよし)orグループタグor空白
3行目:プレイング本文
書式例
【A】
〇〇さん(p3pxxxxxx)とor【グループA】で、等
飲んで騒ぐぞ!(以下プレイング)
上記書式を『徹底』してください。
特に『2行目空け、3行目にグループタグ』『パートタグとグループタグをまとめて1行目』『パートタグとプレイングの行き先の極めて重篤な乖離』『2行目からプレイング』等の書式誤りは特に扱いづらいため、は『高確率で描写を保証しません』のでご注意下さい。迷子になった場合、仮に描写されてもあっさり感が増す可能性が上がります。
なお、グループタグがない、同行者名が愛称のみ、とかで同定が極めて困難な場合はマジで行方不明になります。全員描写したいんで勘弁してください。
●注記
このシナリオは『無制限イベントシナリオ』です。
何らかの形でNPCが参加するかもしれませんが最近イベシナ多かったんで保証できません。
いなくても楽しいよ。しよう。
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